撮像装置
【課題】 装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】 撮像装置は、被写体からの光束を撮像素子3の撮像面上に結像させるための撮影光学系を構成する撮影レンズ1と、焦点状態検出動作と撮影光量調節動作を行う光量調節機構である絞り兼用分割撮像機構2とを備える。絞り兼用分割撮像機構2は、焦点状態検出時に、瞳分割のための開口部の形成およびその遮光を行うように、対応する絞り羽根21〜24を開閉駆動する第1の駆動機構(AF駆動リング5およびAF駆動モータ6)と、光量調節時に、撮像素子3に到達する光量を調節するように、絞り羽根21〜24を同時に開閉駆動する第2の駆動機構(絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8)とを有する。
【解決手段】 撮像装置は、被写体からの光束を撮像素子3の撮像面上に結像させるための撮影光学系を構成する撮影レンズ1と、焦点状態検出動作と撮影光量調節動作を行う光量調節機構である絞り兼用分割撮像機構2とを備える。絞り兼用分割撮像機構2は、焦点状態検出時に、瞳分割のための開口部の形成およびその遮光を行うように、対応する絞り羽根21〜24を開閉駆動する第1の駆動機構(AF駆動リング5およびAF駆動モータ6)と、光量調節時に、撮像素子3に到達する光量を調節するように、絞り羽根21〜24を同時に開閉駆動する第2の駆動機構(絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて撮影光学系の焦点調節状態の検出を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置として、専用の焦点調節状態検出素子を用いずに、CCDなどの撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出するものがある(例えば特許文献1を参照)。この撮像装置においては、撮影光学系内に瞳分割を行うための専用の絞り機構、2つの光開口のいずれか一方を遮光するための瞳遮光機構、およびこれらの機構を動作させるための複雑な機構が必要であるので、撮影光学系が大型化する。
【0003】
そこで、本出願人により、CCDなどの撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置において、撮影光学系の大型化を阻止するための撮像装置が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【0004】
上記撮像装置の構成について図11を参照しながら説明する。図11は従来の撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【0005】
上記撮像装置は、図11に示すように、撮像素子103上に被写体像を結像する撮影光学系101と、撮像光学系101を介して撮像素子103に入射する光量を調節する光量調節機構1022とを有し、光量調節機構102においては、瞳遮光板駆動モータ108によって瞳遮光板107が回転駆動されて、絞り羽根によって分割形成された光通過口が時系列的に遮光される。これにより、焦点調節状態の検出を行うための視差を持つ2つの被写体像に対応する画像信号が得られ、これら2つの画像信号を比較することによって、焦点はずれ量(デフォーカス量)が算出される。そして、この構成によれば、焦点調節状態の検出のために、撮影光学系101に存在する光量調節機構102を利用しているので、撮影光学系101を小型化することができ、複雑な機構を新たに追加する必要がない。
【特許文献1】特開平11−142723号公報
【特許文献2】特開2002−350718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した、焦点調節状態の検出を行うための視差すなわち位相差を持つ2つの被写体像を時系列的に撮像素子に投影し、これらの被写体像を比較する方式においては、基本的には、2つの像の撮影の時間差を極力短くすることが必要であるので、焦点調節状態の検出動作すなわち絞り動作を高速に行う必要がある。これは、2つの被写体像の撮影の間の時間差が大きいまたは被写体の動きが速い場合に、比較する像がぶれたり、ずれたりして検出精度の低下を招くことを回避するためである。
【0007】
また、上記方式に対して、焦点調節状態の検出時間の短縮化が要求される。これは、焦点調節状態の検出の時間が長すぎると、続く被写体撮影への移行時間を含めたシャッタタイムラグが長くなり、ユーザがカメラのレリーズボタンを押したタイミングと実際の被写体像を撮影する時間にずれが生じ、いわゆるシャッタチャンスを逃すことになるからである。
【0008】
しかしながら、上述した、1つの駆動モータによって駆動されて光量調節動作に連続して焦点調節動作を行う構成は、焦点調整状態の検出動作を高速にするために、大型の高トルクタイプのモータを用いる必要があり、またギアなどによる減速系が必要となるなど、事実上、高速化と小型化を両立させることが難しい構成である。
【0009】
また、一般に位相差がある左右の像を用いて焦点調節状態を検出する際、その検出原理から縦線の成分が多い被写体像の場合は、誤検出や検出精度の低下が発生するので、これを防止するために、いわゆるクロス測距と呼ばれる上下方向に位相差がある像の取得が合わせて行われる。しかしながら、上述の構成に対して、装置を大型化することなく、上記クロス測離を行う構成を追加することは難しい。
【0010】
本発明の目的は、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、撮像素子上に被写体像を結像させるための撮影光学系と、前記撮像光学系から前記撮像素子へ至る光路の開閉を行うための複数の遮光部材を開閉駆動する光量調節機構とを備え、前記撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて前記撮影光学系の焦点調節状態の検出を行うことが可能な撮像装置であって、前記光量調節機構は、前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する際には、位相差がある複数の像にそれぞれ対応する開口を前記光路上に時系列に形成するように、前記複数の遮光部材のうち、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動する第1の駆動機構と、前記撮像素子から前記光路を介して前記撮像素子へ入射する光量を調節する際には、所定光量に対応する開口面積を有する開口を前記光路上に同軸上に形成するように、前記遮光部材の全てを同時に開閉駆動する第2の駆動機構とを有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る撮像装置の主要部構成を示す斜視図、図2は図1の絞り兼用分割撮像機構2の側面図、図3は図1の絞り兼用分割撮像機構2の裏面図である。
【0015】
撮像装置は、図1に示すように、被写体からの光束を撮像素子3の撮像面上に結像させるための撮影光学系を構成する撮影レンズ1と、焦点状態検出動作と撮影光量調節動作を行う光量調節機構である絞り兼用分割撮像機構2とを備える。
【0016】
絞り兼用分割撮像機構2は、図1〜図3に示すように、光軸と同軸上に配置されている円板状のカム板4と、遮光部材である絞り羽根21〜24(図3を参照)と、AF駆動リング5(第1の駆動機構)と、AF駆動リング5を駆動するためのAF駆動モータ6と、絞り駆動リング7(図3を参照)と、絞り駆動リング7を駆動する絞り駆動モータ8と、戻しスプリング91〜94とを有する。
【0017】
カム板4は、絞り兼用分割撮像機構2全体を支持するための支持体であり、カム板4には、開口部4aと、各絞り羽根21〜24を支持する絞り羽根駆動軸212,222,232,242が摺動するカム溝41〜44とが形成されている。開口部4aは、撮影レンズ1から撮像素子3へ至る光路上の光通過口を形成し、この光通過口の開口面積および開口位置は、後述するように、絞り羽根21〜24の開閉動作によって変更される。
【0018】
絞り羽根21〜24は遮光性を有する部材からなり、各絞り羽根21〜24には、絞り駆動リング7の複数の係合穴とそれぞれ係合する複数の絞り羽根回転軸211,221,231,241(図3を参照)と、カム板4のカム溝41〜44とそれぞれ係合する複数の絞り羽根駆動軸212,222,232,242とが設けられている。
【0019】
AF駆動リング5は、カム板4に同軸上に回転可能に支持されている。AF駆動リング5は、カム板4のカム溝41〜44を貫通して突出する各絞り羽根21〜24の絞り羽根駆動軸212,222,232,242を光軸側から外側に押し出す径方向に延出するカム部51,52,53,54と、AF駆動モータ6のピニオンギア6aと噛み合うセクタギア部5aとを有する。AF駆動リング5は、AF駆動モータ6の正または逆回転により時計方向または反時計方向に回転する。また、カム部51〜54は、絞り羽根駆動軸212,222,232,242を時系列的に順次駆動するようなタイミングを生成すべく、それぞれ異なる位相を有する。AF駆動リング5およびAF駆動モータ6は、第1の駆動機構を構成する。
【0020】
絞り駆動リング7は、カム板4に同軸上に回転可能に支持されている。絞り駆動リング7は、各絞り羽根21〜24を公転させるための絞り羽根回転軸211,221,231,241と嵌合する係合穴と、絞り駆動モータ8のピニオンギアと噛み合うセクタギア部とを有する。絞り駆動リング7は、絞り駆動モータ8の正または逆回転により、時計方向または反時計方向に回転する。絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8は、第2の駆動機構を構成する。
【0021】
各戻しスプリング91〜94は、各絞り羽根21〜24の絞り羽根駆動軸212,222,232,242が折り返し位置に到達した時点で、各絞り羽根駆動軸212,222,232,242に対して各絞り羽根21〜24の閉じ方向へ付勢力を与えるためのものである。
【0022】
次に、本撮像装置の撮影動作について図4〜図10を参照しながら説明する。図4は図1の撮像装置の動作のタイミングチャート、図5は図1の絞り兼用分割撮像機構2の全開状態を示す図、図6は図1の絞り兼用分割撮像機構2の全閉状態を示す図、図7は図1の絞り兼用分割撮像機構2の左開口部の形成状態を示す図、図8は図1の絞り兼用分割撮像機構2の右開口部の形成状態を示す図、図9は図1の絞り兼用分割撮像機構2の上開口部の形成状態を示す図、図10は図1の絞り兼用分割撮像機構2の下開口部の形成状態を示す図である。ここで、本実施の形態の撮像装置は、撮像と焦点調節状態の検出(焦点はずれ量(デフォーカス量)の検出)とのそれぞれを撮像素子3の出力を用いて行うものである。
【0023】
例えば、撮像素子3より被写体側に被写体像が結像されているとき、射出瞳の右側を通る半光束は、撮像素子3上で左側にシフトし、射出瞳の左側を通る半光束は、右側にシフトする。すなわち、撮影光学系1の瞳の半分ずつを通過した光束で形成される一対の画像信号は、被写体像の結像状態に応じて左右方向に位相がシフトしたものとなる。この位相ずれ量を検出することによって、焦点はずれ量(デフォーカス量)とはずれの方向を算出することが可能であり、これにより、焦点調節状態の検出が行われる。
【0024】
まず、初期状態においては、光通過口が開放状態であり、シャッタ装置(図示せず)も開放状態である。これにより、撮像素子3には、被写体のフレーミングのために、モニタする画像が投影されている。このとき、図4に示すように、絞り駆動リング7が光軸を中心に時計方向に最大に回転した状態の位置が0(rad)の位置とされ、各絞り羽根21〜24は、光軸に対し、時計方向に最大に回転された状態にある。また、絞り羽根駆動軸212,222,232,242がカム溝41〜44に導かれて、各絞り羽根21〜24は、絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に時計方向に最大に回転(自転)された状態にある。これにより、図5に示すように、全ての絞り羽根21〜24がカム板4の開口部4aから退避し、開口部4aは全開された状態にある。すなわち、カム板4の光通過口は、円形の開口を形成し、絞り開放状態となる。
【0025】
ユーザの撮影開始動作によって絞り駆動リング7が初期状態の位置から反時計方向に回転すると、その回転角に伴い各絞り羽根駆動軸212,222,232,242がカム溝41〜44に導かれて絞り羽根21〜24は、光軸を中心に反時計方向へ回転(公転)しながら、各絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に反時計回り方向に回転(自転)して、絞り羽根21〜24の端部が徐々に開口部4aに進入する。これにより、光通過口の開口面積は、図5の開放状態に比して漸次小さくなり、撮像素子3に到達する光量が漸次減少する。そして、撮像素子3に到達する光量が所定量になると、その位置がセンサ手段(図示せず)により検出され、その検出された位置が絞り位置として記憶される。その後も、絞り駆動リング7は回転され、カム板4の光通過口は、最終的には、図6に示すような全閉された状態となる。
【0026】
このように、絞り駆動リング7の回転に応じて絞り羽根21〜24が自転と公転を行うことによって、カム板4の光通過口の開口面積が変化し、撮像素子3に到達する光量が調節される。
【0027】
この絞り駆動リング7がカム板4の光通過口を全閉状態にする位置(反時計回りに最大に回転した位置)に到達すると、図4に示すように、絞り駆動リング7は、この位置で停止された状態に保持される。この時点が焦点状態調節の検出開始タイミングである。この状態においては、絞り羽根21〜24の回転中心である絞り羽根回転軸211,221,231,241は、そのままの位置で停止し、絞り羽根駆動軸212,222,232,242は、カム溝41〜44のそれぞれの折り返し位置にある。この折り返し位置以降のカム軌跡は、絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心とする円弧であり、従って、各絞り羽根21〜24は、それぞれ単独で絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に回転することができる。そのため、戻しスプリング91〜94により、絞り羽根駆動軸212、222,232,242が閉じ状態を維持するように付勢される。よって、カム板4の光通過口(開口部4a)は、全閉状態に保持されることになる。
【0028】
この状態で、図4に示すように、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。そして、AF駆動モータ6によりAF駆動リング5は時計方向へ高速に回転駆動される。AF駆動リング5が所定の角度を回転すると、AF駆動リング5のカム51が絞り羽根21の絞り羽根駆動軸212を、戻しスプリング91の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図7に示すように、絞り羽根21が絞り羽根回転軸211を中心に反時計方向に高速に回転して、カム板4の光通過口として、一対の左右開口部のうちの左開口部が形成される。この左開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0029】
さらに続くAF駆動リング5の回転により、カム51が絞り羽根駆動軸212を通過すると、戻しスプリング91の付勢力により、絞り羽根21は閉じ方向へ移動され、高速に光通過口が全閉状態にされる。これにより、左像の撮像が完了する。また、同時にこの状態で再び、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。この間も、AF駆動リング5は時計方向に高速に回転を続けている。
【0030】
そして、図8に示すように、AF駆動リング5のカム53が絞り羽根23の絞り羽根駆動軸232を、戻しスプリング93の付勢力に抗して蹴り上げて絞り羽根23が絞り羽根回転軸231を中心に反時計方向に高速に回転して、カム板4の光通過口として、左右一対の開口部のうちの右開口部が形成される。この右開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0031】
AF駆動リング5の回転によりカム53が羽根駆動軸232を通過すると、戻しスプリング93の付勢力により絞り羽根23が閉じ方向へ移動され、光通過口(開口部4a)は、図6に示すような全閉状態となる。これにより、右像の撮像が完了する。
【0032】
このように、AF駆動リング5はAF駆動モータ6により高速に回転駆動されるので、位相差を比較する左右一対の像は、極力時間差が無い状態で取得されることになる。そして、取得された左像と右像に対して比較演算処理が施され、その位相差により被写体に対する焦点調節状態の検出が完了する。また、ここでの左右画像の撮像時間は、各カム51,53の形状により決定されるものである。
【0033】
さらに続けてAF駆動リング5が所定の角度を回転すると、AF駆動リング5のカム54が絞り羽根24の絞り羽根駆動軸242を、戻しスプリング94の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図9に示すように、絞り羽根24が絞り羽根回転軸241を中心に反時計方向へ高速に回転して、カム板4の光通過口として、上下一対の開口部のうちの上開口部が形成される。この上開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0034】
そして、AF駆動リング5の回転によりカム54が羽根駆動軸242を通過すると、戻しスプリングの付勢力により、絞り羽根24が閉じ方向へ移動され、高速に光通過口を図6に示す全閉状態とする。これにより上像の撮像が完了する。また、同時に、この状態で再び、図4に示すように、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。この間も、AF駆動リング5は時計方向に高速に回転を続けている。
【0035】
次いで、AF駆動リング5のカム52が絞り羽根22の絞り羽根駆動軸222を、戻しスプリング92の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図10に示すように、絞り羽根22が絞り羽根回転軸221を中心に反時計方向に高速に回転し、カム板4の光通過口として、上下一対の開口部のうちの下開口部が形成される。この下開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0036】
AF駆動リング5の回転によりカム52が絞り羽根駆動軸222を通過すると、戻しスプリング92の付勢力により、絞り羽根22が閉じ方向へ移動され、光通過口(開口部4a)は、図6に示すような全閉状態となる。これにより、下像の撮像が完了する。
【0037】
ここで、位相差を比較する上下の一対の像は、左右の一対の像と同様に、極力時間差がない状態で取得されることになる。そして、上像と下像に対して比較演算処理が施され、その位相差により、被写体に対する焦点調節状態の検出が完了する。また、各上下像の撮像時間は、各カム51,53と同様、各カム52,54の形状により決定される。
【0038】
さらに、図4に示すように、AF駆動リング5は回転し続け、AFカム51,52,53,54は絞り羽根駆動軸212,222,232,242の回動範囲であるカム溝41,42,43,44の上部から退避して時計回りの最大回動位置に停止する。同時に、この状態で再び、リセット信号に基づいて撮像素子3による画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。
【0039】
以上の動作により、撮像素子3には、それぞれ位相が異なる左右および上下の像の比較により、焦点はずれ量と焦点はずれ方向が検出されてクロス測距が行われる。そして、撮影レンズ1の焦点調節状態が判別される。
【0040】
次いで、実際の被写体撮影が行われる。まず、図4に示すように、絞り駆動リング7が時計方向に回転駆動され、各絞り羽根21〜24は一斉に開き方向に移動を開始する。そして、カム板4の光通過口が予め得られた光量調節情報に対応する開口面積に達した時点で、絞り駆動リング7は一旦停止し、撮像素子3に対し被写体撮影のための露光が行われる。露光時間が所定時間を経過すると、シャッタが閉鎖して被写体撮影が完了する。
【0041】
その後、再び絞り駆動リング7が時計方向へ回転されて初期位置へ復帰し、全ての絞り羽根21〜24は光通過口から退避して全開状態となる。次いで、AF駆動モータ6が逆転し、AF駆動リング5が時計方向へ回転駆動され、AF駆動リング5の初期位置へ復帰し、停止する。これにより、1回の撮影が完了する。そして、図5に示すように、再び撮像装置はモニタ状態となる。
【0042】
このように本実施の形態によれば、焦点状態検出時に、第1の駆動機構(AF駆動リング5およびAF駆動モータ6)により瞳分割のための開口部の形成(マスク形成)およびその遮光を行い、光量調節時に、第2の駆動機構(絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8)により撮像素子3に到達する光量を調節する構成を採用したので、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる。
【0043】
また、光量調節時においては、第2の駆動機構により、絞り羽根21〜24の全てを一斉に駆動するので、第2の駆動機構を、従来の光量調節用駆動機構と同等のカム板の回転角および駆動トルクを発生する機構とすることができ、モータの大型化や高性能化をする必要がない。
【0044】
また、左右の像を時系列に取得する際にその時間差を極力短くすることが可能となり、検出精度が向上する。また、クロス測距の際に左右の像の取得と上下の像の取得との間の時間差が極力短くされるので、高精度のクロス測距が可能となり、装置性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【図2】図1の絞り兼用分割撮像機構2の側面図である。
【図3】図1の絞り兼用分割撮像機構2の裏面図である。
【図4】図1の撮像装置の動作のタイミングチャートである。
【図5】図1の絞り兼用分割撮像機構2の全開状態を示す図である。
【図6】図1の絞り兼用分割撮像機構2の全閉状態を示す図である。
【図7】図1の絞り兼用分割撮像機構2の左開口部の形成状態を示す図である。
【図8】図1の絞り兼用分割撮像機構2の右開口部の形成状態を示す図である。
【図9】図1の絞り兼用分割撮像機構2の上開口部の形成状態を示す図である。
【図10】図1の絞り兼用分割撮像機構2の下開口部の形成状態を示す図である。
【図11】従来の撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 撮影レンズ
2 絞り兼用分割撮像機構
3 撮像素子
4 カム板
4a 開口部
5 AF駆動リング
6 AF駆動モータ
7 絞り駆動リング
8 絞り駆動モータ
21〜24 絞り羽根
51〜54 カム部
91〜94 戻しスプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて撮影光学系の焦点調節状態の検出を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置として、専用の焦点調節状態検出素子を用いずに、CCDなどの撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出するものがある(例えば特許文献1を参照)。この撮像装置においては、撮影光学系内に瞳分割を行うための専用の絞り機構、2つの光開口のいずれか一方を遮光するための瞳遮光機構、およびこれらの機構を動作させるための複雑な機構が必要であるので、撮影光学系が大型化する。
【0003】
そこで、本出願人により、CCDなどの撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置において、撮影光学系の大型化を阻止するための撮像装置が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【0004】
上記撮像装置の構成について図11を参照しながら説明する。図11は従来の撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【0005】
上記撮像装置は、図11に示すように、撮像素子103上に被写体像を結像する撮影光学系101と、撮像光学系101を介して撮像素子103に入射する光量を調節する光量調節機構1022とを有し、光量調節機構102においては、瞳遮光板駆動モータ108によって瞳遮光板107が回転駆動されて、絞り羽根によって分割形成された光通過口が時系列的に遮光される。これにより、焦点調節状態の検出を行うための視差を持つ2つの被写体像に対応する画像信号が得られ、これら2つの画像信号を比較することによって、焦点はずれ量(デフォーカス量)が算出される。そして、この構成によれば、焦点調節状態の検出のために、撮影光学系101に存在する光量調節機構102を利用しているので、撮影光学系101を小型化することができ、複雑な機構を新たに追加する必要がない。
【特許文献1】特開平11−142723号公報
【特許文献2】特開2002−350718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した、焦点調節状態の検出を行うための視差すなわち位相差を持つ2つの被写体像を時系列的に撮像素子に投影し、これらの被写体像を比較する方式においては、基本的には、2つの像の撮影の時間差を極力短くすることが必要であるので、焦点調節状態の検出動作すなわち絞り動作を高速に行う必要がある。これは、2つの被写体像の撮影の間の時間差が大きいまたは被写体の動きが速い場合に、比較する像がぶれたり、ずれたりして検出精度の低下を招くことを回避するためである。
【0007】
また、上記方式に対して、焦点調節状態の検出時間の短縮化が要求される。これは、焦点調節状態の検出の時間が長すぎると、続く被写体撮影への移行時間を含めたシャッタタイムラグが長くなり、ユーザがカメラのレリーズボタンを押したタイミングと実際の被写体像を撮影する時間にずれが生じ、いわゆるシャッタチャンスを逃すことになるからである。
【0008】
しかしながら、上述した、1つの駆動モータによって駆動されて光量調節動作に連続して焦点調節動作を行う構成は、焦点調整状態の検出動作を高速にするために、大型の高トルクタイプのモータを用いる必要があり、またギアなどによる減速系が必要となるなど、事実上、高速化と小型化を両立させることが難しい構成である。
【0009】
また、一般に位相差がある左右の像を用いて焦点調節状態を検出する際、その検出原理から縦線の成分が多い被写体像の場合は、誤検出や検出精度の低下が発生するので、これを防止するために、いわゆるクロス測距と呼ばれる上下方向に位相差がある像の取得が合わせて行われる。しかしながら、上述の構成に対して、装置を大型化することなく、上記クロス測離を行う構成を追加することは難しい。
【0010】
本発明の目的は、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、撮像素子上に被写体像を結像させるための撮影光学系と、前記撮像光学系から前記撮像素子へ至る光路の開閉を行うための複数の遮光部材を開閉駆動する光量調節機構とを備え、前記撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて前記撮影光学系の焦点調節状態の検出を行うことが可能な撮像装置であって、前記光量調節機構は、前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する際には、位相差がある複数の像にそれぞれ対応する開口を前記光路上に時系列に形成するように、前記複数の遮光部材のうち、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動する第1の駆動機構と、前記撮像素子から前記光路を介して前記撮像素子へ入射する光量を調節する際には、所定光量に対応する開口面積を有する開口を前記光路上に同軸上に形成するように、前記遮光部材の全てを同時に開閉駆動する第2の駆動機構とを有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る撮像装置の主要部構成を示す斜視図、図2は図1の絞り兼用分割撮像機構2の側面図、図3は図1の絞り兼用分割撮像機構2の裏面図である。
【0015】
撮像装置は、図1に示すように、被写体からの光束を撮像素子3の撮像面上に結像させるための撮影光学系を構成する撮影レンズ1と、焦点状態検出動作と撮影光量調節動作を行う光量調節機構である絞り兼用分割撮像機構2とを備える。
【0016】
絞り兼用分割撮像機構2は、図1〜図3に示すように、光軸と同軸上に配置されている円板状のカム板4と、遮光部材である絞り羽根21〜24(図3を参照)と、AF駆動リング5(第1の駆動機構)と、AF駆動リング5を駆動するためのAF駆動モータ6と、絞り駆動リング7(図3を参照)と、絞り駆動リング7を駆動する絞り駆動モータ8と、戻しスプリング91〜94とを有する。
【0017】
カム板4は、絞り兼用分割撮像機構2全体を支持するための支持体であり、カム板4には、開口部4aと、各絞り羽根21〜24を支持する絞り羽根駆動軸212,222,232,242が摺動するカム溝41〜44とが形成されている。開口部4aは、撮影レンズ1から撮像素子3へ至る光路上の光通過口を形成し、この光通過口の開口面積および開口位置は、後述するように、絞り羽根21〜24の開閉動作によって変更される。
【0018】
絞り羽根21〜24は遮光性を有する部材からなり、各絞り羽根21〜24には、絞り駆動リング7の複数の係合穴とそれぞれ係合する複数の絞り羽根回転軸211,221,231,241(図3を参照)と、カム板4のカム溝41〜44とそれぞれ係合する複数の絞り羽根駆動軸212,222,232,242とが設けられている。
【0019】
AF駆動リング5は、カム板4に同軸上に回転可能に支持されている。AF駆動リング5は、カム板4のカム溝41〜44を貫通して突出する各絞り羽根21〜24の絞り羽根駆動軸212,222,232,242を光軸側から外側に押し出す径方向に延出するカム部51,52,53,54と、AF駆動モータ6のピニオンギア6aと噛み合うセクタギア部5aとを有する。AF駆動リング5は、AF駆動モータ6の正または逆回転により時計方向または反時計方向に回転する。また、カム部51〜54は、絞り羽根駆動軸212,222,232,242を時系列的に順次駆動するようなタイミングを生成すべく、それぞれ異なる位相を有する。AF駆動リング5およびAF駆動モータ6は、第1の駆動機構を構成する。
【0020】
絞り駆動リング7は、カム板4に同軸上に回転可能に支持されている。絞り駆動リング7は、各絞り羽根21〜24を公転させるための絞り羽根回転軸211,221,231,241と嵌合する係合穴と、絞り駆動モータ8のピニオンギアと噛み合うセクタギア部とを有する。絞り駆動リング7は、絞り駆動モータ8の正または逆回転により、時計方向または反時計方向に回転する。絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8は、第2の駆動機構を構成する。
【0021】
各戻しスプリング91〜94は、各絞り羽根21〜24の絞り羽根駆動軸212,222,232,242が折り返し位置に到達した時点で、各絞り羽根駆動軸212,222,232,242に対して各絞り羽根21〜24の閉じ方向へ付勢力を与えるためのものである。
【0022】
次に、本撮像装置の撮影動作について図4〜図10を参照しながら説明する。図4は図1の撮像装置の動作のタイミングチャート、図5は図1の絞り兼用分割撮像機構2の全開状態を示す図、図6は図1の絞り兼用分割撮像機構2の全閉状態を示す図、図7は図1の絞り兼用分割撮像機構2の左開口部の形成状態を示す図、図8は図1の絞り兼用分割撮像機構2の右開口部の形成状態を示す図、図9は図1の絞り兼用分割撮像機構2の上開口部の形成状態を示す図、図10は図1の絞り兼用分割撮像機構2の下開口部の形成状態を示す図である。ここで、本実施の形態の撮像装置は、撮像と焦点調節状態の検出(焦点はずれ量(デフォーカス量)の検出)とのそれぞれを撮像素子3の出力を用いて行うものである。
【0023】
例えば、撮像素子3より被写体側に被写体像が結像されているとき、射出瞳の右側を通る半光束は、撮像素子3上で左側にシフトし、射出瞳の左側を通る半光束は、右側にシフトする。すなわち、撮影光学系1の瞳の半分ずつを通過した光束で形成される一対の画像信号は、被写体像の結像状態に応じて左右方向に位相がシフトしたものとなる。この位相ずれ量を検出することによって、焦点はずれ量(デフォーカス量)とはずれの方向を算出することが可能であり、これにより、焦点調節状態の検出が行われる。
【0024】
まず、初期状態においては、光通過口が開放状態であり、シャッタ装置(図示せず)も開放状態である。これにより、撮像素子3には、被写体のフレーミングのために、モニタする画像が投影されている。このとき、図4に示すように、絞り駆動リング7が光軸を中心に時計方向に最大に回転した状態の位置が0(rad)の位置とされ、各絞り羽根21〜24は、光軸に対し、時計方向に最大に回転された状態にある。また、絞り羽根駆動軸212,222,232,242がカム溝41〜44に導かれて、各絞り羽根21〜24は、絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に時計方向に最大に回転(自転)された状態にある。これにより、図5に示すように、全ての絞り羽根21〜24がカム板4の開口部4aから退避し、開口部4aは全開された状態にある。すなわち、カム板4の光通過口は、円形の開口を形成し、絞り開放状態となる。
【0025】
ユーザの撮影開始動作によって絞り駆動リング7が初期状態の位置から反時計方向に回転すると、その回転角に伴い各絞り羽根駆動軸212,222,232,242がカム溝41〜44に導かれて絞り羽根21〜24は、光軸を中心に反時計方向へ回転(公転)しながら、各絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に反時計回り方向に回転(自転)して、絞り羽根21〜24の端部が徐々に開口部4aに進入する。これにより、光通過口の開口面積は、図5の開放状態に比して漸次小さくなり、撮像素子3に到達する光量が漸次減少する。そして、撮像素子3に到達する光量が所定量になると、その位置がセンサ手段(図示せず)により検出され、その検出された位置が絞り位置として記憶される。その後も、絞り駆動リング7は回転され、カム板4の光通過口は、最終的には、図6に示すような全閉された状態となる。
【0026】
このように、絞り駆動リング7の回転に応じて絞り羽根21〜24が自転と公転を行うことによって、カム板4の光通過口の開口面積が変化し、撮像素子3に到達する光量が調節される。
【0027】
この絞り駆動リング7がカム板4の光通過口を全閉状態にする位置(反時計回りに最大に回転した位置)に到達すると、図4に示すように、絞り駆動リング7は、この位置で停止された状態に保持される。この時点が焦点状態調節の検出開始タイミングである。この状態においては、絞り羽根21〜24の回転中心である絞り羽根回転軸211,221,231,241は、そのままの位置で停止し、絞り羽根駆動軸212,222,232,242は、カム溝41〜44のそれぞれの折り返し位置にある。この折り返し位置以降のカム軌跡は、絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心とする円弧であり、従って、各絞り羽根21〜24は、それぞれ単独で絞り羽根回転軸211,221,231,241を中心に回転することができる。そのため、戻しスプリング91〜94により、絞り羽根駆動軸212、222,232,242が閉じ状態を維持するように付勢される。よって、カム板4の光通過口(開口部4a)は、全閉状態に保持されることになる。
【0028】
この状態で、図4に示すように、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。そして、AF駆動モータ6によりAF駆動リング5は時計方向へ高速に回転駆動される。AF駆動リング5が所定の角度を回転すると、AF駆動リング5のカム51が絞り羽根21の絞り羽根駆動軸212を、戻しスプリング91の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図7に示すように、絞り羽根21が絞り羽根回転軸211を中心に反時計方向に高速に回転して、カム板4の光通過口として、一対の左右開口部のうちの左開口部が形成される。この左開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0029】
さらに続くAF駆動リング5の回転により、カム51が絞り羽根駆動軸212を通過すると、戻しスプリング91の付勢力により、絞り羽根21は閉じ方向へ移動され、高速に光通過口が全閉状態にされる。これにより、左像の撮像が完了する。また、同時にこの状態で再び、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。この間も、AF駆動リング5は時計方向に高速に回転を続けている。
【0030】
そして、図8に示すように、AF駆動リング5のカム53が絞り羽根23の絞り羽根駆動軸232を、戻しスプリング93の付勢力に抗して蹴り上げて絞り羽根23が絞り羽根回転軸231を中心に反時計方向に高速に回転して、カム板4の光通過口として、左右一対の開口部のうちの右開口部が形成される。この右開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0031】
AF駆動リング5の回転によりカム53が羽根駆動軸232を通過すると、戻しスプリング93の付勢力により絞り羽根23が閉じ方向へ移動され、光通過口(開口部4a)は、図6に示すような全閉状態となる。これにより、右像の撮像が完了する。
【0032】
このように、AF駆動リング5はAF駆動モータ6により高速に回転駆動されるので、位相差を比較する左右一対の像は、極力時間差が無い状態で取得されることになる。そして、取得された左像と右像に対して比較演算処理が施され、その位相差により被写体に対する焦点調節状態の検出が完了する。また、ここでの左右画像の撮像時間は、各カム51,53の形状により決定されるものである。
【0033】
さらに続けてAF駆動リング5が所定の角度を回転すると、AF駆動リング5のカム54が絞り羽根24の絞り羽根駆動軸242を、戻しスプリング94の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図9に示すように、絞り羽根24が絞り羽根回転軸241を中心に反時計方向へ高速に回転して、カム板4の光通過口として、上下一対の開口部のうちの上開口部が形成される。この上開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0034】
そして、AF駆動リング5の回転によりカム54が羽根駆動軸242を通過すると、戻しスプリングの付勢力により、絞り羽根24が閉じ方向へ移動され、高速に光通過口を図6に示す全閉状態とする。これにより上像の撮像が完了する。また、同時に、この状態で再び、図4に示すように、リセット信号に基づいて撮像素子3の画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。この間も、AF駆動リング5は時計方向に高速に回転を続けている。
【0035】
次いで、AF駆動リング5のカム52が絞り羽根22の絞り羽根駆動軸222を、戻しスプリング92の付勢力に抗して蹴り上げる。これにより、図10に示すように、絞り羽根22が絞り羽根回転軸221を中心に反時計方向に高速に回転し、カム板4の光通過口として、上下一対の開口部のうちの下開口部が形成される。この下開口部を通過した光束は、撮像素子3上に投影され、その画像信号が記憶される。
【0036】
AF駆動リング5の回転によりカム52が絞り羽根駆動軸222を通過すると、戻しスプリング92の付勢力により、絞り羽根22が閉じ方向へ移動され、光通過口(開口部4a)は、図6に示すような全閉状態となる。これにより、下像の撮像が完了する。
【0037】
ここで、位相差を比較する上下の一対の像は、左右の一対の像と同様に、極力時間差がない状態で取得されることになる。そして、上像と下像に対して比較演算処理が施され、その位相差により、被写体に対する焦点調節状態の検出が完了する。また、各上下像の撮像時間は、各カム51,53と同様、各カム52,54の形状により決定される。
【0038】
さらに、図4に示すように、AF駆動リング5は回転し続け、AFカム51,52,53,54は絞り羽根駆動軸212,222,232,242の回動範囲であるカム溝41,42,43,44の上部から退避して時計回りの最大回動位置に停止する。同時に、この状態で再び、リセット信号に基づいて撮像素子3による画像のノイズ防止のためのリセット動作が行われる。
【0039】
以上の動作により、撮像素子3には、それぞれ位相が異なる左右および上下の像の比較により、焦点はずれ量と焦点はずれ方向が検出されてクロス測距が行われる。そして、撮影レンズ1の焦点調節状態が判別される。
【0040】
次いで、実際の被写体撮影が行われる。まず、図4に示すように、絞り駆動リング7が時計方向に回転駆動され、各絞り羽根21〜24は一斉に開き方向に移動を開始する。そして、カム板4の光通過口が予め得られた光量調節情報に対応する開口面積に達した時点で、絞り駆動リング7は一旦停止し、撮像素子3に対し被写体撮影のための露光が行われる。露光時間が所定時間を経過すると、シャッタが閉鎖して被写体撮影が完了する。
【0041】
その後、再び絞り駆動リング7が時計方向へ回転されて初期位置へ復帰し、全ての絞り羽根21〜24は光通過口から退避して全開状態となる。次いで、AF駆動モータ6が逆転し、AF駆動リング5が時計方向へ回転駆動され、AF駆動リング5の初期位置へ復帰し、停止する。これにより、1回の撮影が完了する。そして、図5に示すように、再び撮像装置はモニタ状態となる。
【0042】
このように本実施の形態によれば、焦点状態検出時に、第1の駆動機構(AF駆動リング5およびAF駆動モータ6)により瞳分割のための開口部の形成(マスク形成)およびその遮光を行い、光量調節時に、第2の駆動機構(絞り駆動リング7および絞り駆動モータ8)により撮像素子3に到達する光量を調節する構成を採用したので、装置の大型化を招くことなく、焦点調節状態の検出の高速化を図ることができる。
【0043】
また、光量調節時においては、第2の駆動機構により、絞り羽根21〜24の全てを一斉に駆動するので、第2の駆動機構を、従来の光量調節用駆動機構と同等のカム板の回転角および駆動トルクを発生する機構とすることができ、モータの大型化や高性能化をする必要がない。
【0044】
また、左右の像を時系列に取得する際にその時間差を極力短くすることが可能となり、検出精度が向上する。また、クロス測距の際に左右の像の取得と上下の像の取得との間の時間差が極力短くされるので、高精度のクロス測距が可能となり、装置性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【図2】図1の絞り兼用分割撮像機構2の側面図である。
【図3】図1の絞り兼用分割撮像機構2の裏面図である。
【図4】図1の撮像装置の動作のタイミングチャートである。
【図5】図1の絞り兼用分割撮像機構2の全開状態を示す図である。
【図6】図1の絞り兼用分割撮像機構2の全閉状態を示す図である。
【図7】図1の絞り兼用分割撮像機構2の左開口部の形成状態を示す図である。
【図8】図1の絞り兼用分割撮像機構2の右開口部の形成状態を示す図である。
【図9】図1の絞り兼用分割撮像機構2の上開口部の形成状態を示す図である。
【図10】図1の絞り兼用分割撮像機構2の下開口部の形成状態を示す図である。
【図11】従来の撮像素子を用いて撮影光学系の焦点調節状態を検出する撮像装置の主要部構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 撮影レンズ
2 絞り兼用分割撮像機構
3 撮像素子
4 カム板
4a 開口部
5 AF駆動リング
6 AF駆動モータ
7 絞り駆動リング
8 絞り駆動モータ
21〜24 絞り羽根
51〜54 カム部
91〜94 戻しスプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子上に被写体像を結像させるための撮影光学系と、前記撮像光学系から前記撮像素子へ至る光路の開閉を行うための複数の遮光部材を開閉駆動する光量調節機構とを備え、前記撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて前記撮影光学系の焦点調節状態の検出を行うことが可能な撮像装置であって、
前記光量調節機構は、前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する際には、位相差がある複数の像にそれぞれ対応する開口を前記光路上に時系列に形成するように、前記複数の遮光部材のうち、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動する第1の駆動機構と、前記撮像素子から前記光路を介して前記撮像素子へ入射する光量を調節する際には、所定光量に対応する開口面積を有する開口を前記光路上に同軸上に形成するように、前記遮光部材の全てを同時に開閉駆動する第2の駆動機構とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記位相差がある複数の像は一対の像であり、該一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む左右方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
位相差がある複数の像は2組の一対の像であり、前記2組の一対の像のうち、一方の組の一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む左右方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であり、他方の組の一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む上下方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であり、
前記第1の駆動機構は、前記左右方向の対象位置の開口にそれぞれ対応する遮光部材を時系列に開閉駆動し、続いて前記上下方向の対象位置の開口にそれぞれ対応する遮光部材を時系列に開閉駆動することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の駆動機構は、複数のカムを有し、光軸周りに回転可能なリング部材と、前記複数の遮光部材をそれぞれ遮光状態になる方向へ付勢する付勢部材と、前記リング部材を光軸周りに回転駆動するリング部材駆動手段とを含み、
前記複数のカムは、前記リング部材が回転駆動されると、それぞれが対応する遮光部材に順に当接するように構成され、前記遮光部材のそれぞれは、対応するカムと当接されると、前記付勢部材の付勢力に抗しながら開放状態になる位置へ移動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の駆動機構は、前記開口の1つに対応する遮光部材の開閉駆動の終了から次の開口に対応する遮光部材の開閉駆動の開始までの間に、前記撮像素子に対する暗電流リセットが行われるように、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項1】
撮像素子上に被写体像を結像させるための撮影光学系と、前記撮像光学系から前記撮像素子へ至る光路の開閉を行うための複数の遮光部材を開閉駆動する光量調節機構とを備え、前記撮像素子により時系列に取得された位相差がある複数の像に基づいて前記撮影光学系の焦点調節状態の検出を行うことが可能な撮像装置であって、
前記光量調節機構は、前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する際には、位相差がある複数の像にそれぞれ対応する開口を前記光路上に時系列に形成するように、前記複数の遮光部材のうち、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動する第1の駆動機構と、前記撮像素子から前記光路を介して前記撮像素子へ入射する光量を調節する際には、所定光量に対応する開口面積を有する開口を前記光路上に同軸上に形成するように、前記遮光部材の全てを同時に開閉駆動する第2の駆動機構とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記位相差がある複数の像は一対の像であり、該一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む左右方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
位相差がある複数の像は2組の一対の像であり、前記2組の一対の像のうち、一方の組の一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む左右方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であり、他方の組の一対の像にそれぞれ対応する開口は、前記光路上の光軸を挟む上下方向の対称位置にそれぞれ形成される開口であり、
前記第1の駆動機構は、前記左右方向の対象位置の開口にそれぞれ対応する遮光部材を時系列に開閉駆動し、続いて前記上下方向の対象位置の開口にそれぞれ対応する遮光部材を時系列に開閉駆動することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の駆動機構は、複数のカムを有し、光軸周りに回転可能なリング部材と、前記複数の遮光部材をそれぞれ遮光状態になる方向へ付勢する付勢部材と、前記リング部材を光軸周りに回転駆動するリング部材駆動手段とを含み、
前記複数のカムは、前記リング部材が回転駆動されると、それぞれが対応する遮光部材に順に当接するように構成され、前記遮光部材のそれぞれは、対応するカムと当接されると、前記付勢部材の付勢力に抗しながら開放状態になる位置へ移動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の駆動機構は、前記開口の1つに対応する遮光部材の開閉駆動の終了から次の開口に対応する遮光部材の開閉駆動の開始までの間に、前記撮像素子に対する暗電流リセットが行われるように、前記開口のそれぞれに対応する遮光部材を時系列に開閉駆動することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−220946(P2006−220946A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34678(P2005−34678)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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