説明

撮像装置

【課題】近紫外および近赤外の波長域の光線が強い場合に、自動的に光学フィルタを撮像レンズの光路に挿入することで、その波長域の色滲みのみをなくし、被写体の持つ色合いを失うことなく良好な画像を得ることができる撮像装置の提供。
【解決手段】撮像レンズのズームポジションを検知する手段と、撮像レンズのフォーカス位置を検知する手段と、撮像レンズの絞り値を検知する手段と、被写体の色温度を検知する手段と、前記検知手段の出力に基づき撮像レンズによる画質を判定する手段と、前記判定手段の出力により結像レンズの光路中に光学フィルタを挿入する駆動手段と、を有することを特徴とする撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特に、そのの画質向上に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のデジタルカメラの結像光学系である。被写体601からの光線は撮像レンズ101、光学ローパスフィルタ602、赤外カットフィルタ603を通して、撮像素子604に結像する。被写体601の像は図7に示すように撮像素子の感度のある波長域の光線すべてにより形成される。
【特許文献1】特開平6−197260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、結像レンズは可視域のほとんどの部分について色収差を補正しているが、多くの場合、近紫外および近赤外の波長域では色収差が残存している。また、被写体からの光線は近紫外および近赤外の波長の光も一様に取り込まれるため、図7のようにこの波長域の光が強い場合には色収差による色の滲みが顕著に表れ、被写体が青または赤く滲むという、問題点があった。
【0004】
以上のことから、本発明は、近紫外および近赤外の波長域の光線を阻止することで、その波長域の色滲みをなくし、良好な画像を得ることができる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明の撮像装置においては、結像レンズのズームポジションとフォーカス位置と絞りの値より近紫外および近赤外で色の滲みが発生する結像レンズの状態を検出し、その検出した値と、別途設けられた色温度測定手段により検出された色温度から色滲みの発生を予測し、予測値があらかじめ設定された基準を超えた場合には光学フィルタを撮像装置の撮像光路中に自動で挿入する。
【0006】
即ち、以下の構成を備えるものである。
【0007】
撮像レンズのズームポジションを検知する手段と、撮像レンズのフォーカス位置を検知する手段と、撮像レンズの絞り値を検知する手段と、被写体の色温度を検知する手段と、前記検知手段の出力に基づき撮像レンズによる画質を判定する手段と、前記判定手段の出力により結像レンズの光路中に光学フィルタを挿入する駆動手段と、を有する撮像装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近紫外および近赤外の波長域の光線が強い場合に、自動的に光学フィルタを撮像レンズの光路に挿入することで、その波長域の色滲みのみをなくし、被写体の持つ色合いを失うことなく良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
図1に、本発明の構成図を示す。画像を撮像する撮像レンズ101、撮像レンズ101のズームポジション検知する手段102、撮像レンズ101のフォーカス位置を検知する手段103、撮像レンズ101の絞りの値を検知する手段104、および、これらの出力より色滲みが発生する状態か否かを判別する手段105を有する。これとは別に、被写体の色温度を測定する手段106を有する。撮像レンズ101の状態と、色温度情報から、色滲みの発生を判断し波長カットフィルタを撮像レンズの光路に挿入するか否かを判定する手段107を有し、波長カットフィルタ駆動装置108を用いて撮像光学系の光路中に波長カットフィルタ109を挿入する。なおこの波長カットフィルタ109は可視域部の阻止域の少ないもので画像の品質に対して影響の少ないものである。また、色温度を測定する手段106は、撮像素子を兼用してもよい。
【0011】
次に、本発明のフローを図2を用いて説明する。まず、撮像レンズのズームポジションおよびフォーカス位置および絞り値を検出する。撮像レンズによる色滲みの量は、ズームポジションおよびフォーカス位置および絞り値から計算できる。この計算結果からどの波長域の光線が滲むかが判断される。また、被写体の色温度結果より滲む波長域の光線の量を予測することができる。ここで、撮像レンズからの色滲み情報と被写体の色温度とを比較し色滲みが発生する条件が設定値以上であった場合には自動的に撮像レンズの光路中に光学フィルタを駆動装置を用いて挿入する。
【0012】
次に本発明の実施例を述べる。まず、撮像レンズのズームポジションおよびフォーカス位置および絞り値を検出する。この結果、短波長側の光線が色滲みを起こすと判断された場合には、このときの色温度を測定しその結果が一定値以上であった場合には紫外カットフィルタを光路に挿入する。また、長波長側の光線が色滲みを起こすと判断された場合には、このときの色温度を測定しその結果が一定値以下であった場合には赤外カットフィルタを光路に挿入する。
【0013】
具体的には、図6に示す色温度が高い場合には短波長側での色滲みがおき、光学フィルタがない場合の色滲みは図3に示すように波長400ナノメートルの光線まで滲むため全体の滲み量が大きく見える。そこで波長410ナノメートル以下の光線をカットするフィルタを光路中に挿入し図4のような分光特性にすることにより、画像全体の質を落とすことなく図5のように青色の滲みを低減することができる。長波長側での色滲みがおきた場合も同様であり、光学フィルタがない場合の色滲みは波長700ナノメートルの光線まで滲むため全体の滲み量が大きく見える。そこで波長680ナノメートル以上の光線をカットするフィルタを光路中に挿入することで、画像全体の質を落とすことなく赤色の滲みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の構成図
【図2】本発明の色滲み判別と光学フィルタ挿入の処理フロー
【図3】短波長域で色滲みを示す図
【図4】波長カットフィルタを用いたときの分光特性を示す図
【図5】波長カットフィルタを用いたときの色滲みを示す図
【図6】従来装置の構成図
【図7】撮像素子と被写体の分光特性を示す図
【符号の説明】
【0015】
101 撮像レンズ
102 撮像レンズのズームポジション検知する手段
103 撮像レンズのフォーカス位置を検知する手段
104 撮像レンズの絞りの値を検知する手段
105 色滲みの発生を判別する手段
106 被写体の色温度を測定する手段
107 波長カットフィルタの撮像レンズの光路への挿入を判定する手段
108 波長カットフィルタ駆動装置
109 波長カットフィルタ
601 被写体
602 光学ローパスフィルタ
603 赤外カットフィルタ
604 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズのズームポジションを検知する手段と、撮像レンズのフォーカス位置を検知する手段と、撮像レンズの絞り値を検知する手段と、被写体の色温度を検知する手段と、前記検知手段の出力に基づき撮像レンズによる画質を判定する手段と、前記判定手段の出力により結像レンズの光路中に光学フィルタを挿入する駆動手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置において、前記光学フィルタは波長400ナノメートル付近以下の光線をカットすることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1記載の撮像装置において、前記光学フィルタは波長700ナノメートル付近以上の光線をカットすることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1記載の撮像装置において、被写体の色温度を検知する手段と、撮像素子が同一であることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−134954(P2007−134954A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326023(P2005−326023)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】