説明

撮像装置

撮像装置100は、被写体の光学像を形成する結像光学系110と、光学像の所定領域の画像信号を出力する撮像デバイス120と、出力画像の領域を設定する領域設定部132と、撮像デバイス120内の読み出し制御部124の画素間引き読み出し規則を設定する読み出し規則設定部134と、撮像デバイス120から出力される画像データを帯域分離処理して第一成分の画像データと第二成分の画像データとを出力する帯域分離処理部152と、第一成分の画像データを少ないビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部154と、ビット深度変換された第一成分の画像データの歪みを補正する歪み補正部140と、歪み補正後の第一成分の画像データと帯域分離処理部152からの第二成分の画像データとを合成する合成処理部156とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル撮像装置に関し、特に、撮像装置が実装している撮像デバイスの画素数よりも小さい画素数の画像を高速に高画質で生成するデジタル撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの急速な普及によって、画像入力機器としてのデジタルカメラの需要が拡大している。また、動画の記録機器としてデジタルビデオなどの高画質記録装置が広く用いられている。
【0003】
電子スチルカメラの画質を決定する要素は幾つかあるが、その中でも撮像素子の画素数は撮影像の解像度を決定する大きな要素である。そのため、最近は500万画素以上の多くの画素数を持った電子スチルカメラも幾つか商品化されている。しかし、全ての用途において、500万画素のデータが必ずしも必要なわけではなく、逆にインターネットのWeb上に表示する画像は、むしろ画素サイズを小さくした方を使用する場合が多い。
【0004】
さらに、現状のデジタルカメラにおいては、撮像素子から、画像メモリーへのフラッシングの時間がネックになっており、画素数が大きい機種で、高速な連写撮影ができるものが少ない。また、デジタルカメラにおいても、付加機能として動画の撮影の要求があるため、やはり、メモリーへの転送は高速に行なわなければならず、予め扱うデータ量を少なくすることが好ましい。
【0005】
出力画像の画素数が、撮像素子の画素数に比べて少ない場合には、予め、使用する画素数を制限することによって、撮像素子からメモリーに転送されるデータ量を減らし、メモリー転送の速度を向上できる。
【0006】
一方、線形補間によるサイズ縮小では、全ての画素を使用して、大きいサイズの画像を作成し、線形補間によって異なるサイズの画像を作成する。
【0007】
このような、線形補間によるリサイズは、画質の面では良好であるが、縮小画像を生成する場合、全画素のデータを取り込んで線形補間を行なうために演算量が多く、上述した連写機能や動画撮影には適していない。
【0008】
さらに、動画像に対して、上記の線形補間による変倍を適応した場合、変倍率によって、読み出す画素数に変更があるため、1フレームの時間が一定であるような走査方法には不適である。
【0009】
メモリー読み出しのデータ量を減らす手法としては、撮像素子に積分機能を付けて、平均化した少数のデータを読み出し、縮小画像を生成する方法がある。特開2001−245141号公報は、この方法を利用した高速な画像の縮小方法を開示している。
【0010】
特開2001−016441号公報は、解像度の種類が限定されている場合に、データの間引きを行ない、さらにデータの歪みを補正する装置を開示している。同文献は、実施形態において、600dpiの解像度を持つ装置による400dpi相当のデータの作成を開示している。600dpiのデータをそのまま間引いたのではデータの歪みが生じるため、位置の歪みを補償する画素データを600dpiのデータから線形補間によって生成している。
【発明の開示】
【0011】
特開2001−245141号公報の方法は、20%程度以下の縮小率の縮小においては効果的であるが、(40%程度以上の)大きい縮小率の縮小においては積分による平均化だけでは読み出した画素位置による像の歪みを除くことはできない。従って、広い範囲の縮小倍率に対して、サイズ変更を行ないながら高画質な画像を形成することが難しい。
【0012】
本発明は、このような現状を鑑みて成されたものであり、その目的は、撮像素子からの画像データの読み出しに要する時間が短く、サイズ変更に対して歪みの少ない高精細な画像を形成し得る撮像装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、歪みの補償処理を行なうにあたって、データ量を低減することである。
【0013】
本発明は、被写体を撮像する撮像装置であり、被写体の光学像を形成する光学系と、光学像を光電変換する光電変換素子と、光電変換素子で取得された画像データを必要に応じて画素間引きして読み出す読み出し制御部とを備えている撮像デバイスと、出力画像の領域を設定する領域設定部と、領域設定部で設定された領域に応じて読み出し制御部の画素間引き読み出し規則を設定する読み出し規則設定部と、読み出し制御部によって光電変換素子から読み出される画像データ帯域分離処理して第一成分の画像データと第二成分の画像データとを出力する帯域分離処理部と、第一成分の画像データを帯域分離処理前よりも少ないビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部と、第一成分の画像データに対して画素間引き処理の歪みの補正処理を行なう歪み補正部と、歪み補正された第一成分の画像データと帯域分離処理部から出力される第二成分の画像データとに基づいて出力画像を形成する画像形成手段とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態の撮像装置の構成を示している。
【図2】図2は、図1に示された帯域分離処理部と合成処理部の詳しい構成を示している。
【図3】図3は、撮像デバイスから間引き読み出しによって得られた画像データを10→8ビットのKnee変換を行なったものを表示している。
【図4】図4は、図3に対して、式(1)に示したローパスフィルターを施した画像である。
【図5】図5は、図3と図4の差分の画像である。
【図6】図6は、図5に対して歪み補正処理を行ない、図4と加算したものである。
【図7】図7は、図5の輝度レベルのヒストグラムを示したものである。
【図8】図8は、水平方向・垂直方向共に8画素のうち2画素を間引きして読み出す例を示している。
【図9】図9は、図8に示された8画素から2画素を間引く読み出しにおいて、読み飛ばされる画素をその近くの画素で線形補間して埋めて8画素のデータとし、これを線形補間で6画素にする操作を模式的に示している。
【図10】図10は、図8に示された8画素から2画素を間引く読み出しにおいて、不均一な画素間隔でのサンプリングを均一なサンプリングに変換する処理を模式的に示している。
【図11】図11は、図10に示された歪み補正をパイプライン処理で行なう構成を示している。
【図12】図12は、本発明の第二実施形態の撮像装置の構成を示している。
【図13】図13は、6/8の間引き読み出しの繰り返しによる読み出しにおける、読み出し範囲の読み出し開始位置が光電変換素子の画素配列の左上の画素に合っているフレームの読み出し範囲を示している。
【図14】図14は、6/8の間引き読み出しの繰り返しによる読み出しにおける、読み出し範囲の読み出し開始位置が光電変換素子の画素配列の右下の画素に合っているフレームの読み出し範囲を示している。
【図15】図15は、図12に示された帯域分離処理部とフレーム間演算処理部の詳しい構成を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
第一実施形態
撮像素子から画像データの読み出し時間の短縮とサイズ変更による歪みの低減とを図るため、本発明者は、特願2002−349968号において、変倍率によらず1フレームでの走査画素数が一定になるように変倍率に応じて画素の間引き読み出しを行ない、さらに、間引き読み出しによる画像の歪みを補正するフィルター処理を行なう撮像装置を提案している。
【0017】
特開2001−016441号公報の装置もデータの間引きを行なっている。しかし、特開2001−016441号公報の間引きと特願2002−349968号の間引きは根本的に相違している。特願2002−349968号の撮像装置は、読み出し時間の制限のために、基本解像度のデータのすべてを読み出すことができないことに対応する間引き走査の新技術に向けられている。これに対して、特開2001−016441号公報の装置では、走査して得た600dpiのデータ(基本解像度のデータ)の全てを用いて補間し、400dpi相当のデータを作っている。このように、特願2002−349968号の撮像装置は特開2001−016441号公報の装置とは本質的に相違している。
【0018】
特願2002−349968号の間引き読み出し+歪み補正による変倍処理では、例えば、入力のA/D変換で10ビットデータに対してこのような歪み補正演算を行なう場合、パイプライン処理のレジスターと演算器は10ビット精度以上のものを必要とする。また、一般に行なわれるKnee変換処理では、10→8ビット程度のビット圧縮が可能である。従って、Knee変換処理を導入することによって、パイプライン処理のレジスターと演算器に要求されるビット精度は8ビット程度に軽減される。
【0019】
本発明は、特願2002−349968号の撮像装置に対するさらなる改良に向けられている。本発明の第一実施形態は、Knee変換処理後のデータのビット深度をさらに軽減し、歪み補正処理の演算の規模を低減させることに向けられている。
【0020】
図1は本発明の第一実施形態の撮像装置の構成を示している。図1に示されるように、撮像装置100は、被写体の光学像を形成する結像光学系110と、結像光学系110によって形成された光学像の所定の領域の画像信号を出力する撮像デバイス120とを備えている。撮像デバイス120は、結像光学系110によって形成された光学像を光電変換して画像データ(画素データの集合)を取得するエリア状の光電変換素子(撮像素子)122と、光電変換素子122で取得された画像データを必要に応じて画素間引きして読み出す読み出し制御部124とを備えている。
【0021】
撮像装置100はさらに、出力(表示)する画像の領域(すなわち前述した所定の領域)を設定する(すなわち表示する画像のサイズと位置を特定する)領域設定部132と、領域設定部132で設定された領域に応じて読み出し制御部124の画素間引き読み出し規則を設定する読み出し規則設定部134と、読み出し制御部124によって光電変換素子122から読み出される画像データをデジタル画像データに変換した後に帯域分離処理して第一成分の画像データと第二成分の画像データとを出力する帯域分離処理部152と、帯域分離処理部152から出力される第一成分の画像データを帯域分離処理前よりも少ないビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部154と、ビット深度変換処理部154から出力されるビット深度変換された第一成分の画像データの歪みを補正する歪み補正部140と、歪み補正部140から出力される歪み補正後の第一成分の画像データと帯域分離処理部152から出力される第二成分の画像データとを合成して出力画像を形成する合成処理部156とを備えている。
【0022】
読み出し制御部124は、読み出し規則設定部134で設定された画素間引き読み出し規則に基づいて、光電変換素子122内の画素配列中の対応する範囲の画素データを読み出す。その結果、撮像デバイス120は必要に応じて間引きされた画像データを出力する。
【0023】
帯域分離処理部152から出力される第一成分の画像データは、帯域分離処理前の画像データから低周波成分が除かれた画像データ、つまり高周波成分の画像データである。また、帯域分離処理部152から出力される第二成分の画像データは、帯域分離処理前の画像データから高周波成分が除かれた画像データ、つまり低周波成分の画像データである。
【0024】
歪み補正部140は、入力された画像データの歪み補正フィルター処理するフィルター処理部142と、読み出し規則設定部134で設定された画素間引き読み出し規則に応じてフィルター処理部142のフィルター処理に使用するフィルター係数を設定するフィルター係数設定部144とを備えている。
【0025】
フィルター係数設定部144は、複数のフィルター係数を含むルックアップテーブル(LUT)を記憶するLUT記憶部146と、LUT記憶部146に記憶されているルックアップテーブルからフィルター係数を選択するフィルター係数選択部148とを備えている。
【0026】
フィルター係数設定部144は、必ずしもLUT記憶部146とフィルター係数選択部148とを備えている必要はなく、読み出し規則設定部134が設定した画素間引き読み出し規則に応じた演算を行なってフィルター係数を算出してもよい。
【0027】
LUTを使用するフィルター係数設定部144は、LUTを記憶しておくために多くのメモリーを必要とするが、演算に掛かる負担が少なくて済む。一方、LUTを使用しないフィルター係数設定部144は、演算に掛かる負担は大きいが、多くのメモリーを必要としないで済む。
【0028】
撮像装置100はさらに、合成処理部156から出力される画像信号に対して、後段の信号処理(フルカラー化、ホワイトバランスなど)を行なう画像信号処理部158とを備えている。
【0029】
図2は、図1に示された帯域分離処理部152と合成処理部156の詳しい構成を示している。図2に示されるように、帯域分離処理部152は、入力される画像データをデジタル画像データに変換するA/D変換処理部180と、入力されるデジタル画像データのビット圧縮を行なうKnee変換処理部182と、入力される画像データから低周波成分を抽出するローパスフィルター184と、データの非負を補償するために所定のバイアスを加算する加算器186と、Knee変換処理部182から出力される画像データから加算器186から出力される画像データを減算する減算器188とを備えている。
【0030】
また、合成処理部156は、歪み補正部140から出力される画像データをビット深度変換処理部154によるビット深度変換前と同じビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部194と、ビット深度変換処理部194から出力される画像データから加算器186で加算されたバイアスを減算する減算器196と、減算器196から出力される画像データとローパスフィルター184から出力される画像データとを加算する加算器198とを備えている。
【0031】
前述したように、撮像デバイス120は、必要に応じて、光電変換素子122から画像データを間引きして読み出す。
【0032】
撮像デバイス120から間引きすることなく読み出された画像データは、帯域分子処理部152のA/D変換処理部180でA/D変換された後、図1の破線で示されるように、画像信号処理部164に直接入力される。
【0033】
間引き読み出しされた画像データは、A/D変換処理部180で例えば10ビットのデジタル画像データに変換される。A/D変換処理部180から出力される10ビットのデジタル画像データは、Knee変換処理部182で8ビットのデジタル画像データに変換される。
【0034】
Knee変換処理部182は二系統のデジタル画像データを出力し、一方のデジタル画像データはローパスフィルター184に入力され、他方のデジタル画像データは減算器188に入力される。
【0035】
ローパスフィルター184に入力されたデジタル画像データは、そこで高周波成分が取り除かれ、低周波成分だけのデジタル画像データに変換される。
【0036】
光電変換素子122がRGBのベイヤー配列のフィルターを持つ場合、ローパスフィルターには例えば式(1)に示す係数を持つ平均化処理フィルターが用いられる。
【数1】

【0037】
ローパスフィルター184の出力は二系統に分岐され、一方のデジタル画像データは加算器186に入力され、他方のデジタル画像データは合成処理部156内の加算器198に入力される。
【0038】
加算器186に入力されたデジタル画像データは、そこで所定のバイアスが加えられたデジタル画像データに変換される。
【0039】
減算器188に入力されたKnee変換処理部182からのデジタル画像データは、そこで、加算器186から出力されたデジタル画像データが減算処理される。その結果、減算器188から出力されるデジタル画像データは、高周波成分のだけのデジタル画像データになる。
【0040】
減算器188から出力される10ビットのデジタル画像データは、ビット深度変換処理部154で6ビットのデジタル画像データに変換される。ビット深度変換処理部154から出力されるデジタル画像データは、歪み補正部140で歪み補正されたデジタル画像データに変換される。歪み補正部140から出力される6ビットのデジタル画像データは、ビット深度変換処理部194で8ビットのデジタル画像データに変換される。
【0041】
ビット深度変換処理部194から出力されるデジタル画像データは、減算器196で、加算器186で加えられたバイアスが除かれたデジタル画像データに変換される。
【0042】
図2において、減算器188から出力されるデジタル画像データは、Knee変換処理部182から出力されるデジタル画像データに比べて階調が少ない。このため、ビット深度を減少させることができる。
【0043】
図3は、撮像デバイスから間引き読み出しによって得られた画像データを10→8ビットのKnee変換を行なったものを表示している。図4は、図3に対して、式(1)に示したローパスフィルターを施した画像である。図5は、図3と図4の差分の画像である。差分データは負の値もとるので、図5では差分データに128のバイアスを加えている。図6は、図5に対して歪み補正処理を行ない、図4と加算したものである。図から分かるように、図3においてみられた間引き読み出しによる画像の歪みが低減している。図7は、図5の輝度レベルのヒストグラムを示したものである。このヒストグラムの累積を計算すると、99%以上の画素が96〜160の64階調内で収まる。従って、ビット深度変換処理部154で8→6ビットに変更しても、画像の情報量の損失がほとんど無いことが分かる。図6は、図5に対して、6ビットで歪み補正を行ない、図4のデータとの合成を行なっている。
【0044】
これまで、間引き読み出しされた画像データの処理について述べたが、以下、間引き読み出しの歪み補正処理の詳細について説明する。図8は水平方向・垂直方向共に8画素のうち2画素を間引きして読み出す例を示している。図8のような読み出し方を行なうと画像に段差ができてしまう。そこで、図9に示されるように、読み飛ばされる画素(RとG)をその近くの同色の画素(RiとRiとGiとGi)でそれぞれ線形補間して埋めて8画素のデータとし、これを線形補間で6画素にする操作を考える。すなわち、図10に示されるように、不均一な画素間隔でのサンプリングを均一なサンプリングに変換する処理を行なう。ここで、間引きを伴う1ラインの読み出しについて考える。図8の左上を基準とすると読み出した画素位置は、Ri、Gi、Ri、Gi、Ri、Giとなり、以下同じ規則の繰り返しになる。この例における歪み補正(変換)の行列表現は
【数2】

【0045】
となる。
【0046】
歪み補正のパイプライン処理は、図11に示した構成によって行なわれる。シフトレジスター162は、クロックに従う一回の動作ごとに、保持している画像データを右方向にひとつシフトする。セレクター164は、s1の状態に従って、シフトレジスター162に保持されている隣接している五つの画素データのうちの一番目と三番目のいずれかを選択する。また、セレクター166は、s2の状態に従って、シフトレジスター162に保持されている隣接している五つの画素データのうちの三番目と五番目のいずれかを選択する。
【0047】
乗算器174は、セレクター164の出力d1に重み付け加算の係数k1を乗算し、乗算器176は、セレクター166の出力d2に重み付け加算の係数k2を乗算し、加算器178は、乗算器174の出力と乗算器176の出力とを加算する。
【0048】
表1は、図11に示したフィルター処理部のパイプライン処理の動作(状態遷移)を表している。
【表1】

【0049】
シフトレジスター162に供給される画素データ列(i0、i1、i2、…)は、c1=i0、c2=i1、c3=i2、…を初期状態として、クロックに従う一回の動作ごとに右方向にシフトしていく。これに伴い、セレクター164は、s1が1のときはc1を選択し(従ってd1=c1となり)、s1が0のときはc3を選択する(従ってd=c3となる)。一方、セレクター166は、s2が1のときはc3を選択し(従ってd2=c3となり)、s2が0のときはc5を選択する(従ってd2=c5となる)。また、クロックに同期してフィルター係数設定部144内のメモリーから係数k1が乗算器174に、係数k2が乗算器176に供給される。加算器178からはout=k1×d1+k2×d2が出力される。
【0050】
表1から分かるように、逐次データのシフト、s1とs2の状態に従ったセレクターの切り換え、式(1)に示した間引き規則に応じた重み付け加算の係数k1とk2の出力、重み付け加算演算を同期して行なうことによって、画素の位相操作(セレクター切り換え)を含めたパイプライン処理が行なわれる。
【0051】
本実施形態の撮像装置によれば、歪み補正部の演算器のビット深度を低減でき、これにより処理回路の規模を低減できる。Knee変換処理と併用することによって、具体的には、10→6ビット程度のビット深度の低減ができる。
【0052】
第二実施形態
前述したように、本発明は、特願2002−349968号の撮像装置に対するさらなる改良に向けられている。特に、本発明の第二実施形態は、第一実施形態と同じくKnee変換処理後のデータのビット深度の軽減と歪み補正処理の演算の規模の低減とに加えて、特にフレーム間演算処理を含む構成においてフレームメモリーの容量を低減することに向けられている。
【0053】
図12は本発明の第二実施形態の撮像装置の構成を示している。図12において、第一実施形態の撮像装置100の要素と同一の参照符号で指摘される要素は同等の要素であり、その詳しい説明は記載の重複を避けて続く記述においては省略する。
【0054】
本実施形態の撮像装置200は、被写体の光学像を形成する結像光学系110と、結像光学系110によって形成された光学像の所定の領域の画像信号を連続的に出力する撮像デバイス220とを備えている。つまり、撮像デバイス220から出力される画像信号は動画信号であり、これは時系列的に連続する複数のフレームの画像データで構成されている。
【0055】
撮像デバイス220は、結像光学系110によって形成された光学像を光電変換してデジタル画像データ(画素データの集合)を取得するエリア状の光電変換素子222と、光電変換素子222で取得された画像データを必要に応じて画素間引きして連続的に読み出す読み出し制御部224とを備えている。
【0056】
撮像装置200はさらに、出力する画像の領域を設定する領域設定部132と、読み出し制御部224の画素間引き読み出し規則を設定する読み出し規則設定部234と、読み出し制御部224が光電変換素子222から画像データを読み出すタイミングを決めるタイミングジェネレーター238と、連続する二つのフレームの間で読み出し規則を異ならせる読み出し規則変調部236と、帯域分離処理部152と、ビット深度変換処理部154と、歪み補正部140とを備えている。
【0057】
帯域分離処理部152とビット深度変換処理部154と歪み補正部140の詳細は第一実施形態で説明した通りである。
【0058】
読み出し規則変調部236は、読み出し制御部224が光電変換素子222から読み出す画像データの読み出し規則を、タイミングジェネレーター238と同期してフレームごとの読み出し規則を変調する。読み出し規則変調部236は、連続する二つのフレームに対して異なる読み出し規則を生成するが、読み出し画素の総数は変更しない。歪み補正部140のフィルター係数設定部144は、読み出し規則変調部236で生成された読み出し規則に従って、フィルター処理部142のフィルター処理に使用するフィルター係数を設定する。
【0059】
撮像装置200はさらに、画像範囲選択部272と274と276と、圧縮符号化処理部282と、フレームメモリー284と、複合化処理部286と、フレーム間演算処理部288と、画像信号処理部158とを備えている。
【0060】
ここで、フレームごとに間引き読み出しの規則を変更する方式と、歪み補正について説明する。
【0061】
本実施形態の撮像装置では、インターレース操作が二つのフィールド間で互いの欠落している画素データを補間するように、連続する二つのフレーム間で互いの欠落している画素データを補間する。例えば、読み出し規則変調部236は、連続する複数のフレームの画像データがそれら全体で欠落した画素データを持たないように、読み出し制御部224が読み出す画素データの範囲の基準位置をシフトさせる。シフト量は2〜8画素程度が好ましい。
【0062】
図13と図14は、6/8の間引き読み出しの繰り返しによる読み出しにおける読み出し範囲の基準位置のシフトの様子を模式的に示している。これらの図において、[x,y]は光電変換素子122の画素配列の画素位置、(x,y)は読み出し範囲の画素データ配列を表している。
【0063】
図13と図14に示されるように、光電変換素子122の画素数は水平方向にk画素、垂直方向にl画素である。従って、光電変換素子122の左上の画素の位置は[0,0]、右下の画素の位置は[k,l]と表せる。また、1フレームの読み出し範囲の画素数は水平方向にm画素、垂直方向にn画素である。従って、フレームの左上の読み出し開始位置は(0,0)、右下の読み出し終了位置は(m,n)と表せる。図14のフレームの読み出し範囲は、図13のフレームの読み出し範囲に対して、水平方向に+2画素、垂直方向に+2画素シフトしている。
【0064】
図13のフレームでは、左上の読み出し開始位置(0,0)は、光電変換素子122の左上の画素位置[0,0]に一致している。つまり、
【数3】

【0065】
である。また、読み出し終了位置(m,n)は、
【数4】

【0066】
である。一方、図14のフレームでは、左上の読み出し開始位置は、
【数5】

【0067】
である。また、読み出しの終了位置は、
【数6】

【0068】
である。
【0069】
画像範囲選択部272と274と276は、図13のフレームと図14のフレームに共通する範囲を選択する。すなわち、図13のフレームに対しては、(2,2)と(m,n)を対角の頂点とする矩形の範囲を選択し、図14のフレームに対しては、(0,0)から(m−2,n−2)を対角の頂点とする矩形の範囲を選択する。画像範囲選択部272と274と276で選択された範囲は、常に(m−2)×(n−2)個の画素データを含んでいる。
【0070】
また、予めクロップする領域を考慮すると、光電変換素子122から読み出す画像の総数は出力の画像サイズと位相シフト分を考慮する必要がある。画像範囲選択部272と274と276は、読み出し開始位置の情報に基づいて、クロップの範囲を変更する。
【0071】
画像範囲選択部272と274は、歪み補正された第一成分の画像データに対して範囲選択を行ない、画像範囲選択部276は、第二成分の画像データに対して範囲選択を行なう。
【0072】
フレームメモリー284はFIFO(First In First Out)のメモリーである。圧縮符号化処理部282は、フレームメモリー284に保持するデータ量を減らす圧縮処理を行ない、複合化処理部286は、フレームメモリー284から読み出した圧縮されているデータの展開処理を行なう。
【0073】
フレーム間演算処理部288は、画像範囲選択部272からフレームメモリー284を経由して入力される第一フレームの第一成分の画像データと、画像範囲選択部274から入力される第一フレームに続く第二フレームの第一成分の画像データとの合成画像データを形成する。
【0074】
第一成分の合成画像データout(i,j)は、
【数7】

【0075】
である。ここで、i,jは画素位置を表し、I(k,i,j)はk番目のフレームの画素位置i,jの画像信号の強度である。
【0076】
本実施形態は、隣接する2フレーム間の合成に向けられているが、フレームメモリー284を巡回型の複数のフレームメモリーに変更することによって、3以上の複数のフレーム間で合成を行なってもよい。
【0077】
例えば、3フレームの場合、第一成分の合成画像データout(i,j)は、加重配分を用いて、
【数8】

【0078】
である。
【0079】
さらに、フレーム間演算処理部288は、第一成分の合成画像データと、画像範囲選択部276から入力される第二フレームの第二成分の画像データとを演算処理して出力画像を生成する。フレーム間補間を行なうことによって、歪み補正の効果に加えて、ローパスによるアンチエイリアシングとモアレ低減の効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態では、水平方向・垂直方向ともに間引き読み出しを行ない、一次元の歪み補正を水平・垂直ともにパイプライン処理で行なう例を示している。CCDの場合は、垂直転送→水平転送の動作を行なう撮像素子では、原理上水平方向に間引いて読み出すことができないので、水平方向については全画素を読み出して一次補間によるサイズ変更を行なう必要がある。垂直方向については前述したように間引き読み出し+歪み補正を行なえばよい。
【0081】
図12に示される本実施形態の撮像装置200おいても、図1に示される第一実施形態の撮像装置100と同様に、歪み補正部140による歪み補正処理に先立って、帯域分離処理部152による帯域分離処理とビット深度変換処理部154によるビット深度変換処理とが行なわれる。歪み補正処理された第一成分の画像データはフレームメモリー284に保持され、複数のフレーム間の演算処理がフレーム間演算処理部288で行なわれる。
【0082】
図15は、図12に示された帯域分離処理部152とフレーム間演算処理部288の詳しい構成を示している。図15では、図12に示されている画像範囲設定部は省略されている。帯域分離処理部152の構成は、図2と同様である。
【0083】
図15に示されるように、フレーム間演算処理部288は、歪み補正部140から出力される画像データと複合化処理部286から出力される画像データとを平均化して加算する加算部292と、加算部292から出力される画像データをビット深度変換処理部154によるビット深度変換前と同じビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部294と、ビット深度変換処理部294から出力される画像データから帯域分離処理部152内の加算器186で加算されたバイアスを減算する減算器296と、減算器296から出力される画像データと帯域分離処理部152内のローパスフィルター184から出力される画像データとを加算する加算器298とを備えている。
【0084】
歪み補正処理された第一フレームの第一成分の画像データは、圧縮符号化処理部282で圧縮符号化される。図7に示した差分データの出現頻度は、P(128)>P(129)≒P(127)>P(130)≒P(−126)>P(131)≒P(125)となる。
【0085】
値が128から離れるにつれて頻度が減少する。そこで、頻度の多い画像データに対してはより少ない符合量を与えるハフマン符号化を用いることによって差分の画像データの全体を表すための符号量が減少する。このような符号化処理を行なうとフレームメモリー284に保持されるデータ量は元のデータ量に対して減少するため、フレームメモリー284の規模を縮小することができる。このように第一フレームの歪み補正後の第一成分の画像データをフレームメモリー284に保持しておき、次に第二フレームの第一成分の画像データに対して歪み補正処理を行なう。
【0086】
複合化処理部286から出力される第一フレームの歪み補正された第一成分の画像データと歪み補正部140から出力される第二フレームの歪み補正処理された第一成分の画像データは加算部292で平均化処理される。加算部292から出力される平均化処理された第一成分の画像データはビット深度変換処理部294で8ビットのビット深度の第一成分の画像データに復元される。ビット深度変換処理部294から出力される画像データは減算器296で帯域分離処理部152内の加算器186で加算されたバイアスが取り除かれる。減算器296から出力される第一成分の画像データは、加算器298で第二フレームの歪み補正処理されていない第二成分の画像データと加算処理される。
【0087】
本実施形態の撮像装置によれば、歪み補正部140の演算器とフレームメモリー284のビット深度を低減することができ、これにより処理回路の規模を低減できる。Knee変換処理と併用することによって、具体的には、10→6ビット程度のビット深度の低減ができる。
【0088】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、高速に画像を取得し、高速の変倍処理を行なう撮像装置において、変倍処理における処理回路の規模が低減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像装置であり、
被写体の光学像を形成する光学系と、
光学像を光電変換する光電変換素子と、光電変換素子で取得された画像データを必要に応じて画素間引きして読み出す読み出し制御部とを備えている撮像デバイスと、
出力画像の領域を設定する領域設定部と、
領域設定部で設定された領域に応じて読み出し制御部の画素間引き読み出し規則を設定する読み出し規則設定部と、
読み出し制御部によって光電変換素子から読み出される画像データ帯域分離処理して第一成分の画像データと第二成分の画像データとを出力する帯域分離処理部と、
第一成分の画像データを帯域分離処理前よりも少ないビット深度の画像データに変換するビット深度変換処理部と、
第一成分の画像データに対して画素間引き処理の歪みの補正処理を行なう歪み補正部と、
歪み補正された第一成分の画像データと帯域分離処理部から出力される第二成分の画像データとに基づいて出力画像を形成する画像形成手段とを備えている、撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、第一成分の画像データは高周波成分の画像データであり、第二成分の画像データは低周波成分の画像データである、撮像装置。
【請求項3】
請求項1において、歪み補正部は、第一成分の画像データに対してフィルター処理を行なうフィルター処理部と、フィルター処理部で使用するフィルター係数を設定するフィルター係数設定部とを備えており、フィルター係数設定部は、少なくとも一つのフィルター係数を含むルックアップテーブルを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されているルックアップテーブルからフィルター係数を選択するフィルター係数選択部とを備えている、撮像装置。
【請求項4】
請求項3において、フィルター係数のルックアップテーブルは読み出し規則に応じて設定されている、撮像装置。
【請求項5】
請求項1において、歪み補正部は、第一成分の画像データに対してフィルター処理を行なうフィルター処理部と、フィルター処理部で使用するフィルター係数を設定するフィルター係数設定部とを備えており、フィルター係数設定部は、読み出し規則設定部が設定した画素間引き読み出し規則に応じた演算を行なってフィルター係数を算出する、撮像装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかひとつにおいて、画像形成手段は、歪み補正部から出力される歪み補正後の第一成分の画像データと帯域分離処理部から出力される第二成分の画像データとを合成して出力画像を形成する合成処理部を備えている、撮像装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかひとつにおいて、光電変換素子から出力される画像信号は、時系列的に連続する複数のフレームの画像データで構成される動画信号であり、連続する二つのフレームの間で読み出し規則を異ならせる読み出し規則変調部をさらに備え、歪み補正部はそれぞれのフレームの読み出し規則に応じた歪み補正を行なう、撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、画像形成手段は、第一フレームの歪み補正後の第一成分の画像データを一時的に保持するフレームメモリーと、フレームメモリーに一時的に保持された第一フレームの歪み補正後の第一成分の画像データと、第一フレームに続く第二フレームの歪み補正後の第一成分の画像データとを演算処理して第一成分の合成画像データを得るとともに、得られた第一成分の合成画像データを帯域分離処理部から出力される第二成分の画像データと演算処理して出力画像を形成するフレーム間演算処理部を備えている、撮像装置。
【請求項9】
請求項8において、画像形成手段は、第一フレームの歪み補正処理後の第一成分の画像データを階調レベルの出現頻度に応じて圧縮符号化処理してフレームメモリーに保持されるデータ量を減らす圧縮符号化処理演算部と、フレームメモリーから読み出された圧縮符号化された画像データを復号化する復号化処理演算部とをさらに備えている、撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【国際公開番号】WO2005/064924
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516612(P2005−516612)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019248
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】