説明

撮影装置、撮影制御装置、撮影システム、および撮影装置の制御方法

【課題】 撮影待機中に定期的に初期化駆動を実行する撮影部を有する撮影装置において、撮影直前のセンサ駆動を簡略化しつつセンサに蓄積するノイズを除去する。
【解決手段】 初期化駆動の終了から撮影指示信号を受け取るまでの時間に応じて初期化駆動を実行してから撮影するか、初期化駆動を実行せずに撮影するかを駆動判定部403が判定する。前回の準備駆動から撮影指示信号受け付けまでが一定時間以上なら初期化駆動制御部404は新たに初期化駆動を開始して撮影を行い、一定時間未満なら新たに初期化駆動を開始せずに撮影を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置、撮影制御装置、撮影システム、および撮影装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年従来のフィルム撮影装置に代わり、固体撮像素子を有するX線検出器を用いX線を電気信号に変換するデジタル撮影装置(FPD:Flat Panel Detector)が普及してきている。デジタル撮影装置によればX線画像を容易にデジタル情報として扱えるため、画像処理、情報共有、管理、費用などの点で従来のフィルムに比べて大きなメリットがある。
【0003】
ここで、かかる撮影装置により撮影された画像には光電変換回路や読み出し回路で生成されるオフセットが重畳する。オフセットの要因にはいくつかあり、光電変換素子のダーク電流、スイッチ素子のリーク電流、読み出し回路のアンプのオフセット電圧等がある。かかるオフセットは撮影装置を撮影待機状態としておくと時間経過とともに徐々に蓄積されていく。特許文献1には、画像に重畳するオフセットを減らすため、撮影前に蓄積したオフセットをX線検出器から読み出す初期化駆動を定期的に実行する技術が開示されている。また撮影指示に応じて初期化駆動を再度実行した後にX線撮影を行う技術が開示されている。
【0004】
図8は従来のX線撮影装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。TC101は外部からX線撮影装置に入力される撮影指示信号を、TC102はX線撮影装置から出力される撮影許可信号を、TC103は撮影許可信号に応じて行われるX線照射のタイミングを示している。またTC104はX線検出器の駆動状態を、TC105はX線検出器から画像が得られるタイミングを、TC106はオフセット補正された画像が得られるタイミングをそれぞれ示している。
【0005】
TC104に示すように、X線検出器は撮影待機時には一定周期T1で初期化駆動Rを繰り返す。ここで初期化駆動Rの完了後に撮影指示信号を受けると、撮影前初期化駆動Rを実施した後、X線照射許可が出力され、X線が照射される。X線照射が終了した後、X線検出器は画像信号の読み出し駆動Dを開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−335446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、初期化駆動Rの完了後十分短い時間の間に撮影指示信号が入力された場合、再び初期化駆動Rを実行することは不要である。制御の簡略化の観点から、不要な駆動はできるだけ減らすべきである。一方で、初期化駆動Rが完了後にはオフセットが徐々に蓄積されるため、所定量以上のオフセットが重畳した場合にはこれを除去する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明の一態様による撮影装置は、撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置であって、撮影手段と、蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させる制御手段と、撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了からの経過時間に応じて、撮影許可信号を出力する前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御を簡略化しつつ画像に重畳するノイズを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例によるX線撮影装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】X線検出器の二次元センサ構成の一例を示す概略図である。
【図3】第1の実施例の撮影処理において撮影前初期化駆動を実施する場合の処理を示すタイミングチャートである。
【図4】第1の実施例の撮影処理において撮影前初期化駆動を実施しない場合の処理を示すタイミングチャートである。
【図5】第1の実施例における撮影処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施例における撮影処理の概略を示すタイミングチャートである。
【図7】第2の実施例における撮影処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図8】従来の形態における撮影の流れの概略を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を以下の実施例に分け、それぞれ図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に基づき本発明の実施例1に係る放射線撮影システムの構成について説明する。なお、本実施例ではX線撮影装置を例に挙げて説明するが、X線以外の他の放射線についても本発明の適用は可能である。
【0013】
実施例1に係る放射線撮影システムはX線発生部10と、X線検出器(撮影部)20と、照射スイッチ30と、制御部40と、操作入力部50と、表示部60を有する。制御部40とX線検出器(撮影部)20により撮影装置1が構成されている。
【0014】
制御部40は、X線検出器の駆動および撮影を制御する撮影制御部401と、オフセット補正等の信号処理を行う補正部406と、取得画像を記憶する記憶部408とを有する。また撮影制御部401はさらに、画像信号の読み出し制御を行う撮影駆動制御部402と、初期化駆動の実行是非を判定するための駆動判定部403と、撮影部の初期化駆動を制御する初期化駆動制御部404と、撮影許可信号を出力する出力部405を有する。補正部406はX線検出器(撮影部)20が放射線を受光して得たX線撮影画像データについて、非受光状態で得られたオフセット画像データに基づいてオフセット補正を行うオフセット補正部407を有している。記憶部408はX線撮影画像用メモリ409、オフセット画像用メモリ410を有している。
【0015】
X線発生部10は、被写体に対してX線を発生することができるものであり、X線管球と、X線管球に対してX線発生の制御を行うための制御部を有する。
X線検出器20は、例えば、TFTおよび光電変換素子を1つの画素として二次元アレイ状に配置されており、この場合、各画素上には例えば蛍光体が設けられて形成される。この場合、X線検出器20に入射したX線は蛍光体で可視光に変換され、変換された可視光が各画素の光電変換素子に入射することで各光電変換素子において電荷が生成される。なお蛍光体を設けずに入射したX線を直接電荷に変換する、いわゆる直接変換型の変換素子を構成する形態であってもよい。また、既に背景技術で説明したように、X線検出器20は、各変換素子の電荷の蓄積と電荷の読み出しを交互に繰り返して、X線画像およびオフセット画像を撮影することができるものである。
【0016】
照射スイッチ30は、撮影の開始を指示する操作を受け付ける操作部であり、ユーザに押下されることに応じて撮影指示信号が出力される。制御部40はこの撮影指示信号を受信する。この点で制御部40は受信部として機能する。これに応じて制御部40から撮影許可信号が出力され、X線発生部10からX線を発生される。ここで撮影指示信号は、X線を照射する許可を要求するための信号であるが、必ずしも明示的な撮影指示や許可要求を意味する情報を含む信号でなくてもよく、制御部40はシステムの各部位がかかる信号に応じて撮影準備を開始するためのトリガーとなる信号である。また、撮影許可信号は、制御部40がX線検出器(撮影部)20の撮影準備が整ったことを報知する信号であるが、明示的な撮影の許可を意味する情報を含む信号である必要はなく、X線の照射を開始するためのトリガーとなる信号である。
【0017】
制御部40は撮影装置1の全体の制御を行う。撮影前には制御部40の初期化駆動制御部404はX線検出器20を制御し、初期化駆動を実行させる。この初期化駆動とは、X線検出器20の光電変換素子2000が飽和状態となることを防ぐため、非受光状態で回路内に時間経過と共に蓄積する電気信号(オフセットノイズ)を読み出す駆動である。これにより回路内のオフセットノイズを除去する。X線検出器20はこの初期化駆動を所定間隔で繰り返すことで電荷の初期化を定期的に行う。
【0018】
一方撮影時には制御部40はX線検出器20を電荷が蓄積する状態とし、X線検出器20はこの状態下でX線発生部10が発生させるX線を受光する。その後、制御部40はX線検出器20を制御して画像信号の読み出し駆動を行わせる。かかる一連の撮影制御によって、X線画像が得られる。またオフセット画像撮影時は、X線発生部10がX線を発生させていない状態でX線検出器20が電荷の蓄積を行い、その後、制御部40はX線検出器20から電荷の読み出しを行うことにより、オフセット画像を取得する。
【0019】
なお本実施形態の説明では、X線検出器20を受光として得られる電気信号を特に画像信号と呼び、オフセットデータを示す電気信号と区別する。
【0020】
操作入力部50は、操作者がX線撮影装置に対して患者情報や撮影条件の設定を行う際に操作するものである。操作入力部50は制御部40とのデータ送受信の制御を行い、例えばコンピュータ等に組み込まれたソフトを操作することにより制御部40とのデータ送受信を制御して、撮影部位や撮影条件等を設定する。
【0021】
表示部60は、制御部40および操作入力部50から送信された画像データに基づいて、X線検出器20から読み出された電荷に基づくX線画像や、操作入力部50により操作される操作UI等を表示するものである。表示部60はオフセット補正がされた放射線画像を制御部40の制御に応じて表示させる。
【0022】
図2はX線検出器(撮影部)20の構成の一例を示している。X線検出器20は二次元センサ200と、ドライブ回路201と、サンプルホールド回路202と、マルチプレクサ203と、アンプ204と、A/D変換器205と、電源206を有する。また二次元センサ200は、光電変換素子2000とTFT2001とを有する画素が行列状に配置されている。また二次元センサ200はTFT2001のオンオフを制御するゲート線2003と、画素信号を読み出す信号線2004とを有する。任意の行上の画素は、ドライブ回路201により同時にアドレシングされ、行上の各画素の電荷はサンプルホールド回路202に保持される。その後、保持された画素出力の電荷はマルチプレクサ203を介して順次読出され、アンプ204により増幅された後、A/D変換器205によりデジタル値に変換される。各行の読出しが終了する毎に、ドライブ回路201が順次画素アレイ上の次の各行をドライブして読出しを行い、最終的に全ての画素出力の電荷がデジタル値に変換される。これらの検出部の駆動、読出し動作等の制御は、制御部40の撮影制御部401により行われる。
【0023】
デジタル値に変換された画像データは、X線検出器20がX線を受光することで得られたX線画像データの場合は図1におけるX線撮影画像用メモリ409に格納され、非受光状態で得られたオフセット画像データの場合はオフセット画像用メモリ410に格納される。その後、オフセット補正部407により画像のオフセット補正処理が行われる。
【0024】
なお、オフセット画像は例えばX線撮影の直後に取得し、オフセット補正を行うが、オフセット画像はX線撮影直前に取得しても良いし、オフセット成分の変動が少なければ、予め用意した1枚のオフセット画像を何度もオフセット補正処理に用いても良い。
【0025】
図3および図4のタイミングチャートに基づき、上述の構成を有する撮影システムの処理を説明する。図3のTC201は制御部40における撮影指示信号の受信のタイミング、TC202は制御部40からの撮影許可信号の出力のタイミング、TC203はX線照射のタイミングをそれぞれ示す。また、TC204はX線検出器20の駆動状態を、TC205はX線検出器20での画像の取得タイミングを、TC206は制御部40におけるオフセット補正後の画像の取得タイミングをそれぞれ示す。図4のTC301乃至306は図3のTC301乃至306とそれぞれ同じ信号等のタイミングを示すタイミングチャートである。図3は初期化駆動終了後、所定時間TTが経過する前に撮影指示があった場合の処理を示し、図4は所定時間TTが経過後に撮影指示があった場合の処理を示している。
【0026】
ユーザが照射スイッチ30を押してから実際にX線が照射されるまでのX線照射ディレイ時間を短くするため、所定時間TTが経過する前に撮影指示があったと駆動判定部403が判定した場合、撮影指示信号を受信した後の初期化駆動が不要と判定する。この場合制御部40は図3に示す制御を行い出力部405は直ちに撮影許可信号をX線発生部に対して出力する。これにより、X線照射ディレイを短くすることができる。一方で所定時間TTが経過する前に撮影指示があったと駆動判定部403が判定した場合、初期化駆動が必要と判定する。この場合制御部40は図4に示す制御を行い、撮影指示に応じて初期化駆動を行い、その後出力部405は撮影許可信号を出力する。これにより、画像に重畳するオフセットノイズを除去し、X線画像の画質を向上させることができる。
【0027】
撮影処理の詳細を説明する。図3に示すとおり、制御部40は撮影待機状態になると、暗電流などによりX線検出器に蓄積される電荷を初期化するため、初期化駆動制御部404により所定の初期化駆動間隔T1で定期的に初期化駆動R1を実施する(TC204)。
【0028】
初期化駆動R1は初期化駆動制御部404からX線検出器の各画素から電気信号を読み出す指示が出力され、全ての画素に対して電気信号を読み出す指示が終了した時点で、初期化駆動が終了したとする。なお初期化駆動の終了タイミングはこれに限らず、画像生成に用いる画素が全画素のうち一部の画素である間引き駆動や部分駆動を行う場合には、当該画像生成に用いる画素について電気信号の読み出し指示が完了した時点で初期化駆動が終了したとしてもよい。また、X線検出器20で電気信号の排出が終了したと判定した時点で制御部40に対して初期化駆動の終了を通知することとしてもよい。
【0029】
駆動画素を照射スイッチが操作されX線照射要求がオンになると、前回の初期化駆動R1終了からの経過時間T2を検出し、撮影前に新たに初期化駆動を実施するかどうかを駆動判定部403により判定する。初期化駆動が必要と判定した場合、制御部40は初期化駆動制御部404により初期化駆動R2を実行する。出力部405は初期化駆動R2の完了後に撮影許可信号をX線発生部10に通知し、X線が照射されるように制御する。
【0030】
ここで初期化駆動R1とR2は同一の駆動であってよく、その場合には撮影部の駆動制御を簡略化することができる。また別の例として、初期化駆動R2について初期化駆動R1よりもTFT2001のON時間を短くし、初期化駆動R2をR1よりも短い時間で行うことにより、撮影指示信号が出力されてから撮影が開始するまでのディレイ時間を短縮することができる。
【0031】
また、制御部40はX線の照射に同期して、X線検出器20から、被写体を透過したX線に基づく電荷を読み出してX線画像を取得し、補正部406でオフセット補正処理を含む画像処理を実行した後、当該X線画像を表示部60に表示させる。
【0032】
また、駆動判定部403が先述の経過時間T2が時間TTより小さいとして初期化駆動が不要と判定した場合、撮影指示信号の受信後直ちに撮影許可信号をX線発生部10に通知する。図4に示すとおり初期化駆動制御部404は画像信号の読み出しが終了するまで新たな初期化駆動を開始させない。
【0033】
またここで、駆動判定部403はあくまで時間T1とTTとの比較および大小判定を行い、判定結果に応じて初期化駆動制御部404および撮影制御部401がその後の駆動を決定して制御することとしてもよい。
【0034】
次に図5に従い、上述のタイミングチャートの制御を実現するための、撮影システムの制御手順の一例を説明する。
撮影待機状態の制御部40において、初期化駆動制御部404は予め定められた間隔T1で初期化駆動を開始させる(ステップST101)。次に、撮影制御部401は照射スイッチ30が押下されることにより照射スイッチ30から出力される撮影指示信号を受信したかどうかを監視する(ステップST102)。
【0035】
初期化駆動の最中にX線照射要求信号を受けた場合(ステップST102でYes)、撮影制御部401は実行中の初期化駆動の終了を待って(ステップST110)、出力部405は直ちにX線発生部に対して撮影許可信号の出力を開始する(ステップST111)。ステップST111の処理に応じて撮影許可信号は継続的に出力され続ける。これに応じて、X線発生部10はX線を発生させる(ステップST112)。
【0036】
このように、照射スイッチ30が初期化駆動の実行中に押下された場合、実行中の初期化駆動を終了後直ちに撮影許可信号が出力され、撮影が開始される。そのため照射スイッチ30を押下してから撮影が開始されるまでの間のディレイを短縮することができる。
【0037】
X線発生部10が予め定められた時間X線を発生させた後、X線照射が終了したこと示す信号が制御部40に入力され、これに応じて撮影許可信号の出力が停止する(ステップST113)。その後、撮影駆動制御部402はX線検出器20からX線の受光に応じて得られた画像信号を読み出す読み出し駆動を実行させる。
【0038】
また、ステップST102で撮影制御部401が撮影指示信号を受信していないと判定した場合(ステップST102でNo)、撮影制御部401は初期化駆動が完了したか否かを判定する(ステップST103)。初期化駆動が終了していない場合には(ステップST103でNo)ステップST102に戻り、再び撮影指示信号を受信したか、初期化駆動が終了したか、否かの判定を行う。初期化駆動が終了した場合には(ステップST103でNo)、撮影制御部401は初期化駆動完了からX線照射要求信号を受けるまでの時間を測定するタイマの値TMを0に初期化し、スタートさせる。撮影制御部401のタイマはこのスタート指示に応じてカウントを開始する(ステップST104)。
【0039】
撮影制御部401は値TMが初期化駆動間隔T1以上になるまでに、X線照射要求信号を受けるかどうかを監視する(ステップST105、ステップST106)。なおここでTM=T1の場合にはステップST107へと進むこととなるが、これに限らずTM=T1の場合にはステップST101に戻ることとしてもよい。
【0040】
ステップST106において、撮影指示信号を受けないままタイマTMが初期化駆動間隔T1以上になった場合、ステップST101に処理を戻し、再度初期化駆動制御部404の制御の下X線検出器20が初期化駆動を開始する。
【0041】
初期化駆動の終了後であって、次の初期化駆動が開始前に撮影指示信号を受けた場合(ステップST105でYes)、タイマの値TMを参照して前回の初期化駆動の完了から撮影指示信号を受けるまでの時間T2を取得する(ステップST107)。ここで、前回の初期化駆動とは、撮影指示を受けた時点での、最後に実行が終了している初期化駆動を指す。
【0042】
その後、駆動判定部403は時間T2を所定の初期化駆動判定時間TTと比較する(ステップST108)。駆動判定部403がT2はTT未満であると判定した場合(ステップST108でYes)、前回の初期化駆動からの経過時間が短いため新たな初期化駆動は不要と判定し、出力部405は直ちに撮影許可信号をX線発生部へと出力する(ステップST111)。一方、T2がTT以上と判定された場合(ステップST108でNo)、前回の初期化駆動からの経過時間が長いため撮影前に新たな初期化駆動が必要と判定する。この場合初期化駆動制御部404はX線検出器20に初期化駆動を実行させ、この初期化駆動の終了後に出力部405は撮影許可信号をX線発生部に出力する(ステップST111)。
【0043】
このように、撮影指示を受けたタイミングで前回の初期化駆動の終了時点からの時間が短い場合には、撮影前に再度の初期化が不要と判定し、直ちに撮影許可信号を出力する。これにより不要な初期化駆動をなくして制御を簡略化しつつ、撮影指示から撮影開始までのディレイ時間を短縮することができる。また、前回の初期化駆動の終了時点からの時間が短い場合には、撮影指示の受信後直ちに初期化駆動を開始し、当該初期化駆動が終了したのち撮影を開始することで画像に重畳するオフセットノイズを減らし画質を向上させることができる。
【実施例2】
【0044】
先述の実施例では、撮影指示を受けたタイミングで前回の初期化駆動の終了からの経過時間が閾値より短い場合には新たに初期化駆動を実行することなく直ちに撮影許可信号を出力して撮影が開始される。これに対して本実施例では、当該経過時間が閾値より短い場合に、当該撮影指示を受けたタイミングから初期化駆動に要する時間だけ待機した後、撮影許可信号を出力する。装置の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0045】
図6のタイミングチャートに従い、本実施例の制御部40により実現される撮影処理の概要を説明する。なお、実施例1で説明した図3、図4のタイムチャートと同様の部分については説明を省略する。TC401乃至TC406は、それぞれ図3のTC201乃至TC206と同様の信号等のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0046】
図6は、初期化駆動R1の終了後時間T2(<TT)の経過後に制御部40が撮影指示信号を受信した場合を示している。T2が初期化駆動判定時間TTより小さいと判定された場合に、X線検出器20は時間T3だけ待機し(TC404)、撮影許可信号を送信する(TC402)。ここで時間T3は初期化駆動R1を開始してから終了するまでの時間である。仮にここでT2がTT以上である場合には、初期化駆動R1を実行した後撮影許可信号が送信されるため、時間T2によらず、撮影指示を受けてから撮影許可信号を出力するまでの時間がT3で一定となる。これにより撮影指示のタイミングによらず照射スイッチ30の押下から撮影開始までの時間を一定とすることができる。
【0047】
その後、X線照射が行われ、X線検出器20は画像信号の読み出し駆動D1を行うことでX線撮影画像を得る。その後、X線検出器20は初期化駆動R2を行い、非受光状態で所定時間の間待機状態となったのち読み出し駆動D2を行うことで、オフセット画像を得ることができる。ここで、待機状態とする時間は撮影直前の初期化駆動R1が終了してから、読み出し駆動D1を行うまでの時間とする。このようにX線撮影画像を撮影する前の待機時間と、オフセット画像を得る前の待機時間とが同じとすることで撮影部に蓄積するオフセットノイズの量をそろえ、補正によりオフセットを適切に除去することができる。
【0048】
図7のフローチャートに従い、上述のタイミングチャートの制御を実現するための処理手順を説明する。なお、実施例1で説明した図5のフローチャートと同様の処理については説明を省略する。ステップST201乃至ST209ならびにST211乃至ST214はステップST101乃至ST109ならびにST111乃至ST114と同様であるため説明を省略する。
【0049】
初期化駆動の最中に撮影制御部401が撮影指示信号を受けた場合(ステップST202でYes)、初期化駆動制御部404は実行中の初期化駆動を継続させつつ、撮影制御部401は初期化駆動に必要な時間T3だけ待機する(ステップST210)。待機後は初期化駆動が終了した状態となっている。時間T3だけ待機した後、出力部405は撮影許可信号を出力する。ST111によりX線照射許可信号をX線発生部に通知する。これによりST112においてX線発生部からX線が照射された後、ST113においてX線照射許可信号をOFFにし、ST114においてX線撮影画像を取得する。
【0050】
かかる制御を行うことにより、撮影前の駆動を簡略化することができ、また撮影部の駆動回数を減らして劣化を遅らせることができる。また、制御部40が撮影指示信号を受信してから撮影許可信号を出力するまでの時間が、撮影指示のタイミングによらず一定となるため、ユーザが照射スイッチ30を押下してから撮影が開始されるまでのタイミングが一定にすることができる。これにより撮影システムの利便性を向上させることができる。
【0051】
また本実施例の制御は別の観点でも利点を有している。撮影部の特性や状態によっては、初期化駆動を短い間隔で初期化駆動を繰り返し実施した後にX線撮影を行う場合、センサの安定度が低下し、不要なノイズが混入する課題があることが確認されている。具体的には初期化駆動の実行間隔が狭まる場合に、当該短い間隔で行われた初期化駆動の終了後に画像に重畳するオフセットの画素値が大きくなり、オフセットノイズが適切に補正できない場合がある。
【0052】
かかる場合は、例えばMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の光電変換素子を用いた撮影部において存在する。MIS型の撮影部では、初期化駆動として、光電変換素子2000に印加する電圧を変化させ蓄積電荷を排出させるリフレッシュ駆動と、画像信号の読み出し駆動と同様の駆動であって、画像信号の読み出し駆動よりもTFT2001のON時間を短くした空読み駆動とを1度ずつ行う。
【0053】
かかる特性または状態において、本実施例の制御を行うことにより、ユーザからのX線照射要求信号を受けるタイミングによらず、前回初期化駆動の完了から撮影前の初期化駆動開始の間隔を初期化駆動判定時間TT以上確保することができる。これにより、定期的な初期化駆動と撮影前の初期化駆動の間隔が近づくことで発生する画像ノイズを避けることができ、かつユーザが照射スイッチを押してからX線を発生するまでの時間を一定化できる。
【0054】
(その他の実施例)
上述の実施例において、時間T2の計測開始時点は初期化駆動の終了時点としたが、必ずしもこれに限らず、初期化駆動が終了してからごく短い時間が経過した後であってもよい。X線検出器20に蓄積するオフセットノイズが許容値を超えるか超えないかを判定するための値であり、時間T2の計測時間の開始時点、終了時点、閾値TTの時間の長さについてこの趣旨を逸脱しない範囲で自由に設定することができる。
【0055】
また初期化駆動判定時間TTは特定の条件により切り替えを可能としても良い。例えば、TTを0に設定すると、ステップST105における撮影指示信号の受け付け後、必ず新たに初期化駆動を実施する。特定の条件とは、例えばX線検出器20の起動から所定時間の経過、起動からの時間に応じてセンサの特性が変わる場合には、制御部40が起動からの時間経過に応じてTTを大きくするように設定することとすれば、ノイズを抑制することができる。もしくは操作入力部から必ず初期化駆動を実施する旨の指示を受信した場合には、撮影指示信号の受信後必ず初期化駆動を実施することとしてもよい。
【0056】
また上述の実施例では前記初期化駆動間隔T1は一定の時間として示しているが、特定の条件によってT1の間隔を切り替えることができる。例えば、撮影装置1の起動後、所定時間以内はT1を小さな値とし、起動後所定時間以上経過すれば、T1を大きな値に切り替える。これにより、撮影装置1の起動直後でX線検出器20の挙動が安定しない場合にはT1を小さな値として初期化駆動R1を小まめに実行することで、X線検出器20の挙動を安定させることができる。また別の例では、X線照射と読み出し駆動が終了した後、所定時間以内はT1を小さな値とし、撮影後所定時間以上経過した場合、T1を大きな値に切り替える。これにより、撮影により検出器に蓄積するノイズ電荷を早期に除去することができる。
【0057】
また上述の処理において、信号伝送路上での信号遅延を考慮し、撮影制御部401は時間T3よりもごく小さい時間だけ前に撮影許可信号を出力してもよい。かかる時間T3の待機処理はユーザの利便性を考慮した処理であり、ユーザが不愉快に感じない程度において時間T3の大きさを変更することは可能である。
【0058】
その他の実施例としては、実施例1と実施例2の制御とを適応的に切り替えることができる。例えば、ユーザからの入力に応じて、初期化駆動時間T3だけ待機した後に撮影許可信号を出力するか、待機せずに出力するかを切り替えることとする。これにより撮影のディレイ時間の短縮を優先するか、撮影指示から撮影開始までのタイミングが一定となることを優先するかを状況に応じて切り替えることができる。また、ユーザの入力ではなく、撮影条件等から自動的に判断して切り替えることもできる。例えば、被写体の動きが少なく、撮影指示から撮影開始までのタイミングが問題にならない撮影の場合には、撮影のサイクルタイムを優先して時間T3の待機処理を行わないこととする。また、アンギオグラフィ撮影等で被写体が動く場合には、撮影指示から撮影開始までのタイミングを一定とする制御を採用することとする。このように状況に応じて制御を切り替えることで、ディレイを短縮させつつ撮影指示から撮影開始までのタイミングを一定とすることができる。
【0059】
また別の例としては、実施例1または実施例2の処理を部分的に用いることも可能である。例えば実施例2にで、非初期化駆動時で撮影指示を受け(図7のステップST205でYes)、前回の初期化駆動のタイミングからの時間TTが経過していない場合(ステップST207)には、時間T3の経過を待たずに撮影許可信号を照射する。例えばT3の半分の時間だけ経過した時点で撮影許可信号を照射することとしてもよい。一方で初期化駆動中に撮影指示を受けた場合には(ステップST202でYes)、実施例2と同様に初期化駆動時間T3だけ待機した後(ステップST210)出力部405が撮影許可信号の出力を開始する(ステップST211)。これにより、照射スイッチ30が押下後直ちに撮影が開始されることはなくラグを設け、一方で撮影開始までの待機時間を減らしてオフセットノイズの量を適切に抑えることができる。ディレイ時間は変動することとなるが、ディレイ時間の変動がユーザにとって不安定と感じないほど小さい場合であれば、ディレイ時間を変動させても利便性が低下することはない。加えてオフセットノイズの量を適切に抑えることで画質を向上させることができる。
【0060】
上述の撮影システムの各機能ブロックは回路として実装されているものとしたが、これによらず一部の制御をコンピュータプログラムとハードウェアとの共同により実現することとしてもよい。回路のまとまりは機能ブロック単位に限定されることはなく、機能の一部のみを回路として実装することとしてもよい。この場合、図5または図7の一部または全部の制御を実行するためのプログラムが記憶部に格納され、不図示のCPUによってRAMに展開され、CPUにより実行させることで本発明が実現される。またこの場合、複数のCPUで分散させて本発明を実現することとしてもよい。コンピュータ上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、OSの処理と上述のプログラムによる処理によって上述の機能が実現される場合も当該プログラムは本発明の範囲に含まれる。またソフトウェアであるプログラムまたはプログラムコードを記録した記録媒体もまた本発明を構成する。
【0061】
また、制御部40は例えば検出器とともに電子カセッテ内に配置されていても、かかる電子カセッテをコントロールするためのPCの1機能であってもよい。また制御部40を複数の装置で構成されている制御システムとすることも可能である。例えば、制御部40の一部の機能が電子カセッテ内の回路で行われ、一部がPCのソフトウェアにより実現されることとしてもよい。この場合、撮影装置1は複数の装置で構成される撮影システムとなる。また、制御部40を単体の撮影制御装置としてもよい。
【0062】
上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な撮影装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 撮影装置
20 X線検出器
30 照射スイッチ
40 制御部
401 撮影制御部
402 撮影駆動制御部
403 駆動判定部
404 初期化駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置であって、
撮影手段と、
蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させる制御手段と、
撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了からの経過時間に応じて、撮影許可信号を出力する前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記初期化駆動を開始させると判定された場合には前記新たな初期化駆動の終了に応じて撮影許可信号を出力し、前記新たな初期化駆動を開始させないと判定された場合には前記撮影手段に新たな初期化駆動を開始させずに前記撮影許可信号を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記初期化駆動を開始させないと判定された場合には、前記撮影指示を受けてから前記撮影手段の初期化駆動に要する時間が経過することに応じて前記撮影許可信号を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記初期化駆動を開始させないと判定された場合には直ちに前記撮影許可信号を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記判定手段が前記前回の初期化駆動の終了時点からの経過時間が閾値より小さいと判定された場合、前記制御手段は画像信号の読み出しが終了するまで新たな初期化駆動を開始させない
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記閾値を前記撮影手段が起動してからの時間に応じて設定する設定手段と、を有することを特徴とする請求項5に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記撮影手段は、前記撮影許可信号に応じて照射された放射線を受光して電気信号を蓄積させ、
前記撮影手段は、前記電気信号を読み出す駆動を前記撮影手段に実行させる
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記撮影手段が実行する前記初期化駆動は、非受光状態の前記撮影手段に蓄積する画像の生成に用いない電気信号を読み出す駆動であることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項9】
撮影を指示する操作を受け付ける操作部からの信号を受信する受信手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記撮影手段は、受光に応じて蓄積した電気信号を読み出した後、前記前回の初期化駆動が終了した時点から該受光に応じて蓄積した電気信号の読み出しを開始した時点までの間の時間、前記撮影手段を非受光状態として電気信号を蓄積させ、該非受光状態で蓄積した電気信号を読み出しオフセット画像として記憶部に記憶させる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項11】
撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置であって、
撮影手段と、
蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させる制御手段と、
撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了時点からの経過時間が閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、
撮影許可信号の出力前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項12】
撮影手段を制御し、撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影制御装置であって、
蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させる制御手段と、
撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了時点からの経過時間に応じて、撮影許可信号の出力前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする撮影制御装置。
【請求項13】
撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置であって、
撮影手段と、
蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させる制御手段と、
撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了時点からの経過時間に応じて、撮影許可信号の出力前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする撮影システム。
【請求項14】
撮影指示に応じて撮影許可信号を出力する撮影装置の制御方法であって、
蓄積した電気信号を読み出す初期化駆動を前記撮影手段に繰り返し実行させるステップと、
撮影指示を受けた時点での、前回の初期化駆動の終了時点からの経過時間に応じて、撮影許可信号の出力前に初期化駆動を新たに開始させるか否かを判定するステップと、
を有することを特徴とする撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178698(P2012−178698A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40324(P2011−40324)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】