説明

撮影装置

【課題】撮影者の撮影意図通りに映像を撮影することができる撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影するカメラ001と、カメラ001で撮影された撮影可能範囲の映像を記憶しているフレームバッファ004と、被写体の動きを検出する動きセンサ013と、動きセンサ013により検出された被写体の動きに応じて、撮影可能範囲内で、撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる信号処理部003と、視認可能範囲の映像の表示部008への表示を行なう表示制御部007と、視認可能範囲の映像の記録メディア006への記録を行なうエンコーダ005とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影する撮影装置に関し、特に、撮影可能範囲内の任意の範囲を記録または表示する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なデジタル機器の急速な普及によって、映像をデジタル記録できるデジタルビデオカメラが、広く一般に普及してきた。
【0003】
デジタル形式で記録されたコンテンツは、自機器だけでなく、半導体メモリまたは光ディスクなどの記録メディアを経由して、デジタルテレビ、デジタルプレーヤ、レコーダまたはパーソナルコンピュータなどの他の機器との連携動作が必要であり、高い親和性が求められる。高い親和性を得ることにより、コンテンツの様々な利用形態が民生用途を中心に広がりを見せている。
【0004】
カメラによる撮像は、カメラの位置(左右水平方向、上下垂直方向、前後水平方向)、カメラの方向(パンニング、チルティング)、カメラの角度(横向き、縦向き、斜めの回転方向)、およびカメラの画角のカメラワーク(ズーミング)によって行われる。
【0005】
以上のカメラワークを撮影者が自由に使い分けることで、様々な映像を表現することができるが、同時に、カメラワークの自由度が高いために、撮影者はカメラワークを撮影意図どおりに制御できず、撮影意図と、実際の撮影画像との間に不一致がおこる場合がある。
【0006】
たとえば、家庭用ムービーによる撮影では、急速なパン(チルト)が一般的に起こる。このため、撮影時に使用する小さな液晶、ビューファインダーでは判別しにくいが、大画面テレビなどで映像を見た際に非常に見苦しい映像であるということが日常的におこる。
【0007】
そこで、2つの撮像手段(例えば、通常カメラ部と広角カメラ部)を有し、撮影者が視認可能な範囲の映像と、当該視認可能な範囲を含む当該範囲よりも大きい範囲の映像とを同時に記録することができるビデオカメラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−189728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法は、記録時に、撮影範囲全体を記録メディアに記録する方法であって、後に編集が可能であるが、撮影可能範囲を可動できるものではなく、撮影しながら撮影画像を確認できない。このため、撮影者が撮影意図通りに撮影することが困難であるという課題がある。
【0010】
また、視認可能な範囲を含む当該範囲よりも大きい範囲の映像を記録したコンテンツには、視認可能な範囲を示すパラメータが、映像と同時に記録されているものであり、いわば独自のフォーマットである。また、上記パラメータを利用してコンテンツの再生が行なわれるため、再生装置もこのようなパラメータを利用してコンテンツの再生を行う再生装置でなければならない。このため、コンテンツの利用環境が極めて限定的となる。
【0011】
さらに、視認可能な範囲を含む当該範囲よりも大きい範囲の映像を録画する際に大容量の記録メディアが必要となるが、このようなフォーマットで記録された映像を再生できる機器が限られており、一般の機器との互換性が無い。このため、半導体メモリまたは光ディスクなどの記録メディアを経由してデジタルテレビ、デジタルプレーヤ、レコーダ、またはパーソナルコンピュータなど他の機器で再生できるコンテンツとして映像を保存しなければならない。このように、映像を最終的に互換性のあるコンテンツとして編集して保存することが必要であるにも関わらず、大容量の記録メディアが必要となり、記録メディアのコストがかかるという課題がある。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、撮影者の撮影意図通りに映像を撮影することができる撮影装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、映像のコンテンツの記録のために大容量の記録メディアを必要とせずに、一般的な再生装置で再生が可能なコンテンツを生成することができる撮影装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面に係る撮影装置は、撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された前記撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリと、前記被写体の動きを検出する被写体動き検出手段と、前記被写体動き検出手段により検出された前記被写体の動きに応じて、前記撮影可能範囲内で、前記撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と、前記視認可能範囲の映像の表示手段への表示または記録メディアへの記録を行なう表示・記録手段とを備える。
【0015】
この構成によると、被写体の動きに応じて視認可能範囲を移動させることができる。このため、被写体が急に動いた場合であっても、被写体の撮り損ねを防ぐことができ、撮影者の撮影意図通りに映像を撮影することができる。また、記録メディアに記録される映像は、視認可能範囲内のものに限定され、一般的なフォーマットでの記録が可能である。このため、映像のコンテンツの記録のために大容量の記録メディアを必要とせずに、一般的な再生装置で再生が可能なコンテンツを生成することができる。
【0016】
本発明の他の局面に係る撮影装置は、撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された前記撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリと、前記撮影装置の動きを検出する撮影装置動き検出手段と、前記撮影装置動き検出手段により検出された前記撮影装置の動きに応じて、前記撮影可能範囲内で、前記撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と、前記視認可能範囲の映像の表示手段への表示または記録メディアへの記録を行なう表示・記録手段とを備える。
【0017】
この構成によると、撮影装置の動きに応じて視認可能範囲を移動させることができる。このため、急速なカメラワークが生じた場合に急速にフレーミングが行なわれることを抑制することができ、撮影者の撮影意図通りに映像を撮影することができる。また、記録メディアに記録される映像は、視認可能範囲内のものに限定され、一般的なフォーマットでの記録が可能である。このため、映像のコンテンツの記録のために大容量の記録メディアを必要とせずに、一般的な再生装置で再生が可能なコンテンツを生成することができる。
【0018】
なお、本発明は、このような特徴的な処理部を備える撮影装置として実現することができるだけでなく、撮影装置に含まれる特徴的な処理部をステップとする撮影方法として実現することができる。また、撮影方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、撮影者の撮影意図通りに映像を撮影することができる撮影装置を提供することができる。
【0020】
また、映像のコンテンツの記録のために大容量の記録メディアを必要とせずに、一般的な再生装置で再生が可能なコンテンツを生成することができる撮影装置を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1および2に係る撮影装置の外観を示す図
【図2】本発明の実施の形態1および2に係るカメラシステムの主要な構成要素を示す図
【図3】本発明の実施の形態1に係るフレームバッファの状態を模式化した概念図
【図4】本発明の実施の形態2に係るフレームバッファの状態を模式化した概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態に係る撮影装置は、撮影者が視認できる範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、被写体の動きを検出する被写体動き検出手段と、当該撮影装置の動きを検出する撮影装置動き検出手段と、前記被写体動き検出手段によって前記被写体の動き、および前記撮影装置動き検出手段によって当該撮影装置の動きのうちの少なくとも一方が検出された場合、これに応じて、被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲内で撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を適正に算出して移動させる視認可能範囲移動手段とを備える。
【0023】
さらに、前記視認可能範囲移動手段は、前記被写体動き検出手段によって前記被写体の動き、および前記撮影装置動き検出手段によって当該撮影装置の動きのいずれもが検出されなかった場合、もしくは、動きを検出しても撮影者が設定した動きの許容範囲を満たすことで、動きが検出されなかったとみなす場合、現在の視認可能範囲を保持することを特徴とする。
【0024】
具体的には、第1に、撮影装置が動いた場合には、撮影意図に適さないフレーミングが発生しやすいと想定して、視認可能範囲移動手段は、加速度センサまたは角速度センサなどからの情報を用いて、撮影装置の動きの加速度が大きい場合は、視認可能範囲を慣性力の働く方向に作用するように選択し、急激なパン(チルト)等のカメラワークによる映像の急激な変化の抑制と、被写体の撮りこぼしを防ぐ。例えば、撮影者が、撮影装置を静止状態から左にパンさせた場合には、左向きの加速度が発生するため、慣性力の方向は加速度の向きとは逆の右向きとなる。このため、前記視認可能範囲移動手段は、視認可能範囲を右方向に移動させる。
【0025】
第2に、被写体が動いた場合には、上記の撮影装置が動いた場合と同様に、撮影意図に適さないフレーミングが発生しやすいと想定して、視認可能範囲移動手段は、前記被写体動き検出手段からの情報を用いて、撮影可能範囲内を視認可能範囲の移動の許容範囲として、視認可能範囲を被写体が動いた方向に移動させる。これにより、被写体が視認範囲から外れることを抑制し、被写体の取りこぼしを防ぐ。
【0026】
第3に、被写体と撮影装置がともに静止している場合には、撮影意図どおりにフレーミングを制御しやすいと想定して、視認可能範囲移動手段は、撮影者によって選択されている現在の視認可能範囲を撮影意図のフレーム領域と判断する。この視認可能範囲内の映像が記録メディアに保存されることとなる。
【0027】
なお、被写体および撮影装置の少なくとも一方が動いた場合でもその動きが大きくない場合を想定して、撮影者ごとに、静止している状態とみなすことのできる境界値を設定してもよい。
【0028】
これによって、撮影意図に応じたフレーミングを設定し、撮影者に撮影意図どおりの映像を表示することができる。
【0029】
また、被写体または撮影者が動いた場合であっても、被写体の撮りこぼしを最小限に抑えることができる。
【0030】
また、前記視認可能範囲移動手段は、前記撮影装置動き検出手段によって検出された当該撮影装置の動きから規則性を検出し、検出した前記規則性に基づいて、フレーミングを予測するように、前記撮影可能範囲内で前記視認可能範囲の領域を移動させてもよい。これによって、撮影装置の動きに加え、視認可能な、すなわち記録可能な領域が前記撮影可能範囲内で撮影装置の移動方向に移動するので、より短い時間で被写体を捉えることができ、被写体の撮りこぼしを最小限に抑えることができる。
【0031】
また、前記視認可能範囲移動手段は、前記被写体動き検出手段によって検出された前記被写体の動きが所定の変化量以上である場合、前記被写体の動きが検出された領域へ前記撮影可能範囲の中の前記視認可能な、すなわち記録可能な領域を移動させてもよい。これによって、例えば突然動きを早めた人物や、突然動きを止めた人物などにフレーム領域をすばやく移動することができるので、例えば監視カメラなどで、自動的に重要な領域を詳細に撮影することができる。
【0032】
また、前記視認可能範囲移動手段は、前記被写体動き検出手段によって検出された前記被写体の動きが所定の変化量以上である場合、前記撮影可能範囲の中の前記視認可能な、すなわち記録可能な領域を移動させずに、前記撮影可能範囲の中で前記被写体の動きが検出されたという情報を利用してもよい。これによって、例えば自動車のドライブレコーダや、バックモニタなどで、運転者が自動車の制御に必要な移動方向の映像を記録または表示すると同時に、周囲に突然動きを早めた人物や、危険物などの可能性を察知し、運転者へ警告することができる。このため、周囲の安全に関わる重要な情報を認識させることができる。
【0033】
なお、本発明は、このような撮影装置として実現することができるだけでなく、このような撮影装置が備える特徴的な手段をステップとする撮影方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。
そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。
【0034】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、被写体あるいはビデオカメラの動き検出に応じて撮影可能範囲の中の視認可能な、すなわち記録可能な領域を移動させ、急激なパン(チルト)等のカメラワークによる映像の急激な変化の抑制と、被写体が画角から外れる撮りこぼしの可能性を最小限に抑える撮影装置について説明する。
【0036】
図1は、実施の形態1に係る撮影装置の外観を示す図である。
【0037】
図2および図3を参照して、実施の形態1に係る撮影装置および撮影方法の一例を説明する。図2は、実施の形態1に係るカメラシステムの主要な構成要素を示す図である。図3は、図2のフレームバッファの状態を模式化した概念図である。
【0038】
図2に示すように、本実施の形態に係る撮影装置は、カメラ001と、コントローラ002と、信号処理部003と、フレームバッファ004と、エンコーダ005と、記録メディア006と、表示制御部007と、表示部008とを備える。
【0039】
カメラ001は、被写体の映像を撮影し、画像信号を信号処理部003に出力する。カメラ001は、被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段として機能する。
【0040】
フレームバッファ004は、カメラ001で撮影された撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリである。
【0041】
信号処理部003は、カメラ001より出力された画像信号に所定の信号処理を施し、信号処理後の画像信号009をフレームバッファ004に書込む。信号処理部003は、後述する動きセンサ013により検出された被写体の動きに応じて、撮影可能範囲内で、撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段として機能する。また、信号処理部003は、動きセンサ013により検出された前記撮影装置の動きに応じて、撮影可能範囲内で、撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と機能する。
【0042】
エンコーダ005は、フレームバッファ004に記憶されている画像信号のうち、視認可能範囲内の画像信号を記録メディア006に記録可能なフォーマットのデータに変換し、そのデータを記録メディア006に書込む。例えば、記録可能なフォーマットとして、H.264またはMPEG(Moving Picture Experts Group)2フォーマットが挙げられる。
【0043】
エンコーダ005の処理と並行して、表示制御部007は、フレームバッファ004に記憶されている画像信号のうち、視認可能範囲内の現在撮影している映像の画像信号を表示部008に表示させる。
【0044】
動きセンサ013は、撮影装置のパン、チルトなどのカメラワークによる動きを検出する。具体的には、動きセンサ013は、手振れ補正用ジャイロセンサ、落下検出用の加速度センサ、または角速度センサなどを用いて撮影装置の動きを検出する。また、動きセンサ013は、さらに、被写体の動きを検出する。被写体の動きは、カメラ001で撮像された映像内の被写体の特徴点の動きを追跡することにより求められる。動きの検出結果は、制御信号011としてコントローラ002に出力される。
【0045】
コントローラ002は、動きセンサ013より撮影装置の動きまたは被写体の動きを取得し、取得した動きに基づいて、フレームバッファ004における画像信号の配置を決定する。画像信号の配置を示す情報は、制御信号010として信号処理部003に伝えられる。
【0046】
次に、フレームバッファ004について、図3を参照して説明する。図3(a)に示すようにフレームバッファ004の領域には、視認可能範囲(記録または表示する範囲)203よりも大きな範囲の撮影可能範囲202を配置しており、信号処理部003で処理された画像信号009は、撮影可能範囲202に配置される(記憶される)。撮影可能範囲202内に配置された視認可能(記録、表示)範囲203の画像信号が、エンコーダ005および表示制御部007で処理され、記録メディア006に記録されると共に表示部008に表示される。さらに、カメラワークによる動きの情報または被写体の動き情報を用いて、図3(b)に示すように、コントローラ002が視認可能(記録、表示)範囲203を撮影可能範囲202内で移動させることによって、急速なカメラワークや、被写体の急な動きによって、被写体の撮り損ねや、急速なフレーミングを抑制する。
【0047】
具体的には、撮影装置のパンまたはチルトにより撮影装置のカメラワークが変化した場合には、撮影装置の動きに対して慣性力の働く方向に、視認可能(記録、表示)範囲203を移動させる。例えば、撮影者が、撮影装置を静止状態から左にパンさせた場合には、左向きの加速度が発生するため、慣性力の方向は加速度の向きとは逆の右向きとなる。このため、図3(b)に示すように、コントローラ002は、視認可能(記録、表示)範囲203を右方向に移動させる。
【0048】
また、コントローラ002は、被写体が動いた場合には、撮影可能範囲202を視認可能(記録、表示)範囲203の移動の許容範囲として、視認可能(記録、表示)範囲203を被写体が動いた方向に移動させる。図3(b)は、被写体が右に動いた場合の視認可能(記録、表示)範囲203の移動を矢印で示している。
【0049】
ここで、視認可能(記録、表示)範囲203よりも広角の撮像可能範囲の画像を得る方法としては、例えば、カメラ001ないしは、信号処理部003にハイディフィニションビデオカメラによるレンズ、信号処理を採用して、視認可能(記録)範囲にスタンダードディフィニションのシステムを採用する方法や、カメラ001に広角カメラの光学系として、魚眼レンズなどの広角レンズを採用する方法や、全方位カメラを採用する方法がある。その他、カメラ001と同様のカメラ部を複数用意して、各カメラ部を、撮像方向が少しずつ異なるように配置し、各カメラ部で得られる画像を信号処理部003でつなぎ合わせることによっても、視認可能(記録、表示)範囲203よりも広角の画像を得ることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によると、急速なカメラワークや、被写体の急な動きによって、被写体の撮り損ねや、急速なフレーミングを抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る撮影装置について説明する。
【0052】
本実施の形態では、視認できる範囲より広い範囲の映像を撮影ないしは表示できる装置であって、撮影者が視認できる範囲に比べて広範囲の撮影可能範囲(表示可能範囲)の映像情報を格納できるバッファメモリを備え、撮影可能範囲(表示可能範囲)内に、撮影者が視認可能な記録範囲と、視認可能な表示範囲とを独立して持つことを特徴とするものである。また、撮影を止めることなくアングル変更を行うことができ、車載カメラシステムへの応用など、運転者が自動車の制御に必要な表示情報を止めることなく、周囲の状態変化をとらえることのできる撮影装置について説明する。
【0053】
実施の形態2に係る撮影装置の外観図および主要な構成要素は、図1および図2にそれぞれ示したものと同様である。このため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。ただし、コントローラ002による視認可能範囲の設定方法が実施の形態1とは異なる。
【0054】
図4を参照して、実施の形態2に係る撮影方法の一例を説明する。図4は、本発明に係るカメラシステムのフレームバッファの状態を模式化した概念図である。
【0055】
図4(a)に示すようにフレームバッファ004の領域には、視認可能範囲(記録または表示する範囲)よりも大きな範囲の撮影可能範囲202を配置しており、信号処理部003で処理された画像信号009は、撮影可能範囲202に配置される(記憶される)。撮影可能範囲202の範囲内に配置された視認可能(記録、表示)範囲203の画像信号が、エンコーダ005および表示制御部007で処理され、記録メディア006に記録されると共に表示部008に表示される。なお、本実施の形態では、さらに、図4(b)に示すように、視認可能(記録)範囲304と、視認可能(表示)範囲305を独立して設定することができる。視認可能(記録)範囲304の画像信号は、エンコーダ005により、エンコードされた後、記録メディア006に記憶される。視認可能(表示)範囲305の画像信号は、表示制御部007により表示部008に表示される。
【0056】
本例を利用して、視認可能(記録)範囲304の画像を撮影中に、視認可能(表示)範囲305内の画像を表示することにより、次に撮影したいアングルの画像を表示することができ、アングルを切り替える前に、撮影者の撮影意図にあった次の撮影のフレーミングを確認することができる。さらに、撮影意図にあったアングルが決まると、視認可能(表示)範囲305で表示した領域に、視認可能(記録)範囲304の領域を設定することで、アングルの変更に一時停止を行うことなくアングルが瞬時に切り替えられ、音声を途切らせることなく、撮影が可能となる。このような視認可能(記録)範囲304の領域の設定は、視認可能(記録)範囲304を示すアドレスに、視認可能(表示)範囲305を示すアドレスを設定することにより行なわれる。
【0057】
なお、図4(c)に示すように、コントローラ002が視認可能(記録)範囲304および視認可能(表示)範囲305を撮影可能範囲202内で移動させることによって、急速なカメラワークや、被写体の急な動きによって、被写体の撮り損ねや、急速なフレーミングを抑制する。この移動のさせ方は、図3(b)を用いて説明した視認可能(記録、表示)範囲203の移動のさせ方と同様である。このため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0058】
さらには、例えば自動車のドライブレコーダや、バックモニタなどで、運転者が自動車の制御に必要な移動方向の映像として視認可能(記録)範囲304の画像信号を記録し、視認可能(表示)範囲305の画像信号を表示するようにしてもよい。それと同時に、コントローラ002が撮影可能範囲202内での被写体の動き情報を信号処理部003から得ることによって、周囲に突然動きを速めた人物や危険物などの可能性を察知し、周囲の状態変化をとらえ、運転者へ警告するようにしてもよい。これにより、運転者にとって必要な移動方向の映像と途切れさせることなく、運転者に対して、周囲の安全に関わる重要な情報を認識させることができる。なお、警告は、表示部008に警告メッセージを表示するようにしてもよいし、警告音などを出力するようにしてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によると、急速なカメラワークや、被写体の急な動きによって、被写体の撮り損ねや、急速なフレーミングを抑制することができる。
【0060】
また、アングルを切り替える前に、撮影者の撮影意図にあった次の撮影のフレーミングを確認することができる。また、アングルを瞬時に切り替えることも可能である。
【0061】
さらに、周囲に突然動きを速めた人物や危険物の可能性を察知し、運転者に警告を行なうことにより、安全運転を支援することが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態に係る撮影装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、動きセンサ013により撮影装置自身の動きを検出し、信号処理部003により被写体の動きを検出する構成であってもよい。
【0064】
また、上記の撮影装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムとして構成されても良い。RAMまたはハードディスクドライブには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、撮影装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0065】
さらに、上記の撮影装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0066】
さらにまた、上記の撮影装置を構成する構成要素の一部または全部は、撮影装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしても良い。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0067】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしても良い。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。
【0068】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray Disc(登録商標))、半導体メモリなどに記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしても良い。
【0069】
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。
【0070】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。
【0071】
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【0072】
さらに、上記実施の形態及びおよび上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びおよび範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、撮影装置に適用でき、特に、安価で安定したパン(チルト)などのカメラワークを可能とし、さらには、撮影者の視認範囲外で起こった被写体の情報をとらえることで、カメラワークだけでなく、周囲の安全に関わる重要な情報を提供することを可能とする撮影装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
001 カメラ
002 コントローラ
003 信号処理部
004 フレームバッファ
005 エンコーダ
006 記録メディア
007 表示制御部
008 表示部
009 画像信号
010、011 制御信号
013 動きセンサ
202 撮影可能範囲
203 視認可能(記録、表示)範囲
304 視認可能(記録)範囲
305 視認可能(表示)範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、
被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された前記撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリと、
前記被写体の動きを検出する被写体動き検出手段と、
前記被写体動き検出手段により検出された前記被写体の動きに応じて、前記撮影可能範囲内で、前記撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と、
前記視認可能範囲の映像の表示手段への表示または記録メディアへの記録を行なう表示・記録手段と
を備える撮影装置。
【請求項2】
前記視認可能範囲移動手段は、前記被写体動き検出手段で検出された前記被写体の動く方向に、前記視認可能範囲を移動させる
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記被写体動き検出手段は、前記被写体の特徴点を追跡することにより前記被写体の動きを検出する
請求項1または2記載の撮影装置。
【請求項4】
撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置であって、
被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された前記撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリと、
前記撮影装置の動きを検出する撮影装置動き検出手段と、
前記撮影装置動き検出手段により検出された前記撮影装置の動きに応じて、前記撮影可能範囲内で、前記撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と、
前記視認可能範囲の映像の表示手段への表示または記録メディアへの記録を行なう表示・記録手段と
を備える撮影装置。
【請求項5】
前記視認可能範囲移動手段は、前記撮影装置動き検出手段で検出された前記撮影装置の動きに対して慣性力の働く方向に、前記視認可能範囲を移動させる
請求項4記載の撮影装置。
【請求項6】
前記撮影装置動き検出手段は、前記撮影装置のパンまたはチルトから前記撮影装置の動きを検出する
請求項4または5記載の撮影装置。
【請求項7】
前記撮影手段は、ハイディフィニションビデオカメラであり、
前記表示・記録手段は、スタンダードディフィニションで前記視認可能範囲の映像の前記表示手段への表示または前記記録メディアへの記録を行なう
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記撮影手段は、広角レンズを含み、当該広角レンズで集光された前記撮影可能範囲の映像を撮影する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記撮影手段は、互いに撮影方向が異なる複数のカメラを含み、前記複数のカメラで撮影された映像を統合することにより、前記撮影可能範囲の映像を生成する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記撮影手段で撮影される映像は、H.264またはMPEG2フォーマットに準拠した映像である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記視認可能範囲は、互いに異なる、前記表示手段への表示を行なう表示範囲と、前記記録メディアへの記録を行なう記録範囲とを含み、
前記表示・記録手段は、前記表示範囲の映像の前記表示手段への表示を行なうと共に、前記記録範囲の映像の前記記録メディアへの記録を行なう
請求項1〜10のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項12】
撮影者が視認可能な範囲よりも広範囲の映像を撮影可能な撮影装置のためのプログラムであって、
前記撮影装置は、
被写体を撮影することが可能な範囲である撮影可能範囲の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された前記撮影可能範囲の映像を記憶しているバッファメモリとを備え、
前記プログラムは、
前記被写体の動きを検出する被写体動き検出手段と、
前記被写体動き検出手段により検出された前記被写体の動きに応じて、前記撮影可能範囲内で、前記撮影者が視認可能な範囲である視認可能範囲を移動させる視認可能範囲移動手段と、
前記視認可能範囲の映像の表示手段への表示または記録メディアへの記録を行なう表示・記録手段として
コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−268082(P2010−268082A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115973(P2009−115973)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】