説明

撮影装置

【課題】本発明は、撮影装置側に信号受信装置や信号検出装置を搭載することなく、簡単な構成で撮影規制被写体のみの撮影を確実に規制することができる撮影装置及び盗撮防止システムを提供する。
【解決手段】デジタルカメラ10の制御回路部26は、レリーズボタン28の半押し操作に基づき信号発生回路部30を制御して、タリーランプであるLED32から、変調回路34にて変調された可視光を送信する。LED32は、撮影レンズ16の近傍に取り付けられているので、撮影レンズ16を被写体36に向けると、LED32からの可視光が被写体36に向けて送信される。受光ユニット12に内蔵されたフォトダイオード46は、デジタルカメラ10から送信された可視光を受光する。受光ユニット12の制御回路部50によって可視光を受光したことが検出されると、制御回路部50は、スピーカ回路部52を制御してスピーカ54からアラーム音を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮影装置及び盗撮防止システムに係り、特に指向性のある光線を撮影装置から送信し、この光線を撮影報知装置が受光することにより撮影装置による盗撮、ストロボ発光等の撮影動作を規制する撮影装置及び盗撮防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
観光地や美術館等の展示場における所定の区域の撮影を規制するために、撮影規制を伴う電波により送信される制御信号を送信機によって撮影規制対象物の周辺に送信し、一方でカメラやカメラ機能を有する携帯電話機等の撮影装置には、前記制御信号を受信する受信部を設け、制御信号の受信中には撮影装置による撮影を規制するという撮影規制システムが知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−13225号公報
【特許文献2】特開2004−153324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示された従来の撮影規制システムは、電波を用いた制御信号を撮影規制被写体近傍のエリアに送信して撮影禁止やストロボ発光禁止等の撮影規制を行うものである。よって、エリア内に撮影装置が入っていれば、その撮影装置が撮影規制被写体と関係の無い方向に向けられていても、その撮影装置は制御信号を受信するため撮影規制を受けるという問題があった。
【0005】
ところで、特許文献1には、送信機により送信される電波に変えて光を発光させてもよいと記載されているが、送信機に光発光手段を設けると、撮影装置側に光信号受信装置や光信号検出装置を搭載する必要があるので、撮影装置の大型化やコストアップにつながるという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、撮影装置側に信号受信装置や信号検出装置を搭載することなく、簡単な構成で撮影規制被写体のみの撮影を確実に規制することができる撮影装置及び盗撮防止システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮影装置によれば、前記目的を達成するために、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を備え、特定の受光エリアに対して選択的に撮影に関する前記データ又は撮影装置固有の前記データを送信する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の撮影装置によれば、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を有し、制御手段は撮影動作を行う際、すなわち撮影動作の所定時間前又は直前に光送信手段から光線を特定の受光エリアに対して送信する。光線は指向性があるため、受光エリア内の撮影規制被写体に撮影装置を向けたときのみ撮影を行うことを報知する所定のデータを含む報知信号が撮影装置から撮影規制被写体側に送信される。前記報知信号を受信することにより撮影を規制する規制手段を撮影規制被写体側に設けておけば、撮影規制被写体の撮影を確実に規制することができる。また、撮影装置固有のデータを撮影規制被写体側に送信することにより、その撮影装置による撮影を許可したり禁止したりすることができる。したがって、本発明の撮影装置によれば、撮影装置側に信号受信装置や信号検出装置を搭載することなく、光送信手段だけの簡単な構成で撮影規制被写体の撮影を確実に規制することができる。
【0009】
なお、光線として可視光を利用することができる。可視光とは、電磁波のうち人間の目で見える波長のものをいい、JIS Z8120の定義によれば、可視光に相当する電磁波の波長は、おおよそ短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmである。
【0010】
本発明の盗撮防止システムによれば、前記目的を達成するために、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を備え、撮影動作を行う際に前記光送信手段から前記光線を送信する制御手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置からの前記光線を受光し、該光線から前記所定のデータを読み出すことにより、被写体が撮影されることを光・振動・音等を発する報知手段によって報知する撮影報知装置と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の盗撮防止システムは、撮影装置を被写体に向けて撮影する際に、制御手段は撮影動作の所定時間前又は直前に光送信手段から光線を送信する。光線は指向性があるため、撮影禁止被写体の近傍に設置された撮影報知装置に送信される。撮影報知装置が光線を受光すると、光線から所定のデータを読み出し、撮影禁止被写体が撮影されることを光・振動・音等を発する報知手段によって報知する。これにより、撮影禁止被写体の盗撮を防止することができる。
【0012】
本発明の撮影装置によれば、前記撮影装置は、レリーズボタンの半押し操作で光線を送信することを特徴とする。
【0013】
本発明の撮影装置は、レリーズボタンの半押し操作により、制御手段が光線を送信する。これにより、撮影者は、特別な送信操作を行うことなく、一連の撮影動作によって光線を撮影装置から送信することができる。
【0014】
本発明の盗撮防止システムによれば、前記撮影装置は、レリーズボタンの半押し操作で光線を送信することを特徴とする。
【0015】
本発明の盗撮防止システムは、レリーズボタンの半押し操作により、制御手段が光線を送信し、撮影報知装置が受光する。これにより、撮影者は、特別な送信操作を行うことなく、一連の撮影動作によって光線を撮影装置から送信することができる。
【0016】
本発明の撮影装置によれば、前記目的を達成するために、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を有し、レリーズ動作が行われると被写体に向けて光送信を行い、所定時間後に撮影動作を行う制御手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の撮影装置は、レリーズ動作が行われると、まず、被写体に向けて光送信を行って撮影することを報知し、所定時間後に撮影動作を行う。レリーズから撮影までのタイムラグを示す信号を撮影妨害手段に送信することにより、撮影妨害手段はそのタイムラグに対応させて撮影を妨害する動作を行う。
【0018】
本発明の盗撮防止システムによれば、指向性を有する光線を撮影エリアから受光するように被写体周辺に配置され、撮影装置から送信された前記光線を受光することにより、被写体の良好な撮影を妨害する妨害手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の盗撮防止システムは、撮影装置から送信された光線を受光すると、受光してから撮影までのタイムラグを考慮した妨害手段によって被写体の良好な撮影を妨害する。これにより、肖像権の侵害や違法な盗撮を確実に防止できる。
【0020】
本発明の撮影装置によれば、前記目的を達成するために、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を有し、光送信手段からの光線は撮影レンズを介して送信されることを特徴とする。
【0021】
本発明の撮影装置は、光送信手段からの光線を、撮影レンズを介して送信するので、光送信手段の投光部を覆って不正に撮影することを防止できる。
【0022】
本発明の撮影装置によれば、前記目的を達成するために、指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段と、撮影動作を行うと前記光線を送信する制御手段とを有する撮影装置において、前記光送信手段は、赤色領域の波長の光線を発信するタリーランプであることを特徴とする。
【0023】
本発明の撮影装置は、光送信手段の投光手段としてタリーランプを兼用したので、部品点数を増やすことなく、光線を送信することができる。
【0024】
本発明の盗撮防止システムは、前記撮影装置と前記撮影報知装置は、双方向送受信可能に構成されていることを特徴としている。
【0025】
本発明によれば、撮影装置は更に受信手段を備え、特定の受光エリアに対して選択的に撮影に関するデータを送信した後、受光エリア内の撮影報知装置が前記データを受信したことを撮影報知装置が備える通信手段により送信し、これを撮影装置がデータの受信手段によって受信して、撮影装置の表示部に撮影領域内に撮影報知装置があることを表示する。このようにすれば、撮影者が意図せずに、たまたま撮影報知装置を持った人が撮影エリアに入ってしまった場合にも、これを撮影前に知ることができる。
【0026】
本発明の盗撮防止システムによれば、前記目的を達成するために、記憶部の所定領域に撮影規制解除コードが記録されたメモリ部材が着脱自在に装着され、撮影の際には前記撮影規制解除コードを読み出して送信する撮影装置と、前記撮影装置から送信された前記撮影規制解除コードを受信すると、前記撮影装置による撮影規制を解除することを報知する撮影報知装置と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の盗撮防止システムは、撮影解除コード入りメモリ部材を購入することにより、有料被写体の撮影が可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る撮影装置及び盗撮防止システムによれば、撮影装置側に信号受信装置や信号検出装置を搭載することなく、簡単な構成で撮影規制被写体のみの撮影を確実に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態のデジタルカメラ及び受光ユニットが適用された盗撮防止システムの全体構造図
【図2】図1に示した受光ユニットの全体斜視図
【図3】図2に示した受光ユニットの構造を示すブロック図
【図4】被写体の近傍に配置された受光ユニットと表示パネルの例を示した説明図
【図5】図4の表示パネルに表示される撮影規制マーク等を示した説明図
【図6】盗撮防止システムのデジタルカメラ側の制御の一例を示したフローチャート
【図7】盗撮防止システムの受光ユニット側の制御の一例を示したフローチャート
【図8】被写体の撮影妨害装置の一例を示した説明図
【図9】盗撮防止システムのデジタルカメラ側の制御の一例を示したフローチャート
【図10】盗撮防止システムの受光ユニット側の制御の一例を示したフローチャート
【図11】被写体の撮影妨害装置の一例を示した説明図
【図12】盗撮防止システムのデジタルカメラ側の制御の一例を示したフローチャート
【図13】盗撮防止システムの受光ユニット側の制御の一例を示したフローチャート
【図14】カメラにLEDを内蔵させた概略構造図
【図15】カメラにLEDを内蔵させた概略構造図
【図16】盗撮防止システムのデジタルカメラ側の制御の一例を示したフローチャート
【図17】図16に示したフローチャートの別実施例を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明に係る撮影装置盗撮防止システムの好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の撮影装置を、電子カメラであるデジタルカメラに適用した例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ機能を有するカメラ付き携帯電話機に適用可能である。
【0031】
図1は、実施の形態のデジタルカメラ10及び受光ユニット(撮影報知装置)12が適用された盗撮防止システム14の全体構造図である。
【0032】
デジタルカメラ10の撮影レンズ16の結像位置には、CCD18が設けられている。CCD18の結像面に結像された被写体像はCCD18によって光電変換された後、その電気信号が撮像部20に出力される。撮像部20は、前記電気信号を映像信号に変換してモニタ22に出力するとともに、内蔵のRAM又は外部メモリカード等の記録回路部24に例えばJPEGファイルとして記録する。
【0033】
符号26は、デジタルカメラ10全体を統括制御する制御回路部(制御部)である。この制御回路部26はレリーズボタン28からのレリーズ信号に基づいて撮像部20及びCCD18を制御するとともに、レリーズの直前にオートフォーカスを実行させる際に行うレリーズボタン28の半押し操作に基づき信号発生回路部30を制御して、タリーランプであるLED(光送信手段)32から、変調回路34にて変調された可視光(指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信される信号)を送信する。LED32は、撮影レンズ16の近傍に取り付けられているため、撮影レンズ16を被写体36に向けると、LED32からの目視可能で指向性のある可視光が被写体(人)36に向けて送信される。なお、光線は可視光に限定されるものではなく、指向性のある光線、例えば赤外線でもよい。
【0034】
図2は、受光ユニット12の全体図であり、図3は受光ユニット12の全体構成を示したブロック図である。
【0035】
図2の如く受光ユニット12は、球状の本体38にストラップ40が取り付けられて構成される。また、本体38には、デジタルカメラ10からの可視光を受光するための透光窓42が取り付けられるとともに、アラーム音の放射部44が形成されている。
【0036】
この本体38には図3の如く、フォトダイオード46が内蔵されている。このフォトダイオード46は、図1に示したデジタルカメラ10から送信された指向性のある可視光を、透光窓42を介して受光する受光素子である。よって、透光窓42をデジタルカメラ10に向けることにより、フォトダイオード46はデジタルカメラ10からの可視光を受光する。
【0037】
フォトダイオード46によって受光した可視光は、AM復調器48によって復調されるとともに制御回路部50によって可視光を受光したことが検出される。制御回路部50によって可視光が検出されると、制御回路部50は、スピーカ回路部52を制御してスピーカ54からアラーム音を、放射部44を介して受光ユニット12の外部に放射する。
【0038】
次に、前記の如く構成された盗撮防止システム14の作用について説明する。
【0039】
デジタルカメラ10のレリーズボタン28が撮影者により半押し操作されると、制御回路部26は信号発生回路部30を制御してLED32からタリーランプとしての赤色光を被写体36に向けて発光させる。
【0040】
一方、被写体36は受光ユニット12を携帯しており、デジタルカメラ12からの可視光を受信することができるが、デジタルカメラ12のLED32からの可視光はカメラ前方に送信されているので、デジタルカメラ12が被写体38に向けられた時のみ受光ユニット12はデジタルカメラ10からの可視光を受光する。そして、受光ユニット12は、スピーカ54からアラーム音を発生させ、アラーム音により撮影直前であること、又は撮影されたことを被写体36及び周囲の第三者に報知する。
【0041】
したがって、この盗撮防止システム14によれば、デジタルカメラ10によって特定の被写体36に対し、撮影が行われたか否かを知らせることができる。また、被写体36が撮影規制被写体36であることを、撮影者はアラーム音にて撮影直前に認識することができるので、撮影を取り止めることができる。なお、報知方法は音だけではなく光、振動を用いてもよい。また、デジタルカメラ固有のデータを受光ユニット12に送信することにより、そのデジタルカメラ10による撮影を許可したり禁止したりすることもアラーム音の発生で報知することができる。更に、受光ユニット12は、被写体である人が携帯する図2の形態に限定されず、被写体が物である場合にはその被写体周辺に固定される形態のものでよい。
【0042】
図1〜図3に示した盗撮防止システム14では、受光ユニット12がデジタルカメラ10からの可視光を受信して撮影されることをアラーム音にて報知するように構成したが、デジタルカメラ10の撮影そのものを禁止すること、ストロボ撮影を禁止すること、通常撮影を許可することを、表示手段を用いて報知してもよい。
【0043】
図4は、被写体(美術館に展示された絵画)60の近傍に受光ユニット12を設置し、この受光ユニット12がデジタルカメラ10からの可視光を受光した際に、予め記憶されている被写体60の規制情報(撮影可能か否か、ストロボ撮影可能か否か)に基づき、その情報を表示パネル62に表示する。この表示内容は、被写体60が撮影禁止被写体の場合には、図5(A)の如く文字表記にて「撮影禁止」と表示したり、ストロボ撮影が禁止されている場合には、図5(B)の如く「ストロボ禁止」と表示したりすることができる。また、図5(C)、(D)の如く記号、マークにて撮影禁止であることを表示してもよい。
【0044】
一方、受光ユニット12のフォトダイオード46(図3参照)によって受光した可視光は、AM復調器48によって復調され、制御回路部50によって検出されると、表示パネル62に所定の文字、記号、マークを表示パネル62に表示する。
【0045】
上記の如く構成された盗撮防止システムの作用について図6、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
まず、デジタルカメラ10側の制御について説明する。図6の如くデジタルカメラ10のレリーズボタン28が撮影者により半押し操作(S1)されると(ステップ(S)100)、制御回路部26は信号発生回路部30を制御してLED32からタリーランプとしての赤色光(可視光)を被写体36に向けて発光させる(S110)。これと同時に制御回路部26は、不図示のAE回路部を制御して測光を実行し、適正なシャッタースピードを設定するとともに(S120)、不図示のAF回路部を制御してオートフォーカスを実行する(S130)。
【0047】
この後、レリーズボタン28が全押し操作(S2)されると(S140)、撮影が実行され(S150)、被写体が記録回路部24にデータとして記録される(S160)。なお、レリーズボタン28が全押し操作(S2)されることなく、半押し操作(S1)が解除されると(S170)、S100に戻る。以上がデジタルカメラ10側の制御である。
【0048】
次に、受光ユニット12側の制御について図7を参照して説明する。デジタルカメラ10のレリーズボタン28の半押し操作により送信される指向性のある赤色の可視光をフォトダイオード46で受光すると(S200)、制御回路部50は被写体60がデジタルカメラ10により撮影直前状態であることを認識し、予め設定された情報(撮影可能か否か、ストロボ撮影可能か否か)を不図示の記憶部から読み出し、この情報を表示パネル62に表示する(S210)。すなわち、被写体60が撮影禁止被写体の場合には、図5(A)の如く「撮影禁止」と表示する(S220)。また、ストロボ発光撮影が禁止されている場合には、図5(B)の如く「ストロボ禁止」と表示する(S230)。そして、通常撮影可能な場合には、表示パネル62に撮影OKであることを表示する。
【0049】
すなわち、前記実施例は、デジタルカメラ10の撮影レンズ17の近傍に、可視光を変調して目視可能に送信するLED32を備え、被写体60に向けて可視光を送信するようにデジタルカメラ10が構成されている。このLED32は、レリーズボタン28の半押し操作により発光する。
【0050】
一方、被写体60の近傍には受光ユニット12が配置され、デジタルカメラ10からの可視光を受信することができるが、デジタルカメラ10側のLED32からの可視光はデジタルカメラ10の前方に送信されているので、デジタルカメラ10が被写体60に向けられた時のみ撮影直前であることを示す信号が受光ユニット12によって受信される。
【0051】
この信号が受光ユニット12に受信されると、受光ユニット12の表示パネル62に撮影可能か否か、ストロボ発光可能か否か、通常撮影OKか否かが表示される。例えば、美術館の場合、その被写体(絵画)に肖像権があるか否か、また、強い光による劣化のおそれがあるか否かによって撮影が可能か否か、あるいはストロボ発光が、可能か否かが表示される。
【0052】
報知方法は音だけではなく光、振動を用いてもよい。光で報知する場合は、例えば例として○(通常撮影可能)、×(撮影禁止)、△(ストロボ発光禁止)の光を発光させたり文字を発光させたりすれば更に撮影者に分かりやすくなる。
【0053】
図8は、盗撮防止システムの他の実施の形態を示した説明図である。
【0054】
同図に示す盗撮防止システムは、デジタルカメラ10の撮影レンズ鏡胴11の外周面に、可視光を変調して目視可能に送信するLED32を備え、レリーズボタン26によりレリーズ動作が行われると、まず、被写体60に向かって可視光送信を実行して撮影することを報知し、所定時間後に撮影動作を行う制御回路部26を備えている。
【0055】
一方、可視光を受光する受光ユニット12は、撮影エリアからの可視光を受光するように被写体60を覆うガラスケース64に取り付けられている。この受光ユニット12は、デジタルカメラ10からの可視光を受光して、不正な撮影であることを検知すると、ガラスケース64の前面に発光体(妨害手段)66から光線を照射し、反射光によって被写体60の良好な撮影が行えないように妨害操作を行う。
【0056】
上記の如く構成された盗撮防止システムの作用について図9、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
まず、デジタルカメラ10側の制御について説明する。図9の如くデジタルカメラ10のレリーズボタン28が撮影者により全押し操作されると(S300)、制御回路部26は信号発生回路部30を制御してLED32からタリーランプとしての赤色光を被写体60に向けて発光させる(S110)。これと同時に制御回路部26は、タイマーをスタートさせ(S320)、そして、不図示のAE回路部を制御して測光を実行し、適正なシャッタースピードを設定するとともに(S330)、不図示のAF回路部を制御してオートフォーカスを実行する(S340)。
【0058】
この後、タイマーが設定時間(T1)をカウントすると(S350)、撮影が実行され(S360)、被写体が記録回路部24にデータとして記録される(S370)。以上がデジタルカメラ10側の制御である。
【0059】
次に、受光ユニット12側の制御について図10を参照して説明する。デジタルカメラ10のレリーズボタン28の全押し操作により送信される指向性のある可視光を、フォトダイオード46で受光すると(S400)、制御回路部50はタイマーをスタートさせ(S410)、この後、タイマーが設定時間(T1)をカウントした時に、発光体66からガラスケース64の前面に光線(妨害光)を発光する。この時、デジタルカメラ10において撮影が行われるので、デジタルカメラ10は、ガラスケース64の前面で反射した妨害光により、被写体60を良好に撮影することはできない。これにより、被写体60の盗撮を防止することができる。
【0060】
図11は、盗撮防止システムの他の実施の形態を示した説明図である。
【0061】
同図に示す盗撮防止システムは、デジタルカメラ10の撮影レンズ16の近傍に、可視光を変調して目視可能に送信するLED32を備え、レリーズボタン28によるレリーズ動作が行われると、まず、被写体60に向かって可視光送信を行い、撮影することを報知する。その際、デジタルカメラ10の固有のタイムラグ、すなわち信号送信から撮影までの時間をコード化した信号を同時に送信する。この後に撮影動作を実行させる制御回路部26をデジタルカメラ10は備えている。
【0062】
一方、可視光を受光する受光ユニット12は、撮影エリアからの可視光を受光するように被写体60の周辺に配置され、デジタルカメラ10からの可視光を受光して、コード化したタイムラグ信号を復調し、これを制御回路部70がタイマー72にセットする。タイマーによる所定時間のカウントダウンが完了すると、制御回路部70が液晶駆動回路部74を制御して、被写体60の前面に配置された液晶板(妨害手段)76を不透過状態にし、被写体60の撮影が行えないようにする。以上が受光ユニット12側の制御である。
【0063】
上記の如く構成された盗撮防止システムの作用について図12、図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
まず、デジタルカメラ10側の制御について説明する。図12の如くデジタルカメラ10のレリーズボタン28が撮影者により全押し操作されると(S500)、制御回路部26は信号発生回路部30を制御してLED32からタリーランプとしての赤色光を被写体60に向けて発光させる(S510)。そして、制御回路部26は、この信号に重畳させてタイムラグを示す信号を送信するとともに(S520)、タイマーをセットし(S530)、タイムカウントを開始する(S540)。この後、タイマーが設定時間(t1)をカウントするまでカウントダウンが行われ(S550、S560)、タイマーが設定時間(t1)をカウントすると撮影が実行され(S570)、被写体像が記録回路部24にデータとして記録される(S580)。以上がデジタルカメラ10側の制御である。
【0065】
次に、受光ユニット12側の制御について図13を参照して説明する。デジタルカメラ10のレリーズボタン28の全押し操作により送信される指向性のある可視光を、フォトダイオード46で受光すると(S600)、制御回路部50はタイマーをセットするとともに(S610)、タイムカウントを開始する(S620)。この後、タイマーが設定時間(t1)をカウントするまでカウントダウンが行われ(S630、S640)、タイマーが設定時間(t1)をカウントすると、被写体60の前面に配置された液晶板76を不透過状態にし、被写体60の撮影が行えないようにする(S650)。この時、デジタルカメラ10において撮影が行われるので、デジタルカメラ10は、不透過状態の液晶板76により、被写体60を撮影することはできない。これにより、被写体60の盗撮を防止することができる。
【0066】
そして、所定時間経過後(S660)、制御回路部50は、液晶板76を透過状態に戻す。以上が受光ユニット12側の制御である。
【0067】
図14、図15は撮影レンズ16の光学系に可視光を発光するLED32を配置したカメラの要部構造図が示されている。
【0068】
図14に示すカメラには、撮影レンズ16の後方でCCD18との間の光路に、撮影レンズ16を透過した光束を分割する半透過ミラー80が配置されている。この半透過ミラー80は、カメラに内蔵されたLED32からの可視光を反射させて撮影レンズ16を向けた方向に、撮影レンズ16を介して送信するように配置されている。
【0069】
図15に示すカメラには、撮影レンズ16の後方でCCD18の両側には一対のLED32,32が配置されている。したがって、LED32、32からの可視光は、撮影レンズ16を介して、撮影レンズ16を向けた方向に送信される。
【0070】
このように図14、図15に示したカメラは、カメラに内蔵されたLED32からの可視光を、撮影レンズ16を介して送信するように構成したので、可視光送信を塞いで撮影を行おうとすると、撮影光を邪魔してしまうので、より確実に不正な撮影を防止することができる。
【0071】
図16は、盗撮防止システムの他の実施の形態を説明したフローチャートである。
【0072】
この例で述べるカメラも撮影レンズの周辺に、可視光を変調して目視可能に送信するLEDを備えている。カメラ電源を入れると(S700)、購入したメモリカードの所定部分のコードを読みにゆく(S710)。この部分に解除コード(撮影規制解除コード)が記載されていることを検出すると(S720)、可視光送信フラグ0を設定する(S730)。また、解除コードが記録されていない場合は可視光送信フラグ1を設定する(S740)。
【0073】
レリーズ動作が行われると(S750)、まず、フラグを確認し(S760)、フラグ0の場合は被写体に向かって可視光送信を行い(S770)、撮影することを報知する。その後、測光を実行し(S780)、オートフォーカスを実行(S790)した後に撮影動作を行う(S800)。フラグ1の場合は、可視光送信を行わず、ダミー発光(連続発光)を行う。
【0074】
一方、可視光を受光する受光ユニットは、撮影エリアからの可視光を受光するように被写体周辺に配置され、カメラからの可視光を受光して、可視光信号を復調し、解除コードが含まれていると、被写体の前面に配置された不透過状態の液晶板を透過状態にし、被写体の撮影を許可する。ダミー発光の場合は、この動作を行わないので、液晶板が透過状態のままであり撮影不能である。このようにすることで、解除コードが記録されているカードを挿入した場合のみ、被写体撮影が行われるようになり、カード販売料金により、有料コンテンツへの課金を徴収できる。また、美術館等では個々の被写体毎、作品群毎、作者毎といったようにきめ細かく解除コードを設定することにより、個別に有料コンテンツの課金が可能となる。
【0075】
また、別実施例として、図17のフローチャートの如く、解除コードに2種類のコード(撮影禁止、ストロボ発光禁止等)をもたせ(S900)、撮影禁止のコードが記載されていることを検出すると可視光送信フラグ1を設定し(S910)、ストロボ発光禁止のコードが記載されていることを検出すると可視光送信フラグ2を設定し(S920)、解除コードが記録されていない場合は可視光送信フラグ0を設定する(S930)。
【0076】
レリーズ動作が行われると(S940)、まず、フラグを確認し(S950)、フラグ1又は2の場合は被写体に向かって、フラグ1に対応した周波数の可視光送信を行い(S960)、また、フラグ2に対応した周波数の可視光送信を行い(S970)、撮影することを受光ユニットに報知する。その後、測光を実行し(S980)、オートフォーカスを実行した後に撮影動作を行う。フラグ0の場合は、フラグ0に対応した周波数の可視光送信を行う(S990)。
【0077】
一方、可視光を受光する受光ユニットは、撮影エリアからの可視光を受光するように被写体周辺に配置され、カメラからの可視光を受光して、可視光信号を復調し、フラグ1に対応した撮影信号が含まれていると、被写体の前面に配置された液晶板(妨害手段)を不透過状態にし、被写体の撮影が行えないようにする(図11参照)。また、フラグ2に対応した撮影信号が含まれていると、被写体の近傍に配置した表示バネルにストロボ発光禁止を示す文字表示又はマークを表示させ、撮影者にストロボ発光禁止の被写体であることを報知する。また、フラグ3に対応した撮影信号が含まれている場合は、撮影規制動作を行わない。このように撮影規制条件に応じて複数のフラグを設定すれば、多種の撮影規制を実行することができる。なお、変調器34は、撮影禁止被写体であること、ストロボ発光禁止であることをデジタルのコードに変調することも含む。
【0078】
また、デジタルカメラ10と受信ユニット12とを双方向送受信可能に構成することにより、以下の利点がある。
【0079】
すなわち、デジタルカメラ10に更に受信手段を設け、特定の受光エリアに対して選択的に撮影に関するデータを送信した後、受光エリア内の受信ユニット12が前記データを
受信したことを受信ユニット12が備える通信手段により送信し、これをデジタルカメラ10がデータの受信手段によって受信して、デジタルカメラ10のモニタ22に撮影領域内に受信ユニット12があることを表示する。このようにすれば、撮影者が意図せずに、たまたま受信ユニット12を持った人が撮影エリアに入ってしまった場合にも、これを撮影前に知ることができる。
【0080】
また、デジタルカメラ10は他のデータの受信手段を備え、特定の受光エリアに対して選択的にデジタルカメラ10の通信パスワード等の固有データを送信した後、前記エリア内の受信ユニット12が前記データを受信したことをトリガーに、他のデータの受信手段(電波等)により双方向通信を開始する。この時、前記通信パスワードによって、相手を識別して通信が可能となる。
【0081】
更に、特定のエリアに対して選択的に送信する手段を用いてデジタルカメラ10が特定のエリア内に入ったこと、あるいはデジタルカメラ10が被写体に向けられたこと、あるいはその両方を検出することを行えば、その後の通信は指向性の無い通信方法であっても双方向の通信手段であっても、通信内容としては、「デジタルカメラ10があらかじめ撮影許可コードを入力されているか否か?」、また、「デジタルカメラ10の撮影モードがストロボ撮影になっているか否か」、更には「デジタルカメラ10のレンズの焦点距離情報」等の情報を通信手段によって入手し、これにより、以下のような制御を行うことも可能である。
【0082】
デジタルカメラ10があらかじめ撮影許可コードを入手されているか否か?によって撮影を禁止又は許可すること。
【0083】
デジタルカメラ10がストロボを内蔵しているか否か?や、デジタルカメラ10の撮影モードがストロボ撮影になっているか否か?に応じて撮影を禁止あるいは許可すること。
【0084】
デジタルカメラ10のレンズの焦点距離情報とデジタルカメラ10のエリア情報とから、クレーズアップ撮影が禁止された被写体に対して一定以上の拡大率での撮影が行われようとしている場合のみ撮影を禁止すること。
【0085】
デジタルカメラ10のレンズの焦点距離情報とデジタルカメラ10のエリア情報と解像度情報とから、クローズアップ撮影が禁止された被写体に対し、解像度から換算して一定以上の拡大率での撮影が行われようとしている場合のみ撮影を禁止することができる。
【0086】
一方で、指向性を有する光線にデータを変調して送信する光送信装置によって、デジタルカメラ10の存在とコードだけを送信し、無線や他の通信方法でこのコードに対応するデジタルカメラ10に対して撮影の規制や警告を行うこともできる。
【符号の説明】
【0087】
10…デジタルカメラ、12…受光ユニット、14…盗撮防止システム、16…撮影レンズ、18…CCD、20…撮像部、22…モニタ、24…記録回路部、26…制御回路部、28…レリーズボタン、30…信号発生回路部、32…LED、36…被写体、46…フォトダイオード、48…AM復調器、50…制御回路部、54…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を備え、特定の受光エリアに対して選択的に撮影に関する前記データ又は撮影装置固有の前記データを送信する制御手段を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を備え、撮影動作を行う際に前記光送信手段から前記光線を送信する制御手段を備えた撮影装置と、
前記撮影装置からの前記光線を受光し、該光線から前記所定のデータを読み出すことにより、被写体が撮影されることを光・振動・音等を発する報知手段によって報知する撮影報知装置と、
を備えたことを特徴とする盗撮防止システム。
【請求項3】
前記撮影装置は、レリーズボタンの半押し操作で光線を送信することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記撮影装置は、レリーズボタンの半押し操作で光線を送信することを特徴とする請求項2に記載の盗撮防止システム。
【請求項5】
指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を備え、レリーズ動作が行われると被写体に向けて光送信を行い、所定時間後に撮影動作を行う制御手段を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
指向性を有する光線を撮影エリアから受光するように被写体周辺に配置され、撮影装置から送信された前記光線を受光することにより、被写体の良好な撮影を妨害する妨害手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の盗撮防止システム。
【請求項7】
指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段を有し、光送信手段からの光線は撮影レンズを介して送信されることを特徴とする撮影装置。
【請求項8】
指向性を有する光線に所定のデータを変調して送信する光送信手段と、撮影動作を行うと前記光線を送信する制御手段とを有する撮影装置において、
前記光送信手段は、赤色領域の波長の光線を発信するタリーランプであることを特徴とする撮影装置。
【請求項9】
前記撮影装置と前記撮影報知装置は、双方向送受信可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の盗撮防止システム。
【請求項10】
記憶部の所定領域に撮影規制解除コードが記録されたメモリ部材が着脱自在に装着され、撮影の際には前記撮影規制解除コードを読み出して送信する撮影装置と、
前記撮影装置から送信された前記撮影規制解除コードを受信すると、前記撮影装置による撮影規制を解除することを報知する撮影報知装置と、
を備えたことを特徴とする盗撮防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−170373(P2011−170373A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87391(P2011−87391)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2005−125185(P2005−125185)の分割
【原出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】