説明

操作ケーブル装置を備えた駐車ブレーキ

本発明は、特に自動車に用いられる駐車ブレーキに関する。このためには、ブレーキ操作しかつ少なくとも2つの変向ローラ(6,7,19,20)によって逆方向でケーブル変向させるための操作ケーブル装置を備えた駐車ブレーキ(1)が提案される。この場合、変向ローラ(6,7,19,20)は、少なくとも2つの変向ローラ(6,7,19,20)の回転軸(22,23)の間の結合線が、駆動装置主軸線(18)に対してねじれ可能であるように配置されている。こうして、2つのブレーキケーブルをほぼ同じ力で逆方向で緊張させることができる、僅かなスペース要求を伴った構造的に簡単に形成された駐車ブレーキが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車に用いられる駐車ブレーキに関する。
【0002】
パーキングブレーキとも呼ばれる駐車ブレーキでは、操作力が操作ケーブルによってホイールブレーキに伝達される。実際には、このことは、ボーデンケーブルとも呼ばれる2つのブレーキケーブルが平行にまたは逆方向で緊張させられることによって達成される。この場合、制動されるホイールの不均一なブレーキ作用を回避するためには、左右のケーブルの力が適切な機械的な結合部によってほぼ等しくなることが必要である。力均一の条件は、ブレーキ装置の左右の側が同じ力で異なる引張りストロークをケーブル端部に要求する場合にも満たされていなければならない。このことは、たとえば左右のホイールブレーキに対する異なるケーブル長さによって生ぜしめられ得る。これによって、個々のケーブルの間の異なる等価剛性が生ぜしめられる。
【0003】
公知先行技術に基づき、車両内室に配置されたハンドブレーキレバーが公知である。この公知のハンドブレーキレバーはケーブル水準器を力補償のためのエレメントとして使用している。このような駐車ブレーキは、たとえばドイツ連邦共和国特許第10103295号明細書に基づき公知である。しかし、このような解決手段によって、ブレーキケーブルを一方向にしか緊張させることができない。したがって、逆方向でのケーブルの緊張のために、後続のケーブル変向が必要となる。この結果、一方でスペース要求が高められる。他方では、所要のケーブル変向によって、ケーブルシステムの効率が低下する。
【0004】
別の解決手段は、ブレーキケーブルを逆方向で緊張させるためのスピンドルシステムの使用にある。この場合、一方のケーブルがスピンドル自体に取り付けられているのに対して、他方のケーブルは、対応片としてのスピンドルナットに結合されている。この場合、スピンドルとスピンドルナットとは、力均一を保証するために、浮動式に支承されている。別の解決手段は、ケーブルターンバックルの意味での右ねじ山と左ねじ山とを備えた、浮動式に支承された逆方向のスピンドルを使用している。このシステムでは、一方のスピンドルのコストが他方の伝動装置エレメントのコストに比べて高いことのほかに、固定の変速比と、スピンドルに基づく機械的なシステムの高い摩擦とが欠点である。
【0005】
さらに、別の解決手段では、スリット付けされたディスクが使用される。このディスクのスリットを通して、ブレーキケーブルの内側ケーブルが案内される。たとえば伝動装置出力軸によるディスクの回転によって、ボーデン内側ケーブルの短縮ひいては緊張が生ぜしめられる。しかし、回転可能なディスクのスリットガイドでのブレーキケーブルの、強度理由に基づき極めて大きな曲率半径は、引っ張られるケーブルの大きな間隔を要求する。結果、極めて高いトルクが駆動軸に生ぜしめられる。これによって、大きく寸法設定された出力軸を備えた、極めて高く変速する伝動装置が必要となる。この解決手段の別の欠点は、左右の操作ケーブルの間の不十分なバランスである。なぜならば、スリットガイドの比較的高い滑り摩擦が、著しく異なるケーブル力を両側で可能にするからである。
【0006】
本発明の課題は、2つのブレーキケーブルをほぼ同じ力で逆方向で緊張させることができる、僅かなスペース要求を伴った構造的に簡単に形成された駐車ブレーキを提供することである。この課題は、請求項1の特徴を備えた駐車ブレーキによって解決される。
【0007】
本発明は、少なくとも2つの変向ローラを使用した構造的に簡単な構造によって、ブレーキケーブルの緊張を達成するという基本思想に基づいている。この基本思想では、少なくとも2つの変向ローラの間の結合線が駆動装置の主軸線に対してねじられる。このためには、ブレーキケーブルがそれぞれ一方の端部で、一貫して延びるブレーキケーブルに結合されている。このブレーキケーブルは逆方向の変向の意味で、有利には180゜だけ変向ローラを巡って案内される。これらの変向ローラのうち、少なくとも1つの変向ローラは可動に支承されている。こうして、スペースを節約した機構が提供される。少なくとも2つの変向ローラの回転軸の間の結合線のねじれによって、ローラ相互の相対的な移動が行われる。これによって、ブレーキケーブルに、このブレーキケーブルの緊張を生ぜしめる回り道が付与される。
【0008】
本発明の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0009】
変向ローラの回転軸の間の結合線のねじれは、変向ローラの特別な配置形式によって保証される。この場合、一方の変向ローラが定置に配置されていてよいのに対して、第2の変向ローラは回転運動可能であるかまたは線形運動可能である(請求項2)。これに対して択一的には、両変向ローラが回転運動可能にまたは並進運動可能に配置されていてよい(請求項3)。
【0010】
変向ローラの回転運動のためには、この変向ローラが、有利には旋回アームに配置されている(請求項4)。この旋回アームは旋回レバーとして形成されていて、本発明の別の有利な構成では、出力軸によって旋回させられる(請求項5)。この目的のためには、旋回アームが、有利には出力軸に剛性的に結合されている。この出力軸はモータ、特に電動モータによって駆動されるので、これによって、電動モータ式の駐車ブレーキが得られる。この場合、ただ1つの駆動装置しか必要とならないと特に有利である。複数のモータまたは、公知先行技術において、たとえばスピンドル解決手段のように、これらのモータを介した別個の力調整の著しく手間のかかる使用は省略される。
【0011】
両変向ローラ相互の適切な配置を介して、本発明の別の構成では、モーメント補償の意味での駆動モーメントの最小化を達成することができる(請求項6)。この場合、モーメント補償は部分的にまたは完全に、緊張させられた状態でモーメントなしの出力軸の意味で行うことができる。
【0012】
本発明の構成では、両変向ローラが旋回アームに配置されている(請求項7)。この場合、第1の配置形式では、旋回アームの回動点が変向ローラの回転軸の間のほぼ真ん中に配置されていてよい(請求項8)。これに対して、別の配置形式では、旋回アームの回動点が変向ローラの回転軸に対して非対称的に配置されている(請求項9)。
【0013】
僅かな部材個数によって、本発明による駐車ブレーキは極端に頑丈であると共に故障しにくい。駆動モーメントの最小化の意味での本発明の構成は、より僅かな所要の変速比によって、伝動装置段の節約さらにはより小さな伝動装置軸の使用を可能にする。これによって、伝動装置の構成スペース要求が減少するので、たとえば自動車において、リヤアクスルの領域での中間の配置が可能となる。
【0014】
さらに、モーメント補償を伴った前述した解決手段の非線形の変速比は、有利には、ブレーキをかけるケーブル力の増加時にほぼ不変のモータモーメントを保証するために使用することができる。これによって、モータの出力ポテンシャルのより良好な均一な使用が達成される。これによって、使用される電動モータに対する、より僅かな電流要求が生ぜしめられる。同時に作動時間を短縮することができる。
【0015】
自体中心として回転可能に支承された変向ローラの使用によって、両ブレーキケーブルの力補償もしくはストローク補償のための摩擦が最小化される。滑り摩擦なしのひいては質的に高価値のケーブル力補償によって、ケーブル水準器を備えたシステムで必要であるような、滑り摩擦損失を付随した、公知先行技術で必要な外部のケーブル変向が省略される。したがって、従来のシステムに比べて、本発明による駐車ブレーキは著しく高い効率を有している。公知先行技術に基づき公知であるような、駆動装置の高められた出力提供もしくは力提供によるケーブルシステムの僅かな効率の補償は不要となる。
【0016】
さらに、本発明による解決手段では、伝動装置の可変の変速比で作業することができる。これによって、種々異なる使用条件に対する特にフレキシブルな適合が可能となる。
【0017】
モーメント補償を伴った幾何学的な配置形式によって、伝動装置負荷の最小化が行われる。これによって、同時に駐車ブレーキの耐用年数の増大が生ぜしめられる。
【0018】
滑り摩擦なしのケーブル力補償を伴った本発明による駐車ブレーキは、あらゆる種類の自動車さらには、たとえば駆動技術および搬送技術またはレール車両に使用することができる。
【0019】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。図面では、機能的に同じ構成部材に一貫して同じ符号が付してある。
【0020】
図1には、本発明による駐車ブレーキ1またはパーキングブレーキが示してある。この駐車ブレーキ1は、電動モータ2と、この電動モータ2に結合された、ボーデンケーブルとして形成された2つのブレーキケーブル3,4を逆方向で緊張させるための機構とを有している。両ボーデンケーブルの内側ケーブルは結合されて、一貫して延びる内側ケーブル5を形成している。この場合、この内側ケーブル5は、逆方向のケーブル変向の意味で2つの変向ローラ6,7を巡って案内されている。この場合、両変向ローラ6,7または両ケーブルローラはケーブルディスクとして形成されている。この場合、内側ケーブル5は、全周にわたって延びる側溝8内に案内される。ケーブルディスクの代わりに、操作ケーブルの変向のために、相応に形成された円セグメントが使用されてもよい。
【0021】
両変向ローラ6,7はその中点で回転可能に旋回アーム11に取り付けられている。この場合、各変向ローラ6,7は旋回レバー11の自由端部に配置されているのに対して、この旋回レバー11自体は、電動モータ2によって駆動される伝動装置出力軸12に取り付けられている。回転軸9,10は伝動装置出力軸12の長手方向軸線に対して平行に延びている。旋回アーム11の回動点、すなわち、伝動装置出力軸12への固定部は、変向ローラ6,7の回転軸9,10の間のほぼ真ん中に配置されている。この回転軸9,10は変向ローラ6,7の中点を通って延びている。
【0022】
旋回アーム11は、伝動装置出力軸12の、z方向13に延びる長手方向軸線に対して垂直に位置する旋回平面で旋回可能である。両変向ローラ6,7も、駆動装置ハウジング16の横方向14および長手方向15によって規定された旋回平面に位置しているので、ハウジング16の極端にコンパクトな構造が可能となる。
【0023】
図1に図面を見やすくするために示していない上側部分を備えたハウジング16内には、伝動装置出力軸12と、旋回アーム11と、変向ローラ6,7と、内側ケーブル15とが配置されている。ハウジング16の外部では、ボーデンケーブルとしての両ブレーキケーブル3,4が、ハウジング16に固定された相応に設けられた防護スリーブ17内で移動する。
【0024】
駐車ブレーキ1の操作、すなわち、電動モータ2のスイッチオンによって、出力軸12の回転ひいてはレバーアーム11の旋回が生ぜしめられる。これによって、旋回アーム長手方向に延びる、変向ローラ6,7の回転軸の間の結合線が、ブレーキケーブル3,4に対して平行に伝動装置出力軸12の中点を通って延びる駆動装置主軸線18に対してねじられる、つまり、90゜と異なる角度に方向付けられる。駐車ブレーキの緊張方向での電動モータ2の駆動回転方向では、これによって、内側ケーブル5の緊張が生ぜしめられる。これによって、伝動装置出力軸12の回転が並進ケーブル運動に変換される。
【0025】
図2には、本発明の第2の構成が示してある。この構成では、伝動装置出力軸12に対する特に僅かなトルクが達成される。この場合、一方の変向ローラ19は定置にハウジング16に取り付けられている。他方の変向ローラ20もやはり端部側で旋回レバー21に固定されている。旋回アーム21は、反対の側の自由端部で伝動装置出力軸12に結合されている。この伝動装置出力軸12は電動モータ2によって駆動される。回転軸22,23を中心として回転可能に支承された両変向ローラ19,20を巡って、ブレーキケーブル3,4の内側ケーブル5が再び逆方向のケーブル変向の意味で案内される。いま、緊張方向での駐車ブレーキ1の操作が行われると、図3に示したように、旋回アーム21の旋回によって、解除された状態から緊張させられた状態への移行が生ぜしめられる。このためには、レバーアーム21が、それに嵌められた変向ローラ20を定置の変向ローラ19に対して相対的に旋回させ、これによって、内側ケーブル5の所要の緊張が生ぜしめられる。
【0026】
前述した構成では、緊張方向と逆方向の駐車ブレーキ1の操作によって、内側ケーブル5が弛緩され、駐車ブレーキを解除することができる。
【0027】
完全なモーメント補償のためには、図4に概略的に示したようなケーブルローラ機構の配置形式が使用される。伝動装置出力軸12に加えられるモーメントは、条件L1=L2が満たされている場合に零に等しい。このことは、変向ローラ19,20と旋回アーム21との適切な配置によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による駐車ブレーキの第1の構成の斜視図である。
【図2】本発明による駐車ブレーキの第2の構成を、解除された状態で示す概略図である。
【図3】図2に示した駐車ブレーキを、緊張させられた状態で示す図である。
【図4】完全なモーメント補償を伴ったケーブルローラ機構の概略図である。
【符号の説明】
【0029】
1 駐車ブレーキ、 2 電動モータ、 3,4 ブレーキケーブル、 5 内側ケーブル、 6,7 変向ローラ、 8 側溝、 9,10 回転軸、 11 旋回アーム、 12 伝動装置出力軸、 13 z方向、 14 横方向、 15 長手方向、 16 ハウジング、 17 防護スリーブ、 18 駆動装置主軸線、 19,20 変向ローラ、 21 旋回アーム、 22,23 回転軸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車に用いられる駐車ブレーキに関する。
【0002】
パーキングブレーキとも呼ばれる駐車ブレーキでは、操作力が操作ケーブルによってホイールブレーキに伝達される。実際には、このことは、ボーデンケーブルとも呼ばれる2つのブレーキケーブルが平行にまたは逆方向で緊張させられることによって達成される。この場合、制動されるホイールの不均一なブレーキ作用を回避するためには、左右のケーブルの力が適切な機械的な結合部によってほぼ等しくなることが必要である。力均一の条件は、ブレーキ装置の左右の側が同じ力で異なる引張りストロークをケーブル端部に要求する場合にも満たされていなければならない。このことは、たとえば左右のホイールブレーキに対する異なるケーブル長さによって生ぜしめられ得る。これによって、個々のケーブルの間の異なる等価剛性が生ぜしめられる。
【0003】
公知先行技術に基づき、車両内室に配置されたハンドブレーキレバーが公知である。この公知のハンドブレーキレバーはケーブル水準器を力補償のためのエレメントとして使用している。このような駐車ブレーキは、たとえばドイツ連邦共和国特許第10103295号明細書に基づき公知である。しかし、このような解決手段によって、ブレーキケーブルを一方向にしか緊張させることができない。したがって、逆方向でのケーブルの緊張のために、後続のケーブル変向が必要となる。この結果、一方でスペース要求が高められる。他方では、所要のケーブル変向によって、ケーブルシステムの効率が低下する。
【0004】
別の解決手段は、ブレーキケーブルを逆方向で緊張させるためのスピンドルシステムの使用にある。この場合、一方のケーブルがスピンドル自体に取り付けられているのに対して、他方のケーブルは、対応片としてのスピンドルナットに結合されている。この場合、スピンドルとスピンドルナットとは、力均一を保証するために、浮動式に支承されている。別の解決手段は、ケーブルターンバックルの意味での右ねじ山と左ねじ山とを備えた、浮動式に支承された逆方向のスピンドルを使用している。このシステムでは、一方のスピンドルのコストが他方の伝動装置エレメントのコストに比べて高いことのほかに、固定の変速比と、スピンドルに基づく機械的なシステムの高い摩擦とが欠点である。
【0005】
たとえば国際公開第03/008248号パンフレットに基づき公知のような別の解決手段では、スリット付けされたディスクが使用される。このディスクのスリットを通して、ブレーキケーブルの内側ケーブルが案内される。たとえば伝動装置出力軸によるディスクの回転によって、ボーデン内側ケーブルの短縮ひいては緊張が生ぜしめられる。しかし、回転可能なディスクのスリットガイドでのブレーキケーブルの、強度理由に基づき極めて大きな曲率半径は、引っ張られるケーブルの大きな間隔を要求する。結果、極めて高いトルクが駆動軸に生ぜしめられる。これによって、大きく寸法設定された出力軸を備えた、極めて高く変速する伝動装置が必要となる。この解決手段の別の欠点は、左右の操作ケーブルの間の不十分なバランスである。なぜならば、スリットガイドの比較的高い滑り摩擦が、著しく異なるケーブル力を両側で可能にするからである。
【0006】
反対の側に配置された2つのローラと、両ローラを通して逆方向で移動するブレーキケーブルとを備えた回動アームの使用も、比較的高い所要のトルクと、これに伴う駆動装置の構造サイズとの問題性を排除していない。
【0007】
本発明の課題は、2つのブレーキケーブルをほぼ同じ力で逆方向で緊張させることができる、僅かなスペース要求を伴った構造的に簡単に形成された駐車ブレーキを提供することである。この課題は、請求項1の特徴を備えた駐車ブレーキによって解決される。
【0008】
本発明は、少なくとも2つの変向ローラを使用した構造的に簡単な構造によって、ブレーキケーブルの緊張を達成するという基本思想に基づいている。この基本思想では、少なくとも2つの変向ローラの間の結合線が駆動装置の主軸線に対してねじられる。このためには、ブレーキケーブルがそれぞれ一方の端部で、一貫して延びるブレーキケーブルに結合されている。このブレーキケーブルは逆方向の変向の意味で、有利には180゜だけ変向ローラを巡って案内される。これらの変向ローラのうち、少なくとも1つの変向ローラは可動に支承されている。こうして、スペースを節約した機構が提供される。少なくとも2つの変向ローラの回転軸の間の結合線のねじれによって、ローラ相互の相対的な移動が行われる。これによって、ブレーキケーブルに、このブレーキケーブルの緊張を生ぜしめる回り道が付与される。
【0009】
変向ローラの回転軸の間の結合線のねじれは、変向ローラの特別な配置形式によって保証される。この場合、一方の変向ローラが定置に配置されているに対して、第2の変向ローラは回転運動可能である。
【0010】
変向ローラの回転運動のためには、この変向ローラが、有利には旋回アームに配置されている。この旋回アームは旋回レバーとして形成されていて、出力軸によって旋回させられる。この目的のためには、旋回アームが、有利には出力軸に剛性的に結合されている。この出力軸は電動モータによって駆動されるので、これによって、電動モータ式の駐車ブレーキが得られる。この場合、ただ1つの駆動装置しか必要とならないと特に有利である。複数のモータまたは、公知先行技術において、たとえばスピンドル解決手段のように、これらのモータを介した別個の力調整の著しく手間のかかる使用は省略される。
【0011】
両変向ローラ相互の適切な配置を介して、本発明によれば、モーメント補償の意味での駆動モーメントの最小化が達成される。この場合、モーメント補償は部分的にまたは完全に、緊張させられた状態でモーメントなしの出力軸の意味で行うことができる。
【0012】
僅かな部材個数によって、本発明による駐車ブレーキは極端に頑丈であると共に故障しにくい。駆動モーメントの最小化の意味での本発明の構成は、より僅かな所要の変速比によって、伝動装置段の節約さらにはより小さな伝動装置軸の使用を可能にする。これによって、伝動装置の構成スペース要求が減少するので、たとえば自動車において、リヤアクスルの領域での中間の配置が可能となる。
【0013】
さらに、モーメント補償を伴った前述した解決手段の非線形の変速比は、有利には、ブレーキをかけるケーブル力の増加時にほぼ不変のモータモーメントを保証するために使用することができる。これによって、モータの出力ポテンシャルのより良好な均一な使用が達成される。これによって、使用される電動モータに対する、より僅かな電流要求が生ぜしめられる。同時に作動時間を短縮することができる。
【0014】
自体中心として回転可能に支承された変向ローラの使用によって、両ブレーキケーブルの力補償もしくはストローク補償のための摩擦が最小化される。滑り摩擦なしのひいては質的に高価値のケーブル力補償によって、ケーブル水準器を備えたシステムで必要であるような、滑り摩擦損失を付随した、公知先行技術で必要な外部のケーブル変向が省略される。したがって、従来のシステムに比べて、本発明による駐車ブレーキは著しく高い効率を有している。公知先行技術に基づき公知であるような、駆動装置の高められた出力提供もしくは力提供によるケーブルシステムの僅かな効率の補償は不要となる。
【0015】
さらに、本発明による解決手段では、伝動装置の可変の変速比で作業することができる。これによって、種々異なる使用条件に対する特にフレキシブルな適合が可能となる。
【0016】
モーメント補償を伴った幾何学的な配置形式によって、伝動装置負荷の最小化が行われる。これによって、同時に駐車ブレーキの耐用年数の増大が生ぜしめられる。
【0017】
滑り摩擦なしのケーブル力補償を伴った本発明による駐車ブレーキは、あらゆる種類の自動車さらには、たとえば駆動技術および搬送技術またはレール車両に使用することができる。
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。図面では、機能的に同じ構成部材に一貫して同じ符号が付してある。
【0019】
図1には、公知先行技術、たとえば国際公開第03/008248号パンフレットに基づき公知であるような駐車ブレーキ1またはパーキングブレーキが示してある。この駐車ブレーキ1は、電動モータ2と、この電動モータ2に結合された、ボーデンケーブルとして形成された2つのブレーキケーブル3,4を逆方向で緊張させるための機構とを有している。両ボーデンケーブルの内側ケーブルは結合されて、一貫して延びる内側ケーブル5を形成している。この場合、この内側ケーブル5は、逆方向のケーブル変向の意味で2つの変向ローラ6,7を巡って案内されている。この場合、両変向ローラ6,7または両ケーブルローラはケーブルディスクとして形成されている。この場合、内側ケーブル5は、全周にわたって延びる側溝8内に案内される。ケーブルディスクの代わりに、操作ケーブルの変向のために、相応に形成された円セグメントが使用されてもよい。
【0020】
両変向ローラ6,7はその中点で回転可能に旋回アーム11に取り付けられている。この場合、各変向ローラ6,7は旋回レバー11の自由端部に配置されているのに対して、この旋回レバー11自体は、電動モータ2によって駆動される伝動装置出力軸12に取り付けられている。回転軸9,10は伝動装置出力軸12の長手方向軸線に対して平行に延びている。旋回アーム11の回動点、すなわち、伝動装置出力軸12への固定部は、変向ローラ6,7の回転軸9,10の間のほぼ真ん中に配置されている。この回転軸9,10は変向ローラ6,7の中点を通って延びている。
【0021】
旋回アーム11は、伝動装置出力軸12の、z方向13に延びる長手方向軸線に対して垂直に位置する旋回平面で旋回可能である。両変向ローラ6,7も、駆動装置ハウジング16の横方向14および長手方向15によって規定された旋回平面に位置しているので、ハウジング16の極端にコンパクトな構造が可能となる。
【0022】
図1に図面を見やすくするために示していない上側部分を備えたハウジング16内には、伝動装置出力軸12と、旋回アーム11と、変向ローラ6,7と、内側ケーブル15とが配置されている。ハウジング16の外部では、ボーデンケーブルとしての両ブレーキケーブル3,4が、ハウジング16に固定された相応に設けられた防護スリーブ17内で移動する。
【0023】
図2には、本発明の構成が示してある。この構成では、伝動装置出力軸12に対する特に僅かなトルクが達成される。この場合、一方の変向ローラ19は定置にハウジング16に取り付けられている。他方の変向ローラ20もやはり端部側で旋回レバー21に固定されている。旋回アーム21は、反対の側の自由端部で伝動装置出力軸12に結合されている。この伝動装置出力軸12は電動モータ2によって駆動される。回転軸22,23を中心として回転可能に支承された両変向ローラ19,20を巡って、ブレーキケーブル3,4の内側ケーブル5が逆方向のケーブル変向の意味で案内される。いま、緊張方向での駐車ブレーキ1の操作が行われると、図3に示したように、旋回アーム21の旋回によって、解除された状態から緊張させられた状態への移行が生ぜしめられる。このためには、レバーアーム21が、それに嵌められた変向ローラ20を定置の変向ローラ19に対して相対的に旋回させ、これによって、内側ケーブル5の所要の緊張が生ぜしめられる。
【0024】
駐車ブレーキ1の操作、すなわち、電動モータ2のスイッチオンによって、出力軸12の回転ひいてはレバーアーム21の旋回が生ぜしめられる。これによって、変向ローラ19,20の回転軸の間の結合線が、ブレーキケーブル3,4に対して平行に伝動装置出力軸12の中点を通って延びる駆動装置主軸線18に対してねじられる、つまり、90゜と異なる角度に方向付けられる。駐車ブレーキの緊張方向での電動モータ2の駆動回転方向では、これによって、内側ケーブル5の緊張が生ぜしめられる。これによって、伝動装置出力軸12の回転が並進ケーブル運動に変換される。
【0025】
前述した構成では、緊張方向と逆方向の駐車ブレーキ1の操作によって、内側ケーブル5が弛緩され、駐車ブレーキを解除することができる。
【0026】
完全なモーメント補償のためには、図4に概略的に示したようなケーブルローラ機構の配置形式が使用される。伝動装置出力軸12に加えられるモーメントは、条件L1=L2が満たされている場合に零に等しい。このことは、変向ローラ19,20と旋回アーム21との適切な配置によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】公知先行技術に基づく駐車ブレーキの構成の斜視図である。
【図2】本発明による駐車ブレーキの構成を、解除された状態で示す概略図である。
【図3】図2に示した駐車ブレーキを、部分的に緊張させられた状態で示す図である。
【図4】完全なモーメント補償を伴ったケーブルローラ機構の概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 駐車ブレーキ、 2 電動モータ、 3,4 ブレーキケーブル、 5 内側ケーブル、 6,7 変向ローラ、 8 側溝、 9,10 回転軸、 11 旋回アーム、 12 伝動装置出力軸、 13 z方向、 14 横方向、 15 長手方向、 16 ハウジング、 17 防護スリーブ、 18 駆動装置主軸線、 19,20 変向ローラ、 21 旋回アーム、 22,23 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車に用いられる駐車ブレーキ(1)において、少なくとも2つの変向ローラ(6,7,19,20)によってブレーキ操作しかつ逆方向でケーブル変向させるための操作ケーブル装置が設けられており、少なくとも2つの変向ローラ(6,7,19,20)の回転軸(22,23)の間の結合線が、駆動装置主軸線(18)に対してねじれ可能であるように、変向ローラ(6,7,19,20)が配置されていることを特徴とする、駐車ブレーキ。
【請求項2】
定置の変向ローラ(19)と、回転運動可能なまたは並進運動可能な変向ローラ(20)とが設けられている、請求項1記載の駐車ブレーキ。
【請求項3】
回転運動可能なまたは並進運動可能な2つの変向ローラ(6,7)が設けられている、請求項1記載の駐車ブレーキ。
【請求項4】
変向ローラ(6,7,20)の少なくとも1つが、旋回アーム(11,21)に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項5】
旋回アーム(11,21)が、モータ、特に電動モータ(2)によって駆動される出力軸(12)によって旋回可能である、請求項4記載の駐車ブレーキ。
【請求項6】
出力軸(12)に対するモーメントの低減の意味での変向ローラ(6,7,19,20)と旋回アーム(11,21)の回動点との配置が行われている、請求項5記載の駐車ブレーキ。
【請求項7】
両変向ローラ(6,7)が、旋回アームに配置されている、請求項2から5までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項8】
変向ローラ(6,7)の回転軸(11)の間のほぼ真ん中に旋回アームの回動点が設けられている、請求項7記載の駐車ブレーキ。
【請求項9】
変向ローラ(6,7)の回転軸(11)に対して非対称的に旋回アームの回動点が設けられている、請求項7記載の駐車ブレーキ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車に用いられる駐車ブレーキ(1)であって、電動モータと、ほぼ逆方向で作用する一貫して互いに結合された2つのブレーキケーブルに対する少なくとも2つの変向ローラ(19,20)によってブレーキ操作しかつ逆方向でケーブル変向させるための操作ケーブル装置とが設けられており、少なくとも2つの変向ローラ(6,7,19,20)の回転軸(22,23)の間の結合線が、駆動装置主軸線(18)に対してねじれ可能であるように、変向ローラが配置されている形式のものにおいて、
定置の変向ローラ(19)と、回転運動可能な変向ローラ(20)とが設けられており、該回転運動可能な変向ローラ(20)が、旋回アーム(21)に配置されており、該旋回アーム(21)が、電動モータ(2)により駆動される出力軸(12)によって旋回可能であり、変向ローラ(19,20)と旋回アーム(21)の回動点とが、出力軸(12)に対する生ぜしめられるトルクの低減の意味で配置されており、これによって、当該駐車ブレーキの緊張させられた状態で、ブレーキケーブル(3,4)の引張り力(F)によって加えられる、旋回アームの回動点を中心としたモーメントが、相関的に少なくとも部分的にまたは完全に補償されるようになっていることを特徴とする、駐車ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−522700(P2006−522700A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500587(P2006−500587)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000320
【国際公開番号】WO2004/091986
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】