操作ペダルの支持構造
【課題】通常時でのペダル本体の操作感が良好で、ペダル本体の不用意な下方への変位を確実に規制でき、車両の衝突時にはペダル踏み込み部の後退を確実に防止できるようにする。
【解決手段】ダッシュパネル1に取付けたブラケット本体7に、第1支軸13を介してペダル本体2の上端部が揺動自在に保持されると共に、第2支軸17を介して回動レバー5が揺動自在に保持される。第1支軸13の下方への変位が、支持突起部40aによって規制されると共に、第1支軸13の直下方に配設された規制部材51によっても規制される。車両の衝突時に、回動レバー5が、後方にある車体側部材33に当接されて前方へ回動されて、規制部材51による規制を解除した後、第1支軸13を下方へ押圧して、支持突起部40aを変形させつつ第1支軸13をペダルブラケット3から脱落させる。
【解決手段】ダッシュパネル1に取付けたブラケット本体7に、第1支軸13を介してペダル本体2の上端部が揺動自在に保持されると共に、第2支軸17を介して回動レバー5が揺動自在に保持される。第1支軸13の下方への変位が、支持突起部40aによって規制されると共に、第1支軸13の直下方に配設された規制部材51によっても規制される。車両の衝突時に、回動レバー5が、後方にある車体側部材33に当接されて前方へ回動されて、規制部材51による規制を解除した後、第1支軸13を下方へ押圧して、支持突起部40aを変形させつつ第1支軸13をペダルブラケット3から脱落させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作ペダルの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルやクラッチペダル等の車両前後方向に揺動操作されるペダル本体は、ペダルブラケットを介してダッシュパネルに支持されるようになっている。すなわち、ダッシュパネルに対してペダルブラケットが固定されて、ペダル本体は、その上端部が車幅方向に伸びる第1支軸を介してペダルブラケットに対して前後方向に揺動自在に保持される一方、その下端部が乗員によって足踏み操作されるペダル踏み込み部とされている。このようなペダル本体は、車両の衝突時(前方衝突時)に、乗員の足部保護のために、ペダル踏み込み部が大きく後方へ移動しないようにすることが要求される。
【0003】
特許文献1には、ペダルブラケットに対して回動レバーを車幅方向に伸びる第2支軸によって揺動自在に保持させて、車両の衝突時には、回動レバーが車体側部材と当接することにより第2支軸を中心として回動されて、この回動レバーの回動によって、ペダル本体を支持している第1支軸を強制的に後方へ変位させることが提案されている。特許文献2には、車両の衝突時に、ペダル本体の揺動支点となる回転軸を、ペダル本体の下端部に設けられたペダル踏み込み部に対して相対的に車両後方側に変位させるようなペダル支持構造において、上記回転軸を上方の初期位置に保持させるためにスプリングの付勢力を利用したものが開示されている。特許文献3には、車両の衝突時に、ペダル本体の支軸を保持するペダルブラケットを車幅方向に拡開変形させることにより、ペダルブラケットからペダル本体を離脱させるものが開示されている。
【特許文献1】特表2005−510785号公報
【特許文献2】特許3269372号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第0659615号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載のものでは、通常時に、回動レバーにペダル本体の支持軸を支持させているため、ペダル本体に作用する外力等に対応してペダル本体にがたつきが生じやすいものとなる。特許文献2に記載のものでは、ペダル本体を支持する支持軸がスプリングの伸縮に応じて変動しやすいため、ペダル本体の操作感を良好に維持することが難しくなる。特許文献3に記載のものでは、車両の衝突時にペダルブラケットが拡開変形される際に、斜め方向の荷重が作用する等によりペダル本体が傾斜状態になると、ペダル本体のペダルブラケットからの確実な離脱ということを確保することが難しくなる。以上に加えて、ペダル本体に対して、乗員による踏み込み操作に起因して下方への大きな外力が作用したときに、ペダル本体が不用意に下方へ大きく変位しないようにすることが望まれることになる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、通常時でのペダル本体の操作感が良好で、しかも車両の衝突時にはペダル踏み込み部の後退を確実に防止できるようにし、しかもペダル本体の不用意な下方への変位をも確実に規制できるようにした操作ペダルの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
ダッシュパネルに支持されて車体の前後方向に揺動操作される操作ペダルの支持構造であって、
前記ダッシュパネルに取付けられたペダルブラケットと、
車幅方向に伸びる第1支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持されたペダル本体と、
車幅方向に伸びる第2支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持され、車両の衝突時に車体側部材と当接することにより該第2支軸を中心に所定方向に回動されて前記第1支軸を下方へ押圧変位させることにより、該ペダルブラケットによる該第1支軸の支持を解除させるための回動レバーと、
通常時には前記第1支軸の下方に位置されて該第1支軸の下方への移動を規制する規制状態とされ、車両の衝突時には前記回動レバーの前記所定方向の回動に連動して該第1支軸の下方から待避された規制解除状態とされる規制部材と、
を備えているようにしてある。
【0007】
上記解決手法によれば、ペダル本体の揺動支点となる第1支軸は、ペダルブラケットそのものに支持されているので、通常時におけるペダル本体の操作感が良好なものとなる。また、車両の衝突時には、ペダル本体とは別途設けられて、車体側部材に当接されることによって回動される回動レバーを利用して、ペダル本体の揺動支点となる第1支軸をペダルブラケットから強制的に下方へ変位させてペダルブラケットによる第1支軸の支持を解除するので、ペダル踏み込み部の後退が確実に防止されることになる。そして、通常時においては、規制部材によって第1支軸の落下が確実に規制されることになる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記規制部材は、通常時には前記ペダルブラケットに前記規制状態でもって保持され、車両の衝突時には前記所定方向に回動される前記回動レバーからの押圧力を受けて該ペダルブラケットから脱落されて前記規制解除状態とされる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、回動レバーの押圧によって規制部材を脱落させることによって、規制解除状態を確実に確保することができる。
【0009】
前記規制部材が、前記回動レバーに揺動自在に保持されて、前記回動レバーが前記所定方向に回動されたときに、該規制部材に設けられた係合部が前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態となるように揺動される、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、規制部材は、その揺動に応じて規制状態と規制解除状態とに姿勢変更されるが、回動レバーの所定方向への回動に応じて規制部材に設けた係合部がペダルブラケットに係合することによって規制解除状態とされるので、規制解除を確実に行う上で好ましいものとなる。
【0010】
前記規制状態にある前記規制部材は、通常時には、前記第1支軸から下方への押圧力を受けたときに、前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態に向けての揺動が規制される、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、通常時において、第1支軸が下方へ変位しようとして規制部材を下方へ押圧したときは、規制部材がペダルブラケットに係合することによって規制状態が強固に維持されることになる。また、規制状態を維持させるための力を極力回動レバーに作用させないようにすることができる。
【0011】
前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに形成された支持孔に回動自在に挿通されることにより該ペダルブラケットに保持されており、
前記ペダルブラケットに、前記支持孔から連続して下方に伸びると共に前記第1支軸の外径よりも細幅とされた逃げ開口部が形成されており、
通常時は、前記逃げ開口部の対向縁部によって前記1支軸が該逃げ開口部を通して下方へ移動するのが規制される一方、車両の衝突時には、前記回動レバーから押圧される該第1支軸が該逃げ開口部を強制的に押し拡げつつ下方へ移動される、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、第1支軸を支持する部分が支持孔という孔形式であるので、極めて簡単な構造とすることができる。そして、車両の衝突時には、逃げ開口部が強制的に拡開されて、第1支軸が下方へ移動されることになるが、このような第1支軸の下方への移動経路が支持孔に連なる開口部の形式とされているので、支持孔および逃げ開口部を含めて全体的に極めて簡単な構造とすることができる。
【0012】
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットから離脱される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、ペダル本体の上端部が完全にフリーとなるので、車両の衝突時にペダル踏み込み部の後退をより一層確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0013】
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位される、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、車両の衝突時に、第1支軸そのものはペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位されるので、ペダル踏み込み部の後退を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通常時でのペダル本体の良好な操作感を確保でき、車両の衝突時におけるペダル踏み込み部の後退を確実に防止でき、しかも通常時におけるペダル本体の落下を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1において、1はエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルであり、このダッシュパネル1には、その後面側においてペダルブラケット3が固定されると共に、その前面側においてブレーキブースタ4が固定されている。ペダルブラケット3には、ペダル本体2および回動レバー5が、それぞれ車両前後方向に揺動自在に取付けられている。なお、実施形態では、ペダル本体2はブレーキペダル用とされている。
【0016】
図2に示すように、ペダルブラケット3は、ダッシュパネル1にボルト固定される取付基板6と、取付基板6の左右両端部から車体後方側に伸びる左右一対のブラケット本体7とを有する。ブラケット本体7の後端部には、ペダル本体2が操作されたことを検出するセンサ(図示略)用の取付ブラケット8が下方に向けて突設されている。ブラケット本体7は、取付基板6の左右両側辺部から車体後方側に伸びる左右一対の鉛直板9と、各鉛直板9の下端部から車幅方向に伸びる左右一対の水平板10と、水平板10の外側端部から下方に伸びる左右一対の外側板11とを有して、全体的に強度(剛性)の優れたものとされている。
【0017】
上記鉛直板9には、ペダル本体2の揺動支点となる第1支軸13用の支持孔14が形成されている。第1支軸13は、ボルトを利用して構成されて、その軸部を、ブラケット本体7の一方側の支持孔14、ペダル本体2の上端部に構成されたボス部21(の挿通孔)、他方側の支持孔14を挿通させて、その先端部にナット22が螺合される。これにより、第1支軸13のボルト頭部23および上記ナット22によって、左右の支持孔14の周縁部に対して車幅方向から圧接した状態でもって、第1支軸13の取付けが行われる。
【0018】
上記支持孔14の下方には、鉛直板9から水平板10および外側板11に渡って、大きな開口面積を有する開口部19が形成されている。そして、鉛直板9には、支持孔14と開口部19とを連通させる上下方向に短く伸びる逃げ開口部40が形成されている(特に図4参照)。この逃げ開口部40の開口幅は、支持孔14の直径つまり第1支軸13の外径よりも小さく設定されている。この逃げ開口部40を画成する前後方向に相対向する対向縁部が、前後一対の支持突起部40aとされている。この一対の支持突起部40aによって、支持孔14に挿通された第1支軸13が、通常時において下方に落下(移動)するのが規制されている。なお、この前後一対の支持突起部40aは、後述する車両の衝突時においては、回動レバー5からの下方への大きな押圧力を受ける第1支軸13によって強制的に変形される弱化部とされて、第1支軸13は拡開された逃げ開口部40を通して開口部19へ移動するのが許容される。なお、支持突起部40aを明確に示すために、車両の衝突後の状態となる図6においては、支持突起部40aが変形される前の状態を示してある。
【0019】
回動レバー5は、第2支軸17の挿通孔25が形成された左右一対の側板27と、左右の側板27の上端部同士を互いに連結する天板28とを有する。ブラケット本体7の鉛直板9には、前記支持孔14の後方側において、回動レバー5の揺動支点となる第2支軸17用の支持孔18が形成されている。第2支軸17は、ボルトを利用して構成されて、その軸部を、ブラケット本体7の一方側の挿通孔18,回動レバー5の左右一対の挿通孔25、ブラケット本体7の他方側の挿通孔18を挿通させて、その先端部にナット37が螺合される。これにより、第2支軸17のボルト頭部38および上記ナット37によって、左右の挿通孔18の周縁部に対して車幅方向から圧接した状態でもって、第2支軸17の取付けが行われる。上記のような圧接状態によって得られる大きな摩擦抵抗によって、回動レバー5は、乗員から受ける程度の外力によっては回動しないようにされている。このような回動レバー5の各側板27のうち、第1支軸13(ボス部21)の上方に位置する部分が、後述する車両の衝突時において第1支軸13(ボス部21)を下方を押圧するための押圧部5aとされている。
【0020】
第1支軸13(ボス部21)の近傍には、規制部材51が配設されている。この規制部材51は、通常時における回動レバー5の前方において、ブラケット本体7から突設された短い係止ピン52に対して係合されて、図3の所定位置に保持されている。すなわち、規制部材51には、その前上端部に、係止ピン52ががたつきなくかつ回動自在に嵌合される係合孔51aが形成され、この係合孔51aに連通させて、上方に開口される切欠部51bが形成されている、この切欠部51bは、上方に向かうにつれて徐々に幅広くなるように形成されている。したがって、規制部材51が、係止ピン52近傍において下方への大きな押圧力を受けると、規制部材51は、係止ピン52に対する係合が解除されて(係止ピン52が切欠部51bを通過する)、下方へ移動(脱落)されるようになっている。
【0021】
上記規制部材51は、第1支軸13の下方にまで細長く伸びて、第1支軸13の直下方に位置する部分が、第1支軸13の落下を規制する規制部51cとされている。図3の状態が、規制部材51によって第1支軸13の下方への落下を規制した規制状態であり、係止ピン52を中心として図3の状態から時計方向に規制部材51が回動(揺動)されたときに、上記規制部51cが第1支軸13の下方から待避されて規制解除状態となる。図3の規制状態を維持するように、図3の規制状態にある規制部材51の直前方位置には、ブラケット本体7から切り起こし等により短く突設された係止突部53が形成されている。この係止突部53によって、規制部材51は、図3の規制状態から規制解除状態に回動することが規制されている。規制部51c(以下の第2の実施形態以下における規制部においても同じ)は、実際には、第1支軸13の周囲にあるボス部21の下方でかつその直近に位置されて、第1支軸13が支持孔14から下方へ抜け出る前の状態でもって、規制部51cがボス部21に下方から当接するようにされている。なお、第1支軸13が支持孔14から下方へ抜け出る途中状態あるいは抜け出た直後の状態のときに、規制部51cがボス部21に対して下方から当接されるような配置関係であってもよい。さらに、規制部材51には、車両の衝突時に、回動レバー5からの下方への押圧力を受けるための受圧部51dが形成されている。なお、このような規制部材51は回動レバー5の左右一対設けられるが、図2では一方の規制部材51は図示を略してある。もっとも、規制部材51は、左右いずれか一方のみに設けるようにしてもよい(このことは以下の別の実施形態についても同じ)。
【0022】
図1に示すように、回動レバー5の後方側には、パイプ材からなって車幅方向に伸びる強度部材としてのステアリング支持部材32が配設され、このステアリング支持部材32に、ブロック材等からなる剛性に優れた車体側部材33が固定されている。この車体側部材33は、通常時においては回動レバー5の後端から所定距離離間している。そして、車両の衝突時(前方衝突時)に、ブラケット本体7つまり回動レバー5が後退すると、回動レバー5が車体側部材33に当接する一方、車体側部材33(ステアリング支持部材32)の後退動は殆どないので、回動レバー5が、その大きな摩擦抵抗に抗して第2支軸17を中心にして前方へ回動される大きな外力を受けることになる(図1,図3,反時計方向の回動で、この回動方向が所定方向の回動となる)。
【0023】
以上のような構成において、通常時には、第1支軸13は支持孔14内にある(図1、図3の状態)。この通常時においては、ペダル本体2の下端部にあるペダル踏み込み部34を足踏み操作することによって、ペダル本体2が第1支軸13を中心にして前方に揺動されて、ブレーキブースタ4を押圧する(通常のブレーキ機能)。ペダル踏み込み部34への足踏みを解除することによって、ペダル本体2が図示を略すリターンスプリングによって後方へ揺動復帰される。このような通常時でのペダル本体2の前後方向への揺動は、第1支軸13が、ブラケット本体7の支持孔14に直接指示されていること、および前後一対の支持突起部40aによって第1支軸13の支持孔14からの脱落が規制されていることから円滑に行われて、ペダル本体2の良好な操作感が確保される。乗員によるペダル踏み込み操作によってペダル本体2に対して下方への大きな外力が作用しても、規制部材51によって、第1支軸13の落下が確実に防止されることになり、乗員のペダル操作に応じたペダル本体2の揺動が確実に確保されることになる。
【0024】
車両の衝突時においては、ダッシュパネル1ひいてはブラケット本体7が後方へ移動され、これに応じて回動レバー5も後方へ移動して、やがて車体側部材33に対して回動レバー5の後端が当接される。回動レバー5が車体側部材33に当接した後になおもブラケット本体7が後方へ移動しようとすると、回動レバー5が、車体側部部材33から前方(図1、図3反時計方向)に向けて回動するような大きな外力を受けることになる。回動レバー5が前方へ回動されると、まず、規制部材51(の受圧部51d)を下方へ押圧して、規制部材51の係止ピン52に対する係合を強制的に解除させて、規制部材51を落下させる。規制部材51が落下された後の回動レバー5のさらなる前方への回動によって、その押圧部5aが、第1支軸13(ボス部21)を大きな力でもって下方へ押圧することになる。下方への大きな力を受けた第1支軸13は、逃げ開口部40を拡開するように一対の支持突起部40aを塑性変形させて、開口部19内へと落下される。第1支軸13が支持孔14から落下された状態が、図6および図7に示される。
【0025】
第1支軸13が、支持孔14から逃げ開口部40を通して開口部19へと落下された状態では、第1支軸13のブラケット本体7からの離脱状態となり、この離脱状態では、ペダル本体2の上端部が後方へ大きく移動することが可能な状態となる。このように、ペダル本体2の上端部が後方へ移動することが可能な状態では、ペダル踏み込み部34に足を載せた状態の乗員に対して、後方への大きな負荷が作用することが防止されて、乗員(の足部)が効果的に保護されることになる。上記第1支軸13の支持孔14からの落下は、車体側部材33からの押圧力を受ける回動レバー5の回動を利用して行われるので、確実に行われて、乗員の保護が確実に行われることになる。
【0026】
図8、図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付してその重複した説明は省略する(このことは第3の実施形態以下においても同じ)。本実施形態では、規制部材51に相当する規制部材が符合61で示される。この規制部材61は、レバー状(細長状)とされて、回動レバー5の前端部外側面に対して、車幅方向に短く伸びる取付ピン62によって、回動レバー5に揺動自在に取付けられている(揺動させるには比較的大きな力を要するように設定さいる−このことは以下のさらに別の実施形態についても同じ)。規制部材61の規制部61c(前記実施形態の51cに対応)が、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置されている。ブラケット本体7には、規制部材61の上端部の直後方位置において、規制部材61が取付ピン62を中心として図8時計方向、つまり規制解除方向へ揺動するのを規制するストッパ63が突設(例えば切り起こしやピン部材の植設)されている。さらに、ブラケット本体7には、規制部材61の上端部を挟んでストッパ63とは反対側において、車幅方向に短く伸びる係止突部64が形成されている(例えば切り起こしやピン部材の植設等によって形成)。車両の衝突時には、回動レバー5の前方への回動(第2支軸17を中心とした図8反時計方向の回動)に応じて、規制部材61の揺動支点62も第2支軸17を中心として図8版時計方向に回動される結果、規制部材61の上端部が係止突部64に当接されて、規制解除状態に向けて回動されることになる。なお、規制状態を維持するための力(第1支軸13に作用する下方への力)は、ブラケット本体7によって受け止めるので、回動レバー5に対して規制状態維持のために大きな回動力を作用させないようにする上で好ましいものとなる。
【0027】
図10,図11は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態においては、規制部材71(51あるいは61に対応)が、取付ピン72によって回動レバー5に取付けられている点において、第2の実施形態の場合と同様である。規制部材71のうち、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合71cで示される。本実施形態では、第2の実施形態におけるストッパ62に相当するものを有しないものとされている。すなわち、第1支軸13(ボス部21)の上方には、規制部71cと第1支軸13の軸心とを結ぶ延長軌跡上あるいはその近傍に位置させて、取付ピン72が位置設定されている。これにより、図10に示す通常時において、規制部材71cに下方への押圧力が作用しても、規制部材71には取付ピン72を中心とする大きな回動モ−メントが発生しないので、規制部材71はなんら回動されることなく規制状態を確実に維持することになる。
【0028】
規制部材71の上端部には、車幅方向に短く折曲された係合部71dが形成されている。この係合部71dは、車両の衝突時に、ブラケット本体7に係合(当接)されて、規制部材71を規制解除状態へ回動させるためのものとなっている。すなわち、車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方(図10反時計方向)に回動されると、これに伴って、取付ピン72も、第2支軸17を中心として反時計方向へと揺動され、この揺動に伴って上記係合部71dがブラケット本体7に係合されて、規制部材71が取付ピン72を中心として図10時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。規制部材71が規制解除状態となった後、回動レバー5によって、第1支軸13が下方へ押圧されることになる。
【0029】
回動レバー5の前端部には、斜め下方に伸びる延長押圧部71eが形成されている。この延長押圧部71eは、回動レバー5の前方への回動に応じて、第1支軸13が支持孔14から脱落した後に、ペダル本体2の上端部を後方へ押圧する。このペダル本体2の上端部が後方へ押圧されることにより、車両の衝突時における乗員への足部への負荷を軽減する上で好ましいものとなる。なお、このような延長押圧部71eは、他の実施形態における回動レバー5に対して設けることもできる。
【0030】
図12は、本発明の第4の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材81(51等に対応)は、ほぼ前後方向に伸びるロッド状とされていて、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合81cで示される。この規制部材81は、その後端部が、連結ピン82によって、回動レバー5の後下端部に対して連結されている。そして、ブラケット本体7に形成されたガイド突起部83によって、下方への変位が規制されつつ、ほぼ前後方向にスライド可能に支持されている(ガイド突起部83は、例えば切り起こしやピン部材の植設によって形成)。図12は、通常時における規制状態が示されるが、車両の衝突時には、回動レバー5の前方への回動に応じて、連結ピン72が後方へ変位されるので、規制部材81は後方へと変位されて、規制解除状態となる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0031】
図13は、本発明の第5の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材91(51等に対応)が、略コ字状とされて、取付ピン92によって回動レバー5に対して回動自在に取付けられている。器)部91のうち、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合91cで示される。本実施形態では、規制部材91を図13に示す通常時における規制状態に維持するためのストッパを別途有しないものとなっている(図10,図11に示す実施形態の場合と同じ)、すなわち、第1支軸13(ボス部21)の上方には、規制部91cと第1支軸13の軸心とを結ぶ延長軌跡上あるいはその近傍に位置させて、取付ピン92が位置設定されている。これにより、図13に示す状態から、規制部91cに下方への押圧力が作用しても、規制部材91には取付ピン92を中心とする回動モ−メントが発生しないので、規制部材91はなんら回動されることなく規制状態を確実に維持することになる。
【0032】
回動レバー5には、車両の衝突時に、規制部材91の一端部側を規制解除状態に向けて押圧するための押圧部93が形成されている(例えば切り起こしやピン部材の植設等により形成)。すなわち、車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方(図13反時計方向)に回動されると、押圧部93が規制部材91を押圧するために、規制部材91も回動レバー5の回動に応じて図13反時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0033】
図14は、本発明の第6の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材101(51等にに対応)が、ほぼ前後方向に細長く伸びて、その規制部が符合101cで示される。規制部材101は、その前端部が、第1支軸13よりも前方位置において、取付ピン102によってブラケット本体7に回動自在に取付けられている。また、回動レバー5の後下端部には、前方へ向けて鉤型に湾曲された支承部5cが形成されて、この支承部5c上に、規制部材101の後端部が支承されている。これにより、通常時には、規制部材101は、その前端部が取付ピン102によってブラケット本体7に保持され、その後端部が回動レバー5の支承部5cに保持されて、規制状態を確実に維持することになる。
【0034】
車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方へ回動されると、回動レバー5の支承部5cによる規制部材101の後端部の支承が解除されて、規制部材101はその自重によって取付ピン102を中心として図14時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0035】
図15は、本発明の第7の実施形態を示すものである。本実施形態では、支持孔14と開口部19とを連通させる逃げ開口部40に相当する逃げ開口部43が、下方に向かうにつれて後方に位置するように若干傾斜設定されている。また、開口部19の前上端部には、一旦上方へ短く伸びた後、上方へ向かうにつれて後方に位置するように傾斜された切欠部44が形成されている。そして、通常時において、回動レバー5の側板27に突設された係止部45が、上記切欠部44のうち開口部19近傍部分に挿入されている。なお、係止部45は、例えば回動レバー5の側板27を部分的に切りおこすことにより形成したり、側板27にピン部材を別途突設する等により形成することができる。
【0036】
逃げ開口部50の対向縁部となる支持突起部43a(40aに相当)は、車両の衝突時に拡開変形されようとするが、前方の支持突起部43aは、切欠部44内に係止部45が挿入されていることから、逃げ開口部43を拡開する方向には変形しずらいものとなる。つまり、通常時において、第1支軸13を支持孔14内に保持さておく機能が、係止部45によって補強されることになる。一方、車両の衝突時には、回動レバー5の回動に応じて、係止部45が切欠部44から脱出され、その後、回動レバー5によって第1支軸13(ボス部21)が下方へ押圧される。このように、車両の衝突時には、あらかじめ係止部45による逃げ開口部43の拡開変形規制状態が解除された後、第1支軸13の下方への押圧が行われて、第1支軸13が逃げ開口部43を通して開口部19へと移動されることになる。逃げ開口部43が、下方に向かうにつれて後方に位置するように傾斜設定されているため、第1支軸13は、車両の衝突時には下方へ変位されつつ後方へも変位されて、ペダル踏み込み部34に位置される乗員の足部に対して大きな負荷を与えないようにする上でより一層好ましいものとなる。
【0037】
図16は、本発明の第8の実施形態を示すものである。本実施形態では、開口部19に相当するガイド開口部48を、前後方向に長く形成して、後端部側については前後方向にほぼまっすぐ伸びる直線状に形成する一方、前端部側においては、前方に向かうにつれて徐々に上方に位置するように傾斜(円弧状の湾曲)させてある。そして、支持孔14が、ガイド開口部48の前端部の上方に形成されて、逃げ開口部40の下端がガイド開口部48の前上端に連なっている。本実施形態でも、車両の衝突時には、第1支軸13が下方かつ後方へと変位されることになり、乗員の足部保護の上でより一層好ましいものとなる。ただし、本実施形態では、ガイド開口部48は、車幅方向において支持孔14とほぼ同一平面に位置するように設定されて、第1支軸13がガイド開口部48内に位置されたままとされる。なお、ガイド開口部48の開口幅は第1支軸13の外径よりもかなり大きくされて、第1支軸13が、ガイド開口部48内(特にほぼ前後方向にまっすぐ伸びる部分)では自由に動き得るようにされている。
【0038】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。まず、通常時において、回動レバー5による第1支軸13を下方へ押圧する方向への回動(その反対方向への回動についても同じ)を規制するストッパ部を別途形成して、このストッパ部をブラケット本体7の側板27に形成された係止孔に挿入させるようにしてもよい。これにより、通常時での回動レバー5の図5反時計方向への揺動つまり第1支軸13を下方へ押圧する方向への回動をより確実に規制して、通常時において第1支軸13を支持孔14内に確実に保持させておく上でより一層好ましいものとなる。なお、上記ストッパ部は弱化部となるもので、車両の衝突時には、容易に変形されて回動レバー5による第1支軸13の下方への押圧が許容されるものである。このようなストッパ部は、例えば、回動レバー5の側板27を部分的に切りおこすことにより形成したり、側板27にピン部材を別途突設する等により形成することができる。上記とは逆に、上述のようなストッパ部をブラケット本体7(の側面)に形成する一方、このストッパ部が挿入される係止孔を回動レバー5に形成するようにしてもよい。通常時において回動レバー5の前方への回動を規制するために、回動レバー5の前方への回動軌跡途中(例えば回動レバー5の直前方位置)に、上記のような弱化部としてのストッパ部を突設してもよい。このようなストッパ部は、例えばブラケット本体7の側面を部分的に切り起こすことにより、あるいは別途ピン部材を突設させる等によって形成することができる。
【0039】
支持孔14を、全周囲が閉じられた円環状に形成すると共に、支持孔14の周縁部のうち下端部に相当する部分を部分的に薄肉にしたり、上下方向に細幅にする等の弱化部を形成して、車両の衝突時には、この弱化部を破断して第1支軸13が下方へ変位するようにしてもよい。第1支軸13や第2支軸17のブラケット本体7への支持は、左右2箇所において行う場合に限らず、1箇所あるいは3箇所以上の支持であってもよい。ペダル本体2としては、ブレーキブースタ4を作動させるためのブレーキペダルに限らず、クラッチペダル、アクセルペダル、駐車ブレーキ用ペダル等、足踏み操作される適宜のペダルとすることができる。車両の衝突時に回動レバー5を回動させるための車体側部材33を、回動レバー5の前方側に配設してもよい(この場合は、回動レバー5は、車両の衝突時に図3、図5時計方向に回動されることになる)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体側面図。
【図2】ブラケット本体、ペダル本体および回動レバー等の具体的構造を示す分解斜視図。
【図3】ブラケット本体と回動レバーと規制部材と第1支軸との関係を示す要部側面図。
【図4】第1支軸用の支持孔部分の詳細を示す要部拡大側面図。
【図5】図3の一部省略斜視図。
【図6】車両の衝突後における回動レバーと第1支軸と支持孔との関係を示すもので、図3に対応した側面図。
【図7】車両の衝突時にブラケット本体から離脱されたペダル本体を示す正面断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図9】図8の要部斜視図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図11】図10の要部斜視図。
【図12】本発明の第4の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図13】本発明の第5の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図14】本発明の第6の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図15】本発明の第7の実施形態を示すもので、第1支軸用の支持孔部分の様子を示す要部拡大側面図。
【図16】本発明の第8の実施形態を示すもので、第1支軸用の支持孔部分の様子を示す要部側面図。
【符号の説明】
【0041】
1:ダッシュパネル
2:ペダル本体
3:ペダルブラケット
5:回動レバー
7:ブラケット本体
13:第1支軸
14:支持孔
17:第2支軸
18:支持孔
19:開口部
33:車体側部材
34:ペダル踏み込み部
40:逃げ開口部
40a:支持突起部
43:逃げ開口部(図15)
43a:支持突起部(図15)
48:ガイド開口部(図16)
51:規制部材(図3)
61:規制部材(図8、図9)
71:規制部材(図10、図11)
81:規制部材(図12)
91:規制部材(図13)
101:規制部材(図14)
【技術分野】
【0001】
本発明は操作ペダルの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルやクラッチペダル等の車両前後方向に揺動操作されるペダル本体は、ペダルブラケットを介してダッシュパネルに支持されるようになっている。すなわち、ダッシュパネルに対してペダルブラケットが固定されて、ペダル本体は、その上端部が車幅方向に伸びる第1支軸を介してペダルブラケットに対して前後方向に揺動自在に保持される一方、その下端部が乗員によって足踏み操作されるペダル踏み込み部とされている。このようなペダル本体は、車両の衝突時(前方衝突時)に、乗員の足部保護のために、ペダル踏み込み部が大きく後方へ移動しないようにすることが要求される。
【0003】
特許文献1には、ペダルブラケットに対して回動レバーを車幅方向に伸びる第2支軸によって揺動自在に保持させて、車両の衝突時には、回動レバーが車体側部材と当接することにより第2支軸を中心として回動されて、この回動レバーの回動によって、ペダル本体を支持している第1支軸を強制的に後方へ変位させることが提案されている。特許文献2には、車両の衝突時に、ペダル本体の揺動支点となる回転軸を、ペダル本体の下端部に設けられたペダル踏み込み部に対して相対的に車両後方側に変位させるようなペダル支持構造において、上記回転軸を上方の初期位置に保持させるためにスプリングの付勢力を利用したものが開示されている。特許文献3には、車両の衝突時に、ペダル本体の支軸を保持するペダルブラケットを車幅方向に拡開変形させることにより、ペダルブラケットからペダル本体を離脱させるものが開示されている。
【特許文献1】特表2005−510785号公報
【特許文献2】特許3269372号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第0659615号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載のものでは、通常時に、回動レバーにペダル本体の支持軸を支持させているため、ペダル本体に作用する外力等に対応してペダル本体にがたつきが生じやすいものとなる。特許文献2に記載のものでは、ペダル本体を支持する支持軸がスプリングの伸縮に応じて変動しやすいため、ペダル本体の操作感を良好に維持することが難しくなる。特許文献3に記載のものでは、車両の衝突時にペダルブラケットが拡開変形される際に、斜め方向の荷重が作用する等によりペダル本体が傾斜状態になると、ペダル本体のペダルブラケットからの確実な離脱ということを確保することが難しくなる。以上に加えて、ペダル本体に対して、乗員による踏み込み操作に起因して下方への大きな外力が作用したときに、ペダル本体が不用意に下方へ大きく変位しないようにすることが望まれることになる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、通常時でのペダル本体の操作感が良好で、しかも車両の衝突時にはペダル踏み込み部の後退を確実に防止できるようにし、しかもペダル本体の不用意な下方への変位をも確実に規制できるようにした操作ペダルの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
ダッシュパネルに支持されて車体の前後方向に揺動操作される操作ペダルの支持構造であって、
前記ダッシュパネルに取付けられたペダルブラケットと、
車幅方向に伸びる第1支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持されたペダル本体と、
車幅方向に伸びる第2支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持され、車両の衝突時に車体側部材と当接することにより該第2支軸を中心に所定方向に回動されて前記第1支軸を下方へ押圧変位させることにより、該ペダルブラケットによる該第1支軸の支持を解除させるための回動レバーと、
通常時には前記第1支軸の下方に位置されて該第1支軸の下方への移動を規制する規制状態とされ、車両の衝突時には前記回動レバーの前記所定方向の回動に連動して該第1支軸の下方から待避された規制解除状態とされる規制部材と、
を備えているようにしてある。
【0007】
上記解決手法によれば、ペダル本体の揺動支点となる第1支軸は、ペダルブラケットそのものに支持されているので、通常時におけるペダル本体の操作感が良好なものとなる。また、車両の衝突時には、ペダル本体とは別途設けられて、車体側部材に当接されることによって回動される回動レバーを利用して、ペダル本体の揺動支点となる第1支軸をペダルブラケットから強制的に下方へ変位させてペダルブラケットによる第1支軸の支持を解除するので、ペダル踏み込み部の後退が確実に防止されることになる。そして、通常時においては、規制部材によって第1支軸の落下が確実に規制されることになる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記規制部材は、通常時には前記ペダルブラケットに前記規制状態でもって保持され、車両の衝突時には前記所定方向に回動される前記回動レバーからの押圧力を受けて該ペダルブラケットから脱落されて前記規制解除状態とされる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、回動レバーの押圧によって規制部材を脱落させることによって、規制解除状態を確実に確保することができる。
【0009】
前記規制部材が、前記回動レバーに揺動自在に保持されて、前記回動レバーが前記所定方向に回動されたときに、該規制部材に設けられた係合部が前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態となるように揺動される、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、規制部材は、その揺動に応じて規制状態と規制解除状態とに姿勢変更されるが、回動レバーの所定方向への回動に応じて規制部材に設けた係合部がペダルブラケットに係合することによって規制解除状態とされるので、規制解除を確実に行う上で好ましいものとなる。
【0010】
前記規制状態にある前記規制部材は、通常時には、前記第1支軸から下方への押圧力を受けたときに、前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態に向けての揺動が規制される、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、通常時において、第1支軸が下方へ変位しようとして規制部材を下方へ押圧したときは、規制部材がペダルブラケットに係合することによって規制状態が強固に維持されることになる。また、規制状態を維持させるための力を極力回動レバーに作用させないようにすることができる。
【0011】
前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに形成された支持孔に回動自在に挿通されることにより該ペダルブラケットに保持されており、
前記ペダルブラケットに、前記支持孔から連続して下方に伸びると共に前記第1支軸の外径よりも細幅とされた逃げ開口部が形成されており、
通常時は、前記逃げ開口部の対向縁部によって前記1支軸が該逃げ開口部を通して下方へ移動するのが規制される一方、車両の衝突時には、前記回動レバーから押圧される該第1支軸が該逃げ開口部を強制的に押し拡げつつ下方へ移動される、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、第1支軸を支持する部分が支持孔という孔形式であるので、極めて簡単な構造とすることができる。そして、車両の衝突時には、逃げ開口部が強制的に拡開されて、第1支軸が下方へ移動されることになるが、このような第1支軸の下方への移動経路が支持孔に連なる開口部の形式とされているので、支持孔および逃げ開口部を含めて全体的に極めて簡単な構造とすることができる。
【0012】
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットから離脱される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、ペダル本体の上端部が完全にフリーとなるので、車両の衝突時にペダル踏み込み部の後退をより一層確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0013】
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位される、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、車両の衝突時に、第1支軸そのものはペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位されるので、ペダル踏み込み部の後退を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通常時でのペダル本体の良好な操作感を確保でき、車両の衝突時におけるペダル踏み込み部の後退を確実に防止でき、しかも通常時におけるペダル本体の落下を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1において、1はエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルであり、このダッシュパネル1には、その後面側においてペダルブラケット3が固定されると共に、その前面側においてブレーキブースタ4が固定されている。ペダルブラケット3には、ペダル本体2および回動レバー5が、それぞれ車両前後方向に揺動自在に取付けられている。なお、実施形態では、ペダル本体2はブレーキペダル用とされている。
【0016】
図2に示すように、ペダルブラケット3は、ダッシュパネル1にボルト固定される取付基板6と、取付基板6の左右両端部から車体後方側に伸びる左右一対のブラケット本体7とを有する。ブラケット本体7の後端部には、ペダル本体2が操作されたことを検出するセンサ(図示略)用の取付ブラケット8が下方に向けて突設されている。ブラケット本体7は、取付基板6の左右両側辺部から車体後方側に伸びる左右一対の鉛直板9と、各鉛直板9の下端部から車幅方向に伸びる左右一対の水平板10と、水平板10の外側端部から下方に伸びる左右一対の外側板11とを有して、全体的に強度(剛性)の優れたものとされている。
【0017】
上記鉛直板9には、ペダル本体2の揺動支点となる第1支軸13用の支持孔14が形成されている。第1支軸13は、ボルトを利用して構成されて、その軸部を、ブラケット本体7の一方側の支持孔14、ペダル本体2の上端部に構成されたボス部21(の挿通孔)、他方側の支持孔14を挿通させて、その先端部にナット22が螺合される。これにより、第1支軸13のボルト頭部23および上記ナット22によって、左右の支持孔14の周縁部に対して車幅方向から圧接した状態でもって、第1支軸13の取付けが行われる。
【0018】
上記支持孔14の下方には、鉛直板9から水平板10および外側板11に渡って、大きな開口面積を有する開口部19が形成されている。そして、鉛直板9には、支持孔14と開口部19とを連通させる上下方向に短く伸びる逃げ開口部40が形成されている(特に図4参照)。この逃げ開口部40の開口幅は、支持孔14の直径つまり第1支軸13の外径よりも小さく設定されている。この逃げ開口部40を画成する前後方向に相対向する対向縁部が、前後一対の支持突起部40aとされている。この一対の支持突起部40aによって、支持孔14に挿通された第1支軸13が、通常時において下方に落下(移動)するのが規制されている。なお、この前後一対の支持突起部40aは、後述する車両の衝突時においては、回動レバー5からの下方への大きな押圧力を受ける第1支軸13によって強制的に変形される弱化部とされて、第1支軸13は拡開された逃げ開口部40を通して開口部19へ移動するのが許容される。なお、支持突起部40aを明確に示すために、車両の衝突後の状態となる図6においては、支持突起部40aが変形される前の状態を示してある。
【0019】
回動レバー5は、第2支軸17の挿通孔25が形成された左右一対の側板27と、左右の側板27の上端部同士を互いに連結する天板28とを有する。ブラケット本体7の鉛直板9には、前記支持孔14の後方側において、回動レバー5の揺動支点となる第2支軸17用の支持孔18が形成されている。第2支軸17は、ボルトを利用して構成されて、その軸部を、ブラケット本体7の一方側の挿通孔18,回動レバー5の左右一対の挿通孔25、ブラケット本体7の他方側の挿通孔18を挿通させて、その先端部にナット37が螺合される。これにより、第2支軸17のボルト頭部38および上記ナット37によって、左右の挿通孔18の周縁部に対して車幅方向から圧接した状態でもって、第2支軸17の取付けが行われる。上記のような圧接状態によって得られる大きな摩擦抵抗によって、回動レバー5は、乗員から受ける程度の外力によっては回動しないようにされている。このような回動レバー5の各側板27のうち、第1支軸13(ボス部21)の上方に位置する部分が、後述する車両の衝突時において第1支軸13(ボス部21)を下方を押圧するための押圧部5aとされている。
【0020】
第1支軸13(ボス部21)の近傍には、規制部材51が配設されている。この規制部材51は、通常時における回動レバー5の前方において、ブラケット本体7から突設された短い係止ピン52に対して係合されて、図3の所定位置に保持されている。すなわち、規制部材51には、その前上端部に、係止ピン52ががたつきなくかつ回動自在に嵌合される係合孔51aが形成され、この係合孔51aに連通させて、上方に開口される切欠部51bが形成されている、この切欠部51bは、上方に向かうにつれて徐々に幅広くなるように形成されている。したがって、規制部材51が、係止ピン52近傍において下方への大きな押圧力を受けると、規制部材51は、係止ピン52に対する係合が解除されて(係止ピン52が切欠部51bを通過する)、下方へ移動(脱落)されるようになっている。
【0021】
上記規制部材51は、第1支軸13の下方にまで細長く伸びて、第1支軸13の直下方に位置する部分が、第1支軸13の落下を規制する規制部51cとされている。図3の状態が、規制部材51によって第1支軸13の下方への落下を規制した規制状態であり、係止ピン52を中心として図3の状態から時計方向に規制部材51が回動(揺動)されたときに、上記規制部51cが第1支軸13の下方から待避されて規制解除状態となる。図3の規制状態を維持するように、図3の規制状態にある規制部材51の直前方位置には、ブラケット本体7から切り起こし等により短く突設された係止突部53が形成されている。この係止突部53によって、規制部材51は、図3の規制状態から規制解除状態に回動することが規制されている。規制部51c(以下の第2の実施形態以下における規制部においても同じ)は、実際には、第1支軸13の周囲にあるボス部21の下方でかつその直近に位置されて、第1支軸13が支持孔14から下方へ抜け出る前の状態でもって、規制部51cがボス部21に下方から当接するようにされている。なお、第1支軸13が支持孔14から下方へ抜け出る途中状態あるいは抜け出た直後の状態のときに、規制部51cがボス部21に対して下方から当接されるような配置関係であってもよい。さらに、規制部材51には、車両の衝突時に、回動レバー5からの下方への押圧力を受けるための受圧部51dが形成されている。なお、このような規制部材51は回動レバー5の左右一対設けられるが、図2では一方の規制部材51は図示を略してある。もっとも、規制部材51は、左右いずれか一方のみに設けるようにしてもよい(このことは以下の別の実施形態についても同じ)。
【0022】
図1に示すように、回動レバー5の後方側には、パイプ材からなって車幅方向に伸びる強度部材としてのステアリング支持部材32が配設され、このステアリング支持部材32に、ブロック材等からなる剛性に優れた車体側部材33が固定されている。この車体側部材33は、通常時においては回動レバー5の後端から所定距離離間している。そして、車両の衝突時(前方衝突時)に、ブラケット本体7つまり回動レバー5が後退すると、回動レバー5が車体側部材33に当接する一方、車体側部材33(ステアリング支持部材32)の後退動は殆どないので、回動レバー5が、その大きな摩擦抵抗に抗して第2支軸17を中心にして前方へ回動される大きな外力を受けることになる(図1,図3,反時計方向の回動で、この回動方向が所定方向の回動となる)。
【0023】
以上のような構成において、通常時には、第1支軸13は支持孔14内にある(図1、図3の状態)。この通常時においては、ペダル本体2の下端部にあるペダル踏み込み部34を足踏み操作することによって、ペダル本体2が第1支軸13を中心にして前方に揺動されて、ブレーキブースタ4を押圧する(通常のブレーキ機能)。ペダル踏み込み部34への足踏みを解除することによって、ペダル本体2が図示を略すリターンスプリングによって後方へ揺動復帰される。このような通常時でのペダル本体2の前後方向への揺動は、第1支軸13が、ブラケット本体7の支持孔14に直接指示されていること、および前後一対の支持突起部40aによって第1支軸13の支持孔14からの脱落が規制されていることから円滑に行われて、ペダル本体2の良好な操作感が確保される。乗員によるペダル踏み込み操作によってペダル本体2に対して下方への大きな外力が作用しても、規制部材51によって、第1支軸13の落下が確実に防止されることになり、乗員のペダル操作に応じたペダル本体2の揺動が確実に確保されることになる。
【0024】
車両の衝突時においては、ダッシュパネル1ひいてはブラケット本体7が後方へ移動され、これに応じて回動レバー5も後方へ移動して、やがて車体側部材33に対して回動レバー5の後端が当接される。回動レバー5が車体側部材33に当接した後になおもブラケット本体7が後方へ移動しようとすると、回動レバー5が、車体側部部材33から前方(図1、図3反時計方向)に向けて回動するような大きな外力を受けることになる。回動レバー5が前方へ回動されると、まず、規制部材51(の受圧部51d)を下方へ押圧して、規制部材51の係止ピン52に対する係合を強制的に解除させて、規制部材51を落下させる。規制部材51が落下された後の回動レバー5のさらなる前方への回動によって、その押圧部5aが、第1支軸13(ボス部21)を大きな力でもって下方へ押圧することになる。下方への大きな力を受けた第1支軸13は、逃げ開口部40を拡開するように一対の支持突起部40aを塑性変形させて、開口部19内へと落下される。第1支軸13が支持孔14から落下された状態が、図6および図7に示される。
【0025】
第1支軸13が、支持孔14から逃げ開口部40を通して開口部19へと落下された状態では、第1支軸13のブラケット本体7からの離脱状態となり、この離脱状態では、ペダル本体2の上端部が後方へ大きく移動することが可能な状態となる。このように、ペダル本体2の上端部が後方へ移動することが可能な状態では、ペダル踏み込み部34に足を載せた状態の乗員に対して、後方への大きな負荷が作用することが防止されて、乗員(の足部)が効果的に保護されることになる。上記第1支軸13の支持孔14からの落下は、車体側部材33からの押圧力を受ける回動レバー5の回動を利用して行われるので、確実に行われて、乗員の保護が確実に行われることになる。
【0026】
図8、図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付してその重複した説明は省略する(このことは第3の実施形態以下においても同じ)。本実施形態では、規制部材51に相当する規制部材が符合61で示される。この規制部材61は、レバー状(細長状)とされて、回動レバー5の前端部外側面に対して、車幅方向に短く伸びる取付ピン62によって、回動レバー5に揺動自在に取付けられている(揺動させるには比較的大きな力を要するように設定さいる−このことは以下のさらに別の実施形態についても同じ)。規制部材61の規制部61c(前記実施形態の51cに対応)が、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置されている。ブラケット本体7には、規制部材61の上端部の直後方位置において、規制部材61が取付ピン62を中心として図8時計方向、つまり規制解除方向へ揺動するのを規制するストッパ63が突設(例えば切り起こしやピン部材の植設)されている。さらに、ブラケット本体7には、規制部材61の上端部を挟んでストッパ63とは反対側において、車幅方向に短く伸びる係止突部64が形成されている(例えば切り起こしやピン部材の植設等によって形成)。車両の衝突時には、回動レバー5の前方への回動(第2支軸17を中心とした図8反時計方向の回動)に応じて、規制部材61の揺動支点62も第2支軸17を中心として図8版時計方向に回動される結果、規制部材61の上端部が係止突部64に当接されて、規制解除状態に向けて回動されることになる。なお、規制状態を維持するための力(第1支軸13に作用する下方への力)は、ブラケット本体7によって受け止めるので、回動レバー5に対して規制状態維持のために大きな回動力を作用させないようにする上で好ましいものとなる。
【0027】
図10,図11は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態においては、規制部材71(51あるいは61に対応)が、取付ピン72によって回動レバー5に取付けられている点において、第2の実施形態の場合と同様である。規制部材71のうち、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合71cで示される。本実施形態では、第2の実施形態におけるストッパ62に相当するものを有しないものとされている。すなわち、第1支軸13(ボス部21)の上方には、規制部71cと第1支軸13の軸心とを結ぶ延長軌跡上あるいはその近傍に位置させて、取付ピン72が位置設定されている。これにより、図10に示す通常時において、規制部材71cに下方への押圧力が作用しても、規制部材71には取付ピン72を中心とする大きな回動モ−メントが発生しないので、規制部材71はなんら回動されることなく規制状態を確実に維持することになる。
【0028】
規制部材71の上端部には、車幅方向に短く折曲された係合部71dが形成されている。この係合部71dは、車両の衝突時に、ブラケット本体7に係合(当接)されて、規制部材71を規制解除状態へ回動させるためのものとなっている。すなわち、車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方(図10反時計方向)に回動されると、これに伴って、取付ピン72も、第2支軸17を中心として反時計方向へと揺動され、この揺動に伴って上記係合部71dがブラケット本体7に係合されて、規制部材71が取付ピン72を中心として図10時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。規制部材71が規制解除状態となった後、回動レバー5によって、第1支軸13が下方へ押圧されることになる。
【0029】
回動レバー5の前端部には、斜め下方に伸びる延長押圧部71eが形成されている。この延長押圧部71eは、回動レバー5の前方への回動に応じて、第1支軸13が支持孔14から脱落した後に、ペダル本体2の上端部を後方へ押圧する。このペダル本体2の上端部が後方へ押圧されることにより、車両の衝突時における乗員への足部への負荷を軽減する上で好ましいものとなる。なお、このような延長押圧部71eは、他の実施形態における回動レバー5に対して設けることもできる。
【0030】
図12は、本発明の第4の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材81(51等に対応)は、ほぼ前後方向に伸びるロッド状とされていて、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合81cで示される。この規制部材81は、その後端部が、連結ピン82によって、回動レバー5の後下端部に対して連結されている。そして、ブラケット本体7に形成されたガイド突起部83によって、下方への変位が規制されつつ、ほぼ前後方向にスライド可能に支持されている(ガイド突起部83は、例えば切り起こしやピン部材の植設によって形成)。図12は、通常時における規制状態が示されるが、車両の衝突時には、回動レバー5の前方への回動に応じて、連結ピン72が後方へ変位されるので、規制部材81は後方へと変位されて、規制解除状態となる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0031】
図13は、本発明の第5の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材91(51等に対応)が、略コ字状とされて、取付ピン92によって回動レバー5に対して回動自在に取付けられている。器)部91のうち、第1支軸13(ボス部21)の下方に位置される規制部が符合91cで示される。本実施形態では、規制部材91を図13に示す通常時における規制状態に維持するためのストッパを別途有しないものとなっている(図10,図11に示す実施形態の場合と同じ)、すなわち、第1支軸13(ボス部21)の上方には、規制部91cと第1支軸13の軸心とを結ぶ延長軌跡上あるいはその近傍に位置させて、取付ピン92が位置設定されている。これにより、図13に示す状態から、規制部91cに下方への押圧力が作用しても、規制部材91には取付ピン92を中心とする回動モ−メントが発生しないので、規制部材91はなんら回動されることなく規制状態を確実に維持することになる。
【0032】
回動レバー5には、車両の衝突時に、規制部材91の一端部側を規制解除状態に向けて押圧するための押圧部93が形成されている(例えば切り起こしやピン部材の植設等により形成)。すなわち、車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方(図13反時計方向)に回動されると、押圧部93が規制部材91を押圧するために、規制部材91も回動レバー5の回動に応じて図13反時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0033】
図14は、本発明の第6の実施形態を示すものである。本実施形態では、規制部材101(51等にに対応)が、ほぼ前後方向に細長く伸びて、その規制部が符合101cで示される。規制部材101は、その前端部が、第1支軸13よりも前方位置において、取付ピン102によってブラケット本体7に回動自在に取付けられている。また、回動レバー5の後下端部には、前方へ向けて鉤型に湾曲された支承部5cが形成されて、この支承部5c上に、規制部材101の後端部が支承されている。これにより、通常時には、規制部材101は、その前端部が取付ピン102によってブラケット本体7に保持され、その後端部が回動レバー5の支承部5cに保持されて、規制状態を確実に維持することになる。
【0034】
車両の衝突時に、回動レバー5が第2支軸17を中心にして前方へ回動されると、回動レバー5の支承部5cによる規制部材101の後端部の支承が解除されて、規制部材101はその自重によって取付ピン102を中心として図14時計方向に回動されて、規制解除状態とされる。この規制解除となった後、回動レバー5によって第1支軸13が下方へ押圧変位される。
【0035】
図15は、本発明の第7の実施形態を示すものである。本実施形態では、支持孔14と開口部19とを連通させる逃げ開口部40に相当する逃げ開口部43が、下方に向かうにつれて後方に位置するように若干傾斜設定されている。また、開口部19の前上端部には、一旦上方へ短く伸びた後、上方へ向かうにつれて後方に位置するように傾斜された切欠部44が形成されている。そして、通常時において、回動レバー5の側板27に突設された係止部45が、上記切欠部44のうち開口部19近傍部分に挿入されている。なお、係止部45は、例えば回動レバー5の側板27を部分的に切りおこすことにより形成したり、側板27にピン部材を別途突設する等により形成することができる。
【0036】
逃げ開口部50の対向縁部となる支持突起部43a(40aに相当)は、車両の衝突時に拡開変形されようとするが、前方の支持突起部43aは、切欠部44内に係止部45が挿入されていることから、逃げ開口部43を拡開する方向には変形しずらいものとなる。つまり、通常時において、第1支軸13を支持孔14内に保持さておく機能が、係止部45によって補強されることになる。一方、車両の衝突時には、回動レバー5の回動に応じて、係止部45が切欠部44から脱出され、その後、回動レバー5によって第1支軸13(ボス部21)が下方へ押圧される。このように、車両の衝突時には、あらかじめ係止部45による逃げ開口部43の拡開変形規制状態が解除された後、第1支軸13の下方への押圧が行われて、第1支軸13が逃げ開口部43を通して開口部19へと移動されることになる。逃げ開口部43が、下方に向かうにつれて後方に位置するように傾斜設定されているため、第1支軸13は、車両の衝突時には下方へ変位されつつ後方へも変位されて、ペダル踏み込み部34に位置される乗員の足部に対して大きな負荷を与えないようにする上でより一層好ましいものとなる。
【0037】
図16は、本発明の第8の実施形態を示すものである。本実施形態では、開口部19に相当するガイド開口部48を、前後方向に長く形成して、後端部側については前後方向にほぼまっすぐ伸びる直線状に形成する一方、前端部側においては、前方に向かうにつれて徐々に上方に位置するように傾斜(円弧状の湾曲)させてある。そして、支持孔14が、ガイド開口部48の前端部の上方に形成されて、逃げ開口部40の下端がガイド開口部48の前上端に連なっている。本実施形態でも、車両の衝突時には、第1支軸13が下方かつ後方へと変位されることになり、乗員の足部保護の上でより一層好ましいものとなる。ただし、本実施形態では、ガイド開口部48は、車幅方向において支持孔14とほぼ同一平面に位置するように設定されて、第1支軸13がガイド開口部48内に位置されたままとされる。なお、ガイド開口部48の開口幅は第1支軸13の外径よりもかなり大きくされて、第1支軸13が、ガイド開口部48内(特にほぼ前後方向にまっすぐ伸びる部分)では自由に動き得るようにされている。
【0038】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。まず、通常時において、回動レバー5による第1支軸13を下方へ押圧する方向への回動(その反対方向への回動についても同じ)を規制するストッパ部を別途形成して、このストッパ部をブラケット本体7の側板27に形成された係止孔に挿入させるようにしてもよい。これにより、通常時での回動レバー5の図5反時計方向への揺動つまり第1支軸13を下方へ押圧する方向への回動をより確実に規制して、通常時において第1支軸13を支持孔14内に確実に保持させておく上でより一層好ましいものとなる。なお、上記ストッパ部は弱化部となるもので、車両の衝突時には、容易に変形されて回動レバー5による第1支軸13の下方への押圧が許容されるものである。このようなストッパ部は、例えば、回動レバー5の側板27を部分的に切りおこすことにより形成したり、側板27にピン部材を別途突設する等により形成することができる。上記とは逆に、上述のようなストッパ部をブラケット本体7(の側面)に形成する一方、このストッパ部が挿入される係止孔を回動レバー5に形成するようにしてもよい。通常時において回動レバー5の前方への回動を規制するために、回動レバー5の前方への回動軌跡途中(例えば回動レバー5の直前方位置)に、上記のような弱化部としてのストッパ部を突設してもよい。このようなストッパ部は、例えばブラケット本体7の側面を部分的に切り起こすことにより、あるいは別途ピン部材を突設させる等によって形成することができる。
【0039】
支持孔14を、全周囲が閉じられた円環状に形成すると共に、支持孔14の周縁部のうち下端部に相当する部分を部分的に薄肉にしたり、上下方向に細幅にする等の弱化部を形成して、車両の衝突時には、この弱化部を破断して第1支軸13が下方へ変位するようにしてもよい。第1支軸13や第2支軸17のブラケット本体7への支持は、左右2箇所において行う場合に限らず、1箇所あるいは3箇所以上の支持であってもよい。ペダル本体2としては、ブレーキブースタ4を作動させるためのブレーキペダルに限らず、クラッチペダル、アクセルペダル、駐車ブレーキ用ペダル等、足踏み操作される適宜のペダルとすることができる。車両の衝突時に回動レバー5を回動させるための車体側部材33を、回動レバー5の前方側に配設してもよい(この場合は、回動レバー5は、車両の衝突時に図3、図5時計方向に回動されることになる)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体側面図。
【図2】ブラケット本体、ペダル本体および回動レバー等の具体的構造を示す分解斜視図。
【図3】ブラケット本体と回動レバーと規制部材と第1支軸との関係を示す要部側面図。
【図4】第1支軸用の支持孔部分の詳細を示す要部拡大側面図。
【図5】図3の一部省略斜視図。
【図6】車両の衝突後における回動レバーと第1支軸と支持孔との関係を示すもので、図3に対応した側面図。
【図7】車両の衝突時にブラケット本体から離脱されたペダル本体を示す正面断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図9】図8の要部斜視図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図11】図10の要部斜視図。
【図12】本発明の第4の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図13】本発明の第5の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図14】本発明の第6の実施形態を示すもので、図3に対応した要部側面図。
【図15】本発明の第7の実施形態を示すもので、第1支軸用の支持孔部分の様子を示す要部拡大側面図。
【図16】本発明の第8の実施形態を示すもので、第1支軸用の支持孔部分の様子を示す要部側面図。
【符号の説明】
【0041】
1:ダッシュパネル
2:ペダル本体
3:ペダルブラケット
5:回動レバー
7:ブラケット本体
13:第1支軸
14:支持孔
17:第2支軸
18:支持孔
19:開口部
33:車体側部材
34:ペダル踏み込み部
40:逃げ開口部
40a:支持突起部
43:逃げ開口部(図15)
43a:支持突起部(図15)
48:ガイド開口部(図16)
51:規制部材(図3)
61:規制部材(図8、図9)
71:規制部材(図10、図11)
81:規制部材(図12)
91:規制部材(図13)
101:規制部材(図14)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルに支持されて車体の前後方向に揺動操作される操作ペダルの支持構造であって、
前記ダッシュパネルに取付けられたペダルブラケットと、
車幅方向に伸びる第1支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持されたペダル本体と、
車幅方向に伸びる第2支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持され、車両の衝突時に車体側部材と当接することにより該第2支軸を中心に所定方向に回動されて前記第1支軸を下方へ押圧変位させることにより、該ペダルブラケットによる該第1支軸の支持を解除させるための回動レバーと、
通常時には前記第1支軸の下方に位置されて該第1支軸の下方への移動を規制する規制状態とされ、車両の衝突時には前記回動レバーの前記所定方向の回動に連動して該第1支軸の下方から待避された規制解除状態とされる規制部材と、
を備えていることを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記規制部材は、通常時には前記ペダルブラケットに前記規制状態でもって保持され、車両の衝突時には前記所定方向に回動される前記回動レバーからの押圧力を受けて該ペダルブラケットから脱落されて前記規制解除状態とされる、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記規制部材が、前記回動レバーに揺動自在に保持されて、前記回動レバーが前記所定方向に回動されたときに、該規制部材に設けられた係合部が前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態となるように揺動される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記規制状態にある前記規制部材は、通常時には、前記第1支軸から下方への押圧力を受けたときに、前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態に向けての揺動が規制される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに形成された支持孔に回動自在に挿通されることにより該ペダルブラケットに保持されており、
前記ペダルブラケットに、前記支持孔から連続して下方に伸びると共に前記第1支軸の外径よりも細幅とされた逃げ開口部が形成されており、
通常時は、前記逃げ開口部の対向縁部によって前記1支軸が該逃げ開口部を通して下方へ移動するのが規制される一方、車両の衝突時には、前記回動レバーから押圧される該第1支軸が該逃げ開口部を強制的に押し拡げつつ下方へ移動される、
ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットから離脱される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項1】
ダッシュパネルに支持されて車体の前後方向に揺動操作される操作ペダルの支持構造であって、
前記ダッシュパネルに取付けられたペダルブラケットと、
車幅方向に伸びる第1支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持されたペダル本体と、
車幅方向に伸びる第2支軸を介して前記ペダルブラケットに揺動自在に保持され、車両の衝突時に車体側部材と当接することにより該第2支軸を中心に所定方向に回動されて前記第1支軸を下方へ押圧変位させることにより、該ペダルブラケットによる該第1支軸の支持を解除させるための回動レバーと、
通常時には前記第1支軸の下方に位置されて該第1支軸の下方への移動を規制する規制状態とされ、車両の衝突時には前記回動レバーの前記所定方向の回動に連動して該第1支軸の下方から待避された規制解除状態とされる規制部材と、
を備えていることを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記規制部材は、通常時には前記ペダルブラケットに前記規制状態でもって保持され、車両の衝突時には前記所定方向に回動される前記回動レバーからの押圧力を受けて該ペダルブラケットから脱落されて前記規制解除状態とされる、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記規制部材が、前記回動レバーに揺動自在に保持されて、前記回動レバーが前記所定方向に回動されたときに、該規制部材に設けられた係合部が前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態となるように揺動される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記規制状態にある前記規制部材は、通常時には、前記第1支軸から下方への押圧力を受けたときに、前記ペダルブラケットに係合されて前記規制解除状態に向けての揺動が規制される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに形成された支持孔に回動自在に挿通されることにより該ペダルブラケットに保持されており、
前記ペダルブラケットに、前記支持孔から連続して下方に伸びると共に前記第1支軸の外径よりも細幅とされた逃げ開口部が形成されており、
通常時は、前記逃げ開口部の対向縁部によって前記1支軸が該逃げ開口部を通して下方へ移動するのが規制される一方、車両の衝突時には、前記回動レバーから押圧される該第1支軸が該逃げ開口部を強制的に押し拡げつつ下方へ移動される、
ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットから離脱される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
車両の衝突時に、前記回動レバーによって下方へ押圧変位された前記第1支軸が、前記ペダルブラケットに保持されつつ下方かつ後方へ変位される、ことを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−276729(P2007−276729A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108772(P2006−108772)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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