説明

操作子及び再生システム

【課題】 記憶したデータをユーザの所望通りに再生するためのユーザインタフェース技術を提供する。
【解決手段】 操作子30は、本体42と、本体42に設けられた第1の回転体48と、第1の回転体48の回転状態を検出し、回転状態に関する情報を生成する回転検出部52と、記憶したデータを読出す再生装置10に接続され、当該再生装置10がデータの読出しを第1の回転体48の回転状態に応じて制御するよう、当該再生装置10に第1の回転検出部48が生成した情報を転送する出力部38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶したデータをユーザの所望通りに再生するためのユーザインタフェース技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の進展に伴い、アナログレコードを用いた特殊再生(所謂スクラッチ再生等)と同様の特殊再生をCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録されたデジタルデータについて行うことが可能な再生装置が一般的になっている。この再生装置は、特にクラブ、ホームパーティ等においてDJ(Disc Jockey)等によって好ましく用いられている。
【0003】
この再生装置は、記録媒体から再生したデジタルオーディオ信号をバッファメモリに記憶する。再生装置は、例えば、アナログレコード用ターンテーブルに似せたジョグダイヤルを備え、ジョグダイヤルの回転方向及び回転速度に応じて、バッファメモリに記憶されたオーディオ信号の読み出し速度及び順序を制御する。ジョグダイヤルをアナログレコードと同様に回転操作することにより、DJ等の操作者は、アナログレコードプレーヤを用いた場合と同様の擦れ音(スクラッチ音)等の効果音を発生させることができる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−199126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターンテーブル様の操作子を用いることで、元々アナログレコードを用いてスクラッチ音を発生させていた操作者に親しみのある操作感を実現できる。しかし、操作子の径をアナログレコードの径(例えば略30cm)に近似させる必要があり、装置のサイズが大きくなってしまう。また、アナログレコードを知らないような操作者によっては、スクラッチ音を発生させることができればよく、必ずしもターンテーブル様の操作子を用いる必要はない場合もある。さらに、近年、いわゆるDJプレイをコンピュータ上で実現可能なソフトウェアも開発されており、一般的なコンピュータに操作入力するためのユーザインタフェースが望まれていた。本発明は、上記従来技術における問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の態様における操作子は、本体と、前記本体に設けられた回転体と、前記回転体の回転状態を検出し、回転状態に関する情報を生成する回転検出部と、記憶したデータを読出す再生装置に接続され、当該再生装置がデータの読出しを前記回転体の回転状態に応じて制御するよう、当該再生装置に前記回転検出部が生成した情報を転送する出力部と、を備える。
この構成によれば、ユーザは例えばローラ状の回転体を備える操作子を一定方向に前後移動させることにより、操作子の前後移動に応じて再生装置におけるデータの読出しを制御できる(スクラッチ機能)。このように、本発明によれば、再生装置と別体に設けた操作子を用いて所望のスクラッチ操作を実現可能である。従って、従来のアナログレコード様のジョグダイヤルを用いるDJプレイの概念を超えたプレイが可能となる、再生装置にジョグダイヤル等を設ける必要がなく再生装置の小型化が可能となる等の効果が得られる。
【0007】
上記構成の操作子は、前記回転体と同方向に回転可能な第2の回転体をさらに備える。2つの回転体を備えることにより、操作子は安定に移動可能となる。
【0008】
上記構成の操作子は、前記第2の回転体に付与される圧力を検出し、当該圧力に関する圧力情報を生成する圧力検出部をさらに備えてもよく、前記出力部は、接続される再生装置がデータの読出しを前記第2の回転体に付与される圧力に応じて制御するよう、前記圧力検出部が生成した圧力情報を当該再生装置に転送するようにしてもよい。
この構成により、ユーザは第2の回転体に圧力がかかるよう操作子を押さえることにより、再生装置におけるデータの読出しを制御することができる。例えば、再生装置は、圧力が所定レベル以上であれば圧力に応じて読出し速度を減少させ(ピッチベンド機能)、圧力がさらに増大した場合には、読出しを停止する。
【0009】
本発明は、再生装置と、上記構成の操作子と、から構成される再生システムとして提供しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のDJプレイの概念を超えたプレイを実現可能とする操作子及び再生装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る実施の形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、これに限定されない。
【0012】
本実施の形態に係る再生システムは、図1に示すように、再生装置と、操作子と、から構成される。
【0013】
図1に示す再生装置10は、再生部12と、RAM(Random Access Memory)14と、メモリ制御部16と、DAC(Digital to Analog Converter)18と、表示部20と、操作部22と、入力部24と、システム制御部26と、を備える。
再生装置10は、オーディオデータを再生する機能のみを有する再生装置であってもよく、このような再生機能を有するソフトウェアがインストールされた汎用パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0014】
再生部12は、記録媒体の読み取りドライブから構成され、CD、DVD等の記録媒体に記録されたデジタルデータを読み取り、再生する。再生部12は、デジタルオーディオデータが記憶された外付けメモリ、例えば、外付けハードディスク、フラッシュメモリ等からデジタルデータを読み出してもよい。
【0015】
RAM14は、システム制御部26の制御により分離されメモリ制御部16に入力されたデジタルオーディオ信号を記憶する。
【0016】
メモリ制御部16は、RAM14のメモリアドレスを管理する。また、メモリ制御部16は、システム制御部26により指示されたアドレス順及び速度で、RAM14に記憶されたオーディオデータを読み出す。
【0017】
DAC18は、メモリ制御部16によりRAM14から読み出されたデジタルオーディオデータをアナログオーディオ信号に変換する。DAC18から出力されたアナログオーディオ信号は、出力端子19を介してスピーカ等の機器に出力される。なお、出力先がデジタル入力可能なインタフェースを備える場合には、DAC18を介さずに出力するようにしてもよい。DAC18と出力端子19との間にアンプを設け、増幅したアナログオーディオ信号を出力してもよい。
【0018】
表示部20は、液晶表示装置等から構成される。表示部20は、現在再生しているトラック、ファイルの再生時間、操作内容等の操作に必要な情報を表示する。
【0019】
操作部22は、再生ボタン、再生停止ボタン等を備え(いずれも図1中図示せず)、操作者の操作を介して指示入力を受け付ける。
【0020】
入力部24には、後述する操作子30からの制御信号が入力される。本例における入力部24は、図示しない内蔵アンテナを備え、後述する操作子からの無線信号を受信し、制御部に送出する。
【0021】
システム制御部26は、再生装置10の動作を統括的に制御する。システム制御部26は、入力部24からの制御信号に応じて、RAM14に記憶されたデジタルデータを読み出すようメモリ制御部16を制御する。
【0022】
操作子30は、再生装置10におけるRAM14に記憶されたオーディオ信号の再生順序及び再生速度に関する操作者からの入力を受け付け、再生装置10に制御信号を送出する。
操作子30は、電源制御部32と、切り換え部34と、操作検出部36と、出力部38と、制御部40と、を備える。
【0023】
電源制御部32は、操作子30に搭載される電池からの電力供給のオンオフを制御する。電池は一次又は二次電池であり、例えば、ボタン電池、単三電池である。
切り換え部34は、電源制御部32による電池電源供給のオンオフについての指示入力を操作者から受け付ける。切り換え部34は、例えば切り換えボタンを備え、操作者は切り換えボタンを操作することにより電源をオンオフする。
【0024】
操作検出部36は、再生装置10におけるRAM14に記憶されたオーディオ信号の再生に関する操作者による指示入力を受け付ける。操作検出部36は、RAM14に記録されたオーディオデータのメモリ制御部16による読出しの順序及び速度に関する指示入力を受け付ける。
【0025】
出力部38は、操作検出部36が受け付けた操作指示入力を予め定められた制御信号に変換する。出力部38は、生成した制御信号を、記録装置の入力部24に転送する。
【0026】
操作子30の構造の一例を図2に示す。図2に操作子30の側断面図を示す。
【0027】
図2に示す操作子30は、中空箱形の本体42を備え、本体42の上面(図の上方)はドーム状に形成されている。本体42は、例えば、一般的な成人男性の指2〜3本分の幅を有し、例えば鶏卵程度の大きさを有する。しかし、これに限らず、本体42は、操作者が操作しやすいサイズ・形状であればよい。本体42の上面には、例えば可撓性材料よりなるバンド43が設けられ、操作者の指を固定可能とされている。
【0028】
本体42内部には、図示しない回路素子及び電池44が収容される。図示しない回路素子は、上述した、操作子30の機能を実現する。電池44は例えば、本体42の底面上に配設され、図示しない回路素子等に電力を供給する。本体42の底面は、少なくとも一部が取り外し可能であり、電池44交換可能とされている。
本体42の少なくとも一方の側部には、切り替えボタン46が設けられ、操作子30の電源のオンオフが切り替え可能とされている。電源のオンオフを示すLED(Light Emission Diode)等を設けてもよい。
【0029】
本体42の底面には、ローラ状の第1及び第2の回転体48、50が回転可能に配設されている。第1及び第2の回転体5048、50の回転により、本体42は前後方向(図の左右方向)に移動可能である。すなわち、操作者は、バンド43に指を固定した状態で、操作子30を前後に移動させることができる。第1及び第2の回転体48、50は、例えばシリコンゴム等から構成される。
【0030】
図3に図2のA−A’矢視線断面図を示す。図に示すように、第1の回転体48は、本体42にその両端が回転可能に固定された第1の回転軸51を中心として回転可能である。
【0031】
第1の回転体48は、回転検出部52によりその回転方向及び回転速度が検出される。回転検出部52は、例えば、ロータリエンコーダを備え、第1の回転体48の回転方向及び回転速度をデジタル信号情報に変換して制御部40に出力する。制御部40は、受け取った信号を出力部38を介して再生装置10に転送する。再生装置10のシステム制御部26は、当該情報が示す第1の回転軸51の回転方向及び回転速度に応じて、メモリ制御部16によりRAM14からのオーディオデータの読出しを制御する(スクラッチ機能)。ここで、第1の回転体48の回転状態と、RAM14からのデータ読出しとの対応は、適宜設定可能である。
【0032】
図4に図2のB−B’矢視線断面図を示す。図に示すように、第2の回転体50は、本体42にその両端が回転可能に固定された第2の回転軸56を中心として回転可能である。第2の回転体50は、図4の上下方向に移動可能に構成されている。すなわち、例えば、第2の回転軸56を軸支する部分はサスペンション構造を有し、図示しないバネ等の弾性部材により図下方向に一定の圧力が付与されており、本体42が押下される場合にはこの力に抗して第2の回転体50は上方に移動する。
【0033】
操作子30の本体42を押圧する力、すなわち、第2の回転体50に対して上方に付与される力は、押圧検出部58により検出される。押圧検出部58は、圧力センサを含んでなり、第2の回転体50に加えられた力を数値化して制御部40に出力する。制御部40は、受け取った情報を出力部38を介して再生装置10に転送する。再生装置10のシステム制御部26は、当該信号が示す第2の回転体50に付与された力のレベルに応じて、RAM14からのデータ読出し速度を制御する。
【0034】
システム制御部26は、比較的低い圧力レベルについては切り捨て、中程度のレベルが検出された場合には、圧力レベルに応じてデータの読出し速度を低下させる(ピッチベンド機能)。圧力レベルが、所定のしきい値を超えるまで増大した場合には、データの読出しを停止する。
【0035】
以下、上記構成の再生システムの再生時の動作について説明する。
操作者は再生装置10及び操作子30の電源をオンとし、操作部22を介して再生部12からの再生開始等の操作を行う。操作者は、操作子30を一方の手の指に固定し、卓上等に置く。操作者は、他方の手で再生装置10の操作部22を操作する。
【0036】
再生装置10は、操作子30から指示入力を受けない場合、予め定めた順序(正順)及び速度(通常速度)でRAM14からデータを読出し、出力する。
【0037】
操作者が操作子30を比較的弱い力で押さえつつ前後方向に移動させたとき、操作子30から転送された信号に基づいて、システム制御部26は、第1の回転体48の回転方向及び回転速度に応じてRAM14からのデータの読み出し順序及び速度を変化させる(スクラッチ機能)。例えば、操作者が操作子30を自らから遠い方向に移動させた場合には正順でかつ通常速度よりも高速でRAM14からデータを読出すよう制御し、操作者が操作子30を自らに近い方向に移動させた場合には、逆順で通常速度よりも遅い速度でRAM14からデータを読出すよう制御する。
【0038】
操作者は操作子30を基本的に卓上等に接した状態で用いるが、操作子30を卓上等で勢いよく移動させてから卓上等から離すといった操作も可能である。この場合、第1の回転体48の回転が止まるまで回転状態に応じたデータ読出しがなされる。
操作者は、スクラッチ機能を停止したい場合には、操作子30を卓上等で停止されるか、電源を切ればよい。或いは、再生装置10の操作部22に操作子30からの信号入力を受け付けるか否かを制御するためのボタン等を設けて、当該ボタン等により機能のオンオフを制御するようにしてもよい。
【0039】
操作者が操作子30を中程度の力で押さえたとき、操作子30から転送された信号に基づいて、システム制御部26は、検出された圧力レベルに応じてRAM14からの読出し速度を減少させるよう制御する(ピッチベンド機能)。さらに操作子30が強く押さえられ、圧力レベルが所定値を超えたとき、システム制御部26は、RAM14からのデータ読出しを停止させるよう制御する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態では、再生装置10と別体に設けた操作子30を用いて再生装置10のRAM14に記憶されたデータの読出しを制御する。この構成によれば、再生装置10にアナログレコード様のジョグダイヤル等を設けることなく、再生装置10の小型化が可能となる。これは、再生部12においてCD等に記録されたファイルではなく、半導体メモリや小型ハードディスクを用いる場合に、装置の小型化において特に有効である。また、再生装置10がいわゆるDJソフトがインストールされたパーソナルコンピュータ等である場合には、操作子30を取り付けることにより、操作者にスクラッチ機能、ピッチベンド機能のためのインタフェースを提供することが可能となる。さらにまた、従来のアナログレコード様のジョグダイヤルを用いるDJプレイを望まない操作者に、新たなDJプレイの形態を提供することが可能である。
【0041】
上記実施の形態では、再生装置10と操作子30とは無線接続されるものとしたが、有線接続されても良い。例えば、再生装置10と操作子30とは、電力を供給可能なUSB(Universal Serial Bus)等で接続されてもよく、この場合には、操作子30に電池44を設けなくとも良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る再生システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る操作子の一例側断面図である。
【図3】図2に示す操作子のA−A’矢視線断面図を示す。
【図4】図2に示す操作子のB−B’矢視線断面図を示す。
【符号の説明】
【0043】
10…再生装置10、12…再生部12、14…RAM、16…メモリ制御部、18…DAC、20…表示部、22…操作部、24…入力部、26…システム制御部、30…操作子、32…電源制御部、34…切り替え部、36…操作検出部、38…出力部、40…制御部、42…本体、48…第1の回転体、50…第2の回転体、52…回転検出部、58…圧力検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられた回転体と、
前記回転体の回転状態を検出し、回転状態に関する情報を生成する回転検出部と、
記憶したデータを読出す再生装置に接続され、当該再生装置がデータの読出しを前記回転体の回転状態に応じて制御するよう、当該再生装置に前記回転検出部が生成した情報を転送する出力部と、
を備える、ことを特徴とする操作子。
【請求項2】
前記回転体と同方向に回転可能な第2の回転体をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記第2の回転体に付与される圧力を検出し、当該圧力に関する圧力情報を生成する圧力検出部をさらに備え、
前記出力部は、接続される再生装置がデータの読出しを前記第2の回転体に付与される圧力に応じて制御するよう、前記圧力検出部が生成した圧力情報を当該再生装置に転送する、
ことを特徴とする請求項2に記載の操作子。
【請求項4】
再生装置と、請求項1乃至3に記載の操作子と、から構成される再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−59118(P2008−59118A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233286(P2006−233286)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(303009467)株式会社ディーアンドエムホールディングス (274)
【Fターム(参考)】