説明

支持地盤検出装置およびそれを用いた掘削機

【課題】地盤内の支持地盤を正確に検出するために、有効電力量の検出手段と、有効電力量を用いた、掘削ロッドが支持地盤に到達したかどうかの判定手段を提供する。
【解決手段】単位掘削体積あたりの汎用モータに印加される有効電力量を検出する有効電力量検出手段と、有効電力量検出手段により検出された有効電力量があらかじめ定められた値になったときに、掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持地盤検出装置およびそれを用いた掘削機に関する。詳しくは、三相交流電源から汎用モータに電力が供給され、該汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置およびそれを用いた掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤内の強い支持層である支持地盤を検知する工法が知られている。たとえば、この工法として、先端に掘削ヘッドを有する掘削ロッドで、地盤を掘削して杭穴を形成する方法であって、下記の(式1)により求められるEpの値が予め設定した値又は掘削作業中に設定した値となった場合に、当該地盤を支持地盤と推定して、杭穴の根固め部を構築する杭穴掘削方法が知られていた(たとえば、特許文献1)。ここで、Aave1はある区間で深さL1を掘削速度vで掘削する場合の平均積算電流値であり、Vは掘削機のオーガー電圧である。また、Dは杭穴径である。
(式1)Ep=Aave1×V/(v・D・π/4) [J/m3]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の杭穴掘削方法では、Epを求めるために掘削負荷電流(積算電流値)を検出しているが、この検出される積算電流は皮相電流であって、積算電流の中には本来掘削に使用されない無効電流も含まれている(皮相電流検出方式)。この皮相電流検出方式では、力率が低く(無効電流が大きく)なってしまうと積算電流値をエネルギー換算して用いても、正確に地盤内の支持地盤を検出することができなかった。
【0005】
また、従来の杭穴掘削方法では、掘削機のオーガー電圧Vを一定として用いているが、インバータと用いた掘削機では、周波数fが低周波数の領域では電圧Vが一定にならず、(式1)を用いて正確に地盤内の支持地盤を検出することができなかった。さらに、2個のモータがそれぞれ単独のインバータにより制御され、その2個のモータにより回転駆動される掘削機では、それぞれのモータを流れる電流や電圧に位相差が生じ、単純に上記(式1)を用いても地盤内の支持地盤を検出することができなかった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる支持地盤検出装置およびそれを用いた掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、三相交流電源から汎用モータに電力が供給され、該汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、単位掘削体積あたりの汎用モータに印加される有効電力量を検出する有効電力量検出手段と、該有効電力量検出手段により検出された有効電力量があらかじめ定められた値になったときに、掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定する支持地盤判定手段とを備えたものである。
【0008】
本発明によれば、有効電力量検出手段により検出された単位掘削体積あたりの有効電力量があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。すなわち、汎用モータで実際に使用される電力の変化を検出し、その実際に汎用モータで使用される電力である有効電力量があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0009】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係る支持地盤検出装置であって、汎用モータは、インバータにより駆動制御されるものである。
【0010】
汎用モータがインバータにより駆動制御されるものであっても、有効電力量検出手段により検出された単位掘削体積あたりの有効電力量があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。すなわち、汎用モータがインバータに駆動制御される場合は、周波数fが低周波数の領域では電圧Vも周波数fに沿って低くなるが、本発明によれば、その低くなった電圧も考慮して、有効電力量検出手段により有効電力量が検出されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0011】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1の態様に係る支持地盤検出装置であって、2個の汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、各汎用モータは、各汎用モータに対応してそれぞれ設けられたインバータにより駆動制御され、有効電力量検出手段は、各汎用モータに印加される有効電力量を検出し、支持地盤判定手段は、該有効電力量検出手段に検出された各汎用モータの有効電力量の合計値があらかじめ定められた値になったときに、掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定することを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、インバータにより駆動制御される2個の汎用モータで掘削ロッドを回転駆動する場合でも、2個の汎用モータで実際に使用される電力である有効電力量の合計があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0013】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第4の態様に係るものは、三相交流電源から汎用モータに電力が供給され、該汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、単位掘削体積あたりの汎用モータに印加される有効電力量を検出する有効電力量検出手段と、該有効電力量検出手段により検出された有効電力量を標準貫入試験のN値に換算するN値換算手段と、該N値換算手段により換算されたN値があらかじめ定められた値になったときに、掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定する支持地盤判定手段とを備えたものである。
【0014】
本発明によれば、有効電力量検出手段により検出された単位掘削体積あたりの有効電力量を標準貫入試験のN値に換算するN値換算手段が設けられ、該N値換算手段により換算されたN値があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、たとえば、国の運用基準などで支持地盤の硬さの単位がN値(試験時の打ち込み回数)で規定されている場合は、その運用基準に合致した表示で正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。これにより、たとえば、支持地盤が検出された後にN値の値を基礎の設計などに使用することもできる。
【0015】
本発明のうち第5の態様に係るものは、第4の態様に係る支持地盤検出装置であって、2個の汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、各汎用モータは、各汎用モータに対応してそれぞれ設けられたインバータにより駆動制御され、有効電力量検出手段は、各汎用モータに印加される有効電力量を検出し、支持地盤判定手段は、N値換算手段により換算された各汎用モータのN値の合計値があらかじめ定められた値になったときに、掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定することを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、インバータにより駆動制御される2個の汎用モータで掘削ロッドを回転駆動する場合でも、N値換算手段により換算された各汎用モータのN値の合計値があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定されるので、国の運用基準などに合致した表示で正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0017】
本発明のうち第6の態様に係るものは、第1〜5のいずれかの態様に係る支持地盤検出装置であって、汎用モータにより回転される回転軸と一体に回動する太陽歯車と、太陽歯車の外周を覆うように、該太陽歯車に空隙を介して同軸状に配設されている内歯車と、空隙に配設され太陽歯車及び内歯車に噛合する遊星歯車と、回転軸に取り付けられた掘削ロッドと、内歯車に取り付けられた掘削刃とを、有し、掘削ロッドおよび掘削刃により掘削することを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、回転軸と一体に回動する太陽歯車と、太陽歯車の外周を覆うように、該太陽歯車に空隙を介して同軸状に配設されている内歯車と、空隙に配設され太陽歯車及び内歯車に噛合する遊星歯車と、回転軸に取り付けられた掘削ロッドと、内歯車に取り付けられた掘削刃とを有しているので、少ない歯車数で大きな減速比を得ながら掘削することができ、掘削機の小型化も図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単位掘削体積あたりの有効電力量(またはN値)を用いて掘削ロッドが支持地盤に到達したかを判定しているので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)本発明の一実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の上面図X軸方向の側面図である。 (b)同掘削機の上面図Y軸方向の側面図である。 (c)同掘削機の上面図である。
【図2】図1(b)および図1(c)のA−A断面図である。
【図3】図1(a)のB−B断面図である。
【図4】本発明の一実施形態における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図5】同支持地盤検出装置が用いられた掘削機の支持地盤検出工程を示すフローチャートである。
【図6】N値換算手段により求められた標準貫入試験のN値(合計値)をグラフ化した図である。
【図7】本発明の第一実施形態の変形例1における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態の変形例2における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態の変形例3における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図10】本発明の第二実施形態における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図11】本発明の第二実施形態の変形例1における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図12】本発明の第二実施形態の変形例2における支持地盤検出装置の回路図を示す図である。
【図13】本発明の第二実施形態の変形例3における支持地盤検出装置の回路図である。
【図14】(a)本発明の第三実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の上面図X軸方向の側面図である。 (b)同掘削機の上面図Y軸方向の側面図である。 (c)同掘削機の上面図である。
【図15】図14(a)のC−C断面図である。
【図16】図15のD−D断面図である。
【図17】本発明の第三実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の掘削刃を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
以下、本発明の支持地盤検出装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(a)は本発明の一実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の上面図X軸方向の側面図であり、図1(b)は同掘削機の上面図Y軸方向の側面図であり、図1(c)は同掘削機の上面図である。
【0022】
図1(a)に示すように、掘削機1は、内部に汎用モータ5a、5bを含み断面がU字形(御椀状)の上部ケース2と、上部ケース2にボルトやピンなどの固着手段(図示略)により固着された中空状の中部ケース3と、中部ケース3にボルトやピンなどの固着手段(図示略)により固着された中空状の下部ケース4により覆われている。この下部ケース4には中空状の下部部材7が取り付けられている。
【0023】
出力軸(回転軸)11は、後述するように汎用モータ5a、5bにより回転するもので中空状の下部部材7の下部から突出させている。この出力軸11には、ボルトやピンなどの固着手段(図示略)により掘削ロッド(ドリル)12が取り付けられている。なお、本実施形態でいう固着手段がボルトの場合には、固着される側にボルトに対応する螺子穴が設けられ、反対側にボルトと螺合するナットを設けるようにしてもよい。掘削ロッド12は、中空状で円形断面を有し地上から掘削ロッド12の内側の中空部(図示略)にセメントミルクなどを供給することにより、掘削ロッド12の先端部からそのセメントミルクなどを噴射させることができる。このようにして、掘削ロッド12を順次接続しながら掘削し、掘削ロッド12が地中に挿入される。なお、本実施形態では、掘削ロッド12を順次接続するとしたが、これに限らず、先端の掘削ロッド(ドリル)12に継ぎ手(図示略)を順次接続しながら掘削するようにしてもよい。
【0024】
次に、掘削機1の内部構造について図2を用いて説明する。図2は図1(b)および図1(c)のA-A断面図であり、図3は図1(a)のB-B断面図である。
【0025】
三相誘導電動機(誘導電動機)からなる汎用モータ5a、5bは、モータ回転軸6a、6bを回転させるもので、上部ケース3の内部にそれぞれ備えられている(図1(a)および図2参照)。また、汎用モータ5a、5bは、上部に冷却ファン(図示略)が設けられ、冷却ファン(図示略)は汎用モータ5a、5bのファン駆動軸(図示略)より回転するように構成されている。この冷却ファン(図示略)は上部ケース2の上部に備えられている。このように、汎用モータ5a、5bに冷却ファン(図示略)が設けられているので、回転により温度が上がった汎用モータ5a、5bを冷却することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、モータ回転軸6(6a、6b)とファン駆動軸(図示略)を別部材のように説明しているが、もともとモータ回転軸6(6a、6b)とファン駆動軸(図示略)は一体的に構成された汎用モータ5(5a、5b)の回転軸であり、この回転軸は汎用モータ5a、5bの駆動力により駆動される。
【0027】
2つの汎用モータ5a、5bのモータ回転軸6a、6bには、それぞれにモータ回転軸取付ボス(モータ回転軸取付手段(図示略))を用いて圧入された電動機歯車9a、9bが固着されている。このように、電動機歯車9a、9bはモータ回転軸6a、6bと固着されているので、モータ回転軸6a、6bと同心で回転することができる。
【0028】
入力歯車10は、2つの電動機歯車9a、9bと外接するように配され、電動機歯車9a、9bが回転することにより回転することができる(図2および図3参照)。入力歯車10には、入力軸取付ボス(入力軸取付手段(図示略))を用いて圧入された出力軸11が固着されている。
【0029】
次に、本実施形態における支持地盤検出装置の回路図について図4を参照にして説明する。ここで、図4は、本発明の一実施形態における支持地盤検出装置の回路図である。上述したように、2個の汎用モータ5a、5bのそれぞれに対応して設けられたインバータ8a、8bは、それぞれの汎用モータ5a、5bを駆動制御するものである。
【0030】
掘削機1に備えられた支持地盤検出装置13は、交流電源(三相交流電源)からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部14a、14bと、該コンバータ部14a、14bからの出力電圧を平滑するコンデンサ部15a、15bと、該コンデンサ部15a、15bにより平滑された直流電圧を三相交流に変換し、汎用モータ(誘導電動機)5a、5bに出力する出力ブリッジ部16a、16bと、該出力ブリッジ部16a、16bを駆動制御する制御装置(図示略)と、コンバータ部14a、14bとコンデンサ部15a、15bの間に接続された突入電流抑制抵抗部18a、18bと、該突入電流抑制抵抗部18a、18bに並列接続された第一スイッチ19a、19bと、該汎用モータ5a、5bのうちの一方の汎用モータ5(5a、5b)のコンデンサ部15(15aまたは15b)と他方の汎用モータのコンデンサ部15(15aまたは15b)を並列接続させ、該並列回路内に接続された第二スイッチ20と、該第二スイッチ20が設けられた並列回路に放電抵抗21を並列接続させ、該放電抵抗21が設けられた並列回路に接続された第三スイッチ22を有している。そして、図4に示すように、インバータ8a、8bが構成されている。
【0031】
支持地盤検出装置13は、U相電流計測器35a、35bと、W相電流計測器36a、36bと、V相電流計算器23(図示略)、U相−V相間電圧計測器37a、37bと、V相−W相間電圧計測器38a、38bと、相間−相電圧変換器39a、39bと、有効電力量検出手段40(図示略)と、N値換算手段41(図示略)と有している。
【0032】
まず電流の計測について説明すると、U相電流計測器35a、35bは、U相を流れる皮相電流Iuを計測するものであり、W相電流計測器36a、36bは、W相を流れる皮相電流Iwを計測するものである。また、V相電流計算器23(図示略)は、U相電流計測器35a、35bにより計測されたU相を流れる皮相電流値IuとW相電流計測器36a、36bにより計測されたW相を流れる皮相電流値Iwを用いて、V相を流れる皮相電流値Ivを計算するものである。具体的には、U相を流れる皮相電流IuとW相を流れる皮相電流IwとV相を流れる皮相電流Ivの和が「0」(Iu+Iv+Iw=0)になることから、この関係式を用いて、V相を流れる皮相電流値Ivが求められる。なお、本実施形態では、V相電流計算器23(図示略)を設けて、V相を流れる皮相電流値Ivを求めるようにしたが、これに限らず、V相電流計算器23(図示略)の換わりに、V相電流計測器(図示略)を設けて、V相を流れる皮相電流値Ivを計測してもよい。なお、言うまでもないが、上記の皮相電流値Iu、皮相電流値I、皮相電流値Iは、それぞれの汎用モータ5a、5bに対応して求められる。
【0033】
次に電圧の計測について説明すると、U相−V相間電圧計測器37a、37bは、U相−V相間の電圧を計測するものであり、V相−W相間電圧計測器38a、38bは、V相−W相間の電圧を計測するものである。また、相間−相電圧変換器39a、39bは、U相−V相間電圧計測器37a、37bにより計測されたU相−V相間電圧値とV相−W相間電圧計測器38a、38bにより計測されたV相−W相間電圧値を用いて、U相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewをそれぞれ求めるものである。U相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewの求め方として、たとえば、U相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewのいずれかの電圧を測定し、その電圧とU相−V相間電圧値とV相−W相間電圧値を用いて、U相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewを求めている。なお、上記電流同様、U相電圧Eu、V相電圧Ev、W相電圧Ewも、それぞれの汎用モータ5a、5bに対応して求められる。
【0034】
有効電力量検出手段40は、単位掘削体積あたりのモータ回転軸6a、6bに印加される有効電力量を検出するものである。この有効電力量検出手段40は、U相電流計測器35a、35bにより検出されたU相を流れる皮相電流値Iuと、W相電流計測器36a、36bにより検出されたW相を流れる皮相電流値Iと、V相電流計算器23(図示略)により計算されたV相を流れる皮相電流値Iと、相間−相電圧変換器39a、39bにより変換されたU相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewを用いて、単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量を求めている。具体的には、まず第一に、下記の(数1)と(数2)を用いて、この(数1)と(数2)にU相を流れる皮相電流IuとV相を流れる皮相電流IvとW相を流れる皮相電流Iw、およびU相のU相電圧EuとV相のV相電圧EvとW相のW相電圧Ewを代入して三相二相変換を行い、三相二相変換して求められた電流値(Iα、Iβ)と電圧値(Eα、Eβ)を(数3)に代入することにより瞬時有効電力Pと瞬時無効電力Qを求める(PQ理論)。
【0035】
なお、本実施形態では、有効電力量検出手段40を、説明の都合上、U相電流計測器35a、35bとW相電流計測器36a、36bとV相電流計算器23(図示略)とU相−V相間電圧計測器37a、37bとV相−W相間電圧計測器38a、38bとU相間−相電圧変換器39a、39bとを別構成として説明しているが、これに限らず、U相電流計測器35a、35bとW相電流計測器36a、36bとV相電流計算器23(図示略)とU相−V相間電圧計測器37a、37bとV相−W相間電圧計測器38a、38bと相間−相電圧変換器39a、39bを有効電力量検出手段40と別構成にする必要はなく、これらを有効電力量検出手段40の一部として、有効電力量検出手段40により、U相の電流値およぶ電圧値、W相の電流値およぶ電圧値、V相の電流値およぶ電圧値を求めるようにしてもよい(汎用モータ1つの場合も含め他の実施形態および変形例でも同様)。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

【0039】
次に、有効電力P(n)を求める。この有効電力P(n)は、深度D(たとえば、1cm)掘削する間の瞬時有効電力Pを積算することにより求めることができる。具体的には、本支持地盤検出装置13には、深度計測器(図示略)が設けられている。この深度計測器(図示略)は、掘削機1の掘削ロッド12により深度D(たとえば、1cm)の深さが掘削されるごとに深度計測パルスを発する。そして、この発せられた深度計測パスルと一つ前に発せられた深度計測パスルの間に供給された瞬時有効電力Pが積算されることにより有効電力P(n)が求められる。
【0040】
なお、一つの有効電力P(n)が計測された後は、その値がリセットされ、新たに次の深度計測パスルとそれより一つ前の深度計測パスルの間に供給された瞬時有効電力Pが積算されることにより有効電力P(n+1)が求められる。また、本実施形態では、深度D(たとえば、1cm)掘削の間に供給された瞬時有効電力Pから直接有効電力P(n)を求めたが、これに限らず、PQ理論により瞬時有効電力Pを求めた後、デジタルLPFを用いて高周波を抑制し、その高周波が抑制された瞬時有効電力Pを用いて有効電力P(n)を求めるようにしてもよい。
【0041】
次に、単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)が求められる。具体的には、単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)は、(数4)を用いて求められる。このように、有効電力量検出手段40により単位掘削体積あたりの各汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)が検出される。なお、この単位掘削体積あたりの有効電力Pval(n)は、有効電力量検出手段40が内蔵される制御装置で検出される。ここで、Dは抗穴径である。
【0042】
【数4】

【0043】
なお、本実施形態では、Pval(n)を用いて単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量としているが、本発明にいう単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量は、これに限らず、たとえば、Pval(n)をn倍(整数倍)した値や、瞬時有効電力Pを他の方法で加工した有効電力量などであってもよい(汎用モータ1つの場合も含め他の実施形態および変形例でも同様)。
【0044】
N値換算手段41は、有効電力量検出手段40により検出された有効電力量Pval(n)を標準貫入試験のN値に換算するものである。ここでは、各汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量val(n)の和がN値に換算される。ここで、標準貫入試験とは、JIS A 1219に規定される地盤の工学的性質(N値)及び試料を求めるために行われる試験ことをいい、この標準貫入試験のN値は、土の硬軟あるいは締まり具合の相対値を示す指標であり、質量63.5kgのハンマーを75cmから自由落下させ、標準貫入試験用サンプラを30cm打込むのに要する打撃回数のことである。具体的には、N値は(数5)により求められる。なお、このN値はN値換算手段41が内蔵される制御装置で検出される。ここで、mは標準貫入試験のハンマーの質量、hはハンマーの落下高さ、Sはコーンの断面積、gは重力加速度であり、NはN値である。なお、本実施形態では、(数5)で求められたNをN値として用いているが、これに限らず、たとえば、(数5)で求められたNをn倍(整数倍)した値をN値として用いてもよい(汎用モータ1つの場合も含め他の実施形態および変形例でも同様)。
【0045】
【数5】

【0046】
次に、本実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の動作について図5および図6を用いて説明する。ここで、図5は、本発明の一実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の支持地盤検出工程を示すフローチャートである。
【0047】
図5に示すように、支持地盤検出工程は、まずS1により、掘削機1の電源スイッチ(図示略)がONかが判断される。この電源スイッチ(図示略)は掘削機1の主電源であり、電源スイッチ(図示略)をONすることにより、後述するスタートスイッチ(図示略)をONにすることができる。ここで、電源スイッチ(図示略)がOFFの場合はS1でNOと判断され、電源スイッチ(図示略)がONになるまでS1の処理が行われる。そして、電源スイッチ(図示略)がONになればS1でYESと判断され、S2に進む。
【0048】
S2において、スタートスイッチ(図示略)がONかが判断される。このスタートスイッチ(図示略)は、掘削機1による掘削を開始させるためのスイッチである。すなわち、このスタートスイッチ(図示略)がONになることにより、交流電流が供給され汎用モータ5a、5bにより掘削ロッド12が回転されて掘削が開始される。ここで、スタートスイッチ(図示略)がOFFの場合はS2でNOと判断され、スタートスイッチ(図示略)がONになるまでS2の処理が行われる。そして、スタートスイッチ(図示略)がONになればS2でYESと判断され、S3に進む。このようにして、汎用モータ5a、5bの駆動力により掘削ロッド12が地中内に挿入され、掘削が開始される(S3参照)。そして、S4に進む。
【0049】
S4において、単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)が検出される(有効電力量検出工程(有効電力量検出手段))。すなわち、S4において、U相電流計測器35a、35bにより検出されたU相を流れる皮相電流値Iuと、W相電流計測器36a、36bにより検出されたW相を流れる皮相電流値Iと、V相電流計算器23(図示略)により計算されたV相を流れる皮相電流値Iと、U相−V相間電圧計測器37a、37bにより計測されたU相−V相間の電圧とV相−W相間電圧計測器38a、38bにより計測されたV相−W相間の電圧を用いて、相間−相電圧変換器39a、39bにより求められたU相電圧EuとV相電圧EvとW相電圧Ewをそれぞれ用いて、単位掘削体積あたりの各汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量val(n)が検出される(数1〜数4参照)。ここで、本実施形態では、2個の汎用モータ5a、5bを用いているので、それぞれの汎用モータ5a、5bに対応して、単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)が求められる。そして、S5に進む。
【0050】
S5において、S4により求められた単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)の合計値を標準貫入試験のN値に換算される(N値換算工程(N値換算手段))。ここで、N値は上述した(数5)を用いて求められる。なお、本実施形態では、2個の汎用モータ5a、5bを用いているので、それぞれの汎用モータ5a、5bに対応したN値の合計値が求められる。図6は、N値換算手段により求められた標準貫入試験のN値(合計値)をグラフ化した図である。そしてS6に進む。
【0051】
S6において、掘削ロッド12が支持地盤に到達したかが判定される(支持地盤判定工程(支持地盤判定手段))。このN値は、土の硬軟あるいは締まり具合の相対値を示す指標であり、硬い地盤の方がN値が高くなるので、S6ではN値が支持地盤検出値Kになった場合に支持地盤に到達したと判断している。そして、S5により求められたN値(合計値)が支持基盤検出値K以下の場合はS6でNOと判断され、N値が支持基盤検出値KになるまでS6→S3→S4→S5→S6の処理が繰り返し行われる。そして、S6により、N値が支持基盤検出値Kになったと判断されるとS6でYESと判断され、S7に進み、S7により、掘削ロッド12が支持地盤に到達したことを知らせるための報知が行われる。この報知は、音声により掘削ロッド12が支持地盤に到達したことを報知してもよいし、またディスプレ(表示手段(図示略))に表示させることにより報知してもよい。そして、S8に進む。
【0052】
S8において、掘削ロッド12により掘削された削孔から掘削ロッド12が引き上げられる。そして掘削ロッド12が引き上げられると、S9に進み、スタートスイッチ(図示略)がOFFにされ、掘削を終了する場合は、S10により電源スイッチ(図示略)がOFFにされる。なお、上述したように、本実施形態では、Pval(n)を用いて単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量としているが、本発明にいう単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量は、これに限らず、たとえば、Pval(n)をn倍(整数倍)した値や、瞬時有効電力Pを他の方法で加工した有効電力量などであってもよい(汎用モータ1つの場合も含め他の実施形態および変形例でも同様)また、本実施形態では、(数5)で求められたNをN値として用いているが、これに限らず、たとえば、(数5)で求められたNをn倍(整数倍)した値をN値として用いてもよい(汎用モータ1つの場合も含め他の実施形態および変形例でも同様)。この場合は、当然ながら、それぞれに応じて支持基盤検出値Kの値も変更することになる。
【0053】
以上説明したように、有効電力量検出手段40により検出された単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)を換算した標準貫入試験のN値があらかじめ定められた支持基盤検出値Kになったときに掘削ロッド12が支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。すなわち、汎用モータ5a、5bで実際に使用される電力の変化を検出し、その実際に汎用モータ5a、5bで使用される電力である有効電力量Pval(n)を換算したN値があらかじめ定められた支持基盤検出値Kになったときに掘削ロッド12が支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。また、N値を用いているので、国の運用基準などで支持地盤の硬さの単位がN値(試験時の打ち込み回数)で規定されている場合は、その運用基準に合致した表示で正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。これにより、たとえば、支持地盤が検出された後にN値の値を基礎の設計などに使用することもできる。
【0054】
また、汎用モータ5a、5bがインバータ8a、8bにより駆動制御されるものであっても、有効電力量検出手段40により検出された単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)を換算した標準貫入試験のN値があらかじめ定められた支持基盤検出値Kになったときに掘削ロッド12が支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。すなわち、汎用モータ5a、5bがインバータ8a、8bに駆動制御される場合は、周波数fが低周波数の領域では電圧Vも周波数fに沿って低くなるが、本発明によれば、その低くなった電圧も考慮して、有効電力量検出手段により有効電力量Pval(n)が検出されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0055】
また、インバータ8a、8bにより駆動制御される2個の汎用モータ5a、5bで掘削ロッド12を回転駆動する場合でも、2個の汎用モータ5a、5bで実際に使用される電力である有効電力量Pval(n)を換算した標準貫入試験のN値の合計値があらかじめ定められた値になったときに掘削ロッド12が支持地盤に到達したと判定されるので、正確に地盤内の支持地盤を検出することができる。
【0056】
(変形例1)
次に、本発明の第一実施形態の変形例1について図面を参照しながら説明する。第一実施形態の変形例1と第一実施形態とでは、第一実施形態ではインバータ(インバータ装置)8a、8bを用いているのに対し、変形例1ではインバータを用いず三相交流電源から直接汎用モータ5a、5bに電力を供給するところが異なる。図7は、本発明の第一実施形態の変形例1における支持地盤検出装置の回路図である。このように、インバータを用いない場合は、三相交流電源から汎用モータ5a、5bに供給される電圧が2個の汎用モータ5a、5bで同じになるので、U相−V相間電圧計測器37aと、V相−W相間電圧計測器38aと、相間−相電圧変換器39aを用いることにより、2個の汎用モータ5a、5bに供給される電圧が計測できる。これにより、U相−V相間電圧計測器37a、37bと、V相−W相間電圧計測器38a、38bと、相間−相電圧変換器39a、39bのいずれか一方の電圧計測器および電圧変換機を省略(aかbのいずれかを省略)することができる。その他は第一実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0057】
(変形例2)
次に、本発明の第一実施形態の変形例2について図面を参照しながら説明する。第一実施形態の変形例2は、第一実施形態では2個の汎用モータ5a、5bにより掘削ロッド12を回転駆動させたところを、1個の汎用モータ5aにより掘削ロッド12を回転駆動させるようにしたものである。図8は、本発明の第一実施形態の変形例2における支持地盤検出装置の回路図である。なお、第一実施形態の変形例2では、汎用モータ5aを1個にして、出力軸(回転軸)11を1個の汎用モータ5aにより回転させる点以外は第一実施形態と同様である。
【0058】
第一実施形態の変形例2の支持地盤検出装置13は、交流電源(三相交流電源)からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部14aと、該コンバータ部14aからの出力電圧を平滑するコンデンサ部15aと、該コンデンサ部15aにより平滑された直流電圧を三相交流に変換し、汎用モータ(誘導電動機)5aに出力する出力ブリッジ部16aと、該出力ブリッジ部16aを駆動制御する制御装置(図示略)と、コンバータ部14aとコンデンサ部15aの間に接続された突入電流抑制抵抗部18aと、該突入電流抑制抵抗部18aに並列接続された第一スイッチ19aと、汎用モータ5aのコンデンサ部15aと並列接続させた第二スイッチ20と、該第二スイッチ20が設けられた並列回路に放電抵抗21を接続させ、該放電抵抗21が設けられた並列回路に接続された第三スイッチ22を有している。また、第一実施形態の変形例2の支持地盤検出装置13は、U相電流計測器35aと、W相電流計測器36aと、V相電流計算器23(図示略)、U相−V相間電圧計測器37aと、V相−W相間電圧計測器38aと、相間−相電圧変換器39aと、有効電力量検出手段40(図示略)と、N値換算手段41(図示略)と有している。
【0059】
有効電力量検出手段40は、単位掘削体積あたりの汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)を検出するものである。ここで、汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)を検出する方法は、第一実施形態と同様、(数1)〜(数4)を用いて求められ、(数5)を用いて有効電力量検出手段40により検出された有効電力量Pval(n)を標準貫入試験のN値に換算される。
【0060】
N値換算手段41によりN値が求められた後は、汎用モータ5aのN値と支持地盤検出値Kを比較して掘削ロッド12が支持地盤に到着したかが判断される(S4)。このように、第一実施形態の変形例2でも、第一実施形態と同様の効果を有する。
【0061】
(変形例3)
次に、本発明の第一実施形態の変形例3について図面を参照しながら説明する。第一実施形態の変形例3と変形例2とでは、第一実施形態の変形例2ではインバータ8aを用いているのに対し、変形例3ではインバータを用いず三相交流電源から直接汎用モータに電力を供給するところが異なる。図9は、本発明の第一実施形態の変形例3における支持地盤検出装置の回路図である。図9に示すように、インバータを用いない場合も、第一実施形態の変形例2と同様、U相電流計測器35aと、W相電流計測器36aと、V相電流計算器23(図示略)、U相−V相間電圧計測器37aと、V相−W相間電圧計測器38aと、相間−相電圧変換器39aと、有効電力量検出手段40と、N値換算手段41が用いられ、単位掘削体積あたりの汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)、N値が求められる。その他の支持地盤の検出方法は、第一実施形態の変形例2と同様であるので、説明は省略する。
【0062】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照しながら説明する。第一実施形態と第二実施形態では、瞬時有効電力Pの求め方が異なる点であり、その他は第一実施形態と同じである。以下、第一実施形態と異なるところを中心に説明し、第一実施形態と同様のところは説明を省略する。図10は、本発明の第二実施形態における支持地盤検出装置の回路図である。
【0063】
第2実施形態では、U相−V相間電圧を計測する電圧計測器37a、37bと、W相を流れる電流を計測する電流計測器36a、36bと、U相−V相間電圧値とW相を流れる電流値を用いて有効電力を計算する計算機(図示略)を用いて、三相誘導電動機からなる汎用モータ5a、5bのU相−V相間電圧とW相を流れる電流を計測して、各汎用モータ5a、5bに流れる有効電力量Pval(n)を求めている。このようにすることにより、電流計測器および電圧計測器を少なくすることができる。
【0064】
次に、有効電力量Pval(n)の検出方法について説明する。上記のように計測された汎用モータ5a、5bのU相−V相間電圧とW相を流れる電流の位相差はπ/2であることから、これらの波形のπ/2〜3π/2の範囲を積分することにより、第一実施形態体の瞬時有効電力Pに相当する有効電力Pが求められる。ここで、本実施形態では、π/2〜3π/2の範囲を積分したが、これに限らず、π/2+2nπ〜3π/2+2nπ(nは整数)の範囲で積分して有効電力Pを求めてもよい。なお、本実施形態では、電流計測器36a、36bとして、5Hz〜150Hz程度までの周波数帯域において平坦な特性を有するホール素子型の電流計測器が用いられている。そして、第一実施形態と同様、深度D(たとえば、1cm)掘削の間に供給される有効電力Pを積算することにより有効電力P(n)が求められ、(数4)を用いて有効電力量Pval(n)が求められ、(数5)を用いて有効電力量検出手段40により検出された有効電力量Pval(n)が標準貫入試験のN値に換算される。なお、本実施形態では、深度Dを、たとえば、1cmとしたが、これに限らず、10cmとしてもよく、他の深度を用いてもよい。特に、本実施形態では、上記波形のπ(π/2〜3π/2)の範囲を積分して有効電力Pを求めているため、深度D掘削される時間がこの波形の周期より十分長い時間であることが望ましい。その他は、第一実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0065】
(変形例1)
次に、本発明の第2実施形態の変形例1について図面を参照しながら説明する。第2実施形態の変形例1と第二実施形態とでは、第二実施形態ではインバータ(インバータ装置)8a、8bを用いているのに対し、第2実施形態の変形例1ではインバータを用いず三相交流電源から直接汎用モータに電力を供給するところが異なる。図11は、本発明の第二実施形態の変形例1における支持地盤検出装置の回路図である。このように、インバータを用いない場合は、三相交流電源から汎用モータ5a、5bに供給される電圧が2個の汎用モータ5a、5bで同じになるので、U相−V相間電圧計測器37aを用いることにより2個の汎用モータに供給されるU相−V相間の電圧を計測することができる。これにより、U相−V相間電圧計測器37a、37bのいずれか一方の電圧計測器を省略(aかbのいずれかを省略)することができる。その他は第二実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0066】
(変形例2)
次に、本発明の第二実施形態の変形例2について図面を参照しながら説明する。第二実施形態の変形例2は、第二実施形態では2個の汎用モータ5a、5bにより掘削ロッド12を回転駆動させたところを、1個の汎用モータ5aにより掘削ロッド12を回転駆動させるようにしたものである。図12は、本発明の第二実施形態の変形例2における支持地盤検出装置の回路図である。なお、第二実施形態の変形例2では、汎用モータ5aを1個にして、出力軸(回転軸)11を1個の汎用モータ5aにより回転させる点以外は第二実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0067】
第二実施形態の変形例2の支持地盤検出装置13は、交流電源(三相交流電源)からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部14aと、該コンバータ部14aからの出力電圧を平滑するコンデンサ部15aと、該コンデンサ部15aにより平滑された直流電圧を三相交流に変換し、汎用モータ(誘導電動機)5aに出力する出力ブリッジ部16aと、該出力ブリッジ部16aを駆動制御する制御装置(図示略)と、コンバータ部14aとコンデンサ部15aの間に接続された突入電流抑制抵抗部18aと、該突入電流抑制抵抗部18aに並列接続された第一スイッチ19aと、汎用モータ5aのコンデンサ部15aと並列接続させた第二スイッチ20と、該第二スイッチ20が設けられた並列回路に放電抵抗21を接続させ、該放電抵抗21が設けられた並列回路に接続された第三スイッチ22を有している。また、第二実施形態の変形例2の支持地盤検出装置13は、W相電流計測器36aと、U相−V相間電圧計測器37aと、有効電力量検出手段40(図示略)と、N値換算手段41(図示略)と有している。
【0068】
有効電力量検出手段40は、単位掘削体積あたりの汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)を検出するものである。ここで、汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)を検出する方法は、第二実施形態と同様、(数4)を用いて求められ、(数5)を用いて有効電力量検出手段40により検出された有効電力量Pval(n)を標準貫入試験のN値に換算される。
【0069】
N値換算手段41によりN値が求められた後は、汎用モータ5aのN値と支持地盤検出値Kを比較して掘削ロッド12が支持地盤に到着したかが判断(S4)される。このように、第二実施形態の変形例2でも、第一実施形態と同様の効果を有する。
【0070】
(変形例3)
次に、本発明の第二実施形態の変形例3について図面を参照しながら説明する。第二実施形態の変形例3と変形例2とでは、第二実施形態の変形例2ではインバータ8aを用いているのに対し、変形例3ではインバータを用いず三相交流電源から直接汎用モータに電力を供給するところが異なる。図13は、本発明の第二実施形態の変形例3における支持地盤検出装置の回路図である。図13に示すように、インバータを用いない場合も、第二実施形態の変形例2と同様、W相電流計測器36aと、U相−V相間電圧計測器37aと、有効電力量検出手段40と、N値換算手段41が用いられ、単位掘削体積あたりの汎用モータ5aに印加される有効電力量Pval(n)およびN値が求められる。その他の支持地盤の検出方法は、第二実施形態の変形例2と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態について図面を参照しながら説明する。図14(a)は本発明の第三実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の上面図X軸方向の側面図であり、図14(b)は同掘削機の上面図Y軸方向の側面図であり、図14(c)は同掘削機の上面図である。
【0072】
本発明の第三実施形態と第一実施形態および第二実施形態の異なるところは、第一実施形態および第二実施形態の下部ケース4の内部は中空状のものであったのに対し、第三実施形態では、その下部ケース4の内部に遊星歯車装置24を備え、出力軸11に取り付けられた掘削ロッド12で掘削するとともに、下部部材7を介し遊星歯車装置24の内歯車25に取り付けられた掘削刃26でも掘削できるようにしたところである。なお、図14では、出力軸11に取り付けられた掘削ロッド12を省略しているが、第三実施形態でも第一実施形態および第二実施形態同様に、掘削ロッド12で掘削が行われる。以下、具体的に説明する。
【0073】
図14に示すように、掘削刃26がボルトとナットからなる固定手段(図示略)により下部部材7に取り付けられている。
【0074】
次に、下部ケース4の内部に備えられた遊星歯車装置24について説明する。ここで、図15は、図14(a)のC-C断面図であり、図16は図15のD-D断面図である。
【0075】
図14および図15に示すように、遊星歯車装置24は、出力軸11(回転軸)に太陽歯車取付ボス(太陽歯車取付手段(図示略))を用いて圧入された太陽歯車27と、該太陽歯車27の外周を覆うように、太陽歯車27に空隙を介して同軸状に配設されている内歯車25と、太陽歯車27と内歯車25の間の空隙に配設され、太陽歯車27及び内歯車25に噛合し、太陽歯車27の周囲で自転する遊星歯車28と、を備えている。遊星歯車28は、回転軸上に配設された太陽歯車27の周囲に等間隔で複数個(本実施形態では、3つ)配設されている。
【0076】
太陽歯車27は、外周面に歯が形成された略円柱状のギア部29と、ギア部29より小径で、出力軸11と嵌合する嵌合部30とを有する。ギア部29は、遊星歯車28と噛み合うように構成され、嵌合部30は、出力軸11の嵌合部31と嵌合することにより出力軸11と一体となって回転する。
【0077】
各遊星歯車28は、中央部分に軸方向に貫通する貫通孔32が形成され、この貫通孔32に挿入されたピン34の周りを自転することができる。ここで、遊星歯車28はニードルベアリング(図示略)を介してピン34に挿入されている。このピン34は、下部ケース4と一体的に構成されたケーシング51にニードルベアリング(図示略)を介して回転自在に取り付けられている。
【0078】
内歯車25は、下部ケース4にベアリング50を介し回転自在に取り付けられている。これにより、各遊星歯車28は、太陽歯車27の回転に伴ってピン34を中心として自転し、その遊星歯車28の自転により内歯車25を回転させることができる。
【0079】
下部部材7は、内歯車25にボルト52などの固着手段により取り付けられている。また、上述したように内歯車25には下部部材7を介し掘削刃26(図17参照)が取り付けられている。このように、掘削刃26は、内歯車25が回転することにより下部部材7を介し内歯車25と同回転で回転することができ、この掘削刃26が回転することにより円形の穴を掘削することができる。そして、この円形の穴の内部では、掘削刃26の内側の掘削ロッド12で土を掻き揚げながら掘削され、円柱型の穴を造成することができる。このようにして、掘削刃26の継ぎ手を順次接続しながら掘削し、掘削刃26が地中に挿入される。なお、本実施形態では、掘削刃26が下部部材7を介し内歯車25に取り付けられる態様を示したが、これに限らず、掘削刃26を直接内歯車25に取り付けられるようにしてもよい。すなわち、掘削刃26は直接的または間接的に内歯車25に取り付けられるようにすればよい。ここで、図17は、本発明の第三実施形態における支持地盤検出装置が用いられた掘削機の掘削刃を示す図である。
【0080】
以上のように、遊星歯車装置24を設け、その遊星歯車装置24の内歯車25に掘削刃26を設けているので、少ない歯車数で大きな減速比を得ながら掘削することができ、掘削機の小型化も図ることができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。さらに本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0082】
次に、変形例について説明する。
(1) 第一実施形態〜第三実施形態(変形例も含む)では、図4のS4により、単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)が検出され、S5により、単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)(合計値)が標準貫入試験のN値に換算され、そして、S6により、そのN値が支持地盤検出値Kになった場合に支持地盤に到達したと判断されるが、これに限らず、S4により単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)が検出され、S5およびS6として、その単位掘削体積あたりの有効電力量Pval(n)(汎用モータが2個の場合は合計値)があらかじめ定められた支持地盤検出値KKになったときに、掘削ロッド12が支持地盤に到達したと判定してもよい。すなわち、N値は、S4により検出される単位掘削体積あたりの汎用モータ5a、5bに印加される有効電力量Pval(n)の(0.3S/mgh)倍(定数倍)であるので、支持地盤検出値KKを支持地盤検出値Kの(mgh/0.3S)倍することにより、単位掘削体積あたりの汎用モータに印加される有効電力量(汎用モータが2個の場合は合計値)を用いることにより、掘削ロッド12が支持地盤に到達したかを判定することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 掘削機
2 上部ケース
3 中部ケース
4 下部ケース
5a、5b 汎用モータ
6a、6b モータ回転軸
7 下部部材
8a、8b インバータ
9a、9b 電動機歯車
10 入力歯車
11 出力軸
12 掘削ロッド
13 支持地盤検出装置
14a、14b コンバータ部
15a、15b コンデンサ部
16a、16b 出力ブリッジ部
17 制御装置
18a、18b 突入電流抑制抵抗部
19a、19b 第一スイッチ
20 第二スイッチ
21 放電抵抗
22 第三スイッチ
23 V相電流計算器
24 遊星歯車機構
25 内歯車
26 掘削刃
27 太陽歯車
28 遊星歯車
29 ギア部
30 嵌合部
31 嵌合部
32 貫通孔
34 ピン
35a、35b U相電流計測器
36a、36b W相電流計測器
37a、37b U−V相間電圧計測器
38a、38b V−W相間電圧計測器
39a、39b 相間−相電圧変換器
40 有効電力量検出手段
41 N値換算手段
50 ベアリング
51 ケーシング
52 ボルト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から汎用モータに電力が供給され、該汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、
単位掘削体積あたりの前記汎用モータに印加される有効電力量を検出する有効電力量検出手段と、
該有効電力量検出手段により検出された有効電力量があらかじめ定められた値になったときに、前記掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定する支持地盤判定手段とを備えた支持地盤検出装置。
【請求項2】
前記汎用モータは、インバータにより駆動制御される請求項1記載の支持地盤検出装置。
【請求項3】
2個の汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、
前記各汎用モータは、各汎用モータに対応してそれぞれ設けられたインバータにより駆動制御され、
前記有効電力量検出手段は、前記各汎用モータに印加される有効電力量を検出し、
前記支持地盤判定手段は、該有効電力量検出手段に検出された各汎用モータの有効電力量の合計値があらかじめ定められた値になったときに、前記掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定することを特徴とする請求項1記載の支持地盤検出装置。
【請求項4】
三相交流電源から汎用モータに電力が供給され、該汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、
単位掘削体積あたりの前記汎用モータに印加される有効電力量を検出する有効電力量検出手段と、
該有効電力量検出手段により検出された有効電力量を標準貫入試験のN値に換算するN値換算手段と、
該N値換算手段により換算されたN値があらかじめ定められた値になったときに、前記掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定する支持地盤判定手段とを備えた支持地盤検出装置。
【請求項5】
2個の汎用モータにより回転軸を介し回転駆動される掘削ロッドで地盤を掘削して、地盤内の支持地盤を検出する支持地盤検出装置であって、
前記各汎用モータは、各汎用モータに対応してそれぞれ設けられたインバータにより駆動制御され、
前記有効電力量検出手段は、前記各汎用モータに印加される有効電力量を検出し、
前記支持地盤判定手段は、前記N値換算手段により換算された各汎用モータのN値の合計値があらかじめ定められた値になったときに、前記掘削ロッドが支持地盤に到達したと判定することを特徴とする請求項4記載の支持地盤検出装置。
【請求項6】
前記汎用モータにより回転される回転軸と一体に回動する太陽歯車と、
前記太陽歯車の外周を覆うように、該太陽歯車に空隙を介して同軸状に配設されている内歯車と、
空隙に配設され前記太陽歯車及び前記内歯車に噛合する遊星歯車と、
前記回転軸に取り付けられた掘削ロッドと、
前記内歯車に取り付けられた掘削刃とを、有し、
前記掘削ロッドおよび前記掘削刃により掘削することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の支持地盤検出装置を用いた掘削機。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−2007(P2012−2007A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139399(P2010−139399)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(506343704)株式会社トーメック (12)
【出願人】(510171863)丸門建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】