説明

支持足の取り付け構造

【課題】筐体への支持足の取り付けが簡単にできて、取り付けた支持足が外れ難く、強度も損なわないようにすることである。
【解決手段】支持足1を嵌合する凹部2の内部に柱状突起4を形成し、その突起4の周囲に軸方向へ伸びるリブ7を設けるとともに、前記突起4と嵌合する穴8を弾性体で形成された前記支持足1に形成する。こうすることで、支持足1の穴8と凹部2内の柱状突起4とを合致させて嵌入すると、嵌入した支持足1はリブ7に押されて、柱状突起4のリブ7と凹部2の内壁10とで挟まれ外れなくなる。さらに、支持足1は、柱状突起4と凹部2に挟まれて一体になるので衝撃に対しても強い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体への支持足の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や電器器具などの筐体を支持する支持足として、例えばゴムや樹脂などの弾性部材で形成した支持足(ゴム足)を筐体の底面に取り付けたものがある。この筐体への支持足の取り付けは、例えば、筐体にねじ穴を設けてねじによって取り付けたり、筐体に両面テープや接着剤で貼り付けたりする方法が多く用いられている。
【0003】
しかし、上記のように、ねじを使って取り付ける方法では、支持足を筐体のねじ穴の上に位置決めしたのち、ねじを締め付けなければならず、意外と手間の掛かる問題がある。
【0004】
また、両面テープを使う方法では、両面テープを支持足からはみ出さないように貼り付けて離罫紙を剥がし、筐体の指定された位置に貼り付けなければならず、貼り付ける向きや位置などを揃えるのが難しい。
【0005】
さらに、支持足を直接接着剤で筐体に貼り付ける場合は、接着剤がはみ出さないように支持足に均一に塗らなければならないなど、両面テープで貼り付ける以上に難しい問題もある。
【0006】
しかも、ねじや両面テープあるいは接着剤などの係止材を要するので、それらの分だけコストも掛かるという問題がある。
【0007】
これらの問題を解決する一つの方法として、(特許文献1)には、図5(a)のように、筐体の底部にスリット状の溝20を設け、その溝にて分離された片持ち形態を有する足部先端に設けられた嵌合部に緩衝材21を嵌入することで取り付けるようにしたものが記載されている。
【0008】
ところで、このものでは、緩衝材21は溝20にて分離された片持ち形態を有する足部先端に設けられた嵌合部に嵌入されただけなので外れ易い。これを外れ難くするためには、該嵌合部よりも寸法の大きな緩衝材21を嵌入して撓み嵌合圧力を大きくすることが考えられるが、緩衝材21を無理に嵌入するためには、大きな力が必要になる問題がある。
【0009】
この問題を解決する一つの方法として(特許文献2)には、図5(b)のように、筐体の底部に開孔22を設け、その開孔22に支持足(ゴム足)24を取り付けるものが記載されている。
このものでは、支持足24は、円錐台形状の係止部24aを、開孔22と径が同程度の係止溝24cを介して支持足本体24bと連結した形状となっており、開孔22へ係止部24aを嵌入すると、係止部24aの円錐台の大径部分が開孔22の周囲と係合して抜け止めがなされるというものである。
【0010】
また、このとき、開孔22に逃げ溝22aを設けることで、前記逃げ溝22aの部分で係止部24aの弾性変形を助長するとともに、図5(c)のように、開孔22の周囲にRをつけて内側に屈曲させることで係止部24aの嵌入を容易にさせるというものである。
【0011】
【特許文献1】特開2004−327795号公報
【0012】
【特許文献2】特願2003−124641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の筐体に、図5(b)のように、開孔22を設けたものでは、支持足24の取り付けは比較的容易にできると考えられるが、図5(c)のように、Rを設けたことにより、係止部24aと支持足本体24bとの間の係止溝24cの部分が長くなる。この係止溝の24cの部分は小径なので、強度が弱く小さな衝撃で破断することが考えられる。
【0014】
そのため、図5(d)のように、開孔22を削って厚みを薄くしてRを形成することも考えられるが、薄い分だけ係止部24aが外れ易くなる。また、係止部24aは逃げ溝22aにより弾性変形が助長されるので、少しの衝撃でも弾性変形すれば外れてしまう問題が考えられる。
【0015】
そこで、この発明の課題は、支持足の取り付けが簡単にできて、取り付けた支持足が外れ難く、強度も損なわないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、この発明では、電子機器筐体に取り付けられる支持足取り付け構造において、嵌合用凹部が設けられ、弾性体で形成された支持足と、筐体の支持足取り付け位置に、内部に柱状の突起を形成した前記支持足を嵌入する凹部を備え、前記嵌合用凹部と前記柱状突起を対向させて前記凹部に前記弾性体を嵌入する構成を採用したのである。
【0017】
このような構成を採用することにより、凹部への支持足の嵌入は、支持足の穴と凹部内の柱状突起とを合致させて嵌入する。このとき、嵌入した支持足は、凹部と嵌合して隙間を生じない。そのため、柱状突起と凹部に挟みつけられて一体になるので衝撃に対しても強い。
【0018】
このとき、柱状突起の周囲に軸方向へ伸びる微小なリブを設けた構成を採用することができる。
【0019】
このような構成を採用することにより、柱状突起の微小なリブは、支持足の嵌入方向と同じ前記突起の軸方向に形成してあるので、弾性体である支持足の嵌入を妨げない。また、支持足は、柱状突起に嵌入してリブに押されると、その押し圧力を凹部の内壁に作用させることになる。この内壁に達した押し圧力は、反作用として内側に向かって支持足を圧縮するように作用する。その結果、支持足は柱状突起のリブと凹部の内壁とで挟みつけられることになり、支持足が外れることを防止する。
【0020】
また、このとき、リブの先端部を前記支持足の進入口方向が鋭角となるよう斜めに形成した構成を採用することができる。
【0021】
このような構成を採用することにより、支持足を凹部へ嵌入する際の進入を容易にすることができる。
【0022】
また、このとき、柱状突起の少なくとも一端を開口した中空に形成した構成を採用することができる。
【0023】
このような構成を採用することにより、支持足を凹部へ嵌入する際、圧縮した空気を柱状突起に設けた開口で逃がすことで、嵌入をスムースに行なうことが可能となる。
【0024】
このとき、支持足の凹部から突出する支持足の長さよりも凹部内に嵌入された長さを長く形成した構成を採用することができる。
【0025】
このような構成を採用することにより、凹部の深さを深くして支持足に係合する部分を多くすれば、前記係合により、例えば、筐体が横方向にスライドしても外れにくくできる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、以上のように構成したことにより、支持足の取り付けが簡単にできる。また、取り付けた支持足は外れ難く、強度も強くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、この形態の支持足1の取り付け構造は、支持足(ゴム足)1を嵌入する凹部2と、その凹部2と嵌合する支持足1とで構成されている。
【0029】
凹部2は、この形態では、図2のように、立方体形状を採用したもので、図1のような筐体3に取り付けるL型のホルダー部材に形成されている。また、その凹部2の開口2a内に柱状の突起4を形成した構造となっている。
【0030】
前記突起4は、この形態では円柱状に形成したもので、凹部2の中心に設けてある。また、前記突起4は、この形態では、後述する支持足1の穴8と対向する側を開口した中空としてスリット溝5を設け、上部(筐体3側)の孔6と連通するようにしてある。このように中空の突起4とし、その周囲にスリット溝5を設けたことにより、後述のように、支持足1を凹部2へ装着する際、圧縮される空気を逃がしてスムースに嵌入できるようにしてある。
【0031】
さらに、突起4の周囲に、軸方向へ伸びるリブ(微小な突条)7を形成した形状となっている。
【0032】
前記リブ7は、この形態では6個のリブ7で構成されており、図2のように、対称となるようにスリット溝5の両側に3個ずつ設けてある。
【0033】
また、この各リブ7は、図3及び図4のように、凹部2の開口2a側の先端部7aを斜めにカットして形成しておくことにより、後述の支持足1の嵌入が容易にできるようにしてある。
【0034】
支持足1は、例えば、ゴムや樹脂などの弾性体で形成したもので、凹部2に嵌合する形状(好ましくは凹部2より若干大きめ)に形成されている。
【0035】
すなわち、支持足1は、凹部2に嵌入する部分が嵌合する外形形状であればよいので、この形態では、図2のように、上部1aの凹部2と嵌合する嵌入側を立方体に形成し、側面を途中で切り替えて凹部2から突出する下部部分1bをテーパーとすることにより、ほぼ立方体のすっきりした形状に形成してある。
【0036】
また、このとき、支持足下部1bの長さよりも上部1aの長さが長くなるように形成し、凹部2に嵌入した際の支持足下部1bの凹部2からの突出量(テーパー部分)が少なくなるようにして(凹部2に嵌入した支持足上部1aを嵌入するための凹部2の深さを深くすることで)、凹部2と支持足1とが係合する部分を多くしてある。こうすることで、支持足1が、例えば筐体3を横方向にスライドした場合でも、それに抗して外れないようにしてある。
【0037】
この支持足1には、上部(嵌入側)1aの端面の中央に嵌合用の穴8が設けられている。前記嵌合用の穴8は凹部2の柱状突起4の断面形状に合わせた円形のもので、柱状突起4の径とほぼ同じか少し小さく形成して、前記突起4とピタリと隙間なく嵌合するようにしてある。このように複雑な加工を必要としないシンプルな形状にできるので、生産性も良好である。
【0038】
なお、前記嵌合用の穴8の形状は、この形態では円形としたが、これ以外の断面形状、例えば、三角形、四角形・・・など凹部2内に形成する柱状突起4の断面形状に合わせて形成されるものである。
【0039】
この形態は上記のように構成され、支持足1の凹部2への嵌入は、支持足1の上部1aの嵌入側を凹部2の開口2aと対向させて、凹部2内の柱状突起4と支持足1の穴8とを合致させて嵌入する。このとき、柱状突起4のリブ7は、前記突起4の軸方向に形成してある。すなわち、支持足1の嵌入方向と同じ向きに形成してあるので、弾性体である支持足の進入を妨げない。また、リブ7の先端部7aを斜めにカットすることで、支持足1の進入はさらに容易になる。そして、支持足1を凹部2へ嵌入する際、圧縮した空気を柱状突起4の支持足1の穴8と対向する側に設けた開口とスリット溝5から孔6へ逃がすためスムースな嵌入が可能となる。このとき、嵌入した支持足1は、凹部2の内壁10とも隙間を生じることなく嵌合する。そのため、支持足1はリブ7に押されてその押し圧力は、図4の矢印のように、支持足1を介して凹部2の内壁(外側)10に作用する。
【0040】
この押し圧力は、凹部2の内壁10に達すると反作用として内側に向かうので、支持足1を圧縮することになる。したがって、支持足1は柱状突起4のリブ7と凹部2の内壁10とで挟みつけられることになる。その結果、支持足1は簡単に外れなくなり(外そうとしない限り)、また、柱状突起4と凹部2に挟みつけられて一体となるので衝撃に対しても強くなる。
【0041】
このとき、支持足1は、凹部2から突出する支持足1の下部1bの長さよりも凹部2内に嵌入された上部1aの長さが長くなるように、凹部2の深さを深くして支持足1に係合する部分を多くしてあるので、例えば、筐体が横方向にスライドした場合でも外れず、振動に対する衝撃吸収力も大きくなる。
【0042】
このように、柱状突起4を設けた凹部2と、嵌合用の穴8を設けた支持足1を嵌合するようにしたことにより、凹部2内の柱状突起4と支持足1の穴8とを合致させて嵌入するだけで、支持足1の取り付けが簡単に行なえる。しかも、このとき、取り付けた支持足1は外れ難く、強度も強くできる。また、支持足1、凹部2ともに複雑な形状を有していないため、各部材の加工が容易となる。
【0043】
なお、本願発明の取り付け構造は、実施形態のように、ホルダー構造として凹部2を筐体3に取り付けるようにしても良いが、これに限定されるものではない。これ以外に例えば、凹部2を直接筐体3に形成するようにしてもよい。また、凹部2の開口2aの形状も四角に限定されるものではなく、四角以外の、丸、三角・・・などどのような形状でもよい。その際、支持足1も凹部の形状に合わせて四角以外の、丸、三角・・・にすることは当然である。また、この形態では柱状突起4にスリット溝5を設けたが、凹部2の形状や柱状突起4の形状に合わせて、柱状突起4に設けた支持足1の穴8に対向する側に設けた開口のみとすることも可能であるが、その場合は、圧縮した空気を十分逃がすように該開口を形成することが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、支持足を凹部内に嵌合するだけで、支持足の取り付けが簡単に行なえ、支持足を強固に保持できるので、支持足(ゴム足)を要する機器全般に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の分解斜視図
【図3】実施形態の断面図
【図4】実施形態の作用説明図
【図5】(a)従来例の要部の平面図、(b)従来例の分解斜視図、(c)従来例の断面図、(d)従来例の断面図
【符号の説明】
【0046】
1 支持足
1a 上部
1b 下部
2 凹部
3 筐体
4 柱状突起
7 リブ
8 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器筐体に取り付けられる支持足取り付け構造において、
嵌合用凹部が設けられ、弾性体で形成された支持足と、
筐体の支持足取り付け位置に、内部に柱状の突起を形成した前記支持足を嵌入する凹部を備え、
前記嵌合用凹部と前記柱状突起を対向させて前記凹部に前記弾性体を嵌入することを特徴とする支持足の取り付け構造。
【請求項2】
上記柱状突起の周囲に軸方向へ伸びる微小なリブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の支持足の取り付け構造。
【請求項3】
上記リブの先端部を前記支持足の進入口方向が鋭角となるよう斜めに形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の支持の足取り付け構造。
【請求項4】
上記柱状突起の少なくとも一端を開口した中空に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の支持足の取り付け構造。
【請求項5】
上記支持足の凹部から突出する支持足の長さよりも凹部内に嵌入された長さを長く形成した請求項1乃至4のいずれかに記載の支持足の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−128355(P2008−128355A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313818(P2006−313818)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】