説明

支持部材およびキャリアと支持方法

【課題】基板のクラックの発生を防止することができ、また、支持部材本体を長寿命化することができる支持部材およびキャリアを提供する。
【解決手段】可動基板受け18aは、回動自在に取り付けられた支持部材本体30を備え、支持部材本体30は、回動中心軸44から放射状に延設された複数の突起31を備え、突起31を基板の端部に当接させて基板を支持するため、基板のクラックの発生を防止することができ、また、支持部材本体30を長寿命化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材およびそれを取り付けたキャリアに関するものである。
本願は、2009年4月16日に、日本に出願された特願2009−511832号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどの製造工程において、大型ガラス基板に対して加熱処理や成膜処理などの真空処理が行われる。そのため、様々な真空処理装置が開発されている。その中の一つに、液晶ディスプレイのカラーフィルタ側にITO膜(電極膜)を成膜するために、インラインスパッタ装置が用いられている。
【0003】
このインラインスパッタ装置は、真空状態を作り出し薄膜をスパッタにてガラス基板上へ成膜する真空装置である。なお、ガラス基板は、装置内を安定して搬送させるために、キャリアと呼ばれる台車に取り付けられている。
【0004】
また、特に大型のガラス基板を成膜する際に、ガラス基板を略垂直にしてキャリアに載置して成膜を行う方法がある。このとき、キャリア側に設けられた基板受け(支持部材)上に、ガラス基板の下辺を載置させることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−114675号公報(第11図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、基板受けは、略四角形状で、キャリア側のガラス基板の下辺が当接される位置に複数固定されて取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ガラス基板の下辺と基板受けの上辺とを平行に接触させることは困難なため、これらは面接触ではなく点接触(線接触)となっている。
【0007】
つまり、図14に示すように、例えば基板受け118が3個取り付けられていても、ガラス基板111と基板受け118(118a〜118c)とは、基板受け118aの隅部と基板受け118cの隅部の2箇所のみで点接触(線接触)されており、基板受け118bとガラス基板11とは接触していない状態になることがあった。
【0008】
ところで、移載機(ロボット)により搬送されたガラス基板をキャリアの基板受けに当接させる際には、ガラス基板を基板受けの数mm上方から自然落下させて当接させるため、上述の例の場合などでは2箇所にガラス基板の荷重が一気にかかって応力が集中し、ガラス基板にクラックが発生して歩留まりが低下する可能性があった。また、このクラックが起因となり、その後の搬送工程、成膜工程および基板着脱工程などにおいて基板割れが発生する可能性があった。さらに、ガラス基板と基板受けとの擦れにより、基板受け側に削れが発生し、複数の基板受けの水平レベルがずれてしまい、したがって、ガラス基板の水平度が保てなくなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、基板のクラックの発生を防止することができ、また、支持部材本体を長寿命化することができる支持部材およびキャリアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第一の態様は、回動自在に取り付けられた支持部材本体を備え、前記支持部材本体は、回動中心軸から放射状に延設された複数の突起を備え、前記複数の突起部のうち隣接する2つの突起部を基板の一辺に当接させて、前記基板を縦型に支持することを特徴としている。
この場合、前記基板が前記支持部材に当接する際に、まず前記支持部材本体の突起の1点と接触し、さらに基板の荷重が支持部材にかかることで、支持部材本体が回動して隣接する突起と基板が接触するため、一つの支持部材で基板を確実に2点で支持することができる。したがって、基板への応力集中を緩和することができるため、基板のクラックの発生を防止することができる効果がある。結果として、基板の製造工程において歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0011】
前記支持部材は、前記支持部材本体に当接し、前記支持部材本体を前記基板に向かって付勢する付勢部材を備えていてもよい。
この場合、基板が支持部材に当接する際に、付勢部材により基板の荷重に起因した衝撃力を吸収しながら当接させることができるため、基板のクラックの発生を防止することができる効果がある。
【0012】
前記支持部材は、前記支持部材本体と前記回動中心軸との間に、弾性部材が介装されていてもよい。
この場合、基板が支持部材に当接する際に、弾性部材により基板の荷重に起因した衝撃力を吸収しながら当接させることができるため、基板のクラックの発生を防止することができる効果がある。
【0013】
前記支持部材本体は、樹脂でできていてもよい。
この場合、支持部材本体が樹脂からなる弾性材料で構成されるため、基板と支持部材とが当接する際に、基板にクラックが発生することを防止することができる効果がある。
【0014】
前記支持部材本体は、着脱自在に取り付けられていてもよい。
この場合、基板と当接している突起が経時的に摩耗した場合に、支持部材本体を一旦取り外し、別の突起が基板と当接するように支持部材本体を回転させて取り付けることができる。これにより、支持部材本体を継続使用することができ、したがって、支持部材本体の長寿命化を図ることができる効果がある。
【0015】
前記基板を支持するキャリアには、上記いずれかの支持部材が取り付けられていてもよい。
この場合、キャリアに支持部材を適宜取り付けることにより、基板の荷重を受ける役割をしたり、基板が搬送時などに左右にずれる際に、干渉材としての役割をすることができる効果がある。
【0016】
前記基板を縦型に支持するキャリアには、基板の下辺に当接するように前記支持部材が取り付けられていてもよい。
この場合、キャリアに基板を取り付ける際に、支持部材により確実に基板の荷重を受けることができる。また、一つの支持部材において支持点が2箇所あるため、基板の荷重を分散させることができ、したがって、基板にクラックが発生することを防止することができる効果がある。
【0017】
基板を縦型に支持するキャリアには、上記いずれかの支持部材と、前記基板に当接する固定支持部材とが、前記基板の下辺に沿う方向に取り付けられ、かつ、前記支持部材が前記固定支持部材よりも前記基板寄りに取り付けられており、前記基板が、前記支持部材に当接した後に前記固定支持部材に当接して支持されていてもよい。
この場合、キャリアに基板を取り付ける際に、まず支持部材と基板とが当接して、基板の荷重に起因する衝撃力を吸収しながら基板を支持し、さらに、基板の荷重により支持部材本体が下方へ移動して、固定支持部材と基板とが当接して基板が支持されるため、基板にクラックが発生することを防止することができる。したがって、基板の製造工程において歩留まりを向上させることができる効果がある。
また、支持部材および固定支持部材により、基板がより多くの箇所で支持され、基板の荷重を分散して支持することができるため、基板を安定して支持することができると共に、基板にクラックが発生することを防止することができる効果がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板が支持部材に当接する際に、まず支持部材本体の突起の1点と接触し、さらに基板の荷重が支持部材にかかることで、支持部材本体が回動して隣接する突起と基板が接触するため、一つの支持部材で基板を確実に2点で支持することができるため、基板への応力集中を緩和することができる。また、基板が支持部材に当接する際に、付勢部材または弾性部材により基板の荷重に起因した衝撃力を吸収しながら当接させることができる。したがって、基板のクラックの発生を防止することができ、基板の製造工程において歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0019】
また、支持部材本体を樹脂からなる弾性材料で構成するため、基板と支持部材とが当接する際に、基板にクラックが発生することを防止することができる。
さらに、基板と当接している突起が経時的に摩耗した場合に、支持部材本体を一旦取り外し、別の突起が基板と当接するように支持部材本体を回転させて取り付けることができる構成とする。これにより、支持部材本体を継続使用することができ、したがって、支持部材本体の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態におけるキャリアにガラス基板を載置した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるコンベアにキャリアを載置した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるキャリアの部分詳細図である。
【図4】本発明の第一実施形態における可動基板受けの本体部の正面図である。
【図5】本発明の第一実施形態における可動基板受けの本体部の背面図である。
【図6】本発明の第一実施形態における可動基板受けの本体部の斜視図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第一実施形態における可動基板受けがキャリアフレームに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図9A】本発明の第一実施形態におけるガラス基板をキャリアに載置するときの工程を示す説明図である。
【図9B】本発明の第一実施形態におけるガラス基板をキャリアに載置するときの工程を示す説明図である。
【図9C】本発明の第一実施形態におけるガラス基板をキャリアに載置するときの工程を示す説明図である。
【図10A】図9の工程の続きを示す説明図である。
【図10B】図9の工程の続きを示す説明図である。
【図11】本発明の第二実施形態における可動基板受けがキャリアフレームに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図12A】本発明の実施形態における可動基板受けの別の態様を示す説明図であり、外形が三角形のものである。
【図12B】本発明の実施形態における可動基板受けの別の態様を示す説明図であり、外形が五角形のものである。
【図12C】本発明の実施形態における可動基板受けの別の態様を示す説明図であり、外形が六角形のものである。
【図13】本発明の実施形態における可動基板受けの別の態様を示す説明図である。
【図14】従来の基板受けとガラス基板との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
次に、本発明の第一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0022】
図1は、キャリアにガラス基板を載置した状態を示す斜視図である。
図1に示すように、ガラス基板11に成膜などを施す際には、キャリア10と呼ばれる枠体にガラス基板11を載置し、キャリア10を後述するコンベアにより搬送しつつ、適宜処理を行う。
【0023】
キャリア10は縦型に配置された状態で、ガラス基板11が載置されるように構成されている。キャリア10は、アルミニウムなどからなる額縁状のキャリアフレーム15と、キャリアフレーム15の上辺に沿うように設けられたマグネット16と、キャリアフレーム15の下辺に沿うように設けられた丸棒からなるスライダ17と、を備えている。また、ガラス基板11の荷重を受け、かつガラス基板11の水平度を保持するための複数の基板受け18と、キャリアフレーム15の開口部21の周縁に設けられ、ガラス基板11をキャリア10に保持させるための複数のクランプ19と、を備えている。また、キャリアフレーム15の開口部21の水平方向両端部にも、ガラス基板11が搬送時などに左右にずれたときに当接され、衝撃を吸収可能な基板受け18が設けられている。なお、ガラス基板11の周縁の非成膜領域を覆うためのマスク20はキャリアフレーム15の開口部21周縁に、キャリアフレーム15と一体形成されている。
【0024】
図2は、コンベアにキャリアを載置した状態を示す側面図である。
図2に示すように、キャリア10は、コンベア50により成膜装置内などを移動可能に構成されている。また、コンベア50は、床面FLに支持固定されたフレーム22と、フレーム22内に設けられた下部支持機構23および上部支持機構24とで構成されている。すなわち、キャリア10の下辺に設けられたスライダ17を、下部支持機構23のローラ25に係合させて、ローラ25をモータ26により回転駆動させることにより、キャリア10を搬送経路(ローラ25の外周側の溝部)に沿って水平移動させることができるように構成されている。また、キャリア10の上辺に設けられたマグネット16と、上部支持機構24を構成する一対のマグネット27a,27bとが反発しあうことにより、キャリア10を垂直に保持した状態で搬送可能に構成されている。
【0025】
図3は、キャリアの部分詳細図である。
図3に示すように、本実施形態において、キャリアフレーム15には、開口部21の下辺に沿うように4個の基板受け18が設けられ、これらの基板受け18に、ガラス基板11が当接可能に構成されている。4個の基板受け18のうち、キャリアフレーム15の両側には可動基板受け18aが配置され、中側の2個としては固定基板受け18bが配置されている。なお、説明の都合上、クランプ19は図示を省略している。
【0026】
図4〜図6は、可動基板受け18aの本体部30の正面図、背面図、斜視図である。
図4〜図6に示すように、可動基板受け18aは、その本体部30が樹脂材料からなり、キャリアフレーム15に取りつけた状態の正面視において、略四角形状で四隅が丸みを帯びた形状に形成されており、背面視において、略四角形状の四隅が湾曲するように切削されて突起部31が形成され、かつ、四角形状の四辺に略同一形状の凹部32がそれぞれ切削により形成されている。本体部30の厚みは、ガラス基板11の厚みより厚く形成され、凹部32の厚みがガラス基板11の厚みより厚く形成されている。なお、本体部30は、エンジニアリングプラスチック、つまり、ポリイミド系やポリアミド系の樹脂、またはそれらの複合樹脂で形成されている。
【0027】
図7は、図4のA−A線に沿う断面図に、ボルト34を図示したものである。
図7に示すように、可動基板受け18aの本体部30は、その正面視略中央部に貫通孔33が形成されており、ボルト34が挿通されるように構成されている。ここで、貫通孔33の孔径Dはボルト34の軸部44の外径d1より大きく形成され、ボルト34の頭部45の外径d2より小さく形成されている。さらに、本体部30は、ボルト34によりキャリアフレーム15に取り付けられているが、ボルト34は強固に締め付けず、キャリアフレーム15の表面からボルト34の頭部45の底面までの距離が、本体部30の幅(厚み)より大きくなるように取り付けられている。つまり、可動基板受け18aの本体部30が移動可能に構成されている。
【0028】
図8は、可動基板受け18aがキャリアフレーム15に取り付けられた状態を示す断面図である。
図8に示すように、可動基板受け18aは、本体部30と、本体部30下端の凹部32に当接された略凸形状の板バネ35とを備えている。板バネ35は、本体部30を上方に付勢するようにキャリアフレーム15に取り付けられている。ガラス基板11が可動基板受け18aに当接(載置)されていない状態において、本体部30は、最上位に位置するように板バネ35により付勢されている。つまり、貫通孔33の孔径Dがボルト34の軸部44の外径d1よりも大きく形成されていることにより、本体部30は上下に移動可能に構成されている。また、板バネ35は、キャリアフレーム15の表面と本体部30の表面に形成された張出部37との間に収まる幅で形成されている。これにより、板バネ35の脱落を防止することもできる。
【0029】
さらに、本体部30は、キャリアフレーム15に強固に固定されていないため、ボルト34の軸部44の周りを回動可能に構成されている。ただし、可動基板受け18aの下方に板バネ35が取り付けられているため、回動量は制限されている。
【0030】
図3に戻り、本体部30は、低弾性の樹脂材料からなり、略四角形状で、ガラス基板11より厚く形成されている。また、固定基板受け18bは、キャリアフレーム15にボルト34などにより強固に固定して取り付けられている。このとき、固定基板受け18bは、その四辺のうち一辺がガラス基板11の下辺と略平行になるように取り付けられている。なお、固定基板受け18bは、可動基板受け18aと同じ材料で形成してもよいし、異なる樹脂材料で略同等の弾性を有するもので形成してもよい。
【0031】
また、ガラス基板11がキャリア10に載置されていない状態において、可動基板受け18aの上端部の位置は、固定基板受け18bの上端部の位置よりも若干ガラス基板11寄り(上方)になるように高低差を設けて取り付けられている(本実施形態においては、0.75mm)。この取り付け位置の高低差は、ガラス基板11が載置される際に、最初に可動基板受け18aに確実に当接され、可動基板受け18aがガラス基板11の荷重により下方へ移動した後、固定基板受け18bにガラス基板11が当接される高低差を有していればよい。
【0032】
さらに、可動基板受け18aは、キャリアフレーム15の開口部21の水平方向両端部にも複数取り付けられている。ガラス基板11が載置された状態において、ガラス基板11の水平方向両端部に取り付けられた可動基板受け18aとガラス基板11との間には、隙間が形成されている。キャリア10がコンベア50により移動している際にガラス基板11が左右にずれることがあっても、キャリアフレーム15の水平方向両端部に取り付けられた可動基板受け18aによりその衝撃力を吸収できるように構成されている。
【0033】
(作用)
次に、ガラス基板11をキャリア10に載置する際の作用について、図9,図10に基づいて説明する。
図9Aに示すように、ガラス基板11が載置されていない状態において、可動基板受け18aの本体部30は、板バネ35により上方に向かって付勢され、最上位に位置している。
【0034】
図9Bに示すように、ガラス基板11がキャリア10のキャリアフレーム15に載置されると、まず、ガラス基板11と本体部30の突起部31の一つ(突起部31a)が接点40aにて接触する。
【0035】
図9Cに示すように、ガラス基板11がその荷重によりさらに下方に移動してくることで、本体部30が下方へ移動する。また、本体部30は板バネ35が変形することで回動し、突起部31aに隣接する突起部31bがガラス基板11と接点40bにてさらに接触し、ガラス基板11と可動基板受け18aとが2点で接触する。
【0036】
図10Aに示すように、上述の作用で、キャリアフレーム15の両側の可動基板受け18aがそれぞれ2点ずつ計4点でガラス基板11と接触する(接点40a〜40d)。その後、さらにガラス基板11の荷重により、ガラス基板11は下方へ移動する。このとき、可動基板受け18aの本体部30には板バネ35が下方で当接しているため、板バネ35が変形しながら本体部30が下方へ移動する。つまり、ガラス基板11の荷重による衝撃力を吸収しながらガラス基板11は下方へ移動する。
【0037】
図10Bに示すように、ガラス基板11がさらに下方へ移動し、ガラス基板11が固定基板受け18bに当接する位置まで移動して、キャリア10に載置される。このとき、固定基板受け18bとガラス基板11とは、それぞれ1点ずつ計2点で点接触(線接触)される(接点40e,40f)。なお、固定基板受け18bが、ガラス基板11と平行な状態で取り付けられている場合には、点接触でなく面接触される。
【0038】
ここで、ガラス基板11は、可動基板受け18aにおいて各2点ずつ計4点で支持され、固定基板受け18bにおいて各1点ずつ計2点で支持されている。したがって、ガラス基板11は、計6点で支持されることとなる。また、可動基板受け18aと固定基板受け18bとで受け持つ荷重が、1:2になるように板バネ35の強さを調整したものを取り付けることで、確実に上述の6点で支持される。例えば、ガラス基板11の荷重が6kgであるときは、両側の可動基板受け18aでそれぞれ1kgずつ受け持ち、固定基板受け18bでそれぞれ2kgずつ受け持つようにすればよい。
【0039】
そして、開口部21周縁に取り付けられているクランプ19によりガラス基板11の周縁部をキャリアフレーム15のマスク20に押し付けるようにして、ガラス基板11をキャリア10に固定支持する。
【0040】
上述のようにガラス基板11をキャリア10に載置した後に、ガラス基板11に成膜などの処理を行う。ガラス基板11の成膜処理などが完了すると、ガラス基板11をキャリア10から取り外す。このような工程を繰り返し行うこととなるが、特に可動基板受け18aは、ガラス基板11を載置する際の初期荷重により応力がかかりやすいため、樹脂からなる本体部30の突起部31に削れが発生する。このように本体部30の突起部31に削れが発生すると、ガラス基板11の水平度を保持できなくなる可能性がある。
【0041】
ここで、本体部30はボルト34でキャリアフレーム15に取り付けられているだけであるため、ボルト34を取り外すことで容易に本体部30を取り外すことができる。そして、削れが発生している突起部31以外の突起部31が上端に位置するように本体部30の向きを変えて(回転させて)、再度キャリアフレーム15に取り付ける。このようにすることで、ガラス基板11を削れのない突起部31に当接させることができ、ガラス基板11の水平度を保持することができる。本体部30の形状が略四角形のため、一つの本体部30で上述の作用を四度行うことができ、結果として、本体部30の寿命を従来の四倍にすることができる。
【0042】
本実施形態によれば、回動自在に取り付けられた可動基板受け18aの本体部30に、本体部30を回動中心軸から放射状に延設された複数の突起部31を形成し、突起部31をガラス基板11の端部に当接させて、ガラス基板11を支持するようにした。
この場合、ガラス基板11が可動基板受け18aに当接する際に、まず本体部30の突起部31aの1点(接点40a)と接触し、さらにガラス基板11の荷重が可動基板受け18aにかかることで、本体部30が回動して隣接する突起部31bとガラス基板11が接触するため、一つの可動基板受け18aでガラス基板11を確実に2点で支持することができる。したがって、ガラス基板11への応力集中を緩和することができるため、ガラス基板11のクラックの発生を防止することができる。結果として、ガラス基板11の製造工程において歩留まりを向上させることができる。
【0043】
また、可動基板受け18aの本体部30に当接し、本体部30をガラス基板11に向かって付勢する板バネ35を設けた。
この場合、ガラス基板11が可動基板受け18aに当接する際に、板バネ35によりガラス基板11の荷重に起因した衝撃力を吸収しながら当接させることができるため、ガラス基板11のクラックの発生を防止することができる。
【0044】
また、可動基板受け18aの本体部30を樹脂で構成した。
この場合、可動基板受け18aの本体部30が樹脂からなる弾性材料で構成されているため、ガラス基板11と可動基板受け18aとが当接する際に、ガラス基板11にクラックが発生することを防止することができる。
【0045】
また、可動基板受け18aの本体部30を着脱自在に取り付けた。
この場合、ガラス基板11と当接している突起部31が経時的に摩耗した場合に、本体部30を一旦取り外し、別の突起部31がガラス基板11と当接するように本体部30を回転させて取り付けることができる。これにより、可動基板受け18aの本体部30を継続して使用することができ、したがって、本体部30の長寿命化を図ることができる。
【0046】
また、ガラス基板11を支持するキャリア10において、可動基板受け18aをキャリア10に取り付けた。
この場合、キャリア10に可動基板受け18aを適宜取り付けることにより、ガラス基板11の荷重を受ける役割をしたり、ガラス基板11が搬送時などに左右にずれる際に、干渉材としての役割をしたりすることができる。
【0047】
さらに、ガラス基板11を縦型に支持するキャリア10において、ガラス基板11の下辺に当接するように可動基板受け18aをキャリア10に取り付けた。
この場合、キャリア10にガラス基板11を取り付ける際に、可動基板受け18aにより確実にガラス基板11の荷重を受けることができ、また、一つの可動基板受け18aにおいて支持点が2箇所あるため、ガラス基板11の荷重を分散させることができる。したがって、ガラス基板11にクラックが発生することを防止することができる。
【0048】
そして、可動基板受け18aと、ガラス基板11に当接する固定基板受け18bとが、ガラス基板11の下辺に沿う方向に取り付けられ、かつ、可動基板受け18aを固定基板受け18bよりもガラス基板11寄りに取り付けられ、ガラス基板11が可動基板受け18aに当接した後に固定基板受け18bに当接してキャリア10に支持されるようにした。
この場合、キャリア10にガラス基板11を取り付ける際に、まず可動基板受け18aとガラス基板11とが当接して、ガラス基板11の荷重に起因する衝撃力を吸収しながらガラス基板11を支持し、さらに、ガラス基板11の荷重により本体部30が下方へ移動して、固定基板受け18bとガラス基板11とが当接してガラス基板11が支持されるため、ガラス基板11にクラックが発生することを防止することができる。
したがって、ガラス基板11の製造工程において歩留まりを向上させることができる。
【0049】
また、可動基板受け18aおよび固定基板受け18bにより、ガラス基板11がより多くの箇所で支持され、ガラス基板11の荷重を分散して支持することができるため、ガラス基板11を安定して支持することができると共に、ガラス基板11にクラックが発生することを防止することができる。
【0050】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態を図11に基づいて説明する。なお、本実施形態の構成は、第一実施形態と可動基板受けの構成が異なるのみで、その他は略同一の構成であるため、同一部分に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図11は、可動基板受け61aがキャリアフレーム15に取り付けられた状態を示す断面図である。
図11に示すように、可動基板受け61aは、本体部30と、本体部30とボルト34の軸部44との間に介装されたリング状の弾性部材63とを備えている。弾性部材63は、耐熱性材料により円筒状に形成されている。ガラス基板11が可動基板受け61aに当接(載置)されていない状態において、本体部30は、最上位に位置しており、ガラス基板11が可動基板受けに当接されると、弾性部材63が圧縮され、可動基板受け61aが回動しながら下方へ移動可能に構成されている。なお、弾性部材61aとしては、弾力性を持つ樹脂素材またはゴムであればよい。より具体的には、真空中で使用すること、高温雰囲気で使用することを考慮して、テフロン(登録商標)、バイトン(登録商標)、フッ素系ゴムまたはSi系ゴムを採用することが望ましい。
【0051】
この場合、第一実施形態の作用効果に加え、ガラス基板11と当接している突起部31が経時的に摩耗した場合に、本体部30を取り外すことなく、別の突起部31がガラス基板11と当接するように本体部30を容易に回転させることができる。これにより、より簡単な方法で可動基板受け18aの本体部30を継続使用することができ、本体部30の長寿命化を図ることができる。
【0052】
本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、略四角形状の可動基板受けを採用した場合の説明をしたが、図12に示すように略三角形、略五角形、略六角形などの多突起体で、ガラス基板に2点接触可能な可動基板受けであればよい。
図12A,図12Bのように奇数の辺を有する多角形の場合、可動基板受けの上端でガラス基板との接点を2点確保するように配置すると、下端には一つの突起部が位置することとなる。このような場合は、板バネの形状を下端の突起部に当接する凹部を形成するようにすると、可動基板受けが上述の実施形態と同様の作用をすることができる。
また、図12Cのように偶数の辺を有する多角形の場合、本実施形態と略同一の形状を有する板バネを設けることで、可動基板受けが上述の実施形態と同様の作用をすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、可動基板受けに板バネからなる付勢部材を設けた場合の説明をしたが、図13に示すように、弾力性を持つ弾性部材71を設けてもよい。なお、この弾性部材71は上述の第二実施形態に記載した弾性部材と同じ素材の中から構成される。このように構成することで、上述の第一実施形態と略同等の作用効果を得ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、ガラス基板の下辺に沿う方向に可動基板受けと固定基板受けをそれぞれ2個ずつ配置した場合の説明をしたが、全て可動基板受けとしてもよい。
そして、本実施形態では、ガラス基板が可動基板受けに当接した後、固定基板受けに当接して載置される場合の説明をしたが、通常は可動基板受けのみにガラス基板が当接し、移載機からガラス基板を移動させる際などの衝撃荷重入力時にのみ固定基板受けにもガラス基板が当接する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の支持部材およびキャリアによれば、基板のクラックの発生を防止することができ、基板の製造工程において歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
11…ガラス基板(基板) 10…キャリア 18…基板受け(支持部材) 18a…可動基板受け(支持部材) 18b…固定基板受け(固定支持部材) 30…本体部(支持部材本体) 31…突起部(突起) 35…板バネ(付勢部材) 63…弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在に取り付けられた支持部材本体を備え、
前記支持部材本体は、回動中心軸から放射状に延設された複数の突起を備え、
前記複数の突起部のうち隣接する2つの突起部を基板の一辺に当接させて、前記基板を縦型に支持することを特徴とする支持部材。
【請求項2】
前記支持部材本体に当接し、前記支持部材本体を前記基板に向かって付勢する付勢部材
を備えている請求項1に記載の支持部材。
【請求項3】
前記支持部材本体と前記回動中心軸との間に、弾性部材が介装されている請求項1に記
載の支持部材。
【請求項4】
前記支持部材本体が、樹脂からなる請求項1に記載の支持部材。
【請求項5】
前記支持部材本体が、着脱自在に取り付けられている請求項1に記載の支持部材。
【請求項6】
基板を支持するキャリアにおいて、
請求項1に記載の支持部材が取り付けられているキャリア。
【請求項7】
基板を縦型に支持するキャリアにおいて、
基板の下辺に当接するように請求項1に記載の支持部材が取り付けられているキャ
リア。
【請求項8】
基板を縦型に支持するキャリアにおいて、
請求項2〜5のいずれかに記載の支持部材と、前記基板に当接する固定支持部材とが、
前記基板の下辺に沿う方向に取り付けられ、かつ、前記支持部材が前記固定支持部材より
も前記基板寄りに取り付けられており、
前記基板が、前記支持部材に当接した後に前記固定支持部材に当接して支持されるキャ
リア。
【請求項9】
請求項2に記載の支持部材を用いた基板の支持方法において、
前記基板が基板を支持するキャリアのキャリアフレームに載置されることにより、前記支持部材本
体の突起の一つが前記基板と1点で接触する工程と、
前記基板の荷重により前記基板が下方に移動することにより、前記支持部材本体が下方
へ移動し、前記付勢部材が変形する工程と、
前記付勢部材が変形することにより、前記支持部材本体が回動して隣接する突起と前記
基板が接触し、一つの前記支持部材によって前記基板を2点で支持する工程とを具備する
支持方法。
【請求項10】
請求項8に記載のキャリアを用いた基板の支持方法において、
基板が前記キャリアのキャリアフレームに載置されることにより、前記支持部材本
体の突起の一つが前記基板と1点で接触する工程と、
前記基板の荷重により前記基板が下方に移動することにより、前記支持部材本体が下方
へ移動し、前記付勢部材が変形する工程と、
前記付勢部材が変形することにより、前記支持部材本体が回動して隣接する突起と前記
基板が接触し、一つの前記支持部材によって前記基板を2点で支持する工程と、
前記基板の荷重により前記基板がさらに下方に移動することにより、前記基板が前記固
定支持部材の1点で接触し、前記支持部材と前記固定支持部材によって基板を支持する工
程とを具備する支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−256894(P2012−256894A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154111(P2012−154111)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2009−511832(P2009−511832)の分割
【原出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】