説明

支持部材

【課題】支持部材が装着される部材との間で密着性に優れた支持部材を提供する。
【解決手段】回転部材を直接又は軸受けを介して支持し、外周面に複数の突起を有する樹脂製の支持部材において、前記複数の突起は支持部材の成形時に外周面全体に形成され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有している。樹脂製の支持部材は例えば射出成形により製造される。樹脂製の支持部材は、例えば樹脂又はゴム製の外側部材中に射出成形により装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材を直接又は軸受けを介して支持する支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
回転部材を支持する支持部材として、例えば特許文献1に示す摩耗防止スリーブが知られている。このスリーブは、回転部材を支持すべき支持穴を備えた鋳造部材を成形するときに、鋳包みにより鋳造部材の支持穴に装着され、回転部材を摺動自在に支持して前記支持穴の摩耗を防止するものである。スリーブには鋳造部材の支持穴に対して抜け止め、回り止めが確実に行われるように、外周面に間隔をおいて幾つかの凸部を形成している(特許文献1の図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−131975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す摩耗防止スリーブでは、鋳造部材との密着性において不十分な場合がある。
【0005】
本発明の目的は、支持部材が装着される部材との間で密着性に優れた支持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転部材を直接又は軸受けを介して支持し、外周面に複数の突起を有する金属製の支持部材において、前記複数の突起は支持部材の鋳造時に外周面全体に形成され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有していることを特徴とする。
【0007】
前記突起の高さが0.3〜2.0mm、突起数が5〜100個/cmであることが好ましい。
【0008】
前記金属製支持部材の材質が鋳鉄、鋳鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金であることが好ましい。
【0009】
前記金属製支持部材は筒状部材又は半割り部材である。筒状部材は一体形部材、あるいは分割された一対の半割り部材からなる。
【0010】
前記金属製支持部材は遠心鋳造により製造されることが好ましい。
【0011】
前記金属製支持部材は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金からなる部材中に鋳包みにより装着される。あるいは、前記金属製支持部材は樹脂又はゴムからなる部材中に一体成形により装着される。
【0012】
本発明は上記金属製の支持部材に限らず、樹脂製の支持部材でもよい。すなわち、
回転部材を直接又は軸受けを介して支持し、外周面に複数の突起を有する樹脂製の支持部材において、前記複数の突起は支持部材の成形時に外周面全体に形成され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有していることを特徴とする。
【0013】
前記突起の高さが0.3〜2.0mm、突起数が5〜100個/cmであることが好ましい。
【0014】
前記樹脂製支持部材は筒状部材又は半割り部材である。筒状部材は一体形部材、あるいは分割された一対の半割り部材からなる。
【0015】
前記樹脂製支持部材は、射出成形により製造されることが好ましい。
【0016】
前記樹脂製支持部材は、例えば樹脂又はゴムからなる部材中に一体成形により装着される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の支持部材によれば、支持部材が装着される部材との間で密着性が向上し、抜け止め、回り止め効果に優れる。また、支持部材及び支持部材が装着される部材をより薄くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて回転軸を直接支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図2】図1(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて回転軸を直接支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図4】図3(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【図5】本発明の更に別の実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて軸受けを介して回転軸を支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図6】図5(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて軸受けを介して回転軸を支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図8】図7(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【図9】本発明の更に別の実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて回転軸を直接支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図10】図9(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態を示し、(a)は外側部材に装着されて軸受けを介して回転軸を支持する支持部材を示し、回転軸に沿って切った縦断面図、(b)は外側部材と支持部材との接合部分を示す拡大断面図である。
【図12】図11(a)の支持部材部分を回転軸と直角に切った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1及び図2は支持部材が回転軸を直接支持している例である。金属製の外側部材1に支持孔2が形成されており、この支持孔2内に金属製の支持部材である円筒形の筒状部材3が装着され、筒状部材3内に回転軸4が回転自在に支持されている。
【0021】
外側部材1は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金からなり、筒状部材3は外側部材1の支持孔2に鋳包みにより装着されている。金属製の筒状部材3は、鋳鉄、鋳鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金で形成されている。
【0022】
筒状部材3の外周面5には全体にわたって突起6が複数形成されている。これらの突起6の中、一部又は全部の突起6が括れ形状を有している。突起6の高さは0.3〜2.0mm、突起6の個数は5〜100個/cmである。
【0023】
突起6の高さが0.3mm未満の場合は密着性が不充分となり、2.0mmより大きくなると、突起6の高さが不均一になりやすく、外径精度が低下する。突起6の個数が5個/cm未満であると密着性が不充分となり、100個/cmより多くなると突起6間の隙間が小さくなるため、筒状部材3が金属製の外側部材1中に鋳包みにより装着、あるいは樹脂又はゴム製部材中に一体成形により装着される際に、金属、樹脂又はゴムが突起6間の隙間に充分に充填されなくなり、密着性が不充分になりやすい。
【0024】
筒状部材3は遠心鋳造法により製造される。以下、筒状部材3の製造方法を説明する。
【0025】
珪藻土、ベントナイト(粘結剤)、水、及び界面活性剤を所定の割合で混合して塗型材が作製される。200〜400℃に加熱されて回転する鋳型(金型)の内面に塗型材が噴霧塗布され、鋳型の内面に塗型層が形成される。界面活性剤の作用により、塗型層内から発生する蒸気の泡によって塗型層に複数の凹穴が形成される。塗型層を乾燥後、回転する鋳型内に金属溶湯が鋳込まれる。このとき、塗型層の凹穴に溶湯が充填され、均一な複数の突起が形成される。溶湯が硬化して筒状部材が形成された後、塗型層とともに筒状部材が鋳型から取り出される。ブラスト処理により、塗型材が除去され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有している複数の突起を外周面の全体にわたって有する筒状部材が製造される。
【0026】
図3及び図4は本発明の別の実施形態を示している。本実施形態は、支持部材の支持孔と回転軸の端部がテーパ形状に形成されている点で、前記実施形態と相違している。
【0027】
すなわち、本実施形態では、筒状部材3の回転軸4を支持する支持孔7はテーパ形状に形成されており、この支持孔7に挿入されている回転軸4の端部がテーパ形状に形成されている。他の構成は上記実施形態と同じである。
【0028】
図5及び図6は本発明の更に別の実施形態を示している。本実施形態は、支持部材が軸受けを介して回転軸を支持している例であり、支持部材に軸受けを介して回転軸が支持されている点で、前記最初の実施形態と相違している。
【0029】
すなわち、本実施形態では、外側部材1の支持孔2内に筒状部材3が装着され、筒状部材3の支持孔7に軸受け8を介して回転軸4が回転自在に支持されている。他の構成は上記実施形態と同じである。
【0030】
図7及び図8は本発明の更に別の実施形態を示している。本実施形態は、筒状部材3が2つに分割されて、一対の断面半円形の半割り部材3A,3Bから構成されている点で、前記図5及び図6に示す実施形態と相違している。なお、本実施形態においては、外側部材1はコンロッド、軸受け8はホワイトメタル、回転軸4はクランクシャフトであり、9はピストンである。
【0031】
本実施形態では、外側部材1、筒状部材3及び軸受け8は2つに分割されている。外側部材1はビッグエンド部分で2つに分割されており、分割部分1A,1Bの断面半円形の凹部2A,2Bにそれぞれ断面半円形の半割り部材3A,3Bが装着固定され、これに半割りの軸受け8A,8Bが装着された後、分割部分1A,1Bが締結具10で締結されている。断面半円形の半割り部材3A,3Bの外周面5A,5Bには全体にわたって、前記実施形態で示した筒状部材3と同じ突起6が複数形成されており、外側部材1のビッグエンドの分割部分1A,1Bにそれぞれ鋳包まれている。
【0032】
図9及び図10は本発明の更に別の実施形態を示している。本実施形態は、支持部材が1個の断面半円形の半割り部材である点で、最初の実施形態と相違している。
【0033】
本実施形態では、外側部材1は2つに分割されている。外側部材1の一方の分割部分1Bの接合面に断面半円形の凹部2Bが形成されており、この凹部2Bに断面半円形の半割り部材3Bが鋳包まれている。半割り部材3Bの外周面5Bには全体にわたって、前記実施形態で示した筒状部材3と同じ突起6が複数形成されている。もう一方の分割部分1Aの接合面にも断面半円形の凹部2Aが形成されており、この凹部2Aと半割り部材3Bとで形成される支持孔内に回転軸4が回転自在に支持されている。
【0034】
図11及び図12は本発明の更に別の実施形態を示している。本実施形態は、支持部材が軸受けを介して回転軸を支持している点で、前記図9及び図10に示す実施形態と相違している。
【0035】
すなわち、本実施形態では、外側部材1の一方の分割部分1Bの接合面の凹部2Bに断面半円形の半割り部材3Bが鋳包まれ、更に半割り部材3Bに半割りの軸受け8Bが装着されている。もう一方の分割部分1Aの接合面の凹部2Aには半割りの軸受け8Aが装着されており、一対の半割りの軸受け8A,8Bで構成される軸受け8を介して回転軸4が回転自在に支持されている。
【0036】
外側部材の材質は金属に限らず、樹脂又はゴムからなる場合もある。このときは、筒状部材3や半割り部材3A,3Bは例えば射出成形により外側部材に装着される。
【0037】
以上の実施形態では、金属製の支持部材を示したが、樹脂製の支持部材もある。樹脂製の支持部材も前記実施形態で示した金属製の支持部材と同じ構成を有している。樹脂製の支持部材は例えば射出成形により製造される。すなわち、成形型の内面に突起形状の複数の凹穴を有する塗型層を形成し、成形型に樹脂を射出成形する。樹脂が硬化して支持部材が形成された後、塗型層とともに支持部材が成形型から取り出される。ブラスト処理により、塗型材が除去され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有している複数の突起を外周面の全体にわたって有する樹脂製の支持部材が製造される。樹脂製の支持部材は、例えば樹脂又はゴム製の外側部材中に射出成形により装着される。
【符号の説明】
【0038】
1・・外側部材
1A,1B・・外側部材の分割部分
2・・支持孔
2A,2B・・凹部
3・・筒状部材
3A,3B・・半割り部材
4・・回転軸
5,5A,5B・・外周面
6・・突起
7・・支持孔
8・・軸受け
8A,8B・・半割りの軸受け
9・・ピストン
10・・締結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材を直接又は軸受けを介して支持し、外周面に複数の突起を有する樹脂製の支持部材において、前記複数の突起は支持部材の成形時に外周面全体に形成され、少なくとも一部の突起が括れ形状を有していることを特徴とする樹脂製支持部材。
【請求項2】
前記突起の高さが0.3〜2.0mm、突起数が5〜100個/cmであることを特徴とする請求項1記載の樹脂製支持部材。
【請求項3】
前記支持部材が筒状部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂製支持部材。
【請求項4】
前記筒状部材が分割された一対の半割り部材からなることを特徴とする請求項3記載の樹脂製支持部材。
【請求項5】
前記支持部材が半割り部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂製支持部材。
【請求項6】
射出成形により製造されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の樹脂製支持部材。
【請求項7】
樹脂又はゴムからなる部材中に、一体成形により装着されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の樹脂製支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−32845(P2013−32845A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196122(P2012−196122)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2011−46192(P2011−46192)の分割
【原出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000215785)TPR株式会社 (80)
【出願人】(591206120)TPR工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】