説明

改善された引っかき抵抗性を有する汚れがこびりつかないコーティング

【課題】フルオロカーボン樹脂を含む主たる被膜とフルオロカーボン樹脂を基礎とした多くの上部被膜とでおおわれる、基面になされる下塗りからなる、改善された引っかき抵抗性を有する汚れがこびりつかないコーティングを提供する。
【解決手段】上記下塗りがPEEKとよばれるオキシ−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレンを少なくとも50重量%含み、上記下塗りがフルオロカーボン樹脂を含まないコーティング。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、改善された引っかき抵抗性(かき傷抵抗性)を有する汚れがこびりつかないコーティングに関するものである。
【0002】
調理器具に用いられる汚れがこびりつかないコーティングが、一般に知られている。その様なコーティングは、またかき傷がつきやすいことも知られている。
【0003】
その様なコーティングは、それらかき傷抵抗性を改善するため、アルミナ、エナメル、ステンレス鋼、または、ポリアミド−イミド(PAI)の硬い下塗りに慣用的になされる。
【0004】
第一に、その下塗りは、かき傷が基面の表面にとどくことを防止するための障壁を形成する。
【0005】
本発明は、他よりすぐれた、汚れがこびりつかない特性を保持すると同時に、周知のコーティングを越えて改善された、かき傷抵抗性を有する汚れがこびりつかないコーティングを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、フルオロカーボン樹脂を含む主たる被膜と、一またはそれ以上のフルオロカーボン樹脂を基礎とした外側の被膜とでおおわれる、基面になされる下塗りからなる、改善されたかき傷抵抗性を有する汚れがこびりつかないコーティングを提供する。
【0007】
本発明のコーティングは、前記下塗りが、PEEK、すなわちポリエーテルエーテルケトンとして知られているポリマー,オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレンを少なくとも50%含み、この下塗りがフルオロカーボン樹脂を含まないことを特徴とする。
【0008】
このポリマーの化学式は;
【0009】
【化1】

【0010】
である。
【0011】
残りの部分は、
ポリフェニレン硫化物、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、または、ポリアミド−イミドのような、単体として、または、混合物として使用される耐熱性のポリマーと
金属酸化物、二酸化珪素、雲母粒子、または、薄片の増量剤のような不活性な増量剤とで構成されうる。
【0012】
PEEKは、既に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフルオロカーボン樹脂が混ざった、汚れがこびりつかないコーティング処方において使用されている。
【0013】
しかしながら、PEEKは、堅い下塗りを構成するために、それをフルオロカーボン樹脂と混ぜることなしには、決して使用されていない。
【0014】
PEEKを基礎とした下塗りにもちいられる汚れがこびりつかないコーティングが、改善されたかき傷抵抗性を示すことは、意外にも確かめられている。
【0015】
金属へらは、それゆえに、汚れがこびりつかないコーティングで使用することができる。
【0016】
PEEKの下塗りは、基面の全コーティングされた表面の60%から95%をおおうことが確かめられている。
【0017】
この混合した下塗りの物理的特徴は、金属のへらが使われたときに、金属によるかき傷を取り除く(remove)ことである。
【0018】
これは、アルミニウムの硬さと、PTFEの弾力性との両方を改善することができる、理想的な折衷物を表す。
【0019】
網状組織は荒い表面をおおって連続的になることに、ここでは注意すべきであり、さもなければ、本発明に対するどのような影響もなしに60%もおおうことができない。
【0020】
場合によっては、前記の下塗りの厚みは、5ミクロンから100ミクロンの間とすることができる。
【0021】
主たる被膜として、そして、外側の被膜または外側の複数の被膜として使用されているフルオロカーボン樹脂は、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPTFEとPFAとの混合物である。
【0022】
本発明は、少なくとも50重量%のPEEKを含む下塗りに対してなされる、汚れがこびりつかないコーティングで、外部的、または、内部的にコーティングされた調理器具への特定の適用に関するものである。
【0023】
前記調理器具の基面は、アルミニウム、ステンレス鋼、ガラス、陶器類、または、エナメルである。
【0024】
PEEKを基礎とした下塗りをする前に、基面を、例えば酸の攻撃によって、化学的に処理しても良いし、しなくても良い。また、例えば、砂の発破(blasting)によって、機械的に処理しても良いし、しなくても良い。
【0025】
混合した下塗りは、粉末または分散物(dispersion)のかたちをとって、周囲の温度で基面に適用することができ、または、450℃の温度位まで加熱されることができる。
【0026】
それは、ペーストとして、スクリーン印刷、または、パッド印刷に用いることもできる。その場合、なされる下塗りは次の組成物であってもよい。
【0027】
【表1】

【0028】
PEEK、または、少なくともポリマーと不活性な増量剤との一方以外の組成物は、硬化するあいだになくなる。
【0029】
相互の結合剤のように機能する耐熱性のポリマーは、土台への下塗りの付着力を改善する。
【0030】
不活性な増量剤の効果は、下塗りの荒さと硬さとの少なくとも一方を増加させることである。被膜のかき傷及び剥離抵抗性は、このように改善される。
【0031】
さらに、結果として下塗りの硬さを減少させる耐熱性のポリマーと不活性の増量剤とを混ぜることにより、下塗りの硬さは調整される。
【0032】
最後に、下塗りの構成に、不活性な増量剤を使うことは、それらの低いコストゆえ、かなりの商業的利益となる。
【0033】
用いられたPEEKの粉末の粒状物サイズは、約20μmの平均粒状物サイズであるが、4ミクロン(μm)から80μmの範囲とすることができる。
【0034】
適用の様式によれば、
前記下塗りを少なくとも260℃の温度まで熱することと、
PTFEを基礎とする主たる被膜や外側の被膜や外側の複数の被膜を引き続いて前記下塗りに適用させることと、そして、
被膜の集合を、400℃から420℃の温度で硬化させることとが必要であり得る。
【0035】
引き続いてPEEKの下塗りになされる、被膜の組成の一例が、今、与えられる;
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
乾燥後、上記被膜の集合は、400℃から420℃の温度で5分から10分間、焼結された。
【0040】
改善された特性を持った汚れがこびりつかないコーティングが得られた。
【0041】
様々な温度でフランスの基準NF21−511に従って実行された硬度測定は次の結果を示し、そして、従来のコーティングと比べる;
【0042】
【表5】

【0043】
特に、現実の食べ物の調理の状況において使用される時、金属へらによる攻撃に対する抵抗力に関する性能は驚くべきものである。2年間の使用に相当する、調理、グリルで焼く、そして油であげるサイクルが、様々な食べ物を用いて実施された後、コーティングの表面はほとんど傷ついておらず、地金には達していなかった。
【0044】
これは、金属の道具(ナイフを除く)を使用するとき、本当に改善されたかき傷抵抗性を提供する下塗りシステムをもうけた第一のコーティングを構成する。今までは、テストされた下塗りはどれも満足な解決を提供しなかった(プラズマ、アルミナ、チタン、陽極酸化処理、そして、他の表面処理)。
【0045】
外と内のコーティングを、調理器具や家庭用の電気器具(ホットプレート、グリルプレート)、そして、例えばアイロンのような全ての滑らかな表面に提供するように、かき傷抵抗性のこの改善は、すべての分野において適用されうることは明らかである。
【0046】
明らかに、本発明は、上記に記載された例に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の精神や範囲からそれることなく、この事項について、なされうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロカーボン樹脂を含む主たる被膜と、一またはそれ以上のフルオロカーボン樹脂を基礎とした外側の被膜とでおおわれる、基面になされる下塗りからなる、改善されたかき傷抵抗性を有する汚れがこびりつかないコーティングであって、
上記下塗りは、
PEEKとして知られている、ポリマー,オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレンを少なくとも50重量%;
ポリフェニレン硫化物、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、または、ポリアミド−イミドのような、単体として、または、混合物として使用される耐熱性のポリマーと
金属酸化物、二酸化珪素、雲母粒子、または、薄片の増量剤のような不活性な増量剤とで構成される残りの部分;
を含み、
上記下塗りはフルオロカーボン樹脂を含まないことを特徴とするコーティング。
【請求項2】
PEEKで構成される下塗りが、基面になされたコーティングの全表面の60%から95%をおおうことを特徴とする請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
前記下塗りの厚さが、5μmから100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング。
【請求項4】
前記フルオロカーボン樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、PTFE−PFA(ペルフルオロアルキルビニルエーテル)の混合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のコーティングでおおわれた調理器具。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のコーティングを基面に適用する方法であって、
PEEKによって構成される下塗りを基面に適用する工程と
前記下塗りを少なくとも340℃の温度で融解する工程と
PTFEを基礎とする主たる被膜と、外側の被膜、または、複数の外側の被膜とを、連続して、上記下塗りに適用する工程と、その後、
被膜の集合を400℃から420℃の温度で硬化させる工程と
からなることを特徴とするコーティングを基面に適用する方法。
【請求項7】
PEEKは、平均の粒状物のサイズは約20μmであるが、4μmから80μmの範囲の粒状物の大きさの粉末の形で、適用されることを特徴とする請求項6記載のコーティングを基面に適用する方法。

【公開番号】特開2007−185959(P2007−185959A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350542(P2006−350542)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【分割の表示】特願2000−604960(P2000−604960)の分割
【原出願日】平成12年3月15日(2000.3.15)
【出願人】(591125670)セブ ソシエテ アノニム (20)
【Fターム(参考)】