説明

改善された活性挙動を有する触媒

波状および平坦状の薄板層からの金属製ハニカム体を有する自動車排ガス触媒の場合、ハニカム体の熱容量および熱伝導率を薄板層内の穿孔によって低下させることが公知である。それによってハニカム体はより素早く暖まり、かつ該ハニカム体に施与された触媒コーティングはより素早くその作動温度に達する。この場合の欠点は、薄板層内の穿孔による担体表面の低下である。本発明により、触媒コーティングのために使用されるコーティング懸濁液の特性を孔の寸法に対して適切に調整することによって、孔は触媒材料により持続的に充填されうる。その結果生じる触媒は、穿孔を施されなかった薄板層を有する触媒と同じコーティング濃度でも明らかに低下した熱容量および熱伝導率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本発明は、内燃機関の排ガス浄化用の触媒材料からのコーティング用の担体としての金属製ハニカム体に関する。
【0002】
ハニカム体に関して、該ハニカム体が触媒の作動温度へと素早く暖まるように、一方ではコーティングを取り入れるための大きい形状の表面が、かつ他方ではわずかな熱容量が所望される。その他、ハニカム体に関して、脈動ガス流およびエンジンと車両の振動による機械的負荷に耐えるために十分な機械的安定性が要求される。それ以外に、ハニカム体の材料は、腐食性排ガス雰囲気に対して高い温度でも耐久性がなければならない。
【0003】
完成した触媒の触媒コーティングは、表面上に触媒活性の白金族金属が析出している微細粒の耐熱性金属酸化物から成る。適切な金属酸化物は、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ゼオライトおよびそれらの混合物または混合酸化物ならびに安定剤、例えば酸化ランタンおよび酸化バリウムである。これらの材料をハニカム体上に施与するため該粉状材料は、例えば水中に懸濁される。引き続き、このコーティング懸濁液は公知の方法によりハニカム体上に析出され、乾燥されかつ、か焼によって固化される。
【0004】
ハニカム体は様々に組み立てられていてよい。すでに非常に早い時期から、螺旋状に巻かれたハニカム体が用いられてきた。該ハニカム体は平坦状および波状の薄板層から成り、該層は互いに重ね合わされ、次いで巻き上げられ、かつケーシング管(Mantelrohr)内で使用される。2つの薄板層によって流路が形成され、該流路を排ガスが流れ、かつ集中的に触媒コーティングと接触しうる。
【0005】
他の構造型の場合、ハニカム体は多数の交互に配置された平坦状および波状のまたは様々の波状の薄板層から構成され、その際、まず薄板層は、互いに絡み合った1つ以上の積層を形成する。その際、薄板層の端部は外側に位置し、かつケーシング管と結合されうる。それによって薄板層とケーシング管との間で、ハニカム体の機械的強度を高める多くの結合が生じる。
【0006】
有利には、薄板層の材料として、例えば商品名FeCrAlloy(R)で市販されるアルミニウム含有鋼合金が使用される。これは鉄−クロム−アルミニウム−合金である。薄板層の厚さは、通常20〜80μmであり、有利には50μmである。
【0007】
流路内の流に影響を及ぼすためにかつ/または流の個々の流路間で交差混合を達成するために、薄板層に穿孔(Lochungen)およびみぞ(Sicken)を備え付けることは久しく公知である。金属製ハニカム体の組み立てのためにスリット付きの薄板を使用することも同様に公知である。例えばUS5,599,509は、薄板にハニカム体の入口領域内で排ガスの流方向と交差するスリットを付与し、該ハニカム体の熱容量をこの領域内で目的に合わせて低下させることを提案する。
【0008】
フロント部分において低下させられた熱伝導率および熱容量によって、施与された触媒コーティングはより素早くその活性温度に達し、それにより例えば一酸化炭素および炭化水素のより良好な変換率にも達する。しかしながら、変換率の改善は、百分率で表される薄板層のスリット面積に明らかに依存する。変換率は、スリット面積の領域内だけで20〜50%改善される。スリット面積が触媒層の変わらぬ厚さにおいて増加するにつれて、供給されうる触媒材料は減少するので、50%を上回ると炭素水素変換率は再び減少する。それゆえ、変換率の改善はウォーミングアップ段階においてしか観察されえない。ウォーミングアップ段階の後、触媒材料が低下させられたことで排ガス中の有害物質の変換率が悪化する。それ以外に、そのような触媒は、わずかな触媒材料ゆえにわずかな耐老化性しか有さない。さらに薄板層の穿孔は、孔(Loechern)により乱流が形成されるため触媒の背圧(Staudruck)を高める。そのような触媒担体上に、同じ形状を有する穿孔を施されなかった担体の場合と同じ触媒材料を施与しようとする場合、触媒層の層厚さ、ひいては同様に触媒の背圧が必然的に高まることになる。
【0009】
同様にDE10314085A1は、少なくとも部分的に穿孔を施された薄板層からの金属製ハニカム体を記載する。穿孔の目的は、種々の流の流路の排ガス流の交差混合を可能にすることである。それゆえコーティングに際して、孔がコーティング懸濁液によって閉ざされないことに注意が払われる。この理由から該ハニカム体は、コーティング懸濁液と担体との間で相対運動を生み出し、ひいては孔が閉ざされることを防止する振動装置中でコーティングされる。
【0010】
US5,821,194は、平坦状および波状の薄板層からの金属製ハニカム体を記載する。プレコーティング材料の接着性を改善するため薄板層には、プレコーティング材料がコーティングに際して浸入しかつ薄板層とコーティング材料との間で機械的固定を形成する多数の孔が付与されている。このために孔の直径は、薄板層の厚さのほぼ半分の大きさであり、従って25〜35μmである。孔は、ほぼ1mmの間隔において互いに配置されている。
【0011】
本発明は、穿孔を施された薄板層の従来技術から公知の欠点を回避するべきである。本発明の課題は、薄板層の孔面積による担体表面の損失を適切な措置によって補整することである。
【0012】
この課題は、排ガス用の入口端面(Eintritsstirnflaeche)および出口端面(Austrittsflaeche)を有する平坦状および波状の金属薄板からのハニカム体を含有する、内燃機関の排ガスの浄化用触媒によって解決され、その際、該金属薄板には、その熱容量を低下させるために孔および/またはスリットが備え付けられており、かつ該金属薄板上には触媒材料が施与されている。触媒は、金属薄板の孔および/またはスリットが可能な限り完全に触媒材料で充填されており、かつ全ての孔の孔面積が合わせて金属薄板の面積の5〜80%となることを特徴とする。
【0013】
US5,599,509とは異なり、本発明による薄板層内の孔およびスリットは触媒材料で充填される。触媒材料によるかまたはプレコーティングによる充填は、コーティングプロセスに際して直接行われる;付加的な処理プロセスは必要ではない。同じ形状を有する穿孔を含まない担体の場合に適用されるのと同じ量の触媒材料が用いられる場合、熱容量は薄板層内の穿孔の割合分、軽減される。これらの効果を評価するために、第1表中の物理的データが役に立ちうる:
【表1】

【0014】
本発明による利点は、薄板層の穿孔が触媒材料の低下につながらないという点にある。その結果として、本発明による触媒は低下させられた担体の熱容量によって非常に素早くその活性温度に達し、次いで縮小されなかった触媒コーティングの完全な活性を発揮する。それに加えて本発明による触媒は、触媒材料によるより高い負荷濃度に従って、慣例の、穿孔を施された触媒と比べて改善された老化安定性を有する。
【0015】
当然のことながら、同じコーティング濃度を従来技術により孔を閉ざすことなくハニカム体上に施与することも可能である。しかしその時にはコーティング厚さは必然的にずっと大きくなり、従って触媒の流抵抗はより高いものになると考えられる。
【0016】
本発明による触媒の製造のために、コーティング懸濁液の特性は、可能な限り全ての孔を触媒材料で完全に充填することを保証するため孔の広がりに合わせられなければならない。流動性のコーティング懸濁液は小さい孔しか閉ざすことができず;それに対して、半流動性のコーティング懸濁液はより大きい孔も覆い隠す。当業者は、いくつかの前試験によって最適な条件を容易に突きとめることができる。
【0017】
孔の形状は環形である必要はない。コーティング懸濁液で覆い隠すことが可能な孔面積は、孔の形状とコーティング懸濁液の特性に依存する。一般に、個々の孔の面積は、0.1〜25mmであってよい。環形の孔の場合、孔面積は0.1〜1mmが有利であることが示され;それに対して、方形の孔の場合、孔面積は0.25〜25mm、有利には0.25〜5mmが選択されうる。それゆえ孔は、挙げられた制限の枠内で円形、楕円形、長円形、正方形、長方形、スリット形または多角形であってもよい。
【0018】
コーティング懸濁液の特性および孔の寸法に関する上述の規定が守られる場合、本来のコーティングプロセスのために、浸漬、注入、吸入またはポンプ供給による公知のコーティング法が適用されうる。しかしながら、圧縮空気を用いた吹き付けによって過剰のコーティング懸濁液を除去する場合、このプロセスに際して、湿った触媒材料で閉ざされた孔が再び開かないように注意が払われなければならない。
【0019】
コーティング懸濁液の乾燥後、それは約300〜600℃でか焼される。その後、孔は、内燃機関の排ガス系統における苛酷な運転条件に耐え抜く触媒材料からの丈夫な層で閉ざされる。
【0020】
このようにして、穿孔を施されなかったハニカム体の場合のように、求められるコーティング厚さに応じて、ハニカム体の体積1リットル当たり50〜400グラムのコーティング濃度が獲得されうる。孔を閉ざすことなく同じコーティング濃度を施与しようとする場合、薄板上のコーティング厚さはそれに相応して増大されなければならない。
【0021】
有利には、ハニカム体の製造のために、全ての薄板層は穿孔を施された形において平板状でも波状でも使用される。本発明の利点は、しかし−たとえ減衰された形においても−例えば穿孔を施された形において平坦状の薄板層のみがまたは波状の薄板層のみが使用される場合にもなお実現される。
【0022】
それに加えて、穿孔をハニカム体のある一定の領域のみに制限することが目的に適いうる。例えば有利なのは、穿孔をハニカム体の流通過領域内にのみ施与することである。
【0023】
穿孔を施された領域内の薄板層の全面積Aに対する全ての孔を合わせた面積により、熱容量の到達可能な低下が決まる。本発明により、ハニカム体の穿孔を施された領域内の全面積に対する全ての孔の面積は5〜80%である。80%を上回ると、ハニカム体の強度は穿孔によって非常に強く損なわれる。有利には、孔の割合は5〜65%、殊に20〜65%である。
【0024】
該穿孔に加えて、薄板層は、排ガス流が触媒コーティングとの接触の改善のために渦流にされるべき場合、みぞおよびしぼ(Praegungen)も有してよい。
【0025】
薄板層に関してハニカム体を組み立てるためにいわゆるエキスパンドメタルを使用することがとりわけ有利であると判明した。エキスパンドメタルと呼ばれるのは、開口部、いわゆるメッシュを有する金属薄板であり、それは千鳥状に切れ目を入れながら同時に該切れ目に対し垂直に引き伸ばすことによって材料を損失することなく作製される。エキスパンドメタルは、ひし形またはスリット形のメッシュを有する格子構造を持つ。該メッシュは、ストランド(Steg)およびそれに取り囲まれた開口部から成る。ストランドの交差点は、連結点(Knotenpunkte)と呼ばれる。メッシュの大きさは、メッシュ長さおよびメッシュ幅によって出される。メッシュ長さは、長い対角線の方向において連結点の真ん中から連結点の真ん中までの間隔である。同じことがメッシュ幅に当てはまる。エキスパンドメタルのためのさらなる特有値は、そのストランドの幅である。
【0026】
金属薄板からのエキスパンドメタルの製造に際し、引き伸ばし方向に対して垂直な金属薄板の幅は引き続き保持される。それというのもストランドは、打抜き工程前のまだ打抜きされていない薄板が変形に逆らうという理由で打抜きの切れ目にて広げられるからである。この際、波形の起伏をつけられた、成形的に構造化されたエキスパンドメタルの表面が形成される。平坦状の表面が所望される場合、エキスパンドメタルは引き伸ばし後に平らに圧延してよい。エキスパンドメタルは4〜約90%の自由横断面積で製造されうる。
【0027】
本発明による触媒のために、平坦状または波状の金属薄板または2つの薄板タイプがエキスパンドメタルから成っていてよい。メッシュ長さは、5〜80%、有利には10〜50%の引き伸ばし率に際して0.5〜5mmである。好ましい結果は、30%引き伸ばししたエキスパンドメタルにより達成された。30%の引き伸ばし率が意味するのは、エキスパンドメタルが製造後に出発薄板の1.3倍の長さを有することである。つまり、そのような薄板は約23%の自由孔面積と、同じ長さの慣例の薄板と比べてこのパーセンテージ分低下させられた材料を有する。
【0028】
波形の起伏をつけられたエキスパンドメタルの表面は、完成した触媒の触媒作用に有利に作用を及ぼす。なぜなら、これによって排ガスは触媒の流の流路内で渦流にされ、ひいては触媒コーティングとの接触が改善されるからである。しかしながら、これによって排ガス背圧が高まる。これが所望されない場合、エキスパンドメタルは触媒体の形成前に圧延することによって平らにしてよい。
【0029】
本発明による触媒は、内燃機関の排ガス浄化のために使用される。その際、触媒コーティングは、排ガス組成物の固有の要件に合わせられうる。該コーティングは、酸化触媒、三元触媒、窒素酸化物−吸蔵触媒またはSCR触媒を含有してよい。本発明による触媒は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンを有する自動車両において、エンジンに接近したスタート触媒(Startkatalysator)としてもまたは床下触媒(Unterbodenkatalysator)としても使用されうる。とりわけ有利には、該触媒は、エンジンが取り付けられた二輪車および船舶の排ガス浄化のために適している。
【0030】
本発明のより詳細な説明のために図1〜7が用いられる。図面は以下のものを示している:
図1〜4: 様々の孔の形状および孔の割合を有する、穿孔を施された薄板層の例
図5: 触媒の改善された活性に関する例
図6: a)未被覆の状態における
b)触媒コーティング後の
ハニカム体の形成のために用いた30%の引き伸ばし率を有するエキスパンドメタルを撮影したもの
図7: 欧州の二輪車排ガステストサイクル(Motorradtestzyklus)における、穿孔を施されなかった薄板層からの通常のハニカム体と、エキスパンドメタルから製造された薄板層を有する本発明によるハニカム体との排ガス排出量の比較測定。
【0031】
図1〜5は、2倍に拡大した場合の尺度図における薄板層の可能な穿孔のいくつかの例を示す。
【0032】
図1および2は、0.8mmの直径を有する円形の孔からの穿孔を示す。図1および2の穿孔は、互いの孔の間隔と、それによって互いに異なる百分率で表される孔面積とによって区別される。図1によると孔面積は、穿孔を施された薄板領域の50%であり、一方で、図2の穿孔によると孔面積は25%のみである。
【0033】
図3および4は、様々の大きさおよび百分率で表される孔面積を有する長孔を有する穿孔を示す。
【0034】
シミュレーション計算
本発明による触媒の利点を証明するためにシミュレーション計算を行った。シミュレーションのためのベースとして、1200cmの4サイクルエンジンを有する二輪車の排ガス値、つまり有害物質濃度および排ガス温度を、テスト時間に依存したEU3−テストサイクルにおいて測定した。
【0035】
有害物質変換率の算出のために、360cm−2のセル密度、90mmの直径および74.5mmの長さを有する2つの金属ハニカム体を用いた。FeCrAlloyから成る金属薄板は50μmの厚さを有していた。比較算出のために、ハニカム体を、穿孔を施されなかった金属薄板から組み立てることから出発し、一方で、実施例計算のために、ハニカム体が、50%の孔面積を有する穿孔を施された金属薄板を有することを前提とした。触媒コーティングとして、いずれに場合にも1.48g/ハニカム体の体積1lの同じ貴金属濃度を有する、白金、パラジウムおよびロジウムを有する三元触媒を当てた。
【0036】
測定および算出の結果は、図5の中でEU3−サイクルの初めの200秒間において示されている。"Vは"、テストサイクルに従う二輪車の速度プロフィールを表す。T1は、触媒に流入する前の排ガスの測定された温度プロフィールである。
【0037】
図5の中の曲線T2は、穿孔を施されなかった比較触媒の後の算出された温度プロフィールを示し、一方で、曲線T3は、穿孔を施された実施例触媒の後の温度プロフィールを示す。実施例触媒の穿孔により、ずっと素早く暖まることがはっきりと認められうる。そうして、穿孔を施された触媒は、穿孔を施されなかった比較触媒よりΔt=13秒早く250℃の温度に達する。
【0038】
例1:比較触媒(触媒A):
穿孔を施されなかった、0,05mmの厚さの金属フィルム、90mmの直径、74.5mmの長さおよび200cm−2のセル密度からの円筒形の金属ハニカム体を、1.55g/ハニカム体の体積1lの貴金属濃度を有する、白金、パラジウムおよびロジウムを有する慣例の三元触媒でコーティングした。
【0039】
例2:本発明による触媒(触媒B):
触媒特性の比較のために、比較触媒と同じ寸法、フィルム厚さおよび同じセル密度を有するもう一つの金属担持触媒を製造した。しかしながら、穿孔を施されなかった金属フィルムの代わりに、30%の引き伸ばし率および0.6のメッシュ長さ、0.5のメッシュ幅および0.18mmのストランド幅(Stegbreite)を有するエキスパンドメタルを使用した。金属担体を同じ三元触媒で、比較触媒と同じ濃度においてコーティングした。
【0040】
図6a)は、触媒コーティング前の使用したエキスパンドメタルの構造の撮影したものを示す。図6b)は、触媒コーティング後の相応する写真である。エキスパンドメタルのメッシュ開口部が触媒材料で完全に充填されていることがはっきりと認められうる。触媒材料はエキスパンドメタルに顕著に付着し、かつ圧縮空気による吹き込みおよびノッキングに際しても剥離を示さなかった。
【0041】
背圧測定:
2つの金属担持触媒の背圧を、300Nm/h(Nm=標準m)の質量流量にて触媒コーティング前および触媒コーティング後に調べた。結果は、以下の第2表の中で示されている。
【0042】
【表2】

【0043】
本発明による触媒担体Bは、コーティングなしではその三次元に構造化された表面ゆえに、穿孔を施されなかった金属フィルムを有する金属担体より明らかに高い背圧を示す。触媒コーティングの施与後、比較触媒の背圧は58%高まり、5.9から9.4mbarとなる。エキスパンドメタル−フィルムからの本発明による触媒担体の場合、背圧はコーティング後に22%しか高まらず、8.2から10.1mbarとなる。ここで、エキスパンドメタルのメッシュを触媒材料で充填することによって、2つの触媒間の背圧差が、未コーティングのおよびコーティングされた触媒担体間の背圧上昇と比べて無視できるほどになるという意想外の結果が示される。
【0044】
欧州の二輪車排ガステストサイクルにおける排ガス排出量の測定:
触媒AおよびBを、二輪車からそれらの排ガス排出量に関して欧州の二輪車排ガステストサイクルにおいて測定した。図7は、走行時間に依存した2つの触媒のテスト中に蓄積したCO−、HC−およびNOx−排出量の測定値を示す。図7は、二輪車が走行する速度も示す。一酸化炭素および炭化水素の本発明による触媒Bの排出曲線は、明らかに比較触媒Aの曲線を下回っている。2つの触媒間の排出量の相違は、初めの100秒間のコールドスタート段階に帰せられ、かつその理由は本発明による触媒のよりわずかな熱量ゆえのそのより短時間の活性時間にある。コールドスタート段階後、2つの触媒は有害物質をすぐに良好に変換する。それというのも、それらは同じ量の触媒材料でコーティングされているからである。その結果として、排出曲線はコールドスタート段階後、互いに平行に進む。
【0045】
第3表中には、このテスト間の有害物質に関する定容量サンプリング法の結果(Beutelergebnisse)がリストにまとめられている。
【0046】
【表3】

【0047】
第3表の結果により、本発明による触媒Bが比較触媒に対して、19%減少した一酸化炭素の排出量、31%減少したTHC3の排出量および19%減少した窒素酸化物の排出量を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】穿孔を施された薄板層の一例を示す図
【図2】穿孔を施された薄板層の一例を示す図
【図3】穿孔を施された薄板層の一例を示す図
【図4】穿孔を施された薄板層の一例を示す図
【図5】触媒の改善された活性に関する例を示す図
【図6】a)未被覆の状態における、b)触媒コーティング後のエキスパンドメタルを撮影したものを示す図
【図7】通常のハニカム体と、本発明によるハニカム体との排ガス排出量の比較測定を示す図
【符号の説明】
【0049】
T1 触媒流入前の測定した排ガスの温度プロフィール、 T2 穿孔を施されなかった比較触媒通過後の温度プロフィール、 T3 穿孔を施された実施例触媒通過後の温度プロフィール、 V 速度プロフィール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス用の入口端面および出口端面を有する平坦状および波状の金属薄板からのハニカム体を含有する、内燃機関の排ガスの浄化用触媒であって、その際、該金属薄板には、その熱容量を低下させるために穿孔が備え付けられており、かつ該金属薄板上には触媒材料が施与されている、内燃機関の排ガスの浄化用触媒において、該金属薄板の孔が触媒材料で充填されており、かつ全ての孔の孔面積が合わせて金属薄板の面積の5〜80%となることを特徴とする、内燃機関の排ガスの浄化用触媒。
【請求項2】
孔が、円形、楕円形、長円形、正方形、長方形、スリット形または多角形の断面を有することを特徴とする、請求項2記載の触媒。
【請求項3】
孔が、0.1mm〜25mmの面積を有することを特徴とする、請求項2記載の触媒。
【請求項4】
孔が、金属薄板の全表面上にかまたは部分面上に設けられていることを特徴とする、請求項3記載の触媒。
【請求項5】
平坦状または波状の金属薄板または2つの金属薄板がエキスパンドメタルから形成されており、その際、該エキスパンドメタルが、連結中心点から連結中心点まで0.5〜5mmのメッシュ長さを有することを特徴とする、請求項1記載の触媒。
【請求項6】
エキスパンドメタルの引き伸ばし率が5〜80%の間隔から選択されていることを特徴とする、請求項5記載の触媒。
【請求項7】
エキスパンドメタルがその製造後に平らに圧延されることを特徴とする、請求項6記載の触媒。
【請求項8】
エキスパンドメタルのメッシュが、エキスパンドメタルの全表面上にかまたは部分面上に設けられていることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項9】
触媒材料による負荷を50〜400g/ハニカム体の体積1lの濃度で有することを特徴とする、請求項1記載の触媒。
【請求項10】
内燃機関の排ガス浄化用の、請求項1から9までのいずれか1項記載の触媒の使用。
【請求項11】
触媒がスタート触媒としてかまたは床下触媒として自動車両において使用されることを特徴とする、請求項10記載の使用。
【請求項12】
触媒が、エンジンが取り付けられた二輪車またはエンジンが取り付けられた船舶の排ガス浄化のために使用されることを特徴とする、請求項10記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−525856(P2009−525856A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553673(P2008−553673)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001023
【国際公開番号】WO2007/090618
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】