説明

改善された特異性を有するトランスグルタミナーゼ変異体

ヒト成長ホルモンのGln−40及びGln−141に対する向上した選択性を有するSモバレンス由来のトランスグルタミナーゼ変異体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレプトマイセス・モバレンス(Streptomyces mobaraense)由来のトランスグルタミナーゼの新規の変異体に関する。この変異体は、改善された選択性を有するペプチドを修飾するために使われてもよい。
【背景技術】
【0002】
適切に性質を変えるタンパク質に基をコンジュゲートすることによってペプチドの性質及び特徴を修飾することは、周知である。特に治療用のペプチドにとって、ペプチドの半減期を延長するペプチドへの基のコンジュゲートは、望ましいか又は、更に必要である。一般的に、このようなコンジュゲート基はポリエチレングリコール(PEG)又は脂肪酸である−J.Biol.Chem. 271, 21969-21977 (1996)を参照。
既にトランスグルタミナーゼ(TGアーゼ)を用いてペプチドの性質が変更されている。食品産業、特にダイアリー産業において、例えばTGアーゼを用いた交差結合ペプチドには多くの技術が有用である。他の文書は、生理的に活性なペプチドの性質を変更するためのTGアーゼの使用を開示する。欧州特許第950665号、欧州特許第785276号及びSato, Adv. Drug Delivery Rev. 54, 487-504 (2002)は、TGアーゼの存在下で、少なくとも一のGlnとアミン-機能化PEGないしは類似のリガンドを含んでなるペプチド間の直接反応を開示し、Biotech. Lett. 23, 1367-1372 (2001)においてWadaは、TGアーゼによる脂肪酸とのβ-ラクトグロブリンの直接的なコンジュゲートを開示する。国際特許出願の国際公開第2005070468号は、TGアーゼを用いて官能基をグルタミン含有ペプチドに組み込んで機能化ペプチドを形成してもよいこと、そしてその後の工程においてこの機能化ペプチドを該機能化タンパク質と反応しうるPEGなどと反応させてPEG化ペプチドを形成してもよいことを開示している。
【0003】
また、トランスグルタミナーゼ(E.C.2.3.2.13)は、タンパク質-グルタミン-γ-グルタミルトランスフェラーゼとして知られていて、以下のような一般的な反応を触媒する。

このとき、Q-C(O)-NHはグルタミン含有ペプチドを表し、次いでQ'-NHは、上記の反応においてペプチドに取り込まれる官能基を提供するアミンドナーを表す。
【0004】
インビボにおいて一般的なアミンドナーはペプチド結合リジンであり、次いで上記の反応によりペプチドの交差結合が生じる。凝固因子第XIII因子は、損傷の際の血液の凝固に作用するトランスグルタミナーゼである。例えばGlnのまわりのどのアミノ酸残基が、タンパク質が基質であるために必要であるかは、異なるTGアーゼで互いに異なる。すなわち、異なるTGアーゼは、どのアミノ酸残基がGln残基に隣接しているかによって異なるGln含有ペプチドを基質として有するであろう。修飾されるペプチドが一以上のGln残基を含有する場合に、この態様が利用されうる。存在するGln残基のいくつかでのみペプチドを選択的にコンジュゲートすることが望ましい場合、関連するGln残基(一又は複数)を基質として受け入れるだけであるTGアーゼの選別によってこの選択性が可能となりうる。
ヒト成長ホルモン(hGH)は11のグルタミン残基を含んでなり、任意のTGアーゼが媒介するhGHのコンジュゲートは低選択性によって潜在的に妨害される。特定の反応条件下において、S.モバレンスTGアーゼ媒介反応においてhGHが機能化される上記の2工程のコンジュゲート反応は、2つの位置、すなわち40-Gln及び141-Glnで機能化されているhGHを生じうることを発見した。hGHのより特異的な機能化を媒介するTGアーゼの変異体を同定する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の発明者は、驚くべきことに、S.モバレンスのTGアーゼの特定のアミノ酸残基の置換によりhGHをより特異的に機能化するTGアーゼを産出することを発見した。
一実施態様では、本発明は、3以下の酸性又は塩基性のアミノ酸残基が他の塩基性又は酸性のアミノ酸残基に置換されているS.モバレンスのTGアーゼ(配列番号1)に関する。
一実施態様では、本発明は、S.モバレンスのTGアーゼのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列がAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている単離されたペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、Asp-4,Val-30,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基が修飾されているS.モバレンスのTGアーゼ(配列番号1)に関する。
【0006】
一実施態様では、本発明は、置換Tyr-75→酸性アミノ酸残基;Tyr-302→塩基性アミノ酸残基;及びAsp-304→塩基性アミノ酸残基のうちの一又は複数を含んでなる、配列番号1に示すペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドをコードする核酸コンストラクトに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドをコードする核酸を含んでなるベクターに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドをコードする核酸を含んでなるベクターを含む宿主に関する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドを含んでなる組成物に関する。
一実施態様では、本発明は、hGHのコンジュゲート方法であって、本発明に係るペプチドの存在下でアミンドナーとhGHを反応させることを含んでなる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】上記のストレプトマイセス・モバレンシスのTGアーゼと上記のストレプトバーティシリウム・ラダカヌムのTGアーゼとの配列のアラインメントを示す。
【図2】1,3-ジアミノ-2-プロパノールによるhGHのTGアーゼ-触媒トランスグルタミン化の代表的なCE分析の画像を示す。
【図3】HPLCによるS.ラダカヌムのTGアーゼに触媒されるhGH変異体の反応混合物の分析。上:hGH-Q40N。1つ目のピーク(26.5min、Area1238)は生成物-Q141であり、2つ目のピーク(29.7min、Area375)は残存するhGH-Q40Nである。下:hGH-Q141N。1つ目のピーク(19.2min、Area127)は生成物-Q40であり、2つ目のピーク(30.3min、Area1158)は残存するhGH-Q141Nである。
【図4】HPLCによるS.モバレンスのTGアーゼに触媒されるhGH変異体の反応混合物の分析。上:hGH-Q40N。1つ目のピーク(26.9min、Area1283)は生成物-Q141であり、2つ目のピーク(30.1min、Area519)は残存するhGH-Q40Nである。下:hGH-Q141N。1つ目のピーク(19.5min、Area296)は生成物-Q40であり、2つ目のピーク(30.6min、Area1291)は残存するhGH-Q141Nである。
【図5】S.モバレンスのAlaPro-TGアーゼを用いたトランスグルタミン化反応。反応は25℃で30分間行われた。hGH転換率は33%で、選択性は5.79であった。
【図6】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「酸性アミノ酸残基」なる用語は、7未満のpKaを有する天然のアミノ酸残基を示すことを意図する。具体的な例としてはAsp及びGluが挙げられる。
本明細書において、「塩基性アミノ酸残基」なる用語は、7を超えるpKaを有する天然のアミノ酸残基を示すことを意図する。具体的な例としてはTyr、Lys及びArgが挙げられる。
本明細書において「アミノ基転移」又はその類似語は、グルタミンの側鎖の窒素が他の化合物の窒素、特に他の窒素含有求核試薬の窒素と交換される反応を示すことを意図する。
名詞の「コンジュゲート」なる用語は、修飾した(変更した)ペプチド、すなわち、該ペプチドの性質を修飾するために結合した成分を有するペプチドを表すことを意図する。動詞としては、この用語は、前記ペプチドの性質を修飾するためにペプチドに成分を結合する過程を示すことを意図する。
【0009】
本明細書において、「特異性」及び「選択性」なる用語は交換可能に用いられ、hGHの他の特定のグルタミン残基と比較して、hGHの一又は複数の特定のグルタミン残基との反応に対するTGアーゼの優先度を表す。本明細書のために、hGHのGln141と比較したときのGln-40に対する本発明のペプチドの特異性は、実施例3に記載のようにペプチドを試験した結果に従って決定される。
また、微生物ストレプトマイセス・モバレンシスはストレプトバーティシリウム・モバレンスにも分類される。TGアーゼは生物体から単離されてもよく、このTGアーゼは相対的に低い分子量(〜38kDa)であることと、カルシウム非依存性であることに特徴を有する。S.モバレンスのTGアーゼは比較的十分に記載されている;例えば、結晶構造が解析されている(米国特許第156956号;Appl. Microbiol. Biotech. 64, 447-454 (2004))。
ストレプトバーティシリウム・ラダカヌム(Streptoverticillium ladakanum)から単離されたTGアーゼの配列は、2つの配列間で合計22のアミノ酸の差異を除きストレプトバーティシリウム・モバレンス(Streptoverticillium mobaraense)の配列と同一性があるアミノ酸配列を有する(Yi-Sin Lin等, Process Biochemistry 39(5), 591-598 (2004))。ストレプトマイセス・モバレンシス(Streptomyces mobaraensis)のTGアーゼの配列は配列番号1に示され、ストレプトマイセス・ラダカヌムのTGアーゼの配列は配列番号6に示され、図1は上記のストレプトマイセス・モバレンシスのTGアーゼと上記のストレプトバーティシリウム・ラダカヌムのTGアーゼとの配列の配列アラインメントを示す。
【0010】
コンジュゲートされたhGHを調製する1つの方法は、機能化したhGHを産出するための、官能基を含んでなるアミンドナーとhGHとの間の第一反応を含んでなり、この第一反応はTGアーゼに媒介される(すなわち触媒される)ものである。第二反応工程では、コンジュゲートされたhGHを提供するために、前記の機能化したhGHを、前記の組み込まれた官能基と反応しうるPEG又は脂肪酸などと更に反応させる。第一反応を以下に略図する。

Xは、官能基、又は潜在的な官能基、すなわち更なる反応、例えば酸化又は加水分解の際に官能基に変わる基を表す。
【0011】
上記の反応がS.モバレンスのTGアーゼによって媒介される場合、hGHとHN-X(アミンドナー)との間の反応は主にGln-40及びGln-141で起こる。上記の反応を用いてhGHをPEG化するなどして、延長された半減期を有する治療用の成長ホルモン生成物を獲得しうる。一般的に治療用組成物は単一化合物の組成物であることが望ましいので、上記の特異性の欠如により、Gln-40機能化hGHをGln-141機能化hGH及び/又は、Gln-40/Gln-141二重機能化hGHから分離する更なる精製工程が必要となる。
ヒト成長ホルモンのコンジュゲートのためのトランスグルタミナーゼのこのような使用は国際公開第2005/070468号及び国際公開第2006EP063246号に広く記載されている。
【0012】
本発明のペプチドは、hGHのGln-141と比較してGln-40に対して特異性を有し、この特異性は実施例3に記載のように測定するところの、Gln-141と比較したときのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性と異なるものである。したがって、本発明のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有するTGアーゼを用いた反応と比較してGln-40機能化hGH又はGln-141機能化hGHの産生を増加するためのhGHのトランスグルタミン化方法に用いられてもよい。
一実施態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列がAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、単離されたペプチドを提供する。
【0013】
当該分野で公知である「同一性」なる用語は、配列を比較することによって決まる、2つ以上のペプチド配列間の相関性を指す。当該分野において、「同一性」はまた、2つ以上のアミノ酸残基の文字列間の合致の数によって決まるような、ペプチドの間の配列相関性の程度を意味する。「同一性」は、特定の数理モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって明らかになる、(あるならば)ギャップを含むより小さい2つ以上の配列アライメント間の同一合致のパーセントを測定する。関連するタンパク質の同一性は、周知の方法によって直ちに算出することができる。上記方法は、以下の文献に記載されているものを含むが、これらに限定されるものではない:Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編, オックスフォード大学出版, ニューヨーク, 1988年; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編, アカデミック出版, ニューヨーク, 1993年; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M.及び Griffin, H. G.編, Humana Press, ニュージャージ, 1994年; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G.著, アカデミック出版, 1987年; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. 及び Devereux, J.編, M. Stockton Press, ニューヨーク 1991年; 及び Carillo等, SIAM J. Applied Math., 48:1073 (1988)。
【0014】
同一性を決定する好適な方法は、試される配列間で最大の合致があるように設定されている。同一性を決定する方法は、公的に利用できるコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定する好適なコンピュータプログラムの方法には、GCGプログラム・パッケージ(GAPを含む)(Devereux等, Nucl. Acid. Res., 12:387 (1984); Genetics Computer Group, ウィスコンシン大学, マディソン, ウィスコンシン), BLASTP, BLASTN, 及びFASTA (Altschul等, J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990))がある。BLASTXプログラムは、バイオテクノロジー情報国立センター(NCBI)及び他の提供源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul等 NCB/NLM/NIH ベセズダ、マリーランド、20894; Altschul等, 上掲)。周知のスミス・ウォーターマンのアルゴリズムもまた、同一性を決定するために用いてもよい。
【0015】
例えば、コンピュータアルゴリズムのGAP(Genetics Computer Group, ウィスコンシン大学, マディソン, ウィスコンシン)を用いて、配列同一性のパーセントを決定すべき2つのタンパク質を、個々のアミノ酸が最適に合致(アルゴリズムによって決定される「合致したスパン(matched span)」)するように整列させる。ギャップ開始ペナルティー(平均的なダイアゴナルの3倍で計算される;該「平均的なダイアゴナル」は使用する比較マトリックスのダイアゴナルの平均である;該「ダイアゴナル」は特定の比較マトリックスによって、完全アミノ酸合致ごとに割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸張ペナルティー(通常ギャップ開始ペナルティーの10分の1である)と一緒に、PAM250及びBLOSUM62のような比較マトリックスが、アルゴリズムと同時に使用される。標準の比較マトリックス(PAM250比較マトリックスに関してはDayhoff等, Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, supp.3 (1978);BLOSUM 62比較マトリックスに関しては Henikoff等, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89:10915-10919 (1992)を参照)もまた、該アルゴリズムによって使用される。
【0016】
ペプチド配列比較の好ましいパラメータは、以下を含む;
アルゴリズム:Needleman等, J. Mol. Biol, 48:443-453 (1970);比較マトリックス:Henikoff等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10915-10919 (1992)のBLOSUM 62;ギャップペナルティー:12、ギャップ長ペナルティー:4、類似性の閾値:0。
GAPプログラムは、上記パラメータを使用できる。上述したパラメータは、GAPアルゴリズムを使用しているペプチド比較のデフォルト・パラメータである(末端のギャップにペナルティーをかけない)。
【0017】
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はCys-64から20Å未満、例えばCys-64から15Å未満離れて位置する一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている。
Tatsuki Kashiwagi等, Journal of Biological Chemistry 277(46), 44252-44260 (2002)に公開されているように、Cys64からの距離は、S.モバレンスのTGアーゼの結晶構造を用いて測定される。また、原子配位はコード1|U4としてタンパク質データバンクに寄託されている。
Cys64から15Å未満離れて位置するS.モバレンスのTGアーゼのアミノ酸の例は以下を含む:
Arg5,Val6,Thr7,Glu28,Thr29,Val30,Val31,Tyr34,Gln56,Arg57,Glu58,Trp59,Leu60,Ser61,Tyr62,Gly63,Val65,Gly66,Val67,Thr68,Trp69,Val70,Asn71,Ser72,Gln74,Tyr75,Pro76,Thr77,Asn78,Tyr198,Ser199,Lys200,His201,Phe202,Trp203,Asn239,Ile240,Pro241,Phe251,Val252,Asn253,Phe254,Asp255,Tyr256,Gly257,Trp258,Phe259,Trp272,Thr273,His274,Gly275,Asn276,His277,Tyr278,His279,Ala280,Leu285,Gly286,Ala287,Met288,His289,Val290,Tyr291,Glu292,Ser293,Asn297,Trp298,Ser299,Gly301,Tyr302,Asp304,Phe305,Gly308及びAla309。
【0018】
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はAsp-4,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Lys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はAla-226及びPro-227から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はTyr-75で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はTyr-302で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列はAsp-304で修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列は配列番号6に示すものである。
一実施態様では、本発明のペプチドは、hGHのGln-141と比較してhGHのGln-40に対する特異性を有し、この特異性はhGHのGln-141と比較したときのhGHのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性と異なるものである。
【0019】
一実施態様では、Gln-141と比較したときのGln-40に対する本発明のペプチドの特異性が、Gln-141と比較したときのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高く、その結果、本明細書中に記載のTGアーゼを用いたトランスグルタミナーゼ反応におけるGln-40の産生が、Gln-141と比較して増加する。
一実施態様では、Gln-141と比較したときのGln-40に対する本発明のペプチドの特異性は、Gln-141と比較したときのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より、少なくとも1.25、例として少なくとも1.50、例えば少なくとも1.75、例として少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例として少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例として少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例として少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5、例として少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5、例として少なくとも7.0、例えば少なくとも7.5、例として少なくとも8.0、例えば少なくとも8.5、例として少なくとも9.0、例えば少なくとも9.5、例として少なくとも10.0倍高い。
【0020】
一実施態様では、Gln-40と比較したときのGln-141に対する本発明のペプチドの特異性が、Gln-40と比較したときのGln-141に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高く、その結果、本明細書中に記載のTGアーゼを用いたトランスグルタミナーゼ反応におけるGln-141の産生が、Gln-40と比較して増加する。
一実施態様では、Gln-40と比較したときのGln-141に対する本発明のペプチドの特異性は、Gln-40と比較したときのGln-141に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より、少なくとも1.25、例として少なくとも1.50、例えば少なくとも1.75、例として少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例として少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例として少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例として少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5、例として少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5、例として少なくとも7.0、例えば少なくとも7.5、例として少なくとも8.0、例えば少なくとも8.5、例として少なくとも9.0、例えば少なくとも9.5、例として少なくとも10.0倍高い。
【0021】
一実施態様では、本発明は、hGHのGln-141と比較してhGHのGln-40に対して特異性を有し、この特異性はhGHのGln-141と比較したときのhGHのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性と異なるものである、トランスグルタミナーゼペプチドを提供する。
一実施態様では、本発明は、hGHのGln-141と比較してhGHのGln-40に対して特異性を有し、この特異性はhGHのGln-141と比較したときのhGHのGln-40に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高いものである、トランスグルタミナーゼペプチドを提供する。
【0022】
一実施態様では、本発明は、hGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、この特異性はhGHのGln-40と比較したときのhGHのGln-141に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高いものである、トランスグルタミナーゼペプチドを提供する。一実施態様では、こういったトランスグルタミナーゼペプチドは、例えば上述したようなストレプトマイセス・モバレンシスのTGアーゼの変異体でありうる。一実施態様では、こういったトランスグルタミナーゼペプチドは、例えばストレプトマイセス・ラダカナム(配列番号6)のTGアーゼでありうる。一実施態様では、こういったトランスグルタミナーゼペプチドは、例えばストレプトマイセス・ラダカナム(配列番号6)のTGアーゼの変異体でありうる。一実施態様では、こういったストレプトマイセス・ラダカナムのTGアーゼの変異体は、配列番号6の配列を有するトランスグルタミナーゼのトランスグルタミナーゼ活性を保持したまま、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、こういったストレプトマイセス・ラダカナムのTGアーゼの変異体は、配列番号6の配列を有するトランスグルタミナーゼのトランスグルタミナーゼ活性を保持したまま、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、こういったストレプトマイセス・ラダカナムのTGアーゼの変異体は、配列番号6の配列を有するトランスグルタミナーゼのトランスグルタミナーゼ活性を保持したまま、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、こういったストレプトマイセス・ラダカナムのTGアーゼの変異体は、配列番号6の配列を有するトランスグルタミナーゼのトランスグルタミナーゼ活性を保持したまま、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである。更なる実施態様では、前記ソトレプトマイセス・ラダカナムのTGアーゼの変異体はアミノ酸配列を有し、前記配列は配列番号6のアミノ酸残基Tyr-62、Tyr-75及びSer-250に相当する一又は複数の位置で修飾されている。一実施態様では、前記アミノ酸配列はTyr-62に相当する位置で修飾されており、該修飾は、元のチロシン残基の、Met,Asn,Thr及びLeuから選択されるアミノ酸残基との置換からなる。一実施態様では、前記アミノ酸配列はTyr-75に相当する位置で修飾されており、該修飾は、元のチロシン残基の、Ala,Arg,Asn,Asp,Cys,Gln,Glu,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp及びValから選択されるアミノ酸残基との置換からなる。一実施態様では、前記アミノ酸配列はSer-250に相当する位置で修飾されており、該修飾は、元のチロシン残基の、Ala,Arg,Asn,Asp,Cys,Gln,Glu,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Phe,Pro,Thr,Trp,Tyr及びValから選択されるアミノ酸残基との置換からなる。
【0023】
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドをコードする核酸コンストラクトを提供する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係る核酸コンストラクトを含んでなるベクターを提供する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るベクターを含んでなる宿主を提供する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドを含んでなる組成物を提供する。
一実施態様では、本発明は、本発明に係るペプチドの存在下でアミンドナーとhGHを反応させることを含んでなるhGHのコンジュゲート方法を提供する。
一実施態様では、本発明は、コンジュゲートされたhGHの調製における本発明に係るペプチドの使用を提供する。
【0024】
以下は、本発明の実施態様の非限定的な一覧である:
実施態様1:配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が配列番号1のAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている単離されたペプチド。
実施態様2:配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が配列番号1のAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1に記載の単離されたペプチド。
実施態様3:配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が配列番号1のAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様2に記載の単離されたペプチド。
実施態様4:配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が配列番号1のAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様3に記載の単離されたペプチド。
実施態様5:配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、該配列がAsp-4,Val-30,Tyr-62,Tyr-75,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221,Ala-226,Pro-227,Gly-250,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278,Leu-285,Tyr-302,Asp-304及びLys-327から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様4に記載の単離されたペプチド。
【0025】
実施態様6:前記配列が、配列番号1のGly-250に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし5のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様7:Gly-250がThrに置換されている、実施態様6に記載の単離されたペプチド。
実施態様8:Gly-250がSerに置換されている、実施態様6に記載の単離されたペプチド。
実施態様9:前記配列が、配列番号1のCys-64に相当するアミノ酸残基から20Å未満離れて位置する一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし8のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様10:前記配列が、配列番号1のCys-64に相当するアミノ酸残基から20Å未満離れて位置する一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし9のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【0026】
実施態様11:配列が、配列番号1の位置Cys64に相当する位置で修飾されていない、実施態様10に記載の単離されたペプチド。
実施態様12:前記配列が、配列番号1のVal-30,Tyr-62,Val-252,Asn-253,Phe-254,His-277,Tyr-278及びLeu-285から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様10又は11に記載の単離されたペプチド。
実施態様13:前記配列が、配列番号1のTyr-62に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様12に記載の単離されたペプチド。
実施態様14:前記Tyr-62が、His,Glu,Ile,Leu,Met,Asn,Gln,Thr,Val又はTrpに置換されている、実施態様12又は実施態様13に記載の単離されたペプチド。
実施態様15:前記Tyr-62がGluに置換されている、実施態様12ないし14のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様16:前記Tyr-62がTrpに置換されている、実施態様12ないし14のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様17:前記Tyr-62が、His,Ile,Leu,Met,Asn,Gln,Thr又はValに置換されている、実施態様12から14のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様18:前記Tyr-62がHisに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様19:前記Tyr-62がGluに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様20:前記Tyr-62がIleに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
【0027】
実施態様21:前記Tyr-62がMetに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様22:前記Tyr-62がAsnに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様23:前記Tyr-62がGlnに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様24:前記Tyr-62がThrに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様25:前記Tyr-62がValに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様26:前記Tyr-62がTrpに置換されている、実施態様17に記載の単離されたペプチド。
実施態様27:前記配列が、配列番号1のHis-27及びTyr-278に相当する一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様12ないし26のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様28:前記配列が、配列番号1のLeu-285に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様12ないし27のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様29:前記Leu-285が、Thrに置換されている、実施態様28に記載の単離されたペプチド。
実施態様30:前記配列が、配列番号1の位置Val-252,Asn-253及びPhe-254に相当するアミノ酸残基から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様12ないし29のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【0028】
実施態様31:前記配列が、配列番号1のVal-30に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様10ないし30のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様32:前記Val-30が配列番号1のIleに置換されている、実施態様31に記載の単離されたペプチド。
実施態様33:前記配列が、配列番号1の位置Asp-4,Arg-89,Glu-115,Ser-210,Asp-221及びLys-327に相当するアミノ酸残基から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし32のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様34:前記Asp-4がGluに置換されている、実施態様33に記載の単離されたペプチド。
実施態様35:前記Asp-4がGluに置換されており、位置1,2及び3のアミノ酸が削除されている、実施態様33又は34に記載の単離されたペプチド。
実施態様36:配列番号1のArg-89に相当するアミノ酸残基がLysに置換されている、実施態様33ないし35のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様37:配列番号1のGlu-115に相当するアミノ酸残基が、Aspに置換されている、実施態様33ないし36のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様38:配列番号1のSer-210に相当するアミノ酸残基が、Glyに置換されている、実施態様33ないし37のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様39:配列番号1のAsp-221に相当するアミノ酸残基が、Serに置換されている、実施態様33ないし38のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様40:配列番号1のLys-327に相当するアミノ酸残基が、Thrに置換されている、実施態様33ないし39のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【0029】
実施態様41:前記配列が、配列番号1の位置Ala-226及びPro-227に相当するアミノ酸残基から選択される一又は複数のアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし40のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様42:前記Ala-226がAspに置換されている、実施態様41に記載の単離されたペプチド。
実施態様43:配列番号1のPro-227に相当するアミノ酸残基がArgに置換されている、実施態様41に記載の単離されたペプチド。
実施態様44:前記配列が、配列番号1のTyr-75に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし43のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様45:前記Tyr-75がGluと異なるアミノ酸に置換されている、実施態様44に記載の単離されたペプチド。
実施態様46:前記Tyr-75がAsp又はGluと異なるアミノ酸に置換されている、実施態様45に記載の単離されたペプチド。
実施態様47:前記Tyr-75がアミノ酸残基と異なるアミノ酸に置換されている、実施態様46に記載の単離されたペプチド。
実施態様48:前記Tyr-75がAlaに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様49:前記Tyr-75がCysに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様50:前記Tyr-75がPheに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【0030】
実施態様51:前記Tyr-75がLeuに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様52:前記Tyr-75がMetに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様53:前記Tyr-75がAsnに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様54:前記Tyr-75がProに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様55:前記Tyr-75がSerに置換されている、実施態様44ないし47のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様56:前記配列が、配列番号1のTyr-302に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし55のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様57:前記Tyr-302がTyrと異なる塩基性アミノ酸残基に置換されている、実施態様56に記載の単離されたペプチド。
実施態様58:前記Tyr-302がArg又はLysに置換されている、実施態様57に記載の単離されたペプチド。
実施態様59:前記Tyr-302がArgに置換されている、実施態様58に記載の単離されたペプチド。
実施態様60:前記配列が、配列番号1のAsp-304に相当するアミノ酸残基で修飾されている、実施態様1ないし59のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【0031】
実施態様61:前記Asp-304が塩基性アミノ酸残基に置換されている、実施態様60に記載の単離されたペプチド。
実施態様62:前記Asp-304がTyr,Lys又はArgに置換されている、実施態様61に記載の単離されたペプチド。
実施態様63:前記Asp-304がLysに置換されている、実施態様62に記載の単離されたペプチド。
実施態様64:配列番号2に示された配列を有する実施態様55に記載の単離されたペプチド。
実施態様65:配列番号3に示された配列を有する実施態様59に記載の単離されたペプチド。
実施態様66:配列番号4に示された配列を有する実施態様63に記載の単離されたペプチド。
実施態様67:配列番号5に示された配列を有する実施態様44ないし63のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様68:配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる単離されたペプチド。
実施態様69:配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、実施態様68に記載の単離されたペプチド。
実施態様70:配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、実施態様69に記載の単離されたペプチド。
【0032】
実施態様71:配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、実施態様70に記載の単離されたペプチド。
実施態様72:配列番号6に示すようなアミノ酸配列を含んでなる、実施態様71に記載の単離されたペプチド。
実施態様73:置換Tyr-75→酸性アミノ酸残基;Tyr-302→Tyrではない塩基性アミノ酸残基;及びAsp-304→塩基性アミノ酸残基のうちの一又は複数を含んでなる配列番号1に示す配列を有するペプチド。
実施態様74:置換Tyr-75→Asp又はGlu;Tyr-302→Arg又はLys;及びAsp-304→Tyr,Lys又はArgのうちの一又は複数を含んでなる配列番号1に示す配列を有する、実施態様73に記載のペプチド。
実施態様75:置換Tyr-75→Glu;Tyr-302→Arg;及びAsp-304→Lysのうちの一又は複数を含んでなる配列番号1に示す配列を有する、実施態様73又は74に記載のペプチド。
実施態様76:配列が配列番号2に示すものである、実施態様73ないし75のいずれかに記載のペプチド。
実施態様77:配列が配列番号3に示すものである、実施態様73ないし75のいずれかに記載のペプチド。
実施態様78:配列が配列番号4に示すものである、実施態様73ないし75のいずれかに記載のペプチド。
実施態様79:配列が配列番号5に示すものである、実施態様73に記載のペプチド。
実施態様80:前記ペプチドが単離されたペプチドである、実施態様73ないし79のいずれかに記載のペプチド。
【0033】
実施態様81:ペプチドがトランスグルタミナーゼ活性を有する、実施態様1ないし80のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様82:ペプチドがhGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、この特異性はhGHのGln-40と比較したときのhGHのGln-141に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高いものである、実施態様1ないし81のいずれかに記載の単離されたペプチド。
実施態様83:hGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、この特異性はhGHのGln-40と比較したときのhGHのGln-141に対する、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性より高いものである、トランスグルタミナーゼペプチド。
実施態様84:トランスグルタミナーゼペプチドが実施態様1ないし50のいずれかに記載のペプチドである、実施態様83に記載のトランスグルタミナーゼペプチド。
実施態様85:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸コンストラクト。
実施態様86:実施態様85の核酸コンストラクトを含んでなるベクター。
実施態様87:実施態様86のベクターを含んでなる宿主。
実施態様88:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドを含んでなる組成物。
実施態様89:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミンドナーとペプチドを反応させることを含んでなる、ペプチドのコンジュゲート方法。
実施態様90:コンジュゲートされるべきペプチドが成長ホルモンである、実施態様89に記載のペプチドのコンジュゲート方法。
【0034】
実施態様91:前記成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様90に記載の方法。
実施態様92:前記成長ホルモンがhGHである、実施態様91に記載の方法。
実施態様93:位置Gln-141でコンジュゲートされたhGHの量と比較したときの位置Gln-40でコンジュゲートされたhGHの量が、実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの代わりに配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが使用された場合の、位置Gln-141でコンジュゲートされたhGHの量と比較したときの位置Gln-40でコンジュゲートされたhGHの量と比べて有意に増加する、hGHをコンジュゲートするための実施態様91又は92に記載の方法。
実施態様94:位置Gln-40でコンジュゲートされたhGHの量と比較したときの位置Gln-141でコンジュゲートされたhGHの量が、実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの代わりに配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが使用された場合の、位置Gln-40でコンジュゲートされたhGHの量と比較したときの位置Gln-141でコンジュゲートされたhGHの量と比べて有意に増加する、hGHをコンジュゲートするための実施態様91又は92に記載の方法。
実施態様95:hGHの位置Gln-40に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比較したときのhGHの位置Gln-141に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量が、実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの代わりに配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチドが使用された場合の、hGHの位置Gln-40に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比較したときのhGHの位置Gln-141に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比べて有意に増加する、成長ホルモンをコンジュゲートするための実施態様91又は92に記載の方法。
【0035】
実施態様96:hGHの位置Gln-40に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比較したときのhGHの位置Gln-141に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量が、実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの代わりに配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが使用された場合の、hGHの位置Gln-40に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比較したときのhGHの位置Gln-141に相当する位置でコンジュゲートされた成長ホルモンの量と比べて有意に増加する、hGHをコンジュゲートするための実施態様91又は92に記載の方法。
実施態様97:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミンドナーとhGHを反応させることを含んでなる、位置141に相当する位置でコンジュゲートされたhGHの調製方法。
実施態様98:コンジュゲートされたhGHがPEG化hGHの調製に使用され、前記PEG化がコンジュゲートされた位置で行われる、実施態様91ないし97のいずれかに記載の方法。
実施態様99:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミンドナーとhGH又はその変異体又は誘導体を反応させる工程を含んでなる、コンジュゲートされた成長ホルモンの医薬調製方法。
実施態様100:前記成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様99に記載の方法。
【0036】
実施態様101:実施態様1ないし84のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミンドナーとhGH又はその変異体又は誘導体を反応させ、及び結果として生じるコンジュゲートされた成長ホルモンペプチドをPEG化hGHの調製に使用し、前記PEG化がコンジュゲートされた位置で行われる工程を含んでなる、PEG化成長ホルモンの医薬調製方法。
実施態様102:前記成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様101に記載の方法。
実施態様103:PEG化成長ホルモンが位置Gln141でPEG化されたhGHである、実施態様102に記載の方法。
実施態様104:PEG化成長ホルモンがNε141-[2-(4-(4-(40KDa mPEGyl)ブタノイル)-アミノ-ブチルオキシイミノ)-エチル]である、実施態様103に記載の方法。
実施態様105:コンジュゲートされた成長ホルモンの調製における、実施形態1ないし84のいずれかに記載のペプチドの使用。
【0037】
実施態様106:成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様105に記載の使用。
実施態様107:hGHが、hGHの位置Gln-40に相当する位置でコンジュゲートされている、実施態様105又は106に記載の使用。
実施態様108:成長ホルモンが、hGHの位置Gln-141に相当する位置でコンジュゲートされている、実施態様105又は106に記載の使用。
実施態様109:実施態様101ないし104のいずれかに記載の方法を使用して調製した医薬品を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、患者における成長ホルモンの欠乏に関連する疾病又は疾患の治療方法。
実施態様110: 患者における成長ホルモンの欠乏に関連する疾病又は疾患が、成長ホルモン欠損症(GHD);ターナー症候群;プラダーウィリ症候群(PWS);ヌーナン症候群;ダウン症候群;慢性腎臓病、若年性関節リウマチ;嚢胞性線維症;HAART治療を受けた小児のHIV感染(HIV/HALS小児);胎内発育遅延(SGA)低身長出生児;SGA以外の極低出生体重(VLBW)で生まれた小児の低身長症;骨格形成異常;軟骨低形成症;軟骨無形成症;突発性短身症(ISS);成人おけるGHD;脛骨、腓骨、大腿、上腕、橈骨、尺骨、鎖骨、中手骨、中足骨、及び指等の長骨内又は長骨の骨折;頭蓋骨、手の基部、及び足の基部等の海綿様骨内部又は海綿様骨の骨折;手、膝又は肩等における腱又は靱帯手術後の患者の症状;仮骨延長術を受けた又は受けている患者の症状;人工股関節又は円板置換術、半月板修復、脊椎固定術、又は膝、臀部、肩、肘、手首又は顎等のプロテーゼ固定術を受けた患者の症状;骨接合術材料、例えば爪、ネジ及びプレートが固定された患者の症状;骨折の癒着不能又は変形治癒を有する患者の症状;脛骨又は第1つま先等からの骨切除術後の患者の症状;移植片植え込み後の患者の症状;外傷又は関節炎に起因する膝の関節軟骨変性;ターナー症候群を患っている患者の骨粗鬆症;男性における骨粗鬆症;慢性透析の成人患者(APCD)の症状;APCDにおける栄養不良関連循環器疾患;APCDにおける悪液質の逆流;APCDにおける癌;APCDにおける慢性閉塞性肺疾患;APCDにおけるHIV;高齢APCDの症状;APCDにおける慢性的な肝臓病;APCDにおける疲労症候群;クローン病;肝機能障害;HIV感染の男性の症状;短腸症候群;中心性肥満;HIV関連リポジストロフィ症候群(HALS):男性不妊;主要な待機手術、アルコール/薬物解毒又は神経性トラウマ後の患者の症状;加齢;虚弱な高齢者の症状;骨関節炎;外傷性損傷を受けた軟骨;勃起障害;線維筋痛;記憶障害;鬱病;外傷性脳損傷;くも膜下出血;極低出生体重;メタボリックシンドローム;グルココルチコイドミオパシー;及び小児のグルココルチコイド処置による低身長症から選択される、実施態様109に記載の方法。
【0038】
配列番号2に示す用いられる場合、主にGln-141機能化hGHが得られ、ごくわずかな量のGln-40機能化hGH、又はGln-40/Gln-141二重機能化hGHが得られる。
一実施態様では、本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、配列Tyr-75がAsp又はGluに置換されている;及び/又はTyr-302がArg又はLysに置換されている;及び/又はAsp-304がTyr、Lys又はArgに置換されている、及び/又はGly-250がSer又はThrに置換されている;及び/又はAsp-4がGluに置換されている;及び/又はVal-30がIleに置換されている;及び/又はアミノ酸1−4が欠失しているか又はGly(Δ(DSDD)1-4G)に置換されているペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含んでなり、配列Tyr-75がGluに置換されている;及び/又はTyr-302がArgに置換されている;及び/又はAsp-304がLysに置換されている;及び/又はGly-250がSerに置換されている;及び/又はAsp-4がGluに置換されている;及び/又はVal-30がIleに置換されている;及び/又はアミノ酸1-4が欠失しているペプチドに関する。
【0039】
一実施態様では、本発明は、Tyr-75→Glu置換を有する配列番号1である、配列番号2に示すアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、Tyr-302→Arg置換を有する配列番号1である、配列番号3に示すアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関する。
一実施態様では、Asp-304→Lys置換を有する配列番号1である、配列番号4に示すアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、Tyr-75→Glu置換、Tyr-302→Arg置換、及びAsp-304→Lys置換を有する配列番号1である、配列番号5に示すアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、ストレプトバーティシリウム・ラダカヌムのTGアーゼである、配列番号6に示すアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関する。
【0040】
本発明のペプチドは、米国特許第5156956号に記載のアッセイにおいて決定されるようなTGアーゼ活性を表す。簡単に説明すると、所定のペプチドの活性の測定は、Ca2+の非存在下でベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシン及びヒドロキシルアミンを基質として用いた反応を行うこと、トリクロロ酢酸の存在下で結果として生じるヒドロキサム酸との鉄複合体を形成すること、525nmの吸光度を測定すること、及びヒドロキサム酸の量を較正曲線によって測定して活性を算出することによって実施される。本明細書においては、前記アッセイにおいてトランスグルタミナーゼ活性を表すペプチドを、トランスグルタミナーゼ活性を有するものとみなした。特に、本発明のTGアーゼ変異体は、S.モバレンス由来のTGアーゼの活性の30%より高い、例として50%より高い、例として70%より高い、例として90%より高い活性を表す。
一実施態様では、本発明は、配列番号:2、3、4又は5のいずれかを有するポリペプチドを含んでなる組成物に関する。
【0041】
本発明のペプチドは異なる方法で調製されてもよい。ペプチドは、当分野で公知のタンパク質合成方法によって調製されてもよい。ペプチドのサイズによって、いくつかのペプチドの断片を合成し、次いで本発明のペプチドを提供するために組み合わせることによってより都合よく行われてもよい。しかしながら、特定の実施態様では、本発明のペプチドは、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクトを含んでなる好適な宿主の発酵によって調製される。
【0042】
一実施態様では、本発明はまた、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクトにも関する。
本明細書中で用いられる「核酸コンストラクト」なる用語は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はRNA起源の任意の核酸分子を示すことを意図する。「コンストラクト」なる用語は、一本鎖又は二本鎖でありえ、且つ対象のタンパク質をコードする完全ないしは部分的な天然に生じるヌクレオチド配列に基づきうる核酸セグメントを示すことを意図する。場合によってコンストラクトは他の核酸セグメントを含有してもよい。
本発明のペプチドをコードする本発明の核酸コンストラクトは、適切にゲノム又はcDNA起源のものでよく、例えばゲノム又はcDNAライブラリを調製して、標準的な技術(J. Sambrook等, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)に従った合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによってすべて又は一部のタンパク質をコードするDNA配列をスクリーニングすることによって、そして当分野で公知の突然変異を導入することによって得てもよい。
【0043】
また、タンパク質をコードする本発明の核酸コンストラクトは、確立された標準的な方法、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22, 1859-1869 (1981) )に記載のホスホアミダイト法、又はMatthes等., EMBO Journal 3, 801-805 (1984)に記載の方法によって合成して調製してもよい。ホスホアミダイト法によると、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機において合成され、精製され、アニールされ、ライゲートされ、適切なベクターにクローニングされる。
更に、核酸コンストラクトは、標準的な技術によって、核酸コンストラクト全体の様々な部分に対応する断片である合成起源、ゲノム起源又はcDNA起源(必要に応じて)の断片をライゲートすることによって調製された、合成起源とゲノム起源を混合、合成起源とcDNA起源を混合、又はゲノム起源とcDNA起源を混合したものであってもよい。
また、核酸コンストラクトは、例えば米国特許第4683202号又はSaiki等., Science 239, 487-491 (1988)に記載のように、特定のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって調製されてもよい。
核酸コンストラクトはDNAコンストラクトであることが好ましく、以下では当該用語だけが用いられる。
【0044】
更なる態様では、本発明は、本発明のDNAコンストラクトを含んでなる組み換えベクターに関する。本発明のDNAコンストラクトが挿入される組み換えベクターは、組み換えDNA手順に都合よく供される任意のベクターであってよく、ベクターの選択は導入しようとする宿主細胞に依存することが多いであろう。したがって、ベクターは自己複製するベクター、すなわち染色体外の実体として存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクター、例えばプラスミドであってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、組み込まれている染色体(一又は複数)と共に複製されるものであってもよい。
好ましくは、ベクターは、本発明のタンパク質をコードするDNA配列がDNAの転写に必要な付加的なセグメントに作用可能に連結されている発現ベクターである。通常、発現ベクターは、プラスミド又はウイルスDNA由来であるか、又は両方の成分を含有してもよい。「作用可能に連結される」なる用語は、セグメントが、意図する目的の通りに機能するように、例えば転写がプロモーターにおいて開始しタンパク質をコードするDNA配列まで進行するように整列されることを表す。
【0045】
プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列でよく、宿主細胞に相同な又は異種性のタンパク質をコードする遺伝子由来でもよい。
酵母宿主細胞における使用に好適なプロモーターの例には、酵母糖分解遺伝子(Hitzeman等, J. Biol. Chem. 255, 12073-12080 (1980);Alber及びKawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1, 419 - 434 (1982))又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young等, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender等, 編集), Plenum Press, New York, 1982)由来のプロモーター、又はTPI1(米国特許第4599311号)ないしははADH2-4c(Russell等, Nature 304, 652 - 654 (1983))プロモーターが含まれる。
糸状菌宿主細胞における使用に好適なプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnight等, The EMBO J. 4, 2093 - 2099 (1985))又はtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、A.オリゼーTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、A.ニガー中性α-アミラーゼ、A.ニガー酸安定性α-アミラーゼ、A.ニガーないしはA.アワモリのグルコアミラーゼ(gluA)、リゾムコール・ミーヘイリパーゼ、A.オリゼーアルカリプロテアーゼ、A.オリゼートリオースリン酸イソメラーゼ、又はA.ニデュランスアセトアミダーゼをコードする遺伝子由来のものである。TAKA-アミラーゼ及びgluAプロモーターが好ましい。
細菌性宿主細胞における使用に好適なプロモーターの例には、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニック(maltogenic)アミラーゼ遺伝子、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)α-アミラーゼ遺伝子、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)BANアミラーゼ遺伝子、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)アルカリプロテアーゼ遺伝子、又はバチルス・プミラス(Bacillus pumilus)キシロシダーゼ遺伝子のプロモーター、又は、ファージλPプロモーターないしはPプロモーターないしは大腸菌lac、trp又はtacプロモーターが含まれる。
【0046】
また、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、必要に応じて、ヒト成長ホルモンターミネーター(前掲のPalmiter等)又は(真菌宿主のための)TPI1(前掲のAlber及びKawasaki)ないしはADH3(前掲のMcKnight等)ターミネーターなどの、適切な転写ターミネーターに作用可能に連結されうる。ベクターは更に、ポリアデニル化シグナル(例えばSV40又はアデノウイルス5Elb領域由来)、転写エンハンサー配列(例えばSV40エンハンサー)及び翻訳エンハンサー配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードするもの)などの成分を含みうる。
本発明の組み換えベクターは更に、問題の宿主細胞中でのベクターの複製を可能にするDNA配列を含みうる。
宿主細胞が酵母細胞である場合、ベクターの複製を可能にする好適な配列は、酵母プラスミド2μ複製遺伝子REP1-3及び複製開始点である。
宿主細胞が細菌細胞である場合、ベクターの複製を可能にする配列は、DNAポリメラーゼIII複合体コード遺伝子及び複製開始点である。
【0047】
また、ベクターは、選択マーカー、例えばその生成物が宿主細胞中の欠損を補う遺伝子、例として、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子又はシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)TPI遺伝子(P.R. Russell, Gene 40, 125-130 (1985)に記載)、又はアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬剤に耐性を与えるものを含む。糸状菌では、選択マーカーには、amdS、pyrG、argB、niaD及びsCが含まれる。
宿主細胞の分泌経路に本発明のタンパク質を導くために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列ともしても知られる)を組み換えベクターに提供してもよい。分泌シグナル配列を、正確なリーディングフレーム内のタンパク質をコードするDNA配列に結合する。一般的に、分泌シグナル配列はタンパク質をコードするDNA配列の5'に位置する。分泌シグナル配列は、通常タンパク質と関連するものか、又は他の分泌されたタンパク質をコードする遺伝子からのものであってもよい。
【0048】
酵母細胞からの分泌の場合、分泌シグナル配列は、細胞の分泌経路内への発現されたタンパク質の効率的な誘導を導く任意のシグナルペプチドをコードしうる。シグナルペプチドは、天然に生じるペプチドないしはその機能的な部分であってよく、合成ペプチドであってもよい。好適なシグナルペプチドは、α-因子シグナルペプチド(米国特許第4870008号を参照)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle等, Nature 289, 643-646 (1981)を参照)、変性カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. Valls等, Cell 48, 887-897 (1987)を参照)、酵母BAR1シグナルペプチド(国際公開第87/02670号を参照)、又は酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(M. Egel-Mitani等, Yeast 6, 127-137 (1990)を参照)であることが明らかとなった。
酵母での効率的な分泌のために、リーダーペプチドをコードする配列も、シグナル配列の下流とタンパク質をコードするDNA配列の上流に挿入されうる。リーダーペプチドの機能は、発現されたタンパク質を小胞体からゴルジ体へ、更に培養培地への分泌のために分泌小胞へ誘導することである(すなわち、細胞壁を越えて、又は少なくとも細胞膜を通過して酵母細胞のペリプラズム空間へタンパク質を放出すること)。リーダーペプチドは酵母α-因子リーダーであってよい(その使用は例えば米国特許第4546082号、欧州特許第16201号、欧州特許第123294号、欧州特許第123544号及び欧州特許第163529号に記載される)。あるいは、リーダーペプチドは合成リーダーペプチド、つまり天然には見られないリーダーペプチドであってもよい。合成リーダーペプチドは、例えば、国際公開第89/02463号又は国際公開第92/11378号に記載のように構築されてもよい。
【0049】
糸状菌での使用の場合、シグナルペプチドは、都合よく、アスペルギルスsp.アミラーゼないしはグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミーヘイリパーゼないしはプロテアーゼをコードする遺伝子、又はフミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子由来でもよい。シグナルペプチドは、A.オリゼーTAKAアミラーゼ、A.ニガー中性α-アミラーゼ、A.ニガー酸安定性アミラーゼ、又はA.ニガーグルコアミラーゼをコードする遺伝子由来であることが好ましい。
本タンパク質をコードするDNA配列、プロモータ及び場合によってターミネーター及び/又は分泌シグナル配列のそれぞれをライゲートして、複製に必要な情報を含む好適なベクターにこれらを挿入するために用いられる手順は、当業者に周知である(例えば上掲のSambrook等を参照のこと)。
【0050】
本発明のDNAコンストラクト又は組み換えベクターが導入される宿主細胞は、本タンパク質を生産することが可能である任意の細胞であって、細菌、酵母、真菌類及び高等真核細胞が含まれる。
培養の際に、本発明のタンパク質を生産することが可能である細菌性宿主細胞の例は、グラム陽性細菌、例えばB.スブチリス(B. subtilis)、B.リチェニホルミス(B. licheniformis)、B.レンタス(B. lentus)、B.ブレビス(B. brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B. alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、B.コアグランス(B. coagulans)、B.サーキュランス(B. circulans)、B.ロータス(B. lautus)、B.メガテリム(B. megatherium)又はB.サリンジエンシス(B. thuringiensis)などのバシラス属の株、又はS.リビダンス(S. lividans)又はS. ミュリナス(S. murinus)などのストレプトマイセスの株、又はエシェリキア・コリ(大腸菌)などのグラム陰性細菌である。細菌の形質転換は、プロトプラスト形質転換によって、又は当然知られている方法でコンピテント細胞を用いて行ってよい(上掲のSambrook等を参照)。他の好適な宿主には、S.モバレンス(S. mobaraense)、S.リビダンス(S. lividans)及びC.グルタミカム(C. glutamicum)が含まれる(Appl. Microbiol. Biotechnol. 64, 447-454 (2004))。
【0051】
大腸菌といった細菌でタンパク質が発現されると、タンパク質は、一般的に不溶性顆粒(封入体ともいう)として細胞質で保持されうるか、又は細菌性分泌配列によってペリプラズム空間に誘導されうる。前者の場合、細胞は溶解され、顆粒が回収されて変性された後に、変性剤を希釈することによってタンパク質がリフォールディングされる。後者の場合、タンパク質は、例えば超音波処理又は浸透圧ショックにより細胞を崩壊させてペリプラズム空間の内容物を放出させてタンパク質を回収することによって、ペリプラズム空間から回収されうる。
【0052】
好適な酵母細胞の例には、サッカロマイセスssp.又はシゾサッカロマイセスssp.の細胞、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はサッカロマイセス・クリヴェリ(Saccharomyces kluyveri)の菌株が含まれる。異種性のDNAにより酵母細胞を形質転換して、そこから異種性タンパク質を生産する方法は、例えば米国特許第4599311号、米国特許第4931373号、米国特許第4870008号、米国特許第5037743号及び米国特許第4845075号に記載されており、これらはすべて出典明記によって本明細書中に援用される。形質転換細胞は、選択マーカー、一般的に薬剤耐性、又は特定の栄養分(例えばロイシン)の非存在下での生育能によって決定される表現型により選択可能である。酵母における使用に好適なベクターは、米国特許第4931373号に開示されるPOT1ベクターである。本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、シグナル配列及び場合によってリーダー配列(例えば上記のもの)の後にあってもよい。更に、好適な酵母細胞の例は、K.ラクチス、ハンゼヌラ、例えばH.ポリモルファ(H. polymorpha)といったクリベロマイセス属、又はP.パストリスなどのピキア属の菌株である(参照Gleeson等, J. Gen. Microbiol. 132, 3459-3465 (1986);米国特許第4882279号)。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルスspp.、パンカビspp.、フザリウムspp.又はトリコデルマssp.、特にA. オリゼー、A.ニデュランス又はA. ニガーの菌株の細胞である。タンパク質の発現のためのアスペルギルスspp.の使用は、例として欧州特許第272277号及び欧州特許第230023号に記述される。Malardier等 Gene 78, 147-156 (1989)に記載のように、例えばF.オキシスポラム(F. oxysporum)の形質転換が行われてもよい。
【0053】
糸状菌を宿主細胞として用いる場合、宿主染色体にDNAコンストラクトを組み込んで、組み換え宿主細胞を得ることによって都合よく、本発明のDNAコンストラクトにて形質転換されうる。DNA配列は細胞中で安定して維持される傾向が強いので、一般的にこの組み込みは有用であると思われる。DNAコンストラクトの宿主染色体への組み込みは、従来法、例えば相同組み換え又は異種性の組み換えによって実施されうる。
次いで、上記の形質転換された又は形質移入された宿主細胞を、本発明のペプチドの発現を促す条件下で適切な栄養培地に培養し、その後結果として生じるタンパク質を培養物から回収する。
細胞を培養するために用いられる培地は、適切な添加物を含有する最少培地又は混合培地といった、宿主細胞を生育するために適した任意の従来の培地であってよい。好適な培地は、市販元から入手可能であるか又は公開された製法(例えばアメリカ培養細胞系統保存機関のカタログにおいて)に従って調製されてもよい。次いで、細胞によって生産されるタンパク質は、問題のタイプのタンパク質の種類に依存して、遠心ないしは濾過によって培地から宿主細胞を分離すること、塩、例えば硫酸アンモニウムによる上清又は濾過液のタンパク質の構成成分を沈殿させること、様々なクロマトグラフィ、例えばイオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィの手順によって精製すること、などを含む従来の手順によって培養液から取り戻されてもよい。
【0054】
本明細書中で引用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、本明細書の至る所に個別に特定の記載がなされようとも、あたかも各文献が個々にかつ特に出典明示により援用されることが示され、その全体が本明細書中に記載されている場合と同じ程度にその全体が出典明示により(法が許容する最大の範囲で)ここに援用される。
発明を特定する文脈における「a」及び「an」及び「the」なる語、並びに類似の表現の使用は、ここに特段の注記がなければ又は文脈上明らかに矛盾するということがなければ、単数と複数の双方をカバーするものとみなされる。例えば、「化合物」なる表現は、特に明記しない限り、本発明又は特定の記述された態様の様々な「化合物」を指すと理解されるものである。
【0055】
特に明記しない限り、本明細書において示されたすべての厳密値は、対応する近似値の代表である(例えば、特定の因子又は測定に関して示されたすべての例示的な厳密値は、必要に応じて「およそ」を修飾した対応するおよその測定値を示すともみなされうる)。
一又は複数の構成成分に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」、及び「含有する(containing)」といった用語を用いた本発明の態様ないしは任意の態様の本明細書中の記載は、特に明記しない限り又は内容と明らかに矛盾しない限り、特定の一又は複数の構成成分「からなる」、「から実質的になる」又は「を本質的に含む」本発明の態様ないしは類似の態様をサポートすることを意図する(例えば、本明細書中で、特定の構成成分を含むと記載されている組成物は、特に明記しない限り又は内容と明らかに矛盾しない限り、その構成成分からなる組成物を表すとも理解されるべきである)。
【実施例】
【0056】
実施例1
hGHのPEG化
a)hGHをリン酸バッファ(50mM、pH8.0)に溶解する。この溶液を、アミンドナーの溶液、例えば1,3-ジアミノ-プロパン-2-オール溶解リン酸バッファ(50mM、1ml、pH8.0、アミンドナーの溶解後に希塩酸にてpHを8.0に調整)と混合する。
最後に、リン酸バッファ(50mM、pH8.0、1ml)に溶解したTGアーゼ(〜40U)の溶液を加え、リン酸バッファ(50mM、pH8)を加えて容量を10mlに調整する。混合した混合物を37℃でおよそ4時間インキュベートした。
温度を室温にまで下げ、1mMの終濃度までN-エチル-マレイミド(TGアーゼ阻害薬)を添加する。更に1時間後、10倍容量のトリスバッファ(50mM、pH8.5)で混合物を希釈する。
b)次いで、a)から得られたアミノ基転移hGHを場合によって更に反応させ、存在する場合にはアミンドナー中にある潜在的な官能基を活性化してもよい。
c)次いで、a)又はb)から得られた機能化hGHを、hGHに導入される官能基と反応することができる好適な機能化されたPEGと反応させる。例えば、オキシム結合が、アルコキシアミンとカルボニル成分(アルデヒド又はケトン)を反応させることによって形成されてもよい。
【0057】
実施例2
TGアーゼ特異的アッセイI
記載する方法を用いて、実施例1に記載の反応において修飾されているhGHのGln残基(一又は複数)を決定してよい。すなわち、ここで記載する方法を用いて、本発明のTGアーゼの選択性を決定してよい。
【0058】
PEG化部位(一又は複数)の決定
実施例1において得られたモノPEG化hGHを、イオン交換クロマトグラフィ及びゲル濾過の組合せを用いて精製する。
PEG化の部位(一又は複数)を決定するために、精製された化合物を希釈して、ジチオトレイトール及びヨードアセトアミドを用いてアルキル化する。その後、化合物を非特異的なプロテアーゼであるプロテイナーゼKを用いて消化し、結果として生じた消化物をアセトニトリル/TFAバッファシステムを用いた逆相C-18HPLCカラムにて分離する。PEG化ペプチドの保持時間は主にPEG成分によって決定されるので、PEG化されたペプチドはこれらの条件下にて、PEG化されていないペプチドよりも有意にゆっくりと溶出し、更に、すべてのPEG化ペプチド(一より多くある場合)は同じピークで溶出する。
ピーク含有PEG化ペプチド(一又は複数)を回収し、自動エドマン分析を用いたアミノ酸配列決定を行う。その結果、PEG化の正確な位置−PEG化アミノ酸が配列決定分析においてブランクサイクルを生じる−と同時に存在するペプチドの数と相対的な量との両方についての情報が得られ、それにより、PEG化が一より多い部位で生じているかどうかが明らかとなる。
【0059】
実施例3
hGHのGln-40とGln-141に対する特異性についてのTGアーゼ変異体の試験(アッセイI)
20μlの1,3-ジアミノ-2-プロパノール(10mMのリン酸バッファ中に180mg/ml、濃縮HClを加えてpHを8.3に調整)を、10mMのリン酸バッファpH8.1の溶液(50μl)中のhGH(1mg)の溶液に加える。10mMのリン酸バッファを、最終反応混合物容量が100μlとなる量で加える。反応は、酵素(終濃度0.07〜7μM)を加えて開始する。反応混合物を37℃でインキュベートし、その反応の後にキャピラリー電気泳動法(CE)を行う。
一定量の反応混合物(10μl)に、100mMのN‐エチルマレイミド(1μl)を加える。混合物を室温で5分間インキュベートし、次いでHOで100倍に希釈してCE分析を行う。
CEは、Agilent Technologies 3D-CEシステム(Agilent Technologies)を用いて行う。データ収集及びシグナル処理は、Agilent Technologies 3DCE ChemStationを用いて行う。キャピラリーは、64.5cm(有効な長さ56.0cm)、50μm内径のAgilent製「Extended Light Path Capillary」である。200nmでUV検出を行う(16nmBw、基準380nm及び50nmBw)。ランニング電解質は50mMのリン酸バッファpH7.0である。キャピラリーは、0.1MのNaOHにて3分間、次いでミリQ水にて2分間、そして、電解質にて3分間調整する。
【0060】
各動作の後、ミリQ水にて2分間、次いでリン酸にて2分間、そして、ミリQ水にて2分間、キャピラリーを洗い流す。4.0秒間、50mbarで水力学的注入を行う。電圧は+25kVである。キャピラリーの温度は30℃とし、動作時間は10.5分とする。
図2は、1,3-ジアミノ-2-プロパノールによるhGHのTGアーゼ-触媒トランスグルタミン化の代表的なCE分析の画像を示す。
単一-アミノ基転移生成物の量が5時間の反応時間内でその最大に達するように、酵素量を調整する。
反応速度の指標が、基質であるhGHの半分がアミノ基転移された時間により与えられる。
表1は、選択されたTGアーゼの結果を示す。
【0061】
表1

WT 配列番号1のアミノ酸配列を有するTGアーゼ
Y75E 配列番号2のアミノ酸配列を有するTGアーゼ
Y302R 配列番号3のアミノ酸配列を有するTGアーゼ
Y75E、Y302R Tyr-75がGluに置換され、Tyr-302がArgに置換されている配列番号1に記載のTGアーゼ
【0062】
実施例4
hGHのGln-40とGln-141に対する特異性についてのTGアーゼ変異体の試験(アッセイII)
このアッセイは、位置Gln-40及びGln-141のうちの1つにグルタミンの代わりにアスパラギン残基を有し、反応のために1つのグルタミンを残している各々2つのhGH変異体を使用する。前記変異体の調製は、Kunkel TA等, Methods in Enzymology 154, 367-382 (1987)及びChung Nan Chang等, Cell 55, 189-196 (1987)に記載される。hGH変異体Q40NはhGHのGln-141のモデル基質であり、Q141NはGln-40のモデル基質である。
225mMの1,3-ジアミノ-2-プロパノール及び35mMのトリス(pHは濃縮HClを加えて8.0に調整)を有する400μlのバッファ溶液に、600μlの変異体hGH(1.5mg/ml)及び5μlのTGアーゼ(1.6mg/ml)を添加する。反応混合物は25℃で30分間インキュベートする。
Mono Q 5/5 GL 1 ml (GE Health)カラムを用いたFPLCと280nmでのUV検出によって次の分析を行う。バッファA:20mMのトリエタノールアミンpH8.5;バッファB:20mMのトリエタノールアミン 0.2MのNaCl pH8.5;流速:0.8ml/分。以下のように溶出勾配を定める:

【0063】
次いで、選択性比率が、Q141及びQ40の2つの生成物による曲線(図3及び4に示す)の下の2つの領域(任意の単位)の比率から算出される。S.モバレンスのTGアーゼ(配列番号1)とS.ラダカヌムのTGアーゼ(配列番号6)を用いた場合の結果を表2に示す。Q40N+その生成物−Q141=Q141N+その生成物−Q40、そして100に規準化する。
表2

【0064】
実施例5
S.モバレンスのTGアーゼ変異体の選択性I
TGアーゼ変異体の調製
テンプレートとしてS.モバレンシスの野生型TGアーゼをコードするDNAを用いた部位特異的突然変異誘発法により変異体コンストラクトを作成し、選択マーカーとしてカナマイシンを用いてpET39b(Novagen)ベクターにクローンした。DNA配列決定により変異部位の配列を確認した。次いで、該コンストラクトを大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換した。30μg/mlカナマイシンを補給したLB培地で変異タンパク質の発現を行った。37℃で細胞を培養し、更に4時間、0.6の光学濃度で1mMのIPTGで誘導した。細胞破壊のために、細胞を、20mMのトリス、5mMのEDTA、30mMの塩化ナトリウム、0.1%トリトンX-100pH7.0に懸濁した。遠心分離後、封入体をペレットから単離し、100mMのクエン酸、8Mの尿素、30mMのDTTpH6.0に溶解させた。リフォールディングバッファ、20mMのクエン酸、10%のグリセロール、10%のエチレングリセロール、pH6.0で1:20(v/v)に希釈してリフォールディングを行った。
次いでリフォールディングされたタンパク質を、pH6.0で、Sepharose SP HP陽イオン交換カラムにより精製した。活性mTGアーゼ含有画分をプールし、次に約1mg/mlに濃縮した。SDS-PAGEゲルで最終タンパク質を確認し、活性定量を行った。
【0065】
反応速度選択性アッセイ
hGHのQ141又はQ40部位に連結されると、蛍光色素、ダンシルカダベリン(DNC)は強く蛍光を発する。よって、蛍光増加によりTGアーゼ活性が連続的にモニターできる。安定した反応状態において、Q141及びQ40に対するTGアーゼの選択性は、S=v0_Q40N/v0_Q141N=kcat_Q40N/kcat_Q141N、ここでv0は初速度;kcatは擬似一次速度定数である、として容易に計算される。選択性は、mTGアーゼ濃度及び反応時間と無関係である。200mMのNaCl、50μMのhGHQ141N又はhGHQ40N、100μMのダンシルカダベリン(DNC、Fluka)を含有する200μlのトリス-HClバッファ,20mM,pH7.4で速度反応を行った。2μgのmTGアーゼの添加により反応を開始し、26℃で実行した。一時間20秒毎にEx/Em:340/520nmで蛍光をモニターした。プログレス曲線を、0−2000秒の間に収集されたデータを用いて二次多項式に当てはめた。時間0における曲線の傾斜を反応初速度として用いた。
【0066】
mTGアーゼ変異体の高い選択性を検証するためのキャピラリー電気泳動:
hGHのトランスグルタミン化反応
TGアーゼの触媒作用を受けてhGHには反応性リシン残基が存在する。よって、hGHは低いアシル受容体濃度で架橋反応を受けうる。活発に選択性にアクセスするためには、高濃度のアシル受容体を用いなければならない。アシル受容体として100mMの1,3-ジアミノ-プロパノールを用いてトランスグルタンミン化反応を実行すると、架橋反応は完全に抑制される。TGアーゼタンパク質を添加して反応を開始し、室温で2時間インキュベートした。試料を15−30分の間隔で取り、液体窒素で凍らせ、CE分析まで−20℃で保存した。表3に示したように反応混合物を作った。
表3
野生型hGH及び1,3-ジアミノールプロパノールを用いたトランスグルタミン化のための反応混合物の調製

hGH希釈標準溶液を、トリスHCl,5mM,pH7.0の原液から最初に調製した。
【0067】
CE分析
まず、凍らせた試料をHOで1:10に希釈し、30.5cm×50um内径のキャピラリーを用いてBeckman CoulterのP/ACE MDQを使用してCEを行った。トランスグルタミン化されたhGHのplは約5.80−6.20であるため、トリスHCl,50mM,pH8.0でCE分析を実行した。
選択性の改善された変異体
結果は、S.モバレンシス由来のmTGアーゼへのMet又はAlaProのN-末端添加が酵素の選択性に影響しないことを示す。しかして、プロペプチド-TGアーゼからエンテロキナーゼ消化により作成されたAlaPro-mTGアーゼ(N末端においてTGアーゼに付着された追加のAlaProを有する)を基準として用い、変異体について選択性の改善を評価した。
いくつかの変異についてのデータを表4に挙げた。S.ラダカヌム由来のmTGアーゼのS250を模倣する変異体G250Sは、その野生型と比べて選択性を2倍に改善する。この選択性は、S.ラダカヌム由来のmTGアーゼのものに似ている。
表4

RS1:相対的選択性、変異体の選択性 対 S.モバレンシス由来の野生型成熟TGアーゼの選択性
WT:G250Sについては、S.モバレンシス由来の野生型成熟TGアーゼを基準として使用した;他の全ての変異については、野生型mTGアーゼのAlaPro-TGアーゼバージョンを基準として使用した。野生型TGアーゼ及びAlaPro-TGアーゼは両方ともhGHQ40N/Q141Nについて類似の選択性を有する。
hGHQ40Nを用いてQ141部位に対する活性を測定し、そしてhGHQ141Nを用いてQ40部位に対する活性を測定した。選択性は、hGHQ40N/Q141Nの活性の比として計算した。
【0068】
反応速度アッセイで使用されたDNC濃度は、二量体又はマルチマー形成を阻害するほど高くなく、該アッセイにより測定された選択性は改善の一般的傾向を示しうるが、実際の選択性より低く見積もりうる。したがって、CEにより改善された選択性を確認した。Met-TGアーゼ_Y75Nの結果を表5にまとめた。Q40を超えてhGHのQ141について18.99の選択性を有し、これは野生型TGアーゼのものよりも約3.2倍高く、このことは反応速度アッセイで得られた相対的選択性3と一致する。
表5

野生型TGアーゼ(AlaPro-TGアーゼバージョンでの)を比較のための基準として使用した。選択性は、位置Q40におけるモノ置換hGHを越える、位置Q141におけるモノ置換hGHの比率である。転換率は、反応に添加された野生型hGHの量を超える、転換された野生型hGHの量として計算した。
また、反応についてのCEプロファイルを、野生型TGアーゼ(AlaPro-TGアーゼバージョン)については図5に、Met-TGアーゼ_Y75Nについては図6に示す。CEにおける野生型hGH、Q141でのモノ置換hGH、及びQ40でのモノ置換hGHについての保持時間は、6.5、7.9、及び10分であった。
【0069】
実施例6
S.モバレンスのTGアーゼ変異体の選択性II
50μMのQ141N又はQ40Nヒト成長ホルモン及び100μMのモノダンシルカダベリンを含有する20mMのトリス-HCl,pH7.4及び200mMのNaClバッファ(酢酸で粉末を溶解して調製し、1Mのトリス-HCl,pH8.5で緩衝した)で、室温で各反応を実行した。TGアーゼを混合物に添加して反応を開始した。蛍光を30秒毎にext/em.340/520nmで測定した。Q40N及びQ141Nについて反応初速度を推定し、選択性を計算するために使用した。
複数のS.モバレンスTGアーゼについての当該実験の結果を表6に示す。
表6

【0070】
実施例7
S.ラダカヌムのTGアーゼ変異体の選択性
50μMのQ141N又はQ40Nヒト成長ホルモン及び100μMのモノダンシルカダベリンを含有する20mMのトリス-HCl,pH7.4及び200mMのNaClバッファ(酢酸で粉末を溶解して調製し、1Mのトリス-HCl,pH8.5で緩衝した)で、室温で各反応を実行した。TGアーゼを混合物に添加して反応を開始した。蛍光を30秒毎にext/em.340/520nmで測定した。Q40N及びQ141Nについて反応初速度を推定し、選択性を計算するために使用した。
複数のS.ラダカヌムGlyPro-TGアーゼについての当該実験の結果を表7に示す。
表7


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、配列番号1の位置Asp−4,Val−30,Tyr−62,Tyr−75,Arg−89,Glu−115,Ser−210,Asp−221,Ala−226,Pro−227,GIy− 250,Val−252,Asn−253,Phe−254,His−277,Tyr−278,Leu−285,Tyr−302,Asp−304,及びLys−327に相当するアミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基の一又は複数が修飾されている、単離されたペプチド。
【請求項2】
配列番号1に定義されたアミノ酸配列を含んでなり、Asp−4,Val−30,Tyr−62,Tyr−75,Arg−89,Glu−115,Ser−210,Asp−221,Ala−226,Pro−227,GIy− 250,Val−252,Asn−253,Phe−254,His−277,Tyr−278,Leu−285,Tyr−302,Asp−304,及びLys−327から選択されるアミノ酸残基の一又は複数が修飾されている、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
前記配列の、配列番号1のCys−64に相当するアミノ酸残基から20Å以内に位置するアミノ酸残基の一又は複数が修飾されている、請求項1又は2に記載の単離されたペプチド。
【請求項4】
配列の、配列番号1の位置Cys−64に相当する位置が修飾されていない、請求項1ないし3のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項5】
配列番号6に定義されたような、アミノ酸配列を含んでなる単離されたペプチド。
【請求項6】
ペプチドがトランスグルタミナ−ゼ活性を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項7】
ペプチドがhGHのGln−40と比較してhGHのGln−141に特異性を有し、該特異性が、配列番号1に示されたアミノ酸配列を有するペプチドの、hGHのGln−40と比較したhGHのGln−141に対する特異性よりも高いものである、請求項1ないし6のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項8】
hGHのGln−40と比較してhGHのGln−141に特異性を有し、該特異性が、配列番号1に示されたようなアミノ酸配列を有するペプチドの、hGHのGln−40と比較したときのhGHのGln−141に対する特異性よりも高いものである、トランスグルタミナーゼペプチド。
【請求項9】
トランスグルタミナーゼペプチドが、請求項1ないし6のいずれかに記載のペプチドである、請求項8に記載のトランスグルタミナーゼペプチド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸コンストラクト。
【請求項11】
請求項10の核酸コンストラクトを含んでなるベクター。
【請求項12】
請求項11のベクターを含んでなるホスト。
【請求項13】
請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドを含んでなる組成物。
【請求項14】
ペプチドをコンジュゲートするための方法であって、前記ペプチドを、請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミン供与体と反応させることを含む方法。
【請求項15】
前記成長ホルモンがhGHである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
位置Gln−40でコンジュゲートされたhGH量と比較した位置Gln−141でコンジュゲートされたhGH量が、前記方法において請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの代わりに配列番号1に示されたアミノ酸配列を有するペプチドが使用されたときの位置Gln−40でコンジュゲートされたhGH量と比較した位置Gln−141でコンジュゲートされたhGH量と比較して有意に増加する、hGHをコンジュゲートするための請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記hGHを、請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミン供与体と反応させることを含む、位置141に相当する位置でコンジュゲートされたhGHの調製方法。
【請求項18】
コンジュゲートされたhGHがペグ化hGHの調製に使用され、ここで前記ペグ化がコンジュゲートされた位置で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記hGH又はその変異体又は誘導体を、請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミン供与体と反応させる段階を含む、コンジュゲートされた成長ホルモンの医薬品の調製方法。
【請求項20】
コンジュゲートされた成長ホルモンの医薬品の調製方法であって、前記hGH又はその変異体又は誘導体を、請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの存在下でアミン供与体と反応させ、及びその結果得られたコンジュゲートされた成長ホルモンを、ペグ化成長ホルモンの調製に使用する段階を含み、ここで前記ペグ化がコンジュゲートされた位置で行われる、方法。
【請求項21】
コンジュゲートされた成長ホルモンの調製における、請求項1ないし9のいずれかに記載のペプチドの使用。
【請求項22】
請求項20に記載の方法を使用して調製される医薬品を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者における成長ホルモンの欠乏に関連する疾病又は疾患の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500885(P2010−500885A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525034(P2009−525034)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058569
【国際公開番号】WO2008/020074
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】