説明

改良されたコールドプレート構造体

【課題】既存の冷却方法が実現可能でないときに、改善された冷却方法を提供する。
【解決手段】渦巻状フィン構造体の利用可能熱伝達表面積よりも多数倍大きい利用可能熱伝達表面積を設けることによって、電気構成部品および電子構成部品の表面から冷却を与える。冷却されるべき構成部品は、コールドプレート蒸発器装置16と熱接触し、黒鉛材料18がコールドプレート装置16に関連される。冷媒が黒鉛材料18およびコールドプレート蒸発器装置16を通して循環され、また、液体冷媒が構成部品によって発生された熱によって少なくとも部分的に蒸発される。黒鉛材料18の開放特性のために、液体および蒸気の浸透性が高くなり、電子機器から熱を運び去るように十分な二相流れを維持しつつ、低圧力損失を許す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年9月26日に出願された予備出願第60/506,347号にもとづく正規出願である。
本発明は、電気構成部品および電子構成部品の冷却に関し、さらに詳しくは、冷却されるべき電気構成部品または電子構成部品と熱接触状態の1またはそれを超えるコールドプレート/蒸発器を有する吸上げ液体二相冷却装置における黒鉛発泡体材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気構成部品および電子構成部品(例えば、マイクロプロセッサ、IGBT、電力半導体等)が、冷却されるべき表面に直接取り付けられた延長表面を有する空冷ヒートシンクによって最もしばしば冷却される。ファンすなわち送風機がヒートシンク・フィンを横断して空気を動かし、構成部品によって発生された熱を除去する。出力密度が増加し、構成部品が最少化し、包装が縮小化したので、電気構成部品および電子構成部品をヒートシンクおよび強制空気流によって十分に冷却することはときには可能でないこともある。この場合は、構成部品から熱を除去するために、他の方法を採用されなければならない。
【0003】
直接空冷が可能でない場合には、構成部品から熱を除去する一方法は、コールドプレートに吸い上げられた単相流体を使用する。コールドプレートは、通常、平坦金属板に取り付けられた蛇行管を有する。冷却されるべき構成部品は平坦板に熱的に取り付けられ、蛇行管を流れる吸上げ単相流体が構成部品によって発生された熱を除去する。
【0004】
多くの形式のコールドプレート設計がある。そのうちのいくつかは、流体を運ぶ管に代えて、機械加工された溝を伴っている。しかし、すべてのコールドプレート設計は、熱を除去するための流体の顕熱を用いることによって、同様に動作する。加熱された流体が遠隔配置された空冷されたコイルに流れる。そのコイルにおいて、加熱された流体がポンプまで戻り、再び循環を開始する前に、周囲の空気が加熱された流体を冷却する。電気構成部品および電子構成部品から熱を除去するように流体の顕熱を用いるこの方法は、単相の流れている流体の熱容量によって制限される。より一層の熱を除去する所定の流体は、その温度が増加しなければならないか、あるいはより多くの流体が吸い上げられなければならない。これにより、高出力のマイクロ電子機器を冷却するための高温および/または大きな流量が生じる。高温は電気機器または超小型電子機器を損傷することもあり、他方、大きな流量は寄生電力を消費しかつ冷却装置の用途を制限する大きなモータをもったポンプを必要とする。大きな流量は、速い流体速度のためにコールドプレート内の金属の腐食を引き起こすこともある。
【0005】
構成部品から熱を除去する別の方法は、空冷が実現可能ではないとき、熱源から熱がより容易に放散されうる箇所まで熱を伝達するための熱パイプを使用する。熱パイプは、一方の位置から他方の位置まで熱を移動させるために相当量の流体を使用する密封機器である。流体の移送は、ウイック構造体を用いた液相の毛細管吸上げによって達成される。熱パイプ(蒸発器)の一端は、熱が構成部品内に発生される箇所に配置され、また、他端(凝縮器)は、熱が放散されるべき箇所に配置される。凝縮器端は熱を周囲の空気に取り除く助けをするフィンのような延長表面にしばしば接触する。熱を除去するこの方法は、流体を蒸発器に送るべきウイック構造体の能力によって制限される。高い熱流束において、「ドライアウト(dry out)」として知られている状態が発生し、その場合、ウイック構造体は蒸発器への十分な流体を搬送できず、機器の温度が増加し、おそらく機器に損傷を与えるであろう。熱パイプはまた、重力に関する向きにも敏感である。すなわち、上方に向けられた蒸発器は、下方に向けられたものよりも熱を取り除く能力が少ない。その場合、流体の移送は、ウイック構造体の毛細管作用に加えて重力によっても助長される。最後に、熱パイプは、毛細管吸上げ制限のために再び遠隔放散器まで長い距離を超えて熱を運ぶことができない。
【0006】
直接空冷が実用的ではない場合に採用されるさらに別の方法は、周知の蒸気圧縮冷凍サイクルを用いる。この場合、コールドプレートはサイクルの蒸発器となる。圧縮は、蒸気の温度および圧力を上げ、空冷凝縮器が蒸気をその液体状態に凝縮しかつさらなる蒸発および冷却のためにコールドプレートに戻されるように用いられるレベルに、蒸発器を置いておく。この方法は、高い等温熱伝達率の利点および熱を相当の距離移動させる能力を有する。しかし、この方法は、電気および電子機器において実用的な用途を制限するいくつかの主な欠点をもつ。第1に、コンプレッサの電力消費がある。高熱負荷用途においては、コンプレッサによって要求される電力は顕著になりかつその用途のための利用可能電力を超える。別の問題は、周囲温度以下の蒸発器(コールドプレート)の動作に関する。この場合、貧弱な絶縁表面が周囲の空気の露点以下になり、液体水の凝縮を起こし、短絡の機会および人間への危害を引き起こす。蒸気圧縮冷凍サイクルは、いかなる液体冷媒をも、コンプレッサに物理的損傷を起こしかつその潤滑油を希釈することによってその寿命を縮めることもあるコンプレッサへ戻さないように設計される。電気構成部品および電子構成部品を冷却するさいに、熱負荷は高度に可変であり、蒸発されていない冷媒がコールドプレートを出てコンプレッサに入るようにさせる。これは、コンプレッサの損傷を生じかつその寿命を縮める。これにより、構成部品の蒸気圧縮冷却のさらに別の欠点である。
【0007】
米国特許第6,519,955号の全体は、参照としてここに組み込まれ、吸上げ液体二相冷却装置に伴う上述した問題に向けられている。コールドプレートは、熱を蒸発冷媒に伝達する熱伝達表面として渦巻状フィンを使用する。しかし、金属を渦巻状フィン形状に形成することによってつくられうる表面積に制限される。渦巻状フィンがランスを受け、ずらされる必要がある場合に、この表面積は一層制限される。電子機器はより強力になり小型化することによって、シリコンの熱流束密度が、二相コールドプレートにおける渦巻状フィン構造体が許容限度内に接合部温度を維持するのに十分に速く熱を除去することができない点まですぐに増加する。熱除去率を改善する一方法は、二相コールドプレート内で構造体の表面積を増加させることである。同時に、流体速度が、熱伝達係数を高く維持できるように、コールドプレート内に維持されなければならない。渦巻状フィン構造体を用いた高い熱伝達係数のために、表面積を増加しかつ高速度を維持することは、困難であり、また、小型フィン構造体を形成する能力によって制限される。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,519,955号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存の方法または装置が実現可能でないとき、構成部品から熱を除去する改善された方法に対する継続した要請が存在することがわかる。
したがって、本発明の目的は、電気構成部品および電子構成部品に冷却を与えることにある。本発明の別の目的は、電子機器によって発生された熱を運び去るように液体および蒸気を、構造体をかいして流れさせつつ、コールドプレート構造体内で熱伝達用表面を増加させることによって、このような冷却を与えることにある。
【0010】
本発明のその他の目的および利点は、下記の記載ならびに添付図面および添付特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この要請は、本発明によって満たされる。本発明においては、コールドプレート構造体内の熱伝達のための表面積が、電子機器によって発生された熱を運び去るように液体および蒸気の両者がその構造体を流れることを許容しつつ、高熱伝導発泡黒鉛材料を採用することによって達成される。
【0012】
本発明の一観点によれば、液体冷媒ポンプは、冷却されるべき電気構成部品または電子構成部品と熱接触するコールドプレート/蒸発器に冷媒を循環する。液体冷媒は、構成部品によって発生された熱によって部分的にまたは完全に蒸発される。蒸気は従来の凝縮器コイルによって凝縮され、蒸発されていない液体と共に凝縮された液体がポンプに戻される。二相コールドプレート内の渦巻状フィン構造体を黒鉛発泡体材料と入れ換えることによってまたはそれを加えることによって、利用可能な表面積がフィン構造体のそれよりも多数倍増加される。黒鉛発泡体は開放細胞発泡体状の管隙間構造体の比較的高い熱伝導を有するので、熱伝達表面のフィン効率は高く留まる。また、黒鉛発泡体の開放特性のために、発泡体を通過する液体および蒸気の浸透性は高くなり、電子機器から熱を運び去るのに十分な二相に留まりながら、低圧力損失を許す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、総体的に参照としてここに組み入れられた米国特許第6,519,955号に記載され請求されているような吸上げ二相冷却装置を用いて、少なくともマイクロプロセッサ半導体および電力半導体を含む冷却電子構成部品に関する。特に、本発明は、冷却されるべき電子機器から直接に熱を吸収する装置のコールドプレート部分に対する改良である。本発明の目的は、電子機器によって発生された熱を運び去るようにコールドプレート構造体をかいして液体および蒸気の両者の流れを許容しながら、高熱伝動性発泡黒鉛材料をもったコールドプレート構造体内で熱伝達用表面を増加することにある。
【0014】
図1において、電子機器装置から熱を除去するための吸い上げ冷媒強制対流冷却装置に用いられているような二相コールドプレート組立体10が示されている。本発明は、多くの従来の渦巻状フィン構造体の熱伝達能力を置換または補助して、二相コールドプレートに黒鉛発泡体を組み入れる。黒鉛発泡体は、従来技術において公知の多数の方法および様々な製造業者によってつくられている。本発明を教示する目的のために、オーク・リッジ・ナショナル・ラボラタリー (ORNL)によって製造された黒鉛発泡体が使用されうるが、本発明はORNL法によって製造された黒鉛発泡体に限定されない。ORNLによって製造された黒鉛発泡体は、下記の米国特許第6,033、506号、同第6,037,032号、同第6,387,343号、6,261,485号、同第6,399,149号、同第6,287,375号、同第6,398,994号、同第6,344,159号、同第6,430,935号から教示され、また、当業者によって知られかつ理解されている。
【0015】
図において、図示する二相コールドプレート組立体のようなコールドプレート蒸発器装置10は、冷却を必要とする電子機器(図示せず)を装着された平坦表面14を有するコールドプレート上蓋12を備えている。コールドプレート上蓋12は、コールドプレート本体16に取り付く。黒鉛発泡体材料18は、通常は電子機器熱源付近で上蓋12の下側に熱的に取り付けられる。黒鉛発泡体材料18は、限定はされないが、熱伝導性エポキシまたは接着剤、半田、ロウ付け等のような任意の適切な手段によってコールドプレート上蓋12に取り付けられてもよい。黒鉛発泡体18は、種々の半田およびロウ材料が発泡体およびコールドプレート表面を湿らすように、メッキされてもよい。そのメッキは、無電極ニッケルメッキのような任意の適切な材料でもよい。コールドプレート本体16は、上蓋12がコールドプレート本体16に取り付けられるので、黒鉛発泡体を受けるための切欠き領域20を含んでいてもよい。
【0016】
コールドプレート蒸発器装置10は、蒸発可能冷媒がコールドプレートに吸い上げられかつ黒鉛発泡体との熱接触をするように、入口22を有する。コールドプレート蒸発器装置10は、蒸発可能冷媒が蒸気としてまたは液体および蒸気の二相混合物として黒鉛発泡体を去るように、出口24を有する。蒸発可能冷媒は、黒鉛発泡体およびその他の材料構成と矛盾しない限り、任意の蒸発可能冷媒が用いられてもよい。コールドプレートは、図示するように、出口24がOリング26およびパイプ取付部28を貫通するように、通常は構成される。
【0017】
本発明は、蒸発可能冷媒、例えば、R−134a冷媒がコールドプレート組立体10に吸い上げられ、強制対流熱伝達状態で黒鉛発泡体18を通過する。冷却されるべき電子機器からの熱は、黒鉛発泡体18内の一部または全部の冷媒を蒸発させる。液体冷媒は、説明のためにのみ図示されているが、流れのパターンを任意の特定のパターンに限定するものとして考えられるべきではない、任意の方向から、平行に、垂直に、多重通過、任意の流体散布30の流れで黒鉛発泡体18を通過してもよい。その結果、本発明に対する流れ形状要求を制限しない。
【0018】
黒鉛発泡体18に関しては、黒鉛発泡体18は、黒鉛発泡体を通過する冷媒の圧力低下を減少させるために、波形を設けられるか、流れ方向に切り込まれたスロットを有していてもよい。黒鉛発泡体要素の任意の数が、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、並列または直列流れ内に単独コールドプレートまたは多数コールドプレートに用いられてもよい。さらに、黒鉛発泡体要素は、渦巻状フィンのようなより多くの従来の熱伝達表面を組み合わされてもよい。
【0019】
本発明を詳細に述べたので、その好適実施例を参照して、その他の変更および変化が、特許請求の範囲に特定された発明の範囲から逸脱せずに可能であることは、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にもとづくコールドプレート組立体を示す分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を発生しかつ冷却されることが必要である少なくとも1つの構成部品と、
前記少なくとも1つの構成部品に熱接触する少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置と、
前記少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置に関係されていて、前記コールドプレート構造体内で熱の移動のための増大された表面積を与える熱伝導黒鉛材料と、
前記少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置へ循環されることができかつ前記黒鉛材料と接触する蒸発可能液体冷媒とからなる、
改良されたコールドプレート構造体。
【請求項2】
黒鉛材料から前記蒸発可能液体冷媒を、蒸気として輸送する出口手段からさらになる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項3】
液体および蒸気の二相混合物として黒鉛材料から前記蒸発可能液体冷媒を輸送する出口手段からさらになる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項4】
前記蒸発可能液体冷媒をコールドプレート構造体に受ける入口手段からさらになる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項5】
前記冷媒はR−134a冷媒からなる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項6】
前記黒鉛材料は黒鉛発泡体からなる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項7】
前記黒鉛材料と組み合わせて用いられる渦巻状フィン構造体からさらになる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項8】
前記黒鉛材料は多数の黒鉛要素からなる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項9】
前記黒鉛材料は波形を有する黒鉛材料からなる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項10】
前記黒鉛材料は、該黒鉛材料に切り込まれた1またはそれを超えるスロットを有する黒鉛材料からなる、請求項1に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項11】
前記黒鉛材料に切り込まれた1またはそれを超えるスロットは前記蒸発可能液体冷媒の流れ方向に設けられている、請求項10に記載の改良されたコールドプレート構造体。
【請求項12】
熱を発生しかつ冷却されるべきことを要求された1またはそれを超える電気構成部品または電子構成部品を冷却する方法であって、
少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置を1もしくはそれを超える電気構成部品または電子構成部品に熱接触状態に配置する工程と、
前記コールドプレート構造体内に増大された熱伝達表面積を与えるように前記少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置付近に熱伝導黒鉛材料を配置する工程と、
前記少なくとも1つのコールドプレート蒸発器装置へ循環されうる蒸発可能液体冷媒を与える工程とからなり、
前記冷媒が前記1もしくはそれを超える電気構成部品または電子構成部品によって少なくとも部分的に蒸発される、
冷却方法。
【請求項13】
蒸気として前記黒鉛材料から前記蒸発可能液体冷媒を輸送する出口手段を設ける工程をさらに備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
液体および蒸気の二相混合物として前記黒鉛材料から前記蒸発可能液体冷媒を輸送する出口手段を設ける工程をさらに備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸発可能液体冷媒を前記コールドプレート構造体に受ける入口手段を設ける工程をさらに備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記冷媒を与える工程はR−134a冷媒を与える工程からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
黒鉛材料を与える工程は黒鉛発泡体を与える工程からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記黒鉛材料と組み合わせて渦巻状フィン構造体を用いる工程をさらに備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記黒鉛材料は波形またはスロットで変更されうる多数の黒鉛要素からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記黒鉛材料へのスロット変更は前記蒸発可能液体冷媒の流れ方向に設けられる、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−93637(P2006−93637A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−308864(P2004−308864)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(501134808)サーマル・フォーム・アンド・ファンクション・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】