説明

改良されたビード構造を備える空気入りタイヤ

本発明は、トラック用空気入りタイヤであって、そのビードコアが、a)少なくとも1つの金属ワイヤの複数のコイルであって、前記コイルが半径方向に重ね合わされるとともに軸方向に互いに並列的に配置されるコイルと、b)前記複数のコイルを被包する保持部材であって、前記保持部材が少なくとも1つの予成形された糸状金属要素を備える複数の相互に実質的に並行な細長状補強要素を備える保持部材と、を備えるタイヤに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中量/重量運搬用の、トラックまたはローリーで使用されるのに適した空気入りタイヤに関する。
【0002】
特に本発明は、幾何学的安定性ならびにタイヤビード領域の耐局所変形性を増加させることに寄与する改良されたビード構造を装備する空気入りタイヤに関連する。
【背景技術】
【0003】
タイヤは一般に、その端部が折り返されるかもしくは2つの環状補強要素、すなわちいわゆる「ビードコア」と呼ばれる要素に固定される少なくとも1つのカーカスプライを備えるカーカス構造と、トレッドバンドと、カーカス構造とトレッドバンドとの間に置かれるベルト構造と、前記カーカス構造に軸方向に対向する位置に付与される一対のサイドウォールとを備える。
【0004】
ビードコアを備えるタイヤ領域は「タイヤビード」として知られ、タイヤをそれぞれのリム上に固着する機能を果たす。特にビードコアは、1つのカーカスプライまたは複数のカーカスプライにとって固定手段としての役目を務めるとともに、さらに、膨張圧力ならびにタイヤの走行に伴う変形の影響下でカーカスにより加えられる力に耐える。さらに、ビードコアは長手方向の力の伝達を確実にするとともに、チューブレスタイヤの場合にタイヤとホイールリムとの間のシールを確実にし、ホイールリムはビード取付け位置に対応して装備されるとともに、タイヤビードの支持ベースとしての役割を成す2つの実質上の同軸円錐面を備える。前記面は一般に、ビードの軸方向外面を支持するとともにタイヤの膨張圧力によってビードが当接する半径方向外向きに突出するフランジにおいて終結する。ビードのそのシート内での適正な位置決めは、金属ビードコアと連携するビードシートの円錐形により確実にされる。
【0005】
一般に、前記ビードコアの半径方向外側の位置において、ビードはさらに、従来「ビードフィリング」または「ビードエイペックス」と称されるゴムストリップを備え、これは実質的に三角形断面を有するとともに各ビードコアから半径方向外向きに延在する。
【0006】
当該技術分野においては様々な種類のビードコアが知られている。
【0007】
例えば、典型的なビードコア構造は、「m×n」型の構成を有する「オルダーファ(Alderfer)」と呼ばれる構造であり、ここで「m」は軸方向に隣接するワイヤまたはコード(少なくとも1対のワイヤまたはコードを撚ることで得られる)の数を表すとともに「n」は前記ワイヤ(またはコード)の半径方向に重ね合わされる層の数を表す。この構造は、所定の数の‐繊維製または金属製の‐ワイヤまたはコードを備えるゴム引きストリップを使用することによって、かつ前記ゴム引きストリップを、半径方向に一層が他層の上に重ね合わされ配置される所望の数の層が形成されるよう、それ自体の上に螺旋状に巻回する(コイル巻きする)ことによって得られる。この構造技法により、実質的に四角形型であるビードコアの断面輪郭の形成が可能となる。実際、オルダーファ構造の実施例は、4×4、5×5または4×5構造である。
【0008】
別の従来のビードコア構造はいわゆる「単一ワイヤビードコア」である。これは軸方向に隣接する巻き(コイル)の第1の層を形成するよう螺旋状に巻回される単一のゴム引きワイヤ(またはコード)から形成される。次に、前記第1の層の半径方向外側の位置において同じワイヤ(またはコード)がさらにコイル巻きされることで、第1の層の半径方向外側の位置で第2の層を形成するなどして、半径方向に重ね合わされる数層を形成する。従って、各層における巻き数を変えることにより、幾何学的形状の異なるビードコアの断面輪郭、例えば六角形断面を得ることが可能である。例えば3−4−5−4−3の構成で配列される19巻回により、正六角ビードコアが形成されてもよい。この一連の数は、単一のゴム引きワイヤ(またはコード)が初めに第1の層を形成するため互いに軸方向に隣接する3巻きを形成するようコイル巻きされ、次に第1の層の半径方向上に重ね合わされる第2の層を形成するよう互いに軸方向に隣接する4巻きが続けて設けられ、その後互いに軸方向に隣接する5巻きが第2の層の半径方向上に重ね合わされる第3の層を形成するよう続き、次に第3の層の半径方向上に重ね合わされる第4の層を形成するよう互いに軸方向に隣接する4巻きが、および最後に第4の層の半径方向上に重ね合わされる第5の層を形成するよう互いに軸方向に隣接する3巻きが続くことを表している。
【0009】
別の従来のビードコア構造は、複数のゴム引きワイヤ(またはコード)を使用することにより得られ、各個々のワイヤ(またはコード)は半径方向に重ね合わされ巻回される巻き(コイル)の列を形成するようそれ自体の上へと半径方向にコイル巻きされる。巻きの複数の列は、おそらくは垂直伸長が異なり(すなわち、互いに半径方向に重ね合わされ巻回される巻き数が異なり)、互いに軸方向に隣接することで、上述のビードコアを形成する。好ましくは、前記ワイヤが所定の断面(例えば、実質的に六角断面)を有することで、軸方向に隣接するコイルのワイヤはアセンブリ(すなわち、ビードコア)を形成するよう共に連結されることが可能で、アセンブリは同等かつ個別の要素(モジュール要素)により構成されるとともに、コンパクトな断面を与えられる、すなわちアセンブリは中空の空間または干渉(interferences)を含まないとともに前記個別の要素の断面積合計に相当する面積を有する。
【0010】
ビードコアが、螺旋状に巻回する単一ワイヤにより(上述の「単一ワイヤビードコア」を形成するよう)または複数のワイヤにより(半径方向に重ね合わされ巻回される巻きの複数の列を形成し、各列が一つの固有のワイヤにより形成されるよう)形成される場合、ビードコアの製造工程中(特に使用されるワイヤがゴム引きされない場合)、および最終製品が生産される時にも、規則正しい回旋体(convolutions)および層の状態にある数個の回旋体を保つことにおいて、一般に幾つかの問題が生じる。
【0011】
一般に、タイヤのビードコアを形成するワイヤはゴム組成物によりコーティングされる。ホイールリムへのタイヤの取り付けおよびそこからのタイヤの取り外しは、ビードコアの半径方向内径より大きい直径を有するリムフランジをタイヤビードが跨ぐことを要求するため、ビードコアは上述の操作(ホイールリムへの取り付けおよびそこからの取り外し)が行われることを可能にするため楕円形状をとる(楕円化する)よう変形される必要がある。しかしながら、特に大型のチューブレスタイヤ(例えば、トラック用タイヤ)が考慮される場合に、タイヤビードコアがゴム引きワイヤで作られると、加硫後ビードコアは硬くコンパクトになり、それゆえ可撓性がほとんどなくなる。そのような問題を解決するため、周方向に互いに移動することができることにより硬化されたタイヤにおいてさえビードコアに要求される変形(楕円化)が可能である、裸ワイヤ(すなわち、非ゴム引きワイヤ)で形成されるビードコアの準備策が講じられた。しかしながら、非ゴム引きワイヤで形成されるビードコアは、タイヤ製造ステップの間(特にタイヤの加硫中および成形中)とタイヤ走行中との双方において、ビードコア上へ加えられる応力に耐えるための十分な幾何学的安定性およびねじり強さを持たない。
【0012】
ビードシートは一般にタイヤの回転軸に対し傾斜しており、この事実は必然的にビードコアの回旋体の幾何学的安定性に負の影響を及ぼす原因となるため、この態様がより深刻でさえあることは留意されてよい。
【0013】
ビードコアに環形状を供与するための、かつタイヤ製造中およびその使用中の双方で所望の形態を保つことに寄与するための、幾つかの技術的解決が当該技術分野において知られており、これによりワイヤ回旋体の変則的な移動が削減され得るとともに、ワイヤ回旋体は前記ワイヤの正確な配列およびその良好な摩擦接触が確実となるようまとめて保持される。
【0014】
例えば、文献の米国特許第2,149,079号明細書、米国特許第1,503,883号明細書、米国特許第4,561,919号明細書は、糸状要素(threadlike elements)の回旋体の周りに巻回される繊維製ストリップ(織布巻付け体(fabric wrapper))の使用を開示する。
【0015】
独国特許第2,123,360号明細書は、高張力補強材料の周方向の巻回を少なくとも部分的に被包するU字状断面のポケットを有する材料の周方向に延在するリングを備えるビードコアを開示する。U字状断面のポケットは高張力補強材料の巻回を全体に被包するよう閉じられてもよく、あるいは開けられて高張力補強材料の巻回の部分断面のみを被包してもよい。リング材料は、スチールのような金属が好ましいとともに、タイヤビードのゴムへの接合を補助するため亜鉛めっきまたは真鍮めっきされてもよい。
【0016】
米国特許第4,938,437号明細書は、ビードフープと、ビードアセンブリを平面形状に保つためビードフープの円周にビードフープを係合する保形部材とを形成するためのワイヤ要素の複数の回旋体を装備するため、軸周りに巻回される単一ワイヤ要素または複数ワイヤ要素のいずれかを含むゴムなしタイヤビードアセンブリを開示する。該文献によれば、前記保形部材は、ビードの円周の数箇所に付与される金属クリップ部材の使用ならびに金属つなぎ材、ばねクリップ、ビードの円周の全体または一部の周りに螺旋状に巻き付けられる織布またはワイヤ、ビードの円周でのスポットはんだ付け、ろう付けまたは溶接の周期的な配置、ビードワイヤにおけるはんだコーティングワイヤの使用、接着または接着剤の使用、可融性ポリマー材料をビードの円周へ周期的または全体的に付与すること、ビードアセンブリを接着コーティング剤の中へ浸漬すること、およびビードアセンブリを保持するため単一ワイヤの回旋体の少なくとも一部分を固定的に係合する小型ホースクランプ部材を含む。例えば、図7は、密集して充填される単一ワイヤタイヤビードアセンブリの周りに巻き付けられる金属クリップ部材を示し、図10は、ビードアセンブリをビード回転軸に対し垂直な平面内に保つため、完成されたタイヤビードアセンブリを周方向に係合する螺旋状保持クリップまたはばね巻付け部材を示す。
【0017】
文献の米国特許第3,949,800号明細書は空気入りタイヤを開示し、そのビードは改良された形状安定性を有するパッケージ型のビードリングを装備し、前記パッケージリングは少なくとも2つの平行な対辺を備える四角形断面を有する1本以上のワイヤで形成され、ワイヤの隣接する巻きはその接面に沿って半径方向と軸方向との双方で互いに接触する。該文献によれば、ビードコアは、ビードコアと接触する充填ゴムのインサートおよび充填を固定するゴムシージング(rubber sheathing)を含む覆いにより包囲されることが好ましい。
【0018】
文献の米国特許第4,406,317号明細書は、互いに重なり合って置かれるよう巻回されるワイヤ層から作られるとともに角断面(angular cross section)を有するワイヤで構成されるビードコアを備える空気入りタイヤを開示する。運動中のタイヤの周期的応力に起因する、ビードコア縁部でのカーカスの破断点を避けるため、ビードコアの周りに硬質ゴム組成物を成形するのが通例とされてきた。その結果、コストを節減するため、実質的にビードコアの外形に適合するとともにその角を丸くして包囲する保護ストリップでビードコアを巻き付けることが好ましいとされた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述の公知の解決法に関し、本出願人は、タイヤビード領域の幾何学的安定性およびその構造強度、特に走行中(すなわち、地面でのタイヤの回転中)とビードコア生産およびタイヤ構造内での組立ての連続するタイヤ製造工程ステップの間との双方におけるその耐局所変形性を改良する必要性を認識してきた。
【0020】
特に本出願人は、例えばホイールリムへのタイヤの取り付け中およびそこからのタイヤの取り外し中に上述のとおり有利に要求されるタイヤビードの可撓性に負の影響を及ぼすことなくタイヤビードの局所変形に対する抵抗性を増加させる必要性を認識してきた。
【0021】
本出願人は、前記局所変形は、ビードコアを形成するワイヤの回旋体上に及ぼされ、主に次の要因に起因することに注目してきた。
【0022】
第1に、前記変形は車両により運ばれる当該荷重の結果としてタイヤビード領域に生じる応力集中に起因し、前記応力によりタイヤビードはリム縁部を横方向に越えて膨れ出る。これは特に、荷重に耐えることが求められ、かつ多くの実体で過荷重のこともある高負荷車両の場合に当てはまる。
【0023】
第2に、前記変形は一般に、ビードコア生産ステップに続くタイヤ製造ステップ、特に完成された生タイヤに対し行われる加硫および成形のステップによっても生じる。本出願人は、加硫および成形のステップによりワイヤの回旋体がビードコア断面においてワイヤの張力に顕著な差異が生じ得る程度まで互いに動き得ることに注目してきた。このことにより当該の抵抗性が減少して前記要素が破断し得る。さらに、本出願人は、タイヤビードコアの断面におけるワイヤ回旋体の顕著な歪みおよび結果として生じるその共平面でない形状(non-planar configuration)の形成は必然的に、幾何学的に歪んだタイヤビードおよび/または硬化されたタイヤにおける正確なビード位置の損失を招くことに注目してきた。
【0024】
さらに、本出願人はタイヤビード領域の幾何学的安定性を改良する必要性が、ビードコアが非ゴム引きワイヤで形成される場合のみならず、ゴムコーティングが各ワイヤの周りに施される場合にも、特に有利であることを認識してきた。実際、たとえそのようなゴムコーティングの存在が生ゴムの接着特性によりワイヤ回旋体をまとめて保持することに積極的に寄与するとしても、状況次第では、特にトラック用タイヤの場合に、タイヤビードの幾何学的安定性は保証されないことに本出願人は注目してきた。そのため、従来のタイヤ製造工程では、特に製造中におけるその幾何学的安定性を高めるようビードコアの部分硬化を行うことが一般的な方法である。
【0025】
こうして本出願人の取り組みは、タイヤのホイールリムへの/からの容易な取り付け/取り外しを確実にする可撓度を兼ね備えた所望の構造強度を得るためタイヤビード領域の構造を改造すると同時に、一方でタイヤビード領域のタイヤビードの周方向全体の輪郭に沿ってリムフランジとの均一で正確な係合を提供することに焦点が当てられてきた。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本出願人は前記結果が、ビードコアであって、前記ビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルを被包する(envelopes)保持部材を備え、保持部材が少なくとも1つの予成形された糸状金属要素を備える複数の細長状補強要素を備え、糸状金属要素が約0.05mmから約0.25mmの範囲の直径を有する、ビードコアを備えるタイヤビードを装備することにより達成され得ることを見出してきた。
【0027】
好ましくは、保持部材の各細長状補強要素は複数の(すなわち、少なくとも2つの)糸状要素を備え、前記糸状要素の少なくとも1つは予成形された金属コードである。
【0028】
本説明において「細長状の予成形された補強要素」という用語は、少なくとも1つの予成形された糸状要素を備える補強要素を示すため使用される。
【0029】
本出願人は、金属補強要素の存在により、高い機械抵抗特性がビードコアへ供与され得る一方、繊維材料から作られる補強織布に典型的な高い可撓性の性質が、細長状補強要素の少なくとも1つの糸状要素を予成形することにより獲得され得ることを見出してきた。
【0030】
従って本出願人は、ビードコアを被包する保持部材に細長状の予成形された金属要素を用いることにより、金属補強要素を備える半製品に典型的である高い強度特性をそこに供与できる一方、繊維補強要素を備える半製品に典型的であるビードコアに適した可撓度を確実なものにすることが可能であることを見出してきた。
【0031】
前記態様が工程の観点からも非常に重要であるのは、保持部材の優れた可撓性により、タイヤ製造工程の間、前記保持部材の付与が容易かつ正確に行われることができ、前記部材が付与されるビードコアの外輪郭に正確に従うことが確実となり得るためである。
【0032】
実際、保持部材が硬過ぎてビードコアの周りに正確に巻回され得ない場合、幾らかの空気がビードコアと保持部材との間に取り込まれたまま保たれる可能性がある。保持部材の金属補強要素ならびにビードコアの金属ワイヤと触れることのできる空気の存在は、タイヤビード内で望ましくない腐食現象が起こり得るため、回避される必要がある。
【0033】
保持部材の可撓性により、さらなる利点が獲得され得る。すなわち、a)保持部材の製造工程が、通常繊維材料に用いられるカレンダ加工用および切断用と同一器具を使用することにより行われ得る、b)タイヤ製造工程における保持部材の付与ステップが保持部材の可撓性により非常に容易に行われる。
【0034】
上述のとおり、保持部材の予成形された金属製糸状要素の直径は小さくなるよう、例えば0.05mmから0.25mmの範囲で、選択される。
【0035】
本出願人は、保持部材用の補強要素として、細い(すなわち、直径の小さい)予成形された金属製糸状要素の使用は、それにより前記部材の重量を減少させることおよびその可撓性を増加させることが可能となるため上述の利点が達成され、特に有利であることを見出してきた。
【0036】
さらに、本出願人は、本発明の保持部材が生ゴム化合物と保持部材を形成する金属製糸状要素との間の接着度に有効に働く優れた生粘着性(green tackiness)を有することを見出してきた。
【0037】
その結果、この保持部材は、タイヤ製造工程におけるその付与中に処理される時、特に金属製糸状要素の横断方向に、補強要素が生ゴムから分離するリスクを負うことなく延伸され得る。
【0038】
そのような分離が回避される必要があるのは、それが腐食現象を起こし、あるいは、ゴムコーティングのない金属要素がビードから突き出す可能性があり、その欠陥によりタイヤが廃棄されることが起こり得るような、タイヤビード内部の致命的な部位の形成を引き起こし得るためである。
【0039】
さらに本出願人は、本発明の保持部材が、経年の後にも(前記態様が腐食現象の形成を回避することに寄与する)、硬化されたゴム組成物の金属製糸状要素に対する非常に優れた接着を示すとともに、コードの切断が行われる時、コード端の擦り切れまたはコード端部の丸まりのような望ましくない現象が生じないための、コードの予成形された糸状要素の(またはコードが予成形された糸状要素および非予成形の糸状要素で作られる場合に、予成形された糸状要素への非予成形糸状要素の)顕著な相互貫入を示すことを見出してきた。
【0040】
第1の態様において本発明は、
− 軸方向に離間される一対のビードコアを備えるビード構造と、
− 前記ビードコアの間に延在するとともに軸方向に対向する端部でそれぞれの前記ビードコアの一方に固定され、各軸方向の端部が前記ビードコアの周りに折り返される少なくとも1つのカーカスプライを備えるカーカス構造と、
− 前記カーカス構造の周りに周方向に延在するトレッドバンドと、
− 前記カーカス構造と前記トレッドバンドとの間に円周方向に置かれるベルト構造と、
− 軸方向に対向する位置で前記カーカス構造に付与される少なくとも1対のサイドウォールと、を備える空気入りタイヤであって、各ビードコアが、
・少なくとも1本の金属ワイヤの複数のコイルであって、前記コイルが半径方向に重ね合わされるとともに軸方向に互いに並列的に配置される、コイルと
・前記複数のコイルを被包する保持部材であって、前記保持部材が複数の相互に実質的に平行な細長状補強要素を備え、前記細長状補強要素が少なくとも1つの予成形された糸状金属要素を備え、前記少なくとも1つの予成形された糸状金属要素が0.05mmから0.25mmまでの範囲の直径を有する、保持部材とを備える、空気入りタイヤに関連する。
【0041】
好ましくは、各細長状補強要素は少なくとも1つの予成形された金属製糸状要素を有する金属コードである一方、前記少なくとも1本のコードを形成する残りの糸状要素は非予成形型である。
【0042】
別の実施形態において、各細長状補強要素は金属コードであって、その糸状要素は全て予成形される。所定の予成形加工が施される前は、糸状要素は直線形状を有する。
【0043】
好ましくは、予成形された糸状要素の変形は共平面型(coplanar type)である。すなわち各予成形された糸状要素は一平面内にある。
【0044】
好ましくは、前記糸状要素は、鋭い縁部が実質的にないおよび/またはその長手方向の延在に沿う湾曲に不連続が実質的にないように、波形形状をとるよう予成形される。前記特徴は前記鋭い縁部/角がないことで糸状要素の破断荷重の好都合な増加をもたらすため特に有利である。
【0045】
特に好ましいのは、実質上の正弦波に基づく予成形である。好ましくは、前記正弦波は2.5mmと30mmとの間の、さらに好ましくは5mmと25mmとの間の波長を有する。好ましくは、前記正弦波は0.12mmと1mmとの間の波の振幅を有する。上記の波長および波の振幅の範囲は、非ゴム引き糸状要素上でそれがタイヤへと挿入される前に、または完成された(加硫処理された)タイヤ上で、直接計測されてもよい。有利には、前記パラメータの計測は糸状要素上で拡大レンズおよび目盛付きスケール(例えば目盛付き定規)を使用して行われてもよい。完成された(加硫処理された)タイヤが分析されることになる場合、タイヤからビードコアを引き抜き、保持部材を分離し、かつ適切な溶剤を使用して、例えば100℃で少なくとも12時間ジクロロベンゼンでそれを処理することにより、ゴム引き化合物をそこから取り外す必要がある。
【0046】
別の実施形態では、変形は共平面型ではなく、例えば螺旋型の形を有する。
【0047】
本発明による予成形された糸状要素を得るため、当該分野で公知の方法のいずれか1つを利用することが可能である。例えば、本出願人と同一の名前における、米国特許第5,581,990号明細書に図示される種類の歯車装置を利用すること、または特許出願のWO第00/39385号パンフレットに記載される装置を利用することが可能である。前記装置は一対の滑車を含み、各々は所定のセクションにわたって互いに嵌合し合うことのできる複数の相対する突起を装備することで、第1の滑車の突起と、対応する第2の滑車の突起との間にある空間に沿って動かされる糸状要素において軸方向の変形および曲げ変形を同時に誘発する。上述の相互嵌合加工は、前記糸状要素により回転駆動される前記一対の滑車の動きから、結果として遂行され得る。
【0048】
好ましくは、細長状補強要素は実質的に均等に保持部材中に配分される。すなわち連続して隣接する単一の細長状補強要素の間の軸方向の離間は実質的に一定である。
【0049】
さらに本出願人は、本発明による保持部材に使用される、予成形された、金属製の、糸状要素は、タイヤの加硫が生じた後にも広い弾性域(elastic range)および高い破断点伸びを保有することを見出してきた。
【0050】
好ましくは、本発明のタイヤのビードコアは螺旋状に巻回する複数のゴム引きワイヤ(またはコード)により得られ、各個々のワイヤ(またはコード)は半径方向に重ね合わされ巻回されるコイルの列を形成するようそれ自体の上へと半径方向にコイル巻きされる。
【0051】
あるいは、前記ワイヤは、半径方向に重ね合わされ巻回されるコイルの軸方向に隣接する複数の列を形成するため半径方向にコイル巻きされるが、実質的にゴムコーティングなしである(すなわち、非ゴム引きワイヤが使用される)。
【0052】
好ましくは、前記非ゴム引きワイヤは、軸方向に延在する直線状かつ平行な2つの対辺および半径方向に延在する非直線状の2つの側辺を含む実質的に矩形の断面を有する。好ましくは、前記非直線状の側辺は、2本のワイヤが半径方向に積み重ねられる時、その側辺の形が、相互嵌合し得る軸方向に隣接するワイヤの輪郭に対し補完的な輪郭を形成するよう成形される。そのような方法において得られるアセンブリは、1本のワイヤの側辺の一部のみが、軸方向に隣接するワイヤの側辺の一部のみに接触するというものである。好ましくは、ワイヤは実質的に六角断面を有する。そのような技術的解決法が、例えば本出願人と同一の名前における文献の米国特許第5,007,471号明細書に開示される。
【0053】
好ましくは、本発明のタイヤのビードコアは、例えば本出願人と同一の名前における文献の米国特許第4,192,368号明細書および米国特許第4,180,116号明細書に記載されるとおり、多角形の断面を有する。
【0054】
あるいは、本発明のタイヤのビードコアは単一ワイヤビードコアである。
【0055】
あるいは、本発明のタイヤのビードコアはオルダーファ構造である。
【0056】
好ましくは、本発明のタイヤのビードコアはさらに、例えば金属製のクリップまたはストリップの形態の複数の止め要素(check elements)を具備し、これはビードコアを形成する金属ワイヤの回旋体のコンパクトさを維持するようビードコアの円周に沿って周期的に付与される。
【0057】
本発明のタイヤのビードコアが非ゴム引きワイヤで形成される場合、ビードコアはさらに、ビードコアを形成する複数のコイルと保持部材との間に間置されるエラストマー層を備える。前記エラストマー層の存在は、前記非ゴム引き金属ワイヤの複数のコイルに対する前記保持部材の接着性を増加させることに寄与する。
【0058】
好ましくは、本発明のタイヤが取り付けられるホイールリムには、タイヤ回転軸に対し約15°の角度に傾斜されるビードシートが装備される。
【0059】
さらに、ビードコアがゴム引き金属ワイヤの複数のコイルで形成される場合、本発明のタイヤの幾何学的安定性が有利に増加することでビードコアの部分硬化はもはや必要でないことが注目され得る。これは必然的にタイヤ製造工程の単純化をもたらすため関連する時間およびコストを節減する結果となる。
【0060】
さらなる特徴および利点は、幾つかの本発明によるタイヤの実施例の詳細な説明を参照してより明確に明らかとなるであろう。前記説明は、下記に与えられるが、単に非限定的な実施例として提供される添付図面について述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
図1は本発明によるとともにホイールリム(図示せず)上に取り付けられるのに適したトラック用タイヤ10の部分断面図を示す。簡略にするため、図1はタイヤの一部のみを示し、残りの描かれない部分は、同等かつにタイヤの赤道面に対し対称に配置される。
【0062】
タイヤ10は、カーカスプライ12を備えるカーカス構造11を含み、カーカスプライの端部は一対のビードコア13(1つのみが図1に示される)に連結される。
【0063】
図1に示される実施形態に従い、カーカスプライ12はカーカスプライ端をビードコア13の周りに折り返すことにより、それぞれのビードコア13に対し折り曲げられる。
【0064】
ビードコア13は互いに軸方向に離間されるとともに、タイヤに対し半径方向内側の位置においてそれぞれのビード14に組み込まれる。
【0065】
ビードコア13に加え、ビード14はさらに、ビードコアに対し半径方向外側の位置においてビードフィラー15を備える。
【0066】
カーカスプライ12は、一般に互いに平行に配置されるとともに架橋エラストマー材料の層で少なくとも部分的にコーティングされる複数の補強要素から構成される。これらの補強要素は通常、金属合金(例えば銅/亜鉛、亜鉛/マンガン、亜鉛/モリブデン/コバルト合金および類するもの)でコーティングされる撚り合わされたスチールワイヤから、あるいは、例えばレーヨン、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートといった繊維織布(textile fibres)から作られる。
【0067】
好ましくは、カーカスはラジアル型であり、すなわちタイヤの赤道面に実質的に垂直な方向に配置される補強コードを組み込む。
【0068】
タイヤ10はさらに、前記カーカス11のクラウン部上に置かれるトレッドバンド16と、各々それぞれのビード14とトレッドバンド16との間に配置される一対の軸方向に対向するサイドウォール17とを備える。
【0069】
カーカスプライ11とトレッドバンド16との間に、タイヤ10はさらに、図1に示される実施例において、2つの半径方向に重ね合わされるベルトプライ19、20と、2つの横方向補強ストリップ21(1つのストリップのみ図1に示される)と、ブレーカー層22とを想定するベルト構造18を備える。
【0070】
詳細には、半径方向に互いに重ね合わされるベルトプライ19、2は複数の補強コードを組み込み、補強コードは典型的には金属製であるとともにタイヤの赤道面に対し斜方に方向付けされ、各プライにおいて互いに平行であるとともに、周方向に対し所定の角度を形成するよう隣接するプライの補強コードと交差する。一般に、前記角度は約10°から約40°までに含まれ、好ましくは、前記角度は約12°から約30°までに含まれる。
【0071】
上述のとおり、ベルト構造18はさらに、一般に「ゼロ度補強ストリップ」として知られる、半径方向外側のベルト層20の軸方向外縁上に半径方向に重ね合わされる2つの横方向補強ストリップ21を備える。前記補強ストリップ21は一般に、典型的には破断伸び値(breakage elongation value)が3%から10%まで、好ましくは3.5%から7%までの金属コードである複数の補強要素を組み込む。前記補強要素は、架橋エラストマー材料によってコーティングされるとともに、実質的に周方向に方向付けされるため、タイヤの赤道面に対しほとんど度数のない角度(すなわち0°)を形成する。図1に示される実施形態によれば、各横方向補強ストリップ21は2つの半径方向に重ね合わされる層21a、21bから形成される。あるいは、2つの横方向補強ストリップ21の代わりに、一般に上記で開示されたものと同種の複数の補強要素を組み込み、前記ベルト構造の軸方向の全展開に沿って(along the whole axial development)延在する、連続補強層が存在してもよい(図1には図示せず)。
【0072】
上述のとおり、ベルト構造18はさらに、半径方向外側のベルト層20の上に半径方向に重ね合わされるとともに横方向補強ストリップ21の間に間置されるブレーカー層22を備える。あるいは、ブレーカー層は補強ストリップ21の上に延在する(前記実施形態は図示せず)。ブレーカー層22は補強要素を装備し、典型的には金属コードで、かかるコードは、架橋エラストマー材料によってコーティングされ、かつ互いに平行に配置されるとともにタイヤの赤道面に対し10°から70°まで、好ましくは12°から40°までの角度だけ傾斜している。ブレーカー層22は、場合によりトレッド溝へと取り込まれるとともにベルト層19、20およびカーカスプライ12にまで破損を引き起こし得る石または砂利からの保護層としての役割を成す。
【0073】
あるいは(前記実施形態は図示せず)、ベルト構造は3つの半径方向に重ね合わされるベルトプライおよび前記重ね合わされるベルトプライの半径方向外側におけるブレーカー層を想定する。
【0074】
あるいは(前記実施形態は図示せず)、ベルト構造は2つの半径方向に重ね合わされるベルトプライと、半径方向外側のベルトプライの軸方向外縁部上に半径方向に重ね合わされる1つのゼロ度の横方向補強ストリップと、前記補強ストリップおよび半径方向外側のベルトプライの半径方向外側の位置におけるブレーカー層(ブレーカー層は部分的にのみ横方向補強ストリップに重なり得る)とを想定する。
【0075】
チューブレスタイヤの場合、前記カーカスプライ12の半径方向内側の位置において、「ライナー」と呼ばれるゴム引き層23もまた想定され、前記層はタイヤ10に、その使用中必要な空気に対する不透過性を提供することができる。
【0076】
さらに、耐磨耗性ストリップ24が通常、カーカスの折り返しに対し軸方向外側の位置に置かれる。
【0077】
図1に示される実施形態によれば、ビードコア13は複数の非ゴム引きワイヤ25を巻回することにより得られ、各ワイヤは半径方向に重ね合わされるコイルの列を形成するため半径方向に巻回される。図1においては、7本のワイヤ25が使用され(軸方向に隣接する7列が形成されるよう)、各ワイヤは半径方向に重ね合わされる6巻きのコイルを形成するため螺旋状に巻回される。
【0078】
本発明によれば、ビードコア13はビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルを被包する保持部材26を備える。保持部材は、少なくとも1つの予成形された糸状金属要素を備える複数の互いに実質的に平行な細長状補強要素27を備える。
【0079】
好ましくは、ビードコア13はさらに、ビードコアを形成する複数のコイルと保持部材26との間に間置されるエラストマー層(図示せず)を備える。
【0080】
あるいは、前記エラストマー層は存在しない。この場合、エラストマー材料−ここへ細長状補強要素27が保持部材26を形成するため埋め込まれる−は、保持部材がビードコア13を形成するコイルを成す金属ワイヤ(亜鉛めっきされることが好ましい)を適切に被包するとともにそれに接着するよう、接着促進添加剤を含むことが好ましい。好ましくは、前記接着促進添加剤は、
− 化学式(R−CO−O)Coであるカルボン酸化合物から選択され得る2価コバルト塩(式中、Rは、例えばネオデカン酸コバルトなどの、C−C24脂肪族基または芳香族基である)、
− ホウ素およびコバルト(これらは酸素を介して結合される)を中心とする有機金属錯体(例えば、OMGグループによるManobond(商標登録) 680Cの商標名で知られる錯体)、
− レゾルシノール/ヘキサメトキシメチレンメラミン(HMMM)系またはレゾルシノール/ヘキサメチレンテトラミン(HMT)系、
から選択されるか、もしくはその混合物である。好ましくは、ホウ素およびコバルトを中心とする有機金属錯体とレゾルシノール/ヘキサメトキシメチレンメラミン(HMMM)系の混合物が使用される。
【0081】
好ましくは、前記接着促進添加剤はエラストマー組成物中に0.2phrから3phrまで、好ましくは0.5phrから2.5phrまでの量で存在する。
【0082】
図1の実施形態によれば、本発明のタイヤはさらに、一般に「チェーファ(chafer)」の用語で知られるとともにビード剛性を増加させる機能を有する補強層28を備える。
【0083】
チェーファ28は、エラストマーマトリクス内に埋め込まれるとともに一般に繊維材料(例えば、アラミドまたはレーヨン)あるいは金属材料(例えば、スチールコード)から作られる複数の細長状補強要素を備える。
【0084】
本発明によれば、保持部材26を参照して上述したように、チェーファには直径の小さい予成形された糸状要素を備える金属製の細長状補強要素が装備されることが好ましい。
【0085】
チェーファは、タイヤビードおよび/またはサイドウォール内部の複数の位置に置かれ得る。図1に示される実施形態によれば、チェーファ28はカーカスプライ12に対し軸方向外側の位置に置かれる。タイヤに2つのカーカスプライが装備される場合、チェーファは前記カーカスプライの間に位置付けられ得る。好ましくは、チェーファはビードコアの半径方向外側部分に対応して始まり、ビードフィラーの外周輪郭に沿うとともに、タイヤサイドウォールに対応するところで終わる。あるいは、チェーファは、タイヤサイドウォールに沿って、タイヤベルト構造の端部まで延在し得る。
【0086】
図1に示される実施形態によれば、保持部材26は、細長状補強要素が埋め込まれるエラストマー材料から構成される連続ストリップの形態であり、前記ストリップは、ビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルの周りに螺旋状に巻回されることで、その円周状外輪郭に沿って前記コイルを完全に被包する。好ましくは、図3に示されるとおり、前記巻回は軸方向に隣接するコイルに部分的重なりが得られるような方法で行われる。
【0087】
図2は、図1のものと類似のトラック用タイヤ20の部分断面図を示す。従って、説明の簡略化のため、図1のものと類似または同一である図2の構成要素は、説明において同じ参照符号をもって扱われる。図2に示されるタイヤ20の図1に示されるタイヤ10との唯一の違いは、保持部材26がシートの形態で付与されることにあり(前記シートは細長状補強要素が埋め込まれるエラストマー材料から構成される)、前記シートは、ビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルの円周状外輪郭の周りに折り巻かれる(folded)。好ましくは、図4に示されるとおり、折り巻くステップは、シートの側縁部に部分的な重なりが得られるよう行われる。さらなる実施形態によれば(図示せず)、前記シートは、ビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルの円周状外輪郭の周りに少なくとも2回折り巻かれる。
【0088】
図5は本発明に従って正弦曲線状に予成形された糸状要素200を示す。
【0089】
上述のとおり、前記変形は、一般に直線からの周期的偏位の形態であるが(in the form of periodic deviations from a straight line)、周知のいかなる形態で得られてもよい。好ましくは、前記変形は共平面型である。さらに好ましくは、前記変形は、波長(またはピッチ)Pおよび波の振幅Hを有する実質上の正弦波(図5に図示されるもののような)から構成される。
【0090】
本発明の目的のため、「波長P」は周期的に繰り返される最少部分の長さとして理解されるべきであり、かつ「波の振幅H」は糸状要素の中心軸Sからの最大横断偏位(両方向において等しいと考えられる)である振幅の2倍の意味として理解されるべきである(図5を参照)。
【0091】
上述のとおり、好ましくは、波長(またはピッチ)Pは、2.5mmと30mmとの間、より好ましくは、5mmと25mmとの間である。
【0092】
好ましくは、波の振幅Hは、0.12mmと1mmとの間で、より好ましくは、0.14mmと0.60mmとの間である。
【0093】
一般に、本発明による予成形された糸状要素は、0.05mmと0.25mmとの間の、より好ましくは、0.08mmと0.20mmとの間の直径Dを有する。特に好ましいのは、直径0.12mmである。
【0094】
上述のとおり、糸状要素は金属製である。
【0095】
好ましくは、糸状要素はスチールから作られる。糸状要素の直径が0.4mmと0.1mmとの間である場合、標準的なNT(標準張力)スチールの破断強度は約2,600N/mm(または2,600MPa−メガパスカル)と約3,200N/mmとの間の範囲をとり、HT(ハイ・テンシル(High Tensile))スチールの破断強度は約3,000N/mmと約3,600N/mmとの間の範囲をとり、SHT(スーパー・ハイ・テンシル(Super High Tensile))スチールの破断強度は約3,300N/mmと約3,900N/mmとの間の範囲をとり、UHT(ウルトラ・ハイ・テンシル(Ultra High Tensile))スチールの破断強度は約3,600N/mmと約4,200N/mmとの間の範囲をとる。前記破断強度値は、特にスチール中に含有される炭素量に依存する。
【0096】
一般に、前記糸状要素には、0.10μmと0.50μmとの間の厚さを有する、真鍮コーティング(60重量%と75重量%との間のCu、40重量%と25重量%との間のZn)が施される。前記コーティングは、糸状要素のゴム引き化合物に対するより優れた接着を確実にするとともに、タイヤ生産中およびその使用中の双方において金属の腐食に対する保護を提供する。腐食に対しさらなる保護を確実にすることが必要であれば、前記糸状要素は、例えば、亜鉛、亜鉛/マンガン(ZnMn)合金、亜鉛/コバルト(ZnCo)合金または亜鉛/コバルト/マンガン(ZnCoMn)合金ベースのコーティングなどの、より高い腐食耐性を確実にすることができる真鍮以外の耐食性コーティングを有利に施されてもよい。
【0097】
好ましくは、本発明による保持部材は、n×D型の構造を有するコードを使用して得られ、ここでnはコードを形成する糸状要素の数であるとともにDは各糸状要素の直径である。好ましくは、nは2と5との間の範囲をとる。特に好ましいのは、3に等しいnである。
【0098】
好ましくは、前記コードのストランドピッチは、2.5mmと25mmとの間の、より好ましくは、6mmと18mmとの間の範囲をとる。特に好ましいのは、12.5mmのストランドピッチである。
【0099】
好ましいコードの構造は、例えば、2×(すなわち、共に撚り合わされる2つの糸状要素)、3×、4×、5×、2+1(すなわち、2つの糸状要素のストランド1本と、1つの糸状要素のストランド1本、前記2本のストランドが共に撚り合わされている)、2+2、3+2、1+4、である。
【0100】
好ましくは、本発明による保持部材中の細長状補強要素の密度は、40コード/dmと160コード/dmとの間に含まれ、より好ましくは、80コード/dmと120コード/dmとの間に含まれる。特に好ましいのは、85コード/dmおよび105コード/dmの密度である。
【0101】
好ましくは、本発明による保持部材の細長状補強要素は、タイヤの半径方向平面に対し斜方に方向付けられる。
【0102】
保持部材がビードコアのコイルの円周状外輪郭の周りに折り巻かれるシートの形態で付与される場合、好ましくは前記細長状補強要素はタイヤの半径方向平面に対し15°から60°の、より好ましくは30°から45°の範囲の角度で配置される。
【0103】
あるいは、保持部材がビードコアの円周状外輪郭の周りに螺旋状に巻回される連続ストリップの形態で付与される場合、前記細長状補強要素はストリップの長手方向の展開に対し平行に配置される。好ましくは、前記ストリップはビードコアのコイルの周りに50°から70°の範囲に含まれるねじれ角で螺旋状に巻回される。
【0104】
好ましくは、保持要素の厚さ−すなわち、コードの直径およびコードが埋め込まれるゴム化合物を含む全厚さ−は0.5(±0.1)mmと1.7(±0.1)mmとの間に、より好ましくは0.8(±0.1)mmと1.1(±0.1)mmとの間に含まれる。
【0105】
好ましくは、本発明のトラック用タイヤは、1より小さいH/C率、すなわち、断面の最大幅に対する横断面の高さの比率、を有する。好ましくは、H/C率は0.9より小さい。
【0106】
本発明は、特に中量/重量運搬用のトラックまたはローリーで使用されるのに適した空気入りタイヤに関する。本発明はまた軽トラック車両にも適する。
【0107】
発明のさらなる説明のため、例示的な実施例が以下に挙げられる。
【実施例】
【0108】
実施例1
315/80 R22.5のサイズを有する2類型のタイヤ(タイヤAおよびタイヤB)が製造された。
【0109】
タイヤAおよびBは同一の構造要素、すなわち、同一のカーカス(1つのカーカスプライ)と、2つの交差ベルトプライと、2つの横方向補強ストリップ(ゼロ度補強ストリップで、図1および2に示されるとおり、交差ベルトプライの半径方向外側に位置決めされるとともに2つの半径方向に重ね合わされる層で形成される)と、ブレーカー層(半径方向外側のベルト層上に半径方向に重ね合わされるとともに横方向補強ストリップの間に間置される)と、同一のトレッドバンドとを有した。
【0110】
タイヤA(本発明によるタイヤ)はさらに、図2に示されるとおりのビードコア、すなわち、各列が半径方向に重ね合わされる6巻きのコイルから形成される、軸方向に隣接する7列を形成するため、7本の非ゴム引きワイヤ(各ワイヤは実質的に六角断面を有するとともに亜鉛めっきHTスチール材料で作られる)を螺旋状に巻回することにより得られたビードコアを備えた。本発明によれば、ビードコアはさらに、ビードコアを形成する金属ワイヤの複数のコイルの円周状外輪郭の周りにシートを折り巻くことによりシートの形態で付与された保持部材を具備した。折り巻くステップは、図4に示されるとおり、シートの側縁部に部分的重なりが得られるような方法で行われた。保持部材は、細長状補強要素が埋め込まれ、各細長状補強要素が3×0.12HTスチールコード(すなわち、直径0.12mmを有する3本のHTスチールワイヤで形成されるコード)で構成される、エラストマー材料から構成された。コードの各ワイヤは、波長(ピッチ)2.200mmおよび波の振幅0.345mmを有する実質上の正弦波(図5に示されるとおり)に基づいて予成形された。保持部材中の細長状補強要素は、タイヤの半径方向平面に対し約45°の角度で配置された。保持部材中の細長状補強要素の密度は、105コード/dmであり、かつ前記部材の厚さ−すなわち、コードの直径およびコードが埋め込まれたゴム化合物を含む全厚さ−は約0.95mmであった。
【0111】
タイヤB(比較用)はさらに、タイヤAのビードコアと類似のビードコアを備えたが、唯一の違いは、保持部材が繊維製細長状補強要素の埋め込まれたエラストマー材料から構成されたことである。詳細には、細長状補強要素はナイロン(Nylon)940×2、すなわち、2本のフィラメントから形成されたコードであって、各フィラメントが940dTex(dTexは繊維10,000mに対応するグラム重量である)の数値および48tpm(メートル当たりの巻き)のねじれを有するコードから構成された。コードのねじれは48tpmであった。保持部材中の細長状補強要素は、タイヤの半径方向平面に対し約45°の角度で配置された。保持部材中の細長状補強要素の密度は68コード/dmであり、前記部材の厚さ−すなわち、コードの直径およびコードの埋め込まれたゴム化合物を含む全厚さ)−は約0.88mmであった。
【0112】
試験結果の平均値が計算され得るよう3本のタイヤAおよび3本のタイヤBに対して屋内試験が行われた。
【0113】
a)トラック用タイヤビード疲労応力試験
タイヤは9.00″ホイールリム上に取り付けられるとともに135psi(9.5bar)の圧力で膨張させた。タイヤには9,220kgfの荷重、すなわち、タイヤの荷重能力に対し240%の過荷重がかけられた。引き続きタイヤをロードホイール上で20km/hの固定されかつ制御された速度で回転させた。タイヤが破損に至ると試験は中断され、かつタイヤの破損が生じた時間が検知された。
【0114】
結果は表1にまとめられており、そこから、本発明のタイヤAについて疲労応力が比較用タイヤBに対し19%超増加することを指摘することができる。このような結果は、本発明のタイヤが従来のタイヤと比較して、使用中、より優れた幾何学的安定性およびより高まったビードの完全性を提供することを示す。
【0115】
【表1】

【0116】
b)タイヤ破裂試験
定格運転荷重を加えられかつそれぞれのホイールリム上に取り付けられたタイヤを水で徐々に膨張させた。タイヤ破裂時またはタイヤビードがリムから滑り落ちた時、試験は中断され、かつ前記現象が生じた時間が検知された。
【0117】
結果は表2にまとめられており、そこから、本発明のタイヤAについてタイヤ破裂が比較用タイヤBに対し7%超増加することを指摘することができる。このような結果は、本発明のタイヤのビードコアのコンパクトさならびに耐局所変形性が従来のタイヤに対し増加することを示す。
【0118】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施形態によるトラック用タイヤの部分断面図を示す。
【図2】本発明の別の実施形態によるトラック用タイヤの部分断面図を示す。
【図3】図1のタイヤのビードコアの部分斜視図を示す。
【図4】図2のタイヤのビードコアの部分斜視図を示す。
【図5】本発明によるタイヤの保持部材で使用され得る予成形された糸状要素を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 軸方向に離間される一対のビードコア(13)を備えるビード構造(14)と、
− 前記ビードコア間に延在するとともに軸方向に対向する端部でそれぞれの前記ビードコアの一方に固定され、各軸方向の端部が前記ビードコアの周りに折り返される少なくとも1つのカーカスプライ(12)を備えるカーカス構造(11)と、
− 前記カーカス構造の周りに周方向に延在するトレッドバンド(16)と、
− 前記カーカス構造と前記トレッドバンドとの間に周方向に置かれるベルト構造(18)と、
− 軸方向に対向する位置で前記カーカス構造に付与される少なくとも1対のサイドウォール(17)と、を備えるトラック用空気入りタイヤ(10、20)であって、各ビードコアが、
・ 少なくとも1本の金属ワイヤ(25)の複数のコイルであって、前記コイルが半径方向に重ね合わされるとともに軸方向に互いに並列的に配置される、コイルと、
・ 前記複数のコイルを被包する保持部材(26)であって、前記保持部材が複数の相互に実質的に平行な細長状補強要素(27)を備え、前記細長状補強要素が少なくとも1つの予成形された糸状金属要素(200)を備え、前記少なくとも1つの予成形された糸状金属要素が0.05mmから0.25mmまでの範囲の直径を有する、保持部材とを備える、タイヤ。
【請求項2】
各細長状補強要素(27)が、複数の糸状要素を備える金属コードであって、前記糸状要素の少なくとも1つ(200)が予成形される、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項3】
前記細長状補強要素(27)の前記糸状要素(200)が全て予成形される、請求項2に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの糸状要素(200)が共平面型の変形を伴い予成形される、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの糸状要素(200)が、波型の形を有するよう予成形される、請求項4に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項6】
前記波形が実質的に正弦曲線型である、請求項5に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項7】
前記実質上の正弦曲線形が2.5mmと30mmとの間の波長(P)を有する、請求項6に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項8】
前記実質上の正弦曲線形が0.12mmと1mmとの間の波の振幅(H)を有する、請求項6に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項9】
前記波形が螺旋型である、請求項5に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属製糸状要素がスチールで構成される、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの金属製糸状要素が、真鍮と、亜鉛と、亜鉛/マンガン合金と、亜鉛/コバルト合金と、亜鉛/コバルト/マンガン合金とを含む群から選択されるコーティングを有する、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項12】
前記金属製糸状要素の数が2と5との間である、請求項2に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項13】
前記金属製糸状要素のストランドピッチが2.5mmと25mmとの間である、請求項2に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項14】
前記細長状補強要素(27)の密度が40コード/dmと160コード/dmとの間に含まれる、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項15】
前記ビードコア(13)が、複数のゴム引きワイヤを螺旋状に巻回することにより得られ、各ワイヤが半径方向に重ね合わされ巻回されるコイルの列を形成するようそれ自体の上へと半径方向にコイル巻きされる、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項16】
前記ビードコア(13)が、複数の非ゴム引きワイヤを螺旋状に巻回することにより得られ、各ワイヤが半径方向に重ね合わされ巻回されるコイルの列を形成するようそれ自体の上へと半径方向にコイル巻きされる、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項17】
前記非ゴム引きワイヤが実質的な矩形断面を有する、請求項16に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項18】
前記非ゴム引きワイヤが実質的な六角断面を有する、請求項16に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項19】
前記ビードコア(13)が多角形の断面を有する、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項20】
前記ビードコア(13)が単一ワイヤビードコアである、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項21】
前記ビードコア(13)がオルダーファ構造である、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項22】
前記ビードコア(13)が、前記ビードコアの円周に沿って周期的に付与される複数の止め要素をさらに備える、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項23】
前記ビードコア(13)が、前記複数のコイルと前記保持部材(26)との間に間置されるエラストマー層をさらに備える、請求項16に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項24】
前記細長状補強要素(27)がエラストマー材料に埋め込まれる、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項25】
前記エラストマー材料が接着促進添加剤を含む、請求項24に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項26】
複数の実質的に平行な金属製細長状補強要素を備えるチェーファ(28)をさらに備える、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項27】
前記チェーファ(28)の前記細長状補強要素が、少なくとも1つの予成形された糸状要素を備える、請求項26に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項28】
前記チェーファ(28)が、前記少なくとも1つのカーカスプライ(12)に対し軸方向外側の位置に置かれる、請求項26に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項29】
前記保持部材(26)が、前記ビードコア(13)の前記複数のコイルの周りに螺旋状に巻回される連続ストリップの形態である、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項30】
前記ストリップが、50°から70°の範囲に含まれるねじれ角で螺旋状に巻回される、請求項29に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項31】
前記保持部材(26)が、前記ビードコア(13)の前記複数のコイルの円周状外輪郭の周りに折り巻かれるシートの形態で付与される、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項32】
前記細長状補強要素(27)が、前記タイヤの半径方向平面に対し15°から60°の範囲の角度で配置される、請求項31に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項33】
H/C率が1より小さい、請求項1に記載のタイヤ(10、20)。
【請求項34】
H/C率が0.9より小さい、請求項33に記載のタイヤ(10、20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−528346(P2008−528346A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551549(P2007−551549)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000685
【国際公開番号】WO2006/079352
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(598164186)ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (123)
【Fターム(参考)】