説明

改良されたポリマー加硫物およびそれを製造する方法

【課題】改良されたポリマー加硫物およびそれを製造する方法を提供する。
【解決手段】(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマーに由来するポリマー主鎖を有するポリマー、(ii)少なくとも1つのリチウム塩、および(iii)少なくとも1つの抗酸化剤を含んでなる新規なポリマー組成物を提供する。さらに、加硫システムをさらに含む前記のポリマー組成物を加硫するステップを含んでなる、ポリマー加硫物を製造する方法を提供する。前記ポリマーと少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの抗酸化剤とを混合するステップを含んでなる、上述のポリマーの熱風老化性および水性流体抵抗特性を改良する方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリマー組成物に基づく改良されたポリマー加硫物およびそれを製造する方法に関する。より詳しくは、その一態様では、本発明は、水性媒体に対する改良された耐膨潤性と組み合わされた改良された熱風老化特性を有するニトリルポリマー加硫物に関する。本発明の別の態様では、本発明は、このような加硫物を製造するために有用なポリマー組成物に関する。さらに別の本発明の態様では、本発明は、ニトリルポリマー加硫物の熱風老化特性、および同時に水性媒体に対する耐膨潤性を改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素−炭素二重結合不飽和を有するポリマーから得られた加硫物に対する酸化条件の影響は、特に加硫物が長期間高温に曝露される用途において、長い間、問題にされてきた。この問題の解決を試みて、当技術分野で多様なアプローチが開発されてきた。
【0003】
このようなポリマーの炭素−炭素二重結合は、加硫物を酸化攻撃に対して活性化することが知られている。酸化攻撃問題の一解決法は、炭素−炭素二重結合がほとんどまたは全くないポリマーを使用することである。このようなポリマーの例としては、典型的には約0.5〜約3.0モル%の炭素−炭素二重結合不飽和を有するブチルゴム(イソブチレンとイソプレンのコポリマー)、およびこのような不飽和を有しないエチレン−プロピレンコポリマーが挙げられる。
【0004】
自動車のエンジン室内の様々なホースおよびシールなどの特定用途は、油抵抗性と、高温空気中で長期間にわたる酸化攻撃への抵抗性とを兼ね備えた加硫されたポリマーを必要とする。一般にニトリルゴムまたはNBRとして知られている、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーなどの、共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとのコポリマーの加硫物は、それらの油抵抗性が周知である。しかしそれらは炭素−炭素二重結合不飽和を有し、したがって酸化抵抗性加硫物製造のための特別な配合手順を行わない限り、酸化攻撃を受けやすい。
【0005】
NBR中の炭素−炭素二重結合不飽和の量を低下させ、そしてコポリマー中のニトリル官能基によってもたらされると考えられるこのコポリマーの油抵抗性をなおも維持するために、ニトリル基を水素化することなく、NBRの炭素−炭素二重結合不飽和を選択的に水素化して、水素化NBRまたはHNBRを製造する方法が開発されている。このような水素化は、例えば、その内容を参照によって本明細書に援用する(特許文献1)に開示されている。(非特許文献1)によるレビューは、この技術分野における包括的概要を示す。
【0006】
HNBRの開発が当技術分野における顕著な進展である一方で、依然として改良の余地がある。
【0007】
コンポミッツィ(Campomizzi)らの(特許文献2)は、抗酸化剤と塩基の組み合わせの使用が、水素化ニトリル加硫物の熱風老化特性を顕著に改良することを実証するのに成功している。好ましい1つの組み合わせは、これまでのところ最良の結果を出している炭酸ナトリウムの使用を含む。
【0008】
当技術分野のその他の刊行物は、例えばアーノルディ(Arnoldi)らの(特許文献3)であり、少なくとも2つのフェノールOH基がある立体障害性フェノール化合物の塩をもとにした、有機ポリマーのための抗老化剤が開示されている。
【0009】
しかし(特許文献2)で言及された加硫物は高温用途のために非常に有用であるにもかかわらず、(特許文献2)で言及された加硫物は水性媒体、特に水に接すると大きな膨潤が観察され、水性媒体または水蒸気存在下における高温用途のための炭酸ナトリウムの使用を限定する。具体的には、水および水性系などの極性媒体に対する耐膨潤性を有する、熱風老化性などの改良された物理特性をもつポリマー加硫物を開発する必要性がある。
【特許文献1】英国特許第1,558,491号明細書
【特許文献2】米国特許第6,214,922号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/072557 A1号明細書
【非特許文献1】タン(Tan)ら、Rubber Chem.Tech.(2005年)、78(3)、489〜515頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の先行技術の欠点の少なくとも1つをなくすかまたは軽減することが、本発明の目的である。
【0011】
新規なポリマー加硫物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0012】
前記新規なポリマー加硫物を製造する新規方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0013】
ポリマー加硫物を製造するための新規なポリマー組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0014】
ポリマー加硫物の熱風老化特性を改良し、同時に極性媒体に対する耐膨潤性を改良する新規な方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、その一態様では、本発明は、
(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、および
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤
を含んでなるポリマー組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
特に好ましいポリマー組成物は、
(i)水素化ニトリルポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤、
(iv)少なくとも1つの充填剤、
(v)加硫システム(vulcanization system)、および
(vi)場合により、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミドまたはそれらの混合物
を含んでなる。
【0017】
本発明の別の態様では、本発明は、
(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤、および
加硫システム
を含んでなるポリマー組成物を加硫するステップを含んでなる、ポリマー加硫物を製造する方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、
(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤、および
加硫系
を含んでなる、加硫性組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、
(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマーの熱風老化性および水性流体抵抗特性を改良する方法であって、前記ポリマーと、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの抗酸化剤とを混合するステップを含んでなる方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、元の(すなわち当初の)破断点伸びの少なくとも50%を維持する、170℃で少なくとも約504時間の熱風老化時間を有しており、且つ改良された水性媒体中膨潤特性を有するポリマー加硫物を提供する、この加硫物は過酸化物ベースの加硫システムから導かれる。
【0021】
したがって、抗酸化剤およびリチウム塩および場合によりカルボジイミドもしくはポリカルボジイミドまたはそれらの混合物の特定の組み合わせをポリマー加硫物に組み込むことで、加硫物の熱風老化特性の改良(すなわち酸化条件下における高温老化性での空気中酸化攻撃に対する抵抗性の改良)をもたらし、ならびに意外であり予想外にも、先行技術と比較して水性系に対する耐膨潤性の改良を同時にもたらすことが発見されている。本発明の意味では、水性系は、水、水蒸気、または水とグリコールやポリエチレングリコールなどのその他の極性媒体との混合物である。加硫物の水性媒体中での膨潤に対する抵抗性および油/燃料抵抗性のために、本発明の加硫物は、水性媒体と、そして同時に燃料および/または油と接するシステム中での用途のために特に有用である。このようなシステムは典型的には自動車冷却剤循環路内で使用される。したがって本発明の加硫物は、例えば自動車内の流体循環路のためなど、例えば少なくとも片面が水性媒体と接して、別の面が燃料および/または油抵抗性もまた必要とするシステム中の用途に対して有用である。本発明の加硫物の熱風老化特性および水性系への耐膨潤性の改良は、以下(例に過ぎない)をはじめとするいくつかの様式で現れることができる。(i)加硫物が、170℃において、当初の100%破断点伸びの少なくとも50%を維持するのに必要な時間の延長、(ii)当初の破断点伸び値が50%未満に低下する前に、加硫物が特定期間曝露されうる最大使用温度の上昇、および(iii)添加剤(本発明の意味では、添加剤とは、抗酸化剤およびリチウム塩、および場合により、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物の組み合わせである)なしで製造された加硫物と比較して、水および/または水性系への曝露後の大幅に限定的な容積および/または質量変化。本加硫物はまた、以下の特性の1つ以上の改良によっても特徴づけられる(すなわち添加剤なしで製造された加硫物と比較して):老化熱流体老化性、老化圧縮永久歪、老化動弾性係数(E’)、老化動的粘性係数(E’’)、老化静的弾性率、老化低温特性、および老化硬度。
【0022】
本発明の一態様では、本発明は、
(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、および
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤
を含んでなるポリマー組成物を提供する。
【0023】
本ポリマー組成物の第1の構成要素は、(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマーに由来するポリマー主鎖を有するポリマーである。
【0024】
明細書全体を通じて使用されるように、「ポリマー」という用語は広義を有することが意図され、少なくとも1つの第二級または第三級炭素を含んでなるポリマー主鎖を有する任意のポリマーを包含することが意図される。当業者は、第二級炭素がそれに結合する2個の水素原子を有する炭素原子である一方、第三級炭素がそれに結合する1個の水素原子を有する炭素原子であることを理解するであろう。ポリマーはホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであってもよい。また混合物中の少なくとも1つのポリマーが上述のポリマー主鎖特性を有する限り、ポリマーの混合物を使用することも可能である。
【0025】
本明細書において使用するのに適したポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、この不飽和を通じて重合性であるモノマーのグラフトポリマーまたはブロックポリマーであるエラストマー(例えば炭化水素ゴムなど)などであってもよい。
【0026】
エラストマーは、当業者によく知られている。適切なエラストマーの非限定的例は、天然ゴム(NR)、cis−1,4−ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)などのニトリルゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、その他のHNBRコポリマー、HNBRターポリマー(水素化されたアクリロニトリル、ブタジエン、不飽和カルボン酸エステルのターポリマーをふくめて)、エチレン−プロピレンモノマーゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVM)などからなる群から選択されてもよい。当然ながら、適合性を前提として、前述のポリマーのいずれかの2つ以上の混合物を本発明において使用してもよい。
【0027】
好ましくは本ポリマー組成物中で使用されるポリマーは、エラストマーである。より好ましくはこのエラストマーは、ニトリルポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(例えばランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)の商品名レバプレン(Levapren)(登録商標)およびレバメルト(Levamelt)(登録商標)をもつEVM)、スチレン/共役ジエンコポリマー、水素化スチレン/共役ジエンコポリマー、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリブタジエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本明細書全体を通じて使用される「ニトリルポリマー」という用語は、広義を有することが意図され、共役ジエンと不飽和ニトリルとのコポリマーを包含することが意図される。
【0029】
共役ジエンは、C〜C共役ジエンであってもよい。適切なこのような共役ジエンの非限定的例は、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、2,3−ジメチルブタジエン、およびそれらの混合物を含んでなる群から選択されてもよい。好ましいC〜C共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、およびそれらの混合物を含んでなる群から選択されてもよい。最も好ましいC〜C共役ジエンはブタジエンである。
【0030】
不飽和ニトリルは、C〜Cα,β−不飽和ニトリルであってもよい。適切なこのようなC〜Cα,β−不飽和ニトリルの非限定的例は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、およびそれらの混合物を含んでなる群から選択されてもよい。最も好ましいC〜Cα,β−不飽和ニトリルはアクリロニトリルである。
【0031】
好ましくは、ニトリルポリマーは、水素化ニトリル/共役ジエンコポリマー、ニトリル/共役ジエンコポリマー、ニトリル/共役ジエン/エチレン性不飽和モノマーターポリマー、および水素化ニトリル/共役ジエン/エチレン性不飽和モノマーターポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、ニトリルポリマーは、水素化ニトリル/共役ジエンコポリマーである。
【0032】
好ましくは、コポリマーは、約40〜約85重量%の結合した(bound)共役ジエンコポリマーおよび約15〜約60重量%の結合した不飽和ニトリルコポリマーを含んでなる。より好ましくは、コポリマーは、約60〜約75重量%の結合した共役ジエンコポリマーおよび約25〜約40重量%の結合した不飽和ニトリルコポリマーを含んでなる。最も好ましくは、コポリマーは、約60〜約70重量%の結合した共役ジエンコポリマーおよび約30〜約40重量%の結合した不飽和ニトリルコポリマーを含んでなる。
【0033】
場合により、コポリマーは、結合した不飽和カルボン酸をさらに含んでなってもよい。適切なこのような結合した不飽和カルボン酸の非限定的例は、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物を含んでなる群から選択されてもよい。結合した不飽和カルボン酸はコポリマーの約1〜約10重量%の量で存在してもよく、この量は、対応する量の共役ジオレフィンを置き換える。
【0034】
さらにニトリルポリマーの製造において、第3のモノマーを使用してもよい。好ましくは第3のモノマーは、不飽和モノ−またはジ−カルボン酸またはその誘導体(例えばエステル、アミドなど)である。本発明は完全または部分的不飽和のニトリルポリマーを用いて使用してもよいが、本加硫物製造で有用な特に好ましいニトリルポリマーの群は、水素化または部分的水素化ニトリルポリマーである(当技術分野でHNBRとしても知られている)。好ましくは、コポリマーは、水素化されており(水素化ニトリル/共役ジエンコポリマー)、約30未満の、より好ましくは約30〜約0.05モル%、なおもより好ましくは約15〜約0.05モル%、なおもより好ましくは約10.0〜約0.05モル%、なおもより好ましくは約7.0〜約0.05モル%、最も好ましくは約5.5〜約0.05モル%の残存炭素−炭素二重結合不飽和を含む。
【0035】
上記ポリマー、好ましくはこれらのエラストマーは、当技術分野でよく知られており、容易に入手でき、または当業者によって製造されてもよい。
【0036】
本ポリマー組成物の第2の構成要素は、少なくとも1つのリチウム塩(ii)、好ましくは少なくとも約9.0、より好ましくは少なくとも約10.0、最も好ましくは約10.0〜約14.0の範囲内にあるpkを有する、好ましくは弱酸のリチウム塩である。
【0037】
上述のリチウム塩の製造に有用な弱酸の非限定的例は、炭酸、C〜C50脂肪酸、エチレンジアミンテトラ(酢酸)、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。好ましくは、弱酸は、炭酸およびC〜C30脂肪酸から選択される。本ポリマー組成物に使用される最も好ましい塩は、炭酸リチウムである。
【0038】
好ましくは、リチウム塩は、0.5〜30重量部の範囲内、好ましくは1〜20重量部の範囲内、最も好ましくは2.5〜9重量部の範囲内の量でポリマー組成物中に存在する。
【0039】
本ポリマー組成物の第3の構成要素は、少なくとも1つの抗酸化剤である。適切な抗酸化剤は、当業者に知られている。好ましい抗酸化剤は、アミン系抗酸化剤(好ましくは単官能性またはオリゴ官能性二級芳香族アミンまたは立体障害性アミン)およびフェノール抗酸化剤(好ましくは単官能性またはオリゴ官能性置換フェノールである)からなる群から選択される。より好ましくは、抗酸化剤は、アルキル化および/またはアリール化ジフェニルアミン、および立体障害性アミンから選択される。最も好ましくは、抗酸化剤は、4,4’−ビス−(1,1−ジメチルベンジル)−ジフェニルアミン(CDPA)、スチレン化ジフェニルアミン(SDPA;4,4’−ビス−(フェニルエチル)−ジフェニルアミン)、4,4’−ビス(オクチル)−ジフェニルアミン(OCD)、および重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)からなる群から選択される。
【0040】
好ましくは、抗酸化剤は、100重量部のポリマーあたり約0.5〜約4重量部の量でポリマー組成物中に存在する。
【0041】
本発明の発明者らにより、本発明のポリマー組成物中、特に本発明の加硫性ポリマー組成物中での、リチウム塩および抗酸化剤の組み合わせの使用によって、水性媒体に対する改良された耐膨潤性と組み合わされた、改良された熱風老化特性を有するポリマー加硫物が得られることが分かった。リチウム塩および抗酸化剤の特に好ましい組み合わせは、炭酸リチウムとCDPA、SDPA、OCDまたはTMQとの組み合わせである。
【0042】
最も好ましくは本発明のポリマー組成物は、ポリマーとして水素化ニトリル/共役ジエンコポリマー、リチウム塩として炭酸リチウム、および抗酸化剤としてCDPA、SDPA、OCDまたはTMQを含んでなる。
【0043】
場合により本ポリマー組成物は、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物をさらに含んでなる。好ましいカルボジイミドは、レノグラム(Rhenogram)(登録商標)P50およびスタバキソール(Stabaxol)(登録商標)Pという商品名で市販されている。この成分は本ポリマー組成物中で、0〜15重量部の範囲内、より好ましくは0〜10重量部の範囲内、さらにより好ましくは0〜2重量部の範囲内の量で使用してもよい。
【0044】
本発明に係るポリマー組成物は、好ましくは充填剤(iv)をさらに含んでなる。充填剤の性質は特に限定されず、適切な充填剤の選択は当業者の権限の範囲内である。適切な充填剤の非限定的例としては、カーボンブラック(例えばFEF、MT、GPF、およびSRF)、粘土、二酸化チタン、シリカ充填剤(不飽和シランありまたはなし)などが挙げられる。充填剤の量は慣用量である。好ましくは、充填剤は、100重量部のポリマーあたり約20〜約130重量部の範囲内の量で存在する。より好ましくは、充填剤は、100重量部のポリマーあたり約20〜約100重量部の範囲内の量で存在する。最も好ましくは、充填剤は、100重量部のポリマーあたり約40〜約80重量部の範囲内の量で存在する。
【0045】
好ましくは、本ポリマー組成物は、加硫システム(加硫系)(iii)をさらに含んでなる。適切な加硫システムは慣用のものであり、その選択は当業者の権限の範囲内である。
【0046】
一実施態様では、本発明で使用される加硫システムは、有機過酸化物(例えば、ジクミル過酸化物、2,2’−ビス(tert−ブチルペルオキシジイソプロピル−ベンゼンなど)を含んでなる。別の実施態様では、本発明で使用される加硫システムは、イオウ、またはブルカシット(Vulkacit)(登録商標)DM/C(二硫化ベンゾチアジル)、ブルカシット(Vulkacit)(登録商標)チウラムMS/C(テトラメチルチウラム一硫化物)、ブルカシット(Vulkacit)(登録商標)チウラム/C(テトラメチルチウラム二硫化物)などの従来のイオウ含有加硫製品、それらの混合物などを含んでなる。好ましくはこのようなイオウ系の加硫システムは、過酸化亜鉛などの過酸化物をさらに含む。
【0047】
さらに別の実施態様では、本発明で使用される加硫システムは、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂およびルイス酸活性化剤を含んでなる。パラ置換フェノールとモル過剰量のホルムアルデヒドとを反応させることで、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を調製してもよいことが当業者に知られており、例えばその内容を参照によって本明細書に援用する米国特許第2,726,224号明細書を参照されたい。ブチルゴムのための加硫システムにおけるこのようなフェノールホルムアルデヒド樹脂の使用については、よく知られている。
【0048】
本発明に係る方法で使用される加硫システムは、好ましくは100重量部のニトリルポリマーあたり少なくとも約3重量部の反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含有する。100重量部のポリマーあたり約8〜約16重量部の反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を使用することが、特に好ましい。100部のニトリルポリマーあたり約16重量部を超える樹脂を用いると組成物全体が樹脂状になる傾向があり、したがってこのような高レベルの樹脂は一般に望ましくない。
【0049】
ルイス酸活性化剤は、塩化第一スズ(SnCl)またはポリ(クロロブタジエン)などの別個の構成要素として存在してもよい。あるいは、ルイス酸活性化剤は、例えばブロモメチル化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(これは、上述した樹脂のメチロール基の水酸基のいくつかを臭素で置換することで調製されうる)などのように、樹脂それ自体の構造内に存在してもよい。ブチルゴムのための加硫システムにおけるこのようなハロゲン化樹脂の使用は、当業者によく知られている。
【0050】
本発明は、加硫システムを含んでなる本発明のポリマー組成物を加硫するステップを含んでなる、ポリマー加硫物を製造する方法にさらに関する。適切なポリマー組成物および加硫システムは上述されている。
【0051】
特定の好ましいポリマー組成物は、
(i)水素化ニトリルポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤、
(iv)少なくとも1つの充填剤、
(v)加硫システム、および
(vi)場合により、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物
を含んでなる。
【0052】
本方法では、ポリマー、リチウム塩、抗酸化剤、場合により前述のようなさらなる構成要素、および加硫システムは、当技術分野で知られている任意の従来の方法で混合されてもよい。例えば、このポリマー組成物は、ゴム用二本ロールミルまたは密閉式ミキサーで混合されてもよい。本方法で使用される好ましい水素化ニトリルコポリマーはかなり硬い傾向があり、ゴム用二本ロールミルで混合した際にバギングする傾向がある。反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の添加は、バギング問題を減らすことで水素化コポリマーの混合を改良する。
【0053】
したがって、このポリマー組成物は従来の方法で混合され、混合中のその温度は、当技術分野で知られているように維持される。
【0054】
本発明に係るポリマー組成物を調製する方法の好ましい実施態様では、ポリマー(i)、少なくとも1つのリチウム塩(ii)、および場合によりその他の配合成分、好ましくは少なくとも1つの充填剤、例えばカーボンブラック(例えばFEF、MT、GPF、およびSRF)、粘土、二酸化チタン、またはシリカ(不飽和シランありまたはなしの)、特にシリカなど、を混合することによって、第1のステップでマスターバッチが調製される。このようなマスターバッチは、マスターバッチ総重量を基準にして、典型的には30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%のポリマー(i)、および70〜30重量%、好ましくは60〜40重量%の少なくとも1つのリチウム塩(ii)を含んでなる。マスターバッチ総重量を基準にして、場合により、特に10重量%までの、シリカなどのその他の配合成分を使用してマスターバッチを調製でき、この量はポリマー(i)の対応する量を置き換える。前の説明に従ったマスターバッチは、例えばラインヘミー・ライナウ社(Rheinchemie Rheinau GmbH)からレノグラン(Rhenogran)(登録商標)LiCO−50として市販されている。次にこのようなマスターバッチをさらなる量のポリマー(i)、少なくとも1つの抗酸化剤(iii)、場合により、さらなる量の充填剤(iv)、および場合により、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物と混合することで、本発明のポリマー組成物を調製する。マスターバッチを調製するのに使用されるポリマー(i)は、引き続いてマスターバッチと混合されて本発明のポリマー組成物を形成するポリマー(i)と同一でもまたは異なってもよい。本発明に係るポリマー組成物を調製するのにこのようなマスターバッチを使用することで、非常に均質で、スポットフリーで、したがって、ポリマー組成物中での有利なリチウム塩の分布が可能になる。
【0055】
本発明に係る本方法では、当技術分野でよく知られている従来の手順を使用してポリマー組成物を加熱して加硫物を形成することが好ましい。好ましくは、ポリマー組成物は、約130℃〜約200℃、好ましくは約140℃〜約190℃、より好ましくは約150℃〜約180℃の範囲内の温度に加熱される。好ましくは、加熱は、約1分〜約15時間、より好ましくは約5分〜約30分間にわたって行われる。
【0056】
その他の従来の配合成分もまた、従来の方法でコポリマーと混合するによって含めてもよい。このようなその他の配合成分は、それらの従来の目的のために使用され、配合成分には、酸化亜鉛および酸化マグネシウムなどの活性化剤;可塑剤;加工助剤;補強剤;充填剤;促進剤、および遅延剤が、当技術分野でよく知られている量で含まれる。
【0057】
さらなる実施態様では、本発明は、上述の方法によって製造されるポリマー加硫物に関する。好ましくは、ポリマー加硫物は、その当初の(元々の)破断点伸びの少なくとも50%を維持する、170℃で少なくとも約504時間の熱風老化時間を有し、且つ改良された水性媒体中膨潤特性を有し、この加硫物は、過酸化物ベースの加硫システムから導かれる。水性媒体については、前に定義した。好ましくは、水性媒体は、水および水/グリコール混合物からなる群から選択される。本発明の意味では、グリコールはまた、グリコールの重縮合物にも関わる。
【0058】
さらに本発明は、当初の破断点伸びの少なくとも50%を維持する、170℃で少なくとも約504時間である熱風老化時間を有し、且つ改良された水性媒体中膨潤特性を有するポリマー加硫物に関し、この加硫物は過酸化物ベースの加硫システムから導かれる。
【0059】
さらなる実施態様では、本発明は、
(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマーの熱風老化性および水性流体抵抗特性を改良する方法であって、前記ポリマーと、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの抗酸化剤とを混合するステップを含んでなる方法に関する。
【0060】
適切なおよび好ましいポリマー、リチウム塩、抗酸化剤、および前記構成要素の適切なおよび好ましい量については上述されている。
【0061】
さらなる実施態様では、本方法は、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物と、ポリマー、リチウム塩、および抗酸化剤とを混合するステップ、並びに/あるいは、少なくとも1つの充填剤と、ポリマー、リチウム塩、および抗酸化剤とを混合するステップ、並びに/あるいは、加硫システムと、ポリマー、リチウム塩、および抗酸化剤とを混合するステップをさらに含む。
【0062】
本発明の実施態様を以下の実施例を参照して例示するが、これらは例示的な目的のために提供され、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではない。特に断りのない限り、実施例中の全ての部は重量部である。
【0063】
[実施例]
以下の例において、使用される材料には、以下のものが含まれる。
テルバン(Therban)(登録商標)A3407:ランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)から市販されている水素化ニトリルブタジエンポリマー
コラックス(Corax)(登録商標)N550/30:エボニックデグサ社(Evonik−Degussa AG)から市販されているカーボンブラック、FEF(高速押出炉)
ジンコキシド・アクティブ(Zinkoxyd Aktiv)(登録商標):活性化剤;ランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)から市販されている沈殿酸化亜鉛の微粒子
マグライト(Maglite)(登録商標)DE:酸化マグネシウム、活性化剤、CPホール(CP Hall)から市販されている
ルボマックス(Luvomaxx)(登録商標)CDPA:レーマン・アンド・ボス(Lehmann&Voss)から市販されている
ダイナマー(Dynamar)(登録商標)RC−5251 Q:ダイネオン(Dyneon)から市販されている炭酸ナトリウム
エデノール(Edenor)(登録商標)C 18 98−100:コグニス社(Cognis GmbH)から市販されている界面活性剤
TAIC(ケトリッツ(Kettlitz)−TAIC):担体としての極微細シリカ上の粉末形態のトリアリルイソシアヌレート(TAIC)調製品、ケトリッツ・ヘミー社(Kettlitz−Chemie GmbH&Co.KG)から市販されている
ペルカドックス(Perkadox)(登録商標)BC−40 B−PD:ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、顆粒、アクゾ・ノーベル社(Akzo Nobel AG)から市販されている
【0064】
例1〜10
10例の各例において、次の手順を使用した。例Q01〜10で使用したポリマー組成物を表1に示す。当業者には明らかなように、例Q01およびQ02のポリマー組成物は特殊添加剤を含有せず、または炭酸リチウムを単独で含有する。例Q07〜10は、炭酸ナトリウム、抗酸化剤、および場合によりカルボジイミドまたはポリカルボジイミドを含有する。したがってこれらの例はあくまで比較の目的で提供され、本発明の範囲外である。
【0065】
ポリマー組成物の構成成分を従来の技術を使用して、バンバリーミキサー内で混合した。このポリマー組成物を180℃で20分間にわたり加硫した。
【0066】
加硫物の破断点引張応力(「引張り強さ」)は、ASTM D412−80に準拠して測定した。加硫物の熱風老化特性は、ASTM−D573−88に準拠して判定した。ASTM−D2240−81に準拠して、タイプAショアーデュロメータを使用して硬度特性を測定した。加硫物の特性を表2に報告する。加硫物の熱風老化特性もまた、表3〜6に示す。
【0067】
表1〜7に報告され、図1に示されるHNBR加硫物の特性は、例1および2の加硫物(従来のMgO添加剤または炭酸リチウムのみ使用)と比較して、例3〜6の加硫物(特殊添加剤使用)の熱風老化性の優位性、および顕著に改良された水性媒体膨潤特性を明らかに示す。表7ならびに図1は、試験条件下での炭酸ナトリウムベースの組み合わせ(参考)と対比した、炭酸リチウムと抗酸化剤、および場合によりカルボジイミドまたはポリカルボジイミドそれぞれとの組み合わせの、耐膨潤性における顕著な改良を示す上で、特に有益である。これは加硫物の多くの従来の用途における、顕著な実用的利点につながる。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、上記の実施例の表1に記載のHNBR加硫物Q01〜Q10調合物の100℃で24時間後における引張り強さ(各2つ組棒グラフの左側)、および破断点伸び(各2つ組棒グラフの右側)の変化を示す。最も左の2つ組棒グラフは実施例Q01を表し、最も右の2つ組棒グラフは実施例Q10を表す。中間の2つ組棒グラフは左から右に実施例Q02〜Q09を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマー、
ii)少なくとも1つのリチウム塩、および
iii)少なくとも1つの抗酸化剤
を含んでなるポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがエラストマーであり、好ましくは、ニトリルポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレン/共役ジエンコポリマー、水素化スチレン/共役ジエンコポリマー、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリブタジエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ニトリルポリマーが、水素化ニトリル/共役ジエンコポリマー、ニトリル/共役ジエンコポリマー、ニトリル/共役ジエン/エチレン性不飽和モノマーターポリマー、および水素化ニトリル/共役ジエン/エチレン性不飽和モノマーターポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記水素化ニトリル/共役ジエンコポリマーが、約30モル%未満の残留炭素−炭素二重結合不飽和を含んでなる、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記リチウム塩が、好ましくは少なくとも約9.0のpkを有する弱酸のリチウム塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記弱酸が炭酸およびC〜C30脂肪酸から選択される、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記リチウム塩が炭酸リチウムである、請求項5または6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記リチウム塩が、100重量部のポリマーあたり約0.5〜約30重量部の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記抗酸化剤が、アミンまたはフェノール抗酸化剤であり、好ましくはアルキル化および/またはアリール化ジフェニルアミン類および立体障害性アミンからなる群から選択され、なおもより好ましくは、重合された、4,4’−ビス−(1,1−ジメチルベンジル)−ジフェニルアミン、4,4’−ビス(フェニルエチル)−ジフェニルアミン、4,4’−ビス(オクチル(−ジフェニルアミン)、および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記抗酸化剤が、100重量部のポリマーあたり約0.5〜約4重量部の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物をさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
充填剤をさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
加硫システムをさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
(i)水素化ニトリルポリマー、
(ii)少なくとも1つのリチウム塩、
(iii)少なくとも1つの抗酸化剤、
(iv)少なくとも1つの充填剤、
(v)加硫システム、および
(vi)場合により、少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物
を含んでなるポリマー組成物。
【請求項15】
請求項13または14に記載のポリマー組成物を加硫するステップを含んでなる、ポリマー加硫物を製造する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得られるポリマー加硫物。
【請求項17】
(ia)ポリマーを基準にして少なくとも30重量%〜100重量%であり、第二級炭素および第三級炭素の少なくとも1つをポリマー主鎖に導入する第1のモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして0〜70重量%の範囲内である少なくとも1つのその他のモノマー
に由来するポリマー主鎖を有するポリマーの熱風老化性および水性流体抵抗特性を改良する方法であって、前記ポリマーと、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの抗酸化剤とを混合するステップを含んでなる方法。
【請求項18】
前記ポリマーが請求項1〜4のいずれか一項中で定義されたポリマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リチウム塩が請求項5〜7のいずれか一項に記載のリチウム塩である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗酸化剤が請求項9中に記載の抗酸化剤である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記リチウム塩が100重量部のポリマーあたり約0.5〜約30重量部の量で存在する、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのカルボジイミド、少なくとも1つのポリカルボジイミド、またはそれらの混合物と、前記ポリマー、前記リチウム塩、および前記抗酸化剤とを混合するステップをさらに含んでなる、請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの充填剤と、前記ポリマー、前記リチウム塩、および前記抗酸化剤とを混合するステップをさらに含んでなる、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
加硫システムと、前記ポリマー、前記リチウム塩、および前記抗酸化剤とを混合するステップをさらに含んでなる、請求項17〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
元の破断点伸びの少なくとも50%を維持する170℃で少なくとも約504時間の熱風老化時間を有し、且つ改良された水性媒体中膨潤特性をもち、過酸化物ベースの加硫システムに由来する、ポリマー加硫物。
【請求項26】
元の破断点伸びの少なくとも50%を維持する170℃で少なくとも約504時間である熱風老化時間を有し、且つ水性媒体中、好ましくは水および水/グリコール混合物からなる群から選択される水性媒体中における改良された膨潤特性をもち、過酸化物ベースの加硫システムに由来する、請求項25に記載のポリマー加硫物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−132923(P2009−132923A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305215(P2008−305215)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】