説明

改良された性能を有する膜

本発明は、中分子量物質、例えば分子量20ないし40kDaの炎症性メディエーターの除去を増大できる改良された篩い分け特性を有する、例えば血液の血液透析、血液透析濾過および血液濾過に好適な選択透過性非対称膜に関する。これらの膜は、ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンとを含み、ヒアルロン酸または2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性モノマーとのコポリマーで被覆されている。本発明はまた、前記膜の調製方法、前記膜を備えるデバイス、血液の血液透析、血液透析濾過または血液濾過ならびにバイオ処理、血漿分画およびタンパク質溶液の調製における前記膜の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
技術分野
本発明は、中分子量物質、例えば分子量20ないし40kDaの炎症性メディエーターの除去を増大できる改良された性能を有する、例えば血液の血液透析、血液透析濾過および血液濾過に好適な選択透過性非対称膜に関する。これらの膜は、ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンとを含み、ヒアルロン酸またはホスホリルコリン基含有コポリマーで改質されている。本発明はまた、前記膜の調製方法、前記膜を備えるデバイス、血液の血液透析、血液透析濾過または血液濾過ならびにバイオ処理、血漿分画およびタンパク質溶液の調製における前記膜の使用に関する。
【0002】
発明の背景
EP0305787A1は、疎水性の第1のポリマー、例えばポリアミドと、親水性の第2のポリマー、例えばポリビニルピロリドンと、好適な添加剤とからなる、血液の血液透析、血液透析濾過および血液濾過に好適な選択透過性非対称膜を開示している。これらの膜は、篩い分け特性に関与する、緻密でかなり薄いスキンの形態の第1の層と、拡散透過率が高く、前記第1の層の支持材の働きをする、スポンジ構造の形態の第2の層と、膜に機械的安定性を与える、フィンガー構造の形態の第3の層とを備える3層構造を有する。
【0003】
WO2004/056459A1は、少なくとも1種の疎水性ポリマー、例えばポリエーテルスルホンと、少なくとも1種の親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンとを含む、血液透析に好適な選択透過性非対称膜を開示している。中空糸膜の外表面は0.5ないし3μmの範囲の細孔を有し、外表面の細孔の数は10,000ないし150,000細孔/mm2の範囲である。
【0004】
これらの膜は従来から、血液透析における非常に良好な性能と優れた生体適合性とを示しているが、中分子量物質、例えば分子量20ないし40kDaの炎症性メディエーターの除去を増大させるように性能をさらに改良することが望まれている。ところで、ヒアルロン酸および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性モノマーとのコポリマーからなる群から選択される特定の化合物を用いて前記表面を改質することによって、改良された性能を有する膜が得られることを発見した。生体適合性を改良するための、ヒアルロン酸またはホスホリルコリン類似体による種々の型の膜の改質は報告されている。
【0005】
KR2005/094968は、ヒアルロン酸またはその誘導体を0.01ないし5重量%含む内表面を有する中空糸膜を開示している。中空糸膜の製造に使用される内部凝固溶液は、ヒアルロン酸またはその誘導体を0.1ないし20重量%含む。この膜に好適なポリマーのリストには、特にポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリアクリロニトリル(PAN)が挙げられている。この参照文献によれば、膜は血液凝固を防ぐ。
【0006】
KR2005/078748は、ヒアルロン酸またはその誘導体を0.01ないし2重量%含む中空糸膜を開示している。中空糸膜の製造に使用される紡糸液は、ヒアルロン酸またはその誘導体を0.01ないし5重量%含む。この膜に好適なポリマーのリストには、特にポリスルホン、PESおよびPANが挙げられている。この参照文献によれば、膜は一貫した血液適合性を示す。
【0007】
WO2008/041183は、シェルとシェル内面上の被膜とを備える静電紡糸マイクロチューブを開示している。このシェルに好適なポリマーのリストには、特にポリアミド、PVP、PANが挙げられている。この被膜に好適なポリマーのリストには、ヒアルロン酸が挙げられている。
【0008】
特開2008−93154は、中空糸を備える、薬物の持続放出のための医療機器を開示している。中空糸の微細孔には、膜のカットオフ分子量より大きい分子量を有する水溶性ポリマーが充填されている。この膜に好適なポリマーのリストには、特にポリスルホン、PES、PANおよびポリアミドが挙げられている。微細孔の充填に好ましい水溶性ポリマーのなかでは、ヒアルロン酸が挙げられている。
【0009】
特開2003−320229は、分子内に両性イオンを有するビニル重合性モノマーと別のビニル重合性モノマーとのコポリマーを内表面に備える、主にポリスルホンから作製された中空糸膜を開示している。ホスホベタイン、スルホベタインおよびカルボキシベタインが挙げられており、スルホベタインが好ましい。この膜に好適なポリマーのリストには、ポリスルホン、PES、PAESおよびポリアリレートポリエーテルスルホンが挙げられている。分子量5,000Da以下のポリベタインが、0.001ないし10重量%、好ましくは0.01ないし5重量%の濃度でボア液体に溶解される。この参照文献によれば、この膜は、低いタンパク質吸収および良好な生体適合性を示す。
【0010】
US2004/0045897A(WO02/09857)は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と別のビニル重合性モノマーとのコポリマーを膜表面に有する中空糸膜を開示している。これらのコモノマーは、ビニルピロリドン、スチレンおよび(メタ)アクリレート誘導体から選択される。ポリベタインは、0.001ないし10重量%、好ましくは0.01ないし5重量%の濃度でボア液体または凝固浴に溶解される。この膜に好適なポリマーのリストには、ポリスルホン、PES、PAES、ポリアリレートポリエーテルスルホン、ポリアミドおよびPANが挙げられている。この参照文献によれば、この膜は血小板をごくわずかに活性化させる。
【0011】
Biomaterials 22/3(2001)243−251は、ポリスルホンとMPC(それぞれ、7および15重量%)のポリマーブレンドを開示している。この参照文献は、MPCの添加によって、20kDa未満の分子量を有する溶質の膜透過性は増加したが、低分子量タンパク質(分子量12kDa)の透過性は変化しなかったことを報告している。
【0012】
J.Membr.Sci.249(2005)133−141は、アクリル酸ブチルとMPCのコポリマーによる、セルロースアセテート中空糸膜の改質を開示している。このポリマーは、内部凝固溶液に使用されている。
【0013】
J.Membr.Sci.305(2007)279は、ホスホリルコリン基によるEVOH中空糸膜の改質を開示している。
【0014】
しかし、これらの文献中には、未改質の膜と比較して膜の選択性が増大することについては何ら言及されていない。透水率の値も示されていない。
【0015】
発明の概要
本発明の目的は、例えば血液の血液透析、血液透析濾過および血液濾過に好適な特定の選択透過性非対称膜の性能を改良することによって、中分子量物質、例えば分子量20ないし40kDaの炎症性メディエーターの除去を増大させることである。
【0016】
本発明の一態様によれば、改良された性能を有する選択透過性非対称膜が提供される。この膜は、ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンと任意選択でポリアミドとを含み、ヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤によって改質されている。
【0017】
本発明の別の態様によれば、改良された性能を有する選択透過性非対称膜が提供される。水溶液中のオボアルブミン(MW=44kDa)に関する膜の篩係数と、水溶液中のアルブミン(MW=66kDa)に関する膜の篩係数との差は、少なくとも50%である。
【0018】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の選択透過性非対称膜の調製方法に関する。この方法の一実施形態において、紡糸プロセスにおいて使用される中央流体(ボア液体とも称する)に、ヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤を添加することによって、ヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤によって内腔表面が改質された中空糸膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例2、比較例1および比較例2の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図2】図2は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例4および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図3】図3は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例5および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図4】図4は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例6および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図5】図5は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例8および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図6】図6は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例9および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【図7】図7は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、比較例1ないし4(上部)および比較例5ないし8(下部)の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0020】
詳細な説明
本発明の選択透過性非対称膜は、少なくとも1種の疎水性ポリマーと少なくとも1種の親水性ポリマーとを基材とする。前記疎水性ポリマーは、任意選択でポリアミドと組み合わされるポリエーテルスルホン(PES)である。前記少なくとも1種の親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。本発明の膜の調製には、好ましくは100kDa未満の分子量を有する低分子量成分と100kDa以上の分子量を有する高分子量成分とからなるポリビニルピロリドンを使用する。
【0021】
一実施形態において、本発明の膜は、ポリエーテルスルホン80ないし99重量%とポリビニルピロリドン(PVP)1ないし20重量%とを含む。
【0022】
好適なポリエーテルスルホンの一例は、一般式−[O-Ph−SO2−Ph−]n−と、約60,000ないし65,000Da、好ましくは63,000ないし65,000Daの重量平均分子量と、約1.5ないし1.8のMw/Mnとを有するポリマーである。
【0023】
一実施形態において、PVPは、高分子成分(100kDa以上)と低分子成分(100kDa未満)とからなり、PVPは、膜中のPVPの総重量に基づき10ないし45重量%の高分子量成分と、膜中のPVPの総重量に基づき55ないし90重量%の低分子量成分とからなる。
【0024】
一実施形態において、本発明の膜は、極めて特殊な4層構造を有する中空糸膜である。
【0025】
中空糸膜の4層構造の内層、即ち、血液接触層および内表面は、好ましい一実施形態においては1μm未満の厚さとナノスケール範囲の細孔径を有する、緻密でかなり薄い層の形態の分離層である。高い選択性を達成するために、関与する細孔径を有する細孔チャンネルは短く、即ち、0.1μm未満である。細孔チャンネル径は、大きさの変動が小さい。規定された細孔構造は、ポリマーの組成、中央流体中の沈殿剤の組成および状態の選択と、紡糸ノズルから出ていく繊維の周囲環境の状態および組成とによって達成される。
【0026】
中空糸膜の次の層は、スポンジ構造の形態を取り、本発明の好ましい実施形態では約1ないし15μmの厚さを有する第2の層であり、前記第1の層の支持材の働きをする。
【0027】
次に、フィンガー構造の形態を取る第3の層がある。これは、一方では、機械的安定性を提供し、他方では、大きいボイド容量のために、膜を通る分子の輸送抵抗が極めて低い。このプロセスにおいて、ボイドに水が充填され、この水が、ボイド容量がより小さいスポンジ充填構造を有するマトリックスよりも低い拡散抵抗および対流抵抗を与える。したがって、第3の層は、膜に機械的安定性を与え、本発明の好ましい実施形態においては、20ないし60μmの厚さを有する。
【0028】
本発明のこの好ましい実施形態の第4の層は、規定された表面粗さを有する均一な開放細孔構造を特徴とする外層である。細孔の開口径は、0.5ないし3μmの範囲であり、さらに、外面上の細孔の数は、10,000ないし150,000個/mm2、好ましくは18,000ないし100,000個/mm2、最も好ましくは20,000ないし100,000個/mm2の範囲である。好ましい一実施形態において、この第4の層は約1ないし10μmの厚さを有する。
【0029】
この第4の層の設計は、高い選択性を提供する。これは、大きさが近い分子を分離する可能性、例えば保持されるべきアルブミンを、β2−ミクログロブリンとD因子とから分離する可能性が高いことを意味する。
【0030】
本発明による膜は、前述のように調製と膜特性とが特殊であるため、対流透過率Lpが高いことと、例えば尿素または塩化物(PCl)などの小分子の拡散透過率が高いこととを特に特徴とする。Lpは、50×10-4ないし600×10-4cm/bar・s、好ましくは60ないし300×10-4cm/bar・sの範囲である。塩化物透過率PClは、13×10-4ないし23×10-4cm/s、例えば19×10-4ないし22×10-4cm/sまたは13×10-4ないし16×10-4cm/sの範囲である。拡散透過率は、E.Klein、F.Holland、A.Lebeouf、A.Donnaud、J.K.Smith、「Transport and Mechanical Properties of Hemodialysis Hollow Fibers」、Journal of Membrane Science 1(1976)371ないし396頁、特に375ないし379頁に従って確定できる。
【0031】
膜は、高い選択性、即ち、中分子の高い除去率をさらに特徴とする。一実施形態において、水溶液中のオボアルブミン(MW=44kDa)に関する本発明の膜の篩係数と、水溶液中のアルブミン(MW=66kDa)に関する膜の篩係数との差は、少なくとも50%、例えば少なくとも53%、または少なくとも56%、またはさらには少なくとも59%である。篩係数は、温度37±1℃に保持された、pH7.2のPBS緩衝液中のタンパク質溶液を用いて確定する。
【0032】
膜は、
a)ポリエーテルスルホンと、任意選択でポリアミドと、少なくとも1種のポリビニルピロリドンとを、少なくとも1種の溶媒中に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程と、
b)前記ポリマー溶液を、2つの同心開口部を有するノズルの外側リングスリットを通して押出す工程と、
c)中央流体を、前記ノズルの内側開口部を通して押出す工程と、次いで
d)得られた膜を洗浄し、任意選択で前記膜を乾燥し、前記膜を例えば、水蒸気、エチレンオキシドまたは放射線によって滅菌する工程と
を備え、前記中央流体がヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤を含む、溶媒相反転紡糸法によって調製できる。一実施形態において、中央流体中の添加剤の割合は、中央流体の総量の0.02ないし2重量%、例えば0.05ないし0.5重量%または0.05ないし0.25重量%の範囲である。
【0033】
一実施形態において、本発明による膜を調製するための紡糸溶液は、疎水性ポリマーとしてのポリエーテルスルホン12ないし16重量%と、PVP 3ないし2重量%、例えば5ないし8重量%とを含み、前記PVPは、低分子(100kDa未満)PVP成分3ないし8重量%、例えば4ないし6重量%と、高分子(100kDa以上)PVP成分0ないし4重量%、例えば1ないし3重量%とからなる。一実施形態において、紡糸溶液中に含まれる総PVPは、高分子量(100kDa以上)成分22ないし34重量%、特に25ないし30重量%と、低分子量(100kDa未満)成分66ないし78重量%、特に70ないし75重量%とからなる。高分子量PVPおよび低分子量PVPの例はそれぞれ、例えばPVP K85/K90およびPVP K30である。
【0034】
特定の実施形態において、本発明の膜の調製方法に使用するポリマー溶液は、溶媒66ないし86重量%と、好適な添加剤0ないし10重量%、例えば0ないし5重量%とをさらに含む。好適な添加剤は、例えば水、グリセロールおよび/または他のアルコール類からなる群から選ばれる。水が特に好ましく、紡糸溶液中に0ないし8重量%、好ましくは2ないし6重量%の量で存在する。特定の実施形態において、この方法に使用する溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチロラクトンおよび前記溶媒の混合物からなる群から選ばれる。NMPが特に好ましい。紡糸溶液は、均一に脱気し、濾過しなければならない。
【0035】
本発明による膜の調製に使用する中央流体またはボア液体は、前記溶媒の少なくとも1種と、水、グリセロールおよび他のアルコール類からなる群から選ばれる沈殿剤とを含む。さらに、中央流体は、ヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤を含む。本発明の一実施形態において、中央流体中の添加剤の量は、中央流体の総重量に基づき、0.02ないし2重量%、例えば0.05ないし0.5重量%または0.05ないし0.25重量%である。
【0036】
本発明の一実施形態において、添加剤はヒアルロン酸である。使用するヒアルロン酸は、好ましくは1.1MDa以上の分子量を有する。好適な型のヒアルロン酸は、Novozymes Biopolymer A/Sから商品名HyaCare(登録商標)として入手できる。HyaCare(登録商標)は、枯草菌(Bacillus subtilis)を用いて発酵法によって得られ、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンとの交互単位から構成される。
【0037】
一般に使用されている2つの他のヒアルロン酸製造方法は、以下の通りである:
1.鶏冠からの抽出。この方法は、6MDa未満のMWを有する生成物を生じる。この方法は通常、収率が比較的低く、バッチ間再現性がそれほど高くない。
【0038】
2.ストレプトコッカス属の発酵。この方法は、3MDa未満のMWを有する生成物を生じる。この方法の欠点は、使用される細菌が病原性であることである。
【0039】
これら2つの製造方法と比較して、枯草菌を用いる発酵は、環境に優しく、非病原性微生物を使用し、有機溶媒を使用せず、内毒素または外毒素のいずれも生じない点で、有利である。生成物は、高いバッチ間再現性と比較的短い溶解時間を示す。
【0040】
本発明の別の実施形態において、添加剤は、ホスホリルコリン基含有ポリマーを含む。一実施形態において、ポリマーは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマーと、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性モノマーとのコポリマーとを含む。好適なビニル共重合性モノマーの例は、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、安息香酸ビニル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび(トリアルコキシシリル)アルキル(メタ)アクリレートである。具体的な化合物の例は、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(3−トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートである。好適なコポリマーは、Biocompatibles International plc(Farnham、Surrey、UK)または日本油脂(NOF)株式会社(Nippon Oil Fats Corp.)(東京、日本)から入手できる。特定の一実施形態において、コポリマーは、例えば約76/18/5の比率のポリ((2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウムエチルホスフェート分子内塩)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート))である。別の特定の実施形態において、コポリマーは、例えば約23/47/5/25の比率のポリ((2−(メタクリロイルオキシエチル)−2’−トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート))である。別の実施形態において、ポリマーは、ホスホリルコリン基を含むジアミンモノマーおよび任意選択で他のジアミンモノマーと、ジカルボン酸またはその誘導体との重縮合生成物を含む。例は、Polym.J.、Vol.39(2007)712ないし721(参照により本明細書中に組み入れられている)に記載されているような、2−(3,5−ジアミノフェニルカルボニルオキシ)エチルホスホリルコリンと、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタンと、塩化イソフタロイルとのコポリマーである。
【0041】
一実施形態において、中央流体は、沈殿剤44ないし69重量%と溶媒29ないし54重量%とを含む。特定の実施形態において、中央流体は、水49ないし61重量%とNMP37ないし49重量%とを含む。中央流体はまた、脱気と濾過とをしなければならない。
【0042】
DIN EN ISO 1628−1に従って22℃において測定される、ポリマー溶液の粘度は、通常3,000ないし15,000mPa・s、例えば4,000ないし8,000mPa・s、またはさらには4,900ないし5,900mPa・sの範囲である。
【0043】
本発明の膜の調製方法の一実施形態において、紡糸口金の温度は、50ないし70℃、例えば55ないし61℃であり、紡糸軸の温度は、25ないし65℃、特に50ないし60℃である。ノズルの開口部と沈殿浴との間隔は、30ないし110cm、特に45ないし55cmである。沈殿浴は、10ないし40℃、例えば20ないし30℃の温度を有する。一実施形態において、紡糸速度は、15ないし100m/分、特に25ないし45m/分の範囲である。
【0044】
紡糸ダイの外側スリット開口部を通って出てくるポリマー溶液は、沈殿繊維の外側が、水分含量に対して0ないし10重量%の含量で溶媒を含む、湿った水蒸気/空気混合物に曝露される。
【0045】
湿った水蒸気/空気混合物の温度は、少なくとも15℃、好ましくは少なくとも30℃であって、75℃以下であるが、好ましくは62℃以下である。さらに、湿った水蒸気/空気混合物の相対湿度は60ないし100%である。
【0046】
本方法の別の実施形態において、湿った水蒸気/空気混合物は、水分含量に対して0ないし5重量%の量の溶媒を含む。好ましくは、湿った水蒸気/空気混合物は、水分含量に対して0ないし3重量%の量の溶媒を含む。温度制御された水蒸気雰囲気中の溶媒の効果は、繊維の沈殿速度を制御することである。使用溶媒が少ないほど、外表面は緻密な表面を獲得し、使用溶媒が多いほど、外表面は目の粗い構造を有する。沈殿膜周囲の、温度制御された水蒸気雰囲気内の溶媒量を制御することによって、膜の外表面の細孔の量と大きさとを修正し、制御することができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、沈殿浴は、水85ないし100重量%と、溶媒例えば、NMP 0ないし15重量%とを含む。別の実施形態において、沈殿浴は、水90ないし100重量%とNMP 0ないし10重量%とを含む。
【0048】
一実施形態において、膜は次に水中で洗浄して、廃棄物成分を除去する。任意選択で、膜はその後に、乾燥前に、塩溶液、例えば等張生理食塩水で処理する。次いで、膜を150ないし280℃、好ましくは180ないし260℃の温度で乾燥させる。このような乾燥は、水の適正な蒸発と規定された細孔収縮率をもたらす。
【0049】
膜は、非連続的にまたは連続的に乾燥させることができる。後者は、「オンライン乾燥」とも称される。オンライン乾燥法において、膜は乾燥機に連続供給される。乾燥は、当業界で知られている任意の方法によって実施できる。例えば、膜は熱対流炉中で、または例えばノズルからの高温空気の流れによって、高温表面との接触によって、または例えば赤外線もしくはマイクロ波の照射によって、乾燥させることができる。
【0050】
最終処理は、50ないし95℃、好ましくは80ないし90℃の温度の水中での膜のすすぎと、それに続く、30ないし65℃、好ましくは55ないし65℃の温度での乾燥とからなる。別法として、膜束の調製後に膜を乾燥させることもできる。
【0051】
一実施形態において、膜は121℃超の温度において少なくとも21分間蒸気滅菌する。
【0052】
一実施形態において、本発明の中空糸膜は、180ないし250μm、例えば189ないし194μmの内径を有する。中空糸の壁厚は、通常10ないし50μm、例えば34ないし36μmの範囲である。
【0053】
本発明の別の態様は、本発明の膜を含む拡散および/または濾過デバイスである。このようなデバイスの例は、透析器、血液濾過器および限外濾過器である。このようなデバイスは一般に、管状部分を備えるケーシングからなり、管状部分はその口をキャップするエンドキャップを有する。ケーシング中における中空糸膜束の配列は通常、繊維キャビティによって形成される第1の流通空間と、外側の、膜を取り囲む第2の流通空間との間にシールが形成されるように行う。このようなデバイスの例は、EP0844015A2、EP0305687A1およびWO01/60477A2に開示されており、これらの参照文献は参照により本明細書中に組み入れられている。
【0054】
本発明の別の態様は、血液の血液透析、血液透析濾過または血液濾過への本発明の膜の使用である。本発明の膜は、このような目的で従来の膜の代わりに同様な方法で使用できる。当業者ならば、必要な操作方法を容易に導き出せる。
【0055】
本発明のさらに別の態様は、バイオ処理、血漿分画およびタンパク質溶液の調製への本発明の膜の使用である。本発明の膜は、この目的で常用される膜の代わりに、この目的で同様にして使用できる。当業者ならば、必要な操作方法を容易に導き出せる。
【0056】
前記特徴および以下に記載する特徴は、明記された組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しなければ、他の組み合わせでまたは単独で使用できることがわかるであろう。
【0057】
次に、本発明を以下の例においてより詳細に説明する。例は、本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明の特定の実施形態の単なる実例である。
【0058】
分析方法
i)膜束の調製
[A]ハンドバンドルの調製:
その後の性能試験のための繊維束の調製には、紡糸プロセス後の膜束の調製が必要である。第1のプロセス工程は、23cmの規定長への繊維束の切断である。次のプロセス工程は、繊維端を溶融させることからなる。光学制御が、全繊維の十分な溶融を確実にする。次に、繊維束の端部をポッティングキャップ中に移す。ポッティングキャップを機械的に固定し、ポッティングチューブをポッティングキャップ上に被せる。次いで、ポリウレタンを用いて繊維をポッティングする。ポリウレタンを硬化させた後、ポッティングされた膜束を規定長に切断し、乾燥貯蔵してから、種々の性能試験に使用する。
【0059】
[B]ミニモジュールの調製:
ミニモジュール[=ハウジング内の繊維束]を、同様にして調製する。ミニモジュールは、繊維の保護を確実にし、残留水を繊維上に保ちながら蒸気滅菌に使用される。ミニモジュールの製造は、以下の点で異なる:
→必要な繊維数を、360cm2の有効表面Aについて、式(1)
【数1】

【0060】
[式中、
i=繊維の内径(cm)、
n=繊維の量、
l=有効繊維長(cm)]
に従って算出する。
【0061】
→繊維束を、20cmの規定長に切断する。
【0062】
→繊維束を、溶融プロセスの前にハウジング内に移す。
【0063】
→ポッティングプロセスの前に、ミニモジュールを真空乾燥オーブン中に終夜入れる。
【0064】
[C]フィルターの調製:
フィルター(=透析器)は、有効表面積が1.4m2の繊維を8,000ないし10,000本含む。フィルターは、透析流体のための2つのコネクターと、それぞれ1個の中央血液コネクターを有する、両端に適用されたキャップとを有する円筒形ハウジングを特徴とする。製造プロセス(巻き付け後)は、以下の主要工程に分けられる:
→切断された束(長さ約30cm)を、特殊なバンドルクローを備えたハウジング内に移し;
→束の両端を、閉鎖プロセスによって閉鎖し;
→ポリウレタン(PUR)を用いて、繊維をハウジング中にポッティングし;
→端部を切断して、繊維を開放し;
→超音波溶着を用いて、キャップを血液コネクターに溶着し;
→最終処理が、すすぎと、完全性試験と、最終乾燥とを含み;
→フィルターを滅菌バッグ中に詰め、蒸気滅菌する。
【0065】
ii)ハンドバンドルおよびミニモジュールの透水率(Lp)
片側がシールされている膜束に、加圧下で規定容量の水を押し通し、所要時間を測定することによって、膜束の透水率を確定する。透水率は、確定された時間、有効膜表面積、適用された圧力、および膜に押し通された水の容量から算出できる。繊維数、繊維長および繊維内径から、有効膜表面積を算出する。膜束は、Lp試験を行う30分前に湿らせる必要がある。このために、膜束を、超純水500mLを含むボックス中に入れる。30分後、膜束を試験系に移す。試験系は、37℃に保持された水浴と、膜束を取り付け可能なデバイスとからなる。水浴の充填高さは、膜束が指定デバイス中の水面下に確実に配置される高さでなければならない。膜漏れが誤った試験結果を生じないように、膜束および試験系の完全性試験を予め行う必要がある。完全性試験は、片側が閉鎖されている膜束に、空気を押し通すことによって行う。気泡は、膜束または試験デバイスの漏れを示す。漏れが、試験デバイス中への膜束の正しくない取り付けと関連する可能性があるか、または実際の膜漏れが存在するかを確認しなければならない。膜漏れが検出される場合には、膜束は廃棄しなければならない。適用圧力が過度に高いことによる漏れが透水率の測定中に起こり得ないことを確実にするために、完全性試験において適用する圧力は、透水率確定中の適用圧力と少なくとも同じ値でなければならない。
【0066】
iii)フィルターの透水率(Lp)
規定容量の水を、膜を通して流し、膜間圧力差を測定することによって、フィルターの透水率を確定する。測定開始前に、フィルターは試験流体で完全に満たさなければならない(膜の内側、およびハウジングと膜との間のコンパートメント)。そっとたたくことによって、空気を除去する。試験液体である、純水中0.9%塩化ナトリウム溶液を38℃に加熱し、次いで、血液出口コネクターと透析接続部の注入口とを閉鎖しながら、フィルターの血液注入口を通してポンプ輸送する。測定には5分を要し、圧力の平均値を算出する。透水率の算出は、ii)に記載されたようにして行う。
【0067】
iv)ハンドバンドルについての拡散実験
等張塩化物溶液(0.9重量%)と、透析流体中で希釈されたビタミンB12(100mg/l)と、PBS緩衝液中で希釈されたアルブミン(100mg/l)とを用いる拡散実験を実施して、膜の拡散特性を確定する。ハンドバンドルを測定セル中に入れる。測定セルは、中空糸の内側における特定の溶液の通過を可能にする。追加的に、測定セルに水を完全に充填し、蒸留水の高いクロスフローを設定して、中空糸の内側から外側へと膜横断面を通過する特定のイオンを取り除く。圧力比を正しく調整することによって、拡散特性と対流特性との組み合わせでなく、膜の拡散特性のみが確定されるように(中空糸内側と中空糸周囲との間に特定イオンの最大濃度勾配を達成することによって)、ゼロ濾過を目指す。最初に、プールからのサンプルを採取し、10分後および20分後に、残余分のサンプルを採取する。次に、塩化物サンプルを硝酸銀溶液で滴定して、塩化物濃度を確定する。ビタミンB12サンプルを測光法で分析し、アルブミンサンプルを、Auto−analyzer(Mira Plus、ABX Diagnostics、Cobas、Roche)を用いて分析する。確定された濃度、有効膜表面積Aおよび流動条件から、下記式(2)
【数2】

【0068】
[式中、
P=拡散透過率(cm/s)、
c=濃度(mmol)、
A=有効膜表面(cm2)、
添え字:
x=物質(ここでは、それぞれ塩化物、ビタミンB12またはアルブミン)、
A=出発濃度(供給材料)、
D=透析物、
R=残余分、
B=血流量(ml/分)]
に従って、塩化物、ビタミンB12またはアルブミンの透過率Pをそれぞれ算出できる。
【0069】
v)ハンドバンドル、ミニモジュールおよびフィルターの、タンパク質に対する選択性/篩係数(SC)
篩係数の測定によって、膜の選択性を確定する。このために、タンパク質(ここでは、ウマの心臓からのミオグロビン、MW=17.5kDa;オボアルブミン、MW=44kDa;およびアルブミン、MW=66kDa)を溶解させる媒体が、非常に重要である。この試験手順に使用する媒体は、pH7.2のPBS緩衝液である。一般に、特定の分子の篩係数は、以下のようにして得られる:特定のタンパク質溶液を37.1℃±1℃の温度に保持し、規定条件(血流量(QB)、TMPおよび濾過速度(UF))下で試験デバイス(ハンドバンドル、ミニモジュールまたはフィルター)を通してポンプ輸送する。次いで、供給材料(in)、残余分(r)および濾液(f)中のタンパク質の濃度を確定する。次に、下記式(3):
【数3】

【0070】
に従って、篩係数(SC)を算出できる。
【0071】
濾液中のタンパク質の濃度がゼロである場合には、0%の篩係数が得られる。濾液中のタンパク質の濃度が供給材料および残余分中のタンパク質の濃度と等しい場合には、100%の篩係数が得られる。
【0072】
[A]ハンドバンドルおよびミニモジュールに関する水溶液中での篩係数
別個の溶液を用いる2つの異なる実験設定を使用して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中における篩係数実験を行う。最初に、ミオグロビンまたはオボアルブミンの篩係数を確定する。次に、アルブミンの篩係数を確定する。
【0073】
PBS緩衝液中のミオグロビンまたはオボアルブミンの濃度はそれぞれ100mg/lとする。この水溶液の使用期限は4ないし8週間である。この溶液は、冷蔵庫で貯蔵しなければならない。篩係数実験の前に、Lp試験を前述のようにして行う。ミオグロビンまたはオボアルブミンの篩係数実験はそれぞれ、以下に規定される試験条件を用いて単一パスで実施する:
固有流量(Jv(cm/s))および壁剪断速度(γ(s-1))を一定とし、血流量(QB)および濾過速度(UF)を、それぞれ式(4)および(5):
【数4】

【数5】

【0074】
[式中、
n=繊維量、
i=繊維の内径(cm)、
γ=剪断速度(s-1)、
A=有効膜表面(cm2
であり、Aは式(1)に従って算出される]
を使用して算出する。
【0075】
ハンドバンドルまたはミニモジュールを試験する場合、剪断速度を500s-1に設定し、固有流量を0.38*10-04cm/sと規定する。
【0076】
第1のサンプル(プール、残余物および濾液)を15分後に採取し、2回目は60分後に採取する。最後に、試験バンドルをPBS緩衝液で数分間すすいでから、試験を止める。
【0077】
続いて、アルブミンのSC試験を行う。アルブミン60gをPBS緩衝液中に溶解させ、アルブミン溶液をマグネチックバースターラーによってゆっくり撹拌し、再循環させながら、実験を実施する。試験の設定において、QBは式(4)に従って算出し、400mmHgの一定TMPを設定し、UFおよび残余分の流れは、試験条件および膜透過性の結果である。15分後、流れを単一パスに切り替え、サンプル(プール、残余物および濾液)を採取する。SC試験後に、試験バンドルをPBS緩衝液でもう一度すすぎ、それを使用して第2のLp試験を行うことによって、タンパク質に対する膜の吸着容量の指標を得る。
【0078】
[B]フィルターに関する水溶液中での篩係数
[A]とは異なり、フィルターに関するミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数の測定は、同じ試験設定を用いるが、別個の溶液を用いて行う。溶液は再循環させる。ミオグロビンおよびオボアルブミンの濃度は、それぞれ125mg/l、アルブミンの濃度は250mg/lとする。固有流量(Jv(cm/s))および壁剪断速度(γ(s-1))を一定とし、血流量(QB)および濾過速度(UF)をそれぞれ、式(6)および(5)
【数6】

【0079】
[式中、γ=461s-1およびJV=0.704*10-04cm/s]
を使用して算出する。
【0080】
両物質の採取サンプルは、第2のサンプルを30分後(60分後ではなく)に採取する点で異なる以外は、[A]の場合と同じである。
【0081】
iv)フィルターに関する尿素/ビタミンB12のクリアランス
フィルターに関する尿素(MW=60Da)およびビタミンB12(MW=1,355Da)のクリアランスをそれぞれ、37℃±1℃に加熱された透析溶液(脱気水中で希釈された透析濃縮物)を用いて透析機で測定する。特定の物質を含む透析溶液が、血液側を通してポンプ輸送され、純粋な透析液が透析物コンパートメント中に流入し、血液側から透析物側への物質移動が確定される。いずれの流れも、単一パスで操作する。尿素の出発濃度は1g/lに設定し、ビタミンB12の出発濃度は50mg/lに設定し、同一透析液で希釈する。以下のパラメーターを設定する:
B=400ml/分
D=500ml/分
UF=0ml/分。
【0082】
第1のサンプルを10分後に採取し、QB,in、QB,outおよびQD,outからのサンプルを(物質収支のプルーフィングのため)を採取する。
【0083】
クリアランスClは、式(7):
【数7】

【0084】
に従って算出できる。
【0085】
vii)フィルターに関するUF血漿/タンパク質の損失
この性能試験は、フィルターに関する、一定血流量の血漿のタンパク質損失および濾過速度を確定する。血漿のタンパク質濃度を60g/l±2g/lに設定する。血漿は、1.59±0.05mm2/sの粘度(毛細管粘度計によって確定)および30±1%のヘマトクリットを有する必要があり、37℃±1℃に加熱する。試験の開始前に、フィルターを等張生理食塩水ですすぐ。次いで、血漿を血液側に通して再循環させ、測定が始まる。10分以内に、QB=300ml/分およびTMP=300mmHgに設定する。25分後に濾液のサンプルを採取し、UFを容量分析で確定する。次に、タンパク質損失に関連する濾液のタンパク質濃度Pctを分析する。
【0086】

ポリマー溶液の動的粘度ηを、毛細管粘度計(ViscoSystem(登録商標)AVS370、Schott−Geraete GmbH、Mainz、Germany)を使用して、温度22℃において、DIN ISO1628−1に従って確定した。
【0087】
例1
ポリマー溶液は、ポリエーテルスルホン(Ultrason(登録商標)6020、BASF Aktiengesellschaft)およびポリビニルピロリドン(K30およびK85、BASF Aktiengesellschaft)と蒸留水とをN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。ポリマー紡糸溶液中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:PES−PVP K85−PVP K30−H2O−NMP=14−2−5−3−76。ポリマー溶液の粘度は、5,900mPa×sであった。
【0088】
溶媒へのポリマー材料の添加順序は、温度および撹拌時間と同様に重要である。続いて、膜の均一な形態および性能に、濁りも気泡もない透明な溶液が必要である。ポリマー溶液中の粒子または気泡は、凝固プロセスを乱し、膜構造に欠陥を生じるおそれがある。
【0089】
溶液を調製するために、中央の口にフィンガーパドル撹拌機を装着した三口フラスコ中に、第1のNMPと水とを充填した。PVPをNMPに添加し、均一な透明溶液が得られるまで50℃において撹拌した。最後に、ポリエーテルスルホンを添加した。高粘度の透明溶液が得られるまで、混合物を50℃において撹拌した。温かい溶液を20℃まで冷却し、脱気した。溶液を完全に脱気するために、高粘度のポリマー溶液をステンレス鋼容器に移した。容器をしっかり閉じ、容器に真空を適用した。溶液を50mmHgにおいて6時間脱気した。この脱気手順中、脱気手順を改善するために、容器を撹拌して、容器中のポリマー溶液の表面をより大きくし、より薄いフィルムが得られるようにした。
【0090】
ボア液体は、ヒアルロン酸(HA)(Novozymes製)を蒸留水およびN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。中央流体中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:H2O−HA−NMP=53−0.5−46.5。
【0091】
ボア液体の調製は、以下のようにして行った:
→蒸留水をガラスフラスコ中に充填し、50℃に加熱した。
【0092】
→HAを添加し、終夜撹拌した。
【0093】
→翌日、NMPを添加し、約1時間撹拌した。
【0094】
→透明な混合物をステンレス鋼容器に移した。
【0095】
→混合物を濾過し、50mmHgにおいて脱気した。
【0096】
ポリマー溶液を50℃に加熱し、この溶液とボア液体とを紡糸ダイに通すことによって、膜を形成した。ダイの温度は55℃とし、紡糸軸の温度は53℃とした。中空糸膜を、45m/分の紡糸速度で形成した。ダイから出た液体毛細管を水浴(周囲温度)中に移した。ダイと沈殿浴との距離は50cmとした。形成された中空糸膜を、5つの異なる水浴中を通るように導いた。
【0097】
湿った中空糸膜は、内径が190μm、外径が262μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。活性分離層を、最小の細孔を有する層と定義する。
【0098】
膜を巻取車に巻き付け、前記方法に従って、356本の繊維を含むミニモジュールを調製した。
【0099】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表1に示す。
【表1】

【0100】
例2
実施例1と同じ組成および5,400mPa×sの粘度を有するポリマー溶液を用いて、膜を製造した。ポリマー溶液の調製は、実施例1に記載されたようにして行った。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−HA−NMP:53%−0.25%−46.75%;
紡糸速度 25m/分
膜は、乾燥前に0.9%生理食塩水を含む第6の浴を通るように導いた。
【0101】
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0102】
乾燥中空糸膜は、内径が189μm、外径が261μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0103】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表2に示す。
【表2】

【0104】
図1は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例2、比較例1および比較例2の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0105】
例3
実施例1と同じ組成および4,967mPa×sの粘度を有するポリマー溶液を用いて、膜を製造した。ポリマー溶液の調製は、実施例1に記載されたようにして行った。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−HA−NMP:55%−0.05%−44.95%;
ダイ/紡糸軸の温度:57/55℃
紡糸速度 25m/分
膜は、乾燥前に0.9%生理食塩水を含む第6の浴を通るように導いた。
【0106】
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0107】
乾燥中空糸膜は、内径が192μm、外径が264μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0108】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表3に示す。
【表3】

【0109】
例4
実施例1と同じ組成および5,371mPa×sの粘度を有するポリマー溶液を用いて、膜を製造した。ポリマー溶液の調製は、実施例1に記載されたようにして行った。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−HA−NMP:56%−0.01%−43.99%;
紡糸速度 25m/分
膜は、乾燥前に0.9%生理食塩水を含む第6の浴を通るように導いた。
【0110】
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0111】
乾燥中空糸膜は、内径が191μm、外径が261μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0112】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表4に示す。
【表4】

【0113】
図2は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例4および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0114】
例5
実施例1と同じ組成および5,371mPa×sの粘度を有するポリマー溶液を用いて、膜を製造した。ポリマー溶液の調製は、実施例1に記載されたようにして行った。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−HA−NMP:56%−0.02%−43.98%;
ダイ/紡糸軸の温度:57/55℃
紡糸速度 25m/分
膜は、乾燥前に0.9%生理食塩水を含む第6の浴を通るように導いた。
【0115】
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0116】
乾燥中空糸膜は、内径が188μm、外径が256μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0117】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表5に示す。
【表5】

【0118】
図3は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例5および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0119】
例6
ポリマー溶液は、ポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標)6020)およびポリビニルピロリドン(BASF K30およびK85またはK90)と蒸留水とをN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。ポリマー紡糸溶液中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:PES−PVP K90−PVP K30−H2O−NMP:13.6−2.6−5−3.2−75.6。ポリマー溶液の粘度は、4,967mPa×sであった。
【0120】
ボア液体は、ポリ((2−メタクリロイルオキシエチル)−2’−トリメチルアンモニウムエチルホスフェート分子内塩)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート))(PC2118、Vertellus)を蒸留水およびN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。中央流体中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:H2O−PC2118−NMP:53−0.05−46.95。
【0121】
ボア液体の調製は、以下のようにして行った:
→蒸留水をガラスフラスコ中に充填し、50℃に加熱した。
【0122】
→PC2118を添加し、終夜撹拌した。
【0123】
→翌日、NMPを添加し、約1時間撹拌した。
【0124】
→透明な混合物をステンレス鋼容器に移した。
【0125】
→混合物を濾過し、50mmHgにおいて脱気した。
【0126】
ポリマー溶液を50℃に加熱し、この溶液とボア液体とを紡糸ダイに通すことによって、膜を形成した。ダイの温度は59℃とし、紡糸軸の温度は57℃とした。中空糸膜を、45m/分の紡糸速度で形成した。ダイから出た液体毛細管を水浴(周囲温度)中に移した。ダイと沈殿浴との距離は50cmとした。形成された中空糸膜を、5つの異なる水浴中を通るように導き、次いでオンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0127】
乾燥中空糸膜は、内径が192μm、外径が266μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。活性分離層を、最小の細孔を有する層と定義する。
【0128】
膜を巻取車に巻き付け、前記方法に従って、356本の繊維を含むミニモジュールを調製した。
【0129】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表6に示す。
【表6】

【0130】
図4は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例6および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0131】
例7
膜は、実施例6のポリマー溶液を用いて製造した。膜形成手順は以下の点で変更した:
ダイ/紡糸軸の温度:57/55℃
水浴中で処理後に、膜はオンラインで乾燥させなかった。
【0132】
湿った中空糸膜は、内径が193μm、外径が265μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0133】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表7に示す。
【表7】

【0134】
例8
膜は、実施例6のポリマー溶液を用いて製造した。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−PC2118−NMP:53%−0.1%−46.9%;
ダイ/紡糸軸の温度:60/58℃
乾燥中空糸膜は、内径が191μm、外径が259μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0135】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表8に示す。
【表8】

【0136】
図5は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例8および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0137】
例9
膜は、実施例6のポリマー溶液を用いて製造した。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−PC2118−NMP:53%−0.1%−46.9%;
膜は、水浴中での処理後にオンラインで乾燥させなかった。
【0138】
湿った中空糸膜は、内径が190μm、外径が264μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0139】
非滅菌膜(ミニモジュール):
非滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表9に示す。
【表9】

【0140】
図6は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、実施例9および比較例1の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0141】
例10
膜は、実施例6のポリマー溶液を用いて製造した。膜形成手順は以下の点で変更した:
中央流体の組成:H2O−PC2118−NMP:53%−0.5%−46.5%;
ダイ/紡糸軸の温度:53/51℃
膜は、水浴中での処理後にオンラインで乾燥させなかった。
【0142】
湿った中空糸膜は、内径が189μm、外径が263μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0143】
蒸気滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、膜の性能を測定した(前記方法)。水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの透水率および篩係数を試験した。結果を表10に示す。
【表10】

【0144】
比較例
比較例1
ポリマー溶液は、ポリエーテルスルホン(BASF Ultrason 6020)とポリビニルピロリドン(BASF K30およびK85)と蒸留水とをN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。ポリマー紡糸溶液中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:PES−PVP K85−PVP K30−H2O−NMP:14−2−5−3−76。ポリマー溶液の粘度は、5,010mPa×sであった。
【0145】
残りのプロセス工程は、実施例1と同様に保持した。膜形成手順は以下の点で変更した:
ボア液体の組成:H2O−NMP 54.5%−45.5%;
紡糸速度 50m/分
ダイの温度: 55/53℃
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0146】
乾燥中空糸膜は、内径が190μm、外径が260μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0147】
滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表11に示す。
【表11】

【0148】
比較例2
ポリマー溶液は、ポリエーテルスルホン(BASF Ultrason 6020)とポリビニルピロリドン(BASF K30およびK85)と蒸留水とをN−メチルピロリドン(NMP)中に溶解させることによって、調製した。ポリマー紡糸溶液中の種々の成分の重量分率は、以下の通りであった:PES−PVP K85−PVP K30−H2O−NMP:14−2−5−2−77。ポリマー溶液の粘度は、5,378mPa×sであった。
【0149】
残りのプロセス工程は、実施例1と同様に保持した。膜形成手順は以下の点で変更した:
ボア液体の組成:H2O−NMP 53%−47%;
紡糸速度 45m/分
ダイの温度: 58/54℃
膜は、オンライン乾燥機中で乾燥させた。
【0150】
乾燥中空糸膜は、内径が215μm、外径が315μmであり、完全に非対称な構造を有していた。膜の活性分離層は内側に存在していた。
【0151】
滅菌膜(ミニモジュール):
蒸気滅菌ミニモジュールについて、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表12に示す。
【表12】

【0152】
比較例3
膜は、市販のNipro PES−15Sα(Nipro Corp.)、〒531−8510 大阪市北区本庄西3−9−3、日本)フィルターから切り取り、337本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が200μm、幅が40μmであった。膜は、γ線滅菌した。
【0153】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表13に示す。
【表13】

【0154】
比較例4
膜は、市販のFX 100フィルター(Fresenius Medical Care AG、61346 Bad Homburg、Germany)から切り取り、381本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が177μm、幅が37μmであった。
【0155】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表14に示す。
【表14】

【0156】
比較例5
膜は、市販のNipro Sureflux(登録商標)150 FH GA(ニプロ株式会社、〒531−8510 大阪市北区本庄西3−9−3、日本)フィルターから切り取り、368本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が183μm、幅が17μmであった。膜は、γ線滅菌した。
【0157】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表15に示す。
【表15】

【0158】
比較例6
膜は、市販のBaxter CA 150G(Baxter S.A.、Renal Division、78310 Maurepas、France)フィルターから切り取り、455本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が148μm、幅が12μmであった。
【0159】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表16に示す。
【表16】

【0160】
比較例7
膜は、市販のBaxter Xenium(登録商標)210(Baxter S.A.、Renal Division、78310 Maurepas、France)フィルターから切り取り、351本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が192μm、幅が34μmであった。
【0161】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表17に示す。
【表17】

【0162】
比較例8
膜は、市販のHospal Nephral(登録商標)AN69ST(Gambro Industries、69330 Meyzieu、France)フィルターから切り取った。膜の切り取りの前に、透析物コンパートメントを閉じながら(限外濾過を回避するために)、グリセロール溶液(60w/w%)1リットルを50ないし100ml/分で再循環させることによって、フィルターの血液コンパートメントを1時間すすぎ、続いて血液コンパートメートを20分間空気でパージした。標準操作手順に従って、351本の繊維を備えるミニモジュールを調製した(Aeff=360cm2)。膜は、内径が192μm、幅が38μmであった。
【0163】
滅菌膜(ミニモジュール):
滅菌フィルターから取り出した膜を備えるミニモジュールを使用して、水溶液中のミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの篩係数を試験した(前記方法)。結果を表18に示す。
【表18】

【0164】
図7は、MW100Daの分子の篩係数が100%であり、MW1,000kDaの分子の篩係数が0%であると仮定して、ミオグロビン、オボアルブミンおよびアルブミンの水溶液中で15分後に測定された篩係数によって作成された、比較例1ないし4(上部)および比較例5ないし8(下部)の膜の篩い分けプロフィールを示している。
【0165】
表19は、実施例1ないし10および比較例1ないし8の膜に関して、水溶液中のオボアルブミン(MW=44kDa)の篩係数とアルブミン(MW=66kDa)の篩係数との差の値を要約している。
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンとを含む選択透過性非対称中空糸膜であって、前記膜の内腔表面が、ヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤によって改質されている膜。
【請求項2】
前記添加剤がヒアルロン酸を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記添加剤がホスホリルコリン基含有ポリマーを含む、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記ポリマーが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性モノマーとのコポリマーを含む、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記コポリマーが、ポリ((2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウムエチルホスフェート分子内塩)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート))である、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
水溶液中のオボアルブミンに関する膜の篩係数と、水溶液中のアルブミンに関する膜の篩係数との差が少なくとも50%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
a)ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンとを、少なくとも1種の溶媒中に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程と、
b)前記ポリマー溶液を、2つの同心開口部を有するノズルの外側リングスリットを通して押出す工程と、
c)中央流体を、前記ノズルの内側開口部を通して押出す工程と、次いで
d)得られた膜を洗浄し、任意選択で、前記膜を乾燥し、前記膜を水蒸気処理によって滅菌する工程と
を備え、前記中央流体がヒアルロン酸およびホスホリルコリン基含有ポリマーからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の膜の調製方法。
【請求項8】
前記中央流体が0.02ないし2重量%の添加剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤がヒアルロン酸を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤がホスホリルコリン基含有ポリマーを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性モノマーとのコポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コポリマーが、ポリ((2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウムエチルホスフェート分子内塩)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート))である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか一項に記載の膜または請求項7から12のいずれか一項に従って調製された膜を備える拡散および/または濾過デバイス。
【請求項14】
血液の血液透析、血液透析濾過または血液濾過における、請求項1から6のいずれか一項に記載の膜または請求項7から12のいずれか一項に従って調製された膜の使用。
【請求項15】
バイオ処理、血漿分画またはタンパク質溶液の調製における、請求項1から6のいずれか一項に記載の膜または請求項7から12のいずれか一項に従って調製された膜の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−527341(P2012−527341A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511268(P2012−511268)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056844
【国際公開番号】WO2010/133612
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501473877)ガンブロ・ルンディア・エービー (49)
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
【Fターム(参考)】