説明

改良された車両用床カバー及びその製造方法

床カバー及びその製造方法が提供される。車両用床カバーは、高分子材料のバリアー層と、そのバリアー層に接合される吸音下地層を備えている。バリアー層の露出面は、種々の美観的及び/又は機能的特徴を備えている。バリアー層は、種々の厚みを有している。厚い部分は、成形前に、バリアー材料の追加的な層を選択された部分に加えることによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年9月24日に出願された米国仮出願第60/413,052号の利益を主張し、その開示内容は、その全体を参照することによって、あたかもここに完全に記載されているように、本明細書中に組込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、車両に関し、さらに詳細には、車両用の床カバーに関する。
【背景技術】
【0003】
床カバー、器具パネル外皮、ドアパネル外皮、コンソール、及びピラーなどのような車両内装品が、魅力的な外観を有し、長期の使用期間にわたってそれらの形状を維持し、摩耗に耐え、かつ車両内の吸音をもたらすことが、一般的に望ましい。さらに、厳しくなる連邦環境規制及び少なくなる埋立地の利用可能性によって、車両用床カバー、内装トリムパネルなどのような使用済み製品の再利用に対する関心が増している。残念なことだが、多くの従来の車両用内装品は、再溶融及び再使用できない熱硬化性樹脂のような資源回収できない材料から形成されている。
【0004】
従って、水や殆どの薬品に対して不浸透性を呈し、擦過傷及び損傷に対する耐性を有するように設計される、耐久性のある頑強な表面を有する再利用可能な車両内装品が必要とされている。さらに、軽量と低コストを維持しながら、外部騒音(例えば、道路騒音、エンジン騒音、振動など)と共に、乗客区画内から生じる騒音を低減させることができる再利用可能な車両用内装品が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の検討を考慮して、床カバー及びその製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による車両床カバーは、高分子材料のバリアー層と、そのバリアー層に接合される吸音下地層(分断層)とを備えている。バリアー層の露出面は、種々の美観的及び/又は機能的な特徴を備えている。バリアー層は、種々の厚みを有している。厚い部分は、成形前に、バリアー材料の追加的な層を選択された部分に加えることによって形成される。
【0007】
本発明の実施形態による車両用床カバーを製造する方法は、増大された音響減衰を必要とし、及び/又は床カバーの他の部分よりも大きな磨耗を受ける床カバーの部分を突き止めることを含む。バリアー層は、バリアー材料の少なくとも2つの層を鋳型面に塗布することによって形成される。典型的には未充填の高分子バリアー材料の第1層が、脱型されたときのバリアー層の露出面に所望の外観を与えるように構成された鋳型面に塗布される。次いで、充填又は未充填の高分子バリアー材料の第2層が、追加的な音響の減衰を必要とするとして識別され、及び/又は高磨耗領域であるとして識別された第1バリアー層の1つ以上の部分に塗布される。
【0008】
鋳型が閉鎖され、発泡体のような吸音材料がその閉鎖された鋳型内に注入される。次いで、吸音材料及び第1バリアー層と第2バリアー層は、鋳型内において、所望の形状を有し、かつ所望の外観が形成される露出面を有する床カバーを製造するのに十分な条件に晒される。成形行程の後、床カバーは脱型され、縁取り及び/又は1つ以上の他の仕上げ作業が施される。
【0009】
本発明の実施形態による車両床カバーは、音響減衰を必要としない領域において、バリアー材料が低減され得るので、従来の車両用床カバーよりも軽い。本発明の実施形態による車両用床カバーを製造する方法は、従来の製造方法よりも少ない製造工程しか必要とせず、材料の使用を低減させる。
【0010】
さらに、本発明の実施形態による車両用床カバーは、従来の車両用床カバーよりも優れた、耐磨耗、音響減衰、着色性、色合わせ、光沢レベルなどを含む種々の性能特性を得ることができる。例えば、本発明の実施形態による車両用床カバーは、低光沢レベル(例えば、ASTM D523−89によれば、60°で2未満の光沢レベル)を達成することができる。本発明の実施形態による車両床カバーは、良好な耐摩耗性を有し、及び高引張強度を有することができる。本発明の実施形態による車両用床カバーは、いくつかの従来の車両用床カバーによって引き起こされる臭気及び埃の付着に関する問題をなくすことができる。本発明の実施形態による車両用床カバーは、UVに対して安定させることができる、さらに、本発明の実施形態による車両用床カバーは、物理的に再利用して他の内装トリム用途に用いられ得るという点において、環境に馴染みやすい。
【0011】
明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の重要な実施形態を示している。これらの図面と説明とによって、本発明を完全に明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照し、本発明をさらに十分に説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに述べる実施形態に限定されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態は、この開示内容が綿密かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分知らしめるために、提供されている。
【0013】
図面において、線、層、及び領域の厚みは、明確にするために、誇張されていることもある。層、領域、下地などの任意の要素が他の要素の「上」にあると記述された場合、その要素は他の要素の上に直接的に存在し得るか、又は介在する要素が存在してもよい、と理解されるべきである。対照的に、ある要素が他の要素の「上に直接的に」存在すると記述された場合、介在する要素は存在しない。また、ある要素が他の要素に「接続される」又は「取り付けられる」と記述された場合、その要素は他の要素に直接的に接続され得るか又は取り付けられ得るか、又は介在する要素が存在してもよい、と理解されるべきである。対照的に、ある要素が他の要素に「直接的に接続される」又は「直接的に取り付けられる」と記述された場合、介在する要素は存在しない。
【0014】
当業者によって理解されるように、車両の外部の騒音の減衰は、通常、音響伝達損(STL)と呼ばれている。車両内部の騒音の減衰は、通常、吸音と呼ばれている。材料の音響インピーダンスは、材料密度と音響速度の積として定義され、レール(Rayl)の単位(N・s/m3)で表される。音響インピーダンスは、空気がどれ位容易に材料内を移動するかを定義する。従って、繊維材料の場合、音響インピーダンスは、繊維直径のみならず、繊維材料の密度に依存する。一般的に、繊維層が重く、繊維が細いほど、音響インピーダンスは高い。さらに、厚い繊維層は、典型的には、薄い繊維層よりも大きい音響インピーダンスを有する。騒音を減衰させる材料の能力は、通常、材料のSTL、音響インピーダンス、及び吸音特性によって定義されている。
【0015】
まず、図1を参照するに、本発明の実施形態による車両用床カバー10は、高分子材料のバリアー層12と、そのバリアー層12に面接触して接続される吸音下地層(分断層)14とを備えている。バリアー層12は、互いに対向する第1面(露出面)12aと第2面12bとを備えている。下地層14は、互いに対向する第1面14aと第2面14bとを備えている。バリアー層の第2面と下地層の第1面14aは、面接触している。バリアー層の露出面12aは、以下に述べるように、種々の美観的及び/又は機能的特徴を備えている。
【0016】
バリアー層12は、1つ以上の高分子材料から構成されるとよく、例示されるように、さまざまな断面厚みを有することができる。バリアー層として用い得る典型的な高分子材料として、工業用熱可塑性材料及び熱硬化性材料(例えば、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなど)が挙げられる。さらに、バリアー層12は、限定はされないが、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、アルミニウム三水和物、タルク、ベントナイト、重晶石、シリカ、粘度、マイカ、石灰岩、及び/又は硫酸バリウム)、分散剤(例えば、ステアリン酸亜鉛)、顔料、及び再粉砕/再利用材料を含む種々の他の成分を含んでもよい。バリアー層12は、例示されるように、種々の厚みを有する。厚い部分は、後述するように、成形前に、バリアー材料の1つ以上の追加層16を加えることによって形成される。吸音下地層14は、任意の種類の熱可塑性及び熱硬化性フォーム(例えば、ポリウレタンフォームなど)又は繊維材料(例えば、天然及び合成繊維から得られるものを含む熱成形性繊維材料)から形成されるとよい。
【0017】
本発明の実施形態によって用いられ得る典型的な未充填ポリウレタンバリアー材料は、ベイヤー・エラストマー(Bayer Elastomer)(ベイヤー(Bayer)社、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)である。本発明の実施形態によって用いられ得る典型的な充填ポリウレタンバリアー材料は、ユタ州、ソルトレーク市のハンツマン(Huntsman)社から市販されている。
【0018】
床カバー10は、吸音下地層14が車両床に面接触して取り付けられるように、成形工程中に、三次元の形状に成形される。床カバー10は、その成形中に与えられた形状を保つような形状維持特性を備えているとよい。あるいは、床カバー10は、単独で非平坦形状を維持できないような弾性記憶を有していてもよい。
【0019】
図2を参照するに、例示されたバリアー層の露出面12aに、装飾パターン13が形成されている。バリアー層が鋳型内で最初に施与される鋳型面を介して、この装飾パターンが形成される。実質的にどのような種類の装飾的及び/又は機能的パターンがバリアー層の露出面に形成されてもよい。
【0020】
図3〜7を参照するに、本発明の実施形態による車両用床カバーを製造する工程が示されている。付加的な音響減衰特性を必要とする領域を識別するために、床カバーが配置される車両床(又は他の車両部分)の音響特性が解明されるとよい(ブロック100)。車両床の音響特性は、所定の周波数範囲の音が閾強度レベルを超える強度レベルで通過する車両床の領域を識別することによって、解明することができる。所定の周波数範囲内の音が閾強度レベルを超える強度レベルで通過する車両床の領域を識別する行程は、車両床の音強度のマップの作成を含むとよい。音強度のマップは、当業者によって充分に理解されているので、ここでは、さらに詳細に述べる必要はない。
【0021】
バリアー層12(図1)は、鋳型面にバリアー材料の少なくとも2層を塗布することによって、形成される。例えば、高分子バリアー材料の第1層20が鋳型面40に塗布される(ブロック110)。ここで用いられる「塗布する(applying)」という用語は、限定はされないが、噴霧、堆積、注入、などを含む、材料を鋳型面に配置する任意の方法を含むことが意図されている。鋳型面40は、バリアー層の第1面(脱型されたときの露出面)12aに所望の外観を与えるように構成されている。例えば、鋳型面40は、粒状パターンを有してよく、これは、第1バリアー層の第1面に所望の粒状パターンを与えるように構成される。高分子バリアー材料の第1層20は、種々の厚みを有してもよいが、典型的には、約0.3mmから約2.0mmまでの間である。図4に例示された実施形態において、バリアー材料の第1層20は、鋳型面40に噴霧されている。しかし、当業者に知られている他の塗布技術が利用されてもよい。
【0022】
次いで、高分子バリアー材料の第2層30が、第1バリアー層20の1つ以上の部分に塗布される(ブロック120)。本発明の実施形態によれば、第2バリアー層30は、第1バリアー層20の露出面20aの1つ以上の選択された部分(全露出面を含む)に塗布されるとよい。これらの選択された部分は、増大された音響減衰を必要とすると識別された領域及び/又は高磨耗領域として識別された領域であるとよい。図5の例示された実施形態において、第2バリアー層30が、第1バリアー層20の部分の上に噴霧される。しかし、当業者に知られている他の塗布技術が利用されてもよい。高分子バリアー材料の第2層は種々の厚みを有してもよいが、典型的には、約1.0mmから約6.0mmまでの間である。
【0023】
例示された実施形態において、組み合わされた第1バリアー層20と第2バリアー層30は、図1の床カバー10のバリアー層12を形成する。
【0024】
例示された実施形態において、次いで、図6に示されるように、鋳型が閉鎖され、発泡体のような吸音材料50が閉鎖された鋳型42に注入される(ブロック130)。吸音材料50は、図1の下地層(分断層)14を形成する。次いで、吸音材料50及び第1バリアー層20と第2バリアー層30は、鋳型内において、所望の形状を有し、かつ所望の外観が形成される露出面12a(図2)を有する床カバーを作製するのに十分な条件(例えば、圧力及び/又は温度)に晒される(ブロック140)。成形行程の後、床カバー10は脱型され、縁取り及び/又は1つ以上の他の仕上げ作業が施される(ブロック150)。
【0025】
本発明の実施形態によれば、図3に例示された行程の内、種々の行程が例示された順序以外でなされてもよい。さらに、図3に例示される行程のいくつかは、実質的に同時になされてもよい。
【0026】
本発明の実施形態による床カバーは、音響的な「同調」を促進することができ、音響的「問題箇所」が識別され、追加的なバリアー材料が音響減衰のために加えられるようにすることができる。本発明の実施形態による床カバーは、車両の選択された箇所(例えば、床パネル、トランク床など)に所望の音響減衰特性をもたらすように「同調」させることができる。「同調」という用語は、床カバーの部分が、1つ以上の周波数又は周波数域内の音を減衰するように設計された特定の音響インピーダンスを有するように、及び/又は1つ以上の周波数又は周波数域の音を吸収するように設計された特定の吸収特性を有するように、形成され得ることを意味している。さらに、本発明の実施形態による床カバーは、従来の遮音材料と比較して、音響減衰特性を犠牲にせずに、その全体重量を低減させることができる。
【0027】
本発明の実施形態による車両用床カバーは、トリム材料、及び、限定はされないが、永久的及び取り外し可能なロゴ、及び車両内の装飾物と調和する挿入物などを含むアクセサリーの設置を容易にすることができる。さらに、本発明の実施形態による車両用床カバーは、配線ハーネス、止め金具、及び他の電気的/機械的装置の設置を容易にすることができる。
【0028】
以上は、本発明の例示であり、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本発明の幾つかの例示的実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規の教示と利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的実施形態に対して多くの変形形態が可能であることは容易に理解されるだろう。本発明は、以下の特許請求項によって定義され、その等価物もそこに包含される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態による床カバーの一部の側断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った床カバーの上面図である。
【図3】本発明の実施形態による車両用床カバーを製造する工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態により、第1バリアー層が鋳型面に噴霧されているのを示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態により、図4の第1バリアー層の一部上に第2バリアー層が噴霧されているのを示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態により、第1バリアー層と第2バリアー層に取り付けられる吸音下地層を形成するために、吸音材料が図4及び図5の鋳型内に注入されるのを示す概略図である。
【図7】図4〜6の床カバーの脱型を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の内装床カバーを製造する方法において、該方法は、
高分子バリアー材料の第1層を鋳型面に塗布するステップと、但し、前記鋳型面は、前記高分子バリアー材料の第1層の表面に所望の外観を与えるように構成されており、
高分子バリアー材料の第2層を前記高分子材料の第1層の1つ以上の部分に塗布するステップと、
吸音材料を、前記高分子バリアー材料の第2層と、前記高分子バリアー材料の第1層の露出部分とに塗布するステップと、
前記高分子バリアー材料の第1層と第2層及び前記吸音材料を、前記鋳型内において、所望の形状に形作られた床カバーを作製するための条件に晒すステップと、
前記床カバーを前記鋳型から取り出すステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の部分は、増大された音響減衰を必要とすると識別された車両の領域に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増大された音響減衰を必要とする床カバーの前記1つ以上の部分を識別するために、前記床カバーが配置される車両床の音響特性を解明するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の部分は、前記床カバーの高磨耗領域に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
車両床の音響特性を解明するステップは、車両床の音強度のマップを作成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
車両床の音響特性を解明するステップは、所定周波数範囲内の音が閾強度レベルを超える強度レベルで通過する前記車両床の領域を識別することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記吸音材料は、熱成形性繊維材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記吸音材料は、発泡材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子バリアー材料の第1層と第2層は、噴霧によって塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記床カバーに成形後処理を施すステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記高分子バリアー材料の第1層と第2層は、熱可塑性材料又は熱硬化性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子バリアー材料の第1層と第2層は、ポリウレタンを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−500262(P2006−500262A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501966(P2005−501966)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/025768
【国際公開番号】WO2004/028774
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(504135033)コリンズ・アンド・エイクマン・プロダクツ・カンパニー (8)
【Fターム(参考)】