説明

放射ソース

【課題】リソグラフィで使用するために、極端紫外放射などの短い波長の放射を発生させる放射ソースを提供する。
【解決手段】錫などの液体金属の個々の浴18,20に浸される回転電極14,16が設けられる。電極14,16間で放電を生成し、放射を発生させる。放電の近傍で低圧になるようにポンピングを改善し、ソースの変換効率を改善できるようにするために、電極14,16および/または電極14,16の周囲の金属の遮蔽用のプレートに孔を設ける。電極14,16の孔は、液体金属を攪拌させ、電極14,16と液体金属間の熱および電気接触を改善することによって、電極14,16の冷却を改善する。電気接触の改善は、放電回路の時定数も低下させ、これによってソースの変換効率をさらに改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば極端紫外放射(EUV)または軟X線放射を生成する、リソグラフィに使用可能な放射ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つまたは幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターン化される互いに近接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射されるステッパと、基板を所定の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行にスキャンしながら、パターンを所定の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射されるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
放射ソースは、基板上にパターンを露光する放射を生成するために必要である。これまで以上に小さい形体を結像したいという要求があるので、より小さい波長の放射を使用する流れがあり、適切な放射ソースが必要となる。
【0004】
電極間で蒸発した金属を通して放電が行われるときにEUVを放出するので、ガス放電放射ソースが知られている。放電領域は、電気エネルギからEUV放射への良好な変換効率を達成するために、放電領域が低い圧力である必要がある。第一の問題は、放電からのデブリが他の構成要素に到達するのを抑制するために、ガスバッファが典型的に放電領域付近に設けられていることである。放電領域に向かって流されるバッファガスによって、放電の付近で低い圧力を維持することが困難になる。別の問題は、放電領域を環境からシールドする必要があり、従来、放射ソース環境のインダクタンスを最小限に抑えるために、放電領域を囲むプレートが設けられていることである。プレートは、放射を放出すべき箇所以外の、放射ソース室を効果的に閉鎖する。これによって、ソース(源)環境の圧力を低下させるためのポンピングが非常に非効率的なものになる。従来の装置では、放電領域近傍で低い圧力を維持するためのポンピングの問題のせいで、変換効率が1/2低下することもある。先行技術のさらなる問題は、放電装置の電極を十分に冷却してしまうことである。その結果、さらなる問題が生じることがある。例えば電気抵抗の増加であり、これは回路の電気的時定数を増加させ、したがって放射ソースの性能を損なう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の問題の全ての少なくとも部分的に緩和する放射ソースを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、使用時に放射を発生させるためにその間に電気放電が生成される複数の電極と、電極がその内部に配置され、その内部でガス圧が低減可能である領域と、電極をシールドするように構成された導体プレートとからなり、導体プレートは孔を備えている放射ソースが提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、使用時に放射を発生させるためにその間に電気放電が生成される複数の電極と、電極がその内部に配置され、その内部でガス圧が低減可能である領域とからなり、電極の少なくとも1つは回転可能であり、かつ第一側および第二側を有し、電極は前記電極の第一側と第二側の間に流れ通路を提供する孔を備えている、放射ソースが提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、使用時に放射を発生させるためにその間に電気放電が生成される複数の電極を含む放射ソースであって、複数の電極の一電極が軸線のまわりで回転可能であり、前記電極が、下部分が液体金属浴に浸漬されるように配置構成され、前記電極は非平面表面を有するようにストリップを設けられている、放射ソースが提供される。
【0009】
次に、本発明の実施形態を添付の略図を参照しながら、ほんの一例として説明する。図面では対応する参照記号は対応する部品を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。この装置は、放射ソースSOからの放射を集光するように構成されたコンデンサCOを含む。イルミネータILは、放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調節するように構成される。支持体(例えばマスクテーブル)MTは、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第一位置決め装置PMに接続される。基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTは、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第二位置決め装置PWに接続される。投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSは、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを含む)に投影するように構成される。
【0011】
イルミネータは、放射の誘導、成形、または制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント、またはその任意の組合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0012】
支持体MTは、パターニングデバイスを支持、つまりその重量を支えている。これは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持体MTは、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気等のクランプ技術を使用することができる。支持体MTは、例えばフレームまたはテーブルでよく、必要に応じて固定式または可動式でよい。支持体は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」または「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0013】
本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフト特徴またはいわゆるアシスト特徴を含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定機能層に相当する。
【0014】
パターニングデバイスは透過型でも反射型でもよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、Alternating位相シフト、減衰型位相シフトのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0015】
本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、または液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システムおよび静電気光学システム、またはその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なされる。
【0016】
ここで示している装置は反射タイプである(例えば反射マスクを使用する)。あるいは、装置は透過タイプでもよい(例えば透過マスクを使用する)。
【0017】
リソグラフィ装置は2つ(デュアルステージ)またはそれ以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つまたは複数の他のテーブルを露光に使用している間に1つまたは複数のテーブルで予備工程を実行することができる。
【0018】
リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆うことのできるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に使用してもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造体を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0019】
図1を参照すると、イルミネータILは放射ソースSOから放射を受け取るコンデンサCOから放射を受ける。放射ソースSOとリソグラフィ装置とは、例えば放射ソースがエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエクスパンダなどを含むビームデリバリシステムBDの助けにより、放射ソースSOからコンデンサCOを介してイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えばソースが水銀灯の場合は、ソースがリソグラフィ装置の一体部品であってもよい。放射ソースSO、コンデンサCOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0020】
イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するアジャスタADを含んでいてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなどの他の種々の構成部品を含んでいてもよい。イルミネータILを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0021】
放射ビームBは、支持体(例えばマスクテーブルMT)に保持されたパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン化される。放射ビームBはマスクMAを通り抜けて、基板Wのターゲット部分C上にビームを集束する投影システムPSを通過する。第二位置決め装置PWおよび位置センサIF2(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば放射ビームBの経路において様々なターゲット部分Cに位置決めするように正確に移動できる。同様に、第一位置決め装置PMおよび別の位置センサIF1(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)を使用して、例えばマスクライブラリから機械的に検索した後に、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般的に、マスクテーブルMTの移動は、第一位置決め装置PMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第二位置決め装置PWの部分を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、固定してもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアラインメントマークM1、M2および基板アラインメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アラインメントマークは、専用のターゲット位置を占有するが、ターゲット部分の間の空間に配置してもよい(これらは、けがき線(scribe-lane)アラインメントマークと呼ばれる)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアラインメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0022】
図示のリソグラフィ装置は以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0023】
1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTは基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち1回の静止露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向および/またはY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、1回の静止露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0024】
2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する(つまり1回の動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)および像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、1回の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
【0025】
3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動またはスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス放射ソースを使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、またはスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、上記したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0026】
上述した使用モードの組合せおよび/または変形、または全く異なる使用モードも利用できる。
【0027】
図2および図3は、約1nmから20nmの領域、例えば13.5nmの波長を有するEUV放射または軟X線放射のビームBを生成するガス放電放射ソースを概略的に示したものである。放射ソースは、放電領域12内の圧力がほぼ100Pa未満(1mbar未満)、例えば1Paから100Paの範囲か、さらには0.01Pa以下になるように、ポンピング機器(図示せず)によって低圧へとポンピングされるエンクロージャ10を含む。
【0028】
2つの円板形電極14、16が設けられ、各電極はその面に対してほぼ垂直な個々の軸線のまわりで回転可能である。各電極は、直径が約100mmである。各電極14、16の下部分は、例えば錫(Sn)などの液体金属を含み個々に温度制御された浴18、20に浸漬される。錫は230℃の融点を有し、浴は300℃の範囲の動作温度に維持することができる。電極14、16は、銅などの熱伝導率が非常に高い金属で作成されてよく、モリブデンなどの高温に耐性がある材料で覆われた銅芯を含んでよい。
【0029】
各電極14、16が個々の浴18、20内の溶融金属を通して回転すると、各電極14、16は薄い表面コーティング、この場合は錫を、特にそのリムにて拾い上げる。この錫は、放電12を発生するのに使用され、このプロセスで部分的に犠牲(sacrifice)となり、損傷を受けるが、各電極が回転して、各部分が浴から出るにつれて錫の新しい層で被覆されるので、錫は継続的に補給される。この配置構成によって、電極14、16の金属が過度に腐食することが回避される。
【0030】
例えば2kVから10kVの大きい電位差が、コンデンサバンク(図示せず)を含めた適切な電圧ソースから浴18、20内の液体金属を通して電極14、16間に印加される。電極14、16間の放電12は、液体金属層からの被覆金属の一部を、電極間の最も狭い点の近傍で電極14、16の一方の表面から蒸発させることによって開始することができる。金属は、例えばレーザビーム、イオンビームまたは電子ビーム(図示せず)などを使用して蒸発させることができる。蒸発した金属は、電極間のギャップに導電路を形成し、これは、この点でコンデンサバンクから電極14、16間の非常に高い電流を含む放電につながる。電流は金属蒸気を高温まで加熱し、したがって金属蒸気がイオン化して、ピンチプラズマ内に所望のEUV放射を放射する。この放電電流は通常、10kAを超える。
【0031】
ガス放電放射ソースが作動しているときに、金属粒子/イオンなどのデブリが生成される。このデブリが放射ソースから漏れ出ると、例えばリソグラフィ装置のその他のパーツの光学または電気的コンポーネント上に金属膜として凝縮することにより、装置のその他のパーツに問題を引き起こすことがある。図3で示すように、EUVなどの所望の電磁放射のビームBに対しては透過性であるが、ガス放電から金属蒸気および他のイオンおよび原子状デブリの漏出は防止するトラップ22が設けられる。様々なタイプのトラップ22が知られている。例えば表面上に金属蒸気が凝縮できるプレートで構成されたフォイルトラップ(foil trap)である。電位差を金属箔間にかけることで、帯電粒子を偏向(deflect)させることができる。他の形態のフォイルトラップにはタービン形のロータがあり、これはEUV放射を通過させるのに対して、ソースから放射された比較的大きく動作が遅い粒子は遮断する。
【0032】
トラップ22をさらに改善してデブリの漏出を防止するためには、ガスをトラップ22内に導入し、放電領域12に向かって流す。このガスがバッファのように作用して、ソースハウジング10からのデブリの漏出を抑制する。有用である短波長電磁放射に対しては透過性(transparent)であるアルゴンなどのガスが使用される。
【0033】
さらに、放射ソースをシールドして低いインダクタンスを有するようにするために、放射ソースの周囲に少なくとも1つのプレート24を設ける。「シールド」および「スクリーン」という用語、およびその派生語は、本明細書では同義語として使用される。放射ソースが低インダクタンスであることは、二次プラズマの生成を防止し、さらに可能な限り高い変換効率を有するために求められる。EUV放射が可能となるように、放電12の近傍にてプレート24に開口26が設けられる。
【0034】
バッファガスおよびプレート24が存在するということは、エンクロージャ10用に真空ポンプが設けられていても、なお放電12の近傍で所望の低圧を達成することが困難になり得る、ということを意味している。
【0035】
本発明のこの実施形態によれば、図3の右上隅の拡大図で示すように、プレート24が孔28を備える。インダクタンスを低く維持するために、プレート24の孔28はプレートの表皮深さ(skin depth)、つまりプレートへの交流電磁界の侵入深さより小さくてよい。
【0036】
表皮深さはプレート24の材料の導電率に依存しており、温度の関数でもあり、さらに電磁(EM)遮蔽を提供する目的である電磁放射の周波数にも依存している。600℃でのモリブデンについての計算では、1MHzの周波数における表皮深さが、約200μmであることが示されている。孔を1MHzの周波数に合わせて設計すると、数GHzにまで上がる広いEMスペクトルにおけるこれより高い周波数でも、何の問題も無いだろう。したがって、孔28の直径dは300μm未満、例えば200μm未満または100μm未満でよい。これらの孔28はプレート24のEM遮蔽性能を損なうことなく、それでいて放電12の近傍におけるポンピングを改善し、圧力を低下させることができる。問題となる圧力レベルでは、ポンピング能力は、孔によって与えられるオープンスペースの表面積、および孔のアスペクト比(直径をプレートの厚さで割った値)に比例する。したがって、各孔は非常に小さくても、十分な数を設けることで、孔の集合的な表面積がソース室内のポンピングを大幅に改善し、圧力を低下させることとなり、放射ソースの変換効率を改善する。典型的には、約100μmの孔が、EM遮蔽を維持しながら真空抵抗を良好に低下させる。
【0037】
孔28の形状には特定の制限がないが、典型的には概ね円形のものが作成し易い。孔28は、プレート24全体に均一に分布していなくてもよい。例えば、放電12の近傍でポンピングを改善し、上述したようにトラップ22から放射されるバッファガスを除去するために、そのポイントに設ける孔28の密度を、任意選択で高くすることができる。代替形態では、プレート24が、ポンピングを改善しながらなお、低いインダクタンスとEM遮蔽を提供するのに適切なサイズの孔をあけた金網を含むことができる。
【0038】
プレート24は、どのような構造でも、放電に使用される液体金属の融点より高い温度で維持されれば良い。プレート24上で凝縮する金属飛沫または金属蒸気があっても、それは全て蓄積してプレートの孔を遮断するのではなく、液体のままであり、プレートを流れ落ち、収集することができる。
【0039】
図4、図5および図6を参照すると、ガス放電放射ソースの共通の形体は、図2および図3に関して前述したものと同じであり、したがって説明は繰り返さない。上述したように、放電12の周囲のポンピング能力は制限され、このことが放電時の圧力低下を妨げる。回転可能な電極14、16自体が真空抵抗を形成する、つまり放電ポイント周辺からエンクロージャ10までのポンピング能力を全体的に低下させることが判明している。放射ソースが比較的高い電力レベルで作動すべき場合は、電極14、16からの熱抽出の改善が必要であることも判明している。図4で示すような本発明のこの実施形態によれば、電極14、16を貫通して孔30が設けられる。孔30は、電極の一方側と電極の他方側との間の流れ通路を提供する。その結果、電極の真空流れ抵抗(vacuum flow resistance)が小さくなり、したがって放電12における圧力低下を補助することができる。孔30は、液体金属浴18、20で冷却される表面積を増加させ、液体金属の攪拌および循環を改善させることにより、電極14、16の冷却も改善する。孔30の直径は通常、5mmから10mmの範囲であり、毛管力(capillary force)が高すぎないように選択され、したがって各孔30は液体金属で容易に充填され、孔30が液体金属浴の表面から出た場合には、液体金属が流れ出して迅速に開通もする。
【0040】
図5は、電極の面に対して垂直に穿孔された孔30を設けた電極14、16の1つの一部の断面図を示したものである。図6は、電極の面にして垂直方向からずれた角度で孔30を穿孔した代替構成を示したものである。傾斜した孔30は、浴18、20に浸した場合に、各孔30を通る液体金属の強制流を良好にし、したがって電極の回転時に冷却を改善する。
【0041】
図4で示した実施例では、孔はほぼ円形であり、電極を通して、その外周縁の近傍にその全周に設けられる。孔の他の構成も言うまでもなく可能であり、例えば長円形の孔またはより多数のより小さい孔が存在し、または全域にわたって完全に穿孔された電極円板がある。孔が存在は、電極の電気的インダクタンスに影響を与え得るが、これは電極の周囲で孔と孔の間の点で発生するように放電パルスを同期化させることにより、必要に応じて緩和することができる。
【0042】
図7および図8を参照するにあたり、既述の実施形態で説明したガス放電放射ソースの形体の説明は繰り返さない。
【0043】
この実施形態では、回転可能な電極14、16の裏側にストリップ32を設ける。図7で示した実施例では、ストリップ32は各電極の回転軸から放射状に配置構成される。図8の断面図で見られるように、ストリップ32は電極円板14、16の厚さに対してかなりの厚さを有する。ストリップ32は導電性であり、電極円板自体と同じ材料で作成することが好ましい。電極14、16が溶融金属浴18、20を通して回転すると、ストリップが液体金属を攪拌し、したがって加熱された液体金属が汲み出され、より低温の金属液体で置き換えられる。これは、液体金属が高温になり過ぎるのを回避する。以前には、液体錫が電極との接触箇所で沸点に到達するという問題があった。これは熱接触をさらに悪化させ、電極からの熱伝導を低下させた。ストリップは、液体金属と接触する電極の冷却表面も増大させる。これは、熱抵抗を低下させて、電気抵抗も低下させ、これは電極および液体金属のオーム加熱(ohmic heating)を低下させるという効果を有する。さらに、ストリップは電極14、16自体内の熱伝導を改善し、したがって高温部分から冷却液体金属浴への熱の分配および移動が改善される。
【0044】
図7で示す実施例では、ストリップ32は直線形状であるが、代替の形状が想起される。例えばストリップは、液体金属を通過する場合のポンピング効率を最大限にし、ストリップが液体金属の表面に当たった場合の飛沫の発生を回避するために湾曲している、および/または湾曲した表面を有している。
【0045】
図9を参照すると、前述したようなガス放電放射ソースに1つの電極を使用することができる。この実施形態では、電極は外方リム34を有し、そこで全く前記の通りに放電が生じるが、ここでリム34は堅いブレード36によって中心軸38に接続される。ブレード36は電極の面に対してある角度で設けられ、したがって全体的にタービンの構成を有する。ブレード36は、液体金属浴を通過する場合にポンピング作用を生じ、したがって電極の冷却を改善する。電極の冷却区域は、平面の円板タイプ電極と比較しても大幅に増加する。電極間の空間は開口も提供し、これを通して放電領域の真空ポンピングを改善することができる。ブレードの数、その角度および幅を選択することにより、EM遮蔽が維持されるようにブレード間の空間を制御することができる。ブレード36は直線である必要はなく、湾曲および/または捩れた形状でよい。
【0046】
図9の電極は、図4の電極の孔を図の液体金属を攪拌するストリップと組み合わせ、またこのような既述の実施形態の双方と同様に、電極と液体金属間の接触表面積を増加させる。
【0047】
液体金属と接触する電極の表面積を増加させる上記の実施形態はいずれも、放電回路のオーム抵抗を低下させる。これは、回路の電気的時定数を減少させ、放電の変換効率を最大限にするために必要な非常に高い過渡電流のせいで、放電ソースの変換効率を改善する。表皮効果力(skin-effect force)によって高周波数の電流が電極の外表面を強制的に流れるので、タービン形電極は抵抗をさらに減少させ、したがってこの場合は、ブレード上の導電表面が大幅に増加し、したがって電気的時定数が減少し、変換効率を改善する。
【0048】
図10は、本発明の実施形態による放射ソースの電極を断面図で示したものである。この実施形態では、電極は図9のようにリム34を含むが、電極の本体は相互に離れた複数の平行なプレート40を含んでおり、プレート40はリム34で結合されており、リム34を中心軸38に接続している。各プレート40は複数の孔42が開けられている。電極が回転すると、浴槽内の液体金属が流れて孔42を出入りし、プレート40間の空間が電気および熱接触のための大きい表面を提供する。孔は、EM遮蔽を維持しながら低圧ポンピングを改善するガス流路も提供する。電極のこの構成は、上記で検討したものと同様の特性を提供する。例えば平行プレート40の孔42を通る放電の近傍におけるガスポンピングの改善、電極の熱冷却を改善して、オーム抵抗を低下させ、これが放電回路の時定数を低下させ、したがって変換効率を改善し、オーム電力損も減少させる液体金属との接触表面積の増加、液体金属浴槽の強制攪拌による電極冷却の改善、およびEM遮蔽および低インダクタンスの維持である。
【0049】
上述した本発明の様々な実施形態の形体は、独自に使用するか、任意の適切な組合せで使用できることを認識されたい。例えば、シールド用のプレート24の孔は、図4から図10のいずれかの形体でなく、独自に使用するか、他の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができる。同様に、図4から図10の実施形態は、穿孔したプレート24とともに使用する必要はない。さらに、例えば図7で示すような冷却/攪拌ストリップ32を含む電極を、図4で示したような孔30との組合せで使用することができる。他の組合せも容易に認識されるはずである。
【0050】
本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることは言うまでもない。例えば、これは、集積光学装置、磁気ドメインメモリ用ガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどである。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」または「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」または「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことを認識されたい。本明細書に述べている基板は、露光前または露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツールおよび/またはインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上およびその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができるので、本明細書で使用する基板という用語は、複数の処理済み層を有する基板も指すことができる。
【0051】
以上では光学リソグラフィとの関連で本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、インプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用可能であり、状況が許せば、光学リソグラフィに限定されないことを認識されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィによって、基板上に生成されるパターンが画定される。パターニングデバイスのトポグラフィを基板に供給されたレジストの層に押しつけ、その後に電磁放射、熱、圧力またはその組合わせにより、レジストを硬化させることが出来る。レジストを硬化した後、パターニングデバイスをレジストから離してパターンを残す。
【0052】
本明細書で使用する「放射」および「ビーム」という用語は、極端紫外光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)、および軟X線放射など、ガス放電を使用して発生させたあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0053】
「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気および静電気光学コンポーネントなど、様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか、またはその組合わせを指す。
【0054】
以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。
【0055】
上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態によるリソグラフィ装置を示した図である。
【図2】本発明の実施形態による放射ソースの概略的な垂直方向断面図である。
【図3】図2の放射ソースの概略的な水平方向断面図である。
【図4】本発明の実施形態による放射ソースの概略的な垂直方向断面図である。
【図5】本発明の実施例による電極の一部の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施例による電極の一部の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態による放射ソースの概略的な垂直方向断面図である。
【図8】図7で示した本発明の実施形態による電極の部分断面図である。
【図9】本発明の実施形態による電極を示した図である。
【図10】本発明の実施形態による電極の断面図を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極と、
前記電極が領域内に配置され、且つ、領域内でガス圧が低減可能である領域と、
前記電極をシールドするように構成された導体プレートとからなり、前記導体プレートは孔を備える、放射ソース。
【請求項2】
前記孔は、前記領域内のガス圧の低減を向上させるように構成されている、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項3】
前記孔は、300μm未満の寸法を有する、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項4】
前記孔は、200μm未満の寸法を有する、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項5】
前記孔は、100μm未満の寸法を有する、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項6】
さらに、前記導体プレートに設けられ、前記電極間の前記放電が生成される位置に向かって集中する複数の孔を有している、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項7】
前記放射は、極端紫外放射である、請求項1に記載の放射ソース。
【請求項8】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極と、
前記電極が領域内に配置され、且つ、領域内でガス圧が低減可能である領域とからなり、
前記電極の少なくとも1つは回転可能であり、かつ第一側および第二側を有しており、電極は前記電極の第一側と第二側との間に流路を提供する孔を備えている、放射ソース。
【請求項9】
前記電極は、円板形であり、前記円板の面に対する垂直方向からずれた角度で孔が設けられている、請求項8に記載の放射ソース。
【請求項10】
前記電極は、ブレードを備えたタービンの形態であり、前記孔は前記タービンの前記ブレード間に空間を有する、請求項8に記載の放射ソース。
【請求項11】
前記電極は、平行で、離間され、リムで結合された複数の円板を有しており、各円板は前記孔を備えている、請求項8に記載の放射ソース。
【請求項12】
前記電極は、下部分が液体金属浴に浸漬されるように構成されている、請求項8に記載の放射ソース。
【請求項13】
前記放射は、極端紫外放射である、請求項8に記載の放射ソース。
【請求項14】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極を含んでおり、前記複数の電極のうちの一電極が軸線のまわりで回転可能であり、前記電極は下部分が液体金属浴に浸漬されるように構成され、前記電極は平面でない表面を有するようにストリップが設けられている、放射ソース。
【請求項15】
前記電極は、円板形であり、前記円板形電極の一方の側に前記ストリップが設けられる、請求項14に記載の放射ソース。
【請求項16】
前記ストリップは、前記電極の前記軸線に対して放射状に配置される、請求項14に記載の放射ソース。
【請求項17】
前記ストリップは、直線である、もしくは湾曲している、請求項14に記載の放射ソース。
【請求項18】
前記電極は、ブレードを有するタービンの形態であり、前記ストリップは前記タービンの前記ブレードを含む、請求項14に記載の放射ソース。
【請求項19】
前記放射は、極端紫外放射である、請求項14に記載の放射ソース。
【請求項20】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極と、前記電極が領域内に配置され、且つ、領域内でガス圧が低減可能である領域と、前記電極をシールドするように構成された導体プレートとを有し、前記導体プレートは孔を備えている、放射ソース、
を有するリソグラフィ投影装置。
【請求項21】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極と、前記電極が領域内に配置され、且つ、領域内でガス圧が低減可能である領域とを有し、前記電極の少なくとも1つは回転可能であり、かつ第一側および第二側を有しており、電極が前記電極の第一側と第二側との間に流路を提供する孔を備えている、放射ソース、
を有するリソグラフィ投影装置。
【請求項22】
使用時に電極間で放電が生成されて放射を発生させる複数の電極を有し、前記複数の電極のうち一電極は軸線のまわりで回転可能であり、前記電極は下部分が液体金属浴に浸漬されるように構成され、前記電極は平面でない表面を有するようにストリップが設けられている、放射ソース、
を有するリソグラフィ投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−201438(P2007−201438A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345106(P2006−345106)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】