説明

放射性同位元素標識色素化合物

【課題】新規な放射性同位元素標識色素化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物:


式中、R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表し;R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し;R7及びR8は置換又は無置換のアルキル基を表し; L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のメチン基を表し、;rは0〜3の整数を表し; rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;P、Qはそれぞれ独立して、123I、124I、125I、131I、又は18Fを表し;Mは水素原子、Na又はKを表し;m,nはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性同位元素標識色素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は物体に印を付け同定する分野において、特に限定された時間中のみ持続し検知できるマーキング方法に用いることができる染料を提供するものである。適切な寿命の放射性同位体を含む染料で印をつけた後、ある一定時間後には放射線が消失し通常の染料と同じ印のみが残るというマーキング方法は、可視情報に加えその印の正確な時間経過を記録することができるため、幅広い用途が期待できる(特許文献1)。またこのような染料は放射性医薬としての用途も期待できる(非特許文献1)。
【特許文献1】特表2006−515810号公報
【非特許文献1】International Journal of Applied Radiation and Isotopes 34, 1383-1393,(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、新規な放射性同位元素標識色素化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意研究を行い、新規な放射性同位元素標識色素化合物を効率よく得ることができる製造方法を見出し、この知見をもとに本発明を完成させた。すなわち本発明は下記[1]〜[7]を提供するものである。
【0005】
[1]下記一般式(I)で表される化合物:
【化1】

【0006】
式中、R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表し;R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換(非置換と同義である)のアルキル基を表し;R7及びR8は置換又は無置換のアルキル基を表し; L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のメチン基を表し、;rは0〜3の整数を表し; rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;P、Qはそれぞれ独立して、123I、124I、125I、131I、又は18Fを表し;Mは水素原子、Na又はKを表し;m,nはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
【0007】
[2]下記一般式(II)で表される[1]に記載の化合物:
【化2】

【0008】
式中、R9は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のカルバモイル基、又はハロゲン原子を表す。
【0009】
[3]下記式1〜4のいずれかで表される化合物。
【化3】

(式中Aは123I、124I、125I、131I、又は18Fを表す。M'はNa又はKを表す。)
【0010】
[4]下記一般式(III)で表される化合物:
【化4】

【0011】
式中、R32、R33は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し、Z4は、123I、124I、125I、131I、及び18Fからなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ベンゾ環、又は123I、124I、125I、131I、及び18Fからなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ナフト環を形成する原子群を表し、qは1〜5の整数を表す。
[5] [4]に記載の一般式(III)で表される化合物とジアニル化合物とを反応させる工程を含む放射性同位元素標識色素化合物の製造方法。
【0012】
[6]下記一般式(IV)で表される化合物:
【化5】

【0013】
式中、R30、R31は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し、Z3は、ヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ベンゾ環、又はヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ナフト環を形成する原子群を表す。
【0014】
[7]下記一般式(V)で表される[6]に記載の化合物:
【化6】

式中、Halはヨウ素又はフッ素を表し、M'は水素原子又はアルカリ金属原子を表す。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、様々な用途の見込める放射性同位元素標識色素化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず一般式(I)で表される化合物について詳細に説明する。
【化7】

R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表す。置換基としては例えば下記の置換基群から選択される置換基が挙げられる。
【0017】
置換基群:
ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、及びシリル基。
【0018】
なお、これらの基のうち塩を形成することが可能な基、又は一個もしくは二個以上の水素イオンの脱離により塩を形成することが可能な基については、これらいずれかの基が塩を形成したものであってもよい。これらの塩における対イオンとしては、本発明の化合物中に存在し得る陽電荷又は陰電荷、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられる。
【0019】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、炭素数1から30の直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル)、炭素数3から30のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、炭素数5から30のビシクロアルキル基(炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基:例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、及び更に環構造が多いトリシクロ構造を有するアルキル基などが挙げられる。
【0020】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、炭素数2から30の直鎖アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、炭素数3から30シクロアルケニル基(炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基:例えば2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、及び炭素数5から30のビシクロアルケニル基(二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基:例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)などが挙げられる。アルキニル基としては、炭素数2から30のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル)が好ましく挙げられる。アリール基としては好ましくは炭素数6から30のアリール基であればよく、例えばフェニル、p−トリル、ナフチルが挙げられる。
【0021】
ヘテロ環基としては好ましくは5又は6員のヘテロ環基であればよく、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であればよい。より好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基であり、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、及び2−ベンゾチアゾリルが挙げられる。アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルコキシ基であればよく、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシが挙げられる。アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30のアリールオキシ基であればよく、例えば、フェノキシ基が挙げられる。シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基であればよく、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシが挙げられる。
【0022】
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のヘテロ環オキシ基であればよく、テトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシが挙げられる。アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2から30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30のアリールカルボニルオキシ基等であればよく、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、フェニルカルボニルオキシが挙げられる。カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30のカルバモイルオキシ基であればよく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、及びN−n−オクチルカルバモイルオキシが挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のアルコキシカルボニルオキシ基であればよく、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、及びn−オクチルカルボニルオキシが挙げられる。
【0023】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニルオキシ基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルオキシが挙げられる。アルキルアミノ基としては炭素数1から30のアルキルアミノ基であればよく、例えばメチルアミノ及びジメチルアミノが挙げられる。アリールアミノ基としては好ましくは炭素数6から30のアリールアミノ基であればよく、例えば、アニリノ及びジフェニルアミノが挙げられる。アシルアミノ基としては好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30のアルキルカルボニルアミノ基又は炭素数6から30のアリールカルボニルアミノ基であればよく、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、及び3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノが挙げられる。アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアミノカルボニルアミノ基であればよく、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、及びモルホリノカルボニルアミノが挙げられる。
【0024】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数2から30のアルコキシカルボニルアミノ基であればよく、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、及びn−オクタデシルオキシカルボニルアミノが挙げられる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニルアミノ基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルアミノが挙げられる。スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30のスルファモイルアミノ基であればよく、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、及びN−n−オクチルアミノスルホニルアミノが挙げられる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1から30のアルキルスルホニルアミノ又は炭素数6から30のアリールスルホニルアミノであればよく、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、及びフェニルスルホニルアミノが挙げられる。アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルチオ基であればよく、例えばメチルチオ、エチルチオ及びn−ヘキサデシルチオが挙げられる。アリールチオ基としては、好ましくは炭素数6から30のアリールチオ基であればよく、例えば、フェニルチオが挙げられる。ヘテロ環チオ基としては、好ましくは炭素数2から30のヘテロ環チオ基であればよく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ及びテトラゾール−5−イルチオが挙げられる。
【0025】
スルファモイル基としては、好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基であればよく、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、及びN−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイルが挙げられる。アルキルスルフィニル基及びアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルスルフィニル基、又は6から30のアリールスルフィニル基であればよく、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、及びフェニルスルフィニルが挙げられる。アルキル及びアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルスルホニル基又は6から30のアリールスルホニル基であればよく、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、及びフェニルスルホニルが挙げられる。アシル基としては、好ましくはホルミル基、炭素数2から30のアルキルカルボニル基、炭素数7から30のアリールカルボニル基、又は炭素数4から30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基であればよく、例えば、アセチル、ピバロイル、ステアロイル、ベンゾイル、2―ピリジルカルボニル、及び2―フリルカルボニルが挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニル基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルが挙げられる。
【0026】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30のアルコキシカルボニル基であればよく、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、及びn−オクタデシルオキシカルボニルが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30のカルバモイル基であればよく、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、及びN−(メチルスルホニル)カルバモイル)が挙げられる。アリールアゾ基及びヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30のアリールアゾ基、炭素数3から30のヘテロ環アゾ基であればよく、例えば、フェニルアゾ、1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾが挙げられる。イミド基として好ましい例としては、N−スクシンイミド及びN−フタルイミドが挙げられる。ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィノ基であればよく、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、及びメチルフェノキシホスフィノが挙げられる。ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニル基であればよく、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、及びジエトキシホスフィニルが挙げられる。ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニルオキシ基であればよく、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ及びジオクチルオキシホスフィニルオキシが挙げられる。ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニルアミノ基であればよく、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ及びジメチルアミノホスフィニルアミノが挙げられる。シリル基としては、好ましくは、炭素数3から30のシリル基であればよく、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル及びフェニルジメチルシリルが挙げられる。
【0027】
上記の置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、及びアリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、及びベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0028】
R1、R2として好ましくはハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状アルキル基を含む)、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基が挙げられる。より好ましくはハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状アルキル基を含む)、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、スルファモイル基、スルホ基、カルバモイル基、イミド基が挙げられる。さらに好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のヘテロ環基、カルボキシル基又はスルホ基が挙げられる。特に好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基が挙げられる。
m、nは0〜2の整数である。m、nが2のときは複数存在するR1、R2はそれぞれ異なっていても同一でもよい。m、nは0または1であることが好ましく、特に好ましくは0である。
【0029】
式中、R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基であるが、該アルキル基は、R1、R2におけるアルキル基と同義であり、置換基を有する場合は上記置換基群から選択される置換基であればよい。R3〜R6はそれぞれ独立に1〜20のアルキル基であることが好ましく、総炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましく、総炭素数1〜10のアルキル基であることがさらに好ましく、総炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。また、R3〜R6はそれぞれ独立に無置換のアルキル基であることがこのましく、メチル基であることがもっとも好ましい。
【0030】
R7及びR8は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基である。アルキル基は、直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30の直鎖アルキル基)、分岐アルキル基(好ましくは炭素数3から30の分岐アルキル基)、又は環状のアルキル基(トリシクロ構造を有するものを含み、好ましくは炭素数3から30のシクロアルキル基、又は炭素数5から30のビシクロアルキル基(炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基))であればよい。例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルが挙げられる。
これらのうち、炭素数1から20の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1から10の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1から5の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
【0031】
R7及びR8が置換アルキル基の場合の置換基の種類、数、位置は特に限定されない。
R7及びR8が置換アルキル基の場合の置換基として好ましくはハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基であり、最も好ましくはスルホ基である。
R7及びR8が置換直鎖アルキル基の場合、置換位置はR1及びR2の置換している窒素原子から炭素数2個以上介した位置にあることが好ましく、より好ましくは末端の炭素であることが好ましく、さらには置換基の数は1が好ましい。
【0032】
L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のメチン基である。rは0から3の整数であり、rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一であっても異なっていてもよい。
L1〜L3が置換メチン基である場合には、その置換基は上記置換基群から選択される置換基であればよく、さらに置換基同士が結合を作り、環を形成していてもよい。
rは0〜3の整数を表すが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。
L1〜L3において好ましくは無置換メチン基がL1〜L3のうち一つ以上あり、より好ましくは置換メチン基が1〜3個であり残りは全て無置換メチン基であり、特に好ましくは置換メチン基が1個であり残りは全て無置換メチン基である。
【0033】
式中、R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基であるが、該アルキル基は、R1、R2におけるアルキル基と同義であり、置換基を有する場合は上記置換基群選択される置換基であればよい。R3〜R6はそれぞれ独立に1〜20のアルキル基であることが好ましく、総炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましく、総炭素数1〜10のアルキル基であることがさらに好ましく、総炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。また、R3〜R6はそれぞれ独立に無置換のアルキル基であることがこのましく、メチル基であることがもっとも好ましい。
【0034】
P、Qはそれぞれ独立して123I、124I、125I、131I、又は18Fを表す。これらのうち、好ましくは123I、124I 125I、131Iであり、より好ましくは123I、124I、131Iである。Mは水素原子、Na又はKを表す。好ましくはNaである。
【0035】
なお一般式(I)で表される化合物の陽電荷は分子内あるいは分子外にある対アニオンにより中和されている。対アニオンの例としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、アセテートイオン、オキサレートイオン、フマレートイオン、ベンゾエートイオンなどのカルボキシレートイオン、p−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネートなどのスルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基、スルホネート基等の負電荷を有する基が存在する場合には、化合物の陽電荷とともに分子内塩を形成していてもよい。分子外対アニオンとしては、ハロゲンイオン、メタンスルホネートイオン、硫酸イオン、が好ましく、塩化物イオン(クロロイオン)、臭化物イオン(ブロモイオン)又はメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物はより好ましくは、一般式(II)で表される化合物である。
【0036】
【化8】

【0037】
R9は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のカルバモイル基、又はハロゲン原子を表す。R9が置換あるいは無置換のアルキル基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、シクロプロピル基が挙げられる。
【0038】
R9が置換あるいは無置換のアリール基の場合、R9の総炭素数が5〜20であることが好ましく、5〜15であることがより好ましく、5〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0039】
R9が置換あるいは無置換のヘテロ環基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、4−ピリジル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−オキソピロリジン−1−イル基が挙げられる。
R9が置換あるいは無置換のアシルアミノ基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ピバロイルアミノ基、4-フェニルベンゾイルアミノが挙げられる。
【0040】
R9が置換あるいは無置換のカルバモイル基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
【0041】
R9が置換あるいは無置換のアリールアミノ基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、N-フェニルアミノ基、N-トリルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0042】
R9が置換あるいは無置換のアリールチオ基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニルチオ基、トリルチオ基、4-フェニルフェニルチオ基、ナフチルチオ基が挙げられる。
【0043】
R9が置換あるいは無置換のアリールオキシ基の場合、R9の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニルオキシ基、4-アセチルアミノフェニルオキシ基、4-フェニルフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0044】
以下に本発明の化合物の具体例を示す。ただし本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
上記一般式(I)、(II)で表される化合物は、例えば、特開2003-160558号公報に記載のヘテロ4級塩化合物とジアニル化合物の反応方法を基にして、いずれかの段階で放射性同位元素を導入して製造することができる。
本発明者らの鋭意研究によって、特開2003-160558号公報に記載の方法におけるヘテロ4級塩化合物として放射性同位元素を導入した化合物を用いることにより、効率的に上記一般式(I)、(II)で表される化合物が製造できることがわかった。
前記の放射性同位元素を導入したヘテロ4級塩化合物としては例えば、下記一般式(III)で表される化合物:
【0050】
【化13】

を用いることができる。一般式(III)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物:
【0051】
【化14】

【0052】
(式中、R30、R31は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し、Z3は、ヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ベンゾ環、又はヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ナフト環を形成する原子群を表す。)とハロゲン化アルキルスルホン酸等との反応により製造することができる。R30及びR31は総炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましく、総炭素数1〜10のアルキル基であることがさらに好ましく、総炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。また、R30及びR31はそれぞれ独立に無置換のアルキル基であることがこのましく、メチル基であることがもっとも好ましい。
上記一般式(IV)で表される化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物:
【0053】
【化15】

(式中、Halはヨウ素又はフッ素を表し、M'は水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。
例1:化合物4の合成
【化16】

【0055】
化合物A(CAS.No.67877−88−7)をJ. Chem. Soc. 95,1708 (1909)に記載の方法に従いジアゾ化した後、SnCl2で還元することにより化合物Bを得た。化合物BをTetrahedron 59,3109(2003)に記載の方法に従いメチルイソプロピルケトンと反応させ化合物Cを得た。化合物Cを2-ブロモエタンスルホン酸と反応させることにより、化合物D(1H NMR δ(D2O) 8.3(s,1H),7.9(s,1H),4.9(t,2H,J=6.0Hz), 3.9(s,3H), 3.7(t,2H,J=6.0Hz),1.6(s,6H))を得た。化合物Dを特開平1-160923号公報に記載の方法で131Iで標識された化合物Eに変換し、速やかに特開2003-160558号公報に記載の方法で化合物Fと反応させ、化合物4を合成した。(最終工程の収率65%、標識率:80%、λmax 742nm)
【0056】
例2:化合物1の合成
131Iで標識された化合物Eの代わりに123Iで標識された化合物E´を用いる以外は例1と同様にして化合物1を合成した。(最終工程の収率40%、標識率:70%、λmax:741nm)
【0057】
例3:化合物9、化合物14、及び化合物19の合成
【化17】

【0058】
化合物GはJ. Chem. Soc.99, 333 (1911)に記載の方法で合成した。その後は化合物4の合成法と同様に合成を行ったが、化合物Iと化合物J(1H NMR δ(D2O) 7.9(s:化合物J),7.8(s:化合物J), 7.8(d,J=0.5:化合物I), 7.5(d,J=0.5:化合物I),4.9(t,2H,J=6.0Hz), 3.9(s,3H), 3.7(t,2H,J=6.0Hz), 1.6(s,6H))の合成の際に位置異性体混合物として得られ分離不可能であったため、その後は混合物として反応に用いた。化合物9と化合物14と化合物19は混合物として得られた。(色素化工程の収率は70%、標識率82%、λmax 746nm)であった。
例4:化合物6、化合物11、及び化合物16の合成
131Iで標識された化合物Eの代わりに123Iで標識された化合物E´を用いる以外は例3と同様にして化合物6、化合物11、及び化合物16を混合物として合成した。(色素化工程の収率: 52%、標識率: 60%、λmax:745nm)
【0059】
例5:化合物5の合成
【化18】

【0060】
化合物Dをスルホラン中大過剰のK18Fと100℃にて反応することにより、18F体Oを収率15%で得た。これを速やかに特開2003-160558号公報に記載の方法で化合物Fと反応させ、化合物5を合成(色素化工程の収率60%、標識率:50%、λmax 738nm)した。
【0061】
例6:化合物10、化合物15と化合物20の合成
化合物Dの代わりに化合物KとLの混合物を用いること以外は、化合物5の合成と同じ操作で化合物10と化合物15と化合物20の混合物を得た(色素化工程の収率62%、標識率:45%、λmax 735nm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物:
【化1】

式中、R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表し;R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し;R7及びR8は置換又は無置換のアルキル基を表し; L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のメチン基を表し、;rは0〜3の整数を表し; rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;P、Qはそれぞれ独立して、123I、124I、125I、131I、又は18Fを表し;Mは水素原子、Na又はKを表し;m,nはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(II)で表される請求項1に記載の化合物:
【化2】

式中、R9は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のカルバモイル基、又はハロゲン原子を表す。
【請求項3】
下記式1〜4のいずれかで表される化合物。
【化3】

(式中Aは123I、124I、125I、131I、又は18Fを表す。M'はNa又はKを表す。)
【請求項4】
下記一般式(III)で表される化合物:
【化4】

式中、R32、R33は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し、Z4は、123I、124I、125I、131I、及び18Fからなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ベンゾ環、又は123I、124I、125I、131I、及び18Fからなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ナフト環を形成する原子群を表し、qは1〜5の整数を表す。
【請求項5】
請求項4に記載の一般式(III)で表される化合物とジアニル化合物とを反応させる工程を含む放射性同位元素標識色素化合物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(IV)で表される化合物:
【化5】

式中、R30、R31は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基を表し、Z3は、ヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ベンゾ環、又はヨウ素及びフッ素からなる群から選択される1又は2以上の置換基ならびにスルホ基及びスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された基からなる群から選択される1又は2以上の置換基を有する縮合ナフト環を形成する原子群を表す。
【請求項7】
下記一般式(V)で表される請求項6に記載の化合物:
【化6】

式中、Halはヨウ素又はフッ素を表し、M'は水素原子又はアルカリ金属原子を表す。

【公開番号】特開2008−133458(P2008−133458A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277070(P2007−277070)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】