説明

放射線検出ユニットおよび放射線検査装置

【課題】複数の検出基板を高密度に積層可能な放射線検出ユニット、およびこれを用いた放射線検査装置を提供する。
【解決手段】半導体検出ユニット20は、支持台21上に、複数の検出基板22が積層された積層体からなり、検出基板22は、配線基板24、2つの半導体検出素子25、コネクタ26、スペーサ28、およびバイアス電圧印加用配線部29等から構成されている。上下の検出基板22は、各々のスペーサ28が互いに接触して積層されている。バイアス電圧印加用配線部29は、ベースフィルム30とその下面に形成されたパッド電極31a,31cおよびパッド電極31aと31cとを接続する配線31bからなる配線層31から構成される。バイアス電圧印加用配線部29は、スペーサ28とその上側の検出基板22との間に配置され、スペーサ28の段差部28b上で、上側の配線基板24の下面との間の空間に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線半導体検出素子を有する放射線検出ユニットおよびこれを用いた放射線検査装置に関し、特に、被検体内にある放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する放射線検出ユニットおよび放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体(被検体)の内部の情報を得るために断層撮影装置が広く用いられるようになってきた。断層撮影装置としては、X線コンピュータ断層撮影(X線CT)装置、磁気共鳴映像装置、SPECT(single photon emission CT)装置、ポジトロン断層撮影(PET)装置が挙げられる。X線CT装置は、被検体のある断面に多方向から幅の狭いX線ビームを曝射し、透過したX線を検出してその断面内でのX線の吸収の度合いの空間分布をコンピュータで計算し画像化している。このように、X線CT装置は、被検体内部の形態的な異常、例えば出血巣を把握できる。
【0003】
これに対し、PET装置は被検体内の機能情報が精密に得られるため、近年盛んに開発が進められている。PET装置を用いた診断方法は、まず、ポジトロン核種で標識された検査用薬剤を、注射や吸入等により被検体の内部に導入する。被検体内に導入された検査用薬剤は、検査用薬剤に応じた機能を有する特定の部位に蓄積される。例えば、糖類の検査用薬剤を用いた場合、ガン細胞等の新陳代謝の盛んな部位に選択的に蓄積される。このとき、検査用薬剤のポジトロン核種から陽電子が放出され、この陽電子と周囲の電子とが結合して消滅する際に2つのガンマ線(いわゆる消滅ガンマ線)が互いに約180度の方向に放出される。この2つのガンマ線を被検体の周りに配置した放射線検出器により同時検出し、コンピュータ等で画像を再生成することにより被検体における放射性同位元素の分布画像データを取得する。このようにPET装置では被検体の体内の機能情報が得られるため、様々な難病の病理解明が可能である。
【0004】
PET装置は、多数のガンマ線検出器が被検体を360度囲むように配置される。ガンマ線検出器は、半導体検出素子を備えた半導体検出器と、半導体検出素子に入射したガンマ線を電気的に検出するための検出回路からなる。PET装置は、検出回路からのガンマ線が入射したことを示す検出信号およびガンマ線が入射した半導体検出素子の位置情報に基づいて、ガンマ線の発生位置を同定する。そして、PET装置は、多数のガンマ線を検出することで、被検体内の検査用薬剤分布の画像を再生成する。
【0005】
消滅ガンマ線は被検体からランダムな方向に放出されるので、半導体検出器には検出効率(発生した消滅ガンマ線の数に対する検出したガンマ線の数の割合)を向上させるために多数の半導体検出素子が配置される。例えば、図1に示すように、筐体101内に、半導体結晶体と半導体結晶体にアノードおよびカソードが交互に積層された半導体検出素子103や、信号処理を行う半導体装置104,105が実装された基板102を備える放射線検出ユニット100が提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】
半導体結晶体には、ガンマ線の入射により生成された電子正孔対をアノードおよびカソードにそれぞれ集めるためバイアス電圧が印加される。バイアス電圧は、短時間で効率良く電子正孔対を集めるため、極めて高い電圧に設定される。例えば、上記特許文献1ではバイアス電圧は300Vに設定されている。
【特許文献1】特開2005−128000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体検出素子にバイアス電圧を供給するために、通常、ワイヤ配線や金属板が用いられている。これらの場合、検出基板を積層して高密度に半導体検出素子を配置しようとすると、ワイヤ配線や金属板と、配線基板とを電気的に絶縁する絶縁部材を設ける必要がある。ワイヤ配線や金属板に加え絶縁部材が占めるスペースが必要になるため、半導体検出素子を高密度に配置し難くなるという問題がある。半導体検出素子間に過度の隙間が生じるとその隙間を抜けるガンマ線の割合が多くなり検出効率が低下する。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、複数の検出基板を高密度に積層可能な放射線検出ユニット、およびこれを用いた放射線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、配線基板と、該配線基板の上面に固着された放射線を検出する半導体検出素子と、該配線基板の上面に固着されたスペーサと、該半導体検出素子にバイアス電圧を供給するバイアス電圧印加用配線部と、を有する検出基板と、前記検出基板が複数積層された積層体を固定する固定手段と、を備え、前記半導体検出素子は、半導体結晶体と、該半導体結晶体の上面にバイアス電圧を印加する第1の電極部と、該半導体結晶体の下面に信号を取出す第2の電極部とを有し、前記バイアス電圧印加用配線部は、フィルム状の可撓性支持部材と、該可撓性支持部材の下面に、第1の電極部と電気的に接続されたパッド電極および配線からなる配線層を有し、前記半導体検出素子とその上側の検出基板の配線基板との間に設けられてなることを特徴とする放射線検出器が提供される。
【0010】
本発明によれば、バイアス電圧印加用配線部は、フィルム状の可撓性支持部材とその下面に形成されたパッド電極および配線からなる配線層から構成される。したがって、バイアス電圧印加用配線部が占める高さを低減でき、検出基板を高密度に積層できる。その結果、半導体検出素子間の隙間が低減され、検出効率が向上する。さらに、可撓性支持部材は、配線層とその上側の検出基板とを電気的に絶縁する機能も合わせもつので、新たな絶縁部材を必要とせず、この点においても検出基板を高密度に積層できる。
【0011】
また、前記スペーサは、その上面の横方向の内側に上面よりも低い段差部を有し、上下に隣接する前記検出基板同士が、下側のスペーサの上面と、上側のスペーサの下面とが接触して積層されてなり、前記バイアス電圧印加用配線部が、段差部と、その上側の検出基板の配線基板との間に収容されてなる構成としてもよい。これにより、バイアス電圧印加用配線部がスペーサの段差部上の空間に収容されるので、いっそう高密度に積層できる。
【0012】
本発明の他の観点によれば、放射性同位元素を含む被検体から発生する放射線を検出する上記いずれかの放射線検出ユニットと、前記放射線検出ユニットに接続される検出回路ユニットと、前記検出回路ユニットから取得した放射線の入射時刻および入射位置を含む検出情報に基づいて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を取得する情報処理手段と、を備える放射線検査装置が提供される。
【0013】
本発明によれば、放射線検出ユニットの複数の半導体検出素子が互いに高密度に配置されているので検出効率が向上し、短時間で精密な検査が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の検出基板を高密度に積層でき、複数の半導体検出素子が高密度に配置された放射線検出ユニット、およびこれを用いた放射線検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。図2を参照するに、PET装置10は、被検体Sの周囲に配置され、ガンマ線を検出する検出器11と、検出器11からの検出データを処理し、得られた被検体Sの体内のポジトロン核種RIの位置の画像データを再生成する情報処理部12と、画像データを表示等する表示部13と、被検体Sや検出器11の移動等の制御を行う制御部14と、情報処理部12や制御部14に指示を送る端末や画像データを出力するプリンタ等からなる入出力部15等から構成される。
【0017】
検出器111〜118は、被検体Sの周囲に360度に亘って配置される。ここで、被検体Sの体軸方向をZ軸方向(Zおよび−Z方向)とする。検出器11は、被検体Sに対して相対的にZ軸方向に移動可能としてもよい。なお、図2においてPET装置10は8個の検出器111〜118が示されているがこれらの数は一例過ぎず、検出器111〜118の数は適宜選択される。
【0018】
検出器11は半導体検出ユニット20と検出回路ユニット16からなる。予め被検体Sにはポジトロン核種RIで標識化された検査用薬剤が導入されている。半導体検出ユニット20は、ガンマ線の入射面が被検体Sに面するように配置されている。
【0019】
ポジトロン核種RIから生じた陽電子の消滅の際に、2つのガンマ線γa、γbが同時に発生する。2つのガンマ線γa、γbは、互いに略180度をなして放出されるので、被検体Sを挟んで対向する検出器11の半導体検出ユニット20の半導体検出素子(図4に示す符号25)に入射する。ガンマ線γa、γbが入射した半導体検出ユニット20の各々は、ガンマ線γa、γbの入射により生じる電気信号(検出信号)を検出回路ユニット16に送出する。
【0020】
検出回路ユニット16は、検出回路(不図示)備え、半導体検出ユニット20から供給される検出信号に基づいて、ガンマ線γa、γbが検出素子に入射した時刻(入射時刻)を決定する。さらに、検出回路ユニット16は、入射時刻および入射位置情報(ガンマ線を検出した素子の識別番号等)等の検出データを情報処理部12に送出する。検出回路ユニット16の検出回路は、アナログ回路とデジタル回路の混載回路から構成される。
【0021】
情報処理部12では、検出データに基づいてコインシデンス検出および画像再生成アルゴリズムによる画像データの再生成を行う。コインシデンス検出は、入射時刻が略一致する2つ以上の検出データがある場合、それらの検出データを有効と判定し、コインシデンス情報とする。また、コインシデンス検出は、ガンマ線入射時刻が一致しない検出データを無効と判定し破棄する。そして、コインシデンス情報と、コインシデンス情報に含まれる検出素子番号等と、これに対応する検出素子の位置情報等から所定の画像再生成アルゴリズム(例えば、期待値最大化(Expectation Maximization)法)に基づいて画像データを再生成する。表示部13は、入出力部15の要求に応じて再生成された画像データを表示する。
【0022】
以上の構成および動作により、PET装置10は、被検体Sの体内に選択的に位置するポジトロン核種RIからのガンマ線を検出し、ポジトロン核種RIの分布状態の画像データを再構成する。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態に係る半導体検出ユニットの斜視図、図4は、第1の実施の形態の検出基板の分解斜視図である。なお、図3は、ガンマ線が入射する方向、すなわち半導体検出ユニットの正面側から見た図である。
【0024】
図3および図4を参照するに、半導体検出ユニット20は、支持台21上に、複数の検出基板22が積層された積層体からなり、積層体は4個のボルト23aおよびナット23bからなる固定部材23により固定されている。図4では一例として検出基板22が16個の場合を示している。検出基板22は、配線基板24、2つの半導体検出素子25、コネクタ26、スペーサ28、およびバイアス電圧印加用配線部29等から構成されている。検出基板22は、上下の検出基板22のそれぞれのスペーサ28が互いに接触して積層されている。すなわち、下側のスペーサ28の上面28aと上側のスペーサ28の下面28cとが接触し、スペーサ28によって上下方向の検出基板22の位置が規定されている。
【0025】
図5は、配線基板の平面図である。図5を図3および図4と共に参照するに、配線基板24には、ガラスエポキシ基板や、ポリイミド基板、ガラス基板およびアルミナ基板等のセラミック基板等を用いることができる。配線基板24の表面には検出信号の取出し用のパッド電極24bと、パッド電極24bとコネクタ26とを接続する配線パターン24aが形成されている。パッド電極24bは、後述する半導体検出素子25の第2電極部の導電膜と同数形成されている。配線基板24は、配線パターン24aがその表面に形成されている以外に、配線基板24中に形成されている、いわゆる多層積層配線基板である。なお、配線基板24は、単層配線基板でもよい。
【0026】
また、配線基板24にはバイアス電圧印加用の配線が形成されていないので、配線パターン24aを例えば配線基板24の幅方向(X軸方向)の中央から略線対称に配置できる。このため、配線パターン24aの非対称な配置に起因する配線基板24の反りや撓み等を低減でき、過度の反りや撓みによって生じる、半導体結晶素子25が配線基板24から剥離するような深刻な障害を回避できる。
【0027】
コネクタ26は、そのタイプは特に限定されず、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)等が接続可能なフラットケーブル用コネクタを用いることができる。
【0028】
図6は、図3に示す半導体検出ユニットのA−A線断面図であり、配線層31のパッド電極31aを通る断面図である。なお、図6は、2個の検出基板の断面のみを示し、他は検出基板を省略している。
【0029】
図6を図3および図4と共に参照するに、半導体検出素子25は、下面に溝部33aが形成された略平板状の半導体結晶体33と、半導体結晶体33の上面に形成された第1電極部34と、半導体結晶体33の下面に形成された第2電極部35等からなる。
【0030】
半導体結晶体33は、その材料としては、例えば、エネルギーが511keVのガンマ線に有感なテルル化カドミウム(CdTe)、Cd1-xZnxTe(CZT)、臭化タリウム(TlBr)、シリコンなどが挙げられる。また、これらの材料には導電性等を制御するためのドーパントが含まれていてもよい。シリコンはCdTeよりも機械的強度が高いので加工中に結晶欠陥が生じにくいので好ましい。半導体結晶体33は、半導体の結晶成長法であるブリッジマン法や、移動加熱法を用いて半導体結晶を形成し、所定の結晶方位に平板状に切出して得られる。
【0031】
また、半導体結晶体33の下面には、幅方向(X軸方向)に等間隔に離隔され、奥行き方向(Y軸方向)に延在する複数の溝部33aが形成されている。半導体結晶体33を溝部33aによって幅方向に分割することで、ガンマ線の幅方向の入射位置をより正確に検出できるようになる。
【0032】
第1電極部34は、半導体結晶体33の上面を略覆う導電膜からなる。第1電極部34には負のバイアス電圧Vbが印加され、カソードとなっている。半導体結晶体33がCdTeからなる場合は第1電極部34には、例えばPt膜が用いられる。第1電極部34は、バイアス電圧印加用配線部29の配線層31のパッド電極31aと導電性接着層38により電気的に接続されている。バイアス電圧Vbは、直流電圧で例えば−60V〜−1000Vに設定される。
【0033】
第2電極部35は、半導体結晶体33の下面に、溝部33aと溝部33aとの間の凸部の表面に、X軸方向には所定の幅で、隣接する電極とは互いに離隔され、Y軸方向に延在する複数の導電膜からなる。半導体結晶体33がCdTeからなる場合は、第2電極部35は例えばAu(金)膜からなり、半導体結晶体33の第2電極部35側にはIn(インジウム)が注入・拡散される。これにより第2電極部35とCdTeとの間にショットキー接合が形成される。第2電極部35の各々の導電膜は配線基板24に設けられたパッド電極24bに導電性ペーストや異方性導電接着剤等の導電性接着層36により固着されている。
【0034】
パッド電極24bは配線パターン(図5に示す符号“24a”)およびコネクタ26を介して、図示されない検出回路ユニットの検出回路に接続される。検出回路では、抵抗を介して接地されるので、第2電極部35はアノードとなる。なお、第2電極部35の導電膜には接続される回路を一つのみ示し他を省略している。
【0035】
次に半導体検出素子25の動作を説明する。半導体結晶体33にガンマ線が入射すると、確率的に電子正孔対が生成される。半導体結晶体33には、第2電極部35から第1電極部34の方向に電界が印加されているので正孔は第1電極部34に引きつけられ、電子は第2電極部35に引きつけられ出力信号(検出信号)が検出回路ユニットの検出回路に送出される。
【0036】
スペーサ28は、X軸方向に延在する平板状の基部28Aと、基部28AのX軸方向の両側部にY軸方向の紙面手前側(ガンマ線の入射方向)に延在する一対の腕部28Bを有する。スペーサ28には、基部28Aと一対の腕部28Bにより三方が囲まれ、ガンマ線入射側が開放されたスペースが形成される。このスペースには、スペーサ28が配線基板24に固着された2つの半導体検出素子25が収容される。半導体検出素子25とスペーサ28との互いの接触が回避される。これにより、半導体検出素子25とスペーサ28とが互いに接触する場合よりも互いの位置決めがし易くなる。
【0037】
また、スペーサ28は下面28cが平坦になっている。スペーサ28には、下面28cを基準とした場合、最も高い面である上面28aと、上面28aよりも低い段差部28bが設けられている。上面28aは平坦であり、上面28aと下面28cとにより検出基板22の上下方向の位置が規定される。また、下面28cには、配線基板24の上面と接着層41を介して接着されている。下面28cは平坦であるので、配線基板24の上面の上下方向の位置を正確に決められる。
【0038】
段差部28bは、上面28aのX軸方向内側に設けられ、スペーサ28のY軸方向に延在している。図6に示すように、段差部28b上にはバイアス電圧印加用配線部29が収容されると共に、その上に積層される検出基板22の配線基板24が収容され、バイアス電圧印加用配線部29は上側の配線基板24との接触が回避される。これにより、スペーサ28の厚さだけで検出基板22の上下方向(Z軸方向)の位置が決まるので、半導体検出素子25の上下方向の位置決めが容易になり、その結果、精度良く半導体検出素子25を配置できる。
【0039】
また、スペーサ28には厚さ方向に貫通する開口部28−1〜28−3が設けられている。開口部28−1は、スペーサ28のX軸方向の両側にそれぞれ2つが設けられている。開口部28−1は、半導体検出ユニット20を固定するためのボルト23aの軸が挿入されるが、その内径(直径)はボルトの軸の直径よりも大きく設定されている。なお、開口部28−1はX軸方向両側部にそれぞれ2個形成されているが、1個でもよく3個以上でもよい。また、開口部28−2,28−3は、例えば、図4に示す配線基板24とスペーサ28とを固着するための接着剤を導入するために設けられている。開口部28−2,28−3は、その数に特に制限はなく、第1の実施の形態では、設けなくともよい。
【0040】
また、スペーサ28は、半導体検出ユニット20の固定の際の上下方向の締め付け力により変形しない程度の弾性率を有する材料であれば特に制限はないが、例えば、金属(合金)およびセラミック材料等から選択される。スペーサ28は、とりわけセラミック材料からなることが好ましい。スペーサ28は、セラミック材料を用いる場合、鋳型により成型し上面28aおよび下面28cが研磨加工により精度良く形成される。セラミック材料では研磨加工により平坦性良く、かつ極めて高い寸法精度が得られるため、スペーサ28は良好な寸法精度が得られる。なお、段差部28bは上面28aや下面28cよりも比較的研磨加工し難いが、段差部28bの平坦性や寸法は上面28aや下面28cよりも精度が悪くてもよいため、スペーサ28が製造し易いという利点がある。
【0041】
図7は、バイアス電圧印加用配線部の平面図、図8は、図3に示す半導体検出ユニットのB−B線断面図である。なお、図7では、配線層31は実線で示しているが、ベースフィルム30の下側に形成されている。また、図8は、図3に示す配線層31に沿った断面図である。
【0042】
図7および図8を図4および図6と共に参照するに、バイアス電圧印加用配線部29は、ベースフィルム30と、ベースフィルム30の下面に形成されたパッド電極31a、31cおよびパッド電極31aと31cとを接続する配線31bからなる配線層31から構成される。
【0043】
ベースフィルム30は、可撓性樹脂材料、例えばポリイミドやポリエステルからなり、耐熱性が優れる点でポリイミドが好適である。なお、ベースフィルム30は、単層でも多層積層体のいずれでもよい。
【0044】
パッド電極31aは、ベースフィルム30の下面に、2つの半導体検出素子25の第1電極部34のそれぞれに対応する位置に形成されている。
【0045】
また、パッド電極31cはパッド電極31aと配線31bにより電気的に接続され、パッド電極31aの他端に、開口部31c−1と共に形成されている。パッド電極31cは、配線基板24よりも外側に延出した位置に設けられており、バイアス電圧が供給されるバイアス端子42(例えば、棒状のステアタイト等の絶縁材中を金属材料からなる貫通端子が形成された端子)が接続される。バイアス端子42は、そのねじ部(例えば“おねじ”)がパッド電極31cの開口部31c−1に挿入され、その上のバイアス端子42のねじ部(例えば“めねじ”)と螺合することで、バイアス端子42とパッド電極31cとが圧接され、電気的に接続される。バイアス端子42により上下の検出基板22のパッド電極31cをそれぞれ接続することで、半導体検出ユニット20の総てのパッド電極31cを一本に連なったバイアス端子42により電気的に接続される。このように、多数の検出基板22にバイアス電圧を簡単な構造で容易に供給できる。また、バイアス端子42を検出信号が伝送されるコネクタ26から離隔することで、コネクタ26の耐圧設計が容易になる。
【0046】
パッド電極31a,31cおよび配線31bは電気めっきあるいは無電解めっき等によるCu膜からなり、パッド電極31a,31cはさらにCu膜の表面を覆うAu膜が形成される。
【0047】
配線層31は、パッド電極31a,31c以外の表面、すなわち配線31bの表面にはレジスト材等の絶縁層39が形成されている。絶縁層39によりバイアス電圧用配線層31がパッド電極31a以外の部分で第1電極部34やスペーサ28に電気的に接触することが回避される。
【0048】
また、配線層31には、上述したように、−60V〜−1000Vのバイアス電圧が印加されるが、ベースフィルム30により、その上側の配線基板24と配線層31とが電気的に絶縁される。すなわち、ベースフィルム30は、薄膜の配線層31の支持部材として機能すると共に、上側の配線基板24との絶縁部材としても機能する。これにより、少ないスペースでバイアス電圧印加用配線部29を設けることができるので検出基板22の高密度積層が可能となる。
【0049】
また、ベースフィルム30はその厚さが例えば25μm〜50μmで、パッド電極31a,31cおよび配線31bの厚さが例えば18μm、絶縁層39の厚さが例えば20μmである。したがって、バイアス電圧印加用配線部29の総厚は63μm〜88μm程度であるので、スペーサ28の段差部28bを例えば0.3mmに設定することで、段差部28bに十分に収容可能である。
【0050】
さらに、配線層31は、配線基板24に形成された配線パターン24aから離隔して配置されている。これにより、配線基板24内の絶縁対策が容易になる。
【0051】
なお、バイアス電圧印加用配線部29は、半導体検出ユニット20を組み立てる際に、スペーサ28の段差部28bのX軸方向両側の側壁に規制されてX軸方向の位置決めがされる。さらにY軸方向の位置決めをするために、ベースフィルム30に例えば直径0.5mmの位置決め用孔30−1を設けてもよい。スペーサ28に予め基準マークを形成し、この位置決め用孔30−1の位置を基準マークに合わせることで、Y軸方向の位置決めが容易となる。
【0052】
なお、先の図4を参照するに、検出基板22は、半導体検出素子25とスペーサ28とが所定の位置関係となるように配置・固着されている。所定の位置関係とは、例えば、半導体検出素子25の外形と、スペーサ28の腕部28Bの側面との位置関係である。このように設定することでX−Y平面上での半導体検出素子25とスペーサ28との位置関係が決まる。
【0053】
第1の実施の形態によれば、バイアス電圧印加用配線部29は、ベースフィルム30とその下面に形成されたパッド電極31a,31cおよび配線31bからなる配線層31から構成される。バイアス電圧印加用配線部29は、従来よりも薄く形成できるため、バイアス電圧印加用配線部29が占める高さを低減でき、検出基板22を高密度に積層できる。その結果、半導体検出素子25間の隙間が低減され、検出効率が向上する。さらに、半導体検出ユニット20の高さを低減でき、小型化できるという利点もある。
【0054】
なお、図6に示す半導体検出素子25は、その半導体結晶体33が第2電極部35側に溝部33aが形成されているが、半導体結晶体33を平坦面として、その表面に第2電極部35を設けてもよい。また、さらに、半導体結晶体33の代わりに多数の針状の直方体の半導体結晶体を貼り合わせた集合体を用いてもよい。これらの半導体結晶体については、次に説明する第2の実施の形態においても同様である。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るPET装置は、第1の実施の形態に係るPET装置の変形例であり、半導体検出ユニットのバイアス電圧供給用の配線構造が異なる以外は、図3等に示す半導体検出ユニットと同様に構成されている。
【0056】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体検出ユニットの斜視図、図10は、第2の実施の形態に係る検出基板の分解斜視図、図11は、図9に示す半導体検出ユニットのC−C線断面図である。
【0057】
図9〜図11を参照するに、半導体検出ユニット50は、バイアス電圧供給用の配線構造が、バイアス電圧印加用配線部59と、配線基板24上に形成されたバイアス電源接続用電極55と、バイアス電圧印加用配線部59とバイアス電源接続用電極55とを電気的に接続する、スペーサ28の開口部28−1に設けられた接続端子56等からなる。
【0058】
バイアス電圧印加用配線部59は、先の図7に示したバイアス電圧印加用配線部29と略同様に構成されるが、ベースフィルム30が略矩形であり、パッド電極51cが、スペーサ28の開口部28−1に対応する位置に形成されている。
【0059】
また、配線基板24の表面には、スペーサ28の開口部28−1に対応する位置から奥行き方向(Y軸方向)の端部に亘ってバイアス電源接続用電極55が形成されている。バイアス電源接続用電極55には、バイアス電圧が外部の直流電源から供給される。
【0060】
接続端子56は例えば円筒状の金属材料からなる。接続端子56は、スペーサ28の開口部28−1に挿入され、配線層51のパッド電極51cとバイアス電源接続用電極55との間に、例えば銀ペースト等の導電性接着剤からなる導電性接着層38によりそれぞれ接続される。以上説明したバイアス電圧供給用の配線構造により、半導体検出素子25の第1電極部34にバイアス電圧が供給される。
【0061】
第2の実施の形態によれば、半導体検出素子25に第1の実施の形態と異なる配線構造で略同様の効果を奏する半導体検出ユニット50を提供できる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0063】
例えば、上述した実施の形態では、PET装置を例に説明したが、本発明は、SPECT(単一光子放射形コンピュータ断層撮影)装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来の放射線検出ユニットの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体検出ユニットの斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の検出基板の分解斜視図である。
【図5】配線基板の平面図である。
【図6】図3に示す半導体検出ユニットのA−A線断面図である。
【図7】バイアス電圧印加用配線部の平面図である。
【図8】図3に示す半導体検出ユニットのB−B線断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る半導体検出ユニットの斜視図である。
【図10】第2の実施の形態に係る検出基板の分解斜視図である。
【図11】図9に示す半導体検出ユニットのC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 PET装置
11,111〜118 検出器
12 情報処理部
13 表示部
14 制御部
15 入出力部
16 検出回路ユニット
20,50 半導体検出ユニット
21 支持台
22,52 検出基板
23 固定部材
24 配線基板
24a 配線パターン
24b,31a,31c,51c パッド電極
25 半導体検出素子
26 コネクタ
28 スペーサ
28A 基部
28B 腕部
28a 上面
28b 段差部
28c 下面
29,59 バイアス電圧印加用配線部
30 ベースフィルム
30−1 位置決め用孔
31,51 配線層
31b 配線
33 半導体結晶体
34 第1電極部
35 第2電極部
36,38 導電性接着層
39 絶縁層
41 接着層
42 バイアス端子
55 バイアス電源接続用電極
56 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、該配線基板の上面に固着された放射線を検出する半導体検出素子と、該配線基板の上面に固着されたスペーサと、該半導体検出素子にバイアス電圧を供給するバイアス電圧印加用配線部と、を有する検出基板と、
前記検出基板が複数積層された積層体を固定する固定手段と、を備え、
前記半導体検出素子は、半導体結晶体と、該半導体結晶体の上面にバイアス電圧を印加する第1の電極部と、該半導体結晶体の下面に信号を取出す第2の電極部とを有し、
前記バイアス電圧印加用配線部は、フィルム状の可撓性支持部材と、該可撓性支持部材の下面に、第1の電極部と電気的に接続されたパッド電極および配線からなる配線層を有し、前記半導体検出素子とその上側の検出基板の配線基板との間に設けられてなることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記スペーサは、その上面の横方向の内側に上面よりも低い段差部を有し、
上下に隣接する前記検出基板同士が、下側のスペーサの上面と、上側のスペーサの下面とが接触して積層されてなり、
前記バイアス電圧印加用配線部が、段差部と、その上側の検出基板の配線基板との間に収容されてなることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記バイアス電圧印加用配線部は、バイアス電圧が供給される側が検出基板から外側に延出してなることを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記配線基板は、その上面にバイアス電圧が供給されるバイアス電源接続用パッド電極が形成されてなり、
前記バイアス電圧印加用配線部の配線層とバイアス電源接続用パッド電極とを接続する接続端子をさらに有することを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記スペーサは、その段差部に厚さ方向に貫通すると共に配線基板の表面を露出させる開口部を有し、
前記接続端子は円筒状の金属部材からなり開口部中に配置されてなることを特徴とする請求項4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記スペーサはセラミック材料からなることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の放射線検出ユニット。
【請求項7】
放射性同位元素を含む被検体から発生する放射線を検出する請求項1〜6のうちいずれか一項記載の放射線検出ユニットと、
前記放射線検出ユニットに接続される検出回路ユニットと、
前記検出回路ユニットから取得した放射線の入射時刻および入射位置を含む検出情報に基づいて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を取得する情報処理手段と、を備える放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−206033(P2007−206033A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28811(P2006−28811)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】