説明

放射線検出器および放射線分析装置

【課題】重イオンや超高分子をエネルギー分解能良くかつ検出効率も高く、高速で時間精度良く測定でき、粒子源からの輻射熱の影響も受け難い放射線検出器およびその放射線検出器を用いた分析装置を提供すること。
【解決手段】中央も含めて超伝導直列接合4で検出器用の基板1の表側を出来るだけ広く均一に覆うこと、薄い基板1を用いること、基板の少なくとも1つの表面に輻射反射膜25を設けること、あるいは基板の超伝導直列接合を設けた面とは反対側の面の上に直接に超伝導体帯状薄膜検出器28を設けることによって解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重イオンや加速された高分子などの放射線を計測する放射線検出器に関するものである。また、本発明は放射線検出器を備える放射線分析装置にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線の入射に伴う固体からの電子の放出、ガスの電離、放射線による半導体中でのエネルギーギャップの上への電子の励起などを利用した従来の放射線検出器では電子に数eVから数10eV程度以上のエネルギーを与えないと電子による信号を得るのは困難である。速度の遅い粒子、すなわち比較的エネルギーが小さくてかつ重い粒子などでは衝突によって電子に大きなエネルギーを与えることは困難であり、従来の固体からの2次電子の放出、ガスの電離や半導体中での電子の励起を利用した検出器での測定は信号電荷生成の効率が低い。
【0003】
例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass
Spectrometry:MALDI−TOFMS)ではパルスレーザ照射によってイオン化された粒子を、通常、数10kVのある一定の電場で加速する。電荷が同じであればその電場で得るエネルギーも同じであり、重い粒子ほど低速となる。それらのイオンがある一定の距離を走行するのに要する時間を測定することによって質量が測定できる。すなわち、飛行時間型質量分析(以下ではTOFMSと略記する)では、検出器の時間分解能が質量の分解能を決定する。
【0004】
TOFMS用の検出器としては通常マイクロチャンネルプレート(以下では、MCPと略記)が用いられている。放射線がMCPに入射して2次電子が発生してその2次電子がMCP内に入りこむと、MCP中の電場で電子が加速されてMCP中の壁にぶつかってさらに2次電子が生成されて信号電荷が増幅され、大きな信号が作り出される。しかしながら、MCPでは質量が水素原子の数万倍程度以上の高分子に対しては検出感度が低い、すなわち多くの高分子が入射して初めてやっと1つの信号が発生するという問題があった。質量が大きいほど検出効率は低くなる。その上、MCPには殆どエネルギー分解能がないため、質量Mと電荷量Qの比(M/Q)が同じ粒子は飛行時間が同じになってしまうために識別できないという問題もあった。
【0005】
超伝導トンネル接合を用いた放射線検出器では、重イオンなどのエネルギーをフォノンに変換し、フォノンで電子を励起させて信号電荷を得ることが出来る。超伝導トンネル接合を用いた放射線検出器は速度の遅い粒子に対して感度が高くなり得ることとエネルギー高分解能になり得ることが理論計算に基づいて示された(非特許文献1参照)。また、実際にα粒子が検出され、超伝導トンネル接合で直接に放射線を吸収させて放射線を検出する超伝導単接合検出器が発明された(非特許文献2参照)。
【0006】
TwerenboldはTOFMSにおける超高分子用の検出器として超伝導単接合検出器を用いることを提案し、またそれが有用であることを実証した(特許文献1)。その後、超伝導単接合検出器をTOFMS装置用に用いた研究開発は幾つか行われ、超伝導単接合検出器では従来のMCP検出器では検出効率が極めて低い質量が水素原子の10万倍以上の高分子も高効率で検出できることが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。また、MCPでは困難な高分子のエネルギーの測定も可能である(特許文献2参照)。そのため、質量Mと電荷量Qの比(M/Q)が同じで飛行時間が同じになってしまっても、Qに比例するエネルギーが異なるために質量の異なる粒子を識別できるという長所もある。
なお、従来のNbの超伝導単接合検出器を用いたTOFMSでの高分子に対する信号の大きさは、同じエネルギーのX線に対する信号と比べて約1/5になるという報告がある(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、有効面積が100mm以上のMCP検出器と比べた場合、それらの超伝導単接合検出器には面積が0.04mm程度と小さくて検出効率が低いという問題がある。個々の超伝導トンネル接合の面積の小ささを補うために複数の超伝導トンネル接合を設けて検出器としての有効面積を増大させることも行われている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、それぞれの超伝導トンネル接合からの信号をそれぞれ個別に処理しなければならず、検出器システムとして大掛かりになるという問題がある。
【0008】
水素原子の数十万倍の質量を持つ高分子ほどではないが、ウランイオンなどの重イオンも従来の半導体放射線検出器ではエネルギーの精度の良い検出が困難である。重イオンの場合は、通常、速度は高分子よりも速く、半導体放射線検出器に入射すれば信号を発生させる。しかし、そのエネルギーのうちのかなり多くの部分が直接にフォノンの生成に費やされるために、半導体検出器ではX線やγ線あるいは電子などと比べて重イオンに対しては相対的に信号が小さくなり、またエネルギー分解能も悪くなる。
【0009】
重イオンの場合もフォノンでも信号が発生する超伝導トンネル接合を用いた超伝導単接合検出器がエネルギーの高分解能検出器になることが期待される。しかしながら、超伝導単接合検出器は面積が小さくて検出効率が低いことに加えて、放射線を吸収する超伝導電極の厚さが0.2μm程度と薄い。高分子の場合とは異なり、重イオンが検出器中で止まるのに要する距離よりも検出器が薄いことが多い。そのため、従来の超伝導単接合検出器でも重イオンのエネルギーの精度の高い測定は困難である。
【0010】
図1と図2に示したような従来の超伝導直列接合を用いた超伝導直列接合検出器は超伝導単接合検出器と比べて面積を大きくできる。図1は、従来の超伝導直列接合検出器の平面図であり、1は基板、2はボンディングパッド、3は配線、4は超伝導直列接合を表している。図2は、図1のA部の拡大図であり、5は超伝導トンネル接合を表している。ここで、超伝導直列接合とは、多数の超伝導トンネル接合を直列に接続し、また直列に接続した超伝導トンネル接合を必要に応じてさらに多数並列に接続したものである(特許文献3)。その上、検出器としての厚さも大きくすることができる。放射線10を超伝導トンネル接合よりもはるかに厚い基板1で吸収して、そのエネルギーをフォノン6に変換してから、フォノンを超伝導直列接合4に効率良く吸収させて信号を発生させることができる(図3参照)。そのため、高分子や重イオンに対する検出効率が高い。図3は、超伝導直列接合検出器での放射線検出方式を示す説明図であり、7は接着剤、8は低温に冷却された銅板、9はコリメータを表している。
【0011】
一般に超伝導直列接合を用いた放射線検出器では信号の大きさが放射線の入射位置に依存する。複数の超伝導直列接合を用いた超伝導直列接合検出器では各超伝導直列接合からの放射線による信号の大きさを比較することによって放射線の入射位置を測定することができる。入射位置を測定できる場合にはその位置情報を利用して信号の大きさの入射位置依存性を補正してエネルギーの高い分解能を得ることができる(特許文献4)。
【0012】
放射線検出器ではエネルギー分解能が良いことが求められることが多いが、放射線の入射した時間の高精度の情報が求められることも多い。しかしながら、従来の超伝導直列接合検出器では、検出器の中央部に照射された放射線によって生成されたフォノンが基板中を拡散して離れたところにある超伝導直列接合に到達するのに時間がかかり、そのために信号が遅くて放射線の入射した時間の測定精度が低いという問題がある。そのため、超伝導直列接合検出器はTOFMS用の検出器としては適していないと言われている(例えば、非特許文献3参照)。
【0013】
また、従来の超伝導直列接合検出器では、薄い基板は検出器素子の作製中に割れ易いために、またX線を高い吸収効率で検出するために厚さが0.4mm以上の厚い基板が用いられてきた。そのため、基板の裏から表側の超伝導トンネル接合までフォノンが拡散するのにも時間がかかるという問題もあった。しかも、検出器としての有効面積を大きくするために検出器中央の超伝導直列接合を配置しない領域を広くすると検出器からの信号の立ち上がり時間はますます長くなると同時に基板中を伝播中にフォノンのエネルギーが減衰して超伝導体中で電子を励起できなくなり、信号が小さくなるという問題もあった。
【0014】
超伝導トンネル接合を用いた検出器と同じように超高分子によっても効率良く信号を発生させることができ、かつ超伝導トンネル接合よりも高速であって時間分解能の優れた検出器として超伝導体の帯状の薄膜を利用した検出器がある(例えば、非特許文献4および特許文献5参照)。ここでは、そのタイプの検出器を超伝導体帯状薄膜検出器と呼ぶことにする。
【0015】
超伝導体帯状薄膜検出器では単結晶のサファイア基板などの表面上に幅が狭くかつ薄い帯状の超伝導膜のジグザグパターンなどを形成しておき、例えばその膜の超伝導臨界電流より少しだけ小さい電流を流しておく。放射線が膜に入射して膜の一部の温度が上昇して超伝導状態が壊れると、電流はその外側の超伝導状態をまだ保っている場所を流れようとするが、その結果としてその場所の電流密度が超伝導臨界電流の密度を超えてしまい、放射線が入射した点の近傍では超伝導体の帯の幅全体で超伝導が壊れる。すなわち、その部分では電圧が発生する。放射線から超伝導薄膜に与えられたエネルギーはその後速やかにフォノンとして単結晶基板に放出され、薄膜は直ぐに超伝導状態へと復帰する。そのことに起因する電圧の変化を測ることによって、超伝導体帯状薄膜検出器では放射線の入射時間を例えば数10ns以下で高精度に計ることができる。
【0016】
Spiel達は、幅34μm、厚さ0.1μmのインジウム膜で、エネルギーが5.3MeVのα粒子を測定した。信号の立ち上がり時間は約15nsであった(非特許文献4)。また、例えば、幅0.2μm、厚さ5nmのNbN超伝導膜では可視光や近赤外光の光子1個ごとが検出されており、数10psから100ps程度のパルス幅の信号が得られている(例えば、特許文献5)。しかしながら、超伝導体帯状薄膜検出器ではエネルギー分解能は悪い、あるいはエネルギー分可能は殆んど無いという問題がある。
【0017】
超伝導トンネル接合で直接に放射線を吸収して放射線を検出する超伝導単接合検出器や超伝導直列接合検出器などの低温に冷却して使用する低温放射線検出器では低温放射線検出器に特有の問題もある。超伝導直列接合検出器をX線やγ線の測定に用いる場合には放射線の線源と超伝導体放射線検出器との間の低温部の壁に設けた窓に金属膜や有機膜などの赤外線に対する輻射シールド膜を設けるのが通常である。しかしながら、重イオンや超高分子、あるいはもっと一般的に荷電粒子は透過力が小さいために、金属膜や有機膜などの赤外線に対する輻射シールド膜があるとそれを透過できない、あるいは膜を透過できた場合にも膜中でエネルギーの一部分を失うために検出器でそれら粒子のエネルギーを精度良く測定できなくなるという問題がある。そのため、低温放射線検出器で重イオンや超高分子などの荷電粒子を検出するときには穴の無い輻射シールド膜を用いるのは困難である。重イオンや高分子源は通常室温にあり、輻射シールドが無いとそれらの線源からの輻射熱が低温放射線検出器の温度を上げてしまい、低温放射線検出器の感度とエネルギー分解能を劣化させるという問題がある。TOFMSの場合には、高分子をイオン化して飛ばすためのパルスレーザ光の散乱光も低温放射線検出器の温度を上げてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5640010号公報
【特許文献2】米国特許第5994694号公報
【特許文献3】特許第2799036号明細書
【特許文献4】特開2004−061212号公報
【特許文献5】米国特許第6812464号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Nuclear Instrument And Methods 196(1982)275
【非特許文献2】応用物理 第60巻 第6号 (1991)第712〜715頁
【非特許文献3】Mass Spectrometry Reviews 18(1999)155
【非特許文献4】Applied Physics Letters 7(1965)292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上述べたように、従来の超伝導トンネル接合を用いた超高分子用の単接合検出器は検出効率が極めて低いという問題があった。また、従来の超伝導トンネル接合を用いた単接合検出器による重イオンの測定では、全エネルギーの測定は困難であり、そのためにエネルギー分解能も悪いという問題もあった。従来の超伝導直列接合検出器では、応答速度が遅く、放射線が検出器に入射した時間の精密な測定が困難であるという欠点もあった。その上、超伝導トンネル接合を用いた検出器は低温に冷却されていなければならないが、粒子源からの輻射熱で温度が上がり易いという問題もあった。
【0021】
解決しようとする課題は、重イオンや超高分子をエネルギー分解能良くかつ検出効率も高く、高速で時間精度良く測定できる検出器を提供することであり、その上、重イオンや超高分子の検出で問題となる輻射熱の影響を受け難い放射線検出器も提供することである。さらにそれらの放射線検出器を用いた放射線分析装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は全て半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる1つ以上の超伝導直列接合を設けた放射線検出器に関わるものである。
【0023】
少なくとも検出器の中心部に超伝導直列接合を近接させて配置することによって、放射線によってフォノンが生成された場所から超伝導トンネル接合までの距離を短くする。それによって、フォノンが短時間で超伝導トンネル接合に到達することができる。さらに0.3mmより薄い基板、より好ましくは0.2mmより薄い基板を用いることによってフォノンが発生した場所から超伝導トンネル接合までの距離をさらに短くする。
なお、イオン化した高分子は殆んど基板表面で止まるし、重イオンなどの荷電粒子は一般に固体中での飛程が短いため、多くの場合、0.2mmより薄い基板でもそれらの全エネルギーを測定できる。
【0024】
また、超伝導直列接合を近接させて配置するとは、本発明では超伝導直列接合間の距離を基板の厚さの2倍以下にすることである。なぜなら、放射線によって基板の裏側で発生したフォノンが表側まで到達する間にはフォノンは基板の厚さの2倍程度は横にも広がると考えられるため、超伝導直列接合の間の距離が基板の厚さの2倍以下であれば超伝導直列接合の間の隙間に起因する放射線の入射位置依存性は小さくなると考えられるからである。もちろん、超伝導直列接合の間の隙間は小さいほど好ましく、超伝導直列接合間の距離は例えば基板の厚さの0.5倍以下であることが更に好ましい。
【0025】
また、中央も含めて超伝導直列接合で検出器の表側を出来るだけ広く均一に覆うことによって検出器の感度の均一性を向上させ、感度の入射位置依存性を小さくする。
【0026】
超伝導直列接合を設けた面あるいはそれとは反対側の面の少なくとも片方の面の上に反射率の高い金属膜などからなる輻射反射膜を設けることによって、超高分子や重イオンの線源からの輻射熱やTOFMSでのパルスレーザの散乱光を反射させる。
なお、基板に設ける輻射反射膜は光に対する反射率の高いアルミニウムなどの金属の膜でも良いし、金属膜以外でも光に対する反射率の高いものであればそれを用いることが可能である。輻射反射膜の輻射熱に対する反射率は80%以上、より好ましくは90%以上であることが望まれる。
【0027】
放射線の入射する裏面には放射線の入射時間の情報を得るための超伝導体帯状薄膜検出器を設け、その反対側の表側の面にはエネルギー情報を得るための1つ以上の超伝導直列接合を設ける。
【0028】
なお、TOFMSでは10〜30kV程度の電場で加速された分子のエネルギーは分子の電荷に比例するため、電荷数が1のときのエネルギーをEとすると、電荷数が2と3のときのエネルギーはそれぞれ2Eと3Eであり、それらのエネルギーを識別するには必ずしも信号の大きさの入射位置依存性を補正して高いエネルギー分解能を得る必要は無い。入射位置依存性を補正する必要が無い場合には、超伝導直列接合検出器は超伝導直列接合を複数ではなくて1つ含むだけでもよい。
【0029】
TOFMS分析装置の高分子用の検出器あるいは重イオンなどの荷電粒子を用いた分析装置用の放射線検出器として、少なくとも基板表面の中央部を超伝導直列接合で覆った超伝導直列接合検出器を用いる。より好ましくは、それらの分析装置用の放射線検出器として、基板表面の中央部に4つ以上の超伝導直列接合を殆んど隙間が無いように近接されて配置した超伝導直列接合検出器、あるいは厚さが0.3mm以下の基板を用いた超伝導直列接合検出器、あるいは基板の少なくとも1つの表面上で超伝導直列接合の占める面積が60%以上である超伝導直列接合検出器、基板の少なくとも1つの表面に輻射反射膜を設けた超伝導直列接合検出器、あるいは基板の放射線入射側である裏側の面に超伝導体帯状薄膜検出器を設けてその反対側の面には超伝導直列接合を設けた超伝導直列接合検出器を用いる。
【発明の効果】
【0030】
重イオンや高分子などの放射線はサファイアやシリコンなどの薄い単結晶基板の裏側、すなわち超伝導トンネル接合を設けた面の反対側の面に入射させる。基板に入射した重イオンや高分子はその表面でエネルギーを失い、エネルギーはフォノンに変換させる。基板表面で発生したフォノンは単結晶の薄い基板中を高速に伝播して大面積の超伝導直列接合に到達し、超伝導トンネル接合の基板に接している超伝導電極に高い効率で吸収される。超伝導電極に吸収されたフォノンのなかでそのエネルギーが超伝導体のエネルギーギャップの大きさより大きいものは超伝導電子対を破壊して電子をエネルギーギャップの上に励起する。超伝導トンネル接合では、励起された電子はトンネル効果でトンネル障壁を透過し、信号電荷として検出器から取り出される。すなわち、超伝導直列接合検出器を用いることによって、検出器としての実効面積と実効厚さを従来の超伝導単接合検出器を用いたものと比べて大幅に増大できる。
【0031】
超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた面の中央部も超伝導直列接合で覆うことによって、フォノンが発生した場所から超伝導トンネル接合までの距離を短くしてフォノンを高速に吸収させることができる。超伝導直列接合で検出器の表面を中央も含めて均一に覆うことによって検出器の感度の均一性が向上し、感度の位置依存性が小さくなる。その結果として、面積の大きい超伝導直列接合検出器で高速性とエネルギー高分解能が放射線に対して同時に得られる。
【0032】
さらに、薄い基板を用いることによってさらに距離を短くしてさらに高速にできる。距離が短いと、その伝達の間にフォノンのエネルギーは余り減衰することもないため、信号も大きい。そのため、信号の発生が高速となり、粒子検出の時間分解能が向上する。TOFMSに用いた場合には、質量の分解能が向上する。また信号の大きさから高分子のエネルギーを知り、エネルギーから電荷数を知ることが出来る。電荷数が分かることによって、質量電荷比が同じでも質量が異なる高分子を識別できる。
【0033】
なお、重イオンや高分子などの荷電粒子を検出する場合、重イオンや高分子などの荷電粒子は空気を透過する力が弱いため、それらの粒子の発生装置と超伝導直列接合検出器および超伝導直列接合検出器を冷却するための冷凍機は連結されている必要がある。
【0034】
線源と検出器との間に輻射シールド膜を用いるのが困難な重イオンや高分子の測定においては、超伝導トンネル接合を用いた検出器の有効面積が大きくなると、超伝導トンネル接合の面積が増加した分だけ超伝導トンネル接合に入射してその中で電子を励起し得る輻射光が増加することになる。輻射光あるいは輻射熱で励起された電子は放射線による励起電子と同様にトンネル効果でトンネル障壁を透過してリーク電流となってノイズを増加させる。有効面積の広い超伝導直列接合検出器では、輻射の影響が大きい。超伝導直列接合検出器の基板の少なくとも1つの表面を輻射反射膜で覆うことによって線源からの輻射光あるいは輻射熱によって検出器で電子が励起されて感度や分解能が劣化するのを抑制することができる。感度が高いこと、すなわち信号/雑音比が大きいことはノイズから識別できる信号が現れるまでの時間を短くするので、時間分解能も向上させる。
【0035】
放射線の入射する裏面に設けた超伝導体帯状薄膜検出器からは高速の信号を取り出して放射線の入射時間の情報を取り出し、その反対側の表側の面に設けたエネルギー情報を得るための1つ以上の超伝導直列接合からは放射線のエネルギー情報を取り出すことによって、放射線の高精度の時間情報と高精度のエネルギー情報を同時に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の超伝導直列接合検出器の平面図。
【図2】図1の超伝導直列接合のA部の拡大平面図。
【図3】超伝導直列接合検出器での放射線検出方式を示す説明図。
【図4】本願発明の超伝導直列接合検出器の1実施例を示す模式的平面図。
【図5】本願発明の超伝導直列接合検出器の使用形態の概要を示す検出器周辺の模式図。
【図6】本願発明の超伝導直列接合検出器の1実施例を示す断面図。
【図7】本願発明の超伝導直列接合検出器の1実施例の基板裏面の超伝導体帯状薄膜検出器の模式的平面図。
【図8】本願発明の超伝導直列接合検出器の1実施例の断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係わる実施の形態を実施例を示しながら説明する。
【実施例1】
【0038】
図4は、本発明の1実施例の模式的平面図であり、1〜4は図1と同じである。なお、この図では簡単のために個々の超伝導トンネル接合は描かれていない。スパッタリング装置内で厚さが0.4mmで直径が76mmのサファイア基板の上に厚さが150nmのNb、50nmのAl、Al表面を酸化させたAlOx、50nmのAl、150nmのNbを順番に成膜した。その多層膜をリソグラフィー技術で微細加工して超伝導トンネル接合を作製した。サファイア基板は素子を作製した後に数十個の5.9mm×5.9mmの検出器素子チップに切断された。図4に示されているように、各検出器素子は4つの超伝導直列接合を含んでいる。各超伝導トンネル接合の大きさは25μm×25μm、下部超伝導電極の大きさは45μm×45μmであり、それらの超伝導トンネル接合を34個直列に接続し、それらの直列に接続した接合を更に並列に71個接続して面積が2.65mm×2.65mmの1つの直列接合が形成された。4つの超伝導直列接合は隙間なく配置されている。その超伝導直列接合検出器はヘリウム3クライオスタットの中で約0.4Kに冷却された。本実施例では、それらの4つの直列接合からの信号線は1つの信号線にまとめられ、信号としては1つにして取り出され、1つの電荷有感型の前置増幅器で増幅された。重イオンを模擬するために、放射線同位元素55Feから放出される5.9keVと6.5keVのX線が基板の超伝導トンネル接合を設けた面の反対側の面に厚さが0.2mmの銅製のコリメータを通して照射された。コリメータの穴は1.5mm×1.5mmである。
【0039】
5.9keVのX線に対する電荷信号の波高20−80%の立ち上がり時間は約1.5μsであった。(信号の大きさの平均値)/(雑音の大きさの平均値)である信号/雑音比は約30であり、時間分解能としては0.2μs以下が可能である。エネルギー分解能としては5.9keVに対して500eVが得られた。基板の厚さは従来の超伝導直列接合検出器と同じであるが、検出器の中心部にも超伝導直列接合を配置することによって、フォノンを吸収するのに必要な平均時間が短くなり、放射線に対する応答が高速になった。
【0040】
表面の面積は5.9×5.9mm、超伝導直列接合が占めている面積は5.3×5.3mmであり、超伝導直列接合が表面の約80%を占めている。超伝導直列接合の外側の面積が小さいために超伝導直列接合の外側に逃げ出したフォノンが速やかに超伝導直列接合のある領域に戻ってくる確率が高い。その結果、超伝導直列接合の占めている領域内で領域の外側の境界に近いところまで放射線に対する感度が高くなり、検出器の有効面積を大きくできる。
そのため、超伝導直列接合を設ける基板の表面は、超伝導直列接合で占められていない超伝導直列接合の外側の面積は40%以下、すなわち超伝導直列接合で占められている面積は60%以上であることが好ましい。
【0041】
なお、従来のNbの超伝導単接合検出器を用いたTOFMSでの高分子に対する信号の大きさは、同じエネルギーのX線に対する信号と比べて約1/5になるという報告があるが、TOFMSでの粒子のエネルギーは通常20keV程度以上である。TOFMS装置では電荷が2や3のイオンのエネルギーは電荷が1のイオンのそれぞれ2倍と3倍であり、5.9keVのX線に対する約500eVのエネルギー分解能は高分子に対しては2.5keVのエネルギー分解能に相当すると考えられるので、本実施例で得られたエネルギー分解能はTOFMSでは電荷数の異なる高分子を識別するのに十分に良いエネルギー分解能であると考えられる。
【0042】
比較例として、図1に示された中心部の1.5mm×1.5mmの領域に超伝導直列接合を設置していない従来の超伝導直列接合検出器を実施例1と同じようにして作製し、同じようにX線を測定した。サファイア基板の厚さが0.4mmのものでは信号の立ち上がり時間は10μs程度であった。検出器以外の条件は、実施例1と同じである。この従来の超伝導直列接合検出器では、フォノンの発生箇所から超伝導直列接合までの距離が大きく、そのために信号の立ち上がりは遅い。
【実施例2】
【0043】
実施例1と同じ検出器で実施例1と同じようにX線を測定した。ただしこの場合は、4つの直列接合からの信号が別々に取り出され、それぞれ別の信号処理システムで増幅され、各信号の大きさが記録された。各放射線に対するそれぞれの直列接合からの信号の大きさを比較することによって放射線の入射位置を求め、多数の放射線に対する入射位置情報を利用してX線による4つの信号の大きさの和の入射位置依存性を求め、その入射位置依存性のデータを用いて各放射線に対する信号の大きさの入射位置依存性を補正した。信号/雑音比は30であった。信号の大きさの入射位置依存性の補正前の5.9keVのX線に対するエネルギー分解能は約500eVであったが、入射位置依存性の補正後は280eVに向上した。
【0044】
実施例2の超伝導直列接合検出器では検出器の中心部は4つの超伝導直列接合で同じように覆われている。例えば、検出器の中心部に1つの大きな超伝導直列接合を設け、その周りに放射線の入射位置を測定するための4つの超伝導直列接合を設けることも可能である。ただし、そのような検出器では、放射線のエネルギーの大部分が中央の1つの超伝導直列接合で吸収されてその周りの超伝導直列接合からの信号は小さくなるため、エネルギーが数MeVと大きいα粒子などに対しては位置依存性の精度の良い補正が可能であるが、エネルギーが数100eVから数10keV程度のX線などに対しては信号の大きさの入射位置依存性の精度の高い補正は困難となり、エネルギー分解能は大きく劣化する。そのため、検出器中心部を1つの超伝導直列接合が大きく占有するのではなく、本実施例でそうであるように入射位置依存性の精度の高い補正ができるように中心部に少なくとも4つの超伝導直列接合が配置されていることが好ましい。
【実施例3】
【0045】
実施例1の検出器とは基板の厚さだけが異なり、基板の厚さが0.2mmである検出器を作製した。まず、厚さが0.2mmのサファイア基板を厚さが0.4mmサファイア基板の上に接着剤で貼り合わせ、その上への成膜と微細加工で超伝導直列接合を作製し、その後に貼り合わせていた基板を剥離させた。実施例1と同様に測定を行なった。信号/雑音比は33であった。エネルギー分解能としては5.9keVに対して480eVが得られた。5.9keVのX線に対する電荷信号の立ち上がり時間は波高20−80%で約1μsであった。検出器の中心部にも超伝導直列接合を配置しているため、基板が薄くなるとフォノンを吸収するのに必要な平均時間が更に短くなり、放射線に対する応答がさらに高速になった。時間分解能としては約0.15μsが得られた。
【実施例4】
【0046】
検出器素子自体およびX線の測定方法は実施例3と同じであるが、4つの直列接合からの信号は、それぞれ別個に取り出された。各放射線に対する信号の大きさの入射位置依存性を補正した。位置依存性補正前のエネルギー分解能は490eVであったが、位置依存性補正後のエネルギー分解能は270eVであった。
【0047】
比較例として、各超伝導トンネル接合の構造と接合間の距離は実施例3と同じであるが、直列数と並列数を変えて中心部を直列接合で覆った面積が約4×4mmの超伝導直列接合検出器を作製した。基板の大きさは実施例3と同じである。コリメータの1.5mm×1.5mmの穴を通してX線を照射した。4つの直列接合からの信号は、それぞれ別個に取り出された。信号/雑音比は約24であった。5.9keVのX線に対する補正前のエネルギー分解能は740eVであり、補正後の分解能は380eVであった。
基板表面上に超伝導直列接合が占める面積の割合が46%と小さいために信号が小さくなり、そのためにノイズの影響が大きい。その上、信号の大きさの位置依存性が大きく、位置依存性補正後のエネルギー分解能も良くない。
【実施例5】
【0048】
実施例3で用いたのと同じ構造の検出器の超伝導直列接合を形成した面の反対側の面である裏面にスパッタリング法で厚さが50nmのAl膜を成膜し、さらにその上にAlの酸化防止のために厚さが25nmのSiOを成膜した。
実施例3と同じ条件で裏面からX線を照射した。得られた信号の大きさは実施例3のときより約20%小さいだけだった。すなわち、Al層があるために超伝導直列接合に到達しなくなるフォノンの割合は小さい。
【0049】
次に、図5に示すように、上記の検出器を冷却している0.4K冷却台17を取り囲んでいる4.2Kの熱シールド13に内径が1mm、長さが40mmの銅のパイプ14を取り付けた。パイプのほぼ真ん中が4.2Kの熱シールドのところに位置するようにした。その外の77Kに冷却されている熱シールド12にも穴を明けて検出器の中心からはパイプを通して室温の壁15が見えるようにした。コリメータを取り付けた検出器11を取り囲んだ4.2Kの熱シールド113の内側と上記パイプ14の内側及び外側には黒い塗装を施して検出器から反射された輻射光が4.2Kの壁で速やかに吸収されるようにされている。また、パイプの中を直進してくる以外の輻射光はパイプ14の内壁で出来るだけ吸収されるようになっている。
上記の検出器を裏面の中心に室温からの輻射光が照射されるように設置し、X線は実施例1と殆んど同じように照射されるようにして55Fe16からのX線による信号を測定した。4つの直列接合からの信号線は1つの信号線にまとめられ、信号としては1つにして取り出され、1つの電荷有感型の前置増幅器で増幅された。信号/雑音比は約20であった。時間分解能としては約0.25μsが得られた。
【0050】
比較例として、輻射反射膜の無い実施例3の検出器を実施例5と同様に室温からの輻射光に曝しながら55FeからのX線による信号を測定した。4つの直列接合からの信号線は1つの信号線にまとめられ、信号としては1つにして取り出され、1つの電荷有感型の前置増幅器で増幅された。信号/雑音比は約5であった。
すなわちこのことから、実施例5の超伝導直列接合検出器では輻射光によるノイズの増大が輻射反射膜によって大幅に低減できていることが分かる。また、この比較例では信号/雑音比が小さいために信号が大きくなってから時間情報を取出さざるを得ず、またノイズによる信号の大きさの変動も大きいために、時間分解能は約0.5μsと悪かった。
【実施例6】
【0051】
図6に示すように、厚さが0.2mmのサファイア基板26の表側、すなわち超伝導直列接合を形成する側に厚さが50nmのAl膜の輻射反射膜25をまず成膜し、大気中に約1時間取り出して表面を酸化させ、その上に厚さが20nmのAl膜24を成膜し、さらにその上に実施例1と同じ超伝導直列接合を形成した。この場合、絶縁膜としてSiO膜でなくてAl膜を用いたのは接合のAl膜は微細加工中にエッチングされ難くて丈夫なためである。
実施例3と同じ条件で裏面からX線を照射した。得られた信号の大きさはこの場合も実施例5と同じく実施例3のときより約20%小さいだけだった。すなわちこの場合も、Al層があるために超伝導直列接合に到達しなくなるフォノンの割合は小さいことが分かった。
【0052】
この検出器を実施例5と同様に室温からの輻射光に曝しながら55FeからのX線による信号を測定した。この場合も、4つの直列接合からの信号線は1つの信号線にまとめられ、信号としては1つにして取り出され、1つの電荷有感型の前置増幅器で増幅された。信号/雑音比は約20であった。この場合も輻射光によるノイズの増大が輻射反射膜によって大幅に低減できている。
なお、輻射光の一部は散乱されて超伝導直列接合を設けた面の側にも回りこんで来ると考えられるから、接合の外側にも輻射反射膜を設けるのは効果があると考えられる。例えば、基板上に接合を形成した後に接合を絶縁体の膜で覆い、その上にAlの輻射反射膜を設けることもできる。その場合、信号を取り出すボンディングパッドの上の絶縁体の膜とAl膜はエッチングで除去することができる。
【実施例7】
【0053】
面積が5.9×5.9mmで厚さが0.4mmのサファイア基板の裏側、すなわち放射線の入射側に幅が1μm、厚さが20nmの窒化ニオブ(NbN)膜のジグザクパターンを面積が1×1mmの基板上の領域に形成して超伝導体帯状薄膜検出器を形成した(図7参照)。折り返した帯と帯の間には1μmの隙間があり、1×1mmの領域の50%が超伝導膜で覆われている。表側には実施例1と同じ超伝導直列接合検出器を形成した。検出器を約0.4Kに冷却し、クライオスタット内の検出器のすぐ傍に置いた放射性同位元素241Amから放出される約5.5MeVのα粒子がコリメータを通して検出器裏面の中心の約0.5mmの領域に照射された。超伝導体帯状薄膜検出器にはその温度での臨界電流の約70%の電流を流した。超伝導体帯状薄膜検出器からの信号は立ち上がり時間が0.2μs程度と高速であった。また、超伝導直列接合検出器からの信号は位置依存性補正後のエネルギー分解能が0.5%と優れたものであった。
【0054】
この結果から、基板の裏側に直接に設けた超伝導体帯状薄膜検出器は超伝導直列接合検出器のエネルギー分解能を殆んど劣化させないことが分かる。超伝導体帯状薄膜検出器が超伝導直列接合検出器のエネルギー分解能を殆んど劣化させないのは、超伝導体帯状薄膜検出器は薄いために、超伝導体帯状薄膜検出器で吸収された放射線のエネルギーは数10ns程度の非常に短い時間でフォノンとして単結晶基板に放出されて超伝導直列接合からの信号に寄与するためだと考えられる。また、NbN膜は極めて薄いために、フォノンを吸収してそのエネルギーを低下させることも少ないと考えられる。
本発明の本実施例の検出器は、超伝導体帯状薄膜検出器と超伝導直列接合検出器の2つの検出器を単に近接して設置したのではなく、一方が他方に悪影響を殆んど与えないようにそれぞれの検出器の特長を活かして1つの基板上に組み合わせて設けたものであり、時間測定用の高速の信号とエネルギー測定用の信号を1個の放射線に対してエネルギー分解能を殆んど劣化させること無く同時に取り出すことが出来る。そのような放射線検出器はこれまではなかったものであると思われる。
【0055】
なお、上記超伝導体帯状薄膜検出器では、超伝導NbN膜の幅が1μmと広いためにα粒子が照射されたが、電子ビーム露光装置などを用いてもっと幅の狭い膜を作製すれば、X線やTOFMSでの高分子用など他の放射線にもこの検出器が利用できるのは当然である。
この検出器は、超伝導直列接合検出器の信号の立ち上がりの時定数が1.5μs程度と遅いために数万カウント/秒以上の高計数率の計測に利用するのは困難であると推測されるが、計数率はそれより少なくてもよい場合には、放射線の入射時間とエネルギーの高精度の情報が同時に必要な計測にとっては極めて重要な手段になると考えられる。
【実施例8】
【0056】
図8には基板裏側に超伝導体帯状薄膜検出器28を設け、表側には輻射反射膜25と絶縁膜24および複数の超伝導直列接合4を設けた本発明の1実施例の断面の模式図を示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
高分子や重イオンなどの放射線を利用した分析装置用の高速かつエネルギー高分解能の放射線検出などに適応できる。また、それらの検出器を用いた放射線分析装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 基板
2 ボンディングパッド
3 配線
4 超伝導直列接合
5 超伝導トンネル接合
6 フォノン
7 接着剤
8 銅板
9 コリメータ
10 放射線
11 コリメータ付超伝導直列接合検出器
12 77K熱シールド
13 4.2K熱シールド
14 銅パイプ
15 冷凍機外壁
16 X線源(55Fe)
17 0.4K冷却台
18 AlOトンネル障壁
19 Al/Nb超伝導上部電極
20 Nb上部配線
21 Nbで埋めたコンタクトホール
22 SiO層間絶縁膜
23 Nb/Al超伝導下部電極
24 Al
25 輻射反射Al膜
26 サファイア基板
27 窒化ニオブ(NbN)膜
28 超伝導体帯状薄膜検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器において、前記表面の少なくとも1つの表面の少なくとも中心部に4つ以上の超伝導直列接合を近接させて配置したことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器において、前記基板の厚さが0.3mm以下であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器において、前記基板の少なくとも1つの表面上で超伝導直列接合の占める面積が60%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器において、超伝導直列接合を設けた面あるいはそれとは反対側の面の少なくとも片方の面の上に輻射反射膜を設けたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器において、放射線の入射する面には超伝導体薄膜を帯状に配置した超伝導体帯状薄膜検出器を設け、その反対側の面には超伝導直列接合を設けたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
高分子をイオン化し、そのイオン化された高分子を加速して飛行させ、放射線検出器に到達するまでの飛行時間を測定して当該高分子の質量を測定する放射線分析装置において、当該高分子を測定する前記放射線検出器は、半導体あるいは絶縁体の単結晶基板の少なくとも1つの表面上に複数の超伝導トンネル接合からなる超伝導直列接合を設けた放射線検出器であり、且つその放射線検出器の少なくとも1つの表面の中央部は超伝導直列接合で覆われている放射線検出器であることを特徴とする放射線分析装置。
【請求項7】
高分子をイオン化し、そのイオン化された高分子を加速して飛行させ、放射線検出器に到達するまでの飛行時間を計測して当該高分子の質量を測定する放射線分析装置において、前記高分子を測定する前記放射線検出器は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線検出器であることを特徴とする放射線分析装置。
【請求項8】
荷電粒子発生装置と放射線検出器を冷却するための冷凍機とが連結されてなる荷電粒子用の放射線分析装置において、前記放射線検出器は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線検出器であることを特徴とする放射線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169537(P2010−169537A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12430(P2009−12430)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(599119824)
【Fターム(参考)】