説明

放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器

【課題】製造工程において製品の歩留りを向上させることのできる放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器を提供する。
【解決手段】本発明に係る放射線検出器1の製造方法は、配線パターン200と、配線パターン200の表面に設けられる第1接続部材とを有する基板20を準備する基板準備工程と、第2接続部材を基板20上に部分的に塗布する塗布工程と、第2接続部材を介して放射線を検出可能な半導体素子10を基板20上に配置し、第2接続部材を硬化させることにより半導体素子10を基板20に一時的に固定する仮固定工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器に関する。特に、本発明は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱膨張係数が8.0×10−6[1/℃]以上の基板と、基板上に配置された半導体検出素子とから構成される半導体検出部を備え、半導体検出素子が略平板状の半導体結晶体からなり、半導体結晶体の下面にAuからなる素子電極が設けられ、素子電極と配線基板に設けられたパッド電極とを半導体結晶のヤング率より小さいずれ弾性を有するバンプで固定する放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の放射線検出器は、半導体結晶体との間で熱膨張係数差が大きな配線基板でも半導体結晶体の検出特性の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−214191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る放射線検出器は、基板に半導体検出素子を配置し、半導体検出素子を基板に固定する工程において基板の反り等に起因する放射線検出器の製造歩留りについて考慮していない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、製造工程において製品の歩留りを向上させることのできる放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、配線パターンと、配線パターンの表面に設けられる第1接続部材とを有する基板を準備する基板準備工程と、第2接続部材を基板上に部分的に塗布する塗布工程と、第2接続部材を介して放射線を検出可能な半導体素子を基板上に配置し、第2接続部材を硬化させることにより半導体素子を基板に一時的に固定する仮固定工程とを備える放射線検出器の製造方法が提供される。
【0007】
また、上記放射線検出器の製造方法においては、仮固定工程の後に、第1接続部材を硬化させ、配線パターンと半導体素子とを電気的に接続させる硬化工程を更に備えることもできる。
【0008】
また、上記放射線検出器の製造方法においては、半導体素子が、平面視にて略四角形状を有し、塗布工程が、半導体素子の四隅近傍に対応する基板上の複数の位置に第2接続部材を塗布することもできる。
【0009】
また、上記放射線検出器の製造方法においては、第1接続部材が、銀ペースト又ははんだであり、第2接続部材が、UV硬化樹脂であり、仮固定工程が、第2接続部材に紫外線を照射することにより第2接続部材を硬化させ、硬化工程が、第1接続部材を加熱することにより第1接続部材を硬化させることもできる。
【0010】
また、上記放射線検出器の製造方法においては、基板準備工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれに配線パターンと第1接続部材とを有する基板を準備し、塗布工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれの複数個所に部分的に第2接続部材を塗布し、仮固定工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれに複数の半導体素子を配置し、一方の面及び他方の面のそれぞれに複数の半導体素子それぞれを一時的に固定することもできる。
【0011】
また、上記放射線検出器の製造方法においては、基板準備工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれに配線パターンと第1接続部材とを有する基板を準備し、塗布工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれの複数個所に部分的に第2接続部材を塗布し、仮固定工程が、一方の面に複数の半導体素子を配置し、配置した複数の半導体素子を一時的に固定した後、他方の面に複数の半導体素子を配置すると共に、他方の面に複数の半導体素子を一時的に固定することもできる。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するため、配線パターンと、配線パターンの表面に設けられる第1接続部材とを有する基板と、第1接続部材を介し配線パターンに電気的に接続され、放射線を検出可能な半導体素子と、半導体素子と基板との間に部分的に設けられ、半導体素子を基板に固定させる複数の第2接続部材とを備える放射線検出器が提供される。
【0013】
また、上記放射線検出器は、第2接続部材が、第1接続部材の接着力より弱い接着力を有することが好ましい。
【0014】
また、上記放射線検出器は、前記基板が、0.4mm以下の厚さを有していてもよい。
【0015】
また、上記放射線検出器は、半導体素子が、平面視にて略四角状に形成され、第2接続部材が、半導体素子の四隅近傍に位置させてもよい。
【0016】
また、上記放射線検出器は、第1接続部材が、銀ペースト又ははんだであり、第2接続部材が、UV硬化樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器によれば、製造工程において製品の歩留りを向上させることのできる放射線検出器の製造方法、及び放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の一部を放射線が入射する方向から見た場合における部分拡大図である。
【図3A】本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の流れの一部の模式図である。
【図3B】本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部の模式図である。
【図4A】本発明の第2の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部の模式図である。
【図4B】本発明の第2の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部の模式図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図の概要を示す。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の一部を放射線が入射する方向から見た場合における部分拡大図の概要を示す。
【0020】
(放射線検出器1の構成の概要)
本実施の形態に係る放射線検出器1は、カード形状を呈し、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器である。図1において放射線100は、紙面の上方から下方に沿って入射してくる。すなわち、放射線100は、放射線検出器1の半導体素子10からカードホルダ30及びカードホルダ31に向かう方向に沿って入射して放射線検出器1に到達する。そして、放射線検出器1は、半導体素子10の側面(つまり、図1の上方に面している面)に放射線100が入射する。したがって、半導体素子10の側面が放射線100の入射面となっている。このように、半導体素子10の側面を放射線100の入射面とする放射線検出器1を、本実施の形態ではエッジオン型の放射線検出器1と称する。
【0021】
なお、放射線検出器1は、特定の方向(例えば、放射線検出器1に向かう方向)に沿って入射してくる放射線100が通過する複数の開口を有するコリメータ(例えば、マッチドコリメータ、ピンホールコリメータ等)を介して放射線100を検出する複数の放射線検出器1が並べられて構成されるエッジオン型の放射線検出器用の放射線検出器1として構成することもできる。
【0022】
具体的に、放射線検出器1は、放射線100を検出可能な一対の半導体素子10と、薄い基板20と、一対の半導体素子10の隣接部分にて基板20を挟み込むことにより基板20を支持するカードホルダ30及びカードホルダ31とを備える。そして、本実施の形態においては、一例として、一対の半導体素子10が4組、基板20を挟み込む位置において基板20に固定される。すなわち、各組の一対の半導体素子10は、基板20の一方の面と他方の面とのそれぞれに基板20を対称面として対称の位置に固定される。
【0023】
また、基板20はカードホルダ30とカードホルダ31とに挟み込まれて支持される。カードホルダ30とカードホルダ31とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ30が有する溝付穴34にカードホルダ31が有する突起部36が嵌め合うと共に、カードホルダ31が有する溝付穴34(図示しない)にカードホルダ30が有する突起部36(図示しない)が嵌め合うことにより基板20を支持する。
【0024】
また、板ばね等から構成される弾性部材32は、複数の放射線検出器1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器1が挿入された場合に、放射線検出器1を放射線検出器立てに押し付ける。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部29が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器1は、カードエッジ部29がコネクタに挿入され、コネクタとパターン29aとが電気的に接続することにより外部の電気回路としての制御回路、外部からの電源線、グランド線等に電気的に接続される。
【0025】
なお、放射線検出器1は、一対の半導体素子10の基板20の反対側に、各半導体素子10の電極パターンと基板20に設けられている複数の基板端子22とのそれぞれを電気的に接続する配線パターンを有するフレキシブル基板を更に備えることができる(なお、半導体素子10の電極パターン、フレキシブル基板、フレキシブル基板の配線パターンは図示しない)。フレキシブル基板は、一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側、及び他方の半導体素子10側の双方に設けることができる。例えば、4組の一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側のそれぞれと、他方の半導体素子10側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板をそれぞれ設けることができる。
【0026】
(基板20の詳細)
基板20は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層で挟んで可撓性を有して形成される。また、基板20は、半導体素子10の電極パターンに電気的に接続する配線パターン200を有する。配線パターン200の表面の一部の領域には導電性を有する第1接続部材としての銀ペースト50が設けられ、半導体素子10の電極パターンは銀ペースト50を介して配線パターン200に電気的に接続する。
【0027】
また、半導体素子10の電極パターンに電気的に接続する基板20の配線パターンは、カードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続するように形成される。また、基板20は、基板端子22とカードエッジ部29のパターン29aとを電気的に接続する配線パターンを有する。これにより、基板20において、半導体素子10の基板20側の面の電極は、基板20の配線パターンによりカードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続される。また、半導体素子10の基板20側の反対側の面の電極は、フレキシブル基板の配線パターンと、基板端子22と、基板20の配線パターンとを経由してカードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続される。ここで、例えば、半導体素子10の基板20側の電極をアノード電極とし、半導体素子10の基板20側の反対側の面の電極をカソード電極とする。この場合、アノード電極からの信号とカソード電極からの信号とはそれぞれ、カードエッジ部29のパターン29aに導かれ、パターン29aを介して外部の電気回路へ出力される。
【0028】
なお、基板20は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板20は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。また、銀ペースト50の代わりに低温で溶融するはんだを用いることもできる。更に、基板20は放射線を検出することができない領域であるので、一対の半導体素子10によって挟まれる基板20の厚さ分の領域は不感領域となる。したがって、基板20の厚さは薄いことが好ましい。基板20は、0.4mm以下の厚さであることが好ましい。本実施の形態では、一例として、0.2mmの厚さを有して形成される。なお、基板20の厚さの下限は特に限定されないが、製造可能性の観点から、基板20としてフレキシブル基板を用いることにより0.04mmまで薄くすることができる。
【0029】
(半導体素子10の詳細)
半導体素子10は、略直方体状に形成され(つまり、平面視にて略四角状に形成され)、素子表面10bと、素子表面10bの反対側の面である素子表面10cとのそれぞれに電極パターンが設けられる(図示しない)。放射線は各半導体素子10の端部から入射して、カードエッジ部29側に向かって半導体素子10中を走行する。また、本実施の形態に係る半導体素子10は、放射線が入射する面に垂直な一の面である素子表面10cに複数の溝10aが設けられる。溝10aの幅は、一例として、0.2mmである。なお、一例として、半導体素子10の素子表面10bの電極パターンをアノード電極、半導体素子10の素子表面10cの電極パターンをカソード電極とする。この場合、一例として、半導体素子10のカソード電極に負の高電圧(例えば、−300〜−800V)を印加する。
【0030】
そして、放射線が入射する半導体素子10の面であって、各溝10aから、溝10aが設けられている面の反対側の面(つまり、素子表面10c)への仮想的な垂線により区切られる領域、及び当該仮想的な垂線と半導体素子10の端部とで区切られる領域を、素子内ピクセル領域と称する。半導体素子10が、(n−1)個の溝10aを有すると共に、複数の溝10a間、及び素子表面10cにそれぞれ電極を有することにより、n個の素子内ピクセル領域が構成される。複数の素子内ピクセル領域のそれぞれが、放射線を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一の半導体素子10は、複数の画素を有することになる。
【0031】
一例として、1つの放射線検出器1が8つの半導体素子10(4組の一対の半導体素子10)を備え、1つの半導体素子10がそれぞれ8つの素子内ピクセル領域を有する場合、1つの放射線検出器1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝10aの数を増減させることにより、一の半導体素子10のピクセル数を増減させることができる。なお、一例として、半導体素子10の幅は1.2mm程度、長さは11.2mm程度、高さは5mm程度である。
【0032】
半導体素子10を構成する材料としては、CdTeを用いることができる。また、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子10はCdTe素子に限られない。例えば、半導体素子10として、CdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0033】
ここで、図2に示すように半導体素子10は、半導体素子10と基板20との間に部分的に設けられ、半導体素子10を基板20に仮に固定させる複数の第2接続部材としてのUV硬化樹脂40を備える。具体的に、UV硬化樹脂40は、半導体素子10の四隅近傍のそれぞれに位置し、半導体素子10と基板20とを仮に固定している。本実施形態において「仮に固定」とは、半導体素子10がAgペースト50を介して基板20に固定されており、UV硬化樹脂40は、後述する放射線検出器1の製造工程において半導体素子10を基板20に一時的に固定することを目的として用いられていることを意味する。また、「四隅近傍」とは、基板20の四隅から予め定められた距離だけ離れた位置であることを含む。なお、UV硬化樹脂40の代わりにゴム又は粘土を用いることもできる。
【0034】
なお、第2接続部材は、第1接続部材の接着力より弱い接着力を有することが好ましい。これにより、第1接続部材と第2接続部材の熱膨張差によって発生する応力によって第1接続部材の接着箇所にクラックが生じることを抑制できる。また、第2接続部材としてのUV硬化樹脂は、紫外線を照射することにより短時間で硬化させることができるという利点と、基板20に反りを発生させるような熱を加えることなく硬化させることができる利点とを有する。
【0035】
(放射線検出器1の製造方法)
図3A及び図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部を模式的に示す。
【0036】
まず、表面及び裏面のそれぞれに複数の配線パターン200と、複数の配線パターン200それぞれの表面の一部の領域に設けられるAgペースト50とを有する基板20を準備する(図3Aの(a)、基板準備工程)。なお、Agペースト50は、例えば、メタルマスク塗布、又はディスペンサ塗布により配線パターン200の表面の一部の領域に塗布することができる。
【0037】
次に、Agペースト50の接着力より弱い接着力を有するUV硬化樹脂40を、基板20上の複数個所に部分的に塗布する(図3Aの(b)、塗布工程)。例えば、基板20の表面及び裏面それぞれの半導体素子10が固定されるべき領域であって、半導体素子10の四隅近傍に対応する位置にUV硬化樹脂40を塗布する。UV硬化樹脂40の塗布は、ディスペンサ塗布により実施することができる。
【0038】
続いて、UV硬化樹脂40を介して半導体素子10を基板20上に配置すると共にUV硬化樹脂40を硬化させる(図3Bの(c)、仮固定工程)。
【0039】
具体的に、第1の実施の形態では、基板20の表面側及び裏面側のそれぞれに一対の半導体素子10を対称に配置する。例えば、半導体素子10の基板20への配置は、自動マウント装置を用いて実施できる。まず、自動マウント装置が備えるコレット60で半導体素子10を吸着する。そして、コレット60は、吸着した半導体素子10を基板20上の予め定められた位置に配置し、一定の力(例えば、50〜100g)で半導体素子10を基板20側へ押しつける。第1の実施の形態では、基板20を挟んで対称の位置において、一方のコレット60が吸着している半導体素子10と、他方のコレット60が吸着している半導体素子10とが基板20に略同時に押しつけられる。これにより、一対の半導体素子10が基板20の表面及び裏面の予め定められた位置に配置される。
【0040】
そして、半導体素子10と基板20とに挟まれた複数のUV硬化樹脂40それぞれに紫外線を照射することによりUV硬化樹脂40を硬化させ、一対の半導体素子10のそれぞれを基板20に一時的に固定する。続いて、固定した一対の半導体素子10の隣に、新たに一対の半導体素子10を配置すると共に一時的に基板20に固定する(図3Bの(d))。なお、基板20の表面側及び裏面側のそれぞれに複数対の半導体素子10を配置し、複数対の半導体素子10を基板20の対称の位置に実質的に同時に、かつ、一時的に固定することもできる。
【0041】
次に、Agペースト50を硬化させ、配線パターン200と半導体素子10とを電気的に接続させる(硬化工程)。硬化工程は、例えば、高温槽内においてAgペースト50を加熱することにより実施する。一例として、75℃、2〜3.5時間程度の加熱により硬化するAgペースト50を用いることができる。硬化工程後、フレキシブル基板、カードホルダ30及びカードホルダ31、弾性部材32等を複数の半導体素子10及び基板20の定められた位置に取り付ける(組み立て工程)。これにより、第1の実施の形態に係る放射線検出器1が製造される。
【0042】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態に係る放射線検出器1の製造方法は、基板20への半導体素子10の固定において、まずUV硬化樹脂40で半導体素子10を基板20に仮に固定するので、硬化工程で基板20に発生しうる反りをAgペースト50が硬化するまで抑制することができる。また、UV硬化樹脂40は、半導体素子10の四隅近傍に設けられるので、基板20に対する半導体素子10の傾きを抑制することができる。これにより、第1の実施の形態に係る放射線検出器1の製造方法においては、半導体素子10の電極パターンと基板20の配線パターンとの電気的な断線を抑制でき、歩留りを向上させることができる。
【0043】
また、第1の実施の形態においては、基板20を挟み、基板20の対称な位置で一対の半導体素子10を基板20の上下方向から押さえつけるので、基板20に反りが存在している場合であっても、基板20を平坦にすることができる。したがって、基板20の反りを抑制することができるので、Agペースト50が硬化した後のAgペースト50の厚さのばらつきを低減できる。これにより、半導体素子10内に発生する応力分布差を低減できる。
【0044】
また、本実施の形態においては、第2接続部材として、熱により硬化する接着剤を用いることができる。一対の半導体素子10を基板20の上下方向から押さえつけているため、第2接続部材を硬化する際に熱を加えても、基板20の熱による反りを抑制できるからである。ただし、第2接続部材を硬化させる温度は、第1接続部材が硬化する温度よりも低くする。
【0045】
また、自動マウント装置を用いる場合、±0.02mmの位置精度で半導体素子10を基板20に配置することができる。これにより、高精度で半導体素子10を基板20に配置することができると共に、配置スピードを向上させることができる
【0046】
更に、Agペースト50が硬化するまでの間、UV硬化樹脂40が半導体素子10を基板20に一時的に固定する仮固定部材として機能するので、半導体素子10を基板20の予め定められた位置に一時的に保持することができる。これにより、複数の半導体素子10のそれぞれを基板20の予め定められた位置に配置する複雑な冶具を要さないので、放射線検出器1の量産コストを低減できる。
【0047】
また、UV硬化樹脂40を短時間で硬化させることができるので、仮固定工程後の工程(例えば、硬化工程)において基板20の反りに起因する半導体素子10の基板20の予め定められた位置からの位置ずれを抑制できる。更に、UV硬化樹脂40としてAgペースト50と同程度のヤング率(20〜200MPa)のUV硬化樹脂40を用いることにより、線膨張差によって半導体素子10内に発生する応力を緩和することができる。
【0048】
また、本実施の形態は、厚さが薄く、撓みやすく、反りが発生しやすい基板を用いる場合に、特に有効である。薄い基板、好ましくは0.4mm以下の厚さを有する薄い基板を用いることにより、不感領域を低減できる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図4A及び図4Bは、本発明の第2の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部の模式的に示す。
【0050】
第2の実施の形態に係る放射線検出器の製造方法は、第1の実施の形態に係る放射線検出器1の製造方法とは一部異なる点を除き、第1の実施の形態に係る放射線検出器1と略同一の製造方法である。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0051】
まず、第1の実施の形態と同様に、基板準備工程、塗布工程を経ることにより、基板20の表面及び裏面のそれぞれに複数の配線パターン200が形成され、複数の配線パターン200それぞれの表面の一部にAgペースト50が設けられ、更に予め定められた位置にUV硬化樹脂40が設けられた基板20を作製する。そして、第1の実施の形態と同様に、UV硬化樹脂40を介して半導体素子10を基板20上に配置すると共にUV硬化樹脂40を硬化させる(図4Aの(a))。
【0052】
具体的に、第2の実施の形態においては、基板20の表面又は裏面のいずれか一方に半導体素子10を配置し、一時的に固定する。例えば、基板20の表面側に半導体素子10を一つずつ配置し、配置された半導体素子10と基板20とに挟まれたUV硬化樹脂40にUV光を照射して当該半導体素子10を一時的に固定する。そして、まず基板20の表面側だけに複数の半導体素子10を一時的に固定する(図4Aの(b))。
【0053】
次に、基板20の一方の面(例えば、表面)へ複数の半導体素子10を一時的に固定した後、基板20の他方の面(例えば、裏面)に半導体素子10を配置し、一時的に固定する。例えば、基板20の裏面側に半導体素子10を一つずつ配置し、配置された半導体素子10と基板20とに挟まれたUV硬化樹脂40にUV光を照射して当該半導体素子10を一時的に固定する(図4Bの(c))。そして、基板20の裏面側に複数の半導体素子10を一時的に固定する(図4Bの(d))。
【0054】
次に、硬化工程及び組み立て工程を経て、第2の実施の形態に係る放射線検出器1が製造される。
【0055】
本実施の形態においては、基板20に反りが発生しないように、仮固定工程で熱を加えないことが好ましい。例えば、第2接続部材としては、UV硬化樹脂の他に、常温(20℃〜40℃)で硬化する接着剤を用いることができる。
【0056】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の一部を模式的に示す。
【0057】
第3の実施の形態に係る放射線検出器の製造方法は、第1の実施の形態に係る放射線検出器1の製造方法とは一部異なる点を除き、第1の実施の形態に係る放射線検出器1と略同一の製造方法である。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0058】
まず、第1の実施の形態と同様に、基板準備工程、塗布工程を経ることにより、基板20の表面及び裏面のそれぞれに複数の配線パターン200が形成され、複数の配線パターン200それぞれの表面の一部にAgペースト50が設けられ、更に予め定められた位置にUV硬化樹脂40が設けられた基板20を作製する。そして、第1の実施の形態と同様に、UV硬化樹脂40を介して半導体素子10を基板20上に配置すると共にUV硬化樹脂40を硬化させる。
【0059】
具体的に、第3の実施の形態においては、基板20の表面又は裏面のいずれか一方に複数の半導体素子10を配置し、一時的に固定する。例えば、基板20の表面側であって、半導体素子10を搭載すべき部分の全てのそれぞれに半導体素子10を配置し、配置された半導体素子10と基板20とに挟まれたUV硬化樹脂40にUV光を照射して複数の半導体素子10それぞれを一時的に固定する(図5の(a))。
【0060】
次に、基板20の一方の面(例えば、表面)へ複数の半導体素子10を一時的に固定した後、基板20の他方の面(例えば、裏面)に半導体素子10を配置し、一時的に固定する。例えば、基板20の裏面側であって、半導体素子10を搭載すべき部分の全てのそれぞれに半導体素子10を配置し、配置された半導体素子10と基板20とに挟まれたUV硬化樹脂40にUV光を照射して複数の半導体素子10それぞれを一時的に固定する(図5の(b))。
【0061】
次に、硬化工程及び組み立て工程を経て、第3の実施の形態に係る放射線検出器1が製造される。
【0062】
本実施の形態においては、基板20に反りが発生しないように、仮固定工程で熱を加えないことが好ましい。例えば、第2接続部材としては、UV硬化樹脂の他に、常温(20℃〜40℃)で硬化する接着剤を用いることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 放射線検出器
10 半導体素子
10a 溝
10b 素子表面
10c 素子表面
20 基板
22 基板端子
29 カードエッジ部
29a パターン
30、31 カードホルダ
32 弾性部材
34 溝付穴
36 突起部
40 UV接着剤
50 銀ペースト
60 コレット
100 放射線
200 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンと、前記配線パターンの表面に設けられる第1接続部材とを有する基板を準備する基板準備工程と、
第2接続部材を前記基板上に部分的に塗布する塗布工程と、
前記第2接続部材を介して放射線を検出可能な半導体素子を前記基板上に配置し、前記第2接続部材を硬化させることにより前記半導体素子を前記基板に一時的に固定する仮固定工程と
を備える放射線検出器の製造方法。
【請求項2】
前記仮固定工程の後に、前記第1接続部材を硬化させ、前記配線パターンと前記半導体素子とを電気的に接続させる硬化工程
を更に備える請求項1に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項3】
前記半導体素子が、平面視にて略四角形状を有し、
前記塗布工程が、前記半導体素子の四隅近傍に対応する前記基板上の複数の位置に前記第2接続部材を塗布する請求項2に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項4】
前記第1接続部材が、銀ペースト又は半田であり、
前記第2接続部材が、UV硬化樹脂であり、
前記仮固定工程が、前記第2接続部材に紫外線を照射することにより前記第2接続部材を硬化させ、
前記硬化工程が、前記第1接続部材を加熱することにより前記第1接続部材を硬化させる請求項3に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項5】
前記基板準備工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれに前記配線パターンと前記第1接続部材とを有する前記基板を準備し、
前記塗布工程が、前記一方の面及び前記他方の面のそれぞれの複数個所に部分的に前記第2接続部材を塗布し、
前記仮固定工程が、前記一方の面及び前記他方の面のそれぞれに複数の前記半導体素子を配置し、前記一方の面及び前記他方の面のそれぞれに複数の前記半導体素子それぞれを一時的に固定する請求項1に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項6】
前記基板準備工程が、一方の面及び他方の面のそれぞれに前記配線パターンと前記第1接続部材とを有する前記基板を準備し、
前記塗布工程が、前記一方の面及び前記他方の面のそれぞれの複数個所に部分的に前記第2接続部材を塗布し、
前記仮固定工程が、前記一方の面に複数の前記半導体素子を配置し、配置した複数の前記半導体素子を一時的に固定した後、前記他方の面に複数の前記半導体素子を配置すると共に、前記他方の面に複数の前記半導体素子を一時的に固定する請求項1に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項7】
配線パターンと、前記配線パターンの表面に設けられる第1接続部材とを有する基板と、
前記第1接続部材を介し前記配線パターンに電気的に接続され、放射線を検出可能な半導体素子と、
前記半導体素子と前記基板との間に部分的に設けられ、前記半導体素子を前記基板に固定させる複数の第2接続部材と
を備える放射線検出器。
【請求項8】
前記第2接続部材が、前記第1接続部材の接着力より弱い接着力を有する請求項7に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記基板が、0.4mm以下の厚さを有する請求項8に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記半導体素子が、平面視にて略四角状に形成され、
前記第2接続部材が、前記半導体素子の四隅近傍に位置する請求項9に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記第1接続部材が、銀ペースト又ははんだであり、
前記第2接続部材が、UV硬化樹脂である請求項10に記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7926(P2012−7926A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142387(P2010−142387)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】