説明

放射線検出装置、シンチレータパネル及びこれらの製造方法

【課題】 基板の側面側における、シンチレータ層と基板との界面からの水分の浸入に対する防湿効果を向上させる。さらに、シンチレータ保護層として、ホットメルト樹脂を用いることにより、工程簡略化、作業工数の大幅削減、製品の大幅コストダウンを達成する。
【解決手段】 基板1と、基板1の主面上に形成され、放射線を波長変換するシンチレータ層4と、シンチレータ層を被覆し基板と密着するシンチレータ保護層5を含むシンチレータ保護部材とを有する放射線検出装置において、シンチレータ保護層5はホットメルト樹脂からなり、シンチレータ保護層によりシンチレータ層の上面と側面、及び基板の少なくとも一つの側面の少なくとも一部を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置、シンチレータパネル、これらの製造方法及びシステムに関し、特に、医療用診断装置、非破壊検査装置などに用いられる放射線検出装置、シンチレータパネル、これらの製造方法及びシステムに関する。なお、本明細書においては、放射線の範疇に、X線、α線、β線、γ線などの電磁波も含むものとして説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、少なくとも大面積の平面に形成された光電変換素子の表面にX線を照射することによって発光するシンチレータ層を積層したデジタル放射線検出装置が商品化されている。
【0003】
これらデジタル放射線検出装置の中でも、高感度で高鮮鋭な装置として、特許文献1、または、特許文献2に開示されている。このようなデジタル放射線検出装置として、複数のフォトセンサー及びTFT(Thin film transistor)等の電気素子が2次元に配置されている光電変換素子部からなる光検出器(「センサーパネル」とも言う)が知られている。そしてその光検出器上に、放射線を光電変換素子で検出可能な光に変換するための波長変換体であるシンチレータ層を直接形成してなる放射線検出装置(「直接蒸着タイプ」又は「直接タイプ」等とも言う)が知られている。
【0004】
また、特許文献3に開示されているように、上記光検出器上に、上記シンチレータ層が支持基板に形成されたシンチレータパネルを貼り合わせてなる放射線検出装置(「貼り合わせタイプ」又は「間接タイプ」等とも言う)が知られている。
【0005】
従来の代表的なセンサーパネルとして、特許文献1に開示されているセンサーパネルを図31に示す。図31において、201はフォトセンサー及びTFTを有するセンサーパネル、202はセンサーの保護層、203は放射線に応じた光に変換する柱状構造結晶のシンチレータ層、204はシンチレータ層を水分より保護するポリパラキシリレン膜(シンチレータ保護層)、205はシンチレータ層からの光を反射する金属膜からなる反射層、206はさらに耐湿性の向上のためのポリパラキシリレン膜である。金属膜は薄膜で、CVD法等で蒸着される。
【0006】
また他の従来技術として、特許文献2に開示されているセンサーパネルを図32に示す。図32において、301はフォトセンサー及びTFTを有するセンサーパネル、302は放射線に応じて光に変換する柱状構造結晶のシンチレータ層、303はシンチレータ層を水分より保護するポリパラキシリレン膜(シンチレータ保護層)、304は耐湿性の向上を目的としたSiO膜、305は更なる耐湿性の向上を目的としたポリパラキシリレン膜である。ここで、ポリパラキシリレン膜は、CVD法により成膜蒸着室内で蒸着される。
【0007】
ところで、このような目的に使用されるセンサーパネルには以下の点が要求される。
【0008】
まず、蒸着によって形成されるCsI:Na、およびCsI:Tl等のハロゲン化アルカリからなる柱状結晶構造を有するシンチレータ層を使用する場合、シンチレータ層の水分による潮解を避けるために耐湿性が問われる。シンチレータ層として柱状結晶構造が用いられる理由として、変換された光を柱状結晶構造内で散乱や減衰をおさえ、効率よくセンサーパネルに導くためである。
【特許文献1】特許第3029873号(米国特許第6278118号)
【特許文献2】特開2001−235548号公報(国際公開第99/66351号)
【特許文献3】特開2000−356679号公報(国際公開第2000/63722号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、柱状結晶構造を有するシンチレータ層は吸湿材料であり、水分を吸収すると結晶が潮解し、柱状結晶が互いに合体し、その結果本来の光の伝播が乱れ、解像度を著しく劣化させるという問題がある。
【0010】
図32において、ポリパラキシリレン膜303及び305やSiO膜304での防湿が開示されている。しかしながら、いずれの膜においても、その成膜方法は、CVD法やスパッタリング法によるものである。
【0011】
ところで、蒸着によって形成されるCsI:Na、およびCsI:Tl等のハロゲン化アルカリからなる柱状結晶構造を有するシンチレータ層は、シンチレータ層の形成時に異常成長(スプラッシュ)欠陥が発生する場合がある。特に、人体撮影用の放射線検出装置においてはシンチレータ層の厚さが400μm以上必要であり、その際に異常成長部は、直径300μm以上、高さが20μm以上の突起状になることがある。さらに突起状の異常成長部の周辺にドーナツ状に深さ20μm以上の凹部が形成される場合がある。このような突起部と凹部からなるシンチレータ層の異常成長欠陥部をカバーし、防湿機能を満足させるためには、シンチレータ保護層の厚さは20μm以上必要であることを発明者らは見出した。
【0012】
しかしながら、上記先行技術に開示されているポリパラキシリレン製有機膜を用いたシンチレータ保護層では、CVD法により形成されるため、シンチレータ保護層の成膜速度はおおよそ100−2000オングストローム/分と遅い。そのため、20μmのシンチレータ保護層を形成するための成膜時間は2000分から100分必要となり、生産性が悪いという問題を有する。さらに、工数、材料費等コスト面でのデメリットを有し、製品のコストダウンの障害となっている。
【0013】
また、X線デジタルカメラのような大面積(たとえば43cm×43cm)の放射線撮像装置に用いるためのポリパラキシリレン製有機膜からなるシンチレータ保護層をCVD法で成膜すると、シンチレータ保護層の面内の膜厚分布が大きくなる。シンチレータ保護層のシンチレータと反対の面に反射層を設けた場合、シンチレータ層で発光した光が、反射層によって反射され、光電変換素子にはいる反射光線の光路長が、シンチレータ保護層の膜厚分布によって変化する。その結果、光の反射方向が場所によって異なることから解像度劣化するという問題が発生する。
【0014】
さらに、パラキシリレン等のCVD膜は光電変換素子のセンサー保護膜と密着が悪く、シンチレータ保護層の周辺を被覆する樹脂が必要となり、コスト高となる。
【0015】
もうひとつの要求事項として、センサーパネルは微量な光を電気信号に変換するため、高S/Nであることが求められる。通常、X線撮影室では近くにX線発生装置が設置されており、X線発生装置からの発生する電磁波が空間伝播してセンサーパネルの全面及び後面から入り、電気的ノイズとして信号にのってしまう危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の放射線検出装置は、パネルと、該パネルの主面上に配置され、放射線を波長変換するシンチレータ層と、該シンチレータ層を被覆し前記パネルと密着するシンチレータ保護層と、を有し、前記シンチレータ保護層はホットメルト樹脂からなり、前記シンチレータ層の上面と側面、及び前記パネルの少なくとも1つの側面の一部を被覆して配置されることを特徴とする。
【0017】
本発明のシンチレータパネルは、支持部材と、該支持部材上に配置された放射線を波長変換するシンチレータ層と、該シンチレータ層を被覆し前記支持部材と密着するシンチレータ保護層と、を有し、前記シンチレータ保護層はホットメルト樹脂からなり、前記シンチレータ層の上面と側面、及び前記支持部材の少なくとも1つの側面の一部を被覆して配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パネルの側面側における、シンチレータ層とパネルとの界面からの水分の浸入に対する防湿効果を向上させることができる。
【0019】
さらに、シンチレータ保護層として、ホットメルト樹脂を用いることにより、工程簡略化、作業工数の大幅削減、製品の大幅コストダウンを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係わる放射線検出装置について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係わる直接蒸着タイプの放射線検出装置の模式的平面図、図2は図1のA−A′断面図、図3は図2の一部拡大図、図4は図1のB−B′断面図である。図1〜図4において、1はガラス等の基板、401光電変換素子、402は配線であり、光電変換素子401、配線402、及び薄膜トランジスタ(TFT)によって受光部403が構成されている。404は電気的接続部(取り出し配線)、3bはセンサー保護層、3aはシンチレータ下地層、405は配線接続部、であり、1、401、402、404、3b、3a、405によって光検出器(センサーパネル)408が構成されている。センサーパネルの電気的接続部404と配線部材16(又は17)との接続部は外部接続端子部413である。また、4はシンチレータ層(図1において外周部を破線で示す)、5はシンチレータ保護層である。また、16は電気信号を外部に取り出すための配線部材、17はセンサーを駆動するための信号を入力するための配線部材である。407は封止部材である。2はセンサーエリア、15はシンチレータ保護層の外周部を示す。
【0022】
図2に示すように、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5でシンチレータ層4が被覆されている。図3に示されるように、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5の一端部がセンサーエリア2のシンチレータ下地層3aの上面(シンチレータ層4との界面)Sを超えてシンチレータ下地層3aの側面を覆っている。またシンチレータ保護層5の他端部はシンチレータ下地層3aを覆うように形成されている。このように、シンチレータ層4の上面と側面、及びシンチレータ層4とシンチレータ下地層3aとの界面端部を、シンチレータ保護層5で覆うことでシンチレータ層4への外部からの水分の侵入を防ぐことができる。なお、シンチレータ保護層5はセンサー保護層3bの一部又は全部を覆う(被覆する)まで形成されていてもよいことは勿論である。さらに、シンチレータ下地層3aが形成されず、センサー保護層3b上にシンチレータ層4が形成される場合もあり、その場合にはセンサー保護層3bの一部又は全部を覆うようにシンチレータ保護層5が形成される。
【0023】
図1に示すように、センサーパネルの4辺のうち、下部の1辺には電気信号の取り出しあるいは駆動ドライブを配していない。このような形状のセンサーパネルでは、当該下部の一辺では端部までシンチレータ層、光電変換素子を形成することができるので、センサー端を患者に接触させて撮影するような場合に適しており、たとえば、乳癌の有無を検査するマンモグラフィ撮影には好適に用いられる。
【0024】
図5は本発明の第1の実施形態の変形例を示す図であり、図1のA−A′断面を示す図である。図5では、シンチレータ保護層5と反射層6と反射層保護層7からなるシンチレータ保護部材でシンチレータ層4を被覆している。ここでは15はシンチレータ保護部材の外周部を示す。本変形例でもシンチレータ層4の上面と側面、及びシンチレータ層4とシンチレータ下地層3aとの界面端部を、シンチレータ保護部材のシンチレータ保護層5で覆うことで、外部からの水分の侵入を防ぐことができる。
【0025】
基板1は、光電変換素子、配線、TFTからなる受光部が形成されるものであり、材料として、ガラス、耐熱性プラスチック等を好適に用いることができる。
【0026】
光電変換素子401はシンチレータ層4によって放射線から変換された光を電荷に変換するものであり、例えば、アモルファスシリコンなどの材料を用いることが可能である。光電変換素子401の構成は特に限定されず、MIS型センサー、PIN型センサー、TFT型センサー等を適宜用いることができる。
【0027】
配線402は信号配線の一部や光電変換素子に電圧(Vs)を印加するバイアス配線を示し、電気的接続部404は信号配線又は駆動配線を示す。光電変換素子401で光電変換された信号はTFTによって読み出され、信号配線を介して信号処理回路に出力される。また行方向に配列されたTFTのゲートは行ごとに駆動配線に接続され、TFT駆動回路により行毎にTFTが選択される。信号処理回路及びTFT駆動回路は基板1外に設けられ、光電変換素子401やTFTとは電気的接続部404、配線接続部405、配線部材16,17を介して接続される。
【0028】
センサー保護層3bは、受光部403(センサーエリア2)を被覆して保護するためのものであり、SiN,SiO2などの無機膜が好ましい。シンチレータ下地層3aはセンサー保護層3b上に設けられ、材料としては、ポリイミド、パラキシリレン等の有機物質からなる耐熱性の樹脂が好ましい。たとえば、熱硬化型のポリイミド樹脂等を用いることが可能である。センサー保護層3b、シンチレータ下地層3aは光電変換素子を保護する機能を有する。またシンチレータ下地層3aはセンサーパネル408の表面を平坦化する機能を有する。また、シンチレータ下地層3aの表面は、シンチレータ層4との密着性を向上させるために、シンチレータ下地層3aの表面を大気圧プラズマ処理等の活性化処理を適宜用いてもよい。
【0029】
シンチレータ層4は、放射線を光電変換素子401が感知可能な波長の光に変換するものであり、柱状結晶構造を有するシンチレータが好ましい。柱状結晶構造を有するシンチレータは、発生した光が柱状結晶内を伝搬するので光散乱が少なく、解像度を向上させることができる。ただし、シンチレータ層4として柱状結晶構造を有するシンチレータ以外の材料を用いてもよい。柱状結晶構造を有するシンチレータ層4の材料としては、ハロゲン化アルカリを主成分とする材料が用いられる。たとえば、CsI:Tl、CsI:Na、CsBr:Tlが用いられる。その作製方法は、たとえばCsI:Tlでは、CsIとTlIを同時に蒸着することで形成できる。
【0030】
シンチレータ保護層5は、シンチレータ層4に対して、外気からの水分の侵入を防止する防湿保護機能及び衝撃により構造破壊を防止する衝撃保護機能を有するものである。シンチレータ保護層5の厚さは20〜200μmが好ましい。20μm以下では、シンチレータ層4表面の凹凸、及びスプラッシュ欠陥を完全に被覆することができず、防湿保護機能が低下する恐れがある。一方、200μmを超えるとシンチレータ層4で発生した光もしくは反射層で反射された光のシンチレータ保護層5内での散乱が増加し、取得される画像の解像度及びMTF(Modulation Transfer Fanction)が低下する恐れがある。本発明において、シンチレータ保護層5としてホットメルト樹脂を用いることを特徴としている。ホットメルト樹脂を用いたシンチレータ保護層に関する説明は別途後述する。
【0031】
反射層6は、シンチレータ層4で変換して発せられた光のうち、光電変換素子401と反対側に進行した光を反射して光電変換素子401に導くことにより、光利用効率を向上させる機能を有するものである。また、反射層6は、光電変換素子401にシンチレータ層4で発生された光以外の外部光線を遮断し、光電変換素子2にノイズが入ることを防止する機能を更に有する。また電磁シールド機能をも有する。反射層6としては、金属箔または金属薄膜を用いることが好ましく、反射層6の厚さは1〜100μmが好ましい。1μmより薄いと反射層6の形成時にピンホール欠陥が発生しやすく、また遮光性に劣る。一方、100μmを超えると、放射線の吸収量が大きく被撮影者が被爆する線量の増加につながる恐れがあり、また、シンチレータ層4とセンサーパネル408の表面との段差を隙間無く覆うことが困難となる恐れがある。反射層6の材料としては、アルミニウム、金、銅、アルミ合金、などの特に限定されない金属材料を用いることができるが、反射特性の高い材料としては、アルミニウム、金が好ましい。
【0032】
反射層保護層7は、反射層6の衝撃による破壊、及び水分による腐食を防止する機能を有し、樹脂フィルムを用いることが好ましい。反射層保護層7の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、などのフィルム材料を用いることが好ましい。反射層保護層7の厚さは10〜100μmが好ましい。
【0033】
配線接続部405は、電気的接続部404と配線部材16(又は17)とを電気的に接続するための部材であり、異方導電性接着剤などにより配線部材16(又は17)と電気的に接続される。
【0034】
配線部材16は、光電変換素子401で変換された電気信号を読み出すためのIC部品などを搭載した部材であり、TCP(Tape Carrier Package)などが好適に用いられる。また配線部材17はセンサーを駆動するための信号を入力するドライバIC部品などを搭載じた部材であり、TCP(Tape Carrier Package)などが好適に用いられる。
【0035】
封止部材407は、配線部材16,17及び電気的接続部404に対して、水分による腐食を防止する機能、衝撃による破壊を防止する機能、及び製造時に発生する受光部403の破壊の原因となる静電気を防止する機能を有するものである。
【0036】
以下に、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5について、詳細に説明する。
【0037】
シンチレータ層を保護するために、特に柱状結晶構造を有するシンチレータ層4を保護するために、シンチレータ保護層5は下記1)〜12)に示す機能が求められる。
1)外部からの衝撃による破壊を防止する耐衝撃性を有する
2)放射線源からの放射線を好適に透過する放射線透過性を有する
3)シンチレータ層7で発せられた光を好適に透過する光透過性を有する
4)シンチレータ層、センサーパネルまたは支持部材表面との高い密着性を有する
5)透過光の光路差による解像度低下を防止する層厚の面内均一性を有する
6)基板と反射層との熱膨張係数差に起因する応力を吸収する吸収性を有する
7)シンチレータ層及び受光部に悪影響を及ぼさない成膜(形成)温度を有する
8)生産性に富んだ高い成膜(形成)速度を有する
9)外気からの水分の侵入を防ぐ高い防湿性(耐湿性、非透水性)を有する
10)柱状結晶を溶解する水、極性溶媒、溶剤などを含まない
11)柱状結晶間へのしみ込みによる顕著な解像度の低下を招かない粘性を有する
12)エタノールなど医療器具の消毒用溶剤に不溶または微溶である特性を有する
上記の機能を満たすシンチレータ保護層5の材料としては、ホットメルト樹脂を用いることが好ましい。ホットメルト樹脂は、水や溶剤を含まない、室温で固体であり、100%不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂と定義されるものである(Thomas.P.Flanagan,Adhesive Age,9,No3,28(1966))。ホットメルト樹脂は、樹脂温度が上昇すると溶融し、樹脂温度が低下すると固化するものである。また、ホットメルト樹脂は、加熱溶融状態で、他の有機材料、および無機材料に接着性をもち、常温で固体状態となり接着性を持たないものである。また、ホットメルト樹脂は極性溶媒、溶剤、および水を含んでいないので、シンチレータ層(例えば、ハロゲン化アルカリからなる柱状結晶構造を有するシンチレータ層)に接触してもシンチレータ層を溶解しないため、シンチレータ保護層として使用され得る。ホットメルト樹脂は、熱可塑性樹脂を溶剤に溶かし溶媒塗布法によって形成された溶剤揮発硬化型の接着性樹脂層とは異なる。またエポキシ等に代表される化学反応によって形成される化学反応型の接着性樹脂とも異なる。
【0038】
ホットメルト樹脂材料は主成分であるベースポリマー(ベース材料)の種類によって分類され、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等を用いることができる。上述のごとくシンチレータ保護層5としては、防湿性が高く、またシンチレータから発生する可視光線を透過する光透過性が高いことが重要である。シンチレータ保護層5として必要とされる防湿性を満たすホットメルト樹脂としてポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。特に吸湿率が低いポリオレフィン樹脂が好ましい。また光透過性の高い樹脂として、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。したがってシンチレータ保護層5としてポリオレフィン系樹脂をベースにしたホットメルト樹脂がより好ましい。
【0039】
なお、後述する実施例で説明するように、シンチレータ下地層3aとシンチレータ保護層5が接するシンチレータ層4が形成された周囲の領域において、シンチレータ層4が形成された領域を取り囲むようにホットプレス処理によりヒートシール(加熱加圧接着)を行うことが望ましく、このような目的からも、温度が上昇すると溶融し被着体に接着し、樹脂温度が冷却されると固化する性質を有する、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等のホットメルト樹脂が好適に用いられるものである。
【0040】
シンチレータ保護層5の形成温度としては、シンチレータ層4または受光部403である光電変換素子401、配線402、TFT(不図示)に悪影響を及ぼさない温度であることが要求される。シンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂の形成温度は、樹脂の溶融開始温度に依存する。シンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂の溶融開始温度は、70℃以上で、150℃以下が好ましい。70℃より低いと、製品の耐熱性、保存耐久性が劣る、150℃を超えると、シンチレータ層4の表面に貼りあわせる温度が150℃を超えた温度が必要となり、ガラス等からなる基板1とホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5の熱膨張差が大きくなり、基板1にシンチレータ保護層5を形成したときに基板1のそりが大きくなり好ましくない。
【0041】
上記ポリエステル系の樹脂では、70℃から150℃で形成、密着処理可能な溶融粘度にするためには、多くの可塑剤が必要となる。この可塑剤はシンチレータ層4に拡散しシンチレータ層4の劣化等につながる恐れがある。したがって、ホットメルト樹脂の溶融開始温度範囲の好適な範囲を考慮すると、多くの可塑剤の使用を必要としないポリオレフィン系樹脂材料がより好ましい。
【0042】
柱状結晶構造を有するシンチレータ層4の柱状結晶間へのホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5のしみ込みは、ホットメルト樹脂の溶融時の粘性率(溶融粘度)に依存する。しみ込みに関して求められる溶融時の粘性率としては、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5の形成温度である100〜140℃において、1×103Pa・s以上であることが望ましい。より好ましくは、 1.5×103Pa・s以上であることが望ましい。溶融時の粘性率が1×103Pa・sに満たないとシンチレータ層4の柱状結晶間にホットメルト樹脂がしみ込み、シンチレータ層4で変換された光が散乱し、受光部403で検出される画像の解像度が低下してしまう。
【0043】
ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5とシンチレータ層4及び/またはシンチレータ下地層3aとの密着性は、樹脂溶融時の粘性率、樹脂の抗張力に依存する。密着性に関して求められる粘性率としては1×104Pa・s以下であることが望ましい。より好ましくは、 6.0×103Pa・s以下であることが望ましい。溶融時の粘性率が1×104Pa・sを超えてしまうとシンチレータ層4およびシンチレータ下地層3aに対して必要とされる密着力が得られない。よって本発明のシンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂の粘性率としては、100〜140℃において1×103〜1×104Pa・sであることが望ましい。より好ましくは1.5×103〜6.0×103Pa・sであることが望ましい。
【0044】
また、密着性に関して求められる抗張力としては40〜300Kg/cm2、好ましくは50〜200Kg/cm2であることが望ましい。抗張力が40Kg/cm2に満たないと、シンチレータ保護層5として求められる強度が不足する恐れがある。また、抗張力が300Kg/cm2を超えてしまうと、基板1とシンチレータ保護層5との間の熱膨張差によって引き起こされるシンチレータ保護層5とシンチレータ層4との層間剥離、またはシンチレータ層4とシンチレータ下地層3aとの層間剥離を防ぐことができない恐れがある。また、上記層間剥離は、抗張力のほかに破壊伸び率にも依存する。本発明にシンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂の破壊伸び率としては、400%以上、好ましくは600〜1000%であることが望ましい。
【0045】
本発明におけるシンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂に求められる、溶融時粘性率、抗張力及び破壊伸び率による密着力、溶融開始温度は、
(1)ホットメルト樹脂中に含まれる共重合体の含有量、
(2)ホットメルト樹脂中に含まれる共重合体におけるアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルの含有量、
(3)ホットメルト樹脂中に含まれる添加剤の含有量、
の要素を単独あるいは2つ以上の要素の組み合わせにより変化させることによって制御することができる。以下にホットメルト樹脂に含まれる共重合体及び各種共重合体を構成する物質について説明する。
【0046】
本発明に於いて、シンチレータ保護層5に好適に用いられるポリオレフィン系のホットメルト樹脂は、A.エチレン−酢酸ビニル共重合体、B.エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、C.エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EMA)、D.エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、E.エチレン−メタクリル酸エステル共重合体(EMMA)、および、アイオノマー樹脂から選ばれる共重合体の少なくとも1種を主成分として含有することが好ましい。
【0047】
以下に、上記5つの共重合体A〜Eについて説明する。
A. エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレン単位 −CH2−CH2− と、 酢酸ビニル ―CH2−CH(OCOCH3)−の分子構造を有する物質の共重合体であり、
一般式は、
−〔(CH2−CH2a−CH2−CH(OCOCH3b−〕n (a,b,nは整数)で示される。エチレンに対する酢酸ビニルの含有量は2−40重量%であることが望ましい。ホットメルト樹脂の防湿性を高くするには酢酸ビニルの含有率を低くすることが好ましい。また、シンチレータとの接着力を高くするためには、酢酸ビニルの含有率を高くすることが好ましい。本発明におけるシンチレータ保護層5に用いるホットメルト樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率は5−20%であることが好ましい。
B.エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)は、エチレン単位;−CH2−CH2− と、ポリエチレンの構造中にランダムにカルボキシル基が含まれた構造を有するアクリル酸;−CH2−CHCOOH− の分子構造を有する物質の共重合体であり、一般式は、−〔(CH2−CH2a−(CH2−CHCOOH)b−〕n (a,b,nは整数)で示される。エチレンに対するアクリル酸の含有率は、4−20重量%であることが望ましい。上記酢酸ビニルと同様に、ホットメルト樹脂の防湿性を高くするにはアクリル酸の含有率を低くすることが好ましい。また、シンチレータ層との密着力を高くするためには、アクリル酸の含有率を高くすることが好ましい。本発明におけるシンチレータ保護層5に用いるホットメルト樹脂としては、エチレン−アクリル酸共重合体の含有率が5−20%であることが望ましい。
C.エチレン−アクリル酸エステル共重合体は、
エチレン単位;−CH2−CH2− と、アクリル酸エステル;−CH2−CHCOOR−の分子構造を有する物質の共重合体であり、一般式は、
−〔(CH2−CH2)a−(CH2−CHCOOR)b−〕n (a,b,nは整数)で示される(ここで、R:CH3,C25,C37のいずれかである)。エチレンに対するアクリル酸エステルの含有率は2〜35重量%であることが望ましい。上記同様に、ホットメルト樹脂の防湿性を高くするにはアクリル酸エステルの含有率を低くすることが好ましい。また、シンチレータ層との密着力を高くするためには、アクリル酸エステルの含有量を高くすることが好ましい。本発明におけるシンチレータ保護層5に用いるホットメルト樹脂としては、エチレン−アクリル酸エステル共重合体の含有率が8−25%であることが望ましい。
D. エチレン−メタクリル酸共重合体は、
エチレン単位;−CH2−CH2− と、ポリエチレンの構造中にランダムにカルボキシル基が含まれる構造を有するメタクリル酸;−CH2−CCH3COOH− の分子構造を有する物質の共重合体であり、一般式は、
−〔(CH2−CH2a−(CH2−CCH3COOH)b−〕n (a,b,nは整数)で示される。エチレンに対するメタクリル酸の含有率は2〜20重量%であることが望ましい。上記同様に、ホットメルト樹脂の防湿率を高くするにはメタクリル酸の含有率を低くすることが好ましい。また、シンチレータ層との密着力を高くするためには、メタクリル酸の含有率を高くすることが好ましい。本発明におけるシンチレータ保護層5に用いるホットメルト樹脂としては、エチレンーメタクリル酸共重合体の含有率が5−15%であることが望ましい。
E. エチレン−メタクリル酸エステル共重合体は、
エチレン単位;−CH2−CH2− と、メタクリル酸エステル;−CH2−CCH3COOR− の分子構造を有する物質の共重合体であり、一般式は、
−〔(CH2−CH2a−(CH2−CCH3COOR)b−〕n (a,b,nは整数)で示される。エチレンに対するメタクリル酸エステルの含有率は2−25重量%であることが望ましい。上記同様に、ホットメルト樹脂の防湿率を高くするにはメタクリル酸エステルの含有率を低くすることが好ましい。また、シンチレータ層との密着力を高くするためには、メタクリル酸エステルの含有率を高くすることが好ましい。本発明におけるシンチレータ保護層5に用いるホットメルト樹脂としては、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体の含有率が3−15%であることが望ましい。
【0048】
本発明のシンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂としては、上記5種類の共重合体の少なくとも1種を含有するものであり、又2種以上の混合物を含有させてもよい。また本発明のホットメルト樹脂において、同種の共重合体の2つ以上の異なる共重合体、例えばエチレン−メタクリル酸メチル共重合体とエチレン−メタクリル酸エチル共重合体の混合物を接着剤層中に含有させても良い。
【0049】
エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてヒロダイン7544(ヒロダイン工業製)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてO−4121(倉敷紡績製)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてW−4110(倉敷紡績製)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてH−2500(倉敷紡績製)、エチレン−アクリル酸共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてP−2200(倉敷紡績製)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体を主成分とするホットメルト樹脂としてZ−2(倉敷紡績製)等を用いることができる。
【0050】
また、本発明のホットメルト樹脂において、ホットメルト樹脂に含まれる共重合体の重量平均分子量は約5,000〜1,000,000であることが望ましい。
【0051】
また、ホットメルト樹脂に添加する添加剤としては、例えば粘着付与剤や軟化剤が挙げられる。粘着付与剤としては例えばロジン,重合ロジン,水素添加ロジン,ロジンエステル等の天然樹脂及びその変成品,脂肪族化合物,脂環式化合物,芳香族,石油樹脂,テルペン樹脂,テルペン・フェノール樹脂,水素添加テルペン樹脂,クマロン樹脂などが挙げられる。また、軟化剤としては、例えばプロセスオイル,パラフィンオイル,ヒマシ油,ポリブテン,低分子量ポリイソプレン等が挙げられる。
【0052】
放射線検出装置(特に人体や動物撮影用の放射線検出装置)のシンチレータ保護層5に用いられるホットメルト樹脂としては、消毒用のアルコールが飛散してもシンチレータ保護層5の機能が損なわれないものが好ましい。消毒用のアルコールであるエチルアルコールに不溶または微溶のホットメルト樹脂としては、ホットメルト樹脂中の粘着付与材等の添加剤の含有量が20%以下であることが好ましい。特に10%以下であることが好ましい。エタノールは、放射線検出装置の使用環境である病院等で使用される溶剤であり、放射線検出装置に接触することがある。溶剤への溶解成分が20%以下であればシンチレータ保護層8の溶解に起因する剥離が生じないことを発明者は見出した。
【0053】
また、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5と柱状結晶構造を有するシンチレータ層4との密着力を向上させるために、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層8のシンチレータ層4に接する表面を、あらかじめ表面改質して該表面の臨界表面張力を40×10-3J/m2以上、好ましくは45×10-3J/m2以上とすることによって、密着力を向上させることができる。ホットメルト樹脂の組成として共重合体のアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の含有量を20wt%以下とした場合、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5の臨界表面張力が30〜37×10-3J/m2となり、シンチレータ層4の表面、およびその周囲のセンサーパネル408の表面に対する濡れ性が悪くなる。そのため、シンチレータ保護層5とシンチレータ層4及びセンサーパネル408との密着性が若干低下する傾向にあるが、上記したホットメルト樹脂の表面を改質し臨界表面張力を向上させることで密着力向上させることができる。
【0054】
このとき表面改質の方法としては特に限定されないが、例えばコロナ放電処理、オゾン処理、アルカリ処理、アルゴンプラズマ処理、酸素プラズマ処理等が適宜用いられる。ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5の両表面にコロナ放電装置を用いてコロナ放電処理を行うことによって、シンチレータ保護層5の表面の臨界表面張力を向上させることができる。なお、本発明に於いて臨界表面張力の測定はJIS K−6768の方法に従って行ったものである。
【0055】
なお、本発明におけるシンチレータ保護層5とセンサーパネル408との間で求められる密着力としては、90°型剥離試験において0.1kg/25mm以上が好ましい。
【0056】
ホットメルト樹脂をシンチレータ保護層として、シンチレータ層表面(上面及び側面)及びセンサーパネルの側面を被覆する方法は、例えば以下に示す方法がある。
(1)金属箔または金属蒸着膜等の反射層6及び反射層保護層7の積層からなる積層シートを準備し、ホットメルト樹脂をこの積層シートに塗布し、作製されたホットメルト樹脂シートのホットメルト樹脂面を、まずシンチレータ層を形成したセンサーパネルのシンチレータ層の上部に配置し、加熱可能なローラーで加圧および加熱しながら貼り合わせる。かかる方法により図5に示すような放射線検出装置を得ることができる。センサーパネルの裏面までホットメルト樹脂シートを貼り合わせる場合には、センサーパネルの裏面側にホットメルト樹脂シートを折り曲げ、ホットメルト樹脂面をセンサーパネルの裏面に位置させ、同様に加熱可能なローラーで加圧および加熱しながら貼り合わせる。
(2)剥離基板上にホットメルト樹脂層を作成し、作製されたホットメルト樹脂シートのホットメルト樹脂面を、まずシンチレータ層を形成したセンサーパネルのシンチレータ層の上部に配置し、加熱可能なローラーで加圧および加熱しながら貼り合わせる。次に残りのホットメルト樹脂シートをセンサーパネル端部で折り曲げ、加熱可能なローラーでセンサーパネル側面とホットメルト樹脂シートを加圧および加熱しながら貼り合わせる。センサーパネルの裏面までホットメルト樹脂シートを貼り合わせる場合には、センサーパネルの裏面側にホットメルト樹脂シートを折り曲げ、ホットメルト樹脂面をセンサーパネルの裏面に位置させ、同様に加熱可能なローラーで加圧および加熱しながら貼り合わせる。その後剥離基板を剥がす。かかる方法により図2に示すような放射線検出装置を得ることができる。
(3)上記(1)で説明したホットメルト樹脂シートを作成し、真空プレス装置で圧着してシンチレータ層表面に形成する。かかる方法により図5に示すような放射線検出装置を得ることができる。
【0057】
上記(1)の方法をより詳細に説明する。図6(a)、(b)に示されるように、溶融されたホットメルト樹脂をタンク502及びダイコータ503内に準備するとともに、ロール状に準備された金属箔または金属蒸着膜等の反射層6及び反射層保護層7の積層からなる積層シートを準備する。そして、しわ取りロール505,506によってしわを伸ばされた積層シート上に成形ロール507,508間で溶融されたホットメルト樹脂504を押し出しコート法により積層シート上に塗布する。そして、成形ロール508により成形後、冷却ロール509にて冷却硬化し、切断手段510にて所定のサイズに切り出す。こうして、金属箔または金属蒸着膜の反射層6上にホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5を形成し、図6(b)で示されるシンチレータ保護シートを形成する。次に図7に示すように、得られたシンチレータ保護シートをセンサーパネル408のシンチレータ下地層3a及びシンチレータ層4上に重ねて、熱ラミネートローラ511によってホットメルト樹脂の溶融温度以上にホットメルト樹脂を加熱して溶融する。そして、熱ラミネートローラ511及び搬送ローラ512を用いて放射線検出装置を移動させて、シンチレータ下地層3a上のシンチレータ保護シート上の所定の開始位置からシンチレータ層4上を熱ラミネートローラ511が相対的に移動するようにして所定の開始位置からシンチレータ層4を挟んで対向する位置まで加熱圧着する。ここで放射線検出装置を平面で90°回転させて再度、シンチレータ下地層上のシンチレータ保護シート上の所定の開始位置からシンチレータ層4上を熱ラミネートローラ511が相対的に移動するようにして所定の開始位置からシンチレータ層4を挟んで対向する位置まで加熱圧着する。こうして、シンチレータ保護シートがシンチレータ層4及びセンサーパネル408のシンチレータ下地層4aに密着される。熱ラミネートロールの温度は90〜180℃の範囲で調整する。熱ラミネートロールの回転速度は0.01〜1m/minの範囲で調整する。熱ラミネートロールの押圧力は、1〜50kg/cm2の範囲で調整する。
【0058】
ここで、2本の熱ラミネートロール511、512の温度は、互いに異なってもよい。温度を変えることで、熱ラミネート後の放射線検出装置の基板1のそり発生を軽減することが可能である。また、熱ラミネートロール512の変わりに支持基盤を用い、熱ラミネートロール511だけで加熱圧着してもよい。
【0059】
また、シンチレータ層が存在する部分と存在しない部分に生じる段差部分におけるシンチレータ保護層5とセンサーパネル408表面との密着性を高くするために、上記のように、二回の熱ロールラミネートをすることが好ましい。1回目の熱ロールラミネートにおいて、4角形からなる放射線検出装置の一方の対向する二辺側の段差部分が熱ラミネートロール511、512でおされ、シンチレータ保護層5とセンサーパネル408を十分に密着することが可能となる。次に放射線検出装置を平面で90°回転させて再度熱ロールラミネートすることで、放射線検出装置の他方の対向する二辺側の段差部分でシンチレータ保護層5とセンサーパネル408とを十分に密着することが可能となる。
【0060】
上記の熱ラミネート処理で、センサーパネル408のシンチレータ下地層3aの側面まで密着せることが難しい場合には、シンチレータ層4の側面(センサーパネルの端辺)まで密着させた後に、残りのホットメルト樹脂シートをセンサーパネル端部で折り曲げ、加熱可能なローラーでセンサーパネル側面とホットメルト樹脂シートを加圧および加熱しながら貼り合わせる。
【0061】
次に、上記(3)の方法をより詳細に説明するために、図8に真空プレス方式によるホットメルト樹脂シートの成膜方法を示す。図8において、加熱プレス機の上にシンチレータ層4を形成したセンサーパネル408を配置し、シンチレータ層4の上に、図6(a)、(b)を用いた説明したホットメルト樹脂シート62を配置する。次にセンサーパネル408とホットメルト樹脂シート62の周辺を減圧するとともに、ダイヤフラムゴム601で隔てられたシンチレータ保護層5と反対側の空間を加圧する。ダイヤフラムゴム601によって、ホットメルト樹脂シート62はシンチレータ層4の表面とシンチレータ下地層3aとに、隙間無く密着するように加圧され、さらにホットメルト樹脂の溶融開始温度よりも10−60℃程高い温度で、数秒―数分加熱することでホットメルト樹脂が溶融する。加圧圧力は、1−50Kg/cm2の範囲で調整する。
【0062】
次に、冷却後、真空プレス装置から放射線検出装置を取り出す。その結果、ホットメルト樹脂シートは、シンチレータ層4の表面と、センサーエリア2の周辺部のシンチレータ下地層3aとに十分に密着される。
【0063】
ところで、放射線検出装置の電磁波による影響は、放射線検出装置と電磁波発生機器の距離、及び方向・位置関係で強度が異なる。特にセンサーの前面および後面からの電磁波侵入の影響が大きいことがわかっている。電磁シールド効果は、電磁シールド材の厚さが厚いほど効果があるが、重量、大きさ、コスト等がかさむことになり、むやみに厚くすることはできない。経験的に、一般X線撮影室では、電磁シールド材であるアルミニウム厚が20μm以上あれば電磁シールドの効果がみられることが知られている。電磁シールド材としては、一般に市販されているポリエチレンシートにアルミ箔をほどこしたシートが十分適応可能である。本実施形態においてはシンチレータ保護層5と反射層6と反射層保護層7とからなるシンチレータ保護部材で電磁シールド材を構成することができる。
【0064】
また、金属体である電磁シールド体は、さまざまな状況から電荷を帯びることが考えられ、本発明の高感度な放射線検出装置にとってはセンサー表面に電荷を帯びた非常に不安定な状況が想定できる。この不安定な状態を回避するためには、シンチレータ保護部材、特に反射層6を不図示のセンサーを支持する筐体の固定電位(例えばグランド)に落とすことが望ましい。
【0065】
以上、本発明の第1の実施形態では、シンチレータ層の表面および側面をシンチレータ保護層やシンチレータ保護部材で外部からの水分の進入防御でき、ノイズの少ない、安定した電気信号をえることができる。特に反射層を有するシンチレータ保護層で覆うことで、外来電磁波を防御できる。さらに、ポリオレフィン系樹脂等のホットメルト樹脂を用いることにより、従来例の防湿層の蒸着工程に対して、格段の工数削減およびコストダウンを達成することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、センサーパネルの外部接続端子部413の設けられていない1辺に対して裏面までシンチレータ保護層5が設けられているが、外部接続端子部413が設けられている辺に対しても同様に実施可能である。その際には、外部接続端子部413が設けられた領域のシンチレータ保護層5、反射層6、反射層保護層7の一部に開口部を設けることにより実施可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
図9および図10に、本発明の第2の実施形態の放射線検出装置の概略図を示す。なお、以下に説明する各実施例(第2から第8の実施例)の各図においてはセンサー保護層3b、シンチレータ下地層3aを合わせて3として示す。
【0068】
第1実施形態との相違点は、第1の実施形態よりも防湿効果を向上させるためにホットメルト樹脂のシンチレータ保護層5で基板1の側面まで被覆させたことにある。図9、図10ともに図2および図5とはホットメルト樹脂のシンチレータ保護層5、シンチレータ保護部材の被覆範囲が違うだけのため、配置、各機能等の説明は省略する。なお、基板1の側面において、ホットメルト樹脂のシンチレータ保護層5をホットプレス処理によるホットプレス(加熱加圧接着)をほどこすことにより、さらに防湿効果を向上させることができる。
【0069】
(第3の実施形態)
図11と図12は、本発明の第3の実施形態である。実施形態1および2との違いは、ホットメルト樹脂のシンチレータ保護層5の一部を基板1の裏面まで被覆させたことである。
【0070】
本実施形態によれば、さらなる防湿効果を得るばかりでなく、シンチレータ層4および基板1の側面を完全に被覆しているため、シンチレータ保護層(図11)や、シンチレータ保護層,反射層,反射層保護層を有するシンチレータ保護部材(図12)が外部からの力で剥離しにくいという効果も得ることができる。
【0071】
(第4の実施形態)
図13と図14は本発明の第4の実施形態である。第4の実施形態では、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5(図13)、およびシンチレータ保護層,反射層,反射層保護層を有するシンチレータ保護部材で基板1の裏面を完全に被覆したものである。
【0072】
これにより、防湿効果だけではなく、外来の電磁波をセンサーの両面で防止することができ、より安定した撮影を可能とする。
【0073】
(第5の実施形態)
図15は本発明の第5の実施形態である。図中8はホットメルト樹脂層であり、図13の構成との違いは、シンチレータ層4を被覆するホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5とは分離し、異なるホットメルト樹脂層8を基板1の裏面に貼り合せたことにある。工程上分離したほうが良い場合は本実施形態の構成でも図13と同様の効果を得ることができる。なお、同様にシンチレータ層4を被覆するシンチレータ保護層,反射層,反射層保護層を有するシンチレータ保護部材とは分離して、ホットメルト樹脂層、反射層、反射層保護層からなる別の部材を基板1の裏面に貼り合せても図14と同様の効果を得ることは言うまでもない。
【0074】
(第6の実施形態)
図16は本発明の第6の実施形態である。図中9は第2のホットメルト層である。シンチレータ保護層であるホットメルト層を2層にしたタイプで、図2に示した第1の実施形態の構成(シンチレータ保護層をシンチレータ下地層3aの側面まで設けた構成)による防湿効果をさらに向上させたものである。もちろん、第3、第4の実施形態のように、被覆する範囲をシンチレータ層4から基板1の側面、あるいは基板1の裏面まで広げてもよく、そのような構成により更なる防湿効果をえることは言うまでもない。
【0075】
シンチレータ保護層を2層有するシンチレータ保護部材をシンチレータ層4からシンチレータ下地層3aや基板1の側面、あるいは基板1の裏面まで広げてもよい。なお、2層のシンチレータ保護層は異なる特性を有するホットメルト樹脂を用いることができる。例えば、シンチレータ層と接するホットメルト樹脂には柱状結晶構造間に入り込まない程度の溶融時粘性率を有する材料が望ましく、反射層保護層等の層と接するホットメルト樹脂には密着性向上が求められ、剥離などの機械的破壊や、界面からの水分の侵入による柱状結晶シンチレータ層の潮解などの問題を考慮すると上記溶融時粘性率よりも低いことが望ましいので、溶融時粘性率の異なるホットメルト樹脂を用いることができる。
【0076】
以上説明した各実施形態では、外部接続端子のあるセンサーパネルの辺ではシンチレータ保護層をシンチレータ下地層3aや基板1の側面、あるいは基板1の裏面に形成していないが、あらかじめ外部接続部をくりぬいたシンチレータ保護層であるなら、外部接続端子間およびセンサーパネルの側面あるいは裏面にも保護層を形成することは可能である。この場合、まずシンチレータ層を蒸着したセンサーパネルに外部接続部をくりぬいたシンチレータ保護層を形成し、その後に外部接続端子を形成することも可能である。
【0077】
(第7の実施形態)
図17は本発明の第7の実施形態である。センサーパネルの側面でホットメルト樹脂のシンチレータ保護層5にたるみを持たせた例である。当然、シンチレータ保護層,反射層,反射層保護層を有するシンチレータ保護部材を配置した場合には、センサーパネルの側面でもたるみを持つことになる。センサーパネル側面に何か機能物を配置する場合に有効な形態の一例である。
【0078】
ここまで、図1に示したように、四角形状のセンサーパネルの一辺の側面にシンチレータ保護層を被覆した形態の放射線検出装置で説明してきたが、図18あるいは図19に示すように、四角形状のセンサーパネルの二辺の側面、三辺の側面に、同様のシンチレータ保護層5あるいはシンチレータ保護層5,反射層6,反射層保護層7を有するシンチレータ保護部材を配置することができる。図18では1辺に電気信号を外部に取り出すための配線部材26、1辺にセンサーを駆動するための信号を入力するための配線部材27を配しており、他2辺には外部接続部を設けていない。図18において、22はセンサーエリア、24はシンチレータ層、25はシンチレータ保護層を示している。2辺の外部接続部のない部位を用いることにより、患者又は患部に対して2次元の自由度をもたせることが可能となる。
【0079】
図19は、外部接続部を1辺に集中させ、他の3辺をフリーにした形態である。図19では1辺に電気信号を外部に取り出すための配線部材36と、センサーを駆動するための信号を入力するための配線部材27とを配しており、他3辺には外部接続部を設けていない。図19において、32はセンサーエリア、34はシンチレータ層、35はシンチレータ保護層を示している。かかる構成により、さらなる自由度が増すとともに、軽量化を達成できる。病室等での寝たきりの患者や、座ったままの患者の撮影を行う場合、装置端部までセンサーであることは応用がひろがることになり、非常に有用である。
【0080】
図20および図21に示す構成は図17に示す構成の応用例である。図20では外部接続端子側(図中右)も含めてシンチレータ保護層5を形成した場合である。シンチレータ保護層5,反射層6,反射層保護層7を有するシンチレータ保護部材も同様に配置可能であり、外部接続端子上のアンプICなどの読み出し用回路あるいはドライブIC等の駆動用回路に対する電磁シールドを可能とし、さらなる信号の安定化を達成できる。図21はセンサーパネルの裏面全部を覆う形態であり、同様に電磁波の影響の少ない放射線検出装置を達成できる。なお、外部接続端子部413は、シンチレータ保護層5、反射層6、反射層保護層7の一部に取り出し用の開口部を設けることにより可能であり、その際の開口部はアンプICあるいはドライブICから離れた部位であれば電磁シールド効果を低下させることはない。
【0081】
ところで、シンチレータ保護層5や、シンチレータ保護層5,反射層6,反射層保護層7を有するシンチレータ保護部材をセンサーパネルに貼り合せる際の温度は、樹脂の融解温度相当で行う。しかしながら、融解の際に微小な気泡が発生する場合があり、その気泡によって部分的に密着力が小さくなる。シンチレータ保護層5やシンチレータ保護部材の端部周辺でも同様の問題が考えられ、密着力が低下すると、ホットメルト樹脂とセンサーパネルとの界面からの水分の浸入のおそれがある。それによって柱状結晶構造を有するシンチレータ層の潮解をもたらし、発光量、分解特性の劣化をもたらすことになるので、更なる密着力の向上が望まれる。
【0082】
シンチレータ保護層5の端部のヒートシールは、耐湿性の向上を目的としている。端部のヒートシールは、樹脂の融解温度よりやや高めの加熱および加圧を行い、加熱によって樹脂を十分に融解させる。また、気泡が発生しても加圧によって外部に押し出すことによって残気泡による密着力低下を防止する。さらに加圧によって端部の接着層厚を薄くすることによって、外部からの水分侵入ルートをせばめることが可能になる。なお、ヒートシールを施す領域は、センサーエリア2の外側で行うことが望ましい。その理由は、センサーエリア内は、センサー部の構造により微妙な段差があるため、段差の影響でヒートシールの信頼性・効果に不安がある。そのため、段差の少ないセンサーエリア外でホットプレス(ヒートシール)することにより、十分な信頼性・効果をえることが可能になる。
【0083】
図22にホットプレス(ヒートシール)をほどこしたセンサーパネルの概略構成図を示す。図中30がホットプレス部(ヒートシール部)であり、ホットメルト樹脂層の厚さが薄くなっている。図23に図22のB−B'での断面図を示す。図23において矢印C部分がホットプレス部(ヒートシール部)であり、これにより防湿効果の向上を達成できる。このヒートシールは本発明のすべての実施形態に適応できることは言うまでもない。
【0084】
更に図24から図26を用いてホットプレスについて説明する。
【0085】
ホットプレス処理は、図24(a)に示すように、加熱加圧手段411によりシンチレータ保護層5をホットプレスする。また、反射層9と光反射保護層10を形成した後、さらに加熱加圧手段411によりホットプレスする。又更に図24(b)に示すように、シンチレータ保護層8、反射層9と光反射保護層10をまとめて加熱加圧手段411によりホットプレスする。上記方法によりシンチレータ層4を被覆してシンチレータ保護層5を形成することができる。
【0086】
ホットプレス部は、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5のシンチレータ層4周辺の領域とセンサーパネルとの接触界面における防湿性を向上させるために設けられる。本実施形態では、シンチレータ層4の周辺部において、ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5はシンチレータ下地層3aと接している。ホットプレス部はシンチレータ保護部材の周辺部の一部または全体に設けることが可能である。本実施形態では、図22に示すようにシンチレータ保護層5の周辺部の3辺に設けられている。ホットプレス部は、加熱加圧手段411(図24に示す)によってホットメルト樹脂の厚さが他の部分より薄くなるよう部分的に加熱加圧処理され圧着(加圧により密着)された領域である。
【0087】
図26(a)に図25のC−C’断面図を、図26(b)にD−D’断面図を示す。414は電気的接続部の配線パターンである。シンチレータ下地層3aのシンチレータ層4が形成された周囲の領域において、取り出し配線414の存在によりセンサー保護層3bの表面には凹凸が生じる。その凹凸を緩和するために平坦化層として機能するシンチレータ下地層3aを形成するが、シンチレータ下地層3aの表面も完全に平坦とはならず、若干の凹凸を有する。そのような表面上にホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層5を形成しても、図26(b)に示されるように若干の隙間412が生じる可能性がある。つまり、ホットプレス(加熱加圧)を行わない断面を示す図26(b)の部分では、配線パターン414の凸凹へのホットメルト樹脂の進入が不十分で、配線パターンとホットメルト樹脂の間に空隙が生じる場合がある。この隙間412により、1)シンチレータ下地層3aとシンチレータ保護層5との密着力の低下、2)隙間412より侵入する大気中の水分によるシンチレータ層4の潮解、3)シンチレータ保護層5の防湿性の低下、を引き起こす可能性がある。そこで、シンチレータ下地層3aとシンチレータ保護層5が接する領域においてシンチレータ層4が形成された領域を取り囲むように加熱加圧手段411を用いてホットプレス処理(加熱加圧処理)を行うことにより、加熱により溶融したホットメルト樹脂が加圧によりシンチレータ下地層3aの表面上の凹部に入り、冷却により硬化されてシンチレータ下地層3a上の隙間412を埋めて密着する。つまり、ホットプレス処理を行った断面を示す図26(a)の部分では、ホットメルト樹脂の溶融が十分に行われるため隙間412の発生は抑制され、その結果密着力が向上し、周辺部の防湿性が向上する。ホットプレス処理としては、例えば圧力1〜10kg/cm2、温度はホットメルト樹脂の溶融開始温度より10〜50℃高い温度で1〜60秒間行われる。
【0088】
ここまで、センサーパネルに柱状シンチレータを直接蒸着したタイプの放射線検出装置について説明したが、この他、支持基板に柱状構造のシンチレータ層を蒸着し、支持基板をセンサーパネルに接着する間接(貼り合わせ)タイプが考えられる。直接タイプでは、高価なセンサーパネルに柱状構造のシンチレータ層を蒸着した際、シンチレータ層に異物を含んだり、欠陥が多く発生した場合、センサーパネルも使えなくなるというリスクを負う。一方、間接貼り合わせタイプでは、シンチレータ層を支持基板に蒸着したのちセンサーに貼り合せるため、シンチレータ層のでき不出来に左右されず、製造上センサーパネルへの影響はない。
【0089】
(第8の実施形態)
図27、図28、図29はいずれも支持基板31に蒸着された柱状結晶構造を有するシンチレータ層35にホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層を形成したものである。各図の違いはシンチレータ保護層の形成範囲の違いであり、その効果は前述の実施形態で説明しているので、図21を用いて間接(張り合わせ)タイプの保護層形成について説明する。
【0090】
図21において、31は支持基板、32は絶縁層、33は反射層、34は反射層保護層、35は柱状構造のシンチレータ層、36(図22では37、図23では38)はホットメルト樹脂のシンチレータ保護層である。かかる31−36の構成によりシンチレータパネルが構成される。シンチレータ層35が設けられる領域の外側における反射層保護層(シンチレータ下地層)34の表面には、支持基板31、反射層33の影響を受けて段差及びそれに伴う凹凸が存在する。ホットメルト樹脂からなるシンチレータ保護層36はこの段差及び凹凸に溶融して入り込み、その後固化することによってシンチレータ層35及び反射層保護層(シンチレータ下地層)34の表面に密着し、シンチレータ層35の表面及び側面、さらに反射層保護層(シンチレータ下地層)34の表面の一部を被覆するように設けられる。センサーパネルにはホットメルト樹脂のシンチレータ保護層36とセンサー表面が接するように配置し、ホットメルト樹脂が溶解状態になるようにセンサーパネルを加熱することで、センサーパネルとシンチレータ層が形成された支持基板を一体化することができる。
【0091】
支持基板31としては、アモルファスカーボン基板やAl基板、ガラス基板、石英基板など種々の放射線透過性の基板を用いることが好ましい。反射層33としては、Al、Ag、Cr、Cu,Ni,Ti,Mg,Rh,Pt、およびAuなどの反射率の高い金属を用いることが好ましい。反射層保護層(シンチレータ下地層)34としては、LiF,MgF2,SiO2,Al23,TiO2,MgO,SiNの透明無機膜及びポリイミド等の透明有機膜を用いることが好ましい。また、反射層保護層(シンチレータ下地層)34としては、反射層33とシンチレータ層35との間で電気化学的腐食の発生を防止するために非導電性材料を用いることが好ましい。本実施形態のように、支持基板31に導電性材料を用いた場合には、支持基板31と反射層33との間での電気化学的腐食を防止するために、支持基板31と反射層33の間に絶縁層を形成することが好ましい。なお、本発明の全ての実施形態において、シンチレータ層を柱状構造結晶のシンチレータ層として説明したが、電磁シールド効果および防湿効果は特にシンチレータ層の形状や種類等に関係ない。シンチレータ層が気相堆積法によって形成されたものでも、本発明の構成により同様の電磁シールド効果および防湿効果がえられることは言うまでもない。
【0092】
また、以上説明した各実施形態では正方形状の放射線検出装置について説明したが、長方形、多角形状、円板形状、半円形状、長尺形状等必要に応じた形状を採用することができる。
【0093】
(第9の実施形態)
次に本発明に係わる放射線検出装置を用いた放射線検出システムについて図30を用いて説明する。
【0094】
図30に示すように、X線チューブ6050で発生したX線6060は、患者或いは被験者6061の胸部6062を透過し、放射線検出装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応して放射線検出装置6040のシンチレータは発光し、これを光電変換して電気的情報を得る。この情報は、ディジタルに変換されイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室のディスプレイ6080で観察できる。
【0095】
また、この情報は電話回線6090等の伝送手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールーム等ディスプレイ6081に表示又は光ディスク等の保存手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。またフィルムプロセッサ6100によりフィルム6110に記録することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は医療診断機器、非破壊検査機器等に用いられる放射線検出装置やシンチレータパネルに用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態である放射線検出装置の平面概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図6】ホットメルト樹脂をシンチレータ保護層として、シンチレータ層表面及びセンサーパネルの側面を被覆する方法を示す工程図である。
【図7】ホットメルト樹脂をシンチレータ保護層として、シンチレータ層表面及びセンサーパネルの側面を被覆する方法を示す工程図である。
【図8】ホットメルト樹脂をシンチレータ保護層として、シンチレータ層表面及びセンサーパネルの側面を被覆する方法を示す工程図である。
【図9】本発明の第2実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図11】本発明の第3実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図13】本発明の第4実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図14】本発明の第4実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図15】本発明の第5実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図16】本発明の第6実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図17】本発明の第7実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図18】本発明の第7実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図19】本発明の第7実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図20】本発明の第7実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図21】本発明の第7実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図22】ホットプレス(ヒートシール)をほどこした放射線検出装置の概略構成図である。
【図23】図22のB−B'での断面図である。
【図24】ホットプレスについて説明するための図である。
【図25】ホットプレスについて説明するための図である。
【図26】ホットプレスについて説明するための図である。
【図27】本発明の第8実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図28】本発明の第8実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図29】本発明の第8実施形態である放射線検出装置の断面概略図である。
【図30】本発明に係わる放射線検出装置を用いた放射線検出システムを説明する図である。
【図31】従来の放射線検出装置の断面概略図である。
【図32】従来の放射線検出装置の断面概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 基板
2 センサー有効エリア(センサー部)
3a シンチレータ下地層
3b センサー保護層
4 シンチレータ層
5 ホットメルト樹脂層
6 反射層
7 反射層保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、
該パネルの主面上に配置され、放射線を波長変換するシンチレータ層と、
該シンチレータ層を被覆し前記パネルと密着するシンチレータ保護層と、を有し、
前記シンチレータ保護層はホットメルト樹脂からなり、前記シンチレータ層の上面と側面、及び前記パネルの少なくとも1つの側面の一部を被覆して配置される放射線検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層は、前記パネルの表面に設けられたシンチレータ下地層の側面まで少なくとも被覆する放射線検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層は、前記シンチレータ層が形成された前記パネルの主面と対向する他方の主面の少なくとも一部を更に被覆する放射線検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記パネルは、基板と、該基板上に2次元状に配置され、前記シンチレータ層で変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換素子からなる受光部と、該受光部上に備えられ、前記シンチレータ層及び前記シンチレータ保護層と接する保護層と、を有するセンサーパネルである放射線検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層上に設けられた反射層と、該反射層上に設けられた反射層保護層を更に有する放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記パネルは、支持基板と、該支持基板上に備えられ、前記シンチレータ層で変換された光を反射する反射層と、該反射層上に備えられ、前記反射層及び前記シンチレータ保護層と接するシンチレータ下地層と、からなる支持部材を有し、前記支持部材上に前記シンチレータ層が設けられる放射線検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層は、前記パネルと接する領域において、加熱加圧処理により前記パネルに圧着された領域を有する放射線検出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層は、前記パネルの側面と接する領域において、加熱加圧処理により前記パネルに圧着された領域を有する放射線検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記ホットメルト樹脂がポリオレフィン系、ポリエステル系又はポリアミド系樹脂を主成分とする放射線検出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ層は、柱状結晶構造を有する放射線検出装置。
【請求項11】
請求項4に記載の放射線検出装置において、前記センサーパネルはその端部に前記電気信号を取り出すための外部接続端子部を有し、前記シンチレータ保護層は該外部接続端子部が存在しない領域に配置される放射線検出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の放射線検出装置において、前記シンチレータ保護層は、複数の層によって構成されている放射線検出装置。
【請求項13】
請求項5に記載の放射線検出装置において、前記反射層は、接地されていることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項14】
支持部材と、
該支持部材上に配置された放射線を波長変換するシンチレータ層と、
該シンチレータ層を被覆し前記支持部材と密着するシンチレータ保護層と、を有し、
前記シンチレータ保護層はホットメルト樹脂からなり、前記シンチレータ層の上面と側面、及び前記支持部材の少なくとも1つの側面の一部を被覆して配置されるシンチレータパネル。
【請求項15】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ保護層は、前記支持部材の表面に設けられたシンチレータ下地層の側面まで少なくとも被覆するシンチレータパネル。
【請求項16】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ保護層は、前記シンチレータ層が形成された記支持部材の主面と対向する他方の主面の少なくとも一部を更に被覆するシンチレータパネル。
【請求項17】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ保護層は、前記支持部材と接する領域において、加熱加圧処理により圧着された領域を有するシンチレータパネル。
【請求項18】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ保護層は、前記支持部材の側面と接する領域において、加熱加圧処理により圧着された領域を有するシンチレータパネル。
【請求項19】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記ホットメルト樹脂がポリオレフィン系、ポリエステル系又はポリアミド系樹脂を主成分とするシンチレータパネル。
【請求項20】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ層は、柱状結晶構造を有するシンチレータパネル。
【請求項21】
請求項14に記載のシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ保護層は、複数の層によって構成されているシンチレータパネル。
【請求項22】
請求項1に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置からの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、
前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段と、
前記信号処理手段からの信号を伝送するための伝送処理手段と、
前記放射線を発生させるための放射線源とを有する放射線検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2006−78472(P2006−78472A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227953(P2005−227953)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】