説明

放射線検出装置および放射線撮像システム

【課題】光キャリブレーションを必要とする放射線検出装置において、光電変換素子を透過した透過光を、光発生器の発光層で効率良く低減して画像品質を向上させることができる、信頼性の高い放射線検出装置を提供する。
【解決手段】基板に配された光電変換素子アレイ12を有するセンサーパネル100と、該センサーパネルの一方の面側に配されたシンチレータ層11と、該センサーパネルのシンチレータ層側とは反対の面側に該光電変換素子アレイが配された領域に対向して配された光発生部101と、を有する放射線検出装置であって、該光発生部は、透明電極層103と、発光層102と、裏面電極層108と、を少なくとも有し、該発光層は、発光体104と、バインダー105と、黒色顔料106と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断機器、非破壊検査機器等に用いられる放射線検出装置および放射線撮像システムに関する。特には、X線撮影等に用いられる放射線検出装置および放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線蛍光体層が内部に備えられた蛍光スクリーンと両面塗布剤とを有するX線フィルムシステムが、X線写真撮影に使用されてきた。しかし、最近においては、それに代わって、ディジタル放射線検出装置の研究開発が盛んに行われている。というのも、X線シンチレータ層と2次元光検出器とを有するディジタル放射線検出装置は、前記X線フィルムシステムを備えた放射線検出装置と比べて、画像特性が良好であるからである。また、それは、データがデジタルデータであるため、ネットワーク化したコンピュータシステムに取り込むことによってデータの共有化を図ることができるという利点も有している。
【0003】
これらディジタル放射線検出装置の中でも、高感度で高鮮明な装置として、以下のような装置が特許文献1に開示されている。すなわち、複数のフォトセンサーおよびTFT等の電気素子が2次元に配置されている光電変換素子部からなる光検出器上に、放射線をフォトセンサーで検出可能な光に変換するためのシンチレータ層を形成してなる装置である。
【0004】
特には、次のような構成の装置が特許文献2に記載されている。すなわち、光学的リセット動作または光学的キャリブレーション動作を行うための光源を備えており、波長選択性透過部品を着色により加工し、波長選択性のフィルタとして使用する構成の装置である。
【特許文献1】特開2000−284053号公報
【特許文献2】特開平10−206552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のような、色素吸収層による光の波長選択方式では、複数の層構成が必要となり、装置構成が複雑で厚くなってしまう。また、複数の層構成では界面からの反射光が多くなってしまう。すなわち、光発生器からセンサーパネルへ戻る反射光は、撮影画像に違和感として品質弊害を引き起こしてしまうので、極力小さくすることが求められている。したがって、従来よりも簡単な構成で、光発生器からセンサーパネルへの反射光を効率良く低減させる放射線検出装置が現在求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、光キャリブレーションが求められる放射線検出装置において、光電変換素子を透過した透過光を光発生器の発光層で効率良く低減して画像品質を向上させる、信頼性の高い放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に配された光電変換素子アレイを有するセンサーパネルと、該センサーパネルの一方の面側に配されたシンチレータ層と、該センサーパネルのシンチレータ層側とは反対の面側に該光電変換素子アレイが配された領域に対向して配された光発生部と、を有する放射線検出装置であって、該光発生部は、透明電極層と、発光層と、裏面電極層と、を少なくとも有し、該発光層は、発光体と、バインダーと、黒色顔料と、を含むことを特徴とする。また、前記光電変換素子アレイは複数の画素を有し、および、前記光発生部の前記黒色顔料の含有率は、該複数の画素に対向する領域の平均値より、画素間に対向する領域の平均値の方が高いことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、基板に配された光電変換素子アレイを有するセンサーパネルと、該センサーパネルの一方の面側に配されたシンチレータ層と、該センサーパネルのシンチレータ層側とは反対の面側に該光電変換素子アレイが配された領域に対向して配された光発生部と、を有する放射線検出装置であって、該光発生部は、透明電極層と、発光層と、裏面電極層と、を少なくとも有し、該発光層は、発光体と、バインダーと、顔料または染料と、を含み、該顔料または染料は、該シンチレータ層の最大発光波長を吸収する第1の顔料または染料と、該第1の顔料または染料以外の第2の顔料または染料と、を含むことを特徴とする。また、前記シンチレータ層はCsI:Tlを含み、および、前記第1の顔料または染料は紫色からなり、かつ前記第2の顔料または染料は黄色、橙色、赤色、赤紫色、青色、緑青色および青緑色から選択された少なくとも1種からなることを特徴とする。前記顔料または染料は、400nm以上750nm以下の波長を吸収することを特徴とする。また、前記光電変換素子アレイは複数の画素を有し、および、前記光発生部の前記顔料または染料の含有率は、該複数の画素に対向する領域の平均値より画素間に対向する領域の平均値の方が高いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記光発生部は、エレクトロルミネセンスであることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記いずれかに記載の放射線検出装置と、該放射線検出装置からの信号を処理する信号処理手段と、を少なくとも有することを特徴とする放射線撮像システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも簡単な構成で、耐久性の高い放射線検出装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、本明細書においては、放射線の範疇に、X線、γ線などの電磁波、およびα線、β線の粒子線も含むものとして説明する。
【0013】
図1は、本発明の放射線検出装置を示す断面図である。本発明の放射線検出装置は、シンチレータ層11と、センサーパネル100と、光発生部101とが、順に積層して配置された構造をしている。すなわち、センサーパネル100と、該センサーパネル100に隣接して配されたシンチレータ層11と、該センサーパネル100のシンチレータ層側とは反対の面側に配された光発生部101と、からなる。
【0014】
前記センサーパネル100は、光電変換素子アレイ12と基板13とから形成されており、基板13上に光電変換素子アレイ12が配置されている構成をしている。また、シンチレータ層11は、放射線を光電変換素子アレイが感知可能な光に変換する材料からなっており、シンチレータ層11をセンサーパネル100に設けるには、直接センサーパネル100に形成してよい。また、支持基板にシンチレータ層を形成した後、これを貼り合わせる手法で形成してもよい。
【0015】
シンチレータ層11の材料としては、GdS:Tbのような粒子蛍光体やハロゲン化アルカリのシンチレータが挙げられる。なかでも、センサーパネルに蒸着によって形成されるCsI:NaおよびCsI:Tl等のハロゲン化アルカリ柱状結晶構造を有するシンチレータが特に好適である。
【0016】
前記光発生部101は、少なくとも透明電極層103と、発光層102と、裏面電極層108とから構成されている。そして、透明電極層103と発光層102との間および発光層102と裏面電極層108との間の少なくとも一方に誘電体層107を配置することは、耐電圧性が向上するために好ましい。そして、前記発光層102は、発光体104と、バインダー105と、黒色顔料106とから構成されている。
【0017】
透明電極層103の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電体が用いられる。なかでも、インジウム錫酸化物(ITO)が好適である。
【0018】
また、発光体102の材料としては、具体的には第II族元素と第VI元素とからなる群から選ばれる元素の一つあるいは複数と、第III族元素と第V族元素とからなる群から選ばれる一つあるいは複数の元素とからなる半導体の微粒子である。それらは、求められる発光波長領域により任意に選択される。例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CaS、MgS、SrS、GaP、GaAsおよびそれらの混晶などが挙げられるが、ZnS、CdS、CaSなどが特に好適である。また、付活剤としては、MnやCuなどの金属イオンおよび希土類元素などが好適である。また、必要に応じて添加される共付活剤としては、Cl、Br、Iなどのハロゲン元素やAlなどが好適である。
【0019】
バインダー105の材料としては、シアノ・エチル・セルローズ等の高誘電物が好適である。
【0020】
誘電体層107の材料としては、誘電率と絶縁性が高く、かつ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。具体的には金属酸化物、窒化物が挙げられ、例えば、TiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO、PbNbO、Ta、BaTa、LiTaO、Al、ZrO、AlONなどが用いられる。
【0021】
裏面電極層108の材料としては、金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物が用いられる。具体的には、次のものが挙げられる。ナトリウム、カリウム、ナトリウム・カリウム合金、マグネシウム、リチウム。マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物。アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等。なかでも、酸化などに対する耐久性の点から、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物等が好適である。
【0022】
そして、本発明の特徴であるのだが、発光層中には、顔料である黒色顔料106が含有されている。さらには、発光層中に該黒色顔料106が分散されている。黒色顔料106は、シンチレータ層の発光波長の領域よりも少なくとも広い領域に吸収波長を有する。例えば、シンチレータ層がCsI(Tl)の場合、500nm以上600nm以下の範囲内に最大発光波長を有するブロードなピークをもつ。そして、発光波長の領域は、最大で400nm以上750nm以下となる。黒色顔料は、広範囲な波長の光を吸収可能であるため、CsI(Tl)が発光する波長の光を吸収し、光電変換素子アレイへの反射光を減少できるため、画質が向上する。黒色顔料としては、炭素を含有するカーボンブラック、チタンの酸化または二酸化チタンの還元により得られるチタンブラック、黒色金属酸化物顔料が好ましい。カーボンブラックは、特に、微細粒子であるチャンネルブラックやファーネスブラックがよい。黒色金属酸化物顔料は、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルトの酸化物がよく、また、これらの金属酸化物から選ばれる少なくとも2種以上の複合金属酸化物でもよい。
【0023】
また、黒色顔料ではなく、他の色の顔料を用いることもできる。例えば、CsI(Tl)の発光のピーク波長が570nmである場合、570nmの波長を吸収する紫色の顔料をバインダーに含有させればよい。そして、CsI(Tl)が発する光を充分に吸収するため、次に記載する少なくとも1種の顔料を紫色と一緒にバインダーに含有させる。ピーク波長より短い波長領域では、緑黄色(400〜435nm)、黄色(435〜480nm)、橙色(480〜490nm)、赤色(490〜500nm)、赤紫色(500nm〜560nm)の顔料が好適に用いられる。ピーク波長より長い波長領域では、青色(580〜595nm)、緑青色(595〜610nm)、青緑色(610〜750nm)の顔料が好適に用いられる。なお、括弧内の数値は各色の吸収波長を表す。そして、黄色、橙色、赤色、赤紫色、青色、緑青色および青緑色の少なくとも1種と紫色の顔料が発光層中に含有された場合、シンチレータ層の発光波長領域をより広範囲に吸収でき、反射光を減少できるため、画質が向上する。すなわち、シンチレータ層の最大発光波長を吸収する色の顔料または染料(第1の顔料または染料)と、第1の顔料または染料以外の少なくとも1種の色の顔料または染料(第2の顔料または染料)と、を混合することが、反射光の低減のために求められる。
【0024】
センサーパネル100側の光発生部101面から照射される光は、光電変換素子の特性変動を改善するために照射されるので、光電変換素子には適量な照射光量が求められる。このため黒色顔料106や黒色以外の少なくとも2色の顔料の混合材料は、光発生部101からの照射光が透過することが求められる。よって、黒色顔料106や黒色以外の少なくとも2色の顔料の混合材料が吸収する波長領域は、シンチレータ層の発光波長と同等の領域であって、光発生部の波長領域の吸収量が少ないことが望ましい。もしくは、光発生部の発光波長領域が顔料の波長吸収領域より広いことが望ましい。また、光電変換素子が吸収する波長領域での反射率が小さいことが好ましい。また、光発生部の発光波長領域が顔料の吸収波長領域内であっても、光発生部の発光量を高くすることで、光発生部から光電変換素子へ適量な光量を照射することができる。
【0025】
上記では、センサーパネルへの反射光を効率的に減少するために、黒色顔料106を発光層102に分散させたのであるが、バインダーに染料を含有させ、バインダー自体を染料で着色することにより、反射光を減少させることも可能である。染料の色は、顔料の場合と同じである。光発生部101は、光電変換素子アレイの配置領域に対向して、かつ、より広い領域に配置されていることが光キャリブレーション効果および反射光の減少のため好ましい。
【0026】
次に、図5は、本発明の放射線検出装置を放射線撮像システムへ適用した場合の応用例を示す図である。
【0027】
放射線チューブ1001で発生した放射線1002は、被験者(患者など)1003の胸部などの体の部位1004を透過し、シンチレータを上部に実装した放射線撮像装置1100に入射する。この入射した放射線1002には被験者1003の体内部の情報が含まれている。放射線撮像装置1100では、放射線1002の入射に対応してシンチレータが発光し、これを光電変換して電気的情報を得る。また、放射線撮像装置1100では、放射線1002を直接電荷に変換して、電気的情報を得てもよい。この情報はディジタルに変換され、信号処理手段としてのイメージプロセッサ1005により画像処理されて、制御室の表示手段としてのディスプレイ1006に表示される。
【0028】
また、この情報は、無線または電話回線などの有線等の伝送手段1007により遠隔地へ転送することができる。これによって、別の場所のドクタールーム等に設置された、表示手段としてのディスプレイ1008に表示するか、あるいは、記憶手段としてのフィルムプロセッサ1009により光ディスク等の記録媒体に保存することができる。これによって、遠隔地の医師が診断することも可能である。また、フィルムプロセッサ1009は、印刷手段としてのレーザプリンタに接続され、伝送手段1007により伝送された情報をフィルム等の記録媒体に記録することができる。
【実施例】
【0029】
これより、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されはしない。
【0030】
(実施例1)
図1は、本実施例に従う放射線検出装置の断面図である。図1に示すように光発生部101と、センサーパネル100と、そのセンサーパネル上のCsI(Tl)であるシンチレータ層11とが配置されている。そして、光発生部101の発光層102には黒色顔料106が分散されている。黒色顔料106はカーボンブラックであり、ここでは、チャンネルブラックを用いた。光発生部101は、少なくとも光電変換素子アレイ12の受光範囲に光を照射できるようになっている。黒色顔料106は、シンチレータ層の発光によってセンサーパネルから基板13を透過してきた光を効率良く吸収するので、センサーパネル100の光電変換素子アレイ12に反射される成分は極微量となる。なお、黒色顔料106は、光発生部101からの光も吸収するので、シンチレータ層の発光によってセンサーパネルから基板13を透過してきた光よりも、光発生部101の発光の量を多くする。以上のようにして、黒色顔料を分散することで、光キャリブレーションに必要な光は透過させ、画像の品質劣化を引き起こす反射光を品質上問題無いレベルに低減させることが可能となる。
【0031】
図2は、本実施例に従う放射線検出装置の変形例であり、放射線入射側から見た平面図である。
【0032】
図2に示すように、本例は、基板13と、基板13に配置された光電変換素子アレイ12と、シンチレータ層11と、光電変換素子アレイおよびシンチレータ層11より広い領域に配置された光発生部101と、から構成される。光発生部101は、光電変換素子アレイ12の配置領域に対向して、かつ、より広い領域に配置されていることが光キャリブレーション効果および反射光の減少のため好ましい。光電変換素子アレイ12は、図の簡略化のため、3個×3個の画素14を有している。画素の数は、これに限定されることなく、例えば2000個×2000個などのより多くの画素が適用される。さらに、光発生部101の黒色顔料の含有率は、画素に対向する領域の平均値より画素間に対向する領域の平均値の方が高い。このような構成により、光発生部101の発光量を充分な程度に保ち、画素間を通過したシンチレータ層11からの光の反射をより低減することができる。
【0033】
ここで、光発生部101は、エレクトロルミネセンス(EL)等の電場発光光源が好ましい。また、光発生部101は、少なくとも一方の電極を分割することで、部分的な光キャリブレーションのための発光を行うことができるため、消費電力を低減することができる。
【0034】
(実施例2)
図3は、本実施例に従う放射線検出装置の断面図である。図3に示すように、実施例1と同様に、光発生部101と、センサーパネル100と、CsI(Tl)であるシンチレータ層11とが配置されている。実施例1と異なる点は、発光層102に黒色顔料ではなく、紫色と赤色の顔料が含有されていることである。つまり、光発生部101の発光層102には2種の顔料109が含有されている。この場合、2種の顔料109を含有することにより、光発生部101からの光も吸収する。しかし、シンチレータ層の発光によってセンサーパネルから基板13を透過してきた光よりも光発生部の発光の量を多くする。そうすることで、光キャリブレーションに必要な光は透過させ、画像の品質劣化を引き起こす反射光を品質上問題無いレベルに低減させることが可能となる。
【0035】
本実施例においては、2色の顔料を用いたが、さらに青色などの前述の各色を混合して、より黒色化することが反射光を低減するために好ましい。
【0036】
(実施例3)
図4は、本実施例に従う放射線検出装置の断面図である。図4に示すように、実施例2と同様に、光発生部101と、センサーパネル100と、CsI(Tl)であるシンチレータ層11とが配置されている。実施例2と異なる点は、発光層102に顔料ではなく染料が含有されていることである。染料は、実施例2と同様に紫色と赤色を用いた。したがって、光発生部101の発光層102は、発光体104と染料入りバインダー110で構成した。バインダーを染料で着色することにより、シンチレータ層の発光によってセンサーパネルから基板13を透過してきた光は、着色されたバインダーで効率良く吸収される。よって、センサーパネル100の光電変換素子アレイ12に反射される成分は極微量となる。なお、染料入りバインダー110は、光発生部101からの光も吸収するので、シンチレータ層の発光によってセンサーパネルから基板13を透過してきた光よりも、光発生部の発光の量を多くする。以上のようにして、バインダーを染料で着色することで、光キャリブレーションに必要な光は透過させ、画像の品質劣化を引き起こす反射光を品質上問題無いレベルに低減させることが可能となる。
【0037】
なお、本実施例は、実施例2と同様に、さらに青色などの前述の各色を混合して、より黒色化することが反射光を低減するために好ましい。
【0038】
以上、説明してきた本発明によれば、光学的キャリブレーション機能を有する放射線検出装置において、光発生部の発光層に黒色顔料、黒色顔料以外の2色の顔料または染料を含有することで、センサーパネルへの反射光を効率的に減らすことができる。したがって、画像品質の安定化が可能となっている。また、この構成により、波長選択性のフィルタ等の追加を必要としないので、放射線検出装置の構成が簡略化できる。したがって、信頼性の高い放射線検出装置が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、医療用のX線センサ等に応用することが可能であるが、それ以外の無破壊検査等の用途に応用した場合にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の放射線検出装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示されている実施形態の変形例の正面図である。
【図3】本発明の放射線検出装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の放射線検出装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の放射線検出装置を備えた放射線撮像システムの概略図である。
【符号の説明】
【0041】
11 シンチレータ層
12 光電変換素子アレイ
13 基板
14 画素
100 光電変換素子アレイと基板からなるセンサーパネル
101 光発生部
102 発光層
103 透明電極層
104 発光体
105 バインダー
106 黒色顔料
107 誘電体層
108 裏面電極層
109 顔料
110 染料入りバインダー
1001 放射線チューブ
1002 放射線
1003 被験者
1004 体の部位
1005 イメージプロセッサ
1006 ディスプレイ
1007 伝達手段
1008 ディスプレイ
1009 フィルムプロセッサ
1010 フィルム
1011 レーザプリンタ
1100 放射線撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配された光電変換素子アレイを有するセンサーパネルと、該センサーパネルの一方の面側に配されたシンチレータ層と、該センサーパネルのシンチレータ層側とは反対の面側に該光電変換素子アレイが配された領域に対向して配された光発生部と、を有する放射線検出装置であって、
該光発生部は、透明電極層と、発光層と、裏面電極層と、を少なくとも有し、
該発光層は、発光体と、バインダーと、黒色顔料と、を含むことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記光電変換素子アレイは複数の画素を有し、および、前記光発生部の前記黒色顔料の含有率は、該複数の画素に対向する領域の平均値より、画素間に対向する領域の平均値の方が高いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
基板に配された光電変換素子アレイを有するセンサーパネルと、該センサーパネルの一方の面側に配されたシンチレータ層と、該センサーパネルのシンチレータ層側とは反対の面側に該光電変換素子アレイが配された領域に対向して配された光発生部と、を有する放射線検出装置であって、
該光発生部は、透明電極層と、発光層と、裏面電極層と、を少なくとも有し、
該発光層は、発光体と、バインダーと、顔料または染料と、を含み、
該顔料または染料は、該シンチレータ層の最大発光波長を吸収する第1の顔料または染料と、該第1の顔料または染料以外の第2の顔料または染料と、を含むことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項4】
前記シンチレータ層はCsI:Tlを含み、および、前記第1の顔料または染料は紫色からなり、かつ前記第2の顔料または染料は黄色、橙色、赤色、赤紫色、青色、緑青色および青緑色から選択された少なくとも1種からなることを特徴とする請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記顔料または染料は、400nm以上750nm以下の波長を吸収することを特徴とする請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記光電変換素子アレイは複数の画素を有し、および、前記光発生部の前記顔料または染料の含有率は、該複数の画素に対向する領域の平均値より画素間に対向する領域の平均値の方が高いことを特徴とする請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記光発生部は、エレクトロルミネセンスであることを特徴とする請求項1または3に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の放射線検出装置と、該放射線検出装置からの信号を処理する信号処理手段と、を少なくとも有することを特徴とする放射線撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309517(P2008−309517A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155153(P2007−155153)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】