説明

放射線検出装置

【課題】X線検出パネル12に供給する各電圧に重畳するノイズを確実に除去し、画像上で横縞状に発生するノイズを軽減できるX線検査装置11を提供する。
【解決手段】X線検出パネル12とパネル制御部とをゲート制御ライン29で接続し、X線検出パネル12とバイアス生成部とをバイアス電圧供給ライン30で接続する。各ライン29,30のそれぞれに、バッファ回路部31及びフィルタ回路部32を接続する。バッファ回路部31及びフィルタ回路部32により、X線検出パネル12に供給する各電圧に重畳するノイズを確実に除去し、画像上で横縞状に発生するノイズを軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出装置としてX線検査装置は、X線検出パネルから出力されるシグナル信号を増幅回路、信号変換回路、表示回路を介してモニタに表示させ、X線像を検査するシステムである。
【0003】
このX線検査装置において、画像上に横縞状に発生するランダムノイズ成分が最大の問題となっている。このランダムノイズ成分は、X線の量子ノイズと、X線検出パネルのシグナル信号に重畳するノイズ成分とに大別される。上述した横縞状に発生するランダムノイズは、X線検出パネルのシグナル信号に略周期的なゆらぎをもって重畳するノイズである。
【0004】
例えば、TFT型のX線検出パネルの場合、ノイズ要因には様々な種類があり、特にTFTのゲートを制御するオン/オフ電圧、TFTのバイアス電圧のゆらぎが大きく影響している。
【0005】
これは、X線検出パネルのオン/オフ電極及びバイアス電極と、X線検出パネルで変換した電気信号を読み出すシグナルラインとの間に数pFのカップリング容量が存在するためで、各電圧がゆらぐことによって誘導電荷が発生し、シグナルラインにノイズが重畳する。オン/オフ電圧及びバイアス電圧は電源回路で生成されており、ゆらぎを抑制するために電源回路上にフィルタ回路を設けて供給する電圧の清浄化を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−163343号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電源回路内のフィルタ回路でのノイズ抑制のみでは、電源回路とX線検出パネルとを接続する接続経路で混入するノイズの除去は難しい。また、電源回路とX線検出パネルとは一般的に異なる面上で構築されているため、近接して配置するのが困難で、電源回路とX線検出パネルとを接続する接続経路でノイズが混入しやすい。そのため、電源回路から放出されるスイッチングノイズや接地ラインから混入するノイズの影響により、X線検出パネルに供給する各電圧にノイズが重畳し、画像上に横縞状のノイズ成分が発生する。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、放射線検出パネルに供給する各電圧に重畳するノイズを確実に除去し、画像上で横縞状に発生するノイズを軽減できる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放射線像を電気信号に変換する放射線検出パネルと、この放射線検出パネルに電圧を印加して制御するパネル制御部と、前記放射線検出パネルにバイアス電圧を供給するバイアス生成部と、前記放射線検出パネルと前記パネル制御部との間、及び前記放射線検出パネルと前記バイアス生成部との間のそれぞれに、独立して接続されたフィルタ回路部及びバッファ回路部とを具備しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線検出パネルとパネル制御部との間、及び放射線検出パネルとバイアス生成部との間のそれぞれに、独立して接続されたフィルタ回路部及びバッファ回路部により、放射線検出パネルに供給する各電圧に重畳するノイズを確実に除去し、画像上で横縞状に発生するノイズを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図3に、放射線検出装置としてX線検査装置11を示す。このX線検査装置11は、X線発生源からX線が人体あるいは被検査物に照射されて透過したX線像を検出して電気信号に変換する放射線検出パネルとしてのX線検出パネル12、このX線検出パネル12に電圧を印加して制御するパネル制御部13を構成するパネル制御基板14、X線検出パネル12にバイアス電圧を供給するレギュレータであるバイアス生成部15のバイアス生成基板16を備え、これらX線検出パネル12、パネル制御基板14およびバイアス生成基板16が筐体17内に配置されている。
【0012】
筐体17内では、筐体17内に設けられた仕切板18の一面側に導電性の基準接地部(以下、基準GNDと呼ぶ)19を介してX線検出パネル12が配置されるとともにこのX線検出パネル12がパネル支持部20によって支持され、仕切板18の他面側にパネル制御基板14およびバイアス生成基板16が配置されている。
【0013】
X線検出パネル12は、X線を光に変換するシンチレータ層及びこのシンチレータ層で変換された光を電気信号に変換する光電変換基板を備えている。光電変換基板には、フォトダイオード素子21とコンデンサ22と薄膜トランジスタ(以下、TFTと呼ぶ)23とをそれぞれ組みとし、それぞれの組が画像の画素に対応するように格子状に配列されている。そして、フォトダイオード素子21で発生した電荷はTFT23のゲートがオン状態になるまでコンデンサ22に保持され、TFT23のゲートがオン状態になることによりコンデンサ22の電荷がTFT23を通じてシグナルライン24から読み出される。
【0014】
X線検出パネル12の一辺には各TFT23のゲートと接続される中継アダプタ25が配置され、X線検出パネル12の一辺に隣接した辺には各シグナルライン24と接続される中継アダプタ26が配置されている。
【0015】
パネル制御基板14のパネル制御部13は、TFT23をオン制御するレギュレータ27、及びTFT23をオフ制御するレギュレータ28を備えている。
【0016】
X線検出パネル12の中継アダプタ25とパネル制御基板14のパネル制御部13の各レギュレータ27,28とがゲート制御ライン29で接続され、X線検出パネル12とバイアス生成基板16のバイアス生成部15とがバイアス電圧供給ライン30で接続されている。これらライン29,30は電線ケーブルまたはフレキシブル回路基板で構成されている。また、パネル制御基板14及びバイアス生成基板16のGNDは基準GND19に接地されている。
【0017】
各ライン29,30には、X線検出パネル12の近傍に位置して、バッファ回路部31及びフィルタ回路部32がそれぞれ接続されている。これらバッファ回路部31及びフィルタ回路部32は同じ基板に搭載されて1つの回路部33としてユニット化され、X線検出パネル12の側面もしくは検出面の裏面近傍に配置されている。
【0018】
各バッファ回路31は、レギュレータ27,28及びバイアス生成部15からX線検出パネル12に供給する電圧を波形整形してノイズを除去する。
【0019】
各フィルタ回路部32は、例えばカットオフ周波数fc=1kHzのローパスフィルタ特性を持つもので、各フィルタ回路部32のGNDは基準GND19に接続されている。更に図5に示すようにローパスフィルタはバッファ回路の後、すなわちバッファ回路とX線検出パネルの間に接続されている。図6〜図7にフィルタ回路部32の各例を示す。図5は抵抗RとコンデンサC1,C2で構成されたRCローパスフィルタ回路部の例、図6はインダクタLと抵抗Rで構成されたLRローパスフィルタ回路の例、図7はインダクタL、抵抗R、コンデンサC1,C2で構成されたRCLローパスフィルタ回路部の例である。このフィルタ回路部32に使用する抵抗Rには酸化金属皮膜抵抗素子か薄膜チップ抵抗素子が使用され、コンデンサC1,C2には容量値許容差が小さく温度係数の小さいチップセラミックコンデンサが使用され、インダクタLには薄膜チップコイルが使用される。
【0020】
また、X線検出パネル12には各シグナルライン24を通じて電気信号を読み出す読出装置34に接続されている。この読出装置34のGNDも基準GND19に接地されている。
【0021】
そして、X線検査装置11は、X線検出パネル12に各電圧を供給して駆動し、このX線検出パネル12で人体あるいは被検査物を透過したX線像を検出し、X線検出パネル12から出力される電気信号を増幅回路、信号変換回路、表示回路を介してモニタに表示させ、X線像を検査する。
【0022】
X線検出パネル12とパネル制御部13の各レギュレータ27,28との間及びX線検出パネル12とバイアス生成部15との間にそれぞれ独立したバッファ回路部31及びフィルタ回路部32を設けているため、各ライン29,30に混入するノイズをX線検出パネル12の手前で確実に除去することができる。そのため、X線検出パネル12に供給する各電圧に重畳するノイズを確実に除去し、画像上で横縞状に発生するノイズを軽減したX線検査装置11を提供できる。
【0023】
バッファ回路部31及びフィルタ回路部32は1つの回路部33としてユニット化していることにより、これらバッファ回路部31及びフィルタ回路部32を各ライン29,30に容易に配置できる。
【0024】
また、一般に、X線検出パネル12のTFT23を制御するオン/オフ電極やバイアス電極とシグナルライン24との間に存在するカップリング容量(図3のCgg、Coff、Cpdなど)は、オフ容量が最も多く約10pF程度となり、オフ容量に対して、オン容量は約1/100、バイアス容量は約1/5程度となる。そのため、全てのライン29,30にバッファ回路部31及びフィルタ回路部32を設けることが好ましいが、バッファ回路部31及びフィルタ回路部32を設けるラインはゲート制御ライン29のうちのオフ電極のラインとバイアス電圧供給ライン30とを主体とし、ゲート制御ライン29のうちのオン電極のラインには設けなくてもよい場合もある。
【0025】
また、フィルタ回路部32のGND、パネル制御部13のGND、バイアス生成部15のGNDを、容量の大きい1つの基準GND19に接続しているため、各GND間に電位差が生じるのを防止し、ノイズを軽減できる。
【0026】
なお、フィルタ回路部32は、抵抗RとコンデンサC1,C2で構成されたRC回路のパッシブフィルタが基本となるが、インダクタLを付加したRCL回路や、ユニット化されたLPFを用いることもできる。
【0027】
また、フィルタ回路部32は、高周波のノイズを除去する場合、フェライトビーズチップインダクタ等のフィルタの追加も可能である。素子の大きさはできるだけ小型のものを選択し、X線検査装置11の形状の妨げにならない大きさを選択するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態を示す放射線検出装置の正面図である。
【図2】同上放射線検出装置の断面図である。
【図3】同上放射線検出装置の等価回路図である。
【図4】同上放射線検出装置の一部の等価回路図である。
【図5】同上放射線検出装置のフィルタ回路部の一例を示す回路図である。
【図6】同上放射線検出装置のフィルタ回路部の他の例を示す回路図である。
【図7】同上放射線検出装置のフィルタ回路部のさらに他の例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0029】
11 放射線検出装置としてX線検査装置
12 放射線検出パネルとしてのX線検出パネル
13 パネル制御部
15 バイアス生成部
19 基準接地部
31 バッファ回路部
32 フィルタ回路部
C1,C2 コンデンサ
L インダクタ
R 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線像を電気信号に変換する放射線検出パネルと、
この放射線検出パネルに電圧を印加して制御するパネル制御部と、
前記放射線検出パネルにバイアス電圧を供給するバイアス生成部と、
前記放射線検出パネルと前記パネル制御部との間、及び前記放射線検出パネルと前記バイアス生成部との間のそれぞれに、独立して接続されたフィルタ回路部及びバッファ回路部と
を具備していることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
フィルタ回路部は、バッファ回路と放射線検出パネルとの間に設置された
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
フィルタ回路部及びバッファ回路部は、放射線検出パネルの近傍に設置された
ことを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出装置。
【請求項4】
フィルタ回路部及びバッファ回路部は、ユニット化された回路である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項5】
フィルタ回路部は、抵抗とインダクタとコンデンサとのうちのいずれかの組み合わせで構成された
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項6】
フィルタ回路部は、1kHz以下のローパスフィルタ機能を有する
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項7】
放射線検出パネルの近傍に基準接地部を備え、
フィルタ回路部の接地は、前記基準接地部に接続された
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128186(P2009−128186A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303456(P2007−303456)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】