説明

放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラム

【課題】複数の検査対象を検査する際の検査速度を高速化することができなかった。
【解決手段】放射線発生器によって放射線を複数の検査対象に照射し、前記放射線発生器の焦点を通る直線を回転軸とした回転軌道上に設定された複数の撮影位置における放射線検出器の静止と当該回転軌道上における前記放射線検出器の回転とを実施し、前記撮影位置のそれぞれにおいて前記複数の検査対象を逐次前記放射線検出器の視野に移動させ、前記複数の検査対象のそれぞれについて透過放射線の強度を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の医療機器をネットワークによって接続し、X線CTなどにて高負荷の演算を実施するにあたり、使用されていない医療機器のCPUも利用して演算を実施する技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−263420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の放射線検査装置においては、複数の検査対象を検査する際の検査速度を高速化することができなかった。
すなわち、従来の放射線検査装置においては、もっぱら画像処理などの演算処理を高速化するために分散処理を行っており撮像系の高速化を伴っていない。従って、解析対象となる画像を取得するための処理に時間がかかり、検査処理のボトルネックとなってしまっていた。特に、一つの基板に対して複数の部品が実装されており、各部品のバンプやリードなど複数の箇所を検査対象として3次元CTによる解析を行うために各検査対象について回転撮像系を一回転させて撮影を行う構成では、撮影を完了するまでに多くの時間がかかる。このため、複数の検査対象についての撮影を完了するために極めて多くの時間がかかってしまう。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、複数の検査対象を検査する場合であっても高速に検査を実施することが可能な放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明では、回転軌道上の撮影位置における静止と回転とを繰り返して放射線検出器を回転させて前記検査対象の透過放射線を取得できるように構成する。この構成において、前記撮影位置のそれぞれにて前記複数の検査対象を逐次前記放射線検出器の視野に移動させ、それぞれの検査対象を透過した透過放射線の強度を取得する。
【0005】
すなわち、ある撮影位置にて放射線検出器を静止させている間に、複数の検査対象の透過放射線強度を取得する。従って、このような透過放射線の取得処理を各撮影位置で実施しながら放射線検出器を前記回転軌道上で一回転させる処理を実施するのみで複数の検査対象について3次元CTによる解析を行うための透過放射線強度情報を取得することができる。
【0006】
一般に、バンプやリードなどの検査対象が複数個存在していても、これらの検査対象の重量は放射線を検出するための放射線検出器より軽く、当該放射線検出器を回転移動させる速度は複数の検査対象を移動させる速度より遅い。従って、放射線検出器を前記回転軌道上で一回転させる間に複数の検査対象を移動させて透過放射線を取得する構成を採用することで、高速に透過放射線を取得することが可能である。
【0007】
また、放射線検出器を回転移動させる機構の耐久性や剛性は複数の検査対象を移動させる機構の耐久性や剛性より劣っている。従って、放射線検出器を前記回転軌道上で一回転させる間に複数の検査対象を移動させて透過放射線を取得する構成を採用することで、装置の耐久性を向上することができる。
【0008】
なお、以上の構成は、工場内の検査ラインなど、連続的に製品の検査を行う放射線検査装置に適用することが好ましい。すなわち、検査ラインにおいてライン上を搬送される製品に複数の検査対象が含まれる場合、当該複数の検査対象について検査を実施するために放射線検出器を複数回、回転させると透過放射線を取得するために極めて多くの時間がかかってしまう。ところが、本発明においては放射線検出器を一回転させるのみで複数の検査対象について3次元CTによる解析を実施するために必要な透過放射線の強度情報を取得することができるので、極めて高速に検査対象の透過放射線を取得することができる。
【0009】
ここで、放射線照射手段は、放射線発生器によって放射線を出力することができればよく、放射線発生器としては開放管や密閉管など種々の放射線源を採用可能である。さらに、放射線検出器回転手段は、放射線検出器を回転軌道上で静止および回転させることができればよい。すなわち、前記回転軸から一定の距離にある円周(回転軌道)上で公転のごとく放射線検出器を回転させ、任意の位置で静止させることができればよく、回転軌道上の複数の位置で複数の検査対象のそれぞれを撮影することによって3次元CT解析を行うための透過放射線画像を取得することができればよい。
【0010】
従って、放射線検出器をアームに接続し、回転軸を中心にして当該アームを回転させる機構や、ボールベアリング等による回転機構など、種々の構成を採用可能である。なお、回転軌道上の撮影位置は予め決められており、これによって各撮影位置における放射線検出器の視野が予め規定されていればよい。むろん、各撮影位置同士の角度ピッチは任意であり、検査対象を検査する際に必要な精度や時間によって予め決定すればよいし、任意の値を設定できるように構成してもよい。
【0011】
検査対象移動手段は、放射線の照射範囲内で複数の検査対象を移動させることができればよく、例えば、直交する2軸に沿って移動を行うX−Yステージ等を採用可能であるが、むろん、複数の検査対象を回転させる機構が付加されていても良い。また、複数の検査対象を備える製品を連続的に検査するために、複数の検査対象を備える製品の搬送機構と連動するように構成することが好ましい。
【0012】
また、各撮影位置における放射線検出器の視野は予め特定されるので、この視野内に各検査対象を配置するためには、例えば、検査対象を放射線検出器の視野中心に配置することとし、当該視野中心に配置すべき検査対象の座標を予め特定しておき、検査対象移動手段によってこの座標を視野中心に移動させる制御を実施する構成等を採用可能である。
【0013】
透過放射線取得手段においては、複数の検査対象を透過した透過放射線のそれぞれを放射線検出器にて検出し、各検査対象について透過放射線の強度を検出することができれば良く、種々の構成を採用することが可能である。例えば、CCD,CMOS等のセンサを2次元的に配置したセンサであってもよいし、1次元的に配置したセンサによってスキャンを行っても良い。
【0014】
さらに、透過放射線取得手段にて取得した透過放射線の強度に基づいて3次元CTによる解析を実施するため、再構成演算を実施する再構成演算部を備える構成を採用しても良い。この構成におけるより具体的な例として、複数の再構成演算部を備える構成とし、それぞれの再構成演算部による分散処理によって複数の検査対象について再構成演算を実施しても良い。この構成によれば、各撮影位置にて取得する透過放射線の強度に基づいて複数の検査対象について再構成演算を実施しても高速に処理を終了することができる。従って、撮像系の撮影速度に対して再構成演算処理がボトルネックになることを防止することができ、再構成演算を含む検査処理の全体を高速化することができる。なお、複数の再構成演算部を構成する際のより具体的な例として、各撮影位置において透過放射線を取得する検査対象の数(各撮影位置における撮影回数)の最大値と再構成演算部の数とを一致させても良い。
【0015】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラム、当該プログラムを記録した媒体としても発明は実現可能である。また、以上のような放射線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)X線検査処理:
(3)他の実施形態:
【0017】
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかるX線検査装置10の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置10は、X線発生器11とX−Yステージ12とX線検出器13aと搬送装置14とを備えており、各部をCPU25によって制御する。すなわち、X線検査装置10はCPU25を含む制御系としてX線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23と搬送機構24とCPU25と入力部26と出力部27とメモリ28とを備えている。この構成において、CPU25は、メモリ28に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0018】
当該CPU25は、各部の制御や良否判定のための処理を実施するための演算部であり、本実施形態においてはCPU25に加えて、他のCPU(CPU1〜N)と画像メモリ(画像メモリ1〜N)とからなるN個(Nは正の整数)の再構成演算部1〜Nを備えている。これらの再構成演算部1〜NにおいてCPU1〜Nは、画像メモリ1〜Nをバッファメモリとして図示しないプログラムを実行し、後述する処理にて取得された透過X線画像に基づいて再構成演算を実施する。
【0019】
メモリ28はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め検査対象データ28aと撮像条件データ28bとが記録されている。検査対象データ28aは、検査対象の位置を示すデータであり、本実施形態においては、基板上に配設されたバンプやリードなど、複数の検査対象をX線検出器13aの視野に配設するためのデータである。
【0020】
撮像条件データ28bは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。X線制御機構21は、当該撮像条件データ28bを参照し、X線発生器11を制御して所定のX線を発生させることができる。X線発生器11は、いわゆる透過型開放管であり、X線の出力位置である焦点Fから出力側のほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲にX線を出力する。
【0021】
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、前記検査対象データ28aに基づいて同X−Yステージ12を制御する。本実施形態において、複数の検査対象は基板上に配置されており、この基板をX−Yステージ12上に載置して各検査対象の良否判定を行う。このためステージ制御機構22は前記検査対象データ28aを参照し、検査対象がX線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を制御する。
【0022】
また、搬送機構24は、搬送装置14を制御して基板12aをX−Yステージ12に搬入する。すなわち、搬送装置14によって一方向に基板12aを搬送し、X−Yステージ12において基板12a上の複数の検査対象を検査し、搬送装置14にて検査後の基板12aを搬出する処理を連続的に実施できるように構成されている。
【0023】
画像取得機構23はX線検出器13aに接続されており、2次元的に分布したセンサを備えている。従って、画像取得機構23は、X線検出器13aが出力する検出値に基づいて、複数の検査対象のそれぞれを透過した透過X線の強度の2次元分布を表す透過X線画像を取得することができる。
【0024】
X線検出器13aはアームを介して回転機構13bに接続されており、X線検出器13aは、X線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心に半径Rの円周(回転軌道)上を公転のように回転可能である。この回転機構13bは、画像取得機構23のθ制御部23aによって制御される。また、X線発生器11の焦点FからX線検出器13aにおける検出面の中心に対して延ばした直線と、当該検出面とが直交するように検出面が配向されている。
【0025】
出力部27は前記透過X線画像等を表示するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU25の処理によって得られる種々の演算結果や透過X線画像データ、検査対象の良否判定結果等を出力部27に表示することができる。
【0026】
CPU25は、メモリ28に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、検査対象の検査を行うために、図1に示す搬送制御部25aとX線制御部25bと検出器回転部25cとステージ制御部25dと画像取得部25eと良否判定部25fとにおける演算を実行する。搬送制御部25aは、搬送機構24を制御して、適切なタイミングで基板12aをX−Yステージ12に供給し、また、適切なタイミングで搬送装置14を駆動して検査済みの基板12aをX−Yステージ12から取り除く。
【0027】
X線制御部25bは、前記撮像条件データ28bを取得し、前記X線制御機構21を制御して所定のX線をX線発生器11から出力させる。検出器回転部25cは、画像取得機構23のθ制御部23aに指示を行い、X線検出器13aを回転駆動する。すなわち、前記回転軌道上でX線検出器13aを回転させ、また、所定の位置でX線検出器13aを静止させる。
【0028】
ステージ制御部25dは、前記検査対象データ28aを取得し、複数の検査対象のそれぞれをX線検出器13aの視野内に配置するための座標値を算出し、ステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、それぞれの検査対象がX線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を移動させる。なお、本実施形態においては、X線検出器13aが前記回転軌道上の所定位置で静止している間に、N個の検査対象を逐次X線検出器13aの視野に配置することができる。
【0029】
画像取得部25eは、X線検出器13aにて取得されたN個の検査対象の透過X線画像データを画像メモリ1〜Nに転送する。すなわち、N個の検査対象について撮影されたN枚の透過X線画像は、異なる画像メモリ1〜Nに転送される。各画像メモリ1〜Nに透過X線画像データが転送されると、各画像メモリ1〜Nに対応したCPU1〜Nが再構成演算を実施し、その結果を画像メモリ1〜Nに記録する。
【0030】
以上の処理を実施してX線検出器13aを一回転させ、CPU1〜Nによる再構成演算が終了すると、N個の検査対象について3次元CTによる解析を行うための情報が得られているので、良否判定部25fは、これらの再構成演算結果に基づいて各検査対象が良品であるか、不良品であるかを判定する。
【0031】
(2)X線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従って検査対象の良否判定を行う。本実施形態においては、複数の検査対象を搭載した基板12aを搬送装置14によって搬送し、逐次X−Yステージ12上で基板12a上の検査対象を検査する。このため、検査に際しては、まず搬送制御部25aが搬送機構24に指示を出し、搬送装置14によって検査対象の基板12aをX−Yステージ12上に搬送する(ステップS100)。
【0032】
次に、複数の検査対象をX線検出器13aの視野内に移動させて透過X線画像を取得するため、検査対象の通し番号を特定するために使用する変数I、X線検出器13aの回転角度を示す変数θ、各回転角にて撮影する検査対象の数を示す変数Nを初期値に設定する(I=0(ステップ105)、θ=0(ステップS110)、N=1(ステップ115))。なお、I+Nは検査対象の通し番号である。また、ステップS110においては、検出器回転部25cがθ制御部23aに指示を行ってX線検出器13aを回転駆動し、予め決められたθ=0の回転角に当該X線検出器13aを静止させる。
【0033】
続いて、X線検出器13aにて検査対象の透過X線画像を撮影するため、I+N番目の検査対象を角度θにて静止しているX線検出器13aの視野中心へ移動させる(ステップS120)。すなわち、ステージ制御部25dは前記検査対象データ28aを参照してI+N番目の検査対象の座標を特定し、この座標がX線検出器13aの視野中心となるようにステージ制御機構22に指示する。この結果、ステージ制御機構22はX−Yステージ12を移動させてこの座標をX線検出器13aの視野中心に配置する。
【0034】
次に、X線制御部25bおよび画像取得部25eの制御により、X線検出器13aにて回転角θの透過X線画像を撮影する(ステップS125)。すなわち、X線制御部25bは、前記撮像条件データ28bを取得し、当該撮像条件データ28bに示される条件でX線を出力するようにX線制御機構21に対して指示を行う。この結果、X線発生器11が立体角2πの範囲でX線を出力するので、画像取得部25eはX線検出器13aが検出した透過X線画像を取得する。
【0035】
画像取得部25eは、当該取得した透過X線画像のデータをCPU Nに転送する。CPU Nは、当該透過X線画像データに基づいて再構成演算を実施し、その演算結果を画像メモリNに記録する(ステップS135)。以上のステップS135は、CPU25と異なるCPU1〜Nにて実施されるので、CPU25においては、当該ステップS135における処理の完了を待つことなくステップS130にて透過X線画像データを転送した後に次の処理を開始する。すなわち、処理負荷の大きい再構成演算に影響されることなく透過X線画像の撮影処理を続ける。
【0036】
撮影処理を続けるため、画像取得部25eは変数Nをインクリメントし(ステップS140)、通し番号I+Nが最大値Imaxより大きいか否か判別する(ステップS145)。ステップS145にて通し番号I+Nが最大値Imaxより大きいと判別されたときには、全ての検査対象について撮影が終了しているので、後述する良否判定処理(ステップ175)を実施する。
【0037】
ステップS145にて通し番号I+Nが最大値Imaxより大きいと判別されないときには、変数Nが予め設定されている最大値Nmax(再構成演算の数と同値)以下であるか否かを判別する(ステップS150)。ステップS150にて変数Nが最大値Nmax以下であると判別されたときには回転角θにおいて撮影すべき検査対象について撮影が終了していないので、ステップS120以降の処理を繰り返す。
【0038】
なお、CPU1〜Nにおける再構成演算は、検査対象の3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においては、まず、透過X線画像に対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。なお、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0039】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、画像メモリ1〜Nには3次元空間のデータを蓄積するためのバッファが用意されており、逆投影結果を各座標に記録する。各検査対象について以上の逆投影を1回転分実施すると、3次元空間上で検査対象が存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、各検査対象の3次元形状が得られる。
【0040】
上述のステップS150にて変数Nが最大値Nmax以下であると判別されたときには回転角θにおいて撮影すべき検査対象について撮影が終了しているので、X線検出器13aの回転角を所定のピッチΔθだけ増加させる(ステップS155)。すなわち、検出器回転部25cはθ制御部23aに指示を行い、ピッチΔθだけX線検出器13aを回転させるように回転機構13bを駆動する。
【0041】
そして、検出器回転部25cは、回転角θが最大値θmaxより小さいか否かを判別し(ステップS160)、回転角θが最大値θmaxより小さいと判別されるときにはステップS115以降の処理を繰り返す。当該ステップS160にて回転角θが最大値θmaxより小さいと判別されないときには、変数Iに変数Nの最大値Nmaxを加えた値を新たに変数Iの値とし(ステップS165)、通し番号I+Nが最大値Imax以下であるか否かを判別する(ステップS170)。
【0042】
すなわち、ステップS150の判別により、Nmax個の検査対象について1回転分の撮影が終了してからステップS120〜S150のループを抜けるので、ステップS165においては、撮影が終了したNmax個分のカウントを増加させておき、ステップS170にて全検査対象についての撮影が終了したか否かを判別する。ステップS170にて通し番号I+Nが最大値Imax以下であると判別されたときには、全検査対象についての撮影が終了していないので、ステップS110に戻ってX線検出器13aを再度回転させる。なお、このとき、残りの検査対象の数が直前までのNmaxの数に満たない場合には必要に応じてNmaxの値を修正しても良い。
【0043】
一方、ステップS170にて通し番号I+Nが最大値Imax以下であると判別されないときには、全検査対象についての撮影が終了しているのでステップS175にて良否判定処理を行う。すなわち、ステップS175の処理を実施する時点で画像メモリ1〜NにはImax個の検査対象のそれぞれについて、再構成演算結果を示すデータが蓄積されているので、予め決められた基準に基づいてそれぞれの再構成演算結果からそれぞれの検査対象の良否を特定する。以上のようにして複数の検査対象について良否判定を実施したら、ステップS100に戻って処理を繰り返すことで、複数の基板12aについての検査を実施する。
【0044】
図3は、以上の処理を具体例に則して説明するための図であり、X線検出器13aの視野と複数の検査対象とを模式的に示している。この図3においては、X−Yステージ12による移動平面をx−y平面とし、この平面に垂直な方向をz方向としており、x−y平面を眺めた図である。この例において、X線発生器11の焦点は図3に示す点Oの下方に存在し、X線検出器13aは点Oを通りz軸に垂直な方向に延びる回転軸を中心とした回転軌道上を反時計回りに回転する。
【0045】
また、この図においては点Oから−y方向に延ばした直線方向にX線検出器13aが存在するときにθ=0としており、回転角θ=0°,90°,180°,270°で透過X線画像を撮影する例を示している。この例において、各角度におけるX−Yステージ12上での視野領域FOV1〜FOV4やその視野中心はX線発生器11の焦点とX線検出器13aとの関係から予め特定することが可能である。なお、X線検出器13aは、その検出面がX線発生器11の焦点に向けられながら回転軌道上を回転するので、図3の視野領域FOV1〜FOV4に示すように回転に伴って視野領域の向きが回転する。一方、X−Yステージ12はx方向とy方向とのそれぞれに平行な直線に沿って基板12aを移動させるので、基板12aの向きはX−Yステージ上で一定である。
【0046】
図3に示す例においては、基板12a上に6個の検査対象が存在する例を拡大した状態を模式的に示しており、矩形で示す検査対象の模式図にその通し番号(図3の例では1〜6)を記載してある。X線検査装置10が4個の再構成演算部を備え、X線検出器13aを1回転させる間に最大4個の検査対象の透過X線画像を撮影する場合を想定すると、X線検出器13aの1回転目にて4個の検査対象について透過X線画像を撮影し、2回転目にて2個の検査対象について透過X線画像を撮影する。
【0047】
すなわち、この例においてはImaxが”6”,1回転目のNmaxが”4”,2回転目のNmaxが”2”であり、I=0,N=1で処理を開始すると、上述のステップS120〜ステップS150により、通し番号1〜4の検査対象を視野領域FOV1の視野中心に逐次配置して透過X線画像を撮影する。このとき、各透過X線画像データに基づく再構成演算は個別のCPU1〜Nにて実施するので、当該再構成演算がX−Yステージ12の駆動やX線検出器13aの回転駆動、撮影処理を実施する際にボトルネックになることはない。
【0048】
ステップS120〜S150によってN=4個の検査対象について撮影を終えると、ステップS115〜S160の処理により、X線検出器13aをΔθ=90°毎に回転させて同様の撮影を繰り返す。視野領域FOV4において4個の検査対象について撮影を終えると、ステップS165にて変数IがI=4に設定され、ステップS110以降の処理を繰り返す。このとき、上述のようにNmaxが2になるので、変数N=1,2にて特定される検査対象は通し番号5,6となり、ステップS110以降の処理の繰り返しによって通し番号5,6の検査対象について透過X線画像を撮影することになる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、X線検出器13aを1回転させる間に複数の検査対象の透過X線画像を撮影することができる。また、異なるCPUにて分散処理を行うことによって各検査対象の透過X線画像に基づく再構成演算が実施される。従って、撮像系による透過X線画像の撮影処理速度を低下させることなく再構成演算を実施することができる。
【0050】
(3)他の実施形態:
本発明においては、X線検出器が特定の回転角に静止している間に複数の検査対象についての透過X線画像を撮影することができればよく、前記実施形態の他、種々の構成を採用可能である。例えば、X線検出器13aの向きは前記焦点FからX線検出器13aの中心に延ばした直線に対して垂直である構成の他、種々の構成を採用可能であり、X−Yステージ12に対して検出面が平行であり、この検出面に対して平行な面内でX線検出器13aを回転させる構成等を採用可能である。
【0051】
また、回転駆動するX線検出器13aの他、固定的に配置された検出器を設けることで、透過X線画像に基づく簡易的な検査を実施できるように構成してもよい。さらに、上述の例においては、検査対象が6個であるときに1回転目で4個、2回転目で2個の検査対象を撮影していたが、むろん、1回転あたりに撮影する検査対象の数を均等に、例えば、各回転で3個ずつの検査対象を撮影する構成としても良い。
【0052】
さらに、上述の実施形態においてはステップS175にて一括して良否判定処理を実施する形態を示したが、ステップS160で回転角θが最大値θmaxより小さいと判別されず、かつ、X線検出器13aをもう一回転以上させて撮影を行う場合、この回転と並行して再構成演算済のデータに基づいて良否判定を行っても良い。さらに、以上の実施形態においては、放射線としてX線を利用する場合を例示したが、利用できる放射線はX線に限らずγ線であってもよく、検査対象を透過するその他の放射線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】X線検査処理のフローチャートである。
【図3】視野と複数の検査対象との関係を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1〜N…再構成演算部
10…X線検査装置
11…X線発生器
12…X−Yステージ
12a…基板
13a…X線検出器
13b…回転機構
14…搬送装置
21…X線制御機構
22…ステージ制御機構
23…画像取得機構
23a…θ制御部
24…搬送機構
25…CPU
25a…搬送制御部
25b…X線制御部
25c…検出器回転部
25d…ステージ制御部
25e…画像取得部
25f…良否判定部
26…入力部
27…出力部
28…メモリ
28a…検査対象データ
28b…撮像条件データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生器によって放射線を複数の検査対象に照射する放射線照射手段と、
前記放射線発生器の焦点を通る直線を回転軸とした回転軌道上に設定された複数の撮影位置における放射線検出器の静止と当該回転軌道上における前記放射線検出器の回転とを実施する放射線検出器回転手段と、
前記撮影位置のそれぞれにおいて前記複数の検査対象を逐次前記放射線検出器の視野に移動させる検査対象移動手段と、
前記複数の検査対象のそれぞれについて透過放射線の強度を取得する透過放射線取得手段とを備えることを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
前記透過放射線取得手段は、前記取得した透過放射線の強度に基づいて再構成演算を実施する複数個の再構成演算部を備え、前記撮影位置のそれぞれにおいて取得された各検査対象の透過放射線の強度に基づく再構成演算を前記複数個の再構成演算部によって分散処理することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記撮影位置のそれぞれにおいて前記透過放射線の強度を取得する検査対象の数の最大値は前記再構成演算部の数と同数であり、各検査対象についての再構成演算をそれぞれの再構成演算部によって実行することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項4】
放射線発生器によって放射線を複数の検査対象に照射する放射線照射工程と、
前記放射線発生器の焦点を通る直線を回転軸とした回転軌道上に設定された複数の撮影位置における放射線検出器の静止と当該回転軌道上における前記放射線検出器の回転とを実施する放射線検出器回転工程と、
前記撮影位置のそれぞれにおいて前記複数の検査対象を逐次前記放射線検出器の視野に移動させる検査対象移動工程と、
前記複数の検査対象のそれぞれについて透過放射線の強度を取得する透過放射線取得工程とを含むことを特徴とする放射線検査方法。
【請求項5】
放射線発生器によって放射線を複数の検査対象に照射する放射線照射機能と、
前記放射線発生器の焦点を通る直線を回転軸とした回転軌道上に設定された複数の撮影位置における放射線検出器の静止と当該回転軌道上における前記放射線検出器の回転とを実施する放射線検出器回転機能と、
前記撮影位置のそれぞれにおいて前記複数の検査対象を逐次前記放射線検出器の視野に移動させる検査対象移動機能と、
前記複数の検査対象のそれぞれについて透過放射線の強度を取得する透過放射線取得機能とをコンピュータに実現させることを特徴とする放射線検査プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−116388(P2008−116388A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301368(P2006−301368)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】