説明

放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラム

【課題】複雑な形状の検査対象について正確に欠陥検出を行うことができなかった。
【解決手段】放射線を検査対象に照射し、前記検査対象を透過した放射線の強度に対応した透過放射線画像を取得し、基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度になるようにオフセットを与えるための補正画像データを取得し、前記補正画像データによって前記透過放射線画像を補正した結果に基づいて、前記検査対象に欠陥が含まれるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象品の非破壊検査に、従来、放射線検査装置が利用されている。例えば、特許文献1〜3には、放射線の透過方向に沿った検査対象の肉厚が位置によって異なる場合に、肉厚補正用治具と検査対象とを同時に撮影することによって透過放射線強度が均一になるように補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−27811号公報
【特許文献2】特開平8−254507号公報
【特許文献3】特開2001−238874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の放射線検査装置においては、複雑な形状の検査対象について高速かつ正確に欠陥検出を行うことができなかった。
【0004】
すなわち、上述の放射線検査装置において、肉厚補正治具を検査対象に装着して透過放射線強度を均一にするためには、肉厚補正治具を検査対象に対して正確に装着することが必要である。しかし、製品毎に誤差が生じる鋳造製品などにおいては、複雑な形状の検査対象に対して隙間が生じないように肉厚補正治具を装着しながら透過放射線画像を撮影することは困難である。この場合、隙間の画像と欠陥の画像とを区別できず、欠陥の検出精度が低下してしまう。また、検査対象が複雑な形状である場合、複数の肉厚補正治具を装着しなければ透過放射線強度を均一にすることができない場合も多く、この場合には、高速に検査することができない。
【0005】
さらに、検査対象の前後に肉厚補正治具を配置する構成においては、検査対象と肉厚補正治具との相対位置関係を正確に制御することは極めて困難であり、欠陥の検出を正確かつ高速に実施することはできない。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、正確な検査を高速に実行する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度になるように補正を行うための補正画像データによって、透過放射線画像に対してオフセットを与える補正を行う。従って、補正後の透過放射線画像において、検査対象に欠陥が含まれていなければ透過放射線の強度が前記所定の強度となって一様な画像となるが、検査対象に欠陥が含まれていれば、一様な画像の中に欠陥に対応した強度変化が生じている画像となる。このため、検査対象が複雑な形状であったとしても、欠陥以外の画像にてこの形状を反映した強度変化は生じておらず、欠陥の有無を極めて明確に判定することができる。従って、極めて容易に正確な判定を行うことができる。
【0008】
また、上述のオフセットは、補正画像データに基づいて行っており、当該補正画像データは放射線が透過する検査対象の厚さによって定義することができる。従って、検査対象の形状が複雑であったとしてもその形状に制約されず、任意の形状に対して補正画像データを定義することが可能である。この結果、任意の形状の検査対象について欠陥の有無を検査することができ、任意の形状の検査対象について容易かつ正確に判定を行うことが可能である。
【0009】
ここで、放射線照射手段は検査対象に放射線を照射することができればよく、放射線が検査対象を透過するように構成すればよい。従って、放射線照射手段は開放管であってもよいし、密閉管であってもよく特に限定されない。むろん、検査対象を放射線の照射範囲に配置するための手段として、各種の手段を採用可能である。例えば、検査対象を放射線の照射範囲に配置するX−Yステージであっても良いし、検査対象を保持して搬送するロボットであってもよく、種々の構成を採用可能である。
【0010】
放射線検出手段においては、検査対象を透過した透過放射線の強度を検出することができれば良く、種々の構成を採用することが可能である。例えば、CCD,CMOS等のセンサを2次元的に配置したセンサであってもよいし、1次元的に配置したセンサによってスキャンを行っても良い。
【0011】
補正画像データ取得手段においては、予め所定の記憶媒体に記憶された補正画像データを取得することができればよく、通信回線等を利用して放射線検査装置の外部に記憶された補正画像データを取得しても良い。また、補正画像データは、透過放射線画像に対してオフセットを与えるためのデータであり、このオフセットによって基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度に補正されるように設定されていればよい。
【0012】
すなわち、基準の検査対象は欠陥がない(あるいはほぼ存在しないと見なすことができる)検査対象であり、オフセットによって当該基準の検査対象に対する透過放射線画像が一様な画像(強度が略一定の値)に変換されるように設定する。なお、ここでは、透過放射線の強度が所定の強度となるようにオフセットを行うため、当該所定の強度としては、検査対象よりも厚い物体によって放射線が吸収された後の透過放射線強度を想定し、この強度を所定の強度とすればよい。
【0013】
また、補正画像データを作成する際には、例えば、前記所定の強度に対応した放射線画像(一様な放射線画像)と平均画像との差分によって補正画像データを取得しても良い。すなわち、所定の強度に対応した放射線画像と、複数の検査対象について透過放射線画像を取得して各透過放射線画像を平均した平均画像との差分を取得する。この構成においても任意の形状の検査対象について前記オフセットを行うための補正画像データを極めて容易に取得することができる。
【0014】
なお、複数の検査対象としては、例えば、A個(例えば100個)の検査対象について取得したA枚の透過放射線画像であっても良いし、A個の検査対象について取得したX枚(X>A)の透過放射線画像であっても良いし、A個の検査対象について取得したY枚(Y<A)の透過放射線画像であっても良い。いずれにしても、所望の検査精度を確保できるように検査対象の個数および透過放射線画像の枚数を特定すればよい。以上の構成によれば、正確な良否判定を実施するための基準の検査対象を準備することなく、通常の検査対象を複数個用意するのみで補正画像データを生成することができ、補正画像データの作成時間を短縮させることができる。
【0015】
さらに、補正画像データを作成する際には、予め前記基準の検査対象を作成してその透過放射線画像を取得しておき、当該基準の検査対象についての透過放射線画像と前記所定の強度に対応した放射線画像(一様な放射線画像)との差分を取得してもよい。以上の処理によれば、任意の形状の検査対象について前記オフセットを行うための補正画像データを極めて容易に取得することができる。
【0016】
判定手段においては、実測した透過放射線画像に対して前記オフセット補正を実施して欠陥を検出することができればよい。従って、オフセット補正後の透過放射線画像において、周囲と比較して透過放射線の強度が大きい部位を抽出し、欠陥を検出することができればよい。
【0017】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラム、当該プログラムを記録した媒体としても発明は実現可能である。また、以上のような放射線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)補正画像データ作成処理:
(3)X線検査処理:
(4)他の実施形態:
【0019】
(1)本発明の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置は、X線撮像機構部10とX線撮像制御部20とを備えている。X線撮像機構部10は、X線発生器11と位置決め機構12とX線検出器13とを備えている。X線撮像制御部20は、X線制御部21と位置決め機構制御部22と透過X線画像取得部23とCPU24と入力部25と出力部26とメモリ27とを備えている。この構成において、CPU24は、メモリ27に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0020】
メモリ27はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め補正画像データ27aと撮像条件データ27bとが記録されている。補正画像データ27aは、基準の検査対象を撮影したときの透過X線の強度が所定の強度になるように、実測した透過X線画像をオフセット補正するためのデータであり、予め作成されてメモリ27に記録される。撮像条件データ27bは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。なお、メモリ27はデータを蓄積可能であればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0021】
X線制御部21は、前記撮像条件データ27bに基づいてX線発生器11を制御し、所定のX線を発生させることができる。位置決め機構制御部22は位置決め機構12と接続されており、当該位置決め機構12を制御する。位置決め機構12は、多軸ロボットであって逐次搬送される鋳造製品12aをクランプし、X線の照射範囲内で所望の姿勢とする。本実施形態における多軸ロボットは、少なくとも鋳造製品12aを所望の位置に搬送する作業と、鋳造製品12aを回転させて姿勢を変更する作業とを実施できるように構成されている。
【0022】
透過X線画像取得部23はX線検出器13と接続されており、同X線検出器13が出力する検出値によって鋳造製品12aを透過したX線の強度を検出する。本実施形態におけるX線検出器13は、2次元的に分布したセンサを備えており、検出したX線からX線の2次元分布を示す透過X線画像データを生成することができる。なお、本実施形態において透過X線画像取得部23は、X線の強度を濃淡で表現し、強度が弱いほど明るくなるように画像処理を行っている。
【0023】
出力部26はCPU24での前記透過X線画像等を表示するディスプレイであり、入力部25は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部25を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU24の処理によって得られる種々の演算結果や透過X線画像データ、鋳造製品12aの良否判定結果等を出力部26に表示することができる。
【0024】
CPU24は、メモリ27に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、鋳造製品12aの良否判定を行うために、図1に示すオフセット補正部24aと欠陥検出部24bと良否判定部24cとにおける制御演算を実行する。オフセット補正部24aは、メモリ27に蓄積された補正画像データ27aを取得して、透過X線画像データをオフセット補正する。欠陥検出部24bは、補正後の透過X線画像データに基づいて鋳造製品12aにおける欠陥を検出する。良否判定部24cは、当該検出した欠陥に基づいて、鋳造製品12aが良品であるか不良品であるかを判定する。
【0025】
(2)補正画像データ作成処理:
次に、上述の補正画像データ27aを作成する際の処理を説明する。図2は、当該補正画像データ27aの作成処理フローチャートである。本実施形態において、この処理は鋳造製品の検査を実施する前にX線検査装置を利用して実施され、予め作成された基準の検査対象(検査対象となる鋳造製品12aと同じ材質かつ同じ形状で欠陥を含まない鋳造製品)が利用される。この処理においては、まず、位置決め機構制御部22が位置決め機構12を制御し、当該基準の検査対象をX線検査装置による通常の検査と同様の位置および姿勢となるようにX線発生器11によるX線の照射範囲にセットする(ステップS100)。
【0026】
次に、前記基準の検査対象の透過X線画像を撮影する(ステップS110)。すなわち、X線制御部21が前記撮像条件データ27bに従ってX線発生器11を制御し、透過X線画像取得部23がX線検出器13から透過X線画像データを取得する。なお、ここでは、基準の検査対象についての透過X線画像データをI0(x,y)とする(x,yはX線検出器13の座標に対応している)。
【0027】
さらに、本実施形態においては、予め決められた所定の強度に対応した一様な画像データ(F(x,y)=定数)を生成し(ステップS120)、この画像データF(x,y)と基準の検査対象についての透過X線画像データI0(x,y)との差分を補正画像データG(x,y)とする(ステップS130)。この補正画像データG(x,y)は、メモリ27に補正画像データ27aとして保存される。なお、本実施形態においては、X線の透過量が小さいほどその強度に対応した値が小さくなるように設定してあり、F(x,y)は、透過X線画像データI0(x,y)の最大値より小さくなるように設定してある。
【0028】
(3)X線検査処理:
次に、X線検査装置による鋳造製品の検査処理を説明する。図3は、当該X線検査処理を示すフローチャートである。この処理においては、工場の生産ラインで生産された鋳造製品12aを逐次搬送し、位置決め機構12にて鋳造製品12aをクランプさせ、この検査対象についての検査処理を開始する。当該検査処理においては、まず、CPU24が各部を制御して鋳造製品12aの検査部位をX線の照射範囲にセットする(ステップS200)。すなわち、CPU24が前記位置決め機構制御部22に指示を出力し、位置決め機構制御部22はこの指示に応じて鋳造製品12aがX線の照射範囲に含まれるように位置決め機構12を制御する。
【0029】
ステップS200にて鋳造製品12aをX線の照射範囲内にセットすると、CPU24が透過X線画像を撮影する(ステップS210)。すなわち、CPU24は前記撮像条件データ27bをX線制御部21に受け渡す。X線制御部21はこの撮像条件データ27bに従ってX線発生器11での条件設定を行い、X線を照射させる。照射されたX線は鋳造製品12aを透過してX線検出器13に到達するので、透過X線画像取得部23が透過X線画像データを取得する。なお、ここでは、鋳造製品12aの透過X線画像データをI(x,y)とする。
【0030】
透過X線画像データが取得されるとCPU24はオフセット補正部24aを実行し、前記透過X線画像データI(x,y)に対してオフセット補正を行う(ステップS220)。すなわち、前記メモリ27に記憶された補正画像データ27aを取得し、補正後の透過X線画像データI'(x,y)をI(x,y)+G(x,y)にて算出する。
【0031】
オフセット補正後の透過X線画像データI'(x,y)が得られたら、CPU24は欠陥検出部24bを実行し、欠陥の検出を行う(ステップS230)。すなわち、鋳造製品12a内に鋳巣などの欠陥が生じている場合、空気と鋳造製品12aとによるX線の吸収量の差に応じて、透過X線画像に陰影が生じる。そこで、周りと比較して暗い部分を抽出するなどして欠陥の像を特定する。なお、本実施形態においては、上述のオフセット補正によって透過X線画像がほぼ一様になっており、欠陥が存在する場合には一様な画像内に欠陥に対応した陰影が含まれることになり、極めて正確に欠陥を検出することができる。
【0032】
次に、良否判定部24cが当該欠陥の像に基づいて鋳造製品12aの良否を判定する(ステップS240)。すなわち、欠陥の像に基づいて欠陥の位置、大きさ、形状等を特定し、これらのいずれかまたは組み合わせについて予め決められた判定条件に基づいて鋳造製品12aの良否を判定する。
【0033】
図4は、複雑な形状をした鋳造製品12aの例を示している。同図に示す鋳造製品は、略直方体の外形を有し、その一つの面には面に対して略垂直に複数のリブ12bが形成されている。また、鋳造製品12aにはリブ12bの長手方向に平行な軸を有する穴12cが形成されており、穴12cの開口部とリブ12bとが形成されていない残りの3面には、複数の溝12dが形成されている。
【0034】
ここでは、リブ12bが鋳造製品12aの面から延びる方向(リブ12bの短手方向D)にX線発生器11とX線検出器13とが配置されている例を想定する。本実施形態において、X線はX線発生器11における図示しない焦点から放射状に出力される。透過X線画像は、X線発生器11から出力されたX線であって鋳造製品12aを透過したX線の強度に対応しているので、この強度はX線の進行経路方向に沿った鋳造製品12aの厚みを示している。
【0035】
従って、図4に示す鋳造製品12aにおいて、オフセット補正を行う前の透過X線画像データI(x,y)は2次元平面上で非常に複雑な濃淡を持つ。例えば、X線の進行経路にリブ12bおよび鋳造製品12aが存在するが、穴12cが存在しない場合とX線の進行経路にリブ12bおよび鋳造製品12aと穴12cとが存在する場合とでは透過X線の強度が異なる。
【0036】
また、X線は焦点から放射状に出力されるため、穴12cやリブ12bをX線が透過する際の経路はリブ12bに対して斜めになっており、X線の進行経路の僅かな差によって透過X線の強度も少しずつ異なってくる。この結果、上述のように透過X線画像データI(x,y)は非常に複雑になる。従って、鋳造製品12aに欠陥が含まれている場合、オフセット補正を行わなければ、透過X線画像データI(x,y)における強度の変動が欠陥に起因するのか、あるいは、鋳造製品12aの形状に起因するのか定かでなくなってしまう。
【0037】
さらに、図4に示すように複雑な形状の鋳造製品12aに対して装着可能な肉厚補正治具であって、一つの肉厚補正治具を作成することは不可能である。複数の肉厚補正治具を装着してX線の透過方向の強度を均一にすることは可能であるが、この構成によれば肉厚補正治具の装着が極めて面倒であり、鋳造製品12aを検査ラインで連続的に検査する際に、その検査速度が極めて遅くなってしまう。
【0038】
しかし、本実施形態においては、補正画像データ27aによって透過X線画像データI(x,y)を補正し、欠陥がない場合には強度に対応する値が一様になるようにしている。従って、補正後の透過X線画像データI'(x,y)内で欠陥を極めて明確に目立たせることができ、鋳造製品12aが極めて複雑な形状であったとしても、正確に欠陥を抽出することが可能であり、この処理を極めて高速に実施することができる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、補正画像データ27aによって透過X線画像データを補正するため、複数の鋳造製品12a同士で形状に僅かなずれが生じていたとしても、極めて容易にそのずれに合わせて透過X線画像データの座標を調整することができる。例えば、鋳造製品12aの透過X線画像において、鋳造製品12aの特徴に対応した基準位置を定義しておき、補正画像データ27aにおいても基準位置を定義しておけば、両者の基準位置に基づいて位置合わせをすることが可能である。
【0040】
なお、本発明においては、基準の検査対象を撮影したときの透過X線の強度が所定の強度になるように透過X線画像に対してオフセット補正を行って、欠陥を検出することができればよく、上述の実施形態のほか種々の実施形態を採用可能である。例えば、一つの鋳造製品において複数の部位を検査対象として検査を行っても良いし、前記図4に示す鋳造製品12aのほか、種々の形状の鋳造製品に本発明を適用可能である。むろん、検査対象はX線を吸収する元素を含んでいればよく、鋳造製品に限定されず、各種の物質を検査対象とすることができる。さらに、以上の実施形態においては、放射線としてX線を利用する場合を例示したが、利用できる放射線はX線に限らずγ線であってもよく、同様に検査対象を透過するその他の放射線であってもよい。
【0041】
(4)他の実施形態:
補正画像データは、X線検査処理においてオフセット補正を行う前に作成されていれば良く、種々の手法によって作成可能である。例えば、複数の検査対象の透過X線画像を平均して平均画像を作成し、所定の強度に対応したX線画像と平均画像との差分を補正画像データとしても良い。すなわち、鋳造製品を放射線検査の検査対象とした場合、鋳造によって寸法のずれや欠陥が生じ得るが、多数の検査対象についての透過X線画像を平均化すれば、寸法のずれや欠陥の影響が抑制された透過X線画像(すなわち、基準の検査対象についての透過X線画像と等価な画像)を取得することができる。
【0042】
そこで、鋳造によって製造された多数の検査対象の透過X線画像を取得し、平均化すれば、極めて容易に一様な画像データF(x,y)から減じるべき透過X線画像データI0(x,y)を取得することができる。図5は当該平均化によって透過X線画像データI0(x,y)を取得する実施形態にかかるX線検査装置の概略ブロック図であり、図6は当該平均化によって透過X線画像データI0(x,y)を生成する処理を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、本実施形態にかかるX線検査装置は図1に示すX線検査装置とほぼ同様な構成によって実現可能であり、当該図1に示すX線検査装置と同様の構成については図5において同様の符号で示してある。図5に示す実施形態において、CPU24は、図1に示す構成に加え、透過X線画像平均化部24dを実行可能である。透過X線画像平均化部24dは、多数の検査対象について透過X線画像を取得してメモリ27に記録し(透過X線画像データ27c)、これらの透過X線画像データ27cを画素毎に平均化して平均画像を取得する。
【0044】
また、本実施形態においては、CPU24が上述の図2の替わりに図6に示す処理を実行する。この処理も鋳造製品の検査を実施する前に実施され、検査対象となる鋳造製品12aをnmax個(例えば、100個)製造し、逐次透過X線画像を撮影する。すなわち、位置決め機構制御部22が位置決め機構12を制御し、鋳造製品12aをX線検査装置による通常の検査と同様の位置および姿勢となるようにX線発生器11によるX線の照射範囲にセットする(ステップS300)。
【0045】
次に、鋳造製品12aの透過X線画像を撮影する(ステップS310)。すなわち、X線制御部21が前記撮像条件データ27bに従ってX線発生器11を制御し、透過X線画像取得部23がX線検出器13から透過X線画像を取得して、メモリ27に透過X線画像データ27cとして記録する。なお、ここでは、鋳造製品12aの透過X線画像データをIn(x,y)とする(x,yはX線検出器13の座標に対応し、nは上述の鋳造製品12aについて振られた1以上の番号であり、最大値はnmaxである)。
【0046】
さらに、番号nが最大値nmaxと一致するか否かを判別し(ステップS320)、番号nが最大値nmaxと一致すると判別されなければ、nをインクリメントしてステップS300以降の処理を繰り返す。すなわち、nmax個の鋳造製品12aのそれぞれについて透過X線画像データ27cを取得する。
【0047】
さらに、各番号nの透過X線画像データ27cを平均化して透過X線画像データI0(x,y)を取得する(ステップS330)。そして、上述の図2と同様に予め決められた所定の強度に対応した一様な画像データ(F(x,y)=定数)を生成し(ステップS340)、この画像データF(x,y)と平均化した透過X線画像データI0(x,y)との差分を補正画像データG(x,y)とする(ステップS350)。この補正画像データG(x,y)は、メモリ27に補正画像データ27aとして保存される。
【0048】
以上のようにして補正画像データを作成すると、図3示す処理と同様の処理によってX線検査を行うことができる。以上の構成によれば、正確な良否判定を実施するための基準の検査対象を準備することなく、通常の検査対象を複数個用意するのみで補正画像データを生成することができ、補正画像データの作成時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】補正画像データ作成処理のフローチャートである。
【図3】X線検査処理のフローチャートである。
【図4】鋳造製品の例を示す図である。
【図5】他の実施形態にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図6】補正画像データ作成処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10…X線撮像機構部
11…X線発生器
12…位置決め機構
12a…鋳造製品
12b…リブ
12c…穴
12d…溝
13…X線検出器
20…X線撮像制御部
21…X線制御部
22…位置決め機構制御部
23…透過X線画像取得部
24a…オフセット補正部
24b…欠陥検出部
24c…良否判定部
25…入力部
26…出力部
27…メモリ
27a…補正画像データ
27b…撮像条件データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検査対象に照射する放射線照射手段と、
前記検査対象を透過した放射線の強度に対応した透過放射線画像を取得する放射線検出手段と、
基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度になるようにオフセットを与えるための補正画像データを取得する補正画像データ取得手段と、
前記補正画像データによって前記透過放射線画像を補正した結果に基づいて、前記検査対象に欠陥が含まれるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
前記放射線は、X線またはγ線であることを特徴とする前記請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記補正画像データは、前記所定の強度に対応した放射線画像と、複数の前記検査対象の透過放射線画像を平均した平均画像との差分であることを特徴とする前記請求項1または請求項2のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記補正画像データは、前記所定の強度に対応した放射線画像と前記基準の検査対象の透過放射線画像との差分であることを特徴とする前記請求項1または請求項2のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項5】
放射線を検査対象に照射する放射線照射工程と、
前記検査対象を透過した放射線の強度に対応した透過放射線画像を取得する放射線検出工程と、
基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度になるようにオフセットを与えるための補正画像データを取得する補正画像データ取得工程と、
前記補正画像データによって前記透過放射線画像を補正した結果に基づいて、前記検査対象に欠陥が含まれるか否かを判定する判定工程とを含むことを特徴とする放射線検査方法。
【請求項6】
放射線を検査対象に照射する放射線照射手段と、
前記検査対象を透過した放射線の強度に対応した透過放射線画像を取得する放射線検出手段とを制御するコンピュータにおいて、
基準の検査対象を撮影したときの透過放射線の強度が所定の強度になるようにオフセットを与えるための補正画像データを取得する補正画像データ取得機能と、
前記補正画像データによって前記透過放射線画像を補正した結果に基づいて、前記検査対象に欠陥が含まれるか否かを判定する判定機能とを実現することを特徴とする放射線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−96425(P2008−96425A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225931(P2007−225931)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】