説明

放射線検査装置

【課題】
画像の精度を向上でき、かつ故障した放射線検出器の交換が簡単にできる。
【解決手段】
本発明の放射線検査装置1の撮像装置2は、多数の検出器ユニット4,環状の検出器支持部材8及びX線源周方向移動装置13を有する。検出器ユニット4は、支持基板6の一面に9個の放射線検出器5を設置し、支持基板6にコネクタ部7を設けられ、検出器支持部材8の周方向及び軸方向に多数配置される。各検出器ユニット4は検出器支持部23に着脱自在に設置される。検出器ユニット4に設けられた複数の放射線検出器5は、検出器支持部材8の半径方向に三層、検出器支持部材8の軸方向に三列に配置される。放射線検出器を半径方向に三層配置しているため、半径方向における放射線の検出位置を細かく認識できる。また、検出器ユニット4を着脱自在に設置するため、故障した放射線検出器5の交換が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検査装置に係り、特に、放射線2次元撮像装置,X線コンピューテッド・トモグラフィ(X-ray Computed Tomography 、以下、X線CTという),陽電子放出型CT(ポジトロン・エミッション・コンピューテッド・トモグラフィ(Positron Emission Computed Tomography)、以下、PETという)及び単光子放出型CT(シングル・フォトン・エミッション・コンピューテッド・トモグラフィ(Single Photon Emission Computed Tomography)、以下、SPETという)に適応するのに好適な放射線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体である被検診者の体内の機能,形態を無侵襲で撮像する技術である放射線検査装置の代表的なものとして、放射線2次元撮像装置,X線CT,PET及びSPECTがある。
【0003】
PET検査は、放射性核種である陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)を含む放射性薬剤(PET用薬剤という)を被検診者に投与し、PET用薬剤が体内のどの部位で多く消費されているかを調べる検査である。PET検査は、PET用薬剤に起因して被検診者の体内から放射されるγ線を放射線検出器で検出する行為である。具体的には、PET用薬剤に含まれた放射性核種から放出された陽電子が付近の細胞(癌細胞)の電子と結合して消滅し、その際に511keVのエネルギーを持つ、一対のγ線(対γ線という)が放射される。それらのγ線は、互いにほぼ正反対の方向(180°±0.6°)に放射される。この対γ線を放射線検出器で検知すれば、どの2つの放射線検出器の間で陽電子が放出されたかがわかる。それらの多数のγ線対を検知することで、PET用薬剤を多く消費する場所がわかる。そして、例えば陽電子放出核種と糖を結合して製造されたPET用薬剤を用いた場合、糖代謝の激しい癌病巣を発見することが可能である。PETに用いられる放射線検査装置の一例が特許文献1に記載されている。なお、得られたデータは、非特許文献1に記載されているフィルタードバックプロジェクション法(Filtered Back Projection Method )により、各ボクセルのデータに変換する。PET検査に用いられる陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)の半減期は、2分から110分である。
【0004】
SPECTは、放射性核種であるシングルフォトン放出核種(99Tc,67Ga,201Tl 等)、及び特定の腫瘍または特定の分子に集積する性質を有する物質(例えば糖)を含む放射性薬剤(SPECT用薬剤という)を被検診者に投与し、放射性核種から放出されるγ線を放射線検出器で検出する。SPECTによる検査時によく用いられるシングルフォトン放出核種から放出されるγ線のエネルギーは数100keV前後である。SPECTの場合、単一γ線が放出されるため、放射線検出器に入射したγ線の角度が得られない。そこで、コリメータを用いて特定の角度から入射するγ線のみを放射線検出器で検出することにより角度情報を得ている。SPECTは、SPECT用薬剤に起因して体内で発生するγ線を検知してSPECT用薬剤を多く消費する場所を特定する検査方法である。SPECTに用いられる放射線検査装置の一例が特許文献2に記載されている。SPECTの場合も、得られたデータはフィルタードバックプロジェクションなどの方法により各ボクセルのデータに変換する。なお、SPECTでもトランスミッション像を撮影することがある。SPECTに用いる99Tc,67Ga,201Tlは、PET用の放射性核種の半減期よりも長く6時間から3日である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−20245号公報
【特許文献2】特開平9−5441号公報
【非特許文献1】アイトリプルイー トランザクション オン ニュークリア サイエンス(IEEE Transaction on Nuclear Science)NS−21巻の228頁〜229頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、悪性腫瘍等の患部の位置及び大きさ等の診断精度の更なる向上が望まれており、それらの放射線検査装置で作成される患部を含む画像の精度向上が要求される。また、故障した放射線検出器の交換を短時間にできることも重要な課題である。
【0007】
本発明の目的は、作成される画像の精度を向上でき、かつ故障した放射線検出器の交換を簡単に行うことができる放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、検出器支持部材に検出器ユニットを着脱自在に取り付け、検出器ユニットは、放射線を検出する複数の放射線検出器を有しており、かつ、ある前記放射線検出器を通った放射線を検出する他の放射線検出器を設けていることにある。
【0009】
ある放射線検出器を通った放射線を検出する他の放射線検出器を設けているため、被検体から放出された放射線を上記ある放射線検出器または他の放射線検出器で検出でき、被検体に対向する上記ある放射線検出器から奥行き方向において放射線が到達した位置(放射線が検出された位置)を正確に確認できる。これは、このため、被検体の体内の状態を示す精度のよい画像が得られる。また、検出器支持部材に検出器ユニットを着脱自在に取り付けられているため、故障した放射線検出器の交換を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作成される画像の精度を向上でき、かつ故障した放射線検出器の交換を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施例1)
本発明の好適な一実施例である放射線検査装置を、図1,図2を用いて以下に説明する。本実施例の放射線検査装置1は、PET検査に用いられるものである。放射線検査装置1は、撮像装置2,信号処理装置40,断層像作成装置35,被検診者保持装置18,駆動装置制御装置21及びX線源制御装置22を備える。被検診者保持装置18は、ベッド20を、ベッド20の長手方向において移動可能にベッド支持部19の上端部に設置される。
【0012】
撮像装置2は、ケーシング3,多数の検出器ユニット4,環状の検出器支持部材8及びX線源周方向移動装置13を有している。検出器支持部材8は、図3,図4に示すように、支持部材39に取り付けられる環状の検出器支持部23、及びカバー部材24を有する。カバー部材24は、検出器支持部23内に形成される信号弁別ユニット収納空間44を覆って検出器支持部23に取り付けられる。
【0013】
X線源周方向移動装置13は、ガイドレール12及びX線源装置14を備える。環状のガイドレール12は、ベッド20が挿入される孔部41を取囲むように検出器支持部材8の側面、具体的には検出器支持部23の側面で被検診者保持装置18側に取付けられる。X線源装置14は、X線源駆動装置15,伸縮アーム16及びX線源17を有する。X線源駆動装置15はガイドレール12に移動可能に取付けられる。X線源駆動装置15は、図示されていないが、ガイドレール12のラックと噛合うピニオンを有し、このピニオンを、減速機構を介して回転させるモーターを備える。伸縮アーム16は、X線源駆動装置15のケーシング(図示せず)に取り付けられ、水平方向に伸縮できる。X線源17は、伸縮アーム16の先端部に取り付けられる。
【0014】
X線源17は図示されていないが公知のX線管を有する。このX線管は、陽極,陰極,陰極の電流源、及び陽極と陰極との間に電圧を印加する電圧源を外筒内に備える。陰極はタングステン製のフィラメントである。電流源から陰極に電流を流すことによってフィラメントから電子が放出される。この電子は、電圧源から陰極と陽極との間に印加される電圧(数百kV)によって加速され、ターゲットである陽極(W,Mo等)に衝突する。電子の陽極への衝突により80keVのX線が発生する。このX線がX線源17から放出される。
【0015】
断層像作成装置35は、コンピュータ36及び記憶装置37を備える。コンピュータ36は同時計数装置34に接続され、記憶装置37はコンピュータ36に接続される。コンピュータ36は断層像作成部である。表示装置38はコンピュータ36に接続される。
【0016】
検出器ユニット4の構成を、図5及び図6に示すように、支持基板6の一面に複数(例えば9個)の放射線検出器5を設置し、コネクタ部7を支持基板6に設けている。9個の放射線検出器5は三行三列に支持基板6上に配置されている。なお、図4において表示された「周方向」は検出器支持部材8の周方向を、「軸方向」は検出器支持部材8の軸方向を、及び「半径方向」は検出器支持部材8の半径方向をそれぞれ意味する(図10,図12でも同じ)。検出器支持部材8の半径方向に並んだ一列の三個の放射線検出器5、すなわち放射線検出器5A,5B,5Cの各カソード電極K1,K2,K3は、アース線45に接続される。アース線45はコネクタ部7のコネクタ端子7Dに接続される。放射線検出器5Aのアノード電極A1に接続される配線46は、コネクタ部7のコネクタ端子7Aに接続される。放射線検出器5Bのアノード電極A2に接続される配線47は、コネクタ部7のコネクタ端子7Bに接続される。また、放射線検出器5Cのアノード電極A3に接続される配線48は、コネクタ部7のコネクタ端子7Cに接続される。他の二列に含まれた各放射線検出器5も、同様にコネクタ部7に設けられている他のコネクタ端子に接続されている。アース線45及び配線46,47,48は全て支持基板6内に設置されている。多数の検出器ユニット4は、それぞれに設けられたコネクタ端子7A等のコネクタ端子を、検出器支持部23に設けられたコネクタ部11にはめ込むことによって、検出器支持部23に装着されて保持される。検出器ユニット4は、孔部41を取り囲み、孔部41の周方向及び軸方向に多数配置される。これらの検出器ユニット4は検出器支持部23に着脱自在に取り付けられている。
【0017】
これらの検出器ユニット4を覆うように、ケーシング3が検出器支持部23に取り付けられる(図4)。また、ケーシング3は、水平方向に伸びて形成されかつ検査時にベッド20が挿入される孔部(貫通孔)41を形成する(図1)。
【0018】
それらの検出器ユニット4の設置により、多数の放射線検出器(例えば合計10000個)5が環状の検出器支持部材8の内側でケーシング3内に配置される。それらの放射線検出器5は、検出器支持部材8の半径方向に多層(例えば三層)に、更に検出器支持部材8の軸方向に複数列にわたって配置される。各検出器ユニット4に配置される放射線検出器5のうちコネクタ部7から最も遠い位置にある3個の放射線検出器5(放射線検出器5A)は、孔部41の軸心から最も近い位置にあり一層目の放射線検出器という。コネクタ部7から最も近い位置にある3個の放射線検出器5(放射線検出器5C)は、孔部41の軸心から最も遠い位置にあり三層目の放射線検出器という。検出器ユニット4内で一層目と三層目の間に位置する3個の放射線検出器5(放射線検出器5B)は二層目の放射線検出器という。
【0019】
放射線検出装置43は、前述した多数の放射線検出ユニット4を含んでいる。放射線検出装置43は、検出器支持部材8の半径方向に一層から三層に配列され、検出器支持部材8の軸方向に多数配列された放射線検出器5を含んでいる。
【0020】
代表的な放射線検出器としては、半導体放射線検出器及びシンチレータがある。シンチレータは、放射線検出部であるクリスタル(BGO,NaIなど)の後部に光電子増倍管などを配置する必要があるため、積層配置する場合(例えば、前述の三層)には不向きである。半導体放射線検出器は、光電子増倍管などが不要であるため、積層配置に向いている。本実施例では、放射線検出器5は、半導体放射線検出器を用いており、検出部である5mm立方体をカドミウムテルル(CdTe)で構成している。その検出部はガリウムヒ素(GaAs)またはカドミウムテルル亜鉛(CZT)で構成してもよい。
【0021】
信号処理装置40は、信号弁別装置27,γ線弁別装置32及び同時計数装置34を有する。信号弁別装置27は一層目の放射線検出器5ごとに設けられる。また、二層目及び三層目の放射線検出器5ごとにγ線弁別装置32が設けられる。これらの3個の信号弁別装置27及び6個のγ線弁別装置32は、1つの基板26に設置される。基板26に設置される3個の信号弁別装置27及び6個のγ線弁別装置32によって信号弁別ユニット25が構成される。基板26はユニット支持部材66に取り付けられる。検出器ユニット4ごとに設けられる各信号弁別ユニット25は、図4に示すように、信号弁別ユニット収納空間44に配置されるユニット支持部材66に取り付けられる。ユニット支持部材66は検出器支持部23に取り付けられる。信号弁別ユニット25は、ユニット支持部材66に設置することによって、検出器支持部材8に保持される。ユニット支持部材66を用いずに基板26を、支持基板として、直接、検出器支持部23に取り付けることも可能である。
【0022】
信号弁別装置27は、図7に示すように、切替スイッチ28,γ線弁別装置32及びX線信号処理装置33を有する。切替スイッチ28は可動端子29及び固定端子30,31を有する。γ線弁別装置32は固定端子30に接続され、X線信号処理装置33は固定端子31に接続される。一層目の放射線検出器5Aに接続されるコネクタ端子7Aは、コネクタ部7とコネクタ部11との結合により、コネクタ部11に設けられたコネクタ端子11Aに接触する。可動端子29は、コネクタ端子11Aに配線49により接続される。配線49はユニット支持部材66に設置される。電源50のマイナス端子は抵抗51を介して配線46に接続され、電源50のプラス端子は放射線検出器5Aに接続される。全ての信号弁別装置27内のγ線弁別装置32は配線52によって同時計数装置34に接続される。また、全ての信号弁別装置27内のX線信号処理装置33は配線53によってコンピュータ36に接続される。
【0023】
信号弁別ユニット25内に設けられて信号弁別装置27以外の6個のγ線弁別装置32うち、3個のγ線弁別装置32は、配線54によってコネクタ部11のコネクタ端子11B(図示せず)に接続される。コネクタ端子11Bは二層目の放射線検出器5Bが接続されるコネクタ端子7Bと接触している。残りの3個のγ線弁別装置32は、別の配線54によってコネクタ部11のコネクタ端子11C(図示せず)に接続される。コネクタ端子11Bは三層目の放射線検出器5Cが接続されるコネクタ端子7Cと接触している。信号弁別装置27以外の6個のγ線弁別装置32は、それぞれ配線55によって同時計数装置34に接続される。なお、図1では信号弁別ユニット25及び配線54,56を検出器支持部材8の外に表示しているが、これは信号弁別ユニット25に設けられた信号弁別装置27及びγ線弁別装置32の配線による接続状態を分かりやすくしたためである。信号弁別ユニット25は、実際には図3,図4に示すように検出器支持部材8内に設置され、配線52,53,55が検出器支持部材8から引き出されている。
【0024】
本実施例における放射線検査を具体的に説明する前に、本実施例の放射線検出の原理について説明する。X線CT像(X線CTによって得られた、被検体の、内臓及び骨の画像を含む断層像)のデータは、X線源から放射されたX線を特定の方向に所定時間の間、被検体に照射し、体内を透過したX線を放射線検出器により検出する作業(スキャン)を繰り返し、複数の放射線検出器で検出されたX線の強度に基づいて作成される。精度の良いX線CT像のデータを得るためには、X線CT検査において、X線を検出している放射線検出器に、PET用薬剤に起因して被検体の内部から放出されるγ線が入射しないことが望ましい。1つの放射線検出器においてはγ線の入射率に対応して被検体へのX線の照射時間を短くすればγ線の影響が無視できるので、これにより被検体へのX線の照射時間の短縮を図った。そのX線の照射時間Tを決めるために、まず、1つの放射線検出器へのγ線の入射率を考える。PET検査において被検体に投与するPET用薬剤に基づいた体内の放射能をN(Bq),発生するγ線の体内通過率をA,1つの放射線検出器の立体角から求めた入射率をB,検出要素の感度をCとすると、1つの放射線検出器で検出するγ線の率α(個/sec)は(1)式で与えられる。(1)式において係数の「2」は、1個の陽電子消滅の際に一対(2個)のγ
α=2NABC …(1)
線が放出されることを意味している。照射時間T内に1つの検出要素でγ線が検出される確率Wは(2)式で与えられる。(2)式のWの値を小さくするように
W=1−exp(−Tα) …(2)
照射時間Tを決めることによって、X線CT検査時に、1つの放射線検出器に入射されるγ線の影響は無視できる程度になる。
【0025】
X線の照射時間Tの一例を以下に述べる。(1)および(2)式に基づいて具体的なX線の照射時間Tを求めた。PET検査において被検体に投与するPET用薬剤に起因する体内での放射線の強度は、最大で370MBq程度であり(N=370MBq)、γ線の体内通過率Aは被検体の体を半径15cmの水と仮定すれば0.6程度(A=0.6)である。例えば一辺5mmの放射線検出器を半径50cmでリング状に配置する場合を考えると、1つの放射線検出器の立体角から求めた入射率Bは8×10-6(B=8×10-6)である。また、放射線検出器の検出感度Cは半導体放射線検出器を使用した場合最大で0.6程度(C=0.6)である。これらの値から1つの放射線検出器のγ線の検出率αは2000(個/sec)程度である。X線の照射時間Tを例えば1.5μsecとすれば、1つの放射線検出器がX線検出中にγ線を検出する確率Wは0.003となり、このγ線はほとんど無視できる。体内投与放射能を360MBq以下とした場合、X線の照射時間を1.5μsec以下にすれば、W<0.003つまりγ線の検出確率は0.3%以下となり無視できる。
【0026】
上記の原理が適用されて撮像装置2Bを用いた本実施例におけるX線CT検査及びPET検査について具体的に説明する。
【0027】
本実施例におけるX線CT検査及びPET検査について説明する。注射などの方法により予めPET用薬剤が、体内投与放射能が370MBqになるように被検体である被検診者42に投与される。その後、PET用薬剤が被検診者42の体内に拡散して患部(例えば癌の患部)に集まって撮像可能な状態になるまでの所定時間の間、被検診者42は待機する。PET用薬剤は、検査する患部に応じて選ばれる。その所定時間経過後に、被検診者42が横たわったベッド20が撮像装置2の孔部41内に被検診者42と共に挿入される。X線CT検査及びPET検査は撮像装置2を用いて行われる。PET用薬剤が投与された被検診者42が孔部41内に挿入され、各放射線検出器5に電源50より電圧が印加された後、各放射線検出器5は被検診者42から放出されたγ線を検出する。すなわち、PET検査が開始される。PET検査が開始された後、X線CT検査が開始される。
【0028】
X線CT検査について説明する。駆動装置制御装置21は、X線CT検査を開始するとき、駆動開始信号を出力して、X線源駆動装置15のモーターに接続された、電源とつながる開閉器(以下、モーター開閉器という)を閉じる。モーターの回転力が減速機構を介してピニオンに伝えられ、X線源装置14、すなわちX線源17がガイドレール12に沿って周方向に移動する。X線源17は、孔部41内に挿入された状態で被検診者42の周囲を設定速度で移動する。X線CT検査終了時には、駆動装置制御装置21は駆動停止信号を出力してモーター開閉器を開く。これによって、X線源17の周方向への移動が停止される。本実施例では、全ての放射線検出器5は、その周方向に移動しなく、かつ孔部41の軸方向にも移動しない。駆動装置制御装置21及びX線源制御装置22は検出器支持部材8に設置されている。駆動装置制御装置21及びX線源制御装置22から移動するX線源装置14への制御信号の伝送はX線源装置14の移動に支障にならない公知の技術を適用する。
【0029】
X線源制御装置22はX線源17からのX線の放出時間を制御する。すなわち、線源制御装置22は、X線発生信号及びX線停止信号を繰り返して出力する。最初のX線発生信号の出力は、X線源制御装置22への上記駆動開始信号の入力に基づいてなされる。X線発生信号の出力によってX線源17におけるX線管の陽極(または陰極)と電源との間に設けられた開閉器(以下、X線源開閉器という、図示せず)が閉じられ、第1設定時間経過した時にX線停止信号が出力されてX線源開閉器が開き、そして第2設定時間経過した時にX線源開閉器を閉じる、という制御が繰り返される。陽極と陰極との間には、第1設定時間の間で電圧が印加され、第2設定時間の間で電圧が印加されない。X線源制御装置22によるその制御によって、X線管から80keVのX線がパルス状に放出される。第1設定時間である照射時間Tは、放射線検出器5でのγ線の検出確率を無視できるように例えば1μsecに設定される。第2設定時間は、X線源17が1つの放射線検出器5とこれに周方向において隣接する他の放射線検出器5の間を移動する時間T0であり、ガイドレール12の周方向におけるX線源17の移動速度で定まる。第1及び第2設定時間はX線源制御装置22に記憶されている。
【0030】
X線停止信号及びX線発生信号の繰り返し出力によって、X線源17は、第1設定時間、すなわち1μsecの間にX線を放出し、第2設定時間の間にX線の放出を停止する。このX線の放出及び停止がX線源17の周方向への移動期間中に繰り返されることになる。
【0031】
X線源17から放出されたそのX線57は、ファンビーム状に、被検診者42に照射される。X線源17の周方向の移動によって、被検診者42には周囲よりX線57が照射される。被検診者42を透過したX線(例えば患部56を透過したX線)57は、孔部41の軸心を基点にX線源17から180度の位置にある放射線検出器5を中心に周方向に位置する複数個の放射線検出器5によって検出される。これらの放射線検出器5は、そのX線57の検出信号を出力する。このX線検出信号は、該当する配線49を経て対応するそれぞれの信号弁別装置27に入力される。上記のX線を検出しているそれらの放射線検出器5は、便宜的に第1放射線検出器4と称する。
【0032】
ベッド16上の被検診者42の患部(癌の患部)56から、PET用薬剤に起因した511keVのγ線58が放出されている。第1放射線検出器5以外の放射線検出器5は、γ線58を検出してγ線検出信号を出力する。γ線を検出している放射線検出器5を、便宜的に第2放射線検出器5と称する。第2放射線検出器5のうち、一層目に位置する第2放射線検出器5から出力されたγ線検出信号は該当する配線49を経て対応するそれぞれの信号弁別装置27に入力され、二層目及び三層目に位置する第2放射線検出器5から出力されたγ線検出信号は配線54を経て対応するそれぞれのγ線弁別装置32に入力される。一層目に配置された放射線検出器5のみがX線信号処理装置33を有する信号弁別装置61に接続されている。これは、X線のエネルギーが80keVであるため、被検診者42を透過したほとんど(90%以上)のX線が一層目の放射線検出器5で検出されるからである。
【0033】
信号弁別装置27内で、一層目の第2放射線検出器5から出力されたγ線検出信号はγ線弁別装置32に伝えられ、第1放射線検出器5から出力されたX線検出信号はX線信号処理装置33に伝えられる。このような各検出信号の伝送は、信号弁別装置27の切替スイッチ28の切替操作によって行われる。切替スイッチ28の可動端子29を固定端子30または固定端子31に接続する切替操作は、駆動装置制御装置21の出力である切替制御信号に基づいて行われる。X線CT検査時では、駆動装置制御装置22は、一層目の放射線検出装置5のうち第1放射線検出器5を選択し、この第1放射線検出器5に接続される信号弁別装置27における可動端子29を固定端子31に接続する。
【0034】
第1放射線検出器5の選択について説明する。X線源駆動装置15内のモーターにはエンコーダー(図示せず)が連結される。駆動装置制御装置22は、エンコーダーの検出信号を入力して検出器支持部材8(孔部41)の周方向におけるX線源駆動装置15、すなわちX線源17の位置を求め、このX線源17の位置と180°反対側に位置する放射線検出器5を、記憶している各放射線検出器5の位置のデータを用いて選択する。X線源17から放射されるX線57はガイドレール12の周方向である幅を有しているため、被検診者42を透過したX線57を検出する放射線検出器5は、選択されたその放射線検出器5以外にも周方向に複数個存在することになる。駆動装置制御装置22はその複数の放射線検出器5も選択する。これらの放射線検出器5が、第1放射線検出器5である。周方向におけるX線源17の移動に伴って、第1放射線検出器5も違ってくる。X線源17の周方向への移動に伴って、第1放射線検出器5も擬似的に周方向に移動しているように見える。駆動装置制御装置22が、X線源17の周方向への移動に伴って別の放射線検出器5を選択したときには、新たに第1放射線検出器5となる放射線検出器5に接続された可動端子29は固定端子31に接続される。X線源17の周方向への移動に伴って第1放射線検出器5でなくなった放射線検出器5に接続された可動端子29は駆動装置制御装置22によって固定端子30に接続される。第一層目の個々の放射線検出器5は、X線源17の位置との関係で、あるときは第1放射線検出器5となり、別のあるときには第2放射線検出器5となる。このため、第一層目の1つの放射線検出器5は、時間的にずれてX線検出信号及びγ線検出信号の両方を出力する。
【0035】
第1放射線検出器5は、第1設定時間である1μsecの間にX線源17から照射されて被検診者42を透過したX線を検出する。1μsecの間に第1放射線検出器5が被検診者42から放出されるγ線を検出する確率は、前述したように、無視できるほど小さい。PET用薬剤に起因して被検診者42の患部56で発生した多数のγ線58は、特定の方向に放出されるのではなく、あらゆる方向に放出される。これらのγ線58は、前述したように、対となってほぼ正反対の方向(180°±0.6°)に放出され、いずれかの第2放射線検出器5によって検出される。
【0036】
一層目の放射線検出器5から出力されたX線検出信号及びγ線検出信号を入力したときの信号弁別装置27の信号処理について説明する。第1放射線検出器5から出力されたX線検出信号は、前述したようにX線信号処理装置33に入力される。X線信号処理装置33は、入力したX線検出信号を積分装置によって積算し、X線検出信号の積算値、すなわち計測したX線の強度の情報を出力する。X線検出信号の強度情報は、配線53によってコンピュータ36に伝えられて記憶装置37に記憶される。
【0037】
一層目の第2放射線検出器5から出力されたγ線検出信号は、切替スイッチ28の作用によってγ線弁別装置32に入力される。PET用薬剤から放出された陽電子の消滅により患部56から放出されるγ線のエネルギーは、511keVである。しかし、被検診者42の体内でγ線が散乱した場合、エネルギーは511keVより低くなる。γ線弁別装置32は、散乱γ線を除去するため、例えばエネルギーが511keVよりも低い400keVをエネルギー設定値として、このエネルギー設定値以上のエネルギーを有するγ線検出信号を通過させるフィルター(図示せず)を備えている。このフィルターは固定端子30から出力されたγ線検出信号を入力する。ここで、例として、400keVをエネルギー設定値としたのは511keVのγ線が放射線検出器5に入射したときに発生するγ線検出信号のばらつきを考慮したためである。γ線弁別装置32は、エネルギー設定値(400keV)以上のエネルギーを有するγ線検出信号を入力したときに所定のエネルギーを有するパルス信号を発生させる。γ線弁別装置32は、γ線検出信号処理装置であり、出力するパルス信号に、時刻情報、及びγ線弁別装置32に接続される放射線検出器5の位置を示す位置情報を付与する。時刻情報は、γ線検出信号がγ線弁別装置32に入力されたときの時刻、及びパルス信号がγ線弁別装置32から出力されるときの時刻のいずれかの情報である。
【0038】
二層目及び三層目の放射線検出器5は全て第2放射線検出器である。これらの二層目及び三層目の放射線検出器5に配線54で接続されたγ線弁別装置32も、上記した信号弁別装置27内のγ線弁別装置32と同じ機能を発揮する。
【0039】
同時計数装置34は、全てのγ線弁別装置32から出力されたパルス信号を入力する。同時計数装置34は、γ線対のそれぞれのγ線58を検出した2つの第2放射線検出器(孔部30の軸心を中心にしてほぼ180°(厳密には180°±0.6°)方向が異なった位置に存在する一対の第2放射線検出器)5から出力されたそれぞれのγ線検出信号に対する各パルス信号を用いて同時計数を行い、それらのγ線検出信号に対する計数値(γ線計数情報)を求める。同時計数装置34は、各パルス信号がそのγ線対のそれぞれのγ線の検出信号に対応したものであるかは、それらのパルス信号に付与された各時刻情報に基づいて判断する。すなわち、2つの時刻情報の差が設定時間(例えば、10nsec)以内であれば、1つの陽子の消滅によって発生した一対のγ線58に対するパルス信号であると判断する。更に、同時計数装置34は、それらのパルス信号に付与された各位置情報を、該当する一対の第2放射線検出器5の各位置、すなわち各γ線検出点の位置情報としてデータ化する。同時計数装置34は、上記した、各γ線検出信号に対する計数値情報、及び対γ線を検出した2つの検出点の位置情報を出力する。計数値及び位置情報は、コンピュータ36に伝えられて記憶装置37に記憶される。
【0040】
コンピュータ36は、図8に示すステップ60〜65の処理手順に基づいて処理を実行する。このような処理を実行するコンピュータ36は、第1情報(具体的にはγ線計数情報及びγ線検出点の位置情報)を用いて第1断層像情報を作成し、及び第2情報(具体的にはX線強度情報及びX線検出位置情報)を用いて第2断層像情報(具体的にはX線CT像データ)を作成し、第1断層像情報及び第2断層像情報を用いてそれらの断層像情報を含む第3断層像情報(具体的には合成断層像データ)を作成する断層像作成部である。同時計数装置34によって計数されたγ線検出信号の計数値情報,同時計数装置34から出力されたγ線検出点の位置情報,X線信号処理装置33から出力されたX線強度情報、及びX線強度に付与されたX線検出位置情報が入力される(ステップ60)。入力された、γ線検出信号の計数値情報,γ線検出点の位置情報,X線強度情報、及びX線検出位置情報は、記憶装置37に記憶される(ステップ61)。
【0041】
X線強度情報及びX線検出位置情報を用いて、被検診者42の横断面(以下、横断面とは被検診者が立った状態での横断面をいう)の断層像を再構成する(ステップ62)。再構成した断層像をX線CT像と称する。この断層像の再構成の具体的な処理を説明する。まず、X線強度情報を用いて、被検診者42の体内の各ボクセルにおけるX線の減衰率を算出する。この減衰率は記憶装置37に記憶される。X線CT像を再構成するために、記憶装置37から読み出されたX線検出信号の減衰率を用いて、X線源17の位置とX線を検出した放射線検出器5の位置(X線検出位置情報より得る)との間における被検診者42の体内での線減弱係数を求める。エンコーダーにより検出された、移動時におけるX線源17の位置は、各X線信号処理装置33によりX線強度情報に付与されてコンピュータ36に伝えられる。各ボクセルにおけるCT値は、その線減弱係数を用いてフィルタードバックプロジェクション法により得られる、各ボクセルでの線減弱係数の値に基づいて、算出される。X線CT像のデータは、それらのCT値を用いて得られ、記憶装置37に記憶される。ステップ62においては、PET薬剤が集積している患部を通る横断面でのX線CT像も再構成される。
【0042】
患部(例えば癌の患部)を含む、被検診者42の横断面の断層像を、該当する位置でのγ線検出信号の計数値を用いて再構成する(ステップ63)。γ線検出信号の計数値を用いて再構成した断層像をPET像と称する。この処理を詳細に説明する。記憶装置37から読み出されたγ線検出信号の計数値を用いて、陽電子の消滅によって発生したγ線を検出した一対の第2放射線検出器5(γ線検出点の位置情報より特定)の各半導体素子部間における体内でのγ線対発生数(複数の陽電子の消滅に応じて発生したγ線対の数)を求める。このγ線対発生数を用いて、フィルタードバックプロジェクション法により各ボクセルにおけるγ線対発生密度を求める。これらのγ線対発生密度に基づいてPET像のデータを得ることができる。このPET像のデータは、記憶装置37に記憶される。
【0043】
PET像のデータとX線CT像のデータとを合成して、両データを含む合成断層像のデータを求め、記憶装置37に記憶させる(ステップ64)。患部の位置におけるPET像データとその位置のX線CT像データを合成して、患部の位置での被検診者42の横断面の合成断層像データを求める。PET像のデータとX線CT像のデータとの合成は、両方の像データにおける、孔部41の中心軸の位置を合わせることによって、簡単にかつ精度良く行うことができる。すなわち、PET像のデータ及びX線CT像のデータは、共有する放射線検出器5から出力された検出信号に基づいて作成されるので、前述のように位置合わせを精度良く行える。合成断層像のデータは、記憶装置37から呼び出されて表示装置38に出力され(ステップ65)、表示装置38に表示される。表示装置38に表示された合成断層像はX線CT像を含んでいるので、PET像における患部の、被検診者42の体内での位置を容易に確認することができる。すなわち、X線CT像は内臓及び骨の像を含んでいるので、医者は、患部(例えば、癌の患部)が存在する位置を、その内臓及び骨との関係で特定することができる。
【0044】
放射線検査装置1は、孔部41の半径方向において複数の放射線検出器5を積層配置している(図1〜図4)が、この積層配置によって以下に示す新しい機能を発揮できる。例えば、図9(a)に示すように被検診者42の体内のγ線対発生点70(患部56内)より放出された2つのγ線58a,58bが放射線検出器5f,5gに入射した場合を考える。放射線検出器内のどの位置でγ線が減衰したかはわからないため、従来法では一対の放射線検出器5f,5hの先端位置を結ぶ線、つまり図9(b)に示す線71を検出線とした。しかし、放射線検査装置1では、孔部41の半径方向において放射線検出器5を積層配置しているため、その半径方向で外側に位置する放射線検出器5gのγ線検出信号が得られ、放射線検出器5fと放射線検出器5gとを結ぶ線72を検出線とすることができる。つまり、従来例ではわからなかった放射線検出器5の奥行き方向における減衰位置を把握することができる。この結果、検出線72は、γ線対が発生した位置を正確に通るため、画像の精度が向上する。この結果、検出線がより実際のγ線対発生点に近くなるため、測定データの精度が向上する。
【0045】
本実施例では、放射線検出装置43がX線検出信号及びγ線検出信号の両方を出力する複数の放射線検出器5で構成されているため、放射線検出装置43はγ線検出部でありX線検出部でもある。すなわち、放射線検出装置43はγ線検出部及びX線検出部の両方の機能を有する。本実施例は、X線検出部が、ベッド20の長手方向においてγ線検出部の一端とγ線検出部の他端との間に形成される領域内に位置している。また、放射線検出装置43は、X線源17から照射されて被検診者42を透過するX線57を検出し、このX線57の検出信号を出力するX線検出部であり、かつX線57を照射している被検診者42の位置において被検診者42内のX線57が透過する部位(患部56)からPET薬剤に起因して放出されるγ線58を検出し、このγ線58の検出信号を出力するγ線検出部である。
【0046】
本実施例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0047】
(1)本実施例は、複数の検出器ユニット4を、コネクタ部を介して検出器支持部材8に取り付けるため、これらの検出器ユニット4、具体的には多数の放射線検出器5の取り付けを短時間に行うことができる。このため、撮像装置2、すなわち放射線検査装置1の製造時間を短縮できる。
【0048】
(2)検出器ユニット4がコネクタ部を介して検出器支持部材8に着脱自在に取り付けられるため、放射線検出器5が故障した場合、故障した放射線検出器5を含む検出器ユニット4を検出器支持部材8から簡単に取り外すことができる。また、新品の検出器ユニット4を取り外した検出器ユニットの位置で検出器支持部材8に簡単に取り付けられる。このように、本実施例は故障した放射線検出器5の交換を簡単に行うことができる。
【0049】
(3)本実施例は、放射線検出器5を、孔部41(検出器支持部材8)の軸方向及び周方向のみならず、半径方向にも複数配置することにより、従来のPET検査に用いられる放射線検出器のように信号伝達物質を減らさずに、孔部41の半径方向において細分した位置でのγ線検出信号を得ることができる。このため、本実施例は、孔部41の半径方向においてγ線が到達した正確な位置情報(γ線検出信号を出力した放射線検出器5の位置情報)を得ることができる。なお、従来のPET検査では、孔部41の半径方向には1つの放射線検出器を配置し、この放射線検出器内部に反射材を配置して信号伝達物質が光電子増倍管に到達したパターンにより、孔部41の半径方向においてγ線が到達した位置の情報を求めていた。このとき、反射材により信号伝達物質の一部が放射線検出器内で減衰したり、放射線検出器外へ反射してしまうため、信号伝達物質が減少し、エネルギー分解能の低下が発生した。
【0050】
(4)本実施例は、孔部41の半径方向において独立した複数の放射線検出器5を配置しているため、それぞれの放射線検出器5の信号伝達物質の全てをγ線の検出に使用でき、放射線検出器5のエネルギー分解能が向上する。エネルギー分解能の高い放射線検出器5をPET検査で用いた場合、散乱によりエネルギーが減衰したγ線と無散乱の511keVのエネルギーのγ線との区別が可能になる。その結果、γ線弁別装置32のフィルターにより散乱線をより多く除去することが可能となる。
【0051】
(5)本実施例は、放射線検出器内の信号伝達物質数を減らすことなく孔部31の半径方向におけるγ線の正確な到達位置の情報を取得できるため、γ線の正確な到達位置の情報を使用することによる断層像の精度の向上と、放射線検出器の反射材が不要であることにより信号伝達物質の減少が阻止でき、エネルギー分解能が向上して散乱線の断層像再構成への影響を抑えることが可能となった。その結果、本実施例は、断層像の精度、つまりPET検査の診断精度を向上できる。
【0052】
(6)本実施例は、放射線検出器5として半導体放射線検出器を用いているため、孔部41の半径方向に複数の放射線検出器5を配置することができ、そのように複数の放射線検出器5を配置しても撮像装置2が大きくならない。
【0053】
(7)本実施例では、放射線検出器5が半導体放射線検出器であるため、シンチレータを用いた放射線検出器に比べて、光電子増倍管が不用になり、撮像装置2を小型化することができる。
【0054】
(8)本実施例によれば、半導体放射線検出器である放射線検出器5を支持基板上に配置することにより、放射線検出器5を稠密に配列することが可能となった。特に、検出器幅の小さな放射線検出器5を孔部41の周方向に稠密に配置できるので、断層像の画像の高分解能化(小画像ボクセルサイズ)が図れる。
【0055】
(9)本実施例によれば、放射線検出器5を支持基板6上に配置する構成により、放射線検出器5を稠密に配列することが可能となった。特に、孔部41の半径方向において放射線検出器5の複数配列が可能となり、高検出効率化が図れる。更に、その半径方向における各放射線検出器5は各々独立にγ線を検出することができるので、その半径方向の分解能が向上する。特に、3D(三次元)−PET検査においては、γ線が放射線検出器5に斜めに入射する場合があるが、その半径方向での分解能の向上により、γ線の入射方向をより正確に捉えることができる。このため、得られるPET画像の高画質化を図ることができる。
【0056】
(10)本実施例によれば、放射線検出器5に接続される配線を支持基板6内に配置するために、孔部41の周方向及びその軸方向における放射線検出器5相互の間隔を短縮できる。放射線検出器5の間隔の短縮は、放射線検出器5間におけるγ線の検出漏れを減少させ、実質的なγ線の検出効率を増大させる。実質的なγ線の検出効率の増大により、PET検査時間の短縮が図れる。
【0057】
(11)X線を検出する放射線検出器5として、γ線を検出した放射線検出器5を用いるため、放射線検査装置1は、X線を検出する放射線検出器5とγ線を検出する放射線検出器5とを別々に設ける必要がなく、構成を単純化でき、小型化できる。放射線検出器5は、X線検出信号及びγ線検出信号の両方を出力する。
【0058】
(12)本実施例は、X線検出部が、ベッド20の長手方向においてγ線検出部の一端とγ線検出部の他端との間に形成される領域内に位置しているため、ベッド20の移動によらないで被検診者42が検査中に動いた場合でも、γ線検出部から出力されたγ線検出信号より得られた第1情報を基に作成された第1断層像(PET像)の情報と、X線検出部から出力されたX線検出信号より得られた第2断層像(X線CT像)の情報とを合成して作成された被検診者42の断層像の精度を向上することができる。これは、その断層像を用いることにより、被検体に対する診断精度を向上させることができる。具体的には癌の患部の位置及び大きさを精度良く認識できる。特に、小器官であるリンパ腺の癌を精度良く診断できる。
【0059】
(13)本実施例では、前述したように、放射線検出装置43は、X線検出信号及びγ線検出信号の両方を出力する複数の放射線検出器5(X線検出信号を得るX線の検出は、γ線検出信号を得るγ線の検出を行う放射線検出器5を用いて行う)で構成されているため、γ線検出部及びX線検出部の両方の機能を有する。放射線検出装置43はγ線検出部とX線検出部とを同軸で配置していると言える。このため、本実施例は、検出器支持部材8の周方向に配置された放射線検出器5の1つの出力信号であるX線検出信号を用いて、被検診者42の内臓及び骨等の画像を含む患部(PET用薬剤が集積)の位置での第1断層像を再構成でき、その放射線検出器5の他の出力信号であるγ線検出信号を用いて、その被検診者42の患部の画像を含む第2断層像を再構成できる。第1断層像のデータ及び第2断層像のデータは透過X線及びγ線の両方を検出する放射線検出器5の出力信号に基づいて再構成されているので、患部の位置における第1断層像のデータ及び第2断層像のデータを精度良く位置合わせして合成することができる。このため、患部,内臓及び骨等の画像を含む精度の良い断層像(合成断層像)を簡単に得ることができる。この合成断層像によれば、内臓及び骨との関係で、患部の位置を正確に知ることができる。例えば、第1断層像のデータ及び第2断層像のデータを、撮像装置2の検出器支持部材8(または孔部41)の軸心を基に合わせることによって、簡単に両断層像を合成した画像データを得ることができる。
【0060】
(14)本実施例は、X線源17から照射されて被検診者42の患部56を透過するX線57をX線検出部によって検出し、そのX線を照射している被検診者42の位置で被検診者42の体内のX線が透過する部位(患部)から放射性薬剤に起因して放出されるγ線を、γ線検出部によって検出するため、被検診者42をベッド20により移動させずに同じ位置でX線CT検査及びPET検査を実施できる。その両検査中に、X線検出部は被検診者42の患部56を透過したX線の検出信号を、γ線検出部は患部56から放出されたγ線の検出信号をそれぞれ出力する。そのX線検出信号に基づいて得られた、患部56の位置における第1断層像データ、及びそのγ線検出信号に基づいて得られた、患部の位置における第2断層像データを合成するため、検査中に耐え切れずに被検診者42がベッド20上で動いた場合でも、それらの断層像データを精度よく合成することができる。すなわち、精度の良い合成断層像データを得ることができる。このため、表示装置38に表示された、患部56の位置での合成断層像データ(合成断層像画像)を用いることによって、患部52の診断精度を向上できる。特に、臓器が込み入っている箇所に患部が存在する場合でも、本実施例で得られた合成断層画像により患部の位置を適切に把握でき、患部の診断精度が向上する。
【0061】
(15)本実施例は、X線源軸方向移動装置(例えば、軸方向移動アーム16)を用いてX線源17を放射線検査期間中に放射線検出部65の軸方向に移動できるので、被検診者42を放射線検出装置43の軸方向に移動させないで、検査対象範囲に対してPET検査を実施しながらその検査対象範囲に対してX線CT検査を実施できる。検査対象範囲に対するX線CT検査を、X線源17をその軸方向に移動させずに被検診者42をベッド20の移動によって実行する場合には、PET用薬剤が集積した部位の位置もその軸方向に移動する。これは、γ線対を発生する位置をその軸方向に移動させることになり、PET像データの作成に対するノイズが増大し、精度の良いPET像のデータが得られなくなる。本実施例は、γ線対を発生する位置がその軸方向に移動しないため、精度の良いPET像のデータが得られ、合成断層像データの精度も向上する。
【0062】
(16)本実施例は、放射線検出装置43に含まれるそれらの放射線検出器5によって、被検診者42から放出される複数のγ線の対を検出できると共に、周方向に移動するX線源17から放出されて被検診者42を透過したX線も検出できる。このため、従来技術は撮像装置としてX線を検出する撮像装置及びγ線を検出する他の撮像装置を必要としていたが、本実施例は、X線及びγ線を検出する一台の撮像装置があればよく、X線CT検査及びPET検査の両方を実施できる放射線検査装置の構成が単純化できる。
【0063】
(17)本実施例は、第1の断層像を作成するために必要なX線検出信号、及び第2の断層像を作成するために必要なγ線検出信号を共用する放射線検出器5から得ることができるため、被検診者42の検査に要する時間(検査時間)を著しく短縮できる。換言すれば、短い検査時間で、第1の断層像を作成するために必要なX線検出信号、及び第2の断層像を作成するために必要なγ線検出信号を得ることができる。本実施例は、従来技術のように、被検診者42を、透過X線を検出する撮像装置からγ線を検出する他の撮像装置まで移動させる必要がなくなるため、被検診者42の検査時間の短縮に更に、貢献する。
【0064】
(18)本実施例は、X線源17を周回させて放射線検出装置43を孔部41の周方向及び軸方向に移動させないため、放射線検出装置43を移動させるに必要なモーターに比べてX線源17を周回させるモーターの容量を小さくできる。後者のモーターの駆動に要する消費電力も、前者のモーターのそれよりも少なくできる。
【0065】
(19)X線信号処理装置33、すなわち第1信号処理装置に入力されるγ線検出信号が著しく減少するため、精度の良い第1断層像のデータを得ることができる。このため、第1断層像のデータと第2断層像のデータとを合成して得られた画像データを用いることにより、患部の位置をより正確に知ることができる。
【0066】
(20)本実施例は、放射線検出装置43の内側でX線源17が周回するため、検出器支持部材8の内径が大きくなり、検出器支持部材8の内側で周方向に設置できる放射線検出器5の個数を多くすることができる。周方向における放射線検出器5の個数の増加は、感度,分解能の向上をもたらし、被検診者42の横断面における断層像の分解能を向上させる。
【0067】
(21)本実施例では、軸方向移動アーム16及びX線源17は放射線検出装置434の内側に位置しているため、X線CT検査時においてそれらが被検診者42から放出されるγ線を遮って、それらの真後ろに位置する放射線検出器5がそのγ線を検出できなく、PET像の作成に必要な検出データが欠損する可能性がある。しかし、本実施例は、前述のように、X線源駆動装置15によってX線源17及び軸方向移動アーム16が周方向に周回しているので、実質的にはデータの欠損は問題とならない。特に、X線源17及び軸方向移動アーム16の周回速度は約1秒/1スライスであり、最短で数分オーダーのPET検査に要する時間と比較すると十分短い。これによっても、実質的にはそのデータの欠損は問題にならない。また、X線CT検査が行われずPET検査が実施されるときには、X線源17がX線源駆動装置15内に収納されるため、X線源17及び軸方向移動アーム16がγ線検出の障害にはならない。
【0068】
更に、X線CT像の作成のために必要なX線検出信号を得るために要する検査時間は、PET像の作成のために必要なγ撮像信号を得るために要する検査時間よりも短い。このため、そのγ線検出信号を得るための検査時間の間、常にX線源17からX線を被検診者42に照射してX線検出信号を得ることによって、被検診者42が検査中に動いた場合でもX線検出信号に基づいて得られるX線CT像の連続像から、被検診者42の揺動に伴うPET像のデータのずれを補正することもできる。
【0069】
放射線検出器5に接続された配線を支持基板6内に配置したが、支持基板6に貫通孔を形成し、放射線検出器5を設置した側の支持基板6の面からその配線を貫通孔を通して反対側に引き出しスルーホールにより反対面に引き出し、放射線検出器5が設置されていない側の支持基板6の面に配線を設置してもよい。その際には、放射線検出器5が設置されていない側の支持基板6の面に溝を形成してその溝内に配線を設置してもよい。また、支持基板として多層配線基板を使用し、多層配線基板内に配線を設置してもよい。更に、多層配線基板の使用により、放射線検出器5を多層配線基板の両面に配列することが可能となる。
【0070】
(実施例2)
本発明の他の実施例である実施例2の放射線検査装置を以下に説明する。本実施例の放射線検査装置は、実施例1の放射線検査装置1の構成のうち、検出器ユニットの構成が変わっているのみである。実施例1で用いられた検出器ユニット4と構成が異なる、本実施例に用いられる検出器ユニット4Aを、図10,図11により説明する。
【0071】
検出器ユニット4Aは、複数(例えば9個)の放射線検出器5Dを三行三列で支持基板6の一面に設置する。各放射線検出器5Dは、放射線検出器5と同じ半導体放射線検出器であり、検出器支持部材8の半径方向において三層に配置される。検出器支持部材8の半径方向に並んだ一列において、一層目に放射線検出器5A1 ,二層目に放射線検出器5B1 、及び三層目に放射線検出器5C1 がそれぞれ配置される。
【0072】
放射線検出器5A1は、5つの検出要素、すなわち検出要素74A,74B,74C,74D,74Eを有する。検出要素74A,74B,74C,74D,74Eは、検出器支持部材8の半径方向において、内側よりその順に配置される。検出要素74Aが最も内側に配置され、検出要素74Eが最も外側に配置される。カソード電極77Aが検出要素74Aの内側面に設けられる。検出要素74Aと検出要素74Bは、検出要素74Aの外側面及び検出要素74Bの内側面に設けられたアノード電極78Aを間に挟んで隣接する。検出要素74Bと検出要素74Cは、検出要素74Bの外側面及び検出要素74Cの内側面に設けられたカソード電極77Bを間に挟んで隣接する。検出要素74Cと検出要素74Dは、検出要素74Cの外側面及び検出要素74Dの内側面に設けられたアノード電極78Bを間に挟んで隣接する。検出要素74Dと検出要素74Eは、検出要素74Dの外側面及び検出要素74Eの内側面に設けられたカソード電極77Cを間に挟んで隣接する。アノード電極78Cが検出要素74Eの外側面に設けられる。
【0073】
放射線検出器5B1は、5つの検出要素、すなわち検出要素75A,75B,75C,75D,75Eを有する。検出要素75A,75B,75C,75D,75Eは、検出器支持部材8の半径方向において、内側よりその順に配置される。検出要素75Aが最も内側に配置され、検出要素75Eが最も外側に配置される。カソード電極79Aが検出要素75Aの内側面に設けられる。検出要素75Aと検出要素75Bは、検出要素75Aの外側面及び検出要素75Bの内側面に設けられたアノード電極80Aを間に挟んで隣接する。検出要素75Bと検出要素75Cは、検出要素75Bの外側面及び検出要素75Cの内側面に設けられたカソード電極79Bを間に挟んで隣接する。検出要素75Cと検出要素75Dは、検出要素75Cの外側面及び検出要素75Dの内側面に設けられたアノード電極80Bを間に挟んで隣接する。検出要素75Dと検出要素75Eは、検出要素75Dの外側面及び検出要素75Eの内側面に設けられたカソード電極79Cを間に挟んで隣接する。アノード電極80Cが検出要素75Eの外側面に設けられる。
【0074】
放射線検出器5C1 は、5つの検出要素、すなわち検出要素76A,76B,76C,76D,76Eを有する。検出要素76A,76B,76C,76D,76Eは、検出器支持部材8の半径方向において、内側よりその順に配置される。検出要素76Aが最も内側に配置され、検出要素76Eが最も外側に配置される。カソード電極81Aが検出要素76Aの内側面に設けられる。検出要素76Aと検出要素76Bは、検出要素76Aの外側面及び検出要素76Bの内側面に設けられたアノード電極82Aを間に挟んで隣接する。検出要素76Bと検出要素76Cは、検出要素76Bの外側面及び検出要素76Cの内側面に設けられたカソード電極81Bを間に挟んで隣接する。検出要素76Cと検出要素76Dは、検出要素76Cの外側面及び検出要素76Dの内側面に設けられたアノード電極82Bを間に挟んで隣接する。検出要素76Dと検出要素76Eは、検出要素76Dの外側面及び検出要素76Eの内側面に設けられたカソード電極81Cを間に挟んで隣接する。アノード電極82Cが検出要素76Eの外側面に設けられる。
【0075】
アース線45が、カソード電極77A,77B,77C,79A,79B,79C,81A,81B,81Cに接続される。配線74が、アノード電極78A,78B,78Cに接続される。配線75が、アノード電極80A,80B,80Cに接続される。配線76が、アノード電極82A,82B,82Cに接続される。アース線45はコネクタ部7のコネクタ端子7Dに接続される。配線74は、コネクタ部7のコネクタ端子7Aに接続される。配線75は、コネクタ部7のコネクタ端子7Bに接続される。配線76は、コネクタ部7のコネクタ端子7Cに接続される。他の二列に含まれた各放射線検出器5Dも、同様にコネクタ部7に設けられている他のコネクタ端子に接続されている。アース線45及び配線74,75,76は全て支持基板6内に設置されている。多数の検出器ユニット4Aは、それぞれに設けられたコネクタ端子7A等のコネクタ端子を、検出器支持部23に設けられたコネクタ部11にはめ込むことによって、検出器支持部23に装着されて保持される。検出器ユニット4Aも、検出器ユニット4と同様に、孔部41を取り囲み、孔部41の周方向及び軸方向に多数配置される。
【0076】
放射線検出器5A1,5B1,5C1は、少なくとも二面を有する3個以上の検出要素、すなわち半導体素子を有し、異なる半導体素子間に交互にアノード電極及びカソード電極を配置している。放射線検出器5A1 を用いて具体的に説明する。放射線検出器5A1は、異なる検出要素間、すなわち検出要素74Aと検出要素74Bとの間、検出要素74Bと検出要素74Cとの間、検出要素74Cと検出要素74Dとの間、検出要素74Dと検出要素74ECとの間に、例えば検出要素74Aと検出要素74Bとの間にアノード電極78A,検出要素74Bと検出要素74Cとの間にカソード電極77Bといったように、アノード電極とカソード電極を交互に配置している。
【0077】
コネクタ部7をコネクタ部11にはめ込むことによって、一層目の3つの放射線検出器5A1 は、信号弁別ユニット25内の3つの信号弁別装置27に別々に接続される。また、二層目の3つの放射線検出器5B1 及び三層目の3つの放射線検出器5C1 は、信号弁別ユニット25内に設けられた、信号弁別装置27以外の6つのγ線弁別装置32に別々に接続される。
【0078】
検出器ユニット4Aを組み込んだ本実施例の放射線検査装置は、実施例1の放射線検査装置1で生じる効果(1)〜(21)を得ることができる。更に、本実施例は、以下に示す(22),(23)の効果を得ることができる。
【0079】
(22)本実施例によれば、放射線検出器5Dが複数の検出要素の積層構造としたので、アノード電極とカソード電極との間の各検出要素の厚みが薄くなり、電子とホールの再結合による検出信号の低下が抑えられる。このため、エネルギー分解能が向上する。また、検出信号が出力されるまでの時間が短くなるので、時間分解能も向上する。エネルギー分解能の向上によりエネルギー閾値を高く設定できるので、散乱により低エネルギー化したγ線をより多く除去することが可能となる。また、時間分解能の向上により、タイムウインドウを小さくできるので、偶発的にタイムウインドウ内で検出されるγ線を少なくできる。つまり、ノイズ成分である散乱事象及び偶発事象の検出を低く押さえることが可能となるため、PET画像の画質向上が図れる。
【0080】
(23)本実施例によれば、放射線検出器5Dを複数の検出要素の積層構造としているので、アノード電極とカソード電極との間の検出要素の厚みが薄くなり、印加するバイアス電圧を小さくすることができる。バイアス電圧の低下により、各種配線周りの部品の耐電圧を小さくできる。また、電源自体も小型化できる。
【0081】
(実施例3)
本発明の他の実施例である実施例3の放射線検査装置を以下に説明する。本実施例の放射線検査装置は、実施例1の放射線検査装置1の構成のうち、検出器ユニットの構成が変わっているのみである。実施例1で用いられた検出器ユニット4と構成が異なる、本実施例に用いられる検出器ユニット4Bを、図12,図13により説明する。
【0082】
検出器ユニット4Aは、複数(例えば9個)の放射線検出器5Eを三行三列で支持基板6の一面に設置する。各放射線検出器5Eは、放射線検出器5と同じ半導体放射線検出器であり、検出器支持部材8の半径方向において三層に配置される。検出器支持部材8の半径方向において、一層目に放射線検出器5Aa,5Ab,5Ac、二層目に放射線検出器5Ba,5Bb,5Bc、及び三層目に放射線検出器5Ca,5Cb,5Ccがそれぞれ配置される。検出器支持部材8の周方向に配置される放射線検出器5Aa,5Ab,5Acは、その周方向に積層されている。二層目の放射線検出器5Ba,5Bb,5Bc、及び三層目の放射線検出器5Ca,5Cb,5Ccも、同様に、検出器支持部材8の周方向において積層されている。この積層構造を、放射線検出器5Aa,5Ab,5Acを例にとって説明する。
【0083】
放射線検出器5Aaは、4つの検出要素、すなわち検出要素83A,83B,83C,83Dを有する。検出要素83A,83B,83C,83Dは、検出器支持部材8の周方向において、その順に配置される。放射線検出器5Abは、検出要素84A,84B,84C,84Dを有する。検出要素84A,84B,84C,84Dは、検出器支持部材8の周方向において、その順に配置される。放射線検出器5Acは、検出要素85A,85B,85C,85Dを有する。検出要素85A,85B,85C,85Dは、検出器支持部材8の周方向において、その順に配置される。
【0084】
カソード電極86Aが検出要素83Aの一側面に設けられる。検出要素83Aと検出要素83Bは、検出要素83Aの他側面及び検出要素83Bの一側面に設けられたアノード電極87Aを間に挟んで隣接する。ここで、一側面とは検出器支持部材8の周方向における検出要素の一側面を言い、他側面とは検出器支持部材8の周方向における検出要素の残りの側面を言う。検出要素83Bと検出要素83Cは、検出要素83Bの他側面及び検出要素83Cの一側面に設けられたカソード電極86Bを間に挟んで隣接する。検出要素83Cと検出要素83Dは、検出要素83Cの他側面及び検出要素83Dの一側面に設けられたアノード電極87Bを間に挟んで隣接する。
【0085】
検出要素83Dと検出要素84Aは、検出要素83Dの他側面及び検出要素84Aの一側面に設けられたカソード電極88Aを間に挟んで隣接する。検出要素84Aと検出要素84Bは、検出要素84Aの他側面及び検出要素84Bの一側面に設けられたアノード電極89Aを間に挟んで隣接する。検出要素84Bと検出要素84Cは、検出要素84Bの他側面及び検出要素84Cの一側面に設けられたカソード電極88Bを間に挟んで隣接する。検出要素84Cと検出要素84Dは、検出要素84Cの他側面及び検出要素84Dの一側面に設けられたアノード電極89Bを間に挟んで隣接する。
【0086】
検出要素84Dと検出要素85Aは、検出要素84Dの他側面及び検出要素85Aの一側面に設けられたカソード電極90Aを間に挟んで隣接する。検出要素85Aと検出要素85Bは、検出要素85Aの他側面及び検出要素85Bの一側面に設けられたアノード電極91Aを間に挟んで隣接する。検出要素85Bと検出要素85Cは、検出要素85Bの他側面及び検出要素85Cの一側面に設けられたカソード電極90Bを間に挟んで隣接する。検出要素85Cと検出要素85Dは、検出要素85Cの他側面及び検出要素85Dの一側面に設けられたアノード電極91Bを間に挟んで隣接する。カソード電極90Cが検出要素85Dの他側面に設けられる。
【0087】
アース線92が、カソード電極86A,86B,88A,88B,90A,90B,90Cに接続される。配線93が、アノード電極87A,87Bに接続される。配線94が、アノード電極89A,89Bに接続される。配線95が、アノード電極91A,91Bに接続される。アース線92はコネクタ部7のコネクタ端子7Dに接続される。配線93は、コネクタ部7のコネクタ端子7Aに接続される。配線94は、コネクタ部7のコネクタ端子7Bに接続される。配線95は、コネクタ部7のコネクタ端子7Cに接続される。二層目及び三層目の各放射線検出器5Eも、同様にコネクタ部7に設けられている他のコネクタ端子に接続されている。アース線92及び配線93,93,93は全て支持基板6内に設置されている。多数の検出器ユニット4Bは、それぞれに設けられたコネクタ端子7A等のコネクタ端子を、検出器支持部23に設けられたコネクタ部11にはめ込むことによって、検出器支持部23に装着されて保持される。検出器ユニット4Bも、検出器ユニット4と同様に、孔部41を取り囲み、孔部41の周方向及び軸方向に多数配置される。
【0088】
コネクタ部7をコネクタ部11にはめ込むことによって、一層目の放射線検出器5Aa,5Ab,5Acは、信号弁別ユニット25内の3つの信号弁別装置27に別々に接続される。また、二層目の放射線検出器5Ba,5Bb,5Bc及び三層目の放射線検出器5Ca,5Cb,5Ccは、信号弁別ユニット25内に設けられた、信号弁別装置27以外の6つのγ線弁別装置32に別々に接続される。
【0089】
検出器ユニット4Bを組み込んだ本実施例の放射線検査装置は、実施例1の放射線検査装置1で生じる効果(1)〜(21)、及び実施例2の放射線検査装置で生じる効果(22),(23)を得ることができる。更に、本実施例は、以下に示す(24)の効果を得ることができる。
【0090】
(24)本実施例によれば、各放射線検出器5Eを偶数個の検出体素子の積層構造としたので、隣接する放射線検出器5Eの両側面をカソード電極にすることができて、それらの放射線検出器5Eでカソード電極を共有化することができる。このため、検出器支持部材8の周方向に配置された3つの放射線検出器5Eを密着することが可能となる。つまり、その周方向における放射線検出器5E間の間隔を完全になくすことが可能となり、その周方向での放射線検出器5E間におけるγ線の検出漏れが著しく低減される。これは、γ線の検出効率を実質的に増加をさせることにつながり、検査時間の短縮をもたらす。
【0091】
実施例1〜3は、放射線検出器が検出器支持部材8(ベッド20が挿入される孔部41)の半径方向に積層配置された検出器ユニットを、X線源17からX線を被検体に照射できるγ線及びX線を検出できる放射線検査装置に適用した構成を有する。しかしながら、その検出器ユニットは、X線を照射しなく被検体内に透過した放射性薬剤に起因して被検体から放出されるγ線だけを検出するPET用の放射線検査装置に適用することもできる。また、その検出器ユニットは、SPECT用の放射線検査装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線検査装置の縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1のIII部の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図1の検出器ユニットの斜視図である。
【図6】図5の検出器ユニットの、検出器支持部材の半径方向における断面図である。
【図7】図1の信号弁別装置の詳細構造図である。
【図8】図1のコンピュータで実行される断層像作成の処理手順を示す説明図である。
【図9】図1の実施例におけるγ線検出の状態を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例2の放射線検査装置に適用される検出器ユニットの斜視図である。
【図11】図10の検出器ユニットの、検出器支持部材の半径方向における断面図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例3の放射線検査装置に適用される検出器ユニットの斜視図である。
【図13】図11の検出器ユニットの、検出器支持部材の半径方向における断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1…放射線検査装置、2…撮像装置、4,4A,4B…検出器ユニット、5,5D,5E…放射線検出器、7,11…コネクタ部、8…検出器支持部材、13…X線源周方向移動装置、14…X線源装置、15…X線源駆動装置、17…X線源、18…被検診者保持装置、20…ベッド、23…検出器支持部、25…信号弁別ユニット、27…信号弁別装置、28…切替スイッチ、32…γ線弁別装置、33…X線信号処理装置、34…同時計数装置、35…断層像作成装置、36…コンピュータ、40…信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を支持するベッドの長手方向に伸び、前記ベッドの回りに配置された検出器支持部材と、前記ベッドの長手方向及び前記ベッドの周りに配置された複数の放射線検出ユニットであって前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられた前記複数の検出器ユニットを含む放射線検出装置と備え、
前記検出器ユニットは、放射線を検出する複数の放射線検出器を有し、ある前記放射線検出器を通った前記放射線を検出する他の前記放射線検出器を設けていることを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
被検体を支持するベッドの長手方向に伸び、前記ベッドの回りに配置された環状の検出器支持部材と、前記ベッドの長手方向及び前記検出器支持部材の周方向に配置された複数の放射線検出ユニットであって前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられた前記複数の検出器ユニットを含む放射線検出装置と備え、
前記検出器ユニットは、放射線を検出する複数の放射線検出器を有し、前記検出器支持部材の半径方向において異なる位置に前記放射線検出器を複数配置したことを特徴とする放射線検査装置。
【請求項3】
前記検出器ユニットは、前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられる検出器支持基板と、前記検出器支持基板に設置された複数の前記ある放射線検出器及び複数の前記他の放射線検出器と、前記検出器支持基板に設けられて前記放射線検出器ごとに接続され、前記放射線検出器から出力された検出信号を伝送する複数の配線とを有する請求項1または請求項2記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記放射線検出器の出力信号を用いて前記被検体の画像を作成する画像作成装置を設けた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項5】
被検体を支持するベッドの長手方向に伸び、前記ベッドの回りに配置された検出器支持部材と、前記ベッドの長手方向及び前記ベッドの周りに配置された複数の放射線検出ユニットであって前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられた前記複数の検出器ユニットを含む放射線検出装置とを備え、
前記検出器ユニットは、γ線を検出する複数の放射線検出器を有し、ある前記放射線検出器を通った前記γ線を検出する他の前記放射線検出器を設け、
前記放射線検出器から出力されたγ線検出信号の信号処理装置を設けたことを特徴とする放射線検査装置。
【請求項6】
前記検出器ユニットは、前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられる検出器支持基板と、前記検出器支持基板に設置された複数の前記ある放射線検出器及び複数の前記他の放射線検出器と、前記検出器支持基板に設けられて前記放射線検出器ごとに接続され、前記放射線検出器から出力されたγ線検出信号を伝送する複数の配線とを有し、
前記信号処理装置は前記配線を伝送された前記γ線検出信号を入力する請求項5記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記信号処理装置からの出力情報を用いて、前記被検体内の放射性薬剤が集積した部位を含む画像を作成する画像作成装置を有する請求項5または請求項6記載の放射線検査装置。
【請求項8】
前記配線は前記検出器支持基板内に設けられている請求項6または請求項7記載の放射線検査装置。
【請求項9】
被検体を支持するベッドの長手方向に伸び、前記ベッドの回りに配置された検出器支持部材と、前記ベッドの回り移動してX線を放出するX線源と、前記ベッドの長手方向及び前記ベッドの周りに配置された複数の放射線検出ユニットであって前記検出器支持部材に着脱自在に取り付けられた前記複数の検出器ユニットを含む放射線検出装置と備え、
前記検出器ユニットは、放射線を検出する複数の放射線検出器を有し、ある前記放射線検出器を通った前記放射線を検出する他の前記放射線検出器を設けており、
少なくとも前記ある放射線検出器は、前記X線の検出信号及びγ線の検出信号の両方を出力することを特徴とする放射線検査装置。
【請求項10】
前記X線源を前記長手方向に移動させるX線源移動装置を備えた請求項9記載の放射線検査装置。
【請求項11】
前記ある放射線検出器と前記他の放射線検出器が直線状に配置されている請求項9または請求項10に記載の放射線検査装置。
【請求項12】
前記γ線検出信号より得られた第1情報及び前記X線検出信号より得られた第2情報を用いて断層像を作成する断層像作成装置を備えた請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項13】
前記X線検出信号及び前記γ線検出信号の両方を出力する第1の前記放射線検出器からの前記γ線検出信号を入力する第1γ線信号処理装置、及び前記X線検出信号を入力するX線信号処理装置を前記第1放射線検出器毎に設け、
前記X線検出信号を出力せず前記γ線検出信号を出力する第2の前記放射線検出器からの前記γ線検出信号を入力する第2γ線信号処理装置を前記第2放射線検出器毎に設け、
各前記第1γ線信号処理装置及び各前記第2γ線信号処理装置のそれぞれの出力信号を入力し、設定時間内に前記γ線を検出した一対の前記放射線検出器のそれぞれの位置情報、及び検出された前記γ線の計数情報の各情報を出力する計数装置を有し、
前記位置情報,前記計数情報及び各前記X線信号処理装置のそれぞれの出力情報を用いて断層像情報を作成する断層像作成装置を備えた請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項14】
前記放射線検出器は半導体放射線検出器である請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の放射線検査装置。
【請求項15】
前記半導体放射線検出器は、少なくとも二面を有する3個以上の半導体素子を有し、異なる前記半導体素子間に交互にアノード電極及びカソード電極を配置した請求項14記載の放射線検査装置。
【請求項16】
前記半導体放射線検出器は偶数の半導体素子の積層構造とし、前記半導体放射線検出器内の隣接する前記半導体素子間に共通のアノード電極及びカソード電極を形成し、隣接する半導体放射線検出器の対向する両面に共通のカソード電極を形成した請求項14記載の放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−145442(P2008−145442A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5170(P2008−5170)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2002−307785(P2002−307785)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】