説明

放射線照射によって抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞毒性が増加した高分子量のフィブロイン、その製造方法及びその使用方法

【課題】本発明は、放射線の照射により分子構造が変形されて分子量が増加され、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能、及び/又は癌細胞に対する細胞毒性が増加したフィブロイン、その製造方法及び前記放射線が照射されたフィブロインを抗酸化能、チロシナーゼ阻害能、及び/又は癌細胞に対する細胞毒性の機能を高める健康食品、美白用化粧品、または、医薬品の素材として使用する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、放射線の照射によって分子構造が変形されて分子量が増加し、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上が増加したフィブロインである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射によって抗酸化能、チロシナーゼ阻害能、又は癌細胞に対する細胞毒性が増加されるフィブロインと、その製造方法、及びその使用方法に関する。より詳細には、放射線照射によって分子構造の変形をもたらして分子量が増加し、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能又は癌細胞に対する細胞毒性が増加されるフィブロインと、このような機能性を有するシルクフィブロインを食品、化粧品又は、医薬品の素材として使用する方法と前記フィブロインを有効成分として含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからシルクは、専ら衣類用の繊維として使用されてきたが、最近、シルク蛋白質に対する生化学及び医学的用途への応用が活発に研究されるにつれて、新しい生体材料(biomaterial)として注目を受けており、シルクフィブロインに対するいろいろな生理活性が報告されてきた。
【0003】
シルクフィブロインを与えたマウスから血中コレステロール値と血糖値が低くなることと、アルコールの吸収が阻害される効果などが明らかになり(非特許文献1)、硫酸基で反応させたフィブロインの場合には、anti−HIV活性を示すことも報告されている(非特許文献2)。
【0004】
しかし、このような多くの研究成果が有り、かつ親環境的なシルク蛋白質であるにも係らず、フィブロインの機能性食品、化粧品素材及び医薬品素材への活用に供する機能性改善に対する研究は未だ全無の状態であった。
【0005】
したがって、フィブロインの実用的な活用と、これを機能性食品や化粧品、医薬品の素材などに適用することのできる、前記のようなフィブロインの機能性を増大させる技術が、シルク産業から要望されている。
【非特許文献1】Luo,J.,K.Chen,Q.Xu,and K.Hirabayashi.1993.Study on foodization of fibroin and its functionality,pp.73−87.In The collection of papers for the second international silk conference,China
【非特許文献2】Gotoh,K.,H.Izumi,T.Kanamoto,Y.Tamada,and H.Nakashima.2000.Sulfated fibroin,a novel sulfated peptide derived from silk,inhibits human immunodeficiency virus replication in vitroo.Biosci.Biotechnol.Biochem.64:1664−1670
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、生理的活性が増加したフィブロインに対して研究する中、フィブロインの溶液に放射線を照射するとき、分子構造に変形を来たし、ラジカル消去能、チロシナーゼ阻害効果、及び/又は癌細胞に対する細胞毒性が増加した高分子量のフィブロインが得られることを確認し、このような知見に基づいて本発明の完成に至った。
【0007】
本発明の第1の目的は、放射線照射を通じて分子構造が変形されることにより生理的活性が増加したフィブロインを提供する。
また、本発明の第2の目的は、前記分子構造が変形されることにより生理的活性が増加されるフィブロインの製造方法を提供する。
本発明の第3の目的は、前記分子構造が変形されることにより生理的活性が増加したフィブロインの使用方法を提供する。
本発明の第4の目的は、前記分子構造が変形されることにより生理的活性が増加したフィブロインを有効成分として含有する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するために、本発明は、放射線の照射によってフィブロインの分子構造が変形されて分子量が増加し、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性が増加したフィブロインを提供する。
【0009】
また、本発明は、フィブロインの放射線吸収線量が、1〜1,000kGyになる範囲内で放射線が照射される工程を包含してなる、分子構造の変形により分子量が増加し、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性が増加されるフィブロインの製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、前記の分子構造が変形されたフィブロインを、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性を増加させる機能性食品の素材、化粧品の素材及び医薬品の素材として使用する方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記の分子構造が変形されたフィブロインを有効成分として含有する抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性を増加させる組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放射線、例えば、ガンマ線などの照射により、非照射区との対比において、分子構造が変形されることによって高分子量になったフィブロインは、ラジカル消去能の増加、チロシナーゼ抑制効果及び/又は癌細胞に対する細胞毒性の増加などの優れた生物学的特性と、美白効果などを有しているため、食品、化粧品及び医薬品の素材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態において使用されるフィブロインは、(カイコ)まゆから得られるが、まゆに炭酸ナトリウム水溶液などを加えてセリシン(シルクになるフィブロインを取り囲む蛋白質)を分離・除去した後、ろ過して得たフィブロイン溶液を透析などの方法によって不純物を除去して使用することができる。さらに、前記不純物が除去されたフィブロイン溶液を凍結乾燥して粉末形態のフィブロインにして使用することもできる。
【0014】
また、本発明の実施形態において使用される前記放射線は、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択される1種以上の放射線を使用することができる。なお、放射線照射の後に得られるフィブロインにおける分子構造の変形とともに分子量の増加する効果の面から見てガンマ線または電子線を使用することが好ましい。
【0015】
前記フィブロインにおける放射線の吸収線量が、1〜1,000kGyの範囲、好ましくは、5〜500kGy、より好ましくは、5〜200kGyになるように照射する。前記放射線の吸収線量が1kGy以上とすることにより、放射線を照射する上述した所期の目的を効果的に達成することができるとともに、1,000kGy以下とすることにより、放射線照射によって物質が分解するなどの問題の発生を防止することができる。
【0016】
前記の放射線照射によって分子構造が変形されたフィブロインに対して、UV(紫外線)吸収スペクトル分析により280nmと300nmにおいて非照射区と対比するとき、UV吸収スペクトル値がそれぞれ105%及び500%以上増加したことを実験例によって確認することができた。
【0017】
前記フィブロインの分子構造の変形は、α−ヘリックスの2次構造の減少であるか、β−sheet、β−turn及びランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加とすることができる。
【0018】
また、前記フィブロインの分子構造の変形が、α−ヘリックスの2次構造の減少及びβ−sheet、β−turnとランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加とすることができる。好ましくは、抗酸化能とチロシナーゼ阻害能、癌細胞に対する細胞毒性などを増加させる効果を極大化させるためには、α−ヘリックスの2次構造の減少及びβ−sheet、β−turnとランダムコイルの2次構造の増加であることが好ましい。
【0019】
Lee等(Lee,S.,Lee,S.,&Song,KB.(2003).Effect of gamma−irradiation on the physicochemical properties of porcine and bovine blood plasma proteins.Food Chem 82;521−6)によれば、溶液相の蛋白質に対して放射線を照射させるとき、発生する酸素ラジカルによって蛋白質の共有結合が容易に分解されて整列された構造が崩れるため、2次と3次構造が変形されるということが報告されている。
【0020】
β−turn構造は、蛋白質のi番目のカルボニル基と、i+3番目のアミン基との間に水素結合をなした4つの残基によって構成されているが、前記β−turnは、球状蛋白質をなす一般的な要素であって、球状蛋白質の表面から容易に見ることができ、これらは、ポリペプチド鎖の方向を反転させることによって折り畳み構造を促進させる。したがって、β−turnは、天然蛋白質の折り畳み構造において重要な要素として作用する。
【0021】
前記放射線照射によって分子構造が変形されたフィブロインの分子量は、5kDa〜2,000kDa、好ましくは、5kDa〜1,000kDa、より好ましくは、10kDa〜1,000kDaである。しかし、前記のように、放射線を照射していない非照射区のフィブロインの分子量が5kDa以下であることを考慮すると、本発明によるフィブロインは放射線の照射によってその分子量がかなり大きく増加している分子構造の変形を確認することができる。
【0022】
放射線照射によって分子構造が変形されたフィブロインによるラジカル消去能は、非照射区に比べて10倍以上にまで増加する。これによって、抗酸化能のような生理活性を向上させることができる。
【0023】
また、放射線照射によって分子構造が変形されたフィブロインによるチロシナーゼ阻害効果は、非照射区に比べて7倍以上にまで増加することによって、ヒト皮膚の美白効果を向上させることができる。
【0024】
即ち、ヒトの皮膚にあるメラニン色素は、UVによる皮膚の損傷を保護する重要なメカニズムを有するが、しみ、そばかす、光線角化症(senile lentigines)、または、過度色素のような非正常の色素形成など望ましくない問題を起すとともに、チロシナーゼは、ヒトの皮膚にメラニンの生合成を起すメカニズムがある。したがって、チロシナーゼ阻害剤などは、肌の美白効果のための化粧品に使用される重要な素材として知られている。
【0025】
放射線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの癌細胞に対する細胞毒性が、非照射区に比べて40倍以上にまで増加するため、癌細胞の成長を抑制する効果を増大させることができる。
【0026】
次いで、上述の(カイコ)まゆ由来のフィブロインにおける放射線の吸収線量が、1〜1,000kGyになる範囲内で放射線を照射する工程を包含してなるシルクフィブロインの製造方法に関して説明する。
【0027】
前述のようなフィブロインを作製するときに使用される原料のシルクフィブロインは、まゆ(繭)から分離された天然のシルクフィブロインであるか、または、合成されたフィブロインであってもよい。本実施形態においては、前記まゆから分離された天然のフィブロインを使用する。まず、まゆを炭酸ナトリウム水溶液などを加えてセリシンを分離除去した後加熱し、さらに、CaCl−HO−エタノールの3成分でなる溶液に溶解させた後、これをろ過して得たフィブロイン溶液を透析などの方法によって不純物を除去する。次いで、前記不純物が除去されたフィブロイン溶液を凍結乾燥して粉末形態のフィブロインにして使用する。
【0028】
また、前記の合成フィブロインは、微生物を利用する生合成法による合成、または、通常のポリペプチド合成法によって得られた合成フィブロインを使用することがことができる。
【0029】
なお、本発明におけるフィブロインの製造工程において、上述のように前記工程から得たフィブロインを凍結乾燥する工程をさらに包含してもよい。前記の凍結乾燥は、通常の方法によって行うことができる。
【0030】
本実施形態のフィブロイン製造方法で使用される前記の放射線は、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択される1種以上を使用することができるが、放射線を照射した後に得られるフィブロインの分子量の増加に対する効果の面からガンマ線、または、電子線を使用することが好ましい。
【0031】
また、前記フィブロイン分子構造の変形は、α−ヘリックスの2次構造の減少、または、β−sheet、β−turn、及びランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加であることを特徴とする。
【0032】
なお、前述のように、前記フィブロインの分子構造の変形が、α−ヘリックスの2次構造の減少及びβ−sheet、β−turnとランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加であるが、好ましくは、抗酸化能とチロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性の増加を極大化させることのできる側面から見るとき、α−ヘリックスの2次構造の減少及びβ−sheet、β−turnとランダムコイルの2次構造の増加とすることが好ましい。
【0033】
また、放射線照射によって分子構造が変形されたフィブロインの分子量が、5kDa〜2,000kDa、好ましくは、5kDa〜1,000kDa、より好ましくは、10kDa〜1,000kDaになることを特徴とする。
【0034】
前記のように分子構造が変形されたフィブロインを、抗酸化能とチロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性を増加させる機能性の有る食品の素材や、化粧品の素材及び医薬品の素材として使用する方法に関して説明する。
【0035】
また、前記の分子構造が変形されたフィブロインを有効成分として含有する抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び/又は癌細胞に対する細胞毒性を増加させる組成物についても下記でより詳細に説明する。
【0036】
前記のような食品の素材、化粧品の素材または医薬品の素材として使用する方法は、まず、食品公典、食品添加物公典、化粧品原料の指定と基準及び試験方法などに関する公定の規程などによって許容される範囲内で、または必要に応じて多様に変形された方法を使用することができる。
【0037】
前記のフィブロインを食品素材として使用することのできる食品類は、例えば、飲料類、麺類、冷凍食品、乳加工製品、肉加工製品、調味食品、生食品類などを挙げることができる。しかし、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、動物に対する飼料としても利用することができる。
【0038】
前記のフィブロインを化粧品の素材として使用することのできる化粧品類は、例えば、ローション類、クリーム類、ゲル剤などを挙げることができる。しかし、必ずこれらに限定されるものではない。
【0039】
前記のフィブロインを医薬品の素材として使用することのできる薬品類は、例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、液剤、注射剤、クリーム剤、軟膏剤などの剤型で使用されることを挙げることができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明による前記分子構造が変形されたフィブロインは、その作用、対象製品(食品、化粧品、医薬品)、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、一般成人(体重60kg当たり)に、一日につき約0.01mg〜100gの範囲で投与することができる。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0041】
前記食品類の組成物、化粧品類の組成物または医薬品類の組成物の製造方法は、特別な制限なしに、前記各分野における公典の基準や諸規程によって許容される通常の製造方法によって製造することができる。
【0042】
次に、本発明をより明確にするために、好適な実施例を例示する。ただし、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0043】
実施例1(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(1))
本実施例で使用されるフィブロインは、まゆから分離させた天然シルクフィブロインである。
先ず、10gのまゆに5%(w/v)濃度の炭酸ナトリウム水溶液500mlを加えて溶解させる。次いで、1時間加熱し、ろ過紙によってろ過して溶解されたセリシンを分離・除去した。その後、熱水を利用して残渣を数回洗浄することによって、残留セリシンと炭酸ナトリウムとを分離・除去した。これによりセリシンと炭酸ナトリウムが除去され、フィブロインのみが残存する(シルク)フィブロインを得た。前記シルクフィブロインは、さらにCaCl−HO−エタノールの3成分でなる溶液を使用して溶解させた。前記溶解されたフィブロイン溶液は、透析膜に入れて蒸留水の中で3日間透析した後、凍結乾燥して粉末形態のシルクフィブロインにして実験の試料にした。
【0044】
前記のようにして得たシルクフィブロイン試料は、韓国原子力研究院の放射線科学研究所(Jeongeup、South Korea)のコバルト−60照射機によって照射した。このとき、線源のサイズは約300kCiであり、線量率は時間当り10kGyであった。
【0045】
前記フィブロイン資料の放射吸収線量に対する確認は、5mm直径のアラニン放射線量計(Bruker Instruments,Rheinstetten,Germany)により、放射線量の測定システムは、国際原子力機関(IAEA)の規格に準じて標準化した後に使用した。
【0046】
前記のようにして作製したシルクフィブロイン粉末試料を、蒸留水に1mg/mlの濃度になるように溶解させた後、Co−60ガンマ線照射施設(IR−79,Nordion International Ltd.,Ontario,Canada)を利用して時間当り10kGyの線量率で5kGyの総吸収線量が得られるように照射して分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0047】
実施例2(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(2))
ガンマ線の総吸収線量が10kGyになるように照射したことの他は、実施例1と同様にして分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0048】
実施例3(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(3))
ガンマ線の総吸収線量が50kGyになるように照射したことの他は、実施例1と同様にして分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0049】
実施例4(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(4))
ガンマ線の総吸収線量が100kGyになるように照射したことの他は、実施例1と同様にして分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0050】
実施例5(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(5))
ガンマ線の総吸収線量が150kGyになるように照射したことの他は、実施例1と同様にして分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0051】
実施例6(ガンマ線の照射によって分子構造が変形されたフィブロインの製造(6))
ガンマ線の総吸収線量が200kGyになるように照射したことの他は、実施例1と同様にして分子構造が変形されたフィブロイン溶液を製造した。
【0052】
実施例7(放射線が照射されたフィブロインを含有する機能性食品の製造)
実施例4において製造した放射線が照射されたフィブロインを包含する機能性食品を下記のように製造した。
【0053】
1.小麦粉食品の製造
小麦粉100重量部に対して放射線が照射されたフィブロイン2.5重量部を添加・混合した後、前記混合物を使用してパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類など健康増進用機能性食品を製造した。
【0054】
2.スープ及び肉汁の製造
スープ及び肉汁100重量部に対して放射線が照射されたフィブロイン2.5重量部をそれぞれ添加して健康増進用スープと肉汁を製造した。
【0055】
3.グラウンドビーフの製造
グラウンドビーフ100重量部に対して放射線が照射されたフィブロイン10重量部を添加して健康増進用グラウンドビーフを製造した。
【0056】
4.乳製品の製造
牛乳100重量部に対して放射線が照射されたフィブロイン7.5重量部を添加し、前記牛乳を使用してバター及びアイスクリーム類など多様な乳製品を製造した。
【0057】
5.健康食(韓国で「禪食」という)の製造
玄米、麦、もちごめ、ハトムギを公知の方法によってアルファ化させて乾燥させた後、粒度60メッシュの粉砕機によって、それぞれ玄米30重量%、ハトムギ15重量%、麦20重量%及びもちごめ35重量%の比率に配合して穀物類の粉末を製造した。
また、黒豆、黒ごま、エゴマも公知の方法によって煮た後、乾燥させたものを配合し、粒度60メッシュの粉砕機によって粉末を製造した。
次いで、放射線が照射されたフィブロインを真空濃縮器によって減圧・濃縮し、噴霧、熱風乾燥機で乾燥させて得た乾燥物を、粒度60メッシュの粉砕機によって粉砕して乾燥粉末を得た。
【0058】
上記のように製造した穀物類、種実類及び放射線が照射されたフィブロインの乾燥粉末を前記穀物類100重量部に対して次の比率で配合して製造した。
種実類(エゴマ7重量部、黒豆8重量部、黒ごま7重量部)
放射線が照射されたフィブロインの乾燥粉末(3重量部)
マンネンタケ(0.5重量部)
ジオウ(地黄)(0.5重量部)
【0059】
6.健康飲料の製造
通常の健康飲料の製造方法によって、下記の成分を配・混合した後、略1時間の間、85℃で攪拌・加熱した後、作製された溶液をろ取して滅菌された2リットル容器に収納した後、シール・滅菌させて健康飲料を製造した。
前記の配合組成比は、比較的嗜好飲料に適合する成分を次の好ましい実施例に従って配合組成することができるが、需要の階層、需要の国、使用用途など、地域的、民族的嗜好度によってその配合の比率を任意に変更して作製することもできる。
放射線が照射されたフィブロイン 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅の実の濃縮液 2g
タウリン 1g
ここに、精製水を加えた全量 900mlにする。
【0060】
7.野菜ジュースの製造
放射線が照射されたフィブロイン5gをトマトまたはニンジンジュース1000mlに加えて健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0061】
8.果物ジュースの製造
放射線が照射されたフィブロイン1gをリンゴまたはブドウジュース1000mlに加えて健康増進用果物ジュースを製造した。
【0062】
9.調理用調味料の製造
調理用調味料100重量部に対して放射線が照射されたフィブロイン45重量部を添加し、前記調理用調味料を使用して機能性調理用調味料を製造した。
【0063】
実施例8(放射線が照射されたフィブロインを含有する化粧品の製造)
実施例4において製造した放射線が照射されたフィブロインを有効成分として含有する美白及び抗酸化用機能性化粧品である、乳化剤型の化粧品及び可溶化剤型の化粧品を下記のように製造した。
【0064】
1.乳化剤型化粧品の製造
下記表1に記載の組成によって乳化剤型の化粧品を製造した。製造方法は下記の通りである。
1)1〜9の原料を混合した混合物を65〜70℃で加熱した。
2)10の原料を前記1)工程での混合物に投入した。
3)11〜13の原料混合物を65〜70℃で加熱、完全に溶解させた。
4)前記3)の工程中、前記2)工程での混合物を徐々に添加して8000rpmで2〜3分間乳化させた。
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記4)工程での混合物に添加して2分間さらに乳化させた。
6)15〜17の原料をそれぞれ秤量した後、前記5)工程での混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
7)前記6)工程での混合物を乳化させた後、脱気過程を経て25〜35℃で冷却させることによって乳化剤型の化粧品を製造した。
【0065】
【表1】

【0066】
2.可溶化剤型の化粧品の製造
下記表2に記載の組成によって可溶化剤型の化粧品を製造した。製造方法は下記の通りである。
1)2〜6の原料を1の精製水に入れてミキサによって混合・溶解させた。
2)8〜11の原料を7のアルコールに入れて完全に溶解させた。
3)前記2)工程での混合物を前記1)工程での混合物に徐々に添加しながら可溶化させた。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例9(放射線が照射されたフィブロインを含有する医薬品の製造)
実施例4において製造した放射線が照射されたフィブロインを有効成分とする薬学的製剤を下記のように製造した。
【0069】
1.散剤の製造
放射線が照射されたフィブロイン 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合、気密包に充填して散剤を製造した。
【0070】
2.錠剤の製造
放射線が照射されたフィブロイン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤製造方法によって打錠して錠剤を製造した。
【0071】
3.カプセル剤の製造
放射線が照射されたフィブロイン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤製造方法によってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0072】
4.丸剤の製造
放射線が照射されたフィブロイン 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸剤当り4gの丸剤を製造した。
【0073】
5.顆粒の製造
放射線が照射されたフィブロイン 150mg
大豆の抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
とうもろこし澱粉 600mg
前記の成分を混合した後、30%のエタノール100mgを添加して60℃で乾燥して顆粒を造成した後、薬包に充填した。
【0074】
実験例1(UVスペクトル分析)
前記実施例1〜実施例6で製造したガンマ線が照射されたシルクフィブロイン溶液を4℃下保存しながらそれぞれ実験に使用した。
ガンマ線の照射によるシルクフィブロインの構造変形を確認するために、前記シルクフィブロイン溶液を2mg/mlの濃度に溶解させた後、ガンマ線を照射して紫外線分光光度計(UV−1601PC,Shimadzu C.,Tokyo,Japan)によって180〜400nm範囲のUV−VISスペクトル分析を行った。その結果を図1に示した。このときの対照群としてはガンマ線非照射区を使用した。
【0075】
UV吸収スペクトルは、蛋白質の表面における芳香族アミノ酸の側鎖の吸光度によって構造的な変形を示す。フェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンのような前記3つのアミノ酸は、芳香族側鎖を有するが、結合環を有する大部分の化合物のような芳香族アミノ酸は、スペクトルの紫外線領域において光を吸収する。
チロシンとトリプトファンは、大部分のUV吸光度が280nm領域であると知られているが、トリプトファンは、フェニルアラニンより100倍程度吸収率が強く、フェニルアラニンは、大部分260nmにおいて測定される。
【0076】
図1を参照すると、ガンマ線が照射されたシルクフィブロインの吸光度(光学濃度)は、線量が増加するほど260nmと280nmで増加されるが、前記UV吸光度の変形は、放射線によって構造的な変形があることを示している。このような構造的な変形は、蛋白質構造の分裂によってトリプトファンとチロシンのような内部のアミノ酸らが外部に露出されるためであって、放射線の量が増加するほど混濁度も330nmで増加されることを確認することができる。
報告された研究によれば、最大限の吸収波長の領域は214nmであり、このような結果は、ペプチド結合らがUV領域においてフィブロインが主に吸収されるグループであることを示し、本実験例1はこのような結果を裏付けると云える。
【0077】
実験例2(円偏光二色性スペクトル分析)
円偏光二色性スペクトル(circular dichroism spectra;以下、CDスペクトルと略記する)は、150−Wキセノンランプ(xenon lamp)が装着されたJasco J−715分光偏光計(spectropolarimeter;Japan Spectroscopic)を利用して測定した。
遠紫外線(far−UV)スペクトルは、190−250nmの領域で測定し、試料(0.2mg/ml)は、pH7.2のPBS溶液状態で分析したが、前記試料は窒素ガスで洗浄し、1mmのキュベットを使用した。
3回の反復によって該当の領域を分析して平均を得て、PBSに対して測定された値を差し引きして計算したが、このときのCDスペクトルの単位は、残余楕円率(residue ellipticity)(degree cm/dmol)で表示した。
CD分光法(CD spectroscopy)を利用して構造不均衡から起因して発生する左回転偏光(left−handed polarized light)と右回転偏光(right−handed polarized light)の吸収差異を測定することができるが、前記CD分光法では、遠紫外線スペクトル領域(190〜250nm)で2次蛋白構造を測定することができる。この波長における発色団(chromophore)は蛋白質結合であり、この結合が定常折り畳み状態、α−ヘリックス、β−sheet、または、ランダムコイル構造に位置するとき、それぞれ独特な模様とサイズのCDスペクトルを示す。
【0078】
208、220nmで示すそれぞれ2つの負ピークは、α−ヘリックスの2次構造形態の蛋白質であり、214nmで示されるピークは、β−sheetの2次構造形態の蛋白質として知られている。
フィブロインは、放射線照射によって2次構造に変形されるが、図2のように、放射線照射量が増加するほど、α−ヘリックスの2次構造は減少する。反面、β−sheet、ランダムコイルは、α−ヘリックスの2次構造の減少によって相対的に増加することを確認することができる。
【0079】
実験例3(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を利用する分子量の分析)
ガンマ線を照射したフィブロインの分子量をゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)−高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を利用して測定した。
HPLCシステムは、Waters Agilent HPLC system(Mo.2690,MA,USA)にPLアクア・ゲル−OHカラム(300×7.5mm,8μm;Polymer Laboratories,Ltd,UK)を使用した。
0.1M硝酸ナトリウムを移動相にして1mL/minの流速で40分間移動させた。GPC用標準物質(Pullulan standard)は、昭和電工製品を実験に使用した。
図3は、互に異なる照射線量下で、照射効果の表現としてシルクフィブロインの分子量の変形を示したものである。
図3を参照すると、照射されていないシルクフィブロインの分子量は、5kDa以下を示し、5kGyと10kGyで照射されたシルクフィブロインの分子量がそれぞれ320と、5765kDaを示している。このような結果は、線量が増加するほど、構造的変形によって分子間の再結合が増加されていることを確認することができる。
【0080】
実験例4(ガンマ線が照射されて分子構造が変形されたシルクフィブロインのラジカル消去能の測定)
前記実施例1〜実施例6で製造したフィブロイン試料の電子供与能の測定は、Blois法に準じてシルクフィブロインのDPPH(2.2−diphenyl−1−picryl−hydrazil)に対する水素供与効果によって測定した。
一定濃度の各試料2mlに、99%エタノールで溶解させた2×10M DPPH溶液を1ml加えて、ボルテックス・ミキシング(vortex mixing)して37℃で30分間反応させた。前記反応液を517nmで吸光度を測定し、電子供与効果は試料添加の前・後の吸光度差異を百分率(%)で示した。
517nmで吸収される特徴を有する安定された遊離基であるDPPHは、シルクフィブロインのラジカル消去能力の研究のために使用されたが、放射線が照射されたシルクフィブロインの抗酸化効果を図4に示した。
図4を参照すると、放射線が照射されたシルクフィブロインのDPPHラジカル消去能力は、同じ濃度で0kGyのものより高く、線量が増加するほど抗酸化能力が増加することを確認することができた。
【0081】
実験例5(ガンマ線が照射されて分子構造が変形されたフィブロインのチロシナーゼ阻害効果の測定)
ガンマ線照射によるシルクフィブロインの美白活性能力を確認するために、前記実施例1〜実施例6によって製造されたフィブロインのチロシナーゼ阻害効果を測定した。
0.175Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)0.5mlに10mM L−DOPA(L−3,4−dihydroxyphenylalanine;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo,USA)を溶解させた基質液0.2mlと、試料溶液0.1mlを混合させた溶液にマッシュルーム・チロシナーゼ(100U/ml,Sigma USA)0.2mlを添加して25℃で15分間反応させた後、生成されたDOPAクロムを吸光度475nmで測定した。チロシナーゼ阻害活性は、試料溶液添加区と無添加区とにおける吸光度減少率を百分率(%)で示した。
図5は、本発明によるフィブロインのチロシナーゼ阻害効果を示すものである。
図5を参照すると、ガンマ線が照射されたシルクフィブロインは、全てが非照射のものよりチロシナーゼ阻害効果が高く、照射線量が増加するほどチロシナーゼ阻害効果も増加することを確認することができる。
【0082】
実験例6(ガンマ線が照射されて分子構造が変形されたシルクフィブロインの癌細胞に対する細胞毒性の増加効果の測定)
ガンマ線照射によるシルクフィブロインの癌細胞に対する細胞毒性の増加能を確認するために、前記実施例1〜実施例6によって製造されたフィブロインの癌細胞に対する細胞毒性の増大効果を測定した。
本実験に使用された癌細胞は、B16BL6(皮膚癌)、AGS(胃癌)、HT−29(結腸癌)、及びRAW264.7(マクロファージ細胞)であり、韓国細胞株銀行(Korea Cell Line Bank)から分譲を受けこれを培養しながら本実験に供した。
【0083】
前記B16BL6とRAW264.7細胞株は、100U/mlペニシリンと100U/mlストレプトマイシン及び10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)が含有されたEMEM及びDMEM培地を使用し、AGSとHT−29は100U/mlペニシリンと100U/mlストレプトマイシン及び10%ウシ胎仔血清が含有されたRPMI1640培地を使用して37℃、5%COインキュベーターで培養した。
シルクフィブロインによる癌細胞と正常細胞の比較評価は、MTT[3−(4,5−dimethylthiazolyl)−2,5−diphenyl−tetrazolium bromide,sigma]assayによって実験した。
それぞれの癌細胞と正常細胞を、96ウェルプレートにウェル当り3×10cells/wellの濃度でそれぞれ分株した。それぞれのシルクフィブロインの試料は、濃度5mg/mlで96ウェルプレートに加えた。
前記プレートを37℃下で24時間培養した後、5mg/ml濃度のMTT試薬をそれぞれのウェルに30μlずつ加えた後、30℃下で2時間培養した後、2,000rpmで3分間遠心分離し、上澄液を除去した。その後、100μlのDMSO(dimethylsulfoxide)を添加し、37℃下で5分間反応させた後、540nmでの吸光度を測定した。
【0084】
放射線が照射されたシルクフィブロインの癌細胞に対する成長抑制効果は、図6〜図8のグラフ図に示されている。本実験で使用した癌細胞は、前記のように、HT−29(結腸癌)、B16BL6(皮膚癌)及びAGS(胃癌)である。
前記癌細胞に対する抗癌効果を測定するために、MTT還元検定法(MTT reduction assay)を利用して放射線を照射していない対照区と比較して癌細胞の成長抑制効果を確認した。
図示のように、放射線の照射線量が増加するほど、HT−29の細胞毒性は、200kGyで39%まで増加し、B16BL6の細胞毒性は、200kGyで48%まで増加した。最後にAGSの細胞毒性は200kGyで87%まで増加した。
【0085】
放射線が照射されたシルクフィブロインと非照射区のシルクフィブロインの細胞毒性を比較してみると、全ての線量で非照射区のシルクフィブロインより細胞毒性が増加されていることを確認することができる。このような結果から放射線の照射によって癌細胞に対する抵抗性が増加することを確認することができた。
実験例6の癌細胞に対する細胞毒性の増加は、放射線照射線量の増加によって増加することが確認されたが、ここで正常細胞に対する細胞毒性を確認する必要があるので、前記RAW264.7細胞株を利用して正常細胞に対する毒性実験を実施した。
【0086】
Anna Chiarini等は、シルクフィブロインがヒト細胞の成長に役立つものと報告している(Anna Chiarini,Paola Petrini,Sabrina Bozzini,Ilaria Dal Pra and Ubaldo Armato(2003)Silk fibroin/poly(carbonate)−urethane as a substrate for cell growth:in vitro interactions with human cells biomaterials, Volume 24,Pages 789−799)。前記の先行研究に基づいて放射線が照射されたシルクフィブロインの正常細胞に対する細胞毒性の効果を実験した結果を図9に示した。
【0087】
この実験の結果、放射線の照射によるシルクフィブロインの正常細胞に対する細胞毒性効果の減少を確認した。
図9を参照すると、照射線量が増加することによって5kGyでは細胞毒性が29%まで減少し、10kGyでは細胞毒性が22%まで減少し、50kGyでの細胞毒性は7%まで減少した。しかし、100kGy照射線量以上からは有意的な増加や減少の差異が無いことを確認することができた。
【0088】
本実験を通じて放射線が照射されたシルクフィブロインは、非照射区と対比してみると、正常細胞に対する毒性は非常に少ないことを確認することができる。
また、図6〜8の実験結果と比較してみると、放射線が照射されたシルクフィブロインの癌細胞に対する毒性は増加するが、正常細胞に対する毒性は減少することを確認することができた。
前記の結果から放射線が照射されたシルクフィブロインは、非照射区と比較すると、より高い抗酸化効果、美白効果及び癌細胞に対する細胞毒性を有していることを確認することができる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者であれば、特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域を外さない範囲内で本発明を多様に修正或は変更させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によるガンマ線照射によって分子構造が変形された高分子量のシルクフィブロインは、ガンマ線の非照射区に比べてラジカル消去能の増加、チロシナーゼ抑制効果、及び/又は癌細胞に対する細胞毒性の増加などのような優れた生物学的特性と美白効果などを有しているため、機能性食品、化粧品、及び医薬品の産業分野において有用な素材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の紫外線吸収スペクトルを確認した結果図である。
【図2】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の遠紫外線CDスペクトルから2次構造を確認した結果図である。
【図3】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の分子量をGPCを利用して測定した結果図である。
【図4】ガンマ線照射によるフィブロインのβグルカンにおけるラジカル消去能の増加を確認した結果図である。
【図5】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質のチロシナーゼ阻害効果の増加を確認した結果図である。
【図6】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の癌細胞に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図であって、結腸癌細胞のHT−29細胞株に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図である。
【図7】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の癌細胞に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図であって、メラノーマ細胞のB16BL6細胞株に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図である。
【図8】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の癌細胞に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図であって、胃癌細胞のAGS細胞株に対する細胞毒性効果の増加を確認した結果図である。
【図9】ガンマ線照射によるフィブロイン蛋白質の正常細胞に対する細胞毒性効果の減少を確認した結果図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射によって分子構造が変形されて分子量が増加し、
抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上が増加したフィブロイン。
【請求項2】
前記放射線が、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択された1種以上である請求項1に記載のフィブロイン。
【請求項3】
前記放射線の吸収線量が、1〜1,000kGyである請求項1又は2に記載のフィブロイン。
【請求項4】
前記分子構造の変形が、α−ヘリックスの2次構造の減少である請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィブロイン。
【請求項5】
前記分子構造の変形が、β−sheet、β−turn及びランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加である請求項請求項1〜4のいずれか1つに記載のフィブロイン。
【請求項6】
前記フィブロインの分子量が、10kDa〜1,000kDaである請求項1〜5のいずれか1つに記載のフィブロイン。
【請求項7】
フィブロインの放射線吸収線量が、1〜1,000kGyになるように放射線を照射する工程を含む、分子構造が変形されて分子量が増加し、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する毒性からなる群から選択される1種以上が増加したフィブロインの製造方法。
【請求項8】
前記放射線が照射されるフィブロインは、まゆ(繭)から分離されるか、または、合成される請求項7に記載のフィブロインの製造方法。
【請求項9】
前記の重合または分離される工程から得られたフィブロインを凍結乾燥する工程をさらに含む請求項7又は8に記載のフィブロインの製造方法。
【請求項10】
前記放射線が、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択された1種以上である請求項7〜9のいずれか1つに記載のフィブロインの製造方法。
【請求項11】
前記分子構造の変形が、α−ヘリックスの2次構造の減少である請求項7〜10のいずれか1つに記載のフィブロインの製造方法。
【請求項12】
前記分子構造の変形が、β−sheet、β−turn及びランダムコイルからなる群から選択される1種以上の2次構造の増加である請求項7〜11のいずれか1つに記載のフィブロインの製造方法。
【請求項13】
前記フィブロインの分子量が、10kDa〜1,000kDaである請求項7〜12のいずれか1つに記載のフィブロインの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィブロインを抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上の機能を向上させる用途の食品の素材として使用する方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィブロインを抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び抗細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上の機能を向上させる用途の化粧品の素材として使用する方法。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィブロインを抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上の機能を向上させる用途の医薬品の素材として使用する方法。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィブロインを有効成分として含有する、抗酸化能、チロシナーゼ阻害能及び癌細胞に対する細胞毒性からなる群から選択された1種以上の機能を向上させる用途の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、食品、化粧品又は医薬品である請求項17に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−280565(P2009−280565A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313041(P2008−313041)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(507272603)韓国原子力研究院 (6)
【Fターム(参考)】