放射線画像撮影システム
【課題】CRカセッテを用いた放射線画像撮影システムにおいてFPDを追加した場合であっても、両者を混在可能とすることができ、かつ、追加あるいは更新にともなう影響範囲を限定的とし、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行えるようにする。
【解決手段】放射線照射装置3と、CRカセッテ9と、放射線画像読取装置2と、コンソール7とを有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置6を導入して、CRカセッテ9および可搬型の放射線画像検出装置6の両方を放射線照射装置2とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、可搬型の放射線画像検出装置6として、放射線照射装置3からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いる。
【解決手段】放射線照射装置3と、CRカセッテ9と、放射線画像読取装置2と、コンソール7とを有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置6を導入して、CRカセッテ9および可搬型の放射線画像検出装置6の両方を放射線照射装置2とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、可搬型の放射線画像検出装置6として、放射線照射装置3からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影システムに関し、可搬型の放射線画像検出装置を用いる放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断の場においては、CRカセッテに内蔵された蛍光体プレートを励起光で走査することにより放射線画像データを読み取る読取装置と、当該読取装置で読み取られた放射線画像データを取得する制御装置(コンソール)とを用いたCR(Computed Radiography)システムが実用化されている(特許文献1参照)。
【0003】
更に、上述したCRカセッテに代わり、基板上に2次元的に配列された放射線検出素子を内蔵し、当該放射線検出素子に照射された放射線量に応じた電気信号を出力することが可能な、放射線画像検出装置としてのFPD(Flat Panel Detector)装置が提案されている。このFPDを用いれば、励起光を照射して放射線画像を読み取る読取装置を必要とせず、直接的に放射線画像のデータを得ることができるので、CRカセッテを用いた場合よりもシステム自体を小型化することが可能となり、また、撮影作業も円滑となる。
【0004】
このようなメリットからCRカセッテで構築された既存のCRシステムに対してFPDへの置き換えを行いたいという要望がある。特に半導体技術の向上により小サイズで軽量化が可能となりCRカセッテと同等のサイズの可搬型で無線通信部を備えたカセッテタイプのFPDカセッテを用いることにより置き換えが可能である。
【0005】
この場合には、CRカセッテで用いていた放射線を照射する放射線照射部、患者がCRカセットを取り付ける撮影台(いわゆるブッキー装置)等の設備をそのまま流用できるために、導入コストを抑えることができるというメリットがある。
【0006】
しかし、既存のCRシステムに対して、一度に全てをFPDのシステムに置き換えることは、導入コストの点から、難しい場合がある。このようなことから、置き換えを行う場合には、既存のCRシステムを使用しつつ、新規のFPDを導入する混在方式での使用が望まれる。混在方式においては、放射線技師等の操作者の混乱をなくすために、新たな制御端末を別個に設置するのではなく、従来のCRシステムで使用している制御端末をそのまま流用することが好ましい。
【0007】
特許文献2においては、異なるタイプ、異なる検出手段のX線撮影装置が混在しても、一の制御装置で制御する放射線画像撮影システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−158820号公報
【特許文献2】特開2001−149358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FPDを用いて撮影を行う際には、放射線照射装置の照射線量を変更するのみならず、照射タイミングとFPDの放射線画像データを取得する、例えばリセット動作等を含む一連の動作タイミングとを連携させる必要がある。タイミングを取るためには、制御端末であらかじめ撮影に用いるFPDを選択しておき、FPD、制御装置、及び放射線照射装置の間の通信リンクを確立させておく必要がある。
【0010】
このようなことからFPDを用いたシステムを導入するためには、FPD単体を導入するだけでは不十分で、制御端末、放射線照射装置、に関しても導入したFPDに対応させて、ハード構成、ソフト構成等の仕様を変更する必要がある。
【0011】
放射線画像撮影システムの機能拡張を図るため、システムの一部の機器の仕様がバージョンアップされた場合あるいは新規構成を導入した場合、その影響は、他の機器に及ぶために、システム全体の仕様を変更する必要が生じ得る。
【0012】
このように、放射線画像撮影システムの機能拡張を図るための一部の設備更新、新規ソフトのインストール、バージョンアップにともなう、デバック評価は複雑且つ大規模化し、かなりの労力及び時間を要するものとなる。更に、大規模な医用システムの場合には、RIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)システムを含む大システムでのシステム更新が必要となる場合がある。
【0013】
本発明は上記問題に鑑み、CRカセッテを用いた放射線画像撮影システムにおいてFPDを追加した場合であっても、両者を混在可能とすることができ、かつ、追加あるいは更新にともなう影響範囲を限定的とし、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置と、
放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、
前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、
撮影オーダ情報を取得し、少なくとも前記放射線画像読取装置に接続され、読み取られた前記放射線画像データを取得し、前記撮影オーダ情報と前記放射線画像データとを対応付けるコンソールと、
を有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置を導入して、前記CRカセッテおよび前記可搬型の放射線画像検出装置の両方を前記放射線照射装置とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、
前記可搬型の放射線画像検出装置として、前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いることを特徴とする放射線画像撮影システムのアップデート方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、後述するRISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。更に、自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されているFPDを用いることが可能となり、FPDを用いた撮影と、CRを用いた撮影とで、放射線技師が撮影実行時の放射線照射タイミングを同一にでき、従来からの患者撮影技法をそのまま維持できるので、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図4】第4の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図5】コンソール7の要部構成を示すブロック図である。
【図6】FPD6の要部構成を示すブロック図である。
【図7】FPD6の斜視図である。
【図8】撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【図9】放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【図10】表示部77に表示した設定画面の例である。
【図11】第5及び第6の実施形態における、撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【図12】図11に示す撮像パネル62の断面図である。
【図13】電流検出手段634で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を示す図である。
【図14】第5の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【図15】第6の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0018】
図1は、第1の実施形態における放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。同図に示すように放射線画像撮影システムは、放射線画像読取装置2、放射線照射装置3、制御BOX4、アクセスポイント5、コンソール7、等からなる。放射線画像読取装置2、放射線照射装置3、アクセスポイント5、撮影台11は撮影室100の内部に設けられている。なお本実施形態における制御BOX4が「管理手段」、コンソール7が「制御端末」として機能する。
【0019】
6は放射線画像検出装置(以下、単にFPD6という)であり基板上に2次元的に配列された放射線検出素子を内蔵し放射線画像データを直接取得することができる。9はFPD6とは異なる種類の装置としてのCRカセッテである。CRカセッテ9に放射線を照射した撮影後に放射線画像読取装置2に装填すると、CRカセッテ9に内蔵された蛍光体プレートが励起光により走査され放射線画像データの読み取りが行われる。
【0020】
無線LAN(Local Area Network)によりFPD6等の装置と無線通信を行うためのアクセスポイント5と、放射線画像検出装置6により生成された放射線画像データに演算処理や表示処理を行うコンソール7(制御端末)とがネットワークN1を通じて接続されて構成されている。ネットワークN1は、当該システム専用の通信回線であってもよいが、システム構成の自由度が低くなってしまう等の理由のため、イーサネット(登録商標)等の既存の回線である方が好ましい。
【0021】
コンソール7、放射線照射装置3、及び制御BOX4とは、ネットワークN2を通じて接続されて構成されている。本実施形態においては、ネットワークN2は当該システム専用の通信回線であり、コンソール7を介して、またはコンソール7がプロトコル変換することにより間接、直接的にネットワークN1の装置と通信することができる。本実施形態の構成とすることにより、CRカセッテを用いたネットワークN1を用いる既存のシステムに対して、ネットワークN2の通信回線を追加することにより、可搬型のFPDを混在して用いるシステムとすることができる。
【0022】
なお、当該システムにおいては図示を照射しているが、患者診断情報や会計情報を一元管理するHISや放射線診療の情報を管理するRISとネットワークN1を介して接続されている。
【0023】
アクセスポイント5は、放射線照射装置3を備えた撮影室の所定領域内でFPD6とコンソール7とが無線通信する際に、これらの通信を中継する機能をもつ。なお、無線通信としては無線LAN(例えば、IEEE802.11a/b/g準拠の通信方式)により行う例について説明するが、これに限られず、電波(空間波)を用いるものの他に、赤外線や可視光線等(レーザー等)を用いた光無線通信(例えば、IrDA)、音波又は超音波を用いた音響通信により無線通信するようにしてもよい。
【0024】
[放射線照射装置3]
放射線照射装置3は、撮影台11に横たわっている被写体である患者12に対して放射線を照射するようになっており、撮影台11の下方には、FPD6又はCRカセッテ9を装着する装着口11aが設けられている。
【0025】
放射線照射装置3は、フィラメント32、フィラメント32に高圧を印加する高圧電源31、回転陽極33、操作部34、操作ボタン35からなる。回転陽極33はロータあるいはターゲットとも称されるものであり、重金属からなり、不図示の駆動モータにより所定の回転数で回転される。フィラメント32に高圧電源31により高電圧、例えば20kv〜150kvを印加することにより電子線を発生させ、電子線を加速して回転陽極33に衝突させることによりX線を発生させる。
【0026】
操作部34ではX線の照射範囲、照射するX線量等の設定を行う。なお、この設定は撮影オーダ情報に含まれる部位情報等に応じて自動的に設定されるように構成しても良い。CRカセッテ9等による撮影では放射線照射装置3と撮影媒体との同期がいらない標準モードを実行する。標準モードにおいては、操作ボタン35を放射線技師等の操作者が押し下げることにより、撮影台11上の被検者12に対してX線の照射が開始される。このとき操作ボタン35を押し下げたことにより発生した信号により回転陽極33の回転が始まり、所定の回転数に到達し定常回転となった後に、フィラメント32に高電圧を印加してX線の照射を開始する。なお操作ボタンを2段回押しできるようにして1回目の半押しでは回転陽極33の回転を開始し、続く2回目の全押しによりフィラメント32に高電圧を印加してX線の照射を開始するようにしてもよい。
【0027】
FPD6を使用する場合には、同期が必要なので標準モードではなく、FPD使用モードを実行する必要がある。当該FPD使用モードにおいては撮影時に放射線照射装置3から放射線を照射するタイミングと、当該FPD6の放射線画像データを取得するタイミングとを制御する必要がある。すなわち、放射線の照射前に、FPD6のリセットを完了し、撮影データ蓄積可能状態とし、照射終了後に撮影データ読取開始させる必要がある。以下、当該制御を単に「同期」という、詳細は後述する。
【0028】
なお、放射線照射装置の照射条件等はCRカセッテ9を用いた撮影時においては、撮影に使用するCRカセッテ9の感度特性等に適正化して行うことが好ましい。本実施形態においては、CRカセッテ9による撮影時において、コンソール7への操作者への入力指示によりCRカセッテ9を識別ID等で特定しおき、撮影に使用するCRカセッテ9での照射条件等のデータを、ネットワークN2を経由して操作部34に送信するようにしてもよい。
【0029】
またコンソール7への入力指示によりCRカセッテ9あるいはFPD6のいずれかを用いた撮影を行うかの選択を行うが、前者の場合には、使用しないネットワークN2はoffしておき、後者の場合にはネットワークN1をoffするような構成としてもよい。
【0030】
図2乃至図4に基づいて他の実施形態における放射線画像撮影システムについて説明する。図2乃至図4は、第2乃至第4の実施形態における放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。これらの実施形態においては図1に示した実施形態と同一構成は同一符号を付すことにより説明に代える。また同図においては各放射線照射装置3の構成、及びそれぞれに対応する撮影台11の記述は省略している。
【0031】
第1の実施形態においては、一の制御BOX4が、それぞれ一つずつの放射線照射装置3とコンソール7と接続されている例であったが、図2に示す第2の実施形態においては、一の制御BOX4が複数の放射線照射装置3と接続されており、これら複数の放射線照射装置3を制御可能である。また制御BOX4は、複数のコンソール7と接続されている。制御BOX4を介すことにより、一方のコンソール7により撮影室100a、100bの何れの内部にある、放射線照射装置3あるいはFPD6を操作することが可能である。
【0032】
なお、ここでは図示してないが、第2の放射線画像撮影システムは、患者診断情報や会計情報を一元管理するHISや放射線診療の情報を管理するRISとネットワークN1を介して接続されている。
【0033】
図3に示す第3の実施形態においては、制御BOX4が直接ネットワークN1に接続されており、複数のコンソール7と直接通信を行うことができる。
【0034】
図4に示す第4の実施形態においては、各撮影室100にそれぞれ制御BOX4を配置させており、また撮影室100a、100b、100cの各撮影室でコンソール7を共有している。
【0035】
[コンソール7]
図5は、コンソール7の要部構成を示すブロック図である。コンソール7は、図5に示すように、制御部74、RAM(Random Access Memory)75、ROM(Read Only Memory)76、表示部77、入力操作部78、通信部79、記憶部70等を備えて構成されており、各部はバス71により接続されている。
【0036】
表示部77は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成され、制御部74から送られる表示信号の指示に従って、撮影オーダ、患者リスト、各種のメッセージや画像等、各種画面を表示するものである。
【0037】
入力操作部78は、例えば、キーボードやマウス等から構成されており、キーボードで押下操作されたキーの押下信号やマウスによる操作信号を入力信号として制御部74に対して出力するものである。なお、入力操作部78は、前記表示部77の表示画面を覆う透明なシートパネルに、指又は専用のスタイラスペンで触れることにより入力される位置情報を入力信号として制御部74に出力する、いわゆる、タッチパネルにより構成されていてもよい。
【0038】
特に、本実施形態に係る放射線画像撮影システムにおいては、入力操作部78は、放射線撮影を行う患者情報や撮影情報等の撮影オーダ情報の入力及び、当該撮影オーダ情報と撮影した放射線画像データとの対応付けを行う際にFPD6のカセッテID等を表示し、更にその際に対応付け確認画面指示を入力するようにしてもよい。ここでカセッテID(識別IDともいう)とは、FPD6を識別するために各FPD6に付されるユニークな識別情報である。
【0039】
また、可搬型のFPD6では、どの撮影室に当該識別IDのFPD6が存在するかが判断できない場合がある。このようなことを考慮して「位置検出」を行い、その結果を表示部77に表示するようにしてもよい。
【0040】
「位置検出」の方法としては、コンソール7から当該FPD6への通信要求を全てのFPD6に向けて発信する。具体的には「一斉呼出(ポーリングともいう)」として、全ての撮影室100の全てのアクセスポイント5を経由して無線通信による通信要求を行い、その返信の通信データに付加されている経由したアクセスポイント5のIPアドレス等の経路情報により、呼出を行ったFPD6の位置検出を行う。
【0041】
[FPD6]
図6乃至図8に基づいて放射線画像検出装置としてのFPD6について説明する。図6はFPD6の要部構成を示すブロック図であり、図7はFPD6の斜視図である。図8は、撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【0042】
図6に示すように、FPD6の制御系は、制御部64、RAM65、ROM66、撮像パネル62、記憶部60、電源部67、無線通信部69等を備え、各部はバス61により接続されている。
【0043】
制御部64は制御手段として機能し、例えば、CPU等から構成され、ROM66に記憶されている制御プログラムを読み出してRAM65内に形成されたワークエリアに展開し、当該制御プログラムに従ってFPD6の各部を制御する。ROM66は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、制御部64で実行される制御プログラム、各種プログラム及び、FPD6のカセッテID等を記憶する。RAM65は、制御部64により実行制御される各種処理において、ROM66から読み出された制御部64で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0044】
記憶部60は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリやRAMから構成され、撮像パネル62に蓄積された電気信号が読み取られることにより取得された、複数回分の撮影に相当する放射線画像データを記憶可能となっている。
【0045】
無線通信部69は、IEEE802.11規格に準拠した無線LANにより、アクセスポイント5を介して、コンソール7との間で各種情報の無線通信を行うものである。
【0046】
バッテリとしての電源部67は、FPD6を構成する複数の駆動部(制御部64、撮像パネル62、記憶部60など)に電力を供給する。この電源部67は、例えば予備電池と充電自在な充電池とで構成されており、コネクタ605を図示しないクレードルに接続することにより、充電池を充電することが可能である。
【0047】
図7に示すように、FPD6は、内部を保護する筐体601を備えており、カセッテとして可搬可能に構成されている。筐体601の内部には、照射された放射線を電気信号に変換する撮像パネル62が層を成して形成されている。この撮像パネル62における放射線の照射面側には、入射された放射線の強度に応じて発光を行う発光層63が設けられている。
【0048】
発光層63は、一般にシンチレータ層と呼ばれるものであり、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力する。
【0049】
この発光層の放射線が照射される側の面と反対側の面には、発光層から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う光電変換部がマトリクス状に配列された撮像パネル62が形成されている。なお、1つの光電変換部から出力される信号が、放射線画像データを構成する最小単位となる1画素に相当する信号となる。また撮像パネル62は、蓄積された電気エネルギーを読み出す走査駆動回路609と、蓄積された電気エネルギーを画像信号として出力する信号選択回路608とを有する。
【0050】
ここで、図8に基づいて撮像パネル62の回路構成について説明する。同図に示すとおり撮像パネル62は光を電気信号に変換する複数の受光素子(検出素子ともいう)620が2次元配置されており、1つの受光素子(フォトダーオード)620は放射線画像の1画素に対応する。これらの画素は例えば200〜400dpi(dots per inch)の密度で、被検体の撮影領域の大きさにわたって配置されている。
【0051】
また、受光素子620間には走査線(横ライン)623と信号線(縦ライン)624とが配設されており、同図では両者が直交するように格子状に配設されている。ここで、走査線623と信号線624とで囲まれた1つの区画を1画素とすると、撮像パネル62の画素数は、例えば、一方向にm個、もう一方向にn個配置してなる場合にはm×n個の画素数より構成されている。そして、撮像パネル62には、m×n個の画素数分に対応するフォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)とスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)が配置され、画素間には、走査線623−1〜623−m及び信号線624−1〜624−nが直交するように配設されることになる。
【0052】
例えば、1つ目の受光素子内では、フォトダイオード621−(1,1)にシリコン積層構造あるいは有機半導体で構成されたスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)が接続する。トランジスタ622−(1,1)は、例えば、電界効果トランジスタが使用される。トランジスタ622−(1,1)のドレイン電極あるいはソース電極が受光素子620−(1,1)に接続されるとともに、ゲート電極は走査線623−1と接続される。ドレイン電極が受光素子620−(1,1)と接続する時はソース電極が信号線624−1と接続し、ソース電極が受光素子620−(1,1)に接続する時はドレイン電極が信号線624−1と接続する。また、他の画素における受光素子620、フォトダイオード621及びトランジスタ622も同様に走査線623や信号線624と接続する。
【0053】
また、撮像パネル62は、図8に示す様に信号線624−1〜624−nにドレイン電極を接続した初期化トランジスタ632−1〜632−nを設けるものもあり、この初期化トランジスタ632−1〜632−nではソース電極を接地し、ゲート電極をリセット線631に接続する。
【0054】
撮像パネル62では、これらの回路を介して放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。すなわち、制御部64が、走査線623−1〜623−m各々に、走査駆動回路609を介して読出信号RSを供給して画像走査を行い、走査線毎のデジタル画像信号を取り込み、放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。このことについて、以下詳述する。
【0055】
撮像パネル62の走査線623−1〜623−mとリセット線631は、図8に示す様に走査駆動回路609と接続する。走査駆動回路609から走査線623−1〜623−mのうち、任意の走査線623−p(pは1〜mのいずれかの値)に読出信号RSが供給されると、この走査線623−pに接続したトランジスタ622−(p,1)〜622−(p,n)がオンの状態になり、フォトダイオード621−(p,1)〜621−(p,n)に蓄積した電荷を信号線624−1〜624−n上に出力する。
【0056】
信号線624−1〜624−nは、信号選択回路608の信号変換器671−1〜671−nに接続し、信号変換器671−1〜671−nでは信号線624−1〜624−n上に出力された電荷量に応じた電圧信号SV−1〜SV−nを出力し、信号変換器671−1〜671−nで出力した電圧信号SV−1〜SV−nをレジスタ672に供給する。
【0057】
レジスタ672は、信号変換器671より供給された電圧信号を順次選択し、選択された電圧信号は、アナログ/デジタル(A/D)変換器273により、12ビット乃至14ビットの1つのデジタル画像信号に変換され、このデジタル画像信号は制御部に供給されて、放射線画像を画素単位でデジタル画像信号に変換する。
【0058】
また、撮像パネル62の初期化を行う場合は、最初に、走査駆動回路609からリセット信号RTがリセット線631に供給されて初期化トランジスタ632−1〜632−nをオンの状態にした後、走査線623−1〜623−mに読出信号RSを供給してトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)をオンの状態にする。そして、フォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)に蓄えられていた電荷を初期化トランジスタ632−1〜632−nを介して放出することにより撮像パネル62の初期化を行う。
【0059】
[撮影時の放射線照射装置3とFPD6との同期]
FPD6においては、放射線の照射がされていない場合にも、フォトダイオード621に微量の電荷が蓄積する、いわゆる暗電流が発生する。この暗電流現象によりフォトダイオード621に蓄積された電荷は、放射線画像データを得る上ではノイズとなり画像に悪影響を及ぼす。当該暗電流の影響を極力少なくするためには、撮影直前に蓄積した電荷を掃き出すことが有効である。患者12に対するX線被爆量を極力抑えるためと、暗電流による影響の抑制とを両立させるためには、撮影時において、放射線照射装置3とFPD6とを同期を取る必要がある。ここでいう同期とは、(1)放射線照射装置3からの放射線照射直前にFPD6のフォトダイオード621の電荷をリセット(電荷リセット状態)させておき、(2)放射線照射開始に合わせてフォトダイオード621を蓄積可能状態にし、(3)放射線照射停止(照射終了)に合わせてフォトダイオード621に蓄積した電荷の読取開始(電荷読出状態)を行うものである。
【0060】
ここで、「電荷リセット状態」、「電荷読出状態」、「蓄積可能状態」の各状態について説明する。「電荷リセット状態」とは前述の初期化を所定の間隔で連続して実行している状態のことであり、「電荷読み出し状態」とは、各フォトダイオード621に蓄積した電荷を順次信号線に出力して、レジスタ672を介してデジタル画像信号に変換する状態のことであり、「蓄積可能状態」とは、これら初期化あるいは読み出しをせずに放射線の照射にともない変換された電荷を各フォトダイオード621に蓄積しつづける状態、いわゆる露光を行っている状態のことをいう。なおこれらの状態の制御は、制御BOX4の管理の元で、制御部64により実行される。
【0061】
[制御フロー]
図9は、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。当該制御フローにより、FPD6と放射線照射装置の同期を取ることができる。以下説明する。
【0062】
ステップS11では、撮影に用いる装置が、放射線照射装置3と同期が必要なFPDであるか、あるいは同期は不要なCRカセッテであるかを判断する。操作者によるFPDを用いる指示が、「操作者による放射線画像検出装置(FPD)を用いる旨の撮影指示」に相当する。
【0063】
FPDであれば(ステップS11:FPD)、ステップS12、ステップS13で使用するFPD6及び放射線照射装置3を特定する。特定は操作者によるコンソール7への入力指示により行われる。
【0064】
特定手順の例について図10に基づいて説明する。図10は、表示部77に表示した設定画面の例である。当該設定画面により患者、撮影部位、撮影方向等の情報からなる撮影オーダの撮影を、CRカセッテあるいはFPDのうちから後者のFPD(放射線画像検出装置)を用いる旨の撮影指示と、撮影を行う放射線照射装置3の特定を行う。更に放射線画像検出装置としてFPD6を使用する場合にはその識別IDの選択もあわせて行う。
【0065】
表示欄h22には、撮影オーダが表示されている。その撮影オーダに対応する装置の種類(カセッテの種類)、識別IDの選択は、選択釦h25を操作することにより選択することができる。また選択釦h26を操作することにより、撮影室を選択することができる。同図に示す例では、撮影オーダIDが「001」と「002」の撮影に関しては、識別IDが「01」のFPD6を用いて、撮影室2で撮影する旨の選択がなされている。そして決定釦h23を押し下げることにより、当該選択が決定される。
【0066】
図10に示す表示部77の設定画面の例においては、選択釦h25の操作及び決定釦h23の押し下げにより、「操作者による放射線画像検出装置(FPD)を用いる旨の撮影指示」及び「撮影に使用する放射線画像検出装置の(識別IDの)選択指示の入力」を行う。
【0067】
また選択釦h25の操作及び決定ボタンh23の押し下げにより、「撮影に使用する放射線照射装置の選択指示」を行う。図2に示す例においては、撮影室2(撮影室100b)には一の放射線照射装置3があるだけなので、撮影室を特定することによりその撮影室にある放射線照射装置3を使用する旨の特定を行っている。他の例として一の撮影室に複数の放射線照射装置3が存在するような場合には、放射線照射装置の識別番号等を表示してその特定ができるようにしてもよい。
【0068】
図10に示す設定画面により、FPD6の識別IDの入力(ステップS12)と、使用する放射線照射装置3の入力(ステップS13)された場合には、コンソール7は、FPD使用モードを実行すると判断し、ステップS14で制御BOX4に、ステップS12、ステップS13で取得した管理対象を通知する。
【0069】
なお、制御BOX4を複数設けた実施形態(例えば図4)においては、対象の放射線照射装置3から対応する制御BOX4の特定を行い、当該制御BOX4に対してステップS14の通知を行うことになる。
【0070】
更に、ステップS12で使用するFPD6が特定されたことにより、当該FPD6の「位置検出」を前述のとおり行うようにしてもよい。そして(1)検出された撮影室に対応する放射線照射装置3を使用する放射線照射装置3とする制御を行っても良く、あるいは(2)使用する放射線照射装置3とは異なる撮影室に存在した場合には警告表示を行うように制御してもよい。前者(1)によりステップS13の操作を省略することができ、後者(2)により間違ったFPD6を使用することにより撮影ミスを防ぐことができる。
【0071】
ステップS20では、制御BOX4は、ステップS14の通知に基づいて、対象の放射線照射装置3(撮影室2に設置)と対象の識別IDのFPD6に対して管理下とする旨の通知を行う。
【0072】
通知を受けたFPD6は、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。
【0073】
通知を受けた放射線照射装置3では、管理状態に移行する(ステップS211)。管理状態下では、ステップS22で操作ボタン35が操作者により押し下げられても、直ぐに放射線照射を開始せずに、支配している制御BOX4に、撮影開始通知を行う(ステップS23)。なおこの際には、回転陽極33(図1参照)の回転を行う準備状態としてもよい。
【0074】
ステップS24では制御BOX4は、ステップS23の通知に基づいて、FPD6に撮影要求を行う。FPD6では、準備OKであればその旨の通知を行う(ステップS25)。
【0075】
ステップS26では、制御BOX4は撮影開始指示を、放射線照射装置3及びFPD6に通知する。当該通知に基づいて、放射線照射装置3は放射線照射を開始し(ステップS270)、FPD6では「蓄積可能状態」を所定時間経過してから、「電荷読み出し状態」に移行して、放射線画像データの取得を行う。なお放射線照射の停止に関しても、FPD6側で所定量の露光量が得られたと判断した時点で通知を行い、当該通知を受けた制御BOX4が放射線照射装置3に停止信号を通知するようにしてもよい。
【0076】
ステップS28では、FPD6は取得した放射線画像データを、ステップS14で制御BOX4に管理対象を通知したコンソール7へ送信する。コンソール7では、必要に応じて、受信した放射線画像データに対してゲイン補正、オフセット補正、階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等の演算処理を行う。そして演算処理後の放射線画像データを表示部77に表示させる(ステップS29)。
【0077】
なお、図9に示す制御フローは、図2乃至図4に示す構成例のように主に、複数のFPD6と、複数の放射線照射装置3を備える放射線画像システムにおいて行う制御フローについて説明したが、図1に示す構成のように単一のFPD6、あるいは単位の放射線照射装置3で構成されるシステムに適用してもよい。この場合には、複数のFPD6及び複数の放射線照射装置3から撮影を行う装置を選択する制御は省略することができる。
【0078】
本実施形態によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、RISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。
【0079】
以下に示す第5及び第6の実施形態は、前述の実施形態とは異なり、画像データ生成の為の放射線照射装置とのインターフェースを必要とせず、FPD自身が放射線照射開始や、画像データ蓄積及び読取開始を自己制御する方式のFPDを採用するシステムである。
【0080】
[電流検出手段を備えたFPD]
次に、図11から図14に基づいて、第5及び第6の実施形態に係る放射線画像撮影システムについて説明する。
【0081】
図11は、第5及び第6の実施形態における、FPD6の撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。前述の図8と共通する構成に関しては同符号を付すことにより説明に代える。図12は、図11に示す撮像パネル62の断面図である。
【0082】
図11、図12に示す実施形態におけるFPD6においては、電流検出手段634を備えており、放射線照射装置3による放射線の照射開始及びその照射停止をその電流検出手段634により検出する。
【0083】
図11、図12に示す撮像パネル62は、基板4の受光側の面4a上に、AlやCr等からなるTFT622(符号81、82、83、84a、84b、8d、8gから構成される)のゲート電極8gが走査線623と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、受光素子620(符号72から79で構成される)の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線624と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0084】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT622が形成されている。
【0085】
また、受光素子620の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT622のソース電極8sに接続されている。
【0086】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0087】
放射線の照射を受けた発光層63で変換された電磁波が図中上方から照射されると、i層76で電子正孔対が発生する。受光素子620は、このようにして、発光層63からの電磁波を電荷に変換するようになっている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。
【0088】
p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。以上のようにして受光素子620が形成されている。
【0089】
また、受光素子620の第2電極78の上面には、第2電極78を介して受光素子620に逆バイアス電圧を印加するためのバイアス線629が接続されている。なお、受光素子620の第2電極78やバイアス線629、TFT622側に延出された第1電極74、TFT622の第1パッシベーション層83等、すなわち受光素子620とTFT622の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0090】
本実施形態では、図11に示すように、それぞれ列状に配置された複数の受光素子620に1本のバイアス線629が接続されており、各バイアス線629はそれぞれ信号線624に直交するように配設されている。また、各バイアス線629は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線630に結束されている。バイアス線629や結線630は電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0091】
撮像パネル62の各受光素子620は、その電極の一端がそれぞれバイアス線629に接続されており、各バイアス線629は1本の結線630に結束されている。結線630は電流検出手段634を介して電源67に接続されている。電源67は、各バイアス線629を介して各受光素子620に逆バイアス電圧を印加するようになっている。
【0092】
増幅回路603の出力側端子には、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling:以下CDSという)回路605が接続されている。ここで、相関二重サンプリング回路605は、電荷−電圧変換回路のコンデンサのリセット後の第1の電圧値と、撮影後(照射後)に読み出した第2の電圧値の差分をとることによりコンデンサのリセット時の雑音を除去(低減)する回路である。次に制御部64及び電流検出手段634により放射線の照射開始及び照射停止を検知する手順について説明する。
【0093】
図11に示した実施形態においては受光素子620の第2電極78に、バイアス線629を介して逆バイアス電圧である負の電圧が印加されると、受光素子620内に電位勾配が生じる。この状態で、放射線照射装置3等の放射線源から放射線が照射され、放射線の照射を受けた発光層63により放射線から変換された電磁波が受光素子620のi層(変換層)76に入射すると、i層76内で電子正孔対が発生する。
【0094】
そして、発生した電子正孔対のうち、電子は電位勾配に従って高電位である第1電極74側に移動するが、TFT622のゲートが閉じているため、電子は第1電極74やi層76内の第1電極74近傍に蓄積する。受光素子620のi層76に電磁波の光子の数に比例して電子正孔対が発生するため、受光素子620内には、入射した電磁波の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0095】
一方、発生した電子正孔対のうち、正孔は電位勾配に従って低電位である第2電極78側に移動し、第2電極78を通ってバイアス線629に流れ出る。図11に示すように、この受光素子620から流れ出てバイアス線629を流れる正孔が電流として電流検出手段634で検出される。
【0096】
このバイアス線629を流れる正孔も、受光素子620のi層76に入射した電磁波の光子の数に比例して発生した電子正孔対の分だけ発生するため、入射した電磁波の量に応じて受光素子620内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線629内を流れるようになる。つまり各バイアス線629を流れる電流は結線630に集められ、結線630中を電流検出手段634に向かって流れる。
【0097】
以上の受光素子620における電荷の発生原理に基づいた場合、放射線または電磁波が受光素子620のi層76に入射しない放射線照射の前段階では、理想的にはバイアス線629や結線630内には電流は流れないが、実際には受光素子620で暗電流が発生し、電流検出手段634で微量の電流が検出される。
【0098】
図13は、電流検出手段634で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を示す図である。前述したように、第5及び第6の実施形態では、電流検出手段634は結線630を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線または電磁波が受光素子620のi層76に入射されない放射線照射の前段階においても、図13における時刻taに示されるように、電流検出手段634から制御部64に微量ではあるが0ではない電圧値Vaが入力される。
【0099】
そして、放射線源からの放射線の照射が開始されると、各受光素子620内で電子正孔対が発生し、バイアス線629や結線630を通じて正孔が電流検出手段634に運ばれる。そのため、図13における時刻tbに示されるように、電流検出手段634から出力される電圧値Vが増加する。そこで、本実施形態では、制御部64は、電流検出手段634から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線の照射開始を検出するようになっている。
【0100】
電圧値Vの増加による放射線の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時刻tcに放射線照射が開始されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時刻tdに放射線照射が開始されたとして検出するように構成することも可能である。
【0101】
また、放射線源からの放射線の照射が終了すると、今度は、各受光素子620内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線629に正孔が供給されなくなる。そのため、図13における時刻teに示されるように、電流検出手段634から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、本実施形態では、制御部64は、電流検出手段634から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線の照射終了を検出するようになっている。
【0102】
電圧値Vの減少による放射線の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時刻tfに放射線照射が終了されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時刻tgに放射線照射が終了されたとして検出するように構成することも可能である。
【0103】
次に図14に基づいて第5の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する。同図においては、図9に示した制御フローと共通する制御に関しては、同符号を付すことにより説明に代える。第5の実施形態及び後述の第6の実施形態においては、FPD6は自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。このことから、制御BOX4は、撮影時に放射線照射装置3とFPD6との同期を取る必要がない。
【0104】
図14のステップS201では、制御BOX4はステップS14の通知に基づいて、対象のFPD6にリセット指示としてのリセット信号を送信する。当該リセット信号を受信したFPDでは、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。本実施形態においてはリセット信号の送信を行わなくても、撮影は可能であるが、暗電流によるノイズの影響を除去するためには、リセット信号の送信によりそれまでに蓄積された電荷のリセットを行うことが好ましい。
【0105】
またステップS202において制御BOX4は、対象の放射線対象の放射線照射装置3を管理下とする。通知を受けた放射線照射装置3では、管理状態に移行する(ステップS211)。
【0106】
放射線照射装置3のステップS22、S23、S26は図9に示した制御フローと同一なので説明は省略する。ステップS26の撮影開始指示の通知に基づいて、放射線照射装置3は所定の時間、所定の放射線強度で放射線照射を行う(ステップS270)。なお所定時間、所定放射線強度は、前述のように操作部34で行ってもよく、撮影オーダ情報に含まれる部位情報等に応じて制御BOX4で換算テーブルを用いて使用するFPD6の感度に応じて自動的に設定されるように構成しても良い。
【0107】
ステップS272ではFPD6は、制御部64が電流検出手段634により検出されたバイアス線629を流れる電流の増加および減少に基づいて放射線の照射の開始および終了を検出する。そして制御部64はFPD6を、放射線の照射開始の検知により「蓄積可能状態」にし、照射終了の検知により「電荷読み出し状態」にする。ステップS28では、以降の制御は図9と同一なので説明は省略する。
【0108】
次に図15に基づいて第6の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する。第6の実施形態においてもFPD6は自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。第5の実施形態とFPD6へのリセット信号の送信を制御端末として機能するコンソール7により行っている点で相違する。
【0109】
図15に示すように、ステップS15においてコンソール7は、対象のFPD6にリセット信号を送信する。FPD6では、当該リセット信号を受信したFPDでは、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。以降の制御は図14に示した制御フローと同一であり説明は省略する。
【0110】
第5及び第6の実施形態によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、RISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。更に、自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されているFPDを用いることが可能となり、FPDを用いた撮影と、CRを用いた撮影とで、放射線技師が撮影実行時の放射線照射タイミングを同一にでき、従来からの患者撮影技法をそのまま維持できるので、好ましい。
【符号の説明】
【0111】
2 放射線画像読取装置
3 放射線照射装置
35 操作ボタン
6 FPD(放射線画像検出装置)
7 コンソール
9 CRカセッテ
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影システムに関し、可搬型の放射線画像検出装置を用いる放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断の場においては、CRカセッテに内蔵された蛍光体プレートを励起光で走査することにより放射線画像データを読み取る読取装置と、当該読取装置で読み取られた放射線画像データを取得する制御装置(コンソール)とを用いたCR(Computed Radiography)システムが実用化されている(特許文献1参照)。
【0003】
更に、上述したCRカセッテに代わり、基板上に2次元的に配列された放射線検出素子を内蔵し、当該放射線検出素子に照射された放射線量に応じた電気信号を出力することが可能な、放射線画像検出装置としてのFPD(Flat Panel Detector)装置が提案されている。このFPDを用いれば、励起光を照射して放射線画像を読み取る読取装置を必要とせず、直接的に放射線画像のデータを得ることができるので、CRカセッテを用いた場合よりもシステム自体を小型化することが可能となり、また、撮影作業も円滑となる。
【0004】
このようなメリットからCRカセッテで構築された既存のCRシステムに対してFPDへの置き換えを行いたいという要望がある。特に半導体技術の向上により小サイズで軽量化が可能となりCRカセッテと同等のサイズの可搬型で無線通信部を備えたカセッテタイプのFPDカセッテを用いることにより置き換えが可能である。
【0005】
この場合には、CRカセッテで用いていた放射線を照射する放射線照射部、患者がCRカセットを取り付ける撮影台(いわゆるブッキー装置)等の設備をそのまま流用できるために、導入コストを抑えることができるというメリットがある。
【0006】
しかし、既存のCRシステムに対して、一度に全てをFPDのシステムに置き換えることは、導入コストの点から、難しい場合がある。このようなことから、置き換えを行う場合には、既存のCRシステムを使用しつつ、新規のFPDを導入する混在方式での使用が望まれる。混在方式においては、放射線技師等の操作者の混乱をなくすために、新たな制御端末を別個に設置するのではなく、従来のCRシステムで使用している制御端末をそのまま流用することが好ましい。
【0007】
特許文献2においては、異なるタイプ、異なる検出手段のX線撮影装置が混在しても、一の制御装置で制御する放射線画像撮影システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−158820号公報
【特許文献2】特開2001−149358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FPDを用いて撮影を行う際には、放射線照射装置の照射線量を変更するのみならず、照射タイミングとFPDの放射線画像データを取得する、例えばリセット動作等を含む一連の動作タイミングとを連携させる必要がある。タイミングを取るためには、制御端末であらかじめ撮影に用いるFPDを選択しておき、FPD、制御装置、及び放射線照射装置の間の通信リンクを確立させておく必要がある。
【0010】
このようなことからFPDを用いたシステムを導入するためには、FPD単体を導入するだけでは不十分で、制御端末、放射線照射装置、に関しても導入したFPDに対応させて、ハード構成、ソフト構成等の仕様を変更する必要がある。
【0011】
放射線画像撮影システムの機能拡張を図るため、システムの一部の機器の仕様がバージョンアップされた場合あるいは新規構成を導入した場合、その影響は、他の機器に及ぶために、システム全体の仕様を変更する必要が生じ得る。
【0012】
このように、放射線画像撮影システムの機能拡張を図るための一部の設備更新、新規ソフトのインストール、バージョンアップにともなう、デバック評価は複雑且つ大規模化し、かなりの労力及び時間を要するものとなる。更に、大規模な医用システムの場合には、RIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)システムを含む大システムでのシステム更新が必要となる場合がある。
【0013】
本発明は上記問題に鑑み、CRカセッテを用いた放射線画像撮影システムにおいてFPDを追加した場合であっても、両者を混在可能とすることができ、かつ、追加あるいは更新にともなう影響範囲を限定的とし、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置と、
放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、
前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、
撮影オーダ情報を取得し、少なくとも前記放射線画像読取装置に接続され、読み取られた前記放射線画像データを取得し、前記撮影オーダ情報と前記放射線画像データとを対応付けるコンソールと、
を有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置を導入して、前記CRカセッテおよび前記可搬型の放射線画像検出装置の両方を前記放射線照射装置とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、
前記可搬型の放射線画像検出装置として、前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いることを特徴とする放射線画像撮影システムのアップデート方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、後述するRISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。更に、自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されているFPDを用いることが可能となり、FPDを用いた撮影と、CRを用いた撮影とで、放射線技師が撮影実行時の放射線照射タイミングを同一にでき、従来からの患者撮影技法をそのまま維持できるので、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図4】第4の実施形態における、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図5】コンソール7の要部構成を示すブロック図である。
【図6】FPD6の要部構成を示すブロック図である。
【図7】FPD6の斜視図である。
【図8】撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【図9】放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【図10】表示部77に表示した設定画面の例である。
【図11】第5及び第6の実施形態における、撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【図12】図11に示す撮像パネル62の断面図である。
【図13】電流検出手段634で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を示す図である。
【図14】第5の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【図15】第6の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0018】
図1は、第1の実施形態における放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。同図に示すように放射線画像撮影システムは、放射線画像読取装置2、放射線照射装置3、制御BOX4、アクセスポイント5、コンソール7、等からなる。放射線画像読取装置2、放射線照射装置3、アクセスポイント5、撮影台11は撮影室100の内部に設けられている。なお本実施形態における制御BOX4が「管理手段」、コンソール7が「制御端末」として機能する。
【0019】
6は放射線画像検出装置(以下、単にFPD6という)であり基板上に2次元的に配列された放射線検出素子を内蔵し放射線画像データを直接取得することができる。9はFPD6とは異なる種類の装置としてのCRカセッテである。CRカセッテ9に放射線を照射した撮影後に放射線画像読取装置2に装填すると、CRカセッテ9に内蔵された蛍光体プレートが励起光により走査され放射線画像データの読み取りが行われる。
【0020】
無線LAN(Local Area Network)によりFPD6等の装置と無線通信を行うためのアクセスポイント5と、放射線画像検出装置6により生成された放射線画像データに演算処理や表示処理を行うコンソール7(制御端末)とがネットワークN1を通じて接続されて構成されている。ネットワークN1は、当該システム専用の通信回線であってもよいが、システム構成の自由度が低くなってしまう等の理由のため、イーサネット(登録商標)等の既存の回線である方が好ましい。
【0021】
コンソール7、放射線照射装置3、及び制御BOX4とは、ネットワークN2を通じて接続されて構成されている。本実施形態においては、ネットワークN2は当該システム専用の通信回線であり、コンソール7を介して、またはコンソール7がプロトコル変換することにより間接、直接的にネットワークN1の装置と通信することができる。本実施形態の構成とすることにより、CRカセッテを用いたネットワークN1を用いる既存のシステムに対して、ネットワークN2の通信回線を追加することにより、可搬型のFPDを混在して用いるシステムとすることができる。
【0022】
なお、当該システムにおいては図示を照射しているが、患者診断情報や会計情報を一元管理するHISや放射線診療の情報を管理するRISとネットワークN1を介して接続されている。
【0023】
アクセスポイント5は、放射線照射装置3を備えた撮影室の所定領域内でFPD6とコンソール7とが無線通信する際に、これらの通信を中継する機能をもつ。なお、無線通信としては無線LAN(例えば、IEEE802.11a/b/g準拠の通信方式)により行う例について説明するが、これに限られず、電波(空間波)を用いるものの他に、赤外線や可視光線等(レーザー等)を用いた光無線通信(例えば、IrDA)、音波又は超音波を用いた音響通信により無線通信するようにしてもよい。
【0024】
[放射線照射装置3]
放射線照射装置3は、撮影台11に横たわっている被写体である患者12に対して放射線を照射するようになっており、撮影台11の下方には、FPD6又はCRカセッテ9を装着する装着口11aが設けられている。
【0025】
放射線照射装置3は、フィラメント32、フィラメント32に高圧を印加する高圧電源31、回転陽極33、操作部34、操作ボタン35からなる。回転陽極33はロータあるいはターゲットとも称されるものであり、重金属からなり、不図示の駆動モータにより所定の回転数で回転される。フィラメント32に高圧電源31により高電圧、例えば20kv〜150kvを印加することにより電子線を発生させ、電子線を加速して回転陽極33に衝突させることによりX線を発生させる。
【0026】
操作部34ではX線の照射範囲、照射するX線量等の設定を行う。なお、この設定は撮影オーダ情報に含まれる部位情報等に応じて自動的に設定されるように構成しても良い。CRカセッテ9等による撮影では放射線照射装置3と撮影媒体との同期がいらない標準モードを実行する。標準モードにおいては、操作ボタン35を放射線技師等の操作者が押し下げることにより、撮影台11上の被検者12に対してX線の照射が開始される。このとき操作ボタン35を押し下げたことにより発生した信号により回転陽極33の回転が始まり、所定の回転数に到達し定常回転となった後に、フィラメント32に高電圧を印加してX線の照射を開始する。なお操作ボタンを2段回押しできるようにして1回目の半押しでは回転陽極33の回転を開始し、続く2回目の全押しによりフィラメント32に高電圧を印加してX線の照射を開始するようにしてもよい。
【0027】
FPD6を使用する場合には、同期が必要なので標準モードではなく、FPD使用モードを実行する必要がある。当該FPD使用モードにおいては撮影時に放射線照射装置3から放射線を照射するタイミングと、当該FPD6の放射線画像データを取得するタイミングとを制御する必要がある。すなわち、放射線の照射前に、FPD6のリセットを完了し、撮影データ蓄積可能状態とし、照射終了後に撮影データ読取開始させる必要がある。以下、当該制御を単に「同期」という、詳細は後述する。
【0028】
なお、放射線照射装置の照射条件等はCRカセッテ9を用いた撮影時においては、撮影に使用するCRカセッテ9の感度特性等に適正化して行うことが好ましい。本実施形態においては、CRカセッテ9による撮影時において、コンソール7への操作者への入力指示によりCRカセッテ9を識別ID等で特定しおき、撮影に使用するCRカセッテ9での照射条件等のデータを、ネットワークN2を経由して操作部34に送信するようにしてもよい。
【0029】
またコンソール7への入力指示によりCRカセッテ9あるいはFPD6のいずれかを用いた撮影を行うかの選択を行うが、前者の場合には、使用しないネットワークN2はoffしておき、後者の場合にはネットワークN1をoffするような構成としてもよい。
【0030】
図2乃至図4に基づいて他の実施形態における放射線画像撮影システムについて説明する。図2乃至図4は、第2乃至第4の実施形態における放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。これらの実施形態においては図1に示した実施形態と同一構成は同一符号を付すことにより説明に代える。また同図においては各放射線照射装置3の構成、及びそれぞれに対応する撮影台11の記述は省略している。
【0031】
第1の実施形態においては、一の制御BOX4が、それぞれ一つずつの放射線照射装置3とコンソール7と接続されている例であったが、図2に示す第2の実施形態においては、一の制御BOX4が複数の放射線照射装置3と接続されており、これら複数の放射線照射装置3を制御可能である。また制御BOX4は、複数のコンソール7と接続されている。制御BOX4を介すことにより、一方のコンソール7により撮影室100a、100bの何れの内部にある、放射線照射装置3あるいはFPD6を操作することが可能である。
【0032】
なお、ここでは図示してないが、第2の放射線画像撮影システムは、患者診断情報や会計情報を一元管理するHISや放射線診療の情報を管理するRISとネットワークN1を介して接続されている。
【0033】
図3に示す第3の実施形態においては、制御BOX4が直接ネットワークN1に接続されており、複数のコンソール7と直接通信を行うことができる。
【0034】
図4に示す第4の実施形態においては、各撮影室100にそれぞれ制御BOX4を配置させており、また撮影室100a、100b、100cの各撮影室でコンソール7を共有している。
【0035】
[コンソール7]
図5は、コンソール7の要部構成を示すブロック図である。コンソール7は、図5に示すように、制御部74、RAM(Random Access Memory)75、ROM(Read Only Memory)76、表示部77、入力操作部78、通信部79、記憶部70等を備えて構成されており、各部はバス71により接続されている。
【0036】
表示部77は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成され、制御部74から送られる表示信号の指示に従って、撮影オーダ、患者リスト、各種のメッセージや画像等、各種画面を表示するものである。
【0037】
入力操作部78は、例えば、キーボードやマウス等から構成されており、キーボードで押下操作されたキーの押下信号やマウスによる操作信号を入力信号として制御部74に対して出力するものである。なお、入力操作部78は、前記表示部77の表示画面を覆う透明なシートパネルに、指又は専用のスタイラスペンで触れることにより入力される位置情報を入力信号として制御部74に出力する、いわゆる、タッチパネルにより構成されていてもよい。
【0038】
特に、本実施形態に係る放射線画像撮影システムにおいては、入力操作部78は、放射線撮影を行う患者情報や撮影情報等の撮影オーダ情報の入力及び、当該撮影オーダ情報と撮影した放射線画像データとの対応付けを行う際にFPD6のカセッテID等を表示し、更にその際に対応付け確認画面指示を入力するようにしてもよい。ここでカセッテID(識別IDともいう)とは、FPD6を識別するために各FPD6に付されるユニークな識別情報である。
【0039】
また、可搬型のFPD6では、どの撮影室に当該識別IDのFPD6が存在するかが判断できない場合がある。このようなことを考慮して「位置検出」を行い、その結果を表示部77に表示するようにしてもよい。
【0040】
「位置検出」の方法としては、コンソール7から当該FPD6への通信要求を全てのFPD6に向けて発信する。具体的には「一斉呼出(ポーリングともいう)」として、全ての撮影室100の全てのアクセスポイント5を経由して無線通信による通信要求を行い、その返信の通信データに付加されている経由したアクセスポイント5のIPアドレス等の経路情報により、呼出を行ったFPD6の位置検出を行う。
【0041】
[FPD6]
図6乃至図8に基づいて放射線画像検出装置としてのFPD6について説明する。図6はFPD6の要部構成を示すブロック図であり、図7はFPD6の斜視図である。図8は、撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【0042】
図6に示すように、FPD6の制御系は、制御部64、RAM65、ROM66、撮像パネル62、記憶部60、電源部67、無線通信部69等を備え、各部はバス61により接続されている。
【0043】
制御部64は制御手段として機能し、例えば、CPU等から構成され、ROM66に記憶されている制御プログラムを読み出してRAM65内に形成されたワークエリアに展開し、当該制御プログラムに従ってFPD6の各部を制御する。ROM66は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、制御部64で実行される制御プログラム、各種プログラム及び、FPD6のカセッテID等を記憶する。RAM65は、制御部64により実行制御される各種処理において、ROM66から読み出された制御部64で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0044】
記憶部60は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリやRAMから構成され、撮像パネル62に蓄積された電気信号が読み取られることにより取得された、複数回分の撮影に相当する放射線画像データを記憶可能となっている。
【0045】
無線通信部69は、IEEE802.11規格に準拠した無線LANにより、アクセスポイント5を介して、コンソール7との間で各種情報の無線通信を行うものである。
【0046】
バッテリとしての電源部67は、FPD6を構成する複数の駆動部(制御部64、撮像パネル62、記憶部60など)に電力を供給する。この電源部67は、例えば予備電池と充電自在な充電池とで構成されており、コネクタ605を図示しないクレードルに接続することにより、充電池を充電することが可能である。
【0047】
図7に示すように、FPD6は、内部を保護する筐体601を備えており、カセッテとして可搬可能に構成されている。筐体601の内部には、照射された放射線を電気信号に変換する撮像パネル62が層を成して形成されている。この撮像パネル62における放射線の照射面側には、入射された放射線の強度に応じて発光を行う発光層63が設けられている。
【0048】
発光層63は、一般にシンチレータ層と呼ばれるものであり、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力する。
【0049】
この発光層の放射線が照射される側の面と反対側の面には、発光層から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う光電変換部がマトリクス状に配列された撮像パネル62が形成されている。なお、1つの光電変換部から出力される信号が、放射線画像データを構成する最小単位となる1画素に相当する信号となる。また撮像パネル62は、蓄積された電気エネルギーを読み出す走査駆動回路609と、蓄積された電気エネルギーを画像信号として出力する信号選択回路608とを有する。
【0050】
ここで、図8に基づいて撮像パネル62の回路構成について説明する。同図に示すとおり撮像パネル62は光を電気信号に変換する複数の受光素子(検出素子ともいう)620が2次元配置されており、1つの受光素子(フォトダーオード)620は放射線画像の1画素に対応する。これらの画素は例えば200〜400dpi(dots per inch)の密度で、被検体の撮影領域の大きさにわたって配置されている。
【0051】
また、受光素子620間には走査線(横ライン)623と信号線(縦ライン)624とが配設されており、同図では両者が直交するように格子状に配設されている。ここで、走査線623と信号線624とで囲まれた1つの区画を1画素とすると、撮像パネル62の画素数は、例えば、一方向にm個、もう一方向にn個配置してなる場合にはm×n個の画素数より構成されている。そして、撮像パネル62には、m×n個の画素数分に対応するフォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)とスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)が配置され、画素間には、走査線623−1〜623−m及び信号線624−1〜624−nが直交するように配設されることになる。
【0052】
例えば、1つ目の受光素子内では、フォトダイオード621−(1,1)にシリコン積層構造あるいは有機半導体で構成されたスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)が接続する。トランジスタ622−(1,1)は、例えば、電界効果トランジスタが使用される。トランジスタ622−(1,1)のドレイン電極あるいはソース電極が受光素子620−(1,1)に接続されるとともに、ゲート電極は走査線623−1と接続される。ドレイン電極が受光素子620−(1,1)と接続する時はソース電極が信号線624−1と接続し、ソース電極が受光素子620−(1,1)に接続する時はドレイン電極が信号線624−1と接続する。また、他の画素における受光素子620、フォトダイオード621及びトランジスタ622も同様に走査線623や信号線624と接続する。
【0053】
また、撮像パネル62は、図8に示す様に信号線624−1〜624−nにドレイン電極を接続した初期化トランジスタ632−1〜632−nを設けるものもあり、この初期化トランジスタ632−1〜632−nではソース電極を接地し、ゲート電極をリセット線631に接続する。
【0054】
撮像パネル62では、これらの回路を介して放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。すなわち、制御部64が、走査線623−1〜623−m各々に、走査駆動回路609を介して読出信号RSを供給して画像走査を行い、走査線毎のデジタル画像信号を取り込み、放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。このことについて、以下詳述する。
【0055】
撮像パネル62の走査線623−1〜623−mとリセット線631は、図8に示す様に走査駆動回路609と接続する。走査駆動回路609から走査線623−1〜623−mのうち、任意の走査線623−p(pは1〜mのいずれかの値)に読出信号RSが供給されると、この走査線623−pに接続したトランジスタ622−(p,1)〜622−(p,n)がオンの状態になり、フォトダイオード621−(p,1)〜621−(p,n)に蓄積した電荷を信号線624−1〜624−n上に出力する。
【0056】
信号線624−1〜624−nは、信号選択回路608の信号変換器671−1〜671−nに接続し、信号変換器671−1〜671−nでは信号線624−1〜624−n上に出力された電荷量に応じた電圧信号SV−1〜SV−nを出力し、信号変換器671−1〜671−nで出力した電圧信号SV−1〜SV−nをレジスタ672に供給する。
【0057】
レジスタ672は、信号変換器671より供給された電圧信号を順次選択し、選択された電圧信号は、アナログ/デジタル(A/D)変換器273により、12ビット乃至14ビットの1つのデジタル画像信号に変換され、このデジタル画像信号は制御部に供給されて、放射線画像を画素単位でデジタル画像信号に変換する。
【0058】
また、撮像パネル62の初期化を行う場合は、最初に、走査駆動回路609からリセット信号RTがリセット線631に供給されて初期化トランジスタ632−1〜632−nをオンの状態にした後、走査線623−1〜623−mに読出信号RSを供給してトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)をオンの状態にする。そして、フォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)に蓄えられていた電荷を初期化トランジスタ632−1〜632−nを介して放出することにより撮像パネル62の初期化を行う。
【0059】
[撮影時の放射線照射装置3とFPD6との同期]
FPD6においては、放射線の照射がされていない場合にも、フォトダイオード621に微量の電荷が蓄積する、いわゆる暗電流が発生する。この暗電流現象によりフォトダイオード621に蓄積された電荷は、放射線画像データを得る上ではノイズとなり画像に悪影響を及ぼす。当該暗電流の影響を極力少なくするためには、撮影直前に蓄積した電荷を掃き出すことが有効である。患者12に対するX線被爆量を極力抑えるためと、暗電流による影響の抑制とを両立させるためには、撮影時において、放射線照射装置3とFPD6とを同期を取る必要がある。ここでいう同期とは、(1)放射線照射装置3からの放射線照射直前にFPD6のフォトダイオード621の電荷をリセット(電荷リセット状態)させておき、(2)放射線照射開始に合わせてフォトダイオード621を蓄積可能状態にし、(3)放射線照射停止(照射終了)に合わせてフォトダイオード621に蓄積した電荷の読取開始(電荷読出状態)を行うものである。
【0060】
ここで、「電荷リセット状態」、「電荷読出状態」、「蓄積可能状態」の各状態について説明する。「電荷リセット状態」とは前述の初期化を所定の間隔で連続して実行している状態のことであり、「電荷読み出し状態」とは、各フォトダイオード621に蓄積した電荷を順次信号線に出力して、レジスタ672を介してデジタル画像信号に変換する状態のことであり、「蓄積可能状態」とは、これら初期化あるいは読み出しをせずに放射線の照射にともない変換された電荷を各フォトダイオード621に蓄積しつづける状態、いわゆる露光を行っている状態のことをいう。なおこれらの状態の制御は、制御BOX4の管理の元で、制御部64により実行される。
【0061】
[制御フロー]
図9は、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する図である。当該制御フローにより、FPD6と放射線照射装置の同期を取ることができる。以下説明する。
【0062】
ステップS11では、撮影に用いる装置が、放射線照射装置3と同期が必要なFPDであるか、あるいは同期は不要なCRカセッテであるかを判断する。操作者によるFPDを用いる指示が、「操作者による放射線画像検出装置(FPD)を用いる旨の撮影指示」に相当する。
【0063】
FPDであれば(ステップS11:FPD)、ステップS12、ステップS13で使用するFPD6及び放射線照射装置3を特定する。特定は操作者によるコンソール7への入力指示により行われる。
【0064】
特定手順の例について図10に基づいて説明する。図10は、表示部77に表示した設定画面の例である。当該設定画面により患者、撮影部位、撮影方向等の情報からなる撮影オーダの撮影を、CRカセッテあるいはFPDのうちから後者のFPD(放射線画像検出装置)を用いる旨の撮影指示と、撮影を行う放射線照射装置3の特定を行う。更に放射線画像検出装置としてFPD6を使用する場合にはその識別IDの選択もあわせて行う。
【0065】
表示欄h22には、撮影オーダが表示されている。その撮影オーダに対応する装置の種類(カセッテの種類)、識別IDの選択は、選択釦h25を操作することにより選択することができる。また選択釦h26を操作することにより、撮影室を選択することができる。同図に示す例では、撮影オーダIDが「001」と「002」の撮影に関しては、識別IDが「01」のFPD6を用いて、撮影室2で撮影する旨の選択がなされている。そして決定釦h23を押し下げることにより、当該選択が決定される。
【0066】
図10に示す表示部77の設定画面の例においては、選択釦h25の操作及び決定釦h23の押し下げにより、「操作者による放射線画像検出装置(FPD)を用いる旨の撮影指示」及び「撮影に使用する放射線画像検出装置の(識別IDの)選択指示の入力」を行う。
【0067】
また選択釦h25の操作及び決定ボタンh23の押し下げにより、「撮影に使用する放射線照射装置の選択指示」を行う。図2に示す例においては、撮影室2(撮影室100b)には一の放射線照射装置3があるだけなので、撮影室を特定することによりその撮影室にある放射線照射装置3を使用する旨の特定を行っている。他の例として一の撮影室に複数の放射線照射装置3が存在するような場合には、放射線照射装置の識別番号等を表示してその特定ができるようにしてもよい。
【0068】
図10に示す設定画面により、FPD6の識別IDの入力(ステップS12)と、使用する放射線照射装置3の入力(ステップS13)された場合には、コンソール7は、FPD使用モードを実行すると判断し、ステップS14で制御BOX4に、ステップS12、ステップS13で取得した管理対象を通知する。
【0069】
なお、制御BOX4を複数設けた実施形態(例えば図4)においては、対象の放射線照射装置3から対応する制御BOX4の特定を行い、当該制御BOX4に対してステップS14の通知を行うことになる。
【0070】
更に、ステップS12で使用するFPD6が特定されたことにより、当該FPD6の「位置検出」を前述のとおり行うようにしてもよい。そして(1)検出された撮影室に対応する放射線照射装置3を使用する放射線照射装置3とする制御を行っても良く、あるいは(2)使用する放射線照射装置3とは異なる撮影室に存在した場合には警告表示を行うように制御してもよい。前者(1)によりステップS13の操作を省略することができ、後者(2)により間違ったFPD6を使用することにより撮影ミスを防ぐことができる。
【0071】
ステップS20では、制御BOX4は、ステップS14の通知に基づいて、対象の放射線照射装置3(撮影室2に設置)と対象の識別IDのFPD6に対して管理下とする旨の通知を行う。
【0072】
通知を受けたFPD6は、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。
【0073】
通知を受けた放射線照射装置3では、管理状態に移行する(ステップS211)。管理状態下では、ステップS22で操作ボタン35が操作者により押し下げられても、直ぐに放射線照射を開始せずに、支配している制御BOX4に、撮影開始通知を行う(ステップS23)。なおこの際には、回転陽極33(図1参照)の回転を行う準備状態としてもよい。
【0074】
ステップS24では制御BOX4は、ステップS23の通知に基づいて、FPD6に撮影要求を行う。FPD6では、準備OKであればその旨の通知を行う(ステップS25)。
【0075】
ステップS26では、制御BOX4は撮影開始指示を、放射線照射装置3及びFPD6に通知する。当該通知に基づいて、放射線照射装置3は放射線照射を開始し(ステップS270)、FPD6では「蓄積可能状態」を所定時間経過してから、「電荷読み出し状態」に移行して、放射線画像データの取得を行う。なお放射線照射の停止に関しても、FPD6側で所定量の露光量が得られたと判断した時点で通知を行い、当該通知を受けた制御BOX4が放射線照射装置3に停止信号を通知するようにしてもよい。
【0076】
ステップS28では、FPD6は取得した放射線画像データを、ステップS14で制御BOX4に管理対象を通知したコンソール7へ送信する。コンソール7では、必要に応じて、受信した放射線画像データに対してゲイン補正、オフセット補正、階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等の演算処理を行う。そして演算処理後の放射線画像データを表示部77に表示させる(ステップS29)。
【0077】
なお、図9に示す制御フローは、図2乃至図4に示す構成例のように主に、複数のFPD6と、複数の放射線照射装置3を備える放射線画像システムにおいて行う制御フローについて説明したが、図1に示す構成のように単一のFPD6、あるいは単位の放射線照射装置3で構成されるシステムに適用してもよい。この場合には、複数のFPD6及び複数の放射線照射装置3から撮影を行う装置を選択する制御は省略することができる。
【0078】
本実施形態によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、RISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。
【0079】
以下に示す第5及び第6の実施形態は、前述の実施形態とは異なり、画像データ生成の為の放射線照射装置とのインターフェースを必要とせず、FPD自身が放射線照射開始や、画像データ蓄積及び読取開始を自己制御する方式のFPDを採用するシステムである。
【0080】
[電流検出手段を備えたFPD]
次に、図11から図14に基づいて、第5及び第6の実施形態に係る放射線画像撮影システムについて説明する。
【0081】
図11は、第5及び第6の実施形態における、FPD6の撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。前述の図8と共通する構成に関しては同符号を付すことにより説明に代える。図12は、図11に示す撮像パネル62の断面図である。
【0082】
図11、図12に示す実施形態におけるFPD6においては、電流検出手段634を備えており、放射線照射装置3による放射線の照射開始及びその照射停止をその電流検出手段634により検出する。
【0083】
図11、図12に示す撮像パネル62は、基板4の受光側の面4a上に、AlやCr等からなるTFT622(符号81、82、83、84a、84b、8d、8gから構成される)のゲート電極8gが走査線623と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、受光素子620(符号72から79で構成される)の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線624と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0084】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT622が形成されている。
【0085】
また、受光素子620の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT622のソース電極8sに接続されている。
【0086】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0087】
放射線の照射を受けた発光層63で変換された電磁波が図中上方から照射されると、i層76で電子正孔対が発生する。受光素子620は、このようにして、発光層63からの電磁波を電荷に変換するようになっている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。
【0088】
p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。以上のようにして受光素子620が形成されている。
【0089】
また、受光素子620の第2電極78の上面には、第2電極78を介して受光素子620に逆バイアス電圧を印加するためのバイアス線629が接続されている。なお、受光素子620の第2電極78やバイアス線629、TFT622側に延出された第1電極74、TFT622の第1パッシベーション層83等、すなわち受光素子620とTFT622の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0090】
本実施形態では、図11に示すように、それぞれ列状に配置された複数の受光素子620に1本のバイアス線629が接続されており、各バイアス線629はそれぞれ信号線624に直交するように配設されている。また、各バイアス線629は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線630に結束されている。バイアス線629や結線630は電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0091】
撮像パネル62の各受光素子620は、その電極の一端がそれぞれバイアス線629に接続されており、各バイアス線629は1本の結線630に結束されている。結線630は電流検出手段634を介して電源67に接続されている。電源67は、各バイアス線629を介して各受光素子620に逆バイアス電圧を印加するようになっている。
【0092】
増幅回路603の出力側端子には、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling:以下CDSという)回路605が接続されている。ここで、相関二重サンプリング回路605は、電荷−電圧変換回路のコンデンサのリセット後の第1の電圧値と、撮影後(照射後)に読み出した第2の電圧値の差分をとることによりコンデンサのリセット時の雑音を除去(低減)する回路である。次に制御部64及び電流検出手段634により放射線の照射開始及び照射停止を検知する手順について説明する。
【0093】
図11に示した実施形態においては受光素子620の第2電極78に、バイアス線629を介して逆バイアス電圧である負の電圧が印加されると、受光素子620内に電位勾配が生じる。この状態で、放射線照射装置3等の放射線源から放射線が照射され、放射線の照射を受けた発光層63により放射線から変換された電磁波が受光素子620のi層(変換層)76に入射すると、i層76内で電子正孔対が発生する。
【0094】
そして、発生した電子正孔対のうち、電子は電位勾配に従って高電位である第1電極74側に移動するが、TFT622のゲートが閉じているため、電子は第1電極74やi層76内の第1電極74近傍に蓄積する。受光素子620のi層76に電磁波の光子の数に比例して電子正孔対が発生するため、受光素子620内には、入射した電磁波の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0095】
一方、発生した電子正孔対のうち、正孔は電位勾配に従って低電位である第2電極78側に移動し、第2電極78を通ってバイアス線629に流れ出る。図11に示すように、この受光素子620から流れ出てバイアス線629を流れる正孔が電流として電流検出手段634で検出される。
【0096】
このバイアス線629を流れる正孔も、受光素子620のi層76に入射した電磁波の光子の数に比例して発生した電子正孔対の分だけ発生するため、入射した電磁波の量に応じて受光素子620内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線629内を流れるようになる。つまり各バイアス線629を流れる電流は結線630に集められ、結線630中を電流検出手段634に向かって流れる。
【0097】
以上の受光素子620における電荷の発生原理に基づいた場合、放射線または電磁波が受光素子620のi層76に入射しない放射線照射の前段階では、理想的にはバイアス線629や結線630内には電流は流れないが、実際には受光素子620で暗電流が発生し、電流検出手段634で微量の電流が検出される。
【0098】
図13は、電流検出手段634で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を示す図である。前述したように、第5及び第6の実施形態では、電流検出手段634は結線630を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線または電磁波が受光素子620のi層76に入射されない放射線照射の前段階においても、図13における時刻taに示されるように、電流検出手段634から制御部64に微量ではあるが0ではない電圧値Vaが入力される。
【0099】
そして、放射線源からの放射線の照射が開始されると、各受光素子620内で電子正孔対が発生し、バイアス線629や結線630を通じて正孔が電流検出手段634に運ばれる。そのため、図13における時刻tbに示されるように、電流検出手段634から出力される電圧値Vが増加する。そこで、本実施形態では、制御部64は、電流検出手段634から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線の照射開始を検出するようになっている。
【0100】
電圧値Vの増加による放射線の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時刻tcに放射線照射が開始されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時刻tdに放射線照射が開始されたとして検出するように構成することも可能である。
【0101】
また、放射線源からの放射線の照射が終了すると、今度は、各受光素子620内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線629に正孔が供給されなくなる。そのため、図13における時刻teに示されるように、電流検出手段634から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、本実施形態では、制御部64は、電流検出手段634から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線の照射終了を検出するようになっている。
【0102】
電圧値Vの減少による放射線の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時刻tfに放射線照射が終了されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時刻tgに放射線照射が終了されたとして検出するように構成することも可能である。
【0103】
次に図14に基づいて第5の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する。同図においては、図9に示した制御フローと共通する制御に関しては、同符号を付すことにより説明に代える。第5の実施形態及び後述の第6の実施形態においては、FPD6は自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。このことから、制御BOX4は、撮影時に放射線照射装置3とFPD6との同期を取る必要がない。
【0104】
図14のステップS201では、制御BOX4はステップS14の通知に基づいて、対象のFPD6にリセット指示としてのリセット信号を送信する。当該リセット信号を受信したFPDでは、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。本実施形態においてはリセット信号の送信を行わなくても、撮影は可能であるが、暗電流によるノイズの影響を除去するためには、リセット信号の送信によりそれまでに蓄積された電荷のリセットを行うことが好ましい。
【0105】
またステップS202において制御BOX4は、対象の放射線対象の放射線照射装置3を管理下とする。通知を受けた放射線照射装置3では、管理状態に移行する(ステップS211)。
【0106】
放射線照射装置3のステップS22、S23、S26は図9に示した制御フローと同一なので説明は省略する。ステップS26の撮影開始指示の通知に基づいて、放射線照射装置3は所定の時間、所定の放射線強度で放射線照射を行う(ステップS270)。なお所定時間、所定放射線強度は、前述のように操作部34で行ってもよく、撮影オーダ情報に含まれる部位情報等に応じて制御BOX4で換算テーブルを用いて使用するFPD6の感度に応じて自動的に設定されるように構成しても良い。
【0107】
ステップS272ではFPD6は、制御部64が電流検出手段634により検出されたバイアス線629を流れる電流の増加および減少に基づいて放射線の照射の開始および終了を検出する。そして制御部64はFPD6を、放射線の照射開始の検知により「蓄積可能状態」にし、照射終了の検知により「電荷読み出し状態」にする。ステップS28では、以降の制御は図9と同一なので説明は省略する。
【0108】
次に図15に基づいて第6の実施形態における、放射線画像撮影システムが実行する制御フローを説明する。第6の実施形態においてもFPD6は自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。第5の実施形態とFPD6へのリセット信号の送信を制御端末として機能するコンソール7により行っている点で相違する。
【0109】
図15に示すように、ステップS15においてコンソール7は、対象のFPD6にリセット信号を送信する。FPD6では、当該リセット信号を受信したFPDでは、「電荷リセット状態」に移行して撮影準備を開始する(ステップS210)。以降の制御は図14に示した制御フローと同一であり説明は省略する。
【0110】
第5及び第6の実施形態によれば、既存システム(CRシステム)に異なる撮影装置(可搬型FPD)を追加した場合であっても、撮影装置に対応した制御BOXを追加する構成としていることにより、既存のシステムのなかの、RISやHIS等の上流側との連携部分(撮影オーダ情報と撮影画像の対応付け等)には変更を加えることなく、その影響範囲を限定することができ、システムの機能拡張時のシステムデバック範囲を減縮可能で、簡便に行うことができる。更に、自ら放射線の照射開始や照射終了を検出するように構成されているFPDを用いることが可能となり、FPDを用いた撮影と、CRを用いた撮影とで、放射線技師が撮影実行時の放射線照射タイミングを同一にでき、従来からの患者撮影技法をそのまま維持できるので、好ましい。
【符号の説明】
【0111】
2 放射線画像読取装置
3 放射線照射装置
35 操作ボタン
6 FPD(放射線画像検出装置)
7 コンソール
9 CRカセッテ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置と、
放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、
前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、
撮影オーダ情報を取得し、少なくとも前記放射線画像読取装置に接続され、読み取られた前記放射線画像データを取得し、前記撮影オーダ情報と前記放射線画像データとを対応付けるコンソールと、
を有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置を導入して、前記CRカセッテおよび前記可搬型の放射線画像検出装置の両方を前記放射線照射装置とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、
前記可搬型の放射線画像検出装置として、前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いることを特徴とする放射線画像撮影システムのアップデート方法。
【請求項1】
曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置と、
放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、
前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、
撮影オーダ情報を取得し、少なくとも前記放射線画像読取装置に接続され、読み取られた前記放射線画像データを取得し、前記撮影オーダ情報と前記放射線画像データとを対応付けるコンソールと、
を有する既存の放射線画像撮影システムに、新たに可搬型の放射線画像検出装置を導入して、前記CRカセッテおよび前記可搬型の放射線画像検出装置の両方を前記放射線照射装置とともに使用可能なシステムとする放射線画像撮影システムのアップデート方法であって、
前記可搬型の放射線画像検出装置として、前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である放射線画像検出装置を用いることを特徴とする放射線画像撮影システムのアップデート方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−46844(P2013−46844A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264847(P2012−264847)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2010−529659(P2010−529659)の分割
【原出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2010−529659(P2010−529659)の分割
【原出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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