説明

放射線画像撮影方法および装置

【課題】素抜け部に発生した残像量を取得するとともに、その残像量に基づいて適切な残像補正を行う。
【解決手段】予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、その推定した放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、その取得した残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器から読み出された放射線画像信号に残像補正を施す放射線画像撮影方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線源と放射線画像検出器とを被験者を中心として対向させて配置し、これらの組を被験者を中心として周回させて、様々な角度から放射線を照射して放射線画像を撮像し、その各角度の放射線画像を用いて断層画像を再構成して任意断面を表示する放射線CT画像撮影システムが臨床で広く利用されている。
【0003】
ここで、上記のような放射線CT画像撮影システムにおいては、より画質のよい放射線CT画像を取得するために角度分解能をあげることが望まれるが、角度分解能をあげると撮影枚数の増加につながるため、患者の拘束時間、息止め時間などによって現実的に制約された撮影時間内で撮影するためには、各放射線画像の撮影間隔を短く、連続で撮影する必要がある。
【0004】
しかしながら、一般的に、放射線画像検出器には、直前もしくは直前よりも前に撮影された放射線画像の情報が残留しており、これが残像となって真の放射線画像に重畳されることになる。そして、この残像は、特に再構成して断層画像を作成する際にアーチファクトとなり問題である。
【0005】
そこで、このような残像の影響を回避するため、残像は時間とともに指数関数的に減衰するので、単純に残像が十分減衰してから次の撮影を行うような適当な撮影間隔を設定する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、このように単に撮影間隔を長くする方法は、上述したような撮影時間の制約があるため適切ではない。
【0007】
そこで、直前に撮影した放射線画像とその撮影からの経過時間とに基づいて、放射線画像に含まれる残像を補正する方法が提案されている。また、多数の放射線画像の連続撮影においては、さらに前回、前々回・・・の撮影での残像が、それぞれの撮影からの時間経過の違いによって異なるレベルの残像となって混在するため、それぞれの撮影からの時間経過に対する減衰を考慮して残像補正を行う方法も種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−334154号公報
【特許文献2】特開平10−192267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、上述した放射線CT画像撮影システムのように、放射線源および放射線画像検出器の組が被験者を中心として周回する場合、たとえば、被験者の腹部を撮影する場合のように撮影対象の体厚が撮影する方向によって変化する場合、所定の撮影方向での撮影において素抜け部となる領域が、別の撮影方向では撮影対象の画像領域となる場合がある。具体的には、図14に示すように、放射線源1と放射線画像検出器2とが水平方向に対向して配置されているときの素抜け部は、放射線源1と放射線画像検出器2とが垂直方向に対向して配置されているときの撮影対象Pの画像領域となる。なお、素抜け部とは、撮影対象を透過することなく直接放射線が放射線画像検出器に照射される領域のことをいう。
【0010】
そして、残像は、放射線の露光量が多いほど多くなるため、特に素抜け部となった放射線画像検出器の領域が画像領域として利用される場合には、素抜け部に照射された放射線の線量に応じた残像補正を行う必要がある。
【0011】
しかしながら、半導体材料を利用したいわゆるFPDと呼ばれる放射線画像検出器を用いる場合、一般的に、素抜け部に到達する線量で発生する電荷量は、個別の画素に用意された電荷蓄積容量に比較して大きく、また、個別の画素に用意された電荷蓄積量を大きくすることは構造上難しい。このため、過剰に発生した電荷で回路が破壊されないようにそれを逃す回路構成となっており、電荷蓄積容量以上に発生した電荷は画像信号として取り出すことができない。
【0012】
同様に、後段の電荷電圧変換回路やAD変換回路などでもそれぞれの回路設計上の制約から、放射線によって発生する電荷量の範囲すべてを画像信号に割り付けることは通常なされず、通常は被写体部の濃度分解能が十分得られるように信号収録範囲が割り付けられる。被写体部の放射線量は、素抜け部よりも一般的に1桁〜3桁低い放射線量である。
【0013】
したがって、残像補正の基準となる素抜け部の放射線の露光量や残像量を、放射線画像検出器の素抜け部から読み出された画素信号から直接求めることは困難である。
【0014】
すなわち、素抜け部のように画像信号の収録範囲を超える画像領域では、その領域での放射線の露光量がわからないと十分な残像補正量を求めることができず、補正不足となってアーチファクトを発生してしまう。
【0015】
また、残像補正の対象の画素が累積された残像によって飽和してしまうと、過去に撮影された放射線画像から仮に残像量を推定できたとしても、残像を補正する段階において、図15に示すように、放射線画像検出器の出力が、真の放射線画像を表す信号部分と残像成分とが加算されたものとなって画像信号の収録範囲を超えてしまうため、真の放射線画像を表す信号部分がつぶれてしまい、補正によって真の放射線画像を表す信号部分を取り出すことができない。
【0016】
また、たとえば、特許文献1および特許文献2には、撮影画像信号の飽和防止のために撮影時の線量を撮影直前の放射線画像の画素値に基づいて決定することが提案されているが、上述したような残像補正を考慮して線量を決定する方法については何の提案もなされていない。
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑み、素抜け部に発生した残像量を取得することができるとともに、その残像量に基づいて適切な残像補正を行うことができる放射線画像撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の放射線画像撮影方法は、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像の撮影方法において、予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、その推定した放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、その取得した残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔を取得することを特徴とする。
【0019】
本発明の放射線画像撮影方法は、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像の撮影方法において、予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、その推定した放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、その取得した残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影に用いる放射線の照射条件を取得することを特徴とする。
【0020】
本発明の放射線画像撮影装置は、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置において、予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定する放射線量推定部と、放射線量推定部によって推定された放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得する残像電荷量取得部と、残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔を取得する撮影間隔取得部とを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の放射線画像撮影装置は、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置において、予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定する放射線量推定部と、放射線量推定部によって推定された放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得する残像電荷量取得部と、残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影に用いる放射線の照射条件を取得する放射線量取得部とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、放射線強度分布を、放射線画像検出器によって検出された放射線画像信号に基づいて取得することができる。
【0023】
また、放射線画像検出器における画像領域以外の領域に放射線吸収部材を設け、放射線強度分布を、その放射線吸収部材を透過した放射線の照射に応じて放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に基づいて取得することができる。
【0024】
また、放射線画像検出器を、互いに異なる方向から被写体に照射された放射線を順次検出するものとし、放射線量推定部を、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達する放射線の照射範囲が最大となる方向からの放射線の照射に応じた放射線強度分布を用いて、放射線の線量の推定を行うものとすることができる。
【0025】
また、放射線画像検出器を、互いに異なる方向から被写体に照射された放射線を順次検出するものとし、放射線量推定部を、被写体の体厚が最も厚くなる方向からの放射線の照射に応じた放射線強度分布を用いて、放射線の線量の推定を行うものとすることができる。
【0026】
また、放射線強度分布を、放射線源の管電流、管電圧、放射線の照射時間、および付加フィルタの種類のうちの少なくとも1つの条件に基づいて取得されたものとすることができる。
【0027】
また、残像電荷量取得部を、放射線源の管電圧、管電流、放射線の照射時間、および付加フィルタの種類のうちの少なくとも1つの条件に対応する残像減衰特性を取得するものとすることができる。
【0028】
また、撮影間隔取得部を、放射線画像検出器を構成する各画素について取得された残像電荷量のうちの最大の残像電荷量に基づいて撮影間隔を取得するものとすることができる。
【0029】
また、放射線量取得部が、放射線画像検出器を構成する各画素について取得された残像電荷量のうちの最大の残像電荷量に基づいて放射線の線量を取得するものとすることができる。
【0030】
また、残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量に基づいて、放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に残像補正を施す残像補正部をさらに設けることができる。
【0031】
また、放射線画像検出器を、互いに異なる方向から被写体に照射された放射線を順次検出するものとし、残像補正部を、予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性と残像補正の対象の放射線画像信号の撮影時までの撮影時間とに基づいて残像補正量を取得し、その残像補正量に基づいて残像補正を施すものとすることができる。
【0032】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置は、互いに異なる方向からの被写体への放射線の照射により放射線画像検出器によって検出された複数の画像信号に基づいて断層画像を再構成する放射線CT撮影装置とすることができる。
【0033】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置は、互いに異なる方向からの 被写体への放射線の照射により放射線画像検出器によって検出された複数の画像信号に基づいて断層画像を再構成する放射線トモシンセシス撮影装置とすることができる。
【0034】
また、放射線量推定部を、繰り返しの放射線画像の撮影の過程において、放射線が被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した領域と放射線が被写体を透過して放射線画像検出器に到達した領域とが入れ替わる領域を取得し、その取得した領域と放射線強度分布とに基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定するものとできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の放射線画像撮影方法および装置によれば、予め取得した放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、被写体を透過することなく放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、その推定した放射線の線量と予め設定された放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、その取得した残像電荷量と放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔または放射線の線量を取得するようにしたので、いわゆる素抜け部のような画像信号の収録範囲以上の放射線が照射された領域の残像量を取得することができるとともに、放射線画像検出器の出力を飽和させることなく補正対象の放射線画像信号を取得することができ、適切な残像補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの概略構成図
【図2】本発明の放射線画像撮影装置の第1の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムにおける放射線検出部とコンピュータの内部構成を示すブロック図
【図3】所定のmAs値に応じた放射線の相対強度分布の一例を示す図
【図4】管電圧およびmAs値毎に設定された放射線の相対強度分布を示す図
【図5】残像電荷量の時間変化と放射線画像検出器の各画素で発生する最大電荷量とに基づいて放射線画像の撮影の間隔を取得する作用を説明するための図
【図6】本発明の放射線画像撮影装置の第1の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの作用を説明するためのフローチャート
【図7】各撮影角度で撮影された放射線画像信号の残像特性の一例を示す図
【図8】残像補正の作用を説明するための図
【図9】放射線吸収部材の設置された放射線画像検出器を示す斜視図
【図10】被験者Pを設置した状態で撮影された計測用放射線画像信号の一例を示す図
【図11】本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムにおける放射線検出部とコンピュータの内部構成を示すブロック図
【図12】本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの作用を説明するためのフローチャート
【図13】各撮影線量に対応する残像電荷量と放射線画像検出器の各画素で発生する最大電荷量とに基づいて放射線画像の撮影線量を取得する作用を説明するための図
【図14】所定の撮影方向における素抜け部が他の撮影方向において画像領域となることを説明するための図
【図15】画像信号の収録範囲以上の放射線照射による残像によって補正対象の放射線画像信号が飽和することを説明するための図
【図16】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線トモシンセシス撮影装置の概略構成図
【図17】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線トモシンセシス撮影装置の概略構成図
【図18】放射線トモシンセシス撮影装置によって取得された複数の放射線画像における素抜け部と被写体領域とを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の第1の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムについて説明する。まず、本放射線CT画像撮影システム全体の概略構成について説明する。図1は、本放射線CT画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【0038】
本放射線CT画像撮影システムは、図1に示すように、被験者Pの放射線画像の撮影を行なう撮影装置1と、被験者Pを支持するための支持台であるベッド22と、撮影装置1に接続され、撮影装置1の制御を行うとともに、撮影により得られた放射線画像信号の処理を行うコンピュータ30と、このコンピュータ30に接続されたモニタ31とを備えている。
【0039】
撮影装置1は、円錐状の放射線を射出する放射線源10、放射線源10から射出された放射線を検出する放射線検出部11、放射線源10および放射線検出部11が端部にそれぞれ対向して設けられ、これらを保持するCアーム12と、このCアーム12を回転させる駆動部15と、駆動部15を保持するアーム20と備えている。
【0040】
Cアーム12は、駆動部15に対して、回転軸Cの周りに360°回転可能に取り付けられている。また、アーム20は可動部20aを備えるとともに、天井に対して移動可能に設置された基部21に保持されている。そして、Cアーム12は、基部21を移動させることによって撮影室内において広範の位置に移動可能であるとともに、アーム20の可動部20aを可動させることによって回転方向(回転軸角度)も変更可能に構成されている。
【0041】
放射線源10と放射線検出部11とは回転軸Cを間に挟んで対向配置されており、放射線CT画像撮影を行うときには、回転軸C、放射線源10、放射線検出部11の互いの位置関係は固定された状態で、Cアーム12が駆動部15によって360°回転させられる。
【0042】
図2に、放射線検出部11とコンピュータ30の内部の概略構成を示すブロック図を示す。
【0043】
放射線検出部11は、図2に示すように、被験者Pを透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被験者Pの放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器11aと、放射線画像検出器11aから出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部11bとを備えている。
【0044】
放射線画像検出器11aは、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものを用いることが好ましいが、これに限らない。
【0045】
また、間接型の放射線画像検出器としては、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサやCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)を用いたものを利用することができる。CMOSセンサを用いたものとしては、たとえば、特開2009−212377号公報に記載のような有機光電変換材料(OPC(Organic Photoconductor))を用いたものを利用することが望ましい。また、放射線を可視光に変換するシンチレータとしては、たとえば、特開2011−17683号公報に記載されているような、CsIなどの柱状結晶により構成されたもの用いることが好ましい。このようなシンチレータを用いることによって、より鮮鋭度の高い放射線画像を取得することができ、特に連続して複数の放射線画像を撮影する際にその効果が顕著である。
【0046】
信号処理部11bは、放射線画像検出器11aから読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプなどからなるアンプ部や、アンプ部から出力された電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などを備えている。
【0047】
コンピュータ30は、中央処理装置(CPU)、およびHDDやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、残像補正部30a、再構成部30b、表示信号生成部30c、放射線量推定部30d、残像電荷量取得部30e、撮影間隔取得部30f、撮影制御部30g、および撮影条件入力部30hが構成されている。
【0048】
残像補正部30aは、信号処理部11bから出力された被験者Pの放射線画像を表す放射線画像信号に対して残像補正を施すものである。残像補正の方法については、後で詳述する。なお、ここでは補正処理を行うものとして残像補正部30aのみを示しているが、実際には、残像補正の前後において感度補正や欠陥補正などの公知な補正処理を行うものとする。
【0049】
再構成部30bは、残像補正部30aにおいて残像補正の施された各撮影角度の放射線画像信号に基づいて、放射線CT画像信号を再構成するものである。
【0050】
表示信号生成部30cは、再構成部30bから出力された放射線CT画像信号に基づいて表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ31に出力するものである。
【0051】
放射線量推定部30dは、撮影条件入力部30hを用いて撮影者によって入力された放射線源10の管電流および1回の撮影の放射線の照射時間などの照射条件の情報を受け付け、この情報に基づいて、被験者Pを透過することなく、放射線画像検出器11aに直接到達する放射線の放射線強度分布を取得し、その取得した放射線強度分布に基づいて、いわゆる素抜け部に照射された放射線の線量を推定するものである。
【0052】
より具体的には、放射線量推定部30dには、放射線源10の管電流と放射線の照射時間とを掛け合わせたmAs値に対応する放射線強度分布が予め設定されている。図3に、その放射線強度分布の一例を示す。図3に示す放射線強度分布の縦軸は放射線強度を示しており、横軸は放射線画像検出器11aを構成する画素の位置を示しており、放射線強度分布は、一般的に、放射線画像検出器11aの略中央部分から周辺に向かって次第に放射線強度が小さくなる分布となる。なお、図3には1次元方向の放射線の相対強度分布を示しているが、2次元方向についての放射線の相対強度分布を予め設定するようにしてもよい。
【0053】
また、放射線強度分布は複数のmAs値毎に設定されるが、放射線強度分布はmAs値に比例して大きくなるので、たとえば、撮影条件入力部30hによって入力されたmAs値が、予め設定されたmAs値ではない場合には、その入力されたmAs値に近い予め設定されたmAs値の放射線強度分布を用いて補間して取得するようにしてもよい。
【0054】
また、所定のmAs値に対応する放射線強度分布は、放射線源10の管電圧によっても変化する。したがって、放射線源10の管電圧も変更できる構成とした場合には、図3に示すように、管電圧V〜V毎にそれぞれmAs値I〜Iに対応する放射線強度分布D1−1〜Dm−nを予め設定するようにしてもよい。
【0055】
また、放射線強度分布は、放射線源20に設けられる付加フィルタの材質や厚さによっても変化する。したがって、付加フィルタの種類を変更できる構成とした場合には、そのフィルタの種類毎の放射線強度分布を予め取得し、設定するようにしてもよい。
【0056】
また、放射線量推定部30dは、上述したようにして取得された放射線強度分布を用いて素抜け部の範囲に対応する放射線強度分布を取得するが、その他の方法としては、たとえば、撮影対象(太めの人、細めの人など)の情報や撮影部位(胸部、腹部、頭部、頚部、下肢など)の情報などに対応する素抜け部の範囲を予め設定しておき、撮影条件入力部30hによって撮影対象や撮影部位の情報の入力を受け付けることによって素抜け部の範囲を取得するようにしてもよいし、予め被験者を設置した状態でプレ撮影を行い、そのプレ撮影の放射線画像信号の値が所定の閾値よりも大きい範囲を素抜け部として予め取得しておくようにしてもよい。
【0057】
また、素抜け部の範囲は、Cアーム12の撮影角度、すなわち撮影方向によって異なることになるが、本実施形態においては、素抜け部の範囲が最大となるときの撮影角度に応じた素抜け部の範囲を、素抜け部の放射線量推定対象の範囲として採用する。そして、その放射線量推定対象の素抜け部における各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布の値を取得し、その値を残像電荷量取得部30eに出力する。なお、以下、この値を素抜け部の推定放射線量という。
【0058】
また、被験者Pの体厚が最も厚くなる撮影角度における画像信号の収録範囲以上の領域を、素抜け部の放射線量推定対象の範囲として採用するようにしてもよい。
【0059】
残像電荷量取得部30eは、入力された素抜け部の推定放射線量に基づいて、その推定放射線量に応じた放射線画像検出器11aの出力信号を算出し、その出力信号と放射線画像検出器11aの画素毎に予め設定された残像の減衰特性とに基づいて、残像電荷量の時間変化を取得し、その残像電荷量の時間変化を撮影間隔取得部30fに出力するものである。
【0060】
ここで、放射線画像検出器11aの画素毎の残像の減衰特性は、たとえば、ベタ画像などを放射線画像検出器11aに記録し、その出力信号の画素毎の時間変化を求めることによって予め取得されているものとする。なお、本実施形態においては、画素毎の残像の減衰特性を予め設定するようにしたが、これに限らず、たとえば、複数の画素を含む所定のエリア毎の残像の減衰特性を取得し、これを予め設定するようにしてもよい。
【0061】
また、放射線画像検出器11aの画素毎の残像の減衰特性は、放射線源10のmAs値や管電圧の大きさに応じて変化するので、mAs値毎の減衰特性を予め設定しておき、
撮影条件入力部30hを用いて撮影者によって入力されたmAs値の情報に基づいて減衰特性を選択するようにしてもよい。また、放射線源10の管電圧が変更できる構成とした場合には、さらに管電圧毎の減衰特性を予め設定しておき、撮影条件入力部30hを用いて撮影者によって入力された管電圧の情報に基づいて減衰特性を選択するようにしてもよい。また、放射線源10の付加フィルタの種類を変更できる構成とした場合には、さらに付加フィルタの種類毎の減衰特性を予め設定しておき、撮影条件入力部30hを用いて撮影者によって入力された付加フィルタの種類の情報に基づいて減衰特性を選択するようにしてもよい。
【0062】
撮影間隔取得部30fは、入力された残像電荷量の時間変化と放射線照射により放射線画像検出器11aの各画素で発生する最大電荷量とに基づいて、放射線画像検出器11aの出力が飽和しないように放射線画像の撮影の間隔を取得するものである。なお、放射線画像検出器11aの出力が飽和しないとは、放射線画像検出器11a内における各画素の電荷蓄積量が飽和することなく、さらに放射線画像検出器11aの後段に接続される信号処理回路などにおいてもダイナミックレンジが飽和しないことをいう。
【0063】
具体的には、撮影間隔取得部30fは、図5に示すように、入力された残像電荷Qresと被写体部の画像形成に必要な蓄積電荷量Qsubとの和が、放射線画像検出器11aの飽和出力Qsatを超えないような許容撮影間隔Δtを取得し、撮影制御部30gに出力するものである。実際には、下式を満たすような許容撮影間隔を取得する。
【0064】
Qsub(c)+Qres(c)<Qsat(c)
撮影制御部30gは、撮影間隔取得部30fから出力された許容撮影間隔から撮影間隔し設定し、撮影条件入力部30hにおいて入力されたmAs値とに基づいて、放射線源10から射出される放射線の線量および照射タイミングと、駆動部15によるCアーム12の回転の速度を制御するものである。このとき設定される撮影間隔は、許容撮影間隔のうち、放射線CT画像撮影システムが動作可能な最小値に設定することが好ましい。
【0065】
次に、本放射線CT画像撮影システムの作用について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。本放射線CT撮影システムは、被験者Pに対してCアーム12を360°もしくは180°回転させながら、所定の角度毎に所定の撮影間隔で放射線を照射して放射線CT画像を再構成するための複数の放射線画像の撮影を行うが、その本撮影の前に、素抜け部の残像信号によって被験者の画像領域の放射線画像信号が飽和することなく残像補正を適切に行うことが可能な撮影間隔が予め設定される。まずは、その撮影間隔を取得する作用について説明する。
【0066】
まず、撮影条件入力部30hにおいて、撮影者によって放射線の照射条件が入力される。具体的には、放射線源10の管電圧(kV)、管電流(mA)および一回の撮影辺りの照射時間(s)、付加フィルタの種類の条件が入力される。なお、撮影条件入力部30hにおいてこれらの値を直接入力しても良いし、たとえば、撮影対象の情報(太めの人、細めの人)や撮影部位の情報(胸部、腹部、頭部、頚部、下肢など)と照射条件とを対応づけたテーブルを予め設定しておき、撮影対象や撮影部位の情報の入力を受け付けてテーブルを参照して照射条件を求めることによって、間接的に照射条件の入力を受け付けるようにしてもよい(S10)。
【0067】
そして、撮影条件入力部30hにおいて受け付けられた照射条件は、放射線量推定部30dに入力され、放射線量推定部30dにおいて、照射条件に基づいて、上述した素抜け部の推定放射線量が取得される(S12)。なお、素抜け部の推定放射線量の取得方法については、上述したとおりである。
【0068】
そして、放射線量推定部30dによって取得された推定放射線量は、残像電荷量取得部30eに入力され、残像電荷量取得部30eにおいて、入力された素抜け部の推定放射線量に基づいて、その推定放射線量に応じた放射線画像検出器11aの出力信号が算出され、その出力信号と放射線画像検出器11aの画素毎に予め設定された残像の減衰特性とに基づいて、残像電荷量の時間変化が取得され、その残像電荷量の時間変化が撮影間隔取得部30fに出力される(S14)。
【0069】
そして、撮影間隔取得部30fは、入力された残像電荷量の時間変化と放射線画像検出器11aの各画素で発生する最大電荷量とに基づいて、放射線画像検出器11aの出力が飽和しないような放射線画像の撮影の間隔を取得する(S16)。なお、撮影間隔の具体的な取得方法については、上述したとおりである。
【0070】
そして、撮影間隔取得部30fにおいて取得された撮影間隔は撮影制御部30gに出力され、撮影制御部30gは、入力された撮影間隔に基づいてCアーム12の回転速度を算出して設定する。なお、Cアーム12が360°または180°回転する間に撮影する放射線画像の枚数は予め設定されており、その枚数と撮影間隔とに基づいてCアーム12の回転速度が算出される。
【0071】
以上が、残像補正を適切に行うことが可能な撮影間隔の取得方法の説明である。
【0072】
次に、上述したようにして取得された撮影間隔に応じて放射線画像を撮影し、その放射線画像に対して残像補正を施した後、放射線CT画像を再構成する作用について説明する。
【0073】
まず、被験者Pをベッド22上に横たわらせ、被験者Pの体の略中心を回転軸Cとして、この回転軸Cを挟んで放射線源10と放射線検出部11とが対称位置に配されるようにCアーム12の位置決めが行なわれる。Cアーム12の移動は、撮影者によるコンピュータ30の操作に基づいて行なわれる。
【0074】
そして、コンピュータ30において撮影者によって撮影開始指示が入力されると、撮影制御部30gは、撮影条件入力部30hにおいて入力された放射線の照射線量の条件を取得し、その照射線量の条件に応じた制御信号を放射線源10に出力するとともに、上述したようにして取得された撮影間隔に基づくCアーム12の回転速度に応じた制御信号をCアーム12を駆動する駆動部15に出力する。そして、これらの制御信号に基づいて放射線源10と駆動部15が駆動制御されて被験者Pの放射線画像の撮影が行なわれる(S18)。
【0075】
具体的には、入力された制御信号に基づいて駆動部15によってCアーム12が回転させられ、被験者Pを通る回転軸Cの回りに放射線源10と放射線検出部11とが一体的に回転させられるとともに、入力された制御信号に基づいて放射線源10から放射線が射出される。
【0076】
そして、Cアーム12の所定角度毎に、放射線源10から射出され被験者Pを通った円錐状放射線の放射線画像検出器11aへの曝射と放射線画像検出器11aに記録された電荷信号の読出しとが行われ、被験者Pを互いに異なる角度から撮影した複数の電荷信号が順次読み出される。
【0077】
そして、上述したようにして読み出された電荷信号は、信号処理部11bのアンプ部において電圧信号である放射線画像信号に変換され、AD変換部においてデジタル信号に変換された後、コンピュータ30の残像補正部30aに出力される。
【0078】
そして、残像補正部30aは、入力された複数の放射線画像信号を一旦記憶した後、これらの放射線画像信号に対して残像補正を施す(S20)。
【0079】
ここで、N番目に撮影された放射線画像信号の残像補正について説明する。図7は、各角度で撮影された放射線画像信号の残像特性を示している。図7に示すように、N番目の放射線画像信号は、真の放射線画像信号(図7に点線で示す)に対して、1番目〜N−1番目までに撮影された各放射線画像信号の累積残像量shが加算された大きさとなる。したがって、1番目〜N−1番目までに撮影された各放射線画像信号の残像信号を減算することによって残像補正を行う。
【0080】
具体的には、図8に示すように、N枚目の放射線画像における残像の補正に際し、1枚目〜N−1枚目までに撮影された各放射線画像に対し、N枚目の放射線画像の撮影までの各々の時間経過に応じた重み係数W(N,1)〜W(N,N−1)がそれぞれ乗算され、その乗算された値が加算されてN枚目の放射線画像の残像補正データが生成される。そして、その生成した残像補正データをN枚目の放射線画像から減算することによりN枚目の放射線画像の残像が補正される。ただし、N枚目の放射線画像の残像補正データ生成に用いられる1枚目〜N−1枚目の放射線画像は、同様の方法によって残像補正が施されたものを用いる。また、1枚目の放射線画像は、1枚目の放射線画像の撮影に先立って取得された直前のダークフレームの画像を用いていくつかの公知の方法によって残像補正を施したものとすることもできるし、1枚目は残像補正を施していない画像とすることもできる。
【0081】
なお、重み係数については、各時間経過に応じた値が予め設定されているものとする。また、重み係数は、放射線画像検出器11aの画素毎に、その残像特性に応じてそれぞれ設定されているものとする。また、N枚目の放射線画像の残像補正方法は、本実施例記載の方法に限定されるものではなく、他の方法で行うことを除外するものではない。
【0082】
残像補正部30aは、放射線画像信号に対して、上述したようにして残像補正を施すが、補正対象となる各画素の信号において、出力が飽和している画素は残像補正を施すべきでないことに注意する。そして、残像補正部30aは、残像補正済の放射線画像信号を再構成部30bに出力する。
【0083】
再構成部30bは、入力された各撮影角度の複数の補正済放射線画像信号を用いて、放射線CT画像信号を再構成する(S22)。
【0084】
そして、再構成部30bにおいて生成された放射線CT画像信号は、表示信号生成部30cに出力され、表示信号生成部30cにおいて放射線CT画像信号に基づいて表示制御信号が生成されてモニタ31に出力される。そして、モニタ31は、入力された表示制御信号に基づいて被験者Pの放射線CT画像を表示する。
【0085】
また、上記第1の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、撮影条件入力部30hにおいて入力された放射線の照射条件に基づいて素抜け部の推定放射線量を取得するようにしたが、推定放射線量を取得する方法としてはこれに限らない。以下に、推定放射線量の取得する別の方法について説明する。
【0086】
この方法においては、実際に放射線源10から射出された放射線を放射線画像検出器11aによって検出することによって推定放射線量を取得する。
【0087】
具体的には、図9に示すように、放射線画像検出器11aの放射線照射側の表面に、放射線を吸収する放射線吸収部材40を設置し、この放射線吸収部材40が設定された放射線画像検出器11aに対し、撮影条件入力部30hにおいて入力された放射線の照射線量の条件に基づいて放射線を照射して推定放射線量を取得するための計測用放射線画像を撮影する。なお、放射線吸収部材40は、実際に被験者Pの放射線画像が記録されうる範囲である画像領域以外の範囲に設置される。放射線吸収部材40の形状については、図9に示すように放射線画像検出器11aの対向する2辺に沿って細長い矩形状のものを設けるようにしてもよいし、放射線画像検出器11aの4辺に沿って枠状に設けるようにしてもよい。
【0088】
また、この計測用放射線画像の撮影は、被験者Pを設置した状態で行ってもよいし、被験者Pを設置しない状態で行ってもよい。
【0089】
ただし、本実施形態においては、いずれの場合においても、実際に被験者Pを設置して放射線画像の本撮影を行ったときに、素抜け部の範囲が最も広くなるような撮影角度にCアーム12が回転した状態で撮影が行われるものとする。
【0090】
または、実際に被験者Pを設置して放射線画像の本撮影を行ったときに、被験者Pの体厚が最も厚くなるような撮影角度にCアーム12が回転した状態で撮影を行うようにしてもよい。
【0091】
素抜け部の範囲が最も広くなるような撮影角度または被験者Pの体厚が最も厚くなるような撮影角度については、たとえば、撮影対象(太めの人、細めの人など)の情報や撮影部位(胸部、腹部、頭部、頚部、下肢など)の情報などに対応する上記撮影角度を予め設定しておき、撮影条件入力部30hによって撮影対象や撮影部位の情報の入力を受け付けることによって上記撮影角度を取得するようにすればよい。
【0092】
また、被験者Pを設置した状態で計測用放射線画像の撮影を行う場合には、予め設定された複数の撮影角度で計測用放射線画像を複数撮影し、その複数の計測用放射線画像中から素抜け部の範囲が最も広いものを選択するようにしてもよい。
【0093】
そして、上述したようにして放射線画像検出器11aに記録され、読み出された計測用放射線画像を表す電荷信号は、信号処理部11bのアンプ部によって電圧信号に変換され、AD変換部によってデジタル信号に変換された後、放射線量推定部30dに入力される。
【0094】
図10に、被験者Pを設置した状態で撮影された計測用放射線画像信号の一例を実線で示す。図10における横軸は、放射線吸収部材40の長さ方向に直交する方向の画素位置を示し、縦軸は各画素の出力を示している。また、図10に示す飽和レベルとは、放射線画像検出器11aの出力の飽和レベルである。
【0095】
図10に示すように、素抜け部の範囲DRのうち放射線吸収部材40を透過した範囲の出力信号FSは飽和することなく、放射線源10から射出された放射線の線量に比例する大きさで検出することができる。
【0096】
そして、放射線量推定部30dは、この放射線吸収部材40を透過した範囲の出力信号FSと放射線吸収部材40の放射線の吸収特性とに基づいて、素抜け部の範囲DRの放射線強度分布XDを推定する。なお、図10においては、素抜け部以外の範囲の放射線強度分布も示しているが、この部分は推定しても推定しなくてもよい。
【0097】
そして、放射線量推定部30dは、素抜け部の範囲DRの放射線強度分布XDにおける各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布の値を素抜け部の推定放射線量として取得する。
【0098】
なお、上述した方法によって推定放射線量を取得する場合、1つの放射線の照射条件によって撮影された計測用放射線画像に基づいて、実際の本撮影の放射線の照射条件に応じた推定放射線量を取得するが、異なるmAs値によって撮影された計測用放射線画像に基づいて、複数の推定放射線量を取得してもよい。また、放射線吸収部材40によってビームハードニングを生じるので、少なくとも互いに異なる管電圧または付加フィルタの種類によって撮影された計測用放射線画像に基づいて、実際の本撮影の管電圧または付加フィルタの種類に応じた推定放射線量を選択して取得するようにすることが望ましい。
【0099】
次に、本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムについて説明する。第2の実施形態の放射線CT画像撮影システム全体の概略構成については、図1に示す第1の実施形態の放射線CT画像撮影システムと同様である。
【0100】
第1の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、素抜け部の推定放射線量に基づいて放射線画像の撮影間隔を取得し、その撮影間隔に応じたCアーム12の回転速度で放射線画像の撮影を行うようにしたが、第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、素抜け部の推定放射線量に基づいて、素抜け部の残像信号によって被験者の画像領域の放射線画像信号が飽和することない撮影線量を取得し、その撮影線量によって放射線画像の撮影を行うようにしたものである。
【0101】
したがって、図11に示すように、第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムのコンピュータ30には、第1の実施形態のコンピュータ30における撮影間隔取得部30fの代わりに、残像電荷量取得部30eによって取得された残像電荷量に基づいて、本撮影における各放射線画像の撮影線量を取得する撮影線量取得部iが設けられている。
【0102】
また、コンピュータ30内のその他の各部についても、その作用が第1の実施形態とは異なるので、その作用について、図12に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0103】
第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、まず、放射線量推定部30dにおいて、素抜け部の推定放射線量が取得される(S30)。具体的には、放射線量推定部30dには、図3に示すような放射線強度分布が撮影線量毎に予め設定されており、この各放射線強度分布と素抜け部の範囲の情報とに基づいて、撮影線量毎の素抜け部の範囲に対応する放射線強度分布を取得する。
【0104】
素抜け部の範囲の情報については、第1の実施形態と同様に、たとえば、撮影対象(太めの人、細めの人など)の情報や撮影部位(胸部、腹部、頭部、頚部、下肢など)の情報などに対応する素抜け部の範囲を予め設定しておき、撮影条件入力部30hによって撮影対象や撮影部位の情報の入力を受け付けることによって素抜け部の範囲を取得するようにしてもよいし、予め被験者を設置した状態でプレ撮影を行い、そのプレ撮影の放射線画像信号の値が所定の閾値よりも大きい範囲を素抜け部として予め取得しておくようにしてもよい。
【0105】
また、素抜け部の範囲は、Cアーム12の撮影角度、すなわち撮影方向によって異なることになるが、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、素抜け部の範囲が最大となるときの撮影角度に応じた素抜け部の範囲を、素抜け部の放射線量推定対象の範囲として採用する。そして、その放射線量推定対象の素抜け部における各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布の値を推定放射線量として取得する。
【0106】
上述したようにして、各撮影線量に対応する素抜け部の推定放射線量が取得される。そして、放射線量推定部30dにおいて取得された各撮影線量に対応する素抜け部の推定放射線量は、残像電荷量取得部30eに出力される。
【0107】
次に、撮影条件入力部30hにおいて、撮影者によって撮影間隔の条件が入力される(S32)。なお、撮影間隔の条件については、撮影条件入力部30hにおいてこれらの値を直接入力しても良いし、たとえば、撮影部位の情報と撮影間隔の条件とを対応づけたテーブルを予め設定しておき、撮影部位の情報の入力を受け付けてテーブルを参照して撮影間隔の条件を求めることによって、間接的に撮影間隔の条件の入力を受け付けるようにしてもよい。たとえば、撮影部位が胸部である場合には、心臓の動きがアーチファクトになるので撮影間隔(周回時間)は短く設定される。また、高速撮影モード、中速撮影モードや低速撮影モードなどの撮影速度の情報と撮影間隔の条件とを対応づけたテーブルを予め設定しておき、撮影速度の情報の入力を受け付けて撮影間隔の条件を求めるようにしてもよい。
【0108】
そして、撮影条件入力部30hにおいて受け付けられた撮影間隔の条件は、残像電荷量取得部30eに入力され、残像電荷量取得部30eにおいて、入力された撮影間隔の条件と各撮影線量の素抜け部の推定放射線量とに基づいて、各撮影線量の残像電荷量が算出される(S34)。具体的には、残像電荷量取得部30eは、入力された各撮影線量の素抜け部の推定放射線量に基づいて、その推定放射線量に応じた放射線画像検出器11aの出力信号を算出し、その出力信号と放射線画像検出器11aの画素毎に予め設定された残像の減衰特性とに基づいて、各撮影線量の残像電荷量を算出し、その各撮影線量の残像電荷量を撮影線量取得部30iに出力する。ここで、放射線画像検出器11aの画素毎の残像の減衰特性の取得方法については、上記第1の実施形態と同様であり、また、第2の実施形態においても、複数の画素を含む所定のエリア毎の残像の減衰特性を取得し、これを予め設定するようにしてもよい。
【0109】
そして、撮影線量取得部30iは、入力された各撮影線量の残像電荷量と放射線照射により放射線画像検出器11aの各画素で発生する最大電荷量とに基づいて、放射線画像検出器11aの出力が飽和しないような放射線画像の撮影線量を取得する(S36)。
【0110】
具体的には、撮影線量取得部30iは、図13に示すように、入力された各撮影線量の残像電荷Qresと被写体部の画像形成に必要な蓄積電荷量Qsubとの和が放射線画像検出器11aの飽和出力Qsatを超えないような許容撮影線量を取得し、撮影制御部30eに出力する。実際には、下式を満たすような許容撮影線量を取得する。
【0111】
Qsub(c)+Qres(c)<Qsat(c)
そして、撮影制御部30gは、入力された許容撮影線量に基づいて、放射線源10の放射線の照射条件を設定する。
【0112】
そして、次に、上述したようにして取得された放射線の照射条件の情報に基づいて、放射線画像の撮影が行われる(S38)。
【0113】
まず、被験者Pをベッド22上に横たわらせ、被験者Pの体の略中心を回転軸Cとして、この回転軸Cを挟んで放射線源10と放射線検出部11とが対称位置に配されるようにCアーム12の位置決めが行なわれる。
【0114】
そして、コンピュータ30において撮影者によって撮影開始指示が入力されると、撮影制御部30gは、撮影条件入力部30hにおいて入力された撮影間隔の条件を取得し、その撮影間隔に基づくCアーム12の回転速度に応じた制御信号を、Cアーム12を駆動する駆動部15に出力するとともに、上述したようにして設定された管電圧および管電流に基づく制御信号を放射線源10に出力し、これらの制御信号に基づいて放射線源10と駆動部15が駆動制御されて被験者Pの放射線画像の撮影が行なわれる。
【0115】
具体的には、入力された制御信号に基づいて駆動部15によってCアーム12が回転させられ、被験者Pを通る回転軸Cの回りに放射線源10と放射線検出部11とが一体的に回転させられるとともに、入力された制御信号に基づいて放射線源10から放射線が射出される。
【0116】
そして、Cアーム12の所定角度毎に、放射線源10から射出され被験者Pを通った円錐状放射線の放射線画像検出器11aへの曝射と放射線画像検出器11aに記録された電荷信号の読出しとが行われ、被験者Pを互いに異なる角度から撮影した複数の電荷信号が順次読み出される。
【0117】
そして、上述したようにした読み出された電荷信号は、信号処理部11bのアンプ部において電圧信号である放射線画像信号に変換され、AD変換部においてデジタル信号に変換された後、コンピュータ30の残像補正部30aに出力される。
【0118】
そして、残像補正部30aは、入力された複数の放射線画像信号を一旦記憶した後、これらの放射線画像信号に対して残像補正を施す(S40)。なお、残像補正の作用については、上記第1の実施形態と同様である。
【0119】
残像補正部30aは、放射線画像信号に対して残像補正を施すが、補正対象となる各画像の信号において、出力が飽和している画素は残像補正を施すべきではないことに注意する。そして、残像補正部30aは、残像補正済の放射線画像信号を再構成部30bに出力する。
【0120】
再構成部30bは、入力された各撮影角度の複数の補正済放射線画像信号を用いて、放射線CT画像信号を再構成する(S42)。
【0121】
そして、再構成部30bにおいて生成された放射線CT画像信号は、表示信号生成部30cに出力され、表示信号生成部30cにおいて放射線CT画像信号に基づいて表示制御信号が生成されてモニタ31に出力される。そして、モニタ31は、入力された表示制御信号に基づいて被験者Pの放射線CT画像を表示する。
【0122】
また、上記第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、実際に放射線源10から射出された各撮影線量の放射線を、放射線吸収部材40が設けられた放射線画像検出器11aによって検出することによって推定放射線量を取得するようにしてもよい。
【0123】
具体的には、放射線吸収部材40が設定された放射線画像検出器11aに対し、各撮影線量の放射線を照射して推定放射線量を取得するための計測用放射線画像を複数撮影する。
【0124】
なお、このとき本実施形態においても、実際に被験者Pを設置して放射線画像の本撮影を行ったときに、素抜け部の範囲が最も広くなるような撮影角度にCアーム12が回転した状態で計測用放射線画像の撮影が行われるものとする。
【0125】
そして、放射線画像検出器11aから読み出された各撮影線量の計測用放射線画像を表す電荷信号は、信号処理部11bのアンプ部によって電圧信号に変換され、AD変換部によってデジタル信号に変換された後、放射線量推定部30dに入力される。
【0126】
そして、放射線量推定部30dは、図10に示すような、各撮影線量の計測用放射線画像信号について、放射線吸収部材40を透過した範囲の出力信号FSと放射線吸収部材40の放射線の吸収特性とに基づいて、素抜け部の範囲DRの放射線強度分布XDを推定する。なお、図10においては、素抜け部以外の範囲の放射線強度分布も示しているが、この部分は推定しても推定しなくてもよい。
【0127】
そして、放射線量推定部30dは、素抜け部の範囲DRの放射線強度分布XDにおける各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布の値を素抜け部の推定放射線量として取得する。このようにして各撮影線量に対する推定放射線量が取得される。
【0128】
また、上記説明においては、本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を放射線CT画像撮影システムに用いたものについて説明したが、これに限らず、放射線画像検出器を繰り返して使用して放射線画像の撮影を行うとともに、残像補正を行う放射線画像撮影装置であればその他の装置に適用してもよい。
【0129】
たとえば、断層画像を撮影可能な放射線トモシンセシス撮影装置にも適用可能である。図16は放射線トモシンセシス撮影装置の一例を示すものである。この装置においては、撮影台23上の被写体Pの中に設定された点Qを中心とする弧状の軌跡Mに沿って放射線源10が移動され、その移動位置が変わる毎に、つまり放射線照射軸Oと撮影台23とがなす角度が変わる毎に放射線画像の撮影がなされる。こうして得られた複数の放射線画像に基づいて再構成演算を行うことによって、断層画像や3次元画像を再構成することができる。
【0130】
また、図17は、放射線トモシンセシス撮影装置の別の例を示すものである。この装置においては、たとえば、天井などに設置された走行系によって放射線源10を移動可能に支持し、放射線源10を撮影台22と平行な方向に、つまり直線状の軌跡Nに沿って移動させる。そして、その移動位置が変わる毎に放射線源10のあおり角度、つまり放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変えられて、その都度放射線画像の撮影がなされる。この場合も、撮影によって得られた複数の放射線画像に基づいて再構成演算を行うことによって、断層画像や3次元画像を再構成することができる。
【0131】
ここで、上記第1および第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、放射線量推定部30dが、素抜け部の範囲が最大となるときのCアーム12の撮影角度に応じた素抜け部の範囲を素抜け部の放射線量推定対象の範囲として採用し、その放射線量推定対象の素抜け部における各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布を素抜け部の推定放射線量として取得するようにしたが、図16や図17に示した放射線トモシンセシス撮影装置においては、複数の放射線画像の撮影毎に放射線照射軸Oと放射線画像検出器11aの検出面とがなす角度が変わり、これにより素抜け部の範囲が変化することになるので、以下のようにして素抜け部の放射線量推定対象の範囲を決定する。
【0132】
より具体的には、たとえば、図16または図17に示す放射線トモシンセシス撮影装置
において、被写体Pの正面から撮影した際の被写体領域と素抜け部との関係は図18(A)に示すようになり、被写体Pを図16(図17)に示す右側の斜め方向から撮影した際の被写体領域と素抜け部との関係は図18(B)に示すようになり、被写体Pを図16(図17)に示す左側の斜め方向から撮影した際の被写体領域と素抜け部との関係は図18(C)に示すようになる。なお、図18(A)〜(C)は放射線画像上の被写体領域と素抜け部を模式的に示したものであり、その大きさや形状は正確なものではない。
【0133】
そして、素抜け部の推定放射線量を取得する際に必要なのは、一連の複数の放射線画像の撮影過程において素抜け部と被写体領域とが入れ替わる範囲である。したがって、まず、図18(A)〜(C)に示す各放射線画像の素抜け部をOR演算した領域を取得するとともに、各放射線画像の被写体領域をOR演算した領域とを取得する。そして、上記素抜け部のOR演算領域と上記被写体領域のOR演算領域とをAND演算した領域を、素抜け部と被写体領域とが入れ替わる領域として取得する。すなわち、このAND演算領域を、素抜け部の放射線量推定対象の範囲として取得する。
【0134】
そして、放射線量推定部30dが、上記のようにして取得した放射線量推定対象の素抜け部における各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布を素抜け部の推定放射線量として取得する。
【0135】
なお、素抜け部の推定放射線量を取得した後の残像電荷量の取得、撮影間隔や撮影線量の取得、および残像補正の方法については、上記第1および第2の実施形態と同様である。
【0136】
また、上記第1よび第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいても、上述したように素抜け部と被写体領域とが入れ替わる領域を素抜け部の放射線量推定対象の範囲として取得し、その放射線量推定対象の素抜け部における各画素の放射線強度分布の値のうち、最大値となる画素の放射線強度分布を素抜け部の推定放射線量として取得するようにしてもよい。このようにして素抜け部の推定放射線量を取得することにより、より正確な素抜け部の推定放射線量を取得することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 撮影装置
10 放射線源
11 放射線検出部
11a 放射線画像検出器
11b 信号処理部
12 Cアーム
15 駆動部
30 コンピュータ
30a 残像補正部
30b 再構成部
30c 表示信号生成部
30d 放射線量推定部
30e 残像電荷量取得部
30e 撮影制御部
30f 撮影間隔取得部
30g 撮影制御部
30h 撮影条件入力部
30i 撮影線量取得部
31 モニタ
40 放射線吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、該放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像の撮影方法において、
予め取得した前記放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、
該推定した放射線の線量と予め設定された前記放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、
該取得した残像電荷量と前記放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、前記放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔を取得することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項2】
放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、該放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像の撮影方法において、
予め取得した前記放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定し、
該推定した放射線の線量と予め設定された前記放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得し、
該取得した残像電荷量と前記放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、前記放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影に用いる前記放射線の照射条件を取得することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項3】
放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、該放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置において、
予め取得した前記放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定する放射線量推定部と、
該放射線量推定部によって推定された放射線の線量と予め設定された前記放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得する残像電荷量取得部と、
該残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量と前記放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、前記放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影の間隔を取得する撮影間隔取得部とを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器であって、繰り返して放射線画像の撮影に用いられる放射線画像検出器と、該放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部とを備えた放射線画像撮影装置において、
予め取得した前記放射線画像検出器における放射線強度分布に基づいて、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定する放射線量推定部と、
該放射線量推定部によって推定された放射線の線量と予め設定された前記放射線画像検出器の残像の減衰特性とに基づいて残像電荷量を取得する残像電荷量取得部と、
該残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量と前記放射線画像検出器によって検出される放射線画像信号の最大値との和に基づいて、前記放射線画像検出器の出力が飽和しないように次回以降の放射線画像の撮影に用いる前記放射線の照射条件を取得する放射線量取得部とを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記放射線強度分布が、前記放射線画像検出器によって検出された放射線画像信号に基づいて取得されたものであることを特徴とする請求項3または4記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記放射線画像検出器における画像領域以外の領域に設けられた放射線吸収部材を備え、
前記放射線強度分布が、前記放射線吸収部材を透過した放射線の照射に応じて前記放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に基づいて取得されたものであることを特徴とする請求項5記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記放射線画像検出器が、互いに異なる方向から前記被写体に照射された放射線を順次検出するものであり、
前記放射線量推定部が、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達する放射線の照射範囲が最大となる方向からの放射線の照射に応じた放射線強度分布を用いて、前記放射線の線量の推定を行うものであることを特徴とする請求項3から6いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記放射線画像検出器が、互いに異なる方向から前記被写体に照射された放射線を順次検出するものであり、
前記放射線量推定部が、前記被写体の体厚が最も厚くなる方向からの放射線の照射に応じた放射線強度分布を用いて、前記放射線の線量の推定を行うものであることを特徴とする請求項3から6いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記放射線強度分布が、前記放射線源の管電流、管電圧、放射線の照射時間および付加フィルタの種類のうちの少なくとも1つの条件に基づいて取得されたものであることを特徴とする請求項3または4記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記残像電荷量取得部が、前記放射線源の管電圧、管電流、放射線の照射時間および付加フィルタの種類のうちの少なくとも1つの条件に対応する残像減衰特性を取得するものであることを特徴とする請求項3から8いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記撮影間隔取得部が、前記放射線画像検出器を構成する各画素について取得された前記残像電荷量のうちの最大の残像電荷量に基づいて前記撮影間隔を取得するものであることを特徴とする請求項3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記放射線量取得部が、前記放射線画像検出器を構成する各画素について取得された前記残像電荷量のうちの最大の残像電荷量に基づいて前記放射線の線量を取得するものであることを特徴とする請求項4記載の放射線画像撮影装置。
【請求項13】
前記残像電荷量取得部によって取得された残像電荷量に基づいて、前記放射線画像検出器から出力された放射線画像信号に残像補正を施す残像補正部を備えたことを特徴とする請求項3から12いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記放射線画像検出器が、互いに異なる方向から前記被写体に照射された放射線を順次検出するものであり、
前記残像補正部が、予め設定された前記放射線画像検出器の残像の減衰特性と前記残像補正の対象の放射線画像信号の撮影時までの撮影時間とに基づいて残像補正量を取得し、該残像補正量に基づいて前記残像補正を施すものであることを特徴とする請求項13記載の放射線画像撮影装置。
【請求項15】
互いに異なる方向からの前記被写体への放射線の照射により前記放射線画像検出器によって検出された複数の画像信号に基づいて断層画像を再構成する放射線CT撮影装置であることを特徴とする請求項3から14いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項16】
互いに異なる方向からの前記被写体への放射線の照射により前記放射線画像検出器によって検出された複数の画像信号に基づいて断層画像を再構成する放射線トモシンセシス撮影装置であることを特徴とする請求項3から14いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項17】
前記放射線量推定部が、前記繰り返しの放射線画像の撮影の過程において、前記放射線が前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した領域と前記放射線が前記被写体を透過して前記放射線画像検出器に到達した領域とが入れ替わる領域を取得し、
該取得した領域と前記放射線強度分布とに基づいて、前記被写体を透過することなく前記放射線画像検出器に到達した放射線の線量を推定するものであることを特徴とする請求項3から16いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−212434(P2011−212434A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57708(P2011−57708)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】