説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、欠陥画素抽出プログラム、及び欠陥画素抽出方法

【課題】短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、欠陥画素抽出プログラム、及び欠陥画素抽出方法を提供する。
【解決手段】画素20のTFTスイッチ4の駆動時間(オン時間)を異ならせて取得した、第1の駆動時間による第1画像と、第2の駆動時間による第2画像とを取得し、第1画像と第2画像との差分画像を取得する。さらに、差分画像の画素の画素値と、当該画素の周囲の画素の画素値の平均値とを比較した比較値が閾値を超える場合は、当該画素を欠陥画素として判定し、記憶することにより欠陥画素の抽出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、欠陥画素抽出プログラム、及び欠陥画素抽出方法に係り、特に照射された放射線に応じた放射線画像の撮影に用いられる放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、欠陥画素抽出プログラム、及び欠陥画素抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断等を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が知られている。当該放射線画像撮影装置は、放射線照射装置から照射され、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を撮影する。当該放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じて発生した電荷を収集して読み出すことにより放射線画像の撮影を行う。このような放射線画像撮影装置としては、いわゆるカセッテ等のFPD(Flat Panel Detector)パネルが挙げられる。
【0003】
このような放射線画像撮影装置として、放射線または、放射線が変換された光が照射されることにより検知した放射線に応じて電荷を発生して蓄積する光電変換素子等によるセンサ部と、当該センサ部に蓄積された電荷を読み出して信号配線に出力するスイッチング素子と、を備えた画素を複数備えたものが知られている。当該放射線画像撮影装置では、各画素から信号配線に出力された電荷情報を読み出して、読み出した電荷情報(電気信号)に基づいて放射線画像を生成することにより撮影を行う。
【0004】
このような放射線画像撮影装置において、当該画素に欠陥が生じている場合、適切な画像が生成されない場合がある。そのため、欠陥画素を抽出する技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、センサ部で電荷を発生・蓄積する時間(蓄積時間)が異なる二つの画像(電気信号)を差分処理して差分信号を得て、当該差分信号が正常な信号範囲を越えている場合に欠陥素子と判定して欠陥画素を抽出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許43964351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術では、蓄積時間が異なる二つの画像を取得しなくてはいけない。そのため、蓄積時間が長い画像を取得する必要がある。特に、リーク電流(暗電流)により画像を取得する場合、暗電流が小さい、画質特性が良好な放射線検出器では、より長い時間を要する場合がある。その結果、欠陥画素の抽出に必要な時間が長くなる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、欠陥画素抽出プログラム、及び欠陥画素抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影装置では、照射された放射線の線量に応じた電荷を発生するセンサ部、及び前記センサ部で発生された電荷に応じた電気信号を駆動信号に基づいて信号配線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素の各々から出力された前記電気信号に応じた画像を、前記センサ部から電荷が読み出される際にバイアス電源から印加されるバイアス電圧の電圧値、前記駆動信号を出力する駆動手段による前記スイッチング素子の駆動時間、前記駆動信号の電圧値、及び前記電気信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の少なくとも1つの条件を異ならせて複数取得し、取得した複数の画像の差分画像に基づいて、欠陥画素を抽出する抽出手段と、を備える。
【0010】
また、本発明は、請求項2に記載の放射線画像撮影装置のように、前記抽出手段は、放射線が照射された状態で前記複数の画像を取得することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、請求項3に記載の放射線画像撮影装置のように、前記抽出手段は、放射線が非照射の状態で前記複数の画像を取得することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、請求項4に記載の放射線画像撮影装置のように、前記抽出手段は、前記差分画像の画素の前記電気信号に応じた値と、当該差分画像の画素の周囲の予め定められた領域の画素の電気信号に応じた値の平均値と、を比較した比較値が予め定め定められた閾値を越えたか否かにより欠陥画素を抽出することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、請求項5に記載の放射線画像撮影装置のように、前記抽出手段は、前記差分画像の画素の電気信号に応じた値と、当該差分画像の画素の周囲の予め定められた領域の画素の電気信号に応じた値の中央値と、を比較した比較値が予め定め定められた閾値を越えたか否かにより欠陥画素を抽出することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、請求項6に記載の放射線画像撮影装置のように、前記抽出手段により抽出された欠陥画素の位置を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記欠陥画素の位置に基づいて、前記電気信号に応じた画像を補正する補正手段と、を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、請求項7に記載の放射線画像撮影装置のように、前記補正手段は、前記欠陥画素の電気信号を予め定められた非欠陥画素の電気信号で置き換えることにより補正することが好ましい。
【0016】
請求項8に記載の放射線画像撮影システムは、放射線照射装置と、前記放射線照射装置から照射された放射線により放射線画像を撮影する前記請求項1から前記請求項7のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、を備える。
【0017】
請求項9に記載の欠陥画素抽出プログラムは、前記請求項1から前記請求項7に記載の放射線画像撮影装置の抽出手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0018】
請求項10に記載の欠陥画素抽出方法は、照射された放射線の線量に応じた電荷を発生するセンサ部、及び前記センサ部で発生された電荷に応じた電気信号を駆動信号に基づいて信号配線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素を備えた放射線画像撮影装置に対して、前記複数の画素の各々から出力された前記電気信号に応じた画像を、前記センサ部から電荷が読み出される際にバイアス電源から印加されるバイアス電圧の電圧値、前記駆動信号を出力する駆動手段による前記スイッチング素子の駆動時間、前記駆動信号の電圧値、及び前記電気信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の少なくとも1つの条件を異ならせて複数取得する工程と、取得した複数の画像の差分画像を取得する工程と、前記差分画像に基づいて欠陥画素を抽出する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影システムの一例の概略構成を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図3】第1の実施の形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す平面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る放射線検出器の一例の線断面図である。
【図5】1走査配線あたりの駆動時間と読み出し効率との関係を示す説明図である。
【図6】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、撮影処理の一例のフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図9】1走査配線(走査配線101)あたりの駆動電圧と読み出し効率との関係を示す説明図である。
【図10】第3の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図12】第4の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図13】バイアス電圧と出力値(電気信号値)との関係を示す説明図である。
【図14】第5の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図15】第6の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図16】第7の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【図17】第8の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における、欠陥画素抽出処理の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置を用いた放射線画像撮影システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の概略構成図である。
【0023】
放射線画像撮影システム200は、放射線(例えばエックス線(X線)等)を被検体206に照射する放射線照射装置204と、放射線照射装置204から照射され、被検体206を透過した放射線を検出する放射線検出器10を備えた放射線画像撮影装置100と、放射線画像の撮影を指示すると共に、放射線画像撮影装置100から放射画像を取得する制御装置202と、を備えている。制御装置202の制御に基づいたタイミングで、放射線照射装置204から照射され撮影位置に位置している被検体206を透過することで画像情報を担持した放射線は放射線画像撮影装置100に照射される。
【0024】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の概略構成について説明する。図2は、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の一例の概略構成図である。本実施の形態では、X線等の放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器10に本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出器10を備えて構成されている。なお、図2では、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0025】
放射線検出器10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチング素子であるTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が複数、マトリックス状(行列状)に配置されている。本実施の形態では、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、センサ部103で電荷が発生する。
【0026】
画素20は、一方向(図2の横方向、以下「行方向」ともいう)及び当該行方向に対する交差方向(図2の縦方向、以下「列方向」ともいう)にマトリックス状に複数配置されている。図2では、画素20の配列を簡略化して示しているが、本実施の形態では、具体的一例として、画素20は行方向及び列方向に1024個×1024個配置されている。
【0027】
また、放射線検出器10には、基板1(図3参照)上に、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられており、本実施の形態では、具体的一例として、画素20が行向及び列方向に1024個×1024個配置されている場合、信号配線3及び走査配線101はそれぞれ1024本ずつ設けられている。なお、本実施の形態の画素サイズ(画素20、1画素あたりのサイズ)は、150μmとした。
【0028】
さらに、放射線検出器10には、各信号配線3と並列にバイアス線25が設けられている。各画素20のセンサ部103は、画素20の列毎にバイアス線25に接続されており、バイアス線25を介してバイアス電源110からバイアス電圧が印加されている。
【0029】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチング(駆動)するための駆動信号が流れる。このように駆動信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチングされる。
【0030】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がONされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0031】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。なお、本実施の形態で電気信号の「検出」とは、電気信号をサンプリングすることを示している。
【0032】
また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための駆動信号を出力する走査配線駆動回路104が接続されている。図2では、信号検出回路105及び走査配線駆動回路104を1つに簡略化して示しているが、例えば、信号検出回路105及び走査配線駆動回路104を複数設けて所定本(例えば、256本)毎に信号配線3または走査配線101を接続する。例えば、信号配線3及び走査配線101が1024本ずつ設けられている場合、走査配線駆動回路104を4個設けて256本ずつ走査配線101を接続し、信号検出回路105も4個設けて256本ずつ信号配線3を接続する。
【0033】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路50を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路50により増幅し、A/D(アナログ/デジタル)変換回路54によりデジタル信号へ変換する。
【0034】
増幅回路50は、チャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ等のアンプ52と、アンプ52に並列に接続されたコンデンサCと、アンプ52に並列に接続された電荷リセット用のスイッチSW1と、を備えて構成されている。
【0035】
増幅回路50では、電荷リセット用のスイッチSW1がオフの状態で画素20のTFTスイッチ4により電荷(電気信号)が読み出され、コンデンサCにTFTスイッチ4により読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてアンプ52から出力される電圧値が増加するようになっている。
【0036】
また、制御部106は、電荷リセット用スイッチSW1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用のスイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。なお、電荷リセット用のスイッチSW1がオン状態とされると、アンプ52の入力側と出力側とが短絡され、コンデンサCの電荷が放電される。
【0037】
A/D変換回路54は、S/H(サンプルホールド)スイッチSWがオン状態において、増幅回路50から入力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換する機能を有するものである。A/D変換回路54は、デジタル信号に変換した電気信号を制御部106に順次出力する。
【0038】
なお、本実施の形態のA/D変換回路54には、信号検出回路105に備えられた全ての増幅回路50から出力された電気信号が入力される。すなわち、本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50(信号配線3)の数にかかわらず、1つのA/D変換回路54を備えている。
【0039】
この信号検出回路105及び走査配線駆動回路104には、制御部106が接続されている。本実施の形態の制御部106は、信号検出回路105において変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、放射線の照射開始のタイミングを検出して、検出したタイミングに基づいて、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、走査配線駆動回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する機能を有している。
【0040】
本実施の形態の制御部106は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROMおよびRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部(いずれも図示省略)を備えている。制御部106は、ROMに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより、放射線画像の撮影のための制御を行う。また、本実施の形態の制御部106は、予め定められた条件が異なる複数の画像を生成し、取得して、画素20の中から欠陥画を抽出する機能を有している(詳細後述)。
【0041】
また、制御部106は、画像を撮影するよう制御装置202から指示を受けると、走査配線駆動回路104及び信号検出回路105を制御し、画素20のセンサ部103が発生した電荷を所定の期間蓄積し、所定の期間経過後に、順次、走査配線101にオン信号を出力させて各画素20毎に信号配線3を介して電気信号を読取って、当該電気信号に基づいて放射線画像を生成する。
【0042】
図3には、本実施形態に係る間接変換方式の放射線検出器10の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3の放射線画像撮影用の画素20のA−A線断面図が示されている。
【0043】
図4に示すように、放射線検出器10の画素20Aは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101(図3参照)、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照)。この走査配線101、ゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0044】
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0045】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0046】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図3参照。)。ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。当該ソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(図示省略)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0047】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFTスイッチ4や信号配線3を保護するために、TFT保護膜層30が形成されている。このTFT保護膜層30は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0048】
このTFT保護膜層30上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0049】
本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層30のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0050】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料やITO等導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0051】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光の吸収が十分でないことによる、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0052】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n+層、i層、p+層(n+アモルファスシリコン、アモルファスシリコン、p+アモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層21A、i層21B、p+層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(一対の自由電子と自由正孔)が発生する。n+層21A及びp+層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0053】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出器10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0054】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27Aを持ち、各半導体層21を覆うように、塗布型の層間絶縁膜23が形成されている。
【0055】
この層間絶縁膜23上には、バイアス線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。バイアス線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、層間絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0056】
このように形成された放射線検出器10の表面には、シンチレータが備えられる。例えば、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、放射線検出器10の表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてCsIやGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。また例えば、射線検出器10の表面にCsI等からなるシンチレータが直接蒸着される。本実施の形態では、具体的一例として、両面接着テープ(20μm厚)を用いてCsI:Tlからなる500μm厚のシンチレータを貼り合せた。
【0057】
次に、上記構成の放射線画像撮影装置100による放射線検出器10の欠陥画素を抽出する際の動作の流れについて説明する。なお、本実施の形態では、放射線照射装置204から放射線が照射された状態で、TFTスイッチ4のオン時間(駆動時間と称す)を異ならせて取得した複数の画像を用いて欠陥画素の抽出を行う場合について説明する。
【0058】
図5に、1走査配線(走査配線101)あたりの駆動時間と読み出し効率との関係を示す。図5に示すように、1走査配線あたりの駆動時間が長いと、センサ部103に蓄積された電荷を読み出す読み出し効率は、高くなり、本実施の形態では、読み出し時間を充分長く(40μs)設定した時の読み出し効率を100%とした場合に、読み出し効率が98%となる時間を第1駆動時間としている。また、第1駆動時間の読み出し効率(98%)よりも低い読み出し効率(具体的一例として80%)となる駆動時間を第2駆動時間(第2駆動時間<第1駆動時間)としている。非欠陥画素(正常画素)であれば、第2駆動時間の方が読み出し効率が低いため、第1駆動時間によりTFTスイッチ4を駆動(オン)して得られた電気信号値よりも第2駆動時間によりTFTスイッチ4を駆動(オン)して得られた電気信号値の方が小さくなる。
【0059】
欠陥画素の抽出を行う場合、制御部106では、欠陥画素抽出プログラムがCPUにより実行されることにより以下の欠陥画素処理が実行される。当該欠陥画素抽出処理の流れの一例のフローチャートを図5に示す。
【0060】
欠陥画素の抽出を行うにあたり、まず、本実施の形態ではステップ100で放射線の照射が行われる。なお、放射線の照射は、制御装置202等からの指示により、制御部106で判断してもよいし、放射線画像撮影装置100が制御装置202や放射線照射装置204と非同期に放射線の検出を行ういわゆる同期フリーの放射線画像撮影装置である場合は、放射線画像撮影装置100自身で放射線が照射されたことを検出してもよい。
【0061】
放射線が照射された状態において次のステップ102では、第1駆動時間によりTFTスイッチ4が駆動(オン)するよう駆動信号を全走査配線101に順次出力するよう駆動回路104に制御信号を出力する。本実施の形態では、TFTスイッチ4を駆動する周期は、駆動時間(オン時間)+非駆動時間(オフ時間)により定められ、本実施の形態では、具体的一例として、第1駆動時間を30μs、非駆動時間を10μsとしている。
【0062】
なお、本実施の形態では、具体的一例として、駆動信号の電圧を15V、バイアス電圧(センサ部103の上部電極22に印加される電圧)を10V、センサ部103で電荷が発生及び蓄積される時間(以下、蓄積時間という)を200msecとした。
【0063】
当該第1駆動信号により、順次走査配線101毎に、TFTスイッチ4がオンされて、センサ部103から電荷が読み出されて、当該電荷に応じた電気信号が信号配線3に出力される。制御部106は、信号回路105を介して当該電気信号を画素20に応じて取得し、当該電気信号に応じた第1放射線画像情報を取得する。なお、ここでは、信号回路105から取得した電気信号に所定の処理を施す前の電気信号そのものにより第1放射線画像情報を取得してもよい。次のステップ102では、取得した第1放射線画像の画像情報(電気信号値)を記憶する。
【0064】
次のステップ106では、上記と同様に、放射線が照射された状態において第2駆動時間によりTFTスイッチ4が駆動(オン)するよう駆動信号を全走査配線101に順次出力するよう駆動回路104に制御信号を出力する。なお、駆動時間以外の条件は全て上記と同様である。本実施の形態では、具体的一例として、第2駆動時間を10μs、非駆動時間を10μsとしている。当該第2駆動信号により、順次走査配線101毎に、TFTスイッチ4がオンして、センサ部103から電荷が読み出されて、当該電荷に応じた電気信号が信号配線3に出力される。制御部106は、信号回路105を介して当該電気信号を画素20に応じて取得し、当該電気信号に応じた第2放射線画像情報を取得する。なお、ここでは、信号回路105から取得した電気信号に所定の処理を施す前の電気信号そのものにより第2放射線画像情報を取得してもよい。次のステップ108では、取得した第2画像の画像情報(電気信号値)を記憶する。
【0065】
次のステップ110では、第1放射線画像と第2放射線画像との差分画像を取得する。本実施の形態では、具体的には、第1放射線画像の電気信号値から第2放射線画像の電気信号値を引いた電気信号の差分値により得られた画像を差分画像として取得する。
【0066】
次のステップ112では、欠陥画素であるか否かを判定する画素(差分画像の画素)の電気信号値(以下、画素の電気信号値をいう場合は画素値という)と、周囲の画素の画素値の平均値と、を比較する。平均値を得るための周囲の画素は、例えば、判定する画素を中心とした、予め定められた領域の画素とすればよい。当該領域の大きさ等は、放射線検出器10の仕様や特性等に応じて予め定めておけばよい。次のステップ114では、比較値が閾値未満であるか否かを判断する。欠陥画素である場合、当該画素の画素値は、周囲の画素(非欠陥画素)の平均値に比べて大きく異なる。そのため、本実施の形態では、このように周囲の画素に比べて欠陥画素とみなせるほど大きく画素値が異なっているか否かを判断するための閾値を予め定めておく。なお、当該閾値は、射線検出器10の仕様や特性等に応じて予め定めておけばよい。比較値が閾値未満の場合、当該画素の画素値と周知の画素の画素値の平均値との差が小さい、または差が無い状態であるため、欠陥画素ではないとみなして否定されてステップ118へ進む。
【0067】
一方、比較値が閾値を越える場合、当該画素の画素値と周知の画素の画素値の平均値との差が大きく、当該画素の画素値が周囲の画素の平均値に比べて大きく異なる状態であるため、肯定されてステップ116へ進み、欠陥画素とみなして、記憶部109に記憶した後、ステップ118へ進む。
【0068】
ステップ118では、全画素に対して、上記ステップ112〜116の処理を行い、欠陥画素であるか否かの判断を行ったかを判断する。未だ全画素に対して処理を行っていない場合は、否定されてステップ112に戻り、当該処理を繰り返す。一方、全画素に対して終了した場合は、肯定されて本処理を終了する。
【0069】
なお、本実施の形態で上述のようにして第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は、以下の(1)式のようになる。
【0070】
第1放射線画像取得時間+第2放射線画像取得時間
=(蓄積時間+(第1駆動時間+非駆動時間)×ライン数)msec+(蓄積時間+(第2駆動時間+非駆動時間)×ライン数)msec
=(200+(0.030+0.010)×1024)msec+(200+(0.010+0.010)×1024)msec=461.44mmsec ・・・(1)
【0071】
従って、本実施の形態の第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は合計461.44mmsecであった。
【0072】
以上説明したように本実施の形態の放射線画像撮影装置100における放射線検出器10では、画素20のTFTスイッチ4の駆動時間(オン時間)を異ならせて取得した、第1の駆動時間による第1放射線画像と、第2の駆動時間による第2放射線画像とを取得し、第1放射線画像と第2放射線画像との差分画像を取得する。さらに、差分画像の画素の画素値と、当該画素の周囲の画素の画素値の平均値とを比較した比較値が閾値を超える場合は、当該画素を欠陥画素として判定し、記憶することにより欠陥画素の抽出を行う。
【0073】
このように、本実施の形態では、TFTスイッチ4の駆動時間を異ならせて取得した、第1放射線画像及び第2放射線画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。これにより、ワークフローの低下を伴うことなく、欠陥画素を抽出することができ、放射線検出器10の画素20やライン(走査配線101、信号配線3)の良否を判定することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、第1放射線画像及び第2放射線画像の差分画像により欠陥画素の抽出を行っているため、電気信号(画素値)から駆動時間に依存しない他の成分や固定ノイズによる成分等を除去し、駆動時間に依存した成分を取り出すことができる。従って、駆動時間に依存しない他の要因による成分が各画素20間でばらついている場合であっても、適切に容易に欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0075】
さらに、上述のようにして欠陥画素の抽出が行われた後の、放射線画像の撮影方法について説明する。図7に、本実施の形態の放射線画像撮影装置で行われる放射線画像の撮影処理のフローチャートを示す。
【0076】
ステップ150では、放射線画像の取得のために、まず、放射線の照射が行われる。なお、本処理は上述の欠陥画素抽出処理のステップ100(図6参照)と略同様の処理である。
【0077】
次のステップ152では、所定の駆動時間によりTFTスイッチ4が駆動(オン)するよう駆動信号を全走査配線101に順次出力するよう駆動回路104に制御信号を出力する。所定の駆動時間は、放射線画像の撮影のために通常、定められた時間であれば限定されないが、本実施の形態では、具体的一例として上述したように、読み出し効率が98%程度となる駆動時間としている。当該所定の駆動信号により、順次走査配線101毎に、TFTスイッチ4がオンされて、センサ部103から電荷が読み出されて、当該電荷に応じた電気信号が信号配線3に出力される。制御部106は、信号回路105を介して当該電気信号を画素20に応じて取得し、当該電気信号に応じた放射線画像情報を取得する。
【0078】
次のステップ154では、欠陥画素があるか否かを判断する。本実施の形態では、記憶部109に欠陥画素の位置情報が記憶されているか否かにより判断する。記憶されていない場合は、欠陥画素が無いものとみなして否定されてステップ160へ進む。一方、記憶されている場合は、欠陥画素が有るため肯定されてステップ156へ進む。
【0079】
ステップ156では、欠陥画素を非欠陥画素で補正する補正処理を行う。本実施の形態では、具体的一例として、取得した放射線画像の当該欠陥画素の位置にあたる画素の画素値を、予め定められた非欠陥画素の画素値と置き換えることにより補正を行う。予め定められた非欠陥画素とは、隣接する画素のうち欠陥画素ではない画素等が挙げられる。また、例えば、周囲の画素の画素値の平均値等であってもよく、補正方法は、特に限定されず、放射線画像の解像度等に応じて定められるものでもよい。なお、当該補正処理は、記憶部109に位置情報が記憶されている全ての欠陥画素に対して行う。
【0080】
次のステップ160では、上述したようにノイズ除去などの所定の処理を施して放射線画像を生成し、制御装置202に出力した後、本処理を終了する。
【0081】
このように本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、放射線画像を撮影する際に、抽出された欠陥画素の位置情報に基づいて、撮影された放射線画像を補正して、補正された放射線画像を出力するため、出力される放射線画像のアーチファクトを抑制することができる。
【0082】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0083】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第1の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第1の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。
【0084】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図8に示す。第1の実施の形態では放射線が照射されている状態の放射線画像を所得したが、本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、放射線が照射されていない状態で暗電流(リーク電流)による画像(以下、ダーク画像と称す)を取得する。なお、本実施の形態におけるその他の駆動条件(第1駆動時間、第2駆動時間、非駆動時間、駆動電圧、バイアス電圧、蓄積時間)は第1の実施の形態と同一である。
【0085】
そのため、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図6参照)と比べて、ステップ100の処理がなく、放射線が照射されていない状態で第1ダーク画像と第2ダーク画像とを取得する他は、略同様の処理となっている。すなわち、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図8参照)のステップ202〜ステップ218は、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ102〜ステップ118にそれぞれ対応している。
【0086】
従って、本実施の形態においてもTFTスイッチ4の駆動時間を異ならせて取得した、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0087】
なお、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に上述の(1)式により、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間が算出される。具体的には、(2)式により得られる。
【0088】
(200+(0.030+0.010)×1024)msec+(200+(0.010+0.010)×1024)msec=461.44mmsec ・・・(2)
【0089】
従って、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間の合計は461.44mmsecであった。
【0090】
また、本実施の形態では、放射線が照射されない状態で、リーク電流(暗電流)により取得された第1ダーク画像及び第2ダーク画像を用いているため、差分画像は、リーク電流(暗電流)による成分に大きく依存したものとなる。従って、その後の処理で、リーク電流の量が異常であるか否かを直接的に判断することができる。これにより、欠陥画素をより適切に抽出することができる。
【0091】
[第3の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0092】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第1の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第1の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。本実施の形態では、放射線照射装置204から放射線が照射された状態で、TFTスイッチ4をオンにする駆動信号の電圧値(以下、駆動電圧という)を異ならせて取得した複数の画像を用いて欠陥画素の抽出を行う場合について説明する。
【0093】
図9に、1走査配線(走査配線101)あたりの駆動電圧と読み出し効率との関係を示す。図9に示すように、駆動電圧が高いと、センサ部103に蓄積された電荷を読み出す読み出し効率は、高くなり、本実施の形態では、駆動電圧を充分高くした時の読み出し効率を100%とした場合に、読み出し効率が98%となる電圧を第1駆動電圧としている。また、第1駆動電圧の読み出し効率(100%)よりも低い読み出し効率(具体的一例として80%)となる駆動電圧を第2駆動電圧(第2駆動電圧<第1駆動電圧)としている。なお、駆動電圧を高くしすぎた場合、TFTスイッチ4素子の閾値シフトが発生し、特性が変化するため、本実施の形態では、読み出し効率を100%とみなす駆動電圧を25Vとした。
【0094】
非欠陥画素(正常画素)であれば、第2駆動電圧の方が読み出し効率が低いため、第1駆動電圧によりTFTスイッチ4を駆動(オン)して得られた電気信号値よりも第2駆動電圧によりTFTスイッチ4を駆動(オン)して得られた電気信号値の方が小さくなる。
【0095】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図10に示す。なお、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図10参照)のステップ300〜ステップ318は、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図8参照)のステップ100〜ステップ118の処理にそれぞれ対応している。
【0096】
本実施の形態では、駆動時間を20μs、非駆動時間を10μs、バイアス電圧を10V、蓄積時間を200msecとし、第1駆動電圧を20V、第2駆動電圧を15Vとしている。ステップ302では、第1駆動電圧の駆動信号を走査配線101に順次出力するよう駆動回路104を制御して第1放射線画像情報を取得してステップ304で第1放射線画像情報を記憶する。一方、ステップ306では、第2駆動電圧の駆動信号を走査配線101に順次出力するよう駆動回路104を制御して第2放射線画像情報を取得してステップ308で第2放射線画像情報を記憶する。
【0097】
本実施の形態では、このようにして得られた第1放射線画像と第2放射線画像の差分画像により、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ110〜ステップ118と同様の処理を行い欠陥画素の抽出を行う。
【0098】
このように本実施の形態では、TFTスイッチ4を駆動する駆動信号の駆動電圧を異ならせて取得した、第1放射線画像及び第2放射線画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0099】
なお、本実施の形態で上述のようにして第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は、以下の(3)式のようになる。
【0100】
第1放射線画像取得時間+第2放射線画像取得時間
=(蓄積時間+(駆動時間+非駆動時間)×ライン数)×2
=(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(3)
【0101】
従って、本実施の形態の第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は合計461.44mmsecであった。
【0102】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0103】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第3の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第3の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。
【0104】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図11に示す。第3の実施の形態では放射線が照射されている状態の放射線画像を所得したが、本実施の形態では、第3の実施の形態と異なり、放射線が照射されていない状態で暗電流(リーク電流)によるダーク画像を取得する。なお、本実施の形態におけるその他の駆動条件(第1駆動電圧、第2駆動電圧、駆動時間、非駆動時間、バイアス電圧、蓄積時間)は第3の実施の形態と同一である。
【0105】
そのため、第3の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図10参照)と比べて、ステップ300の処理がなく、放射線が照射されていない状態で第1ダーク画像と第2ダーク画像とを取得する他は、略同様の処理となっている。すなわち、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図11参照)のステップ402〜ステップ418は、第3の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ302〜ステップ318にそれぞれ対応している。
【0106】
従って、本実施の形態においてもTFTスイッチ4の駆動信号の駆動電圧を異ならせて取得した、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0107】
なお、本実施の形態においても第3の実施の形態と同様に上述の(3)式により、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間が算出される。具体的には、(4)式により得られる。
【0108】
(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(4)
【0109】
従って、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間の合計は461.44mmsecであった。
【0110】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0111】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第1の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第1の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。本実施の形態では、放射線照射装置204から放射線が照射された状態で、バイアス電圧を異ならせて取得した複数の画像を用いて欠陥画素の抽出を行う場合について説明する。
【0112】
図12に、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の一例の概略構成図を示す。本実施の形態では、バイアス電源110からセンサ部103に印加するバイアス電圧を異ならせて複数の画像を取得するため、制御部106によりバイアス電源110の電圧を制御できるように構成されている。
【0113】
図13に、バイアス電圧と出力値(信号配線3に出力される電気信号の電気信号値)との関係を示す。図13に示すように、バイス電圧が高いと、出力値(電気信号値)は、高くなる。本実施の形態では、読み出し時のバイアス電圧を第2バイアス電圧とし、第2バイアス電圧よりも高い出力値(具体的一例として第2バイアス電圧の出力値の120%の出力値)となるバイアス電圧を第1バイアス電圧としている。非欠陥画素(正常画素)であれば、第1バイアス電圧の方が出力値が高いため、第1バイアス電圧を印加させた状態でセンサ部103から読み出した電気信号値よりも第2バイス電圧を印加させた状態でセンサ部103から読み出した電気信号値の方が小さくなる。
【0114】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図14に示す。なお、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図14参照)のステップ500〜ステップ518は、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図8参照)のステップ100〜ステップ118の処理にそれぞれ対応している。
【0115】
本実施の形態では、駆動時間を20μs、非駆動時間を10μs、駆動電圧を15V、蓄積時間を200msecとし、第1バイアス電圧を20V、第2バイアス電圧を10Vとしている。ステップ502では、第1バイアス電圧をバイアス電源110から画素20のセンサ部103に印加した状態で駆動信号を走査配線101に順次出力させて第1放射線画像情報を取得してステップ504で第1放射線画像情報を記憶する。一方、ステップ506では、第2バイアス電圧をバイアス電源110から画素20のセンサ部103に印加した状態で駆動信号を走査配線101に順次出力させて第2放射線画像情報を取得してステップ508で第1放射線画像情報を記憶する。
【0116】
本実施の形態では、このようにして得られた第1放射線画像と第2放射線画像の差分画像により、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ110〜ステップ118と同様の処理を行い欠陥画素の抽出を行う。
【0117】
このように本実施の形態では、センサ部103にバイアス電源110から印加するバイアス電圧を異ならせて取得した、第1放射線画像及び第2放射線画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0118】
なお、本実施の形態で上述のようにして第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は、以下の(5)式のようになる。
【0119】
第1放射線画像取得時間+第2放射線画像取得時間
=(蓄積時間+(駆動時間+非駆動時間)×ライン数)×2
=(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(5)
【0120】
従って、本実施の形態の第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は合計461.44mmsecであった。
【0121】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0122】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第5の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第5の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。
【0123】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図15に示す。第5の実施の形態では放射線が照射されている状態の放射線画像を所得したが、本実施の形態では、第5の実施の形態と異なり、放射線が照射されていない状態で暗電流(リーク電流)によるダーク画像を取得する。なお、本実施の形態におけるその他の駆動条件(第1バイアス電圧、第2バイアス電圧、駆動時間、非駆動時間、駆動電圧、蓄積時間)は第5の実施の形態と同一である。
【0124】
そのため、第5の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図14参照)と比べて、ステップ500の処理がなく、放射線が照射されていない状態で第1ダーク画像と第2ダーク画像とを取得する他は、略同様の処理となっている。すなわち、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図15参照)のステップ602〜ステップ618は、第5の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ502〜ステップ518にそれぞれ対応している。
【0125】
従って、本実施の形態においてもセンサ部103にバイアス電源110から印加するバイアス電圧を異ならせて取得した、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0126】
なお、本実施の形態においても第5の実施の形態と同様に上述の(5)式により、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間が算出される。具体的には、(6)式により得られる。
【0127】
(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(6)
【0128】
従って、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間の合計は461.44mmsecであった。
【0129】
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態について説明する。
【0130】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第1の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第1の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。本実施の形態では、放射線照射装置204から放射線が照射された状態で、増幅回路50の増幅率(電荷を増幅する電荷増幅倍率)を異ならせて取得した複数の画像を用いて欠陥画素の抽出を行う場合について説明する。
【0131】
増幅回路50の増幅率は、例えば、増幅回路50のコンデンサCの容量や、コンデンサCへの電荷蓄積時間により異なるため、本実施の形態では、これらを異ならせて、所定の増幅率になるように制御部106が増幅回路50の増幅率の設定を制御する。なお、増幅率の変更や設定方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いればよい。増幅率が大きいと、出力される電気信号は大きくなる。本実施の形態では、具体的一例として、第1増幅率を1倍圧とし、第2増幅率を2倍としている(第2増幅率<第1増幅率)。非欠陥画素(正常画素)であれば、第2増幅率により増幅された電気信号の方が第1増幅率により増幅された電気信号よりも電気信号値(画素値)が小さくなる。
【0132】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図16に示す。なお、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図16参照)のステップ700〜ステップ718は、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図8参照)のステップ100〜ステップ118の処理にそれぞれ対応している。
【0133】
本実施の形態では、駆動時間を20μs、非駆動時間を10μs、駆動電圧を15V、バイアス電圧を10V、蓄積時間を200msecとしている。ステップ702では、増幅回路50の増幅率を第1増幅率に設定した状態で駆動信号を走査配線101に順次出力させて第1放射線画像情報を取得してステップ704で第1放射線画像情報を記憶する。一方、ステップ706では、増幅回路50の増幅率を第2増幅率に設定した状態で駆動信号を走査配線101に順次出力させて第2放射線画像情報を取得してステップ708で第1放射線画像情報を記憶する。
【0134】
本実施の形態では、このようにして得られた第1放射線画像と第2放射線画像の差分画像により、第1の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ110〜ステップ118と同様の処理を行い欠陥画素の抽出を行う。
【0135】
このように本実施の形態では、増幅回路50の増幅率を異ならせて取得した、第1放射線画像及び第2放射線画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0136】
なお、本実施の形態で上述のようにして第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は、以下の(7)式のようになる。
【0137】
第1放射線画像取得時間+第2放射線画像取得時間
=(蓄積時間+(駆動時間+非駆動時間)×ライン数)×2
=(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(7)
【0138】
従って、本実施の形態の第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間は合計461.44mmsecであった。
【0139】
[第8の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0140】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、は、第7の実施の形態と略同一の構成及び動作であるため、同一部分については、説明を省略する。本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、欠陥画素の抽出方法が第5の実施の形態と異なるため、異なる動作(処理)についてここでは説明する。
【0141】
本実施の形態の制御部106で行われる欠陥画素抽出処理のフローチャートを図17に示す。第7の実施の形態では放射線が照射されている状態の放射線画像を所得したが、本実施の形態では、第7の実施の形態と異なり、放射線が照射されていない状態で暗電流(リーク電流)によるダーク画像を取得する。なお、本実施の形態におけるその他の駆動条件(第1バイアス電圧、第2バイアス電圧、駆動時間、非駆動時間、駆動電圧、蓄積時間)は第5の実施の形態と同一である。
【0142】
そのため、第7の実施の形態の欠陥画素抽出処理(図16参照)と比べて、ステップ700の処理がなく、放射線が照射されていない状態で第1ダーク画像と第2ダーク画像とを取得する他は、略同様の処理となっている。すなわち、本実施の形態の欠陥画素抽出処理(図17参照)のステップ802〜ステップ818は、第7の実施の形態の欠陥画素抽出処理のステップ702〜ステップ718にそれぞれ対応している。
【0143】
従って、本実施の形態においても増幅回路50の増幅率を異ならせて取得した、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の差分画像により、欠陥画素の抽出を行うことができるため、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。特に蓄積時間を異ならせて欠陥画素の抽出を行う場合(詳細後述、比較例1及び比較例2参照)に比べて、短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0144】
なお、本実施の形態においても第7の実施の形態と同様に上述の(7)式により、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間が算出される。具体的には、(8)式により得られる。
【0145】
(200+(0.020+0.010)×1024)×2msec=461.44mmsec ・・・(8)
【0146】
従って、第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間の合計は461.44mmsecであった。
【0147】
[比較例1]
上記実施の形態の放射線画像撮影装置100と略同様の放射線画像撮影装置において、蓄積時間を異ならせた第1放射線画像と第2放射線画像とを取得し、第1放射線画像と第2放射線画像の差分画像から上記実施の形態と同様にして欠陥画素抽出処理を行った。なお、駆動時間を20μs、非駆動時間を10μs、駆動電圧を15V、バイアス電圧を10Vmとした。第1蓄積時間を200msecとして第1放射線画像を取得し、第2蓄積時間を600msecとして第1放射線画像を取得した。
【0148】
第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に要した時間が算出される。具体的には、(9)式により得られる。
【0149】
(200+(0.020+0.010)×1024)+(600+(0.020+0.010)×1024)msec=861.44mmsec ・・・(9)
【0150】
従って、上記各実施の形態よりも第1放射線画像及び第2放射線画像の取得に長時間を要した。そのため、欠陥画素の抽出に長時間を要した。
【0151】
[比較例2]
上記比較例1と放射線が照射されていない状態で暗電流(リーク電流)によるダーク画像を取得する他は、条件を同じにして、第1ダーク画像及び第2ダーク画像を取得して、欠陥画素抽出処理を行った。第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に要した時間は、比較例1と同様に、861.44mmsecとなった。従って、上記各実施の形態よりも第1ダーク画像及び第2ダーク画像の取得に長時間を要した。そのため、欠陥画素の抽出に長時間を要した。
【0152】
なお、上記各実施の形態の欠陥画素抽出処理では、条件が異なる二つの画像(第1放射線画像及び第2放射線画像、または第1ダーク画像及び第2ダーク画像)により差分画像を取得していたがこれに限らず、条件が異なる二以上の画像を取得すればよい。例えば、条件が異なる3つの画像を取得し、各画像同士の差分画像を取得(この場合では、差分画像が3つ取得される)してそれぞれの差分画像において欠陥画素を判定し、2つ異常の差分画像において欠陥画素と判定された場合に、当該画素を欠陥画素として抽出するようにしてもよい。このように、複数の画像を用いることにより、二つの画像では残留してしまうランダムノイズ等を欠陥画素と誤判定することを防止することができる。
【0153】
具体的一例として、駆動時間が30μs、15μs、10μsと異ならせた3つの画像を取得した場合、非駆動時間を10μs、駆動電圧を15V、バイアス電圧を10V、蓄積時間を200msecとした場合の、3つの画像の取得に要した時間は以下の(10)式により得られる。なお、放射線画像、ダーク画像にかかわらず同一時間を要する。
【0154】
(200+0.030+0.010)×1024)msec+(200+0.015+0.010)×1024)msec(200+0.010+0.010)×1024)msec=687.04msec ・・・(10)
【0155】
従って、この場合であっても、比較例1及び比較例2に比べて短時間で欠陥画素の抽出を行うことができる。
【0156】
また、上記各実施の形態では、欠陥画素抽出処理において、取得した差分画像において、欠陥画素と判定する画素の画素値と当該画素の周囲の画素の画素値の平均値(平均画素値)とを比較した比較値を用いているがこれに限らない。例えば、平均画素値ではなく、差分画像(差分画像全体または、差分画像の予め定められた領域)の中央値(メディアン値)を用いるようにしてもよい。
【0157】
また、上規格実施の形態では、制御部106で、欠陥画素抽出処理を行っているがこれに限らず、別の回路・装置等を設けて当該回路・装置で行うようにしてもよい。
【0158】
また、欠陥画素抽出処理を行うタイミングは特に限定されず、所定の期間毎に行うようにしてもよいし、放射線画像撮影を撮影する前に行うようにしてもよい。また、上記各実施の形態を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0159】
また、上記各実施の形態では、間接変換方式の場合について説明したがこれに限らず、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の場合に適用してもよい。この場合、直接変換方式におけるセンサ部は、放射線が照射されることにより電荷を発生する。
【0160】
また、上記各実施の形態の放射線検出器10をフレキシブル基板を用いて構成してもよい。なお、この場合、適用するフレキシブル基板として、近年開発されたフロート法による超薄板ガラスを基材として用いたものを適用することが、放射線の透過率を向上させるうえで好ましい。なお、この際に適用できる超薄板ガラスについては、例えば、「旭硝子株式会社、"フロート法による世界最薄0.1ミリ厚の超薄板ガラスの開発に成功"、[online]、[平成23年8月20日検索]、インターネット<URL:http://www.agc.com/news/2011/0516.pdf>」に開示されている。
【0161】
さらに、フレキシブル基板として樹脂を適用することは放射線の透過率を向上させる上でより好ましい。この際に適用できる樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等の各種材料が挙げられるが、TFT素子作成プロセスにより適合しやすいよう、ガラスクロスを含浸させた樹脂でも構わない。
【0162】
その他、本実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100、放射線検出器10等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0163】
また、本実施の形態では、本発明の放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
3 信号配線
4 TFTスイッチ
10 放射線検出器
20 画素
25 バイアス線
100 放射線画像撮影装置
103 センサ部
104 走査配線駆動回路
105 信号検出回路
106 制御部
200 放射線画像撮影システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線の線量に応じた電荷を発生するセンサ部、及び前記センサ部で発生された電荷に応じた電気信号を駆動信号に基づいて信号配線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、
前記複数の画素の各々から出力された前記電気信号に応じた画像を、前記センサ部から電荷が読み出される際にバイアス電源から印加されるバイアス電圧の電圧値、前記駆動信号を出力する駆動手段による前記スイッチング素子の駆動時間、前記駆動信号の電圧値、及び前記電気信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の少なくとも1つの条件を異ならせて複数取得し、取得した複数の画像の差分画像に基づいて、欠陥画素を抽出する抽出手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、放射線が照射された状態で前記複数の画像を取得する、請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、放射線が非照射の状態で前記複数の画像を取得する、請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記差分画像の画素の前記電気信号に応じた値と、当該差分画像の画素の周囲の予め定められた領域の画素の電気信号に応じた値の平均値と、を比較した比較値が予め定め定められた閾値を越えたか否かにより欠陥画素を抽出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記差分画像の画素の電気信号に応じた値と、当該差分画像の画素の周囲の予め定められた領域の画素の電気信号に応じた値の中央値と、を比較した比較値が予め定め定められた閾値を越えたか否かにより欠陥画素を抽出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記抽出手段により抽出された欠陥画素の位置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記欠陥画素の位置に基づいて、前記電気信号に応じた画像を補正する補正手段と、
を備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記欠陥画素の電気信号を予め定められた非欠陥画素の電気信号で置き換えることにより補正する、請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
放射線照射装置と、
前記放射線照射装置から照射された放射線により放射線画像を撮影する前記請求項1から前記請求項7のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記請求項1から前記請求項7に記載の放射線画像撮影装置の抽出手段としてコンピュータを機能させるための欠陥画素抽出プログラム。
【請求項10】
照射された放射線の線量に応じた電荷を発生するセンサ部、及び前記センサ部で発生された電荷に応じた電気信号を駆動信号に基づいて信号配線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素を備えた放射線画像撮影装置に対して、
前記複数の画素の各々から出力された前記電気信号に応じた画像を、前記センサ部から電荷が読み出される際にバイアス電源から印加されるバイアス電圧の電圧値、前記駆動信号を出力する駆動手段による前記スイッチング素子の駆動時間、前記駆動信号の電圧値、及び前記電気信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の少なくとも1つの条件を異ならせて複数取得する工程と、
取得した複数の画像の差分画像を取得する工程と、
前記差分画像に基づいて欠陥画素を抽出する工程と、
を備えた欠陥画素抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55379(P2013−55379A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190093(P2011−190093)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】