説明

放射線画像撮影装置、方法、及びプログラム

【課題】被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる放射線画像撮影装置、方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】撮影システム18は、放射線を被写体に照射する放射線発生装置34と、放射線発生装置34により被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に基づいて画像データを生成する電子カセッテ32と、撮影システム18の動作終了時に、画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するコンソール42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、方法、及びプログラムに係り、特に、放射線源から射出されて被検者を透過した放射線により示される放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線等の放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線撮影装置が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線撮影装置は、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光をフォトダイオードなどのセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。放射線撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号を増幅器で増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
ところで、放射線検出器から取得した画像データには画素毎に様々なノイズ、すなわちオフセット成分が重畳しているため、そのままでは正しい画像データが得られない。このため、撮影前にオフセット成分を取得しておき、画像データからオフセット成分を除去することで画像データを補正することが従来から行われている。
【0005】
代表的なオフセット成分としては、(1)温度の影響を受ける放射線検出素子固有の比較的低周波の固定ノイズ、(2)温度の影響を受けづらい放射線検出素子固有の高周波の固定ノイズ、(3)電気回路に影響を受ける放射線検出素子毎の高周波のランダムノイズ、(4)前回撮影の残電荷によるノイズ、(5)これらのノイズ電荷の時間蓄積量、がある。
【0006】
一般的には、これらのオフセット成分を除去する補正の他、(6)放射線検出素子の欠陥素子の情報に基づく補正、(7)放射線の放射量により経時変化する放射線検出特性に基づく補正、等が行われる。
【0007】
例えば、特許文献1には、X線を被検体に向けて曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したΧ線を電荷信号に変換して蓄積するX線検出素子を2次元的に配列したX線像検出部と、前記X線検出素子に蓄積された電荷の読み出しを制御する読出制御手段を備えたX線診断装置において、前記X線像検出部はX線曝射時に電荷の蓄積が行われないようにマスクされたX線検出素子を備え、このマスクされたX線検出素子の出力に基づいて前記電荷信号から暗電流ノイズを除去する補正手段を備えたX線診断装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、放射線を照射していない状態において放射線画像検出器から読み出されたオフセット画像データに基づいて、オフセット補正データとして低周波成分用補正データと高周波成分用補正データとを生成し、低周波成分用補正データと高周波成分用補正データとについてそれぞれ更新することにより、オフセット補正データの更新時間を短縮する技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、経時的にオフセット特性が変動しやすい低周波オフセット成分情報と、経時的にオフセット特性が変動しにくい高周波オフセット成分情報とに分け、短時間で取得することが困難な高周波オフセット成分情報を予め取得して記憶しておき、比較的短時間で取得可能な低周波オフセット成分情報のみを撮影毎に撮影直前に取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−340324号公報
【特許文献2】特開2009−291477号公報
【特許文献3】特開2006−304849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、上記(3)の高周波のランダムノイズに関して、マスクを行ったX線検出素子と他のX線検出素子が同一ではないため、オフセット補正データ及び本画像の画像データの双方にランダムノイズが入ってしまい、特に低線量曝射時でのノイズ成分を除去する能力が不十分である、という問題がある。
【0012】
また、オフセット補正データの取得タイミングとしては、一定間隔で取得する場合の他、特許文献2に記載されたように、装置の起動時に取得する場合や、特許文献3に記載されたように、装置の起動後初回の撮影前に取得する場合がある。
【0013】
起動時にオフセット補正データを取得する場合、その装置を使用して撮影するまでに時間がかかってしまうため、緊急時に即使用できないという問題がある。
【0014】
この問題を解決するため、毎朝装置をタイマーで自動的に起動することも行われているが、装置を使用する曜日や開始時間を逐一設定したり、未使用のときも装置を起動させておいたりする必要があり、利便性が悪化する。
【0015】
一方で、バッテリー駆動式の可搬型の電子カセッテのように、夜間にバッテリーの充電を行うものや、車載機のように夜間はエンジンや発電機が停止する環境に設置されるものは、夜間に電力供給が絶たれるため、タイマーを用いて自動的に起動することはできない。このため、装置の起動後にオフセット補正データを取得するため、撮影可能になるまでに長時間を要する、という問題があった。
【0016】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる放射線画像撮影装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明の放射線画像撮影装置は、放射線を被写体に照射する放射線照射手段と、前記放射線照射手段により前記被写体に照射された放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段により検出した放射線に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得する取得手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、本装置の動作終了時に、画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するので、本装置の起動後に補正データを取得する場合と比較して、被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる。
【0019】
なお、請求項2に記載したように、前記ノイズ成分は、複数種類のノイズ成分を含み、前記取得手段は、前記ノイズ成分の変動周期に応じて、本装置の起動後の予め定めたタイミング又は本装置の動作終了時に、前記複数種類のノイズ成分に対応した前記補正データを各々取得してもよい。
【0020】
また、請求項3に記載したように、前記ノイズ成分は、複数種類のノイズ成分を含み、前記ノイズ成分の種類に応じて、本装置の起動後の予め定めたタイミング又は本装置の動作終了時に、前記複数種類のノイズ成分に対応した前記補正データを各々取得するようにしてもよい。
【0021】
また、請求項4に記載したように、前記画像データを前記補正データに基づいて補正した補正後の画像データを確認するための確認画像を表示する表示手段を備えた構成としてもよい。
【0022】
また、請求項5に記載したように、前記取得手段は、本装置の動作終了時と、次回の本装置の起動後に前記補正データを各々取得し、各々取得した前記補正データに基づいて、前記画像データを補正するための補正データを生成するようにしてもよい。
【0023】
また、請求項6に記載したように、前記放射線検出手段は、充電池で駆動される可搬型の放射線検出手段である構成としてもよい。
【0024】
請求項7記載の発明の放射線画像撮影方法は、放射線を被写体に照射し、前記被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に基づいて画像データを生成し、本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得することを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、本装置の動作終了時に、画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するので、本装置の起動後に補正データを取得する場合と比較して、被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる。
【0026】
請求項8記載の発明の放射線画像撮影プログラムは、放射線を被写体に照射するステップと、前記被写体に照射された放射線を検出するステップと、検出した放射線に基づいて画像データを生成するステップと、本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、本装置の動作終了時に、画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するので、本装置の起動後に補正データを取得する場合と比較して、被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被験者を必要以上に待たせることなく撮影することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す透過斜視図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器及び放射線検出部の構成を模式的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係る放射線検出器の薄膜トランジスタ及びコンデンサの構成を示した断面図である。
【図6】実施の形態に係るTFT基板の構成を示す平面図である。
【図7】実施の形態に係る放射線検出部のセンサ部の配置構成を示す平面図である。
【図8】実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分に注目した等価回路図である。
【図10】実施の形態に係るコンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態に係るオフセット補正データ取得制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、可搬型の放射線撮影装置(以下「電子カセッテ」ともいう。)を用いて放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影システムに適用した場合の形態例について説明する。
【0031】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」と称する。)10の構成について説明する。
【0032】
RIS10は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」と称する。)の一部を構成する。
【0033】
RIS10は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」と称する。)12、RISサーバ14、及び病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」と称する。)18を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク16に各々接続されて構成されている。なお、RIS10は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク16には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0034】
端末装置12は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置12を介して行われる。各端末装置12は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ14と病院内ネットワーク16を介して相互通信が可能とされている。
【0035】
一方、RISサーバ14は、各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、撮影システム18における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース14Aを含んで構成されている。
【0036】
データベース14Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム18で用いられる、後述する電子カセッテ32の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用可能な撮影部位(対応可能な撮影依頼の内容)、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ32に関する情報、及び電子カセッテ32を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ32を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0037】
撮影システム18は、RISサーバ14からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム18は、放射線源130(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図3も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置34と、被検者の撮影部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生する放射線検出器60(図3も参照。)を内蔵する電子カセッテ32と、電子カセッテ32に内蔵されているバッテリーを充電するクレードル40と、電子カセッテ32,放射線発生装置34,及びクレードル40を制御するコンソール42と、を備えている。
【0038】
コンソール42は、RISサーバ14からデータベース14Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD110(図10参照。)に記憶し、当該情報に基づいて、電子カセッテ32、放射線発生装置34、及びクレードル40の制御を行う。
【0039】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム18の放射線撮影室44における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0040】
同図に示すように、放射線撮影室44には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台45と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台46とが設置されており、立位台45の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置48とされ、臥位台46の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置50とされている。
【0041】
立位台45には電子カセッテ32を保持する保持部150が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部150に保持される。同様に、臥位台46には電子カセッテ32を保持する保持部152が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部152に保持される。
【0042】
また、放射線撮影室44には、単一の放射線源130からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源130を、水平な軸回り(図2の矢印A方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印B方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印C方向)に移動可能に支持する支持移動機構52が設けられている。ここで、支持移動機構52は、放射線源130を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源130を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源130を水平方向に移動させる駆動源を各々備えている(何れも図示省略。)。
【0043】
一方、クレードル40には、電子カセッテ32を収納可能な収容部40Aが形成されている。
【0044】
電子カセッテ32は、未使用時にはクレードル40の収容部40Aに収納された状態で内蔵されているバッテリーに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル40から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台45の保持部150に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台46の保持部152に保持される。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム18では、放射線発生装置34とコンソール42とをそれぞれケーブルで接続して有線通信によって各種情報の送受信を行うが、図2では、放射線発生装置34とコンソール42を接続するケーブルを省略している。また、電子カセッテ32とコンソール42との間は、無線通信によって各種情報の送受信を行う。なお、放射線発生装置34とコンソール42の間の通信も無線通信によって通信を行うものとしてもよい。
【0046】
なお、電子カセッテ32は、立位台45の保持部150や臥位台46の保持部152で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0047】
図3には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の内部構成が示されている。
【0048】
同図に示すように、電子カセッテ32は、放射線Xを透過させる材料からなる筐体54を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ32は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ32を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ32を繰り返し続けて使用することができる。
【0049】
筐体54の内部には、放射線Xが照射される筐体54の照射面56側から、被検者を透過した放射線Xによる放射線画像を撮影するための放射線検出器60、照射された放射線の検出を行う放射線検出部62が順に配設されている。
【0050】
また、筐体54の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能で、かつ着脱可能なバッテリー96Aを収容するケース31が配置されている。放射線検出器60、及び電子回路は、ケース31に配置されたバッテリー96Aから供給される電力によって作動する。ケース31内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース31の照射面56側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32は、照射面56の形状が長方形とされた直方体とされており、その長手方向一端部にケース31が配置されている。
【0051】
また、筐体54の外壁の所定位置には、‘レディ状態’,‘データ送信中’といった動作モード、バッテリー96Aの残容量の状態等の電子カセッテ32の動作状態を示す表示を行う表示部56Aが設けられている。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、表示部56Aとして、発光ダイオードを適用しているが、これに限らず、発光ダイオード以外の発光素子や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の他の表示手段としてもよい。
【0052】
図4には、本実施形態に係る放射線検出器60及び放射線検出部62の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0053】
放射線検出器60は、絶縁性基板64に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下「TFT」という)70、及び蓄積容量68が形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)66を備えている。
【0054】
このTFT基板66上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ71が配置される。
【0055】
シンチレータ71としては、例えば、CsI:Tl、GOSを用いることができる。なお、シンチレータ71は、これらの材料に限られるものではない。
【0056】
絶縁性基板64としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板64は、これらの材料に限られるものではない。
【0057】
TFT基板66には、シンチレータ71によって変換された光が入射されることにより電荷を発生するセンサ部72が形成されている。また、TFT基板66には、TFT基板66上を平坦化するための平坦化層67が形成されている。また、TFT基板66とシンチレータ71との間であって、平坦化層67上には、シンチレータ71をTFT基板66に接着するための接着層69が形成されている。
【0058】
センサ部72は、上部電極72A、下部電極72B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜72Cを有している。
【0059】
光電変換膜72Cは、シンチレータ71から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cは、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換膜72Cであれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換膜72Cであれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光以外の電磁波が光電変換膜72Cに吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0060】
本実施の形態では、光電変換膜72Cに有機光電変換材料を含んで構成する。有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ71の材料としてCsI(Ti)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。この光電変換膜72Cとして適用可能な有機光電変換材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0061】
図5には、本実施の形態に係るTFT基板66に形成されたTFT70及び蓄積容量68の構成が概略的に示されている。
【0062】
絶縁性基板64上には、下部電極72Bに対応して、下部電極72Bに移動した電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力するTFT70が形成されている。蓄積容量68及びTFT70の形成された領域は、平面視において下部電極72Bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72とが厚さ方向で重なりを有することとなり、少なく面積で蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72を配置できる。
【0063】
蓄積容量68は、絶縁性基板64と下部電極72Bとの間に設けられた絶縁膜65Aを貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極72Bと電気的に接続されている。これにより、下部電極72Bで捕集された電荷を蓄積容量68に移動させることができる。
【0064】
TFT70は、ゲート電極70A、ゲート絶縁膜65B、及び活性層(チャネル層)70Bが積層され、さらに、活性層70B上にソース電極70Cとドレイン電極70Dが所定の間隔を開けて形成されている。また、放射線検出器60では、活性層70Bが非晶質酸化物により形成されている。活性層70Bを構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0065】
TFT70の活性層70Bを非晶質酸化物で形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0066】
ここで、TFT70の活性層70Bを構成する非晶質酸化物や、光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0067】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0068】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、AcetobacterXylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板64を形成できる。
【0069】
図6には、本実施の形態に係るTFT基板66の構成を示す平面図が示されている。
【0070】
TFT基板66には、上述のセンサ部72、蓄積容量68、TFT70と、を含んで構成される画素74が一定方向(図6の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図6の列方向)に2次元状に複数設けられている。例えば、放射線検出部62を、17インチ×17インチのサイズとした場合、画素74を行方向及び列方向に2880個ずつ配置する。
【0071】
また、放射線検出器60には、一定方向(行方向)に延設され各TFT70をオン・オフさせるための複数本のゲート配線76と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のTFT70を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。
【0072】
放射線検出器60は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には矩形状に形成されている。
【0073】
本実施形態に係る放射線検出器60は、図4に示すように、このようなTFT基板66の表面にシンチレータ71が貼り付けられて形成される。
【0074】
シンチレータ71は、例えば、CsI:Tl等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板73への蒸着によって形成される。このように蒸着によってシンチレータ71を形成する場合、蒸着基板73は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用され、蒸着の際のハンドリング性、自重による反り防止、輻射熱による変形等からある程度(数mm程度)の厚みが必要となる。
【0075】
このような放射線検出器60のシンチレータ71側の面には、放射線検出部62が貼り付けられている。
【0076】
放射線検出部62は、例えば、樹脂性の支持基板140上に、後述する配線160(図8)がパターニングされた配線層142及び絶縁層144が形成されており、その上に、複数のセンサ部146が形成され、当該センサ部146上に、GOS等からなるシンチレータ148が形成されている。センサ部146は、上部電極147A、下部電極147B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜147Cを有している。光電変換膜147Cには、シンチレータ148によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する。この光電変換膜147Cは、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードよりも、上述の有機光電変換材料が含有された光電変換膜が好ましい。これは、PIN型フォトダイオードやMIS型フォトダイオードを用いた場合と比較して、製造コストの削減や、フレキシブル化への対応の点で有機光電変換材料が含有された光電変換膜を用いたほうが有利だからである。この放射線検出部62のセンサ部146は、放射線検出器60の各画素74に設けられたセンサ部72ほど細かく形成する必要はなく、センサ部72よりも大きく、放射線検出器60の数十から数百画素のサイズで形成すればよい。
【0077】
図7には、本実施の形態に係る放射線検出部62のセンサ部146の配置構成を示す平面図が示されている。
【0078】
放射線検出部62には、センサ部146が一定方向(図7の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図7の列方向)に多数配置されており、例えば、センサ部146を行方向及び列方向に16個ずつマトリクス状に配置する。
【0079】
図8には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0080】
放射線検出器60は、上述したように、センサ部72、蓄積容量68、TFT70を備えた画素74がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ32への放射線Xの照射に伴ってセンサ部72で発生された電荷は、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ32に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0081】
また、放射線検出器60の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0082】
図9には、本実施の形態に係る放射線検出器60の1画素部分に注目した等価回路図が示されている。
【0083】
同図に示すように、TFT70のソースは、データ配線78に接続されており、このデータ配線78は、信号処理部82に接続されている。また、TFT70のドレインは蓄積容量68及びセンサ部72に接続され、TFT70のゲートはゲート配線76に接続されている。
【0084】
信号処理部82は、個々のデータ配線78毎にサンプルホールド回路84を備えている。個々のデータ配線78を伝送された電気信号はサンプルホールド回路84に保持される。サンプルホールド回路84はオペアンプ84Aとコンデンサ84Bを含んで構成され、電気信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路84にはコンデンサ84Bの両電極をショートさせ、コンデンサ84Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路としてスイッチ84Cが設けられている。オペアンプ84Aは、後述するカセッテ制御部92からの制御によりゲイン量を調整可能とされている。
【0085】
サンプルホールド回路84の出力側にはマルチプレクサ86、A/D変換器88が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ86に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器88によってデジタルの画像情報へ変換される。
【0086】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており(図8参照。)、信号処理部82のA/D変換器88から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0087】
画像メモリ90は電子カセッテ32全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU(中央処理装置)92A、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ92B、HDD(ハードディスク・ドライブ)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0088】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。本実施の形態に係る無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール42と無線通信が可能とされており、コンソール42との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0089】
一方、放射線検出部62は、上述したように、センサ部146がマトリクス状に多数個配置されている。また、放射線検出部62には、各センサ部146とそれぞれ個別に接続された複数の配線160が設けられており、各配線160は信号検出部162に接続されている。
【0090】
信号検出部162は、配線160毎に設けられた増幅器及びA/D変換器を備えており、カセッテ制御部92と接続されている。信号検出部162は、カセッテ制御部92からの制御により、所定の周期で各配線160のサンプリングを行って各配線160を伝送される電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータを順次、カセッテ制御部92へ出力する。
【0091】
また、電子カセッテ32には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92、信号検出部162等)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ32の可搬性を損なわないように、前述したバッテリー(二次電池)96Aを内蔵しており、充電されたバッテリー96Aから各種回路や各素子へ電力を供給する。なお、図8では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線の図示を省略している。
【0092】
図10には、本実施の形態に係るコンソール42及び放射線発生装置34の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0093】
コンソール42は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ100と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル102と、を備えている。
【0094】
また、本実施の形態に係るコンソール42は、装置全体の動作を司るCPU104と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106と、各種データを一時的に記憶するRAM108と、各種データを記憶して保持するHDD110と、ディスプレイ100への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ112と、操作パネル102に対する操作状態を検出する操作入力検出部114と、を備えている。また、コンソール42は、接続端子42A及び通信ケーブル35を介して放射線発生装置34との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部116と、電子カセッテ32との間で無線通信により曝射条件や画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部118と、を備えている。
【0095】
CPU104、ROM106、RAM108、HDD110、ディスプレイドライバ112、操作入力検出部114、通信インタフェース部116、及び無線通信部118は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU104は、ROM106、RAM108、HDD110へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ112を介したディスプレイ100への各種情報の表示の制御、通信I/F部116を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御、及び無線通信部118を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU104は、操作入力検出部114を介して操作パネル102に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0096】
一方、放射線発生装置34は、放射線源130と、コンソール42との間で曝射条件等の各種情報を送受信する通信I/F部132と、受信した曝射条件に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。
【0097】
線源制御部134もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール42から受信する曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている。線源制御部134は、受信した曝射条件に基づいて放射線源130から放射線Xを照射させる。
【0098】
次に、本実施の形態に係る撮影システム18の作用を説明する。
【0099】
端末装置12(図1参照。)は、放射線画像の撮影する場合、医師又は放射線技師からの撮影依頼を受け付ける。当該撮影依頼では、撮影対象とする患者、撮影対象とする撮影部位、撮影モードが指定され、管電圧、管電流などが必要に応じて指定される。
【0100】
端末装置12は、受け付けた撮影依頼の内容をRISサーバ14に通知する。RISサーバ14は、端末装置12から通知された撮影依頼の内容をデータベース14Aに記憶する。
【0101】
コンソール42は、RISサーバ14にアクセスすることにより、RISサーバ14から撮影依頼の内容及び撮影対象とする患者の属性情報を取得し、撮影依頼の内容及び患者の属性情報をディスプレイ100(図10参照。)に表示する。
【0102】
撮影者は、ディスプレイ100に表示された撮影依頼の内容に基づいて放射線画像の撮影を開始する。
【0103】
例えば、図2に示すように、臥位台46上に横臥した被検者の患部の撮影を行う際、臥位台46の保持部152に電子カセッテ32を配置する。
【0104】
そして、撮影者は、操作パネル102に対して撮影モードとして例えば静止画撮影又は透視撮影を指定し、さらに、操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧及び管電流等を指定し、撮影の実行を指示して撮影する。なお、撮影者は、透視撮影の場合、被検者の被曝を抑えるため、静止画撮影の場合と比べて単位時間当たりの放射線の照射量を低く指定する(例えば、静止画撮影の場合の1/10程度)。
【0105】
コンソール42は、指定された管電圧、管電流を曝射条件として放射線発生装置34へ送信し、指定された撮影モード、管電圧、管電流、許容量を撮影条件として電子カセッテ32へ送信する。放射線発生装置34の線源制御部134は、コンソール42から曝射条件を受信すると、受信した曝射条件を記憶し、電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から撮影条件を受信すると、受信した撮影条件を記憶部92Cに記憶する。
【0106】
撮影者は、撮影準備完了すると、コンソール42の操作パネル102に対して撮影を指示する撮影指示操作を行う。
【0107】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0108】
放射線発生装置34は、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線の発生・射出を開始する。
【0109】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、記憶部92Cに撮影条件として記憶された撮影モードに応じて撮影制御を行う。
【0110】
ここで、放射線検出器60は、X線が照射されていない状態であっても暗電流ノイズ等によってセンサ部72に電荷が発生して各画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積される。これがノイズ成分、すなわちオフセット成分として画像データに重畳されて正しい画像データではなくなってしまうため、撮影前にノイズ成分に基づく補正データを取得しておき、画像データからノイズ成分を除去することで画像データを補正する必要がある。
【0111】
前述したように、ノイズ成分の種類としては、上記(1)〜(7)がある。このため、ノイズ成分の種類毎に、撮影画像の画像データを補正するための補正データを予め取得しておき、取得した補正データに基づいて撮影画像の画像データを補正する必要があるが、上記(1)〜(7)に記載されたノイズ成分等は、変動周期が異なる。
【0112】
このため、本実施形態では、ノイズ成分の変動周期又は種類に応じて、補正データの取得時期を異ならせ、撮影システム18の起動後に全ての種類のノイズ成分に対応した補正データを取得する場合と比較して、被験者を必要以上待たせることなく撮影することを可能とする。
【0113】
ここで、上記(1)〜(7)のノイズ成分等は、変動周期等によって以下のように分類できる。
【0114】
・ノイズ成分を除去しづらいもの・・・(3)
【0115】
・数msec〜数時間で変動するもの・・・(1)、(4)
【0116】
・数日〜数週間程度で変動するもの・・・(2)、(5)、(6)
【0117】
・使用頻度や数年単位で変動するもの・・・(7)
【0118】
本実施形態では、変動周期が比較的長い(2)、(5)、(6)に関する補正データの取得は、少なくとも装置の動作終了時に行い、変動周期が比較的短い(1)、(4)に関する補正データは、装置の起動時や、装置の起動後予め定めたタイミングで定期的に取得する。
【0119】
ところで、ノイズ成分は、(1)〜(7)の全てのノイズ成分が加算されたものとなるため、各々のノイズ成分を分離して補正データを取得する必要がある。
【0120】
例えば(1)のノイズ成分は、比較的低周波成分であるため、(1)のノイズ成分に対するオフセット補正データを取得する場合、まず電子カセッテ32に光が入射しない状態で且つ放射線を曝射しない状態で各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことによりオフセット補正データを取得する。そして、このオフセット補正データから(3)のノイズ成分を除去するために、ローパスフィルタによる処理を施して高周波成分を除去する。これにより、(1)のノイズ成分に対するオフセット補正データが得られる。
【0121】
(1)のオフセット補正データの取得は、例えば予め定めたタイミングで定期的に実行する。
【0122】
また、(2)のノイズ成分に対するオフセット補正データは、まず電子カセッテ32に放射線を曝射しない状態で各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことによりオフセット補正データを取得する。そして、このオフセット補正データから(1)のオフセット補正データを減算する。この処理を数回〜数十回行って平均化することにより、(3)のノイズ成分を除去したオフセット補正データを得る。また、この場合の(5)のノイズ成分については、例えば数msec〜数secの間で複数の規定時間を定め、これらの規定時間各々について、電子カセッテ32に放射線を曝射しない状態で各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことにより、(5)のノイズ成分に対するオフセット補正データを取得できる。
【0123】
また、(6)に対するオフセット補正データは、電子カセッテ32に放射線を曝射して各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことにより取得する。
【0124】
また、(7)に対するオフセット補正データは、まず被験者が存在しない状態で、電子カセッテ32に放射線を曝射して各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことにより取得する。そして、このオフセット補正データから(1)、(2)のオフセット補正データを減算する。この処理を数回〜数十回行って平均化することにより、(3)のノイズ成分を除去したオフセット補正データを得る。また、この場合の(5)のノイズ成分については、(2)の場合と同様に、例えば数msec〜数secの間で複数の規定時間を定め、これらの規定時間各々について、電子カセッテ32に放射線を曝射しない状態で各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことにより、(5)のノイズ成分に対するオフセット補正データを取得できる。
【0125】
このように、(2)、(7)のオフセット補正データの取得は、複数回の撮影により得られた画像データの平均化処理によって時間がかかるため、撮影に影響を与えない動作終了時や任意のタイミングで実行することが好ましい。例えば(2)のオフセット補正データは、装置の動作終了時に取得し、(7)のオフセット補正データは、装置の設置時や定期メンテナンス時等に取得する。また、(6)のオフセット補正データの取得については、(3)のランダムノイズの影響は受けづらいものの、(2)のオフセット補正データと同様に、撮影に影響を与えない動作終了時や任意のタイミングで実行することが好ましい。
【0126】
(4)のオフセット補正データについては、まず電子カセッテ32に放射線を曝射しない状態で各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出すことによりオフセット補正データを取得する。そして、このオフセット補正データから(3)のノイズ成分を除去するために、ローパスフィルタによる処理を施して高周波成分を除去するか、(3)のノイズ成分は除去せずにそのままとする。さらに、高周波成分を除去したオフセット補正データから、(3)以外のオフセット補正データを減算することにより、(4)のノイズ成分に対するオフセット補正データが得られる。
【0127】
なお、(4)のノイズ成分は、放射線の検出方式によってレベルが異なるため、放射線の検出方式に応じた方法及びタイミングによりオフセット補正データを取得する。
【0128】
例えばアモルファスセレンを用いた放射線検出器で光読み取りする直接変換方式(第1の直接変換方式)の場合、(4)のノイズ成分は後述する他の二つの変換方式と比較して大きいが、(3)のノイズ成分は小さいため、オフセット補正データは撮影直前に取得すればよい。
【0129】
また、アモルファスセレンを用いた放射線検出器でTFTにより直接変換する直接変換方式(第2の直接変換方式)の場合、(4)のノイズ成分は他の二つの変換方式と比較して最も小さいため、定期的に取得した(1)のオフセット補正データによる補正で十分である。
【0130】
また、本実施形態のように、放射線検出器60が、放射線を一度光に変換し、変換した光をセンサ部72で電荷に変換して蓄積する間接変換方式の場合は、連続曝射時間が数十秒の場合は、(4)のノイズ成分が大きく、また、(3)のノイズ成分も大きいため、第2の直接変換方式と同様の補正を行うか、(3)のノイズ成分はそのままとして補正する。
【0131】
図11にはコンソール42のCPU104により実行されるオフセット補正データ取得制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムは例えばHDD110の所定の領域に予め記憶されている。また、当該プログラムは、撮影システム18の電源が投入され、撮影システム18が起動されると実行される。
【0132】
まず、ステップ100では、撮影システム18の起動後に取得すべきオフセット補正データを取得する。例えば、上記(1)のオフセット補正データを前述した方法により取得する。取得したオフセット補正データは、HDD110に記憶する。
【0133】
ステップ102では、予め定めたオフセット補正データの取得タイミングが到来したか否かを判断する。ここで、例えば(1)のノイズ成分は、前述したように数msec〜数時間で変動する。このため、例えば第1の取得タイミングとして、(1)のノイズ成分が変動する数msec〜数時間の範囲内で予め定めた時間を設定する。このため、(1)のオフセット補正データは、定期的に取得される。
【0134】
また、(4)のオフセット補正データについては、できるだけ撮影の直前に取得することが望ましい。このため、例えば第2の取得タイミングとして、撮影指示がされたタイミングを設定する。
【0135】
そして、予め定めたオフセット補正データの取得タイミングが到来した場合には、ステップ104へ移行し、予め定めたオフセット補正データの取得タイミングが到来していない場合には、ステップ106へ移行する。
【0136】
ステップ104では、予め定めたタイミングで取得すべきオフセット補正データを取得する。すなわち、第1の取得タイミングが到来した場合には、(1)のオフセット補正データを前述した方法により取得する。また、第2の取得タイミングが到来した場合には、(4)のオフセット補正データを前述した方法により取得する。取得したオフセット補正データは、HDD110に記憶する。
【0137】
ステップ106では、撮影システム18の動作終了が指示されたか否か、すなわち、撮影システム18の電源オフが指示されたか否かを判断する。
【0138】
そして、撮影システム18の電源オフが指示された場合には、ステップ108へ移行し、撮影システム18の電源オフが指示されていない場合には、ステップ102へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0139】
ステップ108では、撮影システム18の動作終了時に取得すべきオフセット補正データを取得する。本実施形態では、一例として上記(2)、(5)、(6)のオフセット補正データを前述した方法により取得する。取得したオフセット補正データは、HDD110に記憶する。
【0140】
なお、(7)のオフセット補正データは、例えば撮影システム18の設置時や定期メンテナンス時等に取得すればよいが、ステップ108で取得するようにしてもよい。
【0141】
なお、(1)のオフセット補正データは、ステップ102で定期的に取得するため、ステップ100の処理は省略してもよい。すなわち、撮影システム18の起動直後に(1)のオフセット補正データを取得する処理を省略してもよい。
【0142】
そして、撮影を実行した場合には、電子カセッテ32から受信した撮影画像の画像データから、HDD110に記憶された各オフセット補正データを減算することにより、画像データのオフセット補正を行う。
【0143】
なお、オフセット補正が正常に行われているかを確認するため、少なくとも1回オフセット補正が実行された後に、オフセット補正後の撮影画像をディスプレイ110に表示して使用者が確認できるようにしてもよい。
【0144】
このように、ノイズ成分の種類に応じてオフセット補正データの取得タイミングを異ならせ、ノイズ成分の変動周期が比較的長い(2)、(5)、(6)のオフセット補正データについては、撮影システム18の電源オフ時に取得するので、被験者を必要以上に待たせることなく撮影を行うことができる。
【0145】
そして、被験者を必要以上に待たせることなく撮影を行うことができることから、従来のようにタイマーで自動的に撮影システム18を起動させてオフセット補正データを取得する必要もない。従って、本実施形態のようにバッテリー駆動の電子カセッテ32を用いた撮影システムや、車載機として用いられる撮影システムに本発明は好適である。
【0146】
なお、(2)のオフセット補正データのように、数枚〜数十枚分の撮影を行って、これらの撮影画像データの平均からオフセット補正データを生成するような場合には、ステップ108で一部の撮影を行い、次回起動時にステップ100で残りの撮影を行うようにしてもよい。すなわち、オフセット補正データの取得に必要となる複数回の撮影を、装置の動作終了時と次回の起動時とに分割してもよい。これにより、前回起動時と今回の起動時との間でノイズ成分に変動が生じることによりオフセット補正の精度が劣化するのを緩和することができる。
【0147】
以上、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0148】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0149】
例えば、上記実施の形態では、可搬型の放射線撮影装置である電子カセッテ32に本発明を適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0150】
また、上記実施の形態では、放射線検出器60が、放射線を一度光に変換し、変換した光をセンサ部72で電荷に変換して蓄積する間接変換方式であるものとした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線検出器60が、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式であるものとしてもよい。
【0151】
また、上記実施の形態では、放射線としてX線を検出することにより放射線画像を撮影する放射線撮影装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検出対象とする放射線は、X線の他や可視光、紫外線、赤外線、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0152】
その他、上記実施の形態で説明した構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0153】
さらに、上記実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0154】
18 撮影システム
32 電子カセッテ(放射線検出手段)
34 放射線発生装置(放射線照射手段)
42 コンソール
60 放射線検出器
62 放射線検出部
72 センサ部
74 画素
80 ゲート線ドライバ
82 信号処理部
84A オペアンプ
88 A/D変換器
92 カセッテ制御部(画像データ生成手段、取得手段)
92A CPU
104 CPU(取得手段)
146 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被写体に照射する放射線照射手段と、
前記放射線照射手段により前記被写体に照射された放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段により検出した放射線に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得する取得手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記ノイズ成分は、複数種類のノイズ成分を含み、
前記取得手段は、前記ノイズ成分の変動周期に応じて、本装置の起動後の予め定めたタイミング又は本装置の動作終了時に、前記複数種類のノイズ成分に対応した前記補正データを各々取得する
請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記ノイズ成分は、複数種類のノイズ成分を含み、
前記ノイズ成分の種類に応じて、本装置の起動後の予め定めたタイミング又は本装置の動作終了時に、前記複数種類のノイズ成分に対応した前記補正データを各々取得する
請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記画像データを前記補正データに基づいて補正した補正後の画像データを確認するための確認画像を表示する表示手段
を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記取得手段は、本装置の動作終了時と、次回の本装置の起動後に前記補正データを各々取得し、各々取得した前記補正データに基づいて、前記画像データを補正するための補正データを生成する
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記放射線検出手段は、充電池で駆動される可搬型の放射線検出手段である
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
放射線を被写体に照射し、
前記被写体に照射された放射線を検出し、
検出した放射線に基づいて画像データを生成し、
本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得する
放射線画像撮影方法。
【請求項8】
放射線を被写体に照射するステップと、
前記被写体に照射された放射線を検出するステップと、
検出した放射線に基づいて画像データを生成するステップと、
本装置の動作終了時に、前記画像データからノイズ成分を除去するための補正データを取得するステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−45334(P2012−45334A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192854(P2010−192854)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】