説明

放射線画像検出器

【課題】支持体と、波長変換層と、波長変換層により変換された可視光を検出する検出器とがこの順に積層された放射線画像検出器において、放射線を吸収することなく、かつ波長変換層により変換された可視光の検出器への照射量を増加させる。
【解決手段】支持体33を多数の気泡33aを含有する有機物から形成するとともに、無機物を含有しないものとし、波長変換層32により変換された可視光を検出器31に向けて反射するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する放射線画像検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野などにおいて、被写体を透過した放射線の照射により被写体に関する放射線画像を記録する放射線画像検出器が各種提案、実用化されている。
【0003】
上記のような放射線画像検出器として、たとえば、放射線の照射により電荷を発生する半導体を利用した放射線画像検出器が提案されており、そのような放射線画像検出器として、いわゆる光読取方式のものやTFT(thin film transistor、薄膜トランジスタ)、CCD(charge coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサなどを用いる電気読取方式のものが提案されている。
【0004】
そして、上記電気読取方式の放射線画像検出器としては、放射線を半導体層において直接電荷に変換して蓄積する直接変換方式のものや、放射線を蛍光体により一旦光に変換し、その変換した光をフォトダイオードなどによって電荷に変換して蓄積する間接変換方式のものが提案されている。
【0005】
たとえば、特許文献1には、蛍光体層と検出素子が多数配列された検出基板とが積層された間接変換方式の放射線画像検出器が提案されている。
【0006】
そして、特許文献1には、蛍光体層とその蛍光体層を支持する支持体の間に、蛍光体層により変換された光を検出基板側へ反射する、金属薄膜からなる反射層を設け、これにより検出基板に入射される光量を増加させることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2においては、支持体上に、光反射層、蛍光体層および表面保護層がこの順に設けられた放射線増感スクリーンが提案されている。そして、この放射線増感スクリーンにおいても、スクリーンからの発光量を増やすために二酸化チタンからなる光反射層を設けるようにしている。
【0008】
また、特許文献3においては、支持板上に、反射層、輝尽性蛍光体層および保護層がこの順に設けられた放射線変換パネルが提案されている。そして、特許文献3においては、気泡を含有したポリエチレンテレフタレートから支持板を形成し、支持板に反射機能を持たせることが提案されている。
【特許文献1】特開2006−258618号公報
【特許文献2】特開平9−21899号公報
【特許文献3】特開2002−131495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線画像検出器ように反射層を設け、蛍光体層側から放射線を照射した場合、その放射線は蛍光体層に到達する前に反射層を通過するため、反射層によって放射線が吸収されて減衰し、その結果、蛍光体層による発光量が低下し、画質の劣化を招く問題が生じる。
【0010】
さらに、特許文献1に記載の放射線画像検出器における反射層は、鏡面反射面になっているため、その最終的な反射率は1回の反射率がn乗されたものとなり、十分な反射光を得ることができない。
【0011】
また、特許文献2に記載の放射線増感スクリーンにおいても、支持体側から放射線を照射した場合、やはり二酸化チタンからなる光反射層によって放射線が吸収されて減衰し、蛍光体層による発光量が低下する問題が生じる。
【0012】
また、特許文献3においては、気泡を含有したポリエチレンテレフタレートから支持板を形成することによって、支持板に反射機能を持たせることが提案されているが、特許文献3に記載の支持板においては、気泡を含めるために発砲の核として硫酸バリウムなどの無機物が用いられており、支持体側から放射線を照射した場合、無機物を含む支持板によって放射線が吸収されて減衰し、やはり蛍光体層による発光量が低下する問題が生じる。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、放射線を吸収することなく、かつ蛍光体層により変換された可視光の検出器への照射量を増加させることができる放射線画像検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射線画像検出器は、支持体と、放射線の照射を受けて該放射線をより長い波長の光に変換する波長変換層と、波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する検出器とがこの順に積層された放射線画像検出器において、支持体が、多数の気泡を含有する有機物から形成され、無機物を含有しないものであり、波長変換層により変換された光を検出器に向けて反射するものであることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記「無機物を含有しないもの」とは、無機物を全く含有しないものだけでなく、放射線吸収が画質に影響を与えないような許容範囲である程度の無機物を多少含有するものも含むものとする。たとえば、無機物が1重量%以下のものは、画質に影響を与えない。
【0016】
また、上記「波長変換層」は、放射線を、より長い波長の光に変換するものであるが、近赤外光、可視光および近赤外光に変換するものであることが好ましい。より好ましくは可視光に変換するものである。
【0017】
また、支持体として、波長変換層により変換された光の主たる発光波長に対する反射率が85%以上であるものを用いることができる。
【0018】
また、支持体として、樹脂から形成されるものを用いることができる。
【0019】
また、支持体として、ポリエチレンテレフタレートから形成されるものを用いることができる。
【0020】
また、波長変換層として、GOS(GdS:Tb)粒子を含むものを用いることができる。
【0021】
また、波長変換層として、CsI:NaおよびCsI:Tlのうちの少なくとも1つを含むものを用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の放射線画像検出器によれば、支持体を、多数の気泡を含有する有機物から形成し、無機物を含有しないものとし、波長変換層により変換された光を検出器に向けて反射する反射機能を有するものとしたので、支持体によって放射線が吸収されることなく、かつ波長変換層により変換された光の検出器への照射量を増加させることができる。
【0023】
また、支持体として、波長変換層により変換された光の主たる発光波長に対する反射率が85%以上であるものを用いるようにした場合には、検出器への光の照射量として十分な量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像検出器の一実施形態を用いた放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本放射線画像撮影装置の概略構成図である。
【0025】
本放射線画像撮影装置は、被写体2に向けて放射線を射出する放射線源1と、被写体2を透過した放射線が照射され、その放射線に担持された被写体2の放射線画像を表す画像信号を出力する放射線画像検出器3と、放射線画像検出器3から出力された画像信号に所定の信号処理を施す信号処理部4と、信号処理部4において信号処理の施された画像信号に基づいて放射線画像を再生する再生部5とを備えている。
【0026】
図2は、本放射線画像撮影装置における放射線画像検出器3の構成を示す断面図である。
【0027】
放射線画像検出器3は、図2に示すように、被写体を透過した放射線の照射を受けてその放射線を可視光に変換する蛍光体層32と、蛍光体層32により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する固体検出器31と、蛍光体層32を支持する支持体33とを備えている。
【0028】
そして、本実施形態においては、放射線画像検出器3は、放射線源1側から、支持体33、蛍光体層32および固体検出器31がこの順に配置されたものであり、支持体33側から放射線の照射を受けるものである。
【0029】
図3は固体検出器31の構成を示す平面図である。固体検出器31は、図3に示すように、X−Y方向に2次元状に多数配列されたフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37と、X方向に並ぶフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の行毎に設けられ、その行の各TFTスイッチ37に入力される走査信号が印加される走査線31bと、Y方向に並ぶフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の列毎に設けられ、その列の各フォトダイオード部36によって検出された画素信号が流れ出すデータ線31cとを備えている。
【0030】
走査線31bとデータ線31cとは直交するように設けられ、走査線31bとデータ線31cの交差点に対応して、フォトダイオード部36およびTFTスイッチ37が設けられている。
【0031】
そして、各走査線31bの一端には各走査線31bに走査信号を出力するゲートドライバ40が接続され、各データ線31cの一端には各信号線に流れ出した画素信号を検出する積分アンプ50が接続されている。なお、図1および図2においては、ゲートドライバ40および積分アンプ50を図示省略している。
【0032】
図4は、固体検出器31における各フォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の概略構成を示す図である。フォトダイオード部36は、蛍光体層32により変換された可視光を光電変換するものである。TFTスイッチ37は、フォトダイオード部36において光電変換された電荷信号を画素信号として読み出すためのものである。
【0033】
図4に示すように、フォトダイオード部36およびTFTスイッチ37は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板31d上に設けられている。そして、フォトダイオード部36は、蛍光体層32により変換された可視光を透過する透明電極36aと、フォトダイオードとして機能する半導体層36bと、下部電極36cとから構成されている。半導体層36bとしては、たとえばPIN構造を利用することができる。なお、フォトダイオード部としてMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を用いてもよい。また、下部電極36cは、後述するTFTスイッチ37のドレイン電極37bに接続されるものである。また、図4においては、フォトダイオード部36とTFTスイッチ37とを並べて配置しているが、重ねて配置してフォトダイオードの面積を大きく取ることが好ましい。
【0034】
また、TFTスイッチ37は、ゲート電極37aと、ドレイン電極37bと、ソース電極37cと、半導体層37dと、ゲート絶縁膜37eとから構成されている。ゲート電極37aは走査線31bに接続されるものであり、ドレイン電極37bは、上述したとおりフォトダイオード部36の下部電極36cに接続されるものであり、ソース電極37cはデータ線31cに接続されるものである。また、半導体層37dはTFTスイッチ37のチャネル部であり、ゲート電圧によってON−OFFされるデータ線31cとドレイン電極37bとを結ぶ電流の通路である。
【0035】
蛍光体層32は、上述したとおり放射線の照射を受けてその放射線を可視光に変換するものである。蛍光体層32は、放射線を可視光に変換する蛍光体を含むものであるが、その蛍光体としては、たとえば、GOS(GdS:Tb)粒子や、柱状結晶からなるCsI:NaおよびCsI:Tlのうちの少なくとも1つを利用することができる。なお、蛍光体層32の形成方法については、後述する実施例において詳細に説明する。
【0036】
支持体33は、その上に蛍光体層32が形成され、その蛍光体層32を支持するものである。
【0037】
そして、支持体33は、多数の気泡33aを含有する有機物から形成されるものであるとともに、蛍光体層32により変換された可視光を固体検出器31に向けて反射するものである。
【0038】
具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂に多数の気泡を含有させた部材から形成されたフィルムなどを用いることができる。このようなフィルムとしては、たとえば、東レ株式会社製、白色低比重フィルムのE6SLなどを用いることができる。
【0039】
なお、支持体33としては、ポリエチレンテレフタレート以外の有機物、たとえば、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートなどからなるものを用いるようにしてもよいが、無機物を含有しないものを用いる。なお、無機物を含有しないものとは、無機物を全く含有しないものだけでなく、放射線吸収が許容範囲である程度の無機物を多少含有するものも含むものとする。
【0040】
また、支持体33としては、蛍光体層32により変換された可視光の主たる発光波長に対する反射率が85%以上であることが望ましい。なお、反射率の測定は、株式会社日立製作所製U−3210型自記分光光度計に、150φ積分球(150−0901)を用いて、標準白板(210−0740)に対しての反射率を測定する方法が利用できる。反射率測定の測定波長は、放射線増感スクリーンを構成する蛍光体の発光光の波長を考慮して決める。発光光が複数の波長ピークを持つ場合や、ピークがブロードな場合は、それぞれの波長で測定し発光強度を考慮して加重平均して求める。
【0041】
また、支持体の厚さとしては、0.07mm以上0.5mm以下であることが望ましい。
【0042】
次に、本実施形態の放射線画像検出器を用いた放射線画像撮影装置の作用について説明する。
【0043】
まず、放射線源1から放射線が被写体2に向けて照射される。そして、被写体2を透過して被写体の放射線画像を担持した放射線が放射線画像検出器3の支持体33側から照射される。
【0044】
そして、放射線画像検出器3に照射された放射線は、支持体33を透過し、蛍光体層32に照射される。
【0045】
ここで、上記のように被写体2を透過した放射線が支持体33を透過するが、本実施形態の支持体33は有機物から形成されているので放射線の吸収は小さく、支持体33における放射線の大きな減衰は生じない。
【0046】
そして、放射線の照射を受けた蛍光体層32は、その放射線を可視光に変換する。
【0047】
ここで、蛍光体層32により変換された可視光は固体検出器31側だけでなく、固体検出器31側とは反対側にも向かうが、このような光も支持体33によって反射させることによって固体検出器31側に導くことができる。
【0048】
そして、蛍光体層32により変換された可視光は固体検出器31に照射され、固体検出器31の各フォトダイオード部36に入射される。
【0049】
そして、フォトダイオード部36に入射された可視光はフォトダイオード部36の半導体層36bに照射され、半導体層36bおいて電荷が発生する。
【0050】
そして、画像読出時には、X方向に並ぶTFTスイッチ37の行に接続された各走査線31bがゲートドライバ40によりY方向について順次選択され、ゲートドライバ40からその選択された走査線31bに対して各TFTスイッチ37をONするためのON信号が順次出力される。
【0051】
そして、走査線31bにON信号が付加されるとその走査線31bに接続された各TFTスイッチ37のゲート電極37aにゲート電圧が印加され、TFTスイッチ37のドレイン電極37b−ソース電極37c間が半導体層37dを介して導通し、TFTスイッチ37がON状態となる。
【0052】
そして、これによりフォトダイオード部36において発生した電荷信号がTFTスイッチ37を介して読み出され、データ線31cに流れ出す。そして、各データ線31cに流れ出した電荷信号は各データ線31cに接続された積分アンプ50により画像信号として検出され、走査線31bの選択毎に積分アンプ50から画像信号が出力される。
【0053】
そして、放射線画像検出器3から出力された画像信号は信号処理部4に出力され、信号処理部4において所定の信号処理が施された後、その処理済画像信号が再生部5に出力される。
【0054】
そして、再生部5において、処理済画像信号に基づいて、たとえば被写体2の放射線画像がモニタ上に再生表示されたり、所定の記録媒体に放射線画像が再生記録されたりする。
【0055】
以下、上述した実施形態の放射線画像検出器の実施例を説明する。
【実施例1】
【0056】
1)蛍光体シートの形成
ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂脂および可塑剤の混合物20重量%を、トルエン、2-ブタノールおよびキシレンの混合溶剤80重量%に溶解し、十分に攪拌して結合剤溶液を作成した。
【0057】
そして、この結合剤溶液と平均粒子径5μmのGdS:Tb蛍光体とを固形成分として15:85の重量%比で混合し、ボールミルで分散処理して蛍光体塗布液を調製した。
【0058】
そして、この蛍光体塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、430mm巾で塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して、蛍光体シート(厚み:300μm)を得た。
【0059】
2)支持体の形成
下記組成の材料をMEK(メチルエチルケトン)5gに加え、混合分散して、塗布液を調製した。この塗布液をプラスチックフィルム(東レ株式会社製、白色低比重フィルムのE6SL)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させ、硬化させ、蛍光体層側の接着層(膜厚:5μm)を形成した。
【0060】
樹脂:飽和ポリエステル樹脂(バイロン300(登録商標)、東洋紡株式会社製)のME
K溶液(固形分30重量%)
硬化剤:ポリイソシアネート(オレスターNP38−70S(登録商標)(固形分7
0%)、三井東圧株式会社製)
導電剤:SnO(Sbドープ)針状微粒子のMEK分散体(固形分30重量%)
3)蛍光体層の形成
支持体上の接着層の面に、1)で作製した蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール45℃、下側ロール45℃、送り速度0.3m/分にて加熱圧縮した。これにより、蛍光体シートは支持体上に完全に融着した。
【0061】
4)放射線画像検出器の形成
上記支持体上の蛍光体層の表面に両面接着テープ(接着層;厚み25μm、日東電工(株)製CS9621)を貼った後、ラミネート機を用いて固体検出器の表面に、両面接着テープを介して蛍光体層を貼り合わせることで放射線画像検出器を作成した。
【0062】
一方、比較例として、下記の放射線画像検出器を作成した。比較例の放射線画像検出器100は、図5に示すように、被写体を透過した放射線の照射を受けてその放射線を可視光に変換する蛍光体層102と、蛍光体層102により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する固体検出器101と、蛍光体層102を支持する支持体104とを備えたものであり、支持体104と蛍光体層102との間に反射層103が設けられたものである。
【0063】
比較例の放射線画像検出器100の支持体104は、実施例の支持体のように気泡を含有するものではなく、蛍光体層102により変換された光を反射するものとして機能するものではない。そして、比較例の放射線画像検出器100においては、反射層103により蛍光体層102により変換された光が固体検出器101側へ反射される。
【0064】
比較例の放射線画像検出器100は以下のようにして作成した。
【0065】
1)蛍光体シートの作製
蛍光体シートについては、上記実施例と同様にして作成した。
【0066】
2)反射層の形成
下記組成の材料をMEK(メチルエチルケトン)5gに加え、混合分散して、塗布液を調製した。この塗布液をPET(ポリエチレンテレフタレート)(支持体、厚み:200μm)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させ、硬化させ、反射層側の接着層(膜厚:5μm)を形成した。
【0067】
樹脂:飽和ポリエステル樹脂(バイロン300,東洋紡(株)製)のMEK溶液「固形分30重量%」
硬化剤:ポリイソシアネート(オレスターNP38-70S「固形分70%」、三井東圧(株)製)
導電剤:SnO(Sbドープ)針状微粒子のMEK分散体「固形分30重量%」
続いて、下記組成の材料をMEK387gに加え、混合分散して塗布液を作製した。この塗布液をPETからなる支持体上の接着層の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、反射層(層厚、約100μm)を形成した。
【0068】
光反射性物質:ルチル型二酸化チタン粉末(平均粒子経:0.28μm)(石原産業
(株)製、CR95)
結合剤:軟質アクリル樹脂(クリスコートP-1018GS「20%トルエン溶液」、大日本インキ化学工業(株)製)
3)蛍光体層の形成
支持体上の反射層の面に、1)で作製した蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール45℃、下側ロール45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は反射層に完全に融着した。熱圧縮後の蛍光体層の層厚は200μmであった。
【0069】
4)放射線画像検出器の形成
上記蛍光体層の表面に両面接着テープ(接着層;厚み25μm、日東電工(株)製CS9621)を貼った後、ラミネート機を用いて固体検出器の表面に、両面接着テープを介して蛍光体層を貼り合わせた。
【0070】
そして、上記のようにして作成された[実施例1]と[比較例1]の放射線画像検出器における支持体の反射率を評価するとともに、その感度を評価した。その評価結果を下表1に示す。
【0071】
反射率の測定は、株式会社日立製作所製U−3210型自記分光光度計に、150φ積分球(150−0901)を用いて、標準白板(210−0740)に対しての反射率を測定する方法が利用した。反射率測定の測定波長は、蛍光体層を構成する蛍光体の発光光の波長を考慮して545nmとした。
【0072】
また、感度の評価は、管電圧50kVpのX線を放射線画像検出器の支持体側から照射し、固体検出器で検出された画像データの平均シグナル値から相対感度を求める方法を採用した。
【0073】
下表1に示すように、実施例1の放射線画像検出器については、測定波長545nmの光に対する反射率が98%であり、十分な反射率が得られることがわかった。また、比較例1の放射線画像検出器に関してもほぼ同等の結果が得られた。
【0074】
一方、感度に関しては、実施例1では十分な感度が得られたのに対し、比較例1では無機物によるX線吸収、減衰の結果、相対感度は90(実施例の相対感度を100とした)となり、明らかに感度が低下した。
【表1】

【0075】
なお、上記実施例においては、蛍光体シートを作成し、その蛍光体シートを支持体上に接着したものを固体検出器に貼り付けるようにしたが、蛍光体層の蛍光体として、柱状結晶からなるCsI:NaおよびCsI:Tlのうちの少なくとも1つを利用する場合には、固体検出器の上のパリレンなどの層を設けた後に、CsI:Tlなどを蒸着することによって蛍光体層を形成し、その蛍光体層の上に支持体を貼り付けるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、放射線画像検出器の支持体側から放射線を照射するようにしたが、放射線画像検出器の固体検出器側から放射線を照射するようにしてもよい。すなわち、放射線画像検出器を、放射線源1側から、固体検出器31、蛍光体層32および支持体33がこの順に配置されたものとしてもよい。上記のように固体検出器側から放射線を照射することによって、蛍光体層により変換された光が蛍光体層自身によって吸収されてしまうのを防止したり、蛍光体層において光が散乱してしまうのを防止したりすることができる。
【0077】
また、上記実施形態および実施例においては、電気読取方式の固体検出器を用いた放射線画像検出器について説明したが、本発明の放射線画像検出器は光読取方式の固体検出器を用いるようにしてもよい。光読取方式の固体検出器としては、具体的には、たとえば、波長変換層に変換された可視光を透過する第1の電極層、第1の電極層を透過した可視光の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層、記録用光導電層において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、且つ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層、および読取光を透過する透明線状電極と読取光を遮光する遮光線状電極とからなる第2の電極層をこの順に積層してなるものを用いることができる。そして、上記放射線画像検出器の第1の電極層の上に、上述した蛍光体層および支持体を、蛍光体層が第1の電極層側に配置されるように設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の放射線画像検出器の実施形態を用いた放射線画像撮影装置の概略構成図
【図2】本発明の放射線画像検出器の一実施形態の概略構成を示す断面図
【図3】固体検出器の平面図を示す図
【図4】固体検出器におけるフォトダイオード部およびTFTスイッチの構成を示す図
【図5】比較例の放射線画像検出器の概略構成を示す断面図
【符号の説明】
【0079】
1 放射線源
2 被写体
3 放射線画像検出器
4 信号処理部
5 再生部
31 固体検出器
31b 走査線
31c データ線
31d 基板
32 蛍光体層
33 支持体
36 フォトダイオード部
37 TFTスイッチ
40 ゲートドライバ
50 積分アンプ
100 放射線画像検出器
101 固体検出器
102 蛍光体層
103 反射層
104 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、放射線の照射を受けて該放射線をより長い波長の光に変換する波長変換層と、該波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する検出器とがこの順に積層された放射線画像検出器において、
前記支持体が、多数の気泡を含有する有機物から形成され、無機物を含有しないものであり、前記波長変換層により変換された光を前記検出器に向けて反射するものであることを特徴とする放射線画像検出器。
【請求項2】
前記支持体が、前記波長変換層により変換された光の主たる発光波長に対する反射率が85%以上であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出器。
【請求項3】
前記支持体が、樹脂から形成されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像検出器。
【請求項4】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートから形成されるものであることを特徴とする請求項3記載の放射線画像検出器。
【請求項5】
前記波長変換層が、GOS(GdS:Tb)粒子を含むものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項6】
前記波長変換層が、CsI:NaおよびCsI:Tlのうちの少なくとも1つを含むものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107198(P2010−107198A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276254(P2008−276254)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】