説明

放熱媒体塗布装置

【課題】定量的な塗布厚さで放熱ユニットの表面に放熱媒体を塗布することができる放熱媒体塗布装置を提供する。
【解決手段】放熱ユニット13の表面に放熱媒体12を塗布するための放熱媒体塗布装置1であって、フレーム2と、フレーム2に支持され、かつ放熱ユニット13の表面を露出するための開口部4を有するマスク3と、フレーム2に往復移動可能に取り付けられたスキージフレーム6と、スキージフレーム6に対して昇降可能に取り付けられ、かつマスク3と接する部分の幅が開口部4よりも広く形成されたスキージ8と、スキージ8をマスク3に当接するように付勢するスキージ用ばね10とを備えている。スキージ8は、スキージフレーム6とともに移動することにより開口部4上を通過するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱媒体塗布装置に関し、特に、被塗布対象物の表面にマスクを用いて放熱媒体を塗布するための放熱媒体塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放熱ユニットに対してグリースやコンパウンドなどの放熱媒体を塗布する手法としては、クリームはんだ印刷またはコーティング剤の塗布において使用される方法を流用した手法が主流である。具体的な放熱媒体を塗布する手法としては、マスクを用いたスクリーン印刷、ディスペンサ塗布、刷毛塗りなどがある。
【0003】
たとえば、特開2008−53330号公報には、マスクを用いたスクリーン印刷によって放熱媒体を塗布する装置が開示されている。この公報には、パワー半導体素子を保持する機構と、当該保持機構部を定位置へ移動させる機構と、パワー半導体素子にサーマルコンパウンドを均一に塗布するための開口形状を有するメタルマスクと、メタルマスクを固定したマスク枠を上昇下降させる機構と、マスク枠を下降限界位置で固定する機構とを備えたサーマルコンパウンド塗布装置が記載されている。この塗布装置では、開口形状を有するメタルマスク上に置かれたサーマルコンパウンドが印刷スキージによりパワー半導体に塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のマスクを用いたスクリーン印刷、ディスペンサ塗布や刷毛塗りでは、作業者の経験や感覚に頼るところが大きい。そのため放熱媒体の塗布厚さを定量的に管理することは難しい。したがって、放熱媒体の塗布厚さについて、安定的に品質を確保することは難しい。放熱媒体の塗布厚さが均一でない場合には、放熱ユニットと電子部品などとが実装された際に、放熱ユニットと電子部品などとの間に隙間が生じる。これにより電子部品などの破損につながるという課題がある。
【0006】
上記の公報に記載の塗布装置においては、メタルマスクが下降限界位置で固定され、メタルマスクとパワー半導体とが接触した状態で、メタルマスクの開口部からサーマルコンパウンドが印刷スキージによりパワー半導体に塗布される。しかしながら、印刷仕上がりに影響を与える印刷方向や印圧(印刷スキージに加えられる力)を制御する機構がないため、塗布厚さなどの放熱媒体の塗り具合(品質)に関しては、塗布を行う作業者の経験などに依存するところが依然として大きい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定量的な塗布厚さで放熱ユニットの表面に放熱媒体を塗布することができる放熱媒体塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放熱媒体塗布装置は、被塗布対象物の表面に放熱媒体を塗布するための放熱媒体塗布装置であって、フレームと、フレームに支持され、かつ被塗布対象物の表面を露出するための開口部を有するマスクと、フレームに往復移動可能に取り付けられたスキージフレームと、スキージフレームに対して昇降可能に取り付けられ、かつマスクと接する部分の幅が開口部よりも広く形成されたスキージと、スキージをマスクに当接するように付勢する付勢部材とを備えている。スキージは、スキージフレームとともに移動することにより開口部上を通過するよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放熱媒体塗布装置によれば、スキージフレームに対して昇降可能に取り付けられたスキージをマスクに当接するように付勢する付勢部材が備えられているため、定量的な塗布厚さで放熱媒体を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ部材の概略正面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ部材の概略正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ、スキージフレーム、ハンドルおよびカムを示す概略斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ、ハンドルおよびカムを示す図4のV−V線に沿う概略側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ、ハンドルおよびカムを示す図4のV−V線に沿う概略側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージ、スキージフレーム、固定蓋、スキージ用ばね、ハンドルおよびカムを示す概略斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のフレーム、マスク、スキージおよびハンドルを示す概略斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第1の状態を示す概略側面図である。
【図10】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第2の状態を示す概略側面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第3の状態を示す概略側面図である。
【図12】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第4の状態を示す概略側面図である。
【図13】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第5の状態を示す概略側面図である。
【図14】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のマスク、スキージおよびハンドルの第6の状態を示す概略側面図である。
【図15】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置において放熱媒体が放熱ユニットに塗布された状態を示す概略斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態2における放熱媒体塗布装置のブレードの概略斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態2における放熱媒体塗布装置のブレードの概略斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態3における放熱媒体塗布装置の保持板近傍の概略斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態1における放熱媒体塗布装置のスキージシャフトに取り付けられたナットの近傍を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の放熱媒体塗布装置の構成について説明する。
【0012】
図1を参照して、本実施の形態の放熱媒体塗布装置1は、フレーム2と、マスク3と、スキージフレーム6と、スキージ8と、付勢部材10とを主に有している。
【0013】
フレーム2は、枠体で構成されている。フレーム2の枠体の内側にマスク3が支持されている。マスク3には、開口部4が形成されている。フレーム2の上面には、互いに平行となるように間隔をあけて一組のリニアガイド5が配置されている。各リニアガイド5は同じ寸法の直方体状に形成されている。各リニアガイド5は、各リニアガイド5の対向する面がフレーム2の枠体の内側面と面一になるように配置されている。
【0014】
一組のリニアガイド5の上面上には、一組のスキージフレーム6が載置されている。一組のスキージフレーム6は、各スキージフレーム6の外側に配置された凸部20の下面が各リニアガイド5の上面と接するように載置されている。これにより、スキージフレーム6は、リニアガイド5の上面に沿って往復移動可能に構成されている。固定蓋14は、各スキージフレーム6の上部に取り付けられている。各スキージフレーム6の間にはスキージ8が昇降可能に装着されている。
【0015】
スキージ8は、2つのスキージ部材81、82からなっている。スキージ部材81、82は、リニアガイド5の延在方向に並んで配置されている。隣り合うスキージ部材81、82は、後述のとおり、ハンドル7の操作により交互に昇降するように構成されている。スキージ部材81、82の上面には、それぞれ3つのスキージシャフト19が固定されている。
【0016】
各スキージシャフト19は、スキージ部材81、82の昇降にあわせて固定蓋14に形成されたスキージシャフト19を収容するための穴の中を昇降するように構成されている。各スキージシャフト19の周りにはそれぞれスキージ用ばね(付勢部材)10が、スキージ部材81、82の上面と固定蓋14の下面との間に取り付けられている。スキージ8のマスク3と当接する部分にはブレード9が形成されている。スキージ用ばね10は、ブレード9をマスク3に当接するように付勢するように構成されている。この当接するようにとは、放熱媒体12を介して当接していてもよい。ブレード9の幅は、マスク3の開口部4の幅よりも広く形成されている。
【0017】
スキージ用ばね10がブレード9をマスク3に付勢することによる押圧は、調整することが可能であってもよい。たとえば、スキージ用ばね10をばね定数の違うばねに取り替えることにより押圧を調整することができる。
【0018】
また、たとえば、図19に示すように、スキージシャフト19にナット91などを取り付けて、ナット91の位置を調節することによりスキージ用ばね10を伸縮させて押圧を調整することができる。つまり、スキージ用ばね10が、各スキージシャフト19に取り付けられたナット91の上面と固定蓋14の下面との間に取り付けられている。各スキージシャフト19の外周面にはナット91と螺合するためのねじが形成されている。そして、ナット91を回転させてナット91の位置を調整(図中矢印K方向)することによってスキージ用ばね10を伸縮させることにより押圧が調整される。
【0019】
なお、スキージシャフト19は、固定蓋14を貫通して昇降するように構成されていてもよい。
【0020】
また、シャフト15がベース18に支持されている。シャフト15は、フレーム2の四隅に昇降方向に形成された孔に挿通するように嵌合している。フレーム用圧縮ばね16は、シャフト15を取り囲むようにフレーム2の下面とベース18の上面との間に取り付けられている。フレーム用圧縮ばね16は、フレーム2を昇降方向に付勢支持している。フレーム2には昇降装置17が取り付けられている。
【0021】
ベース18上には、被塗布対象物である放熱ユニット13が載置されている。放熱ユニット13は、その表面の塗布領域11をマスク3の開口部4にあわせて載置されている。
【0022】
図2を参照して、スキージ部材81の内側の上面における両端部側に2つのカムフォロア21が形成されている。図3を参照して、スキージ部材82の内側の上面における中央部側に2つのカムフォロア22が形成されている。図2および図3を参照して、カムフォロア21とカムフォロア22とは同じ長さに形成されている。
【0023】
図4を参照して、スキージ部材81、82の両側面には、三角形状の凸部23が形成されている。一方、スキージフレーム6の内側面には、スキージ部材81、82の両側面の凸部23を案内するための三角形状の凹部24が2つ形成されている。各スキージフレーム6は裏板25の両端部に固定されている。各スキージフレーム6は、スキージ部材81、82において両側面の凸部23を除いた部分の幅と同等の間隔をあけて配置されている。
【0024】
スキージ部材81、82は、それらの両側面の三角形状の凸部23がスキージフレーム6の三角形状の凹部24に図中矢印Aに示すように上方から挿入されて、スキージフレーム6に装着されている。この構成により、スキージ部材81、82はスキージフレーム6から外れることなく、スキージフレーム6の三角形状の凹部24に沿って昇降可能となる。なお、スキージ部材81、82に形成されているブレード9は、スキージ部材81、82を間に挟むようにそれぞれ対向するスキージ部材81、82の外側面に形成されている。
【0025】
スキージフレーム6にはハンドル7が回転可能に設置されている。ハンドル7は、一組のスキージフレーム6を貫通する軸部を有している。ハンドル7の軸部には、カム31、32が取り付けられている。カム31は、カムフォロア21を押圧するようにカムフォロア21の下に配置されている。カム32は、カムフォロア22を押圧するようにカムフォロア22の下に配置されている。
【0026】
図5および図6を参照して、カム31、32はそれぞれ嵌合部33および曲線部(湾曲部)34を有している。カム31、32は、嵌合部33がハンドル7の軸部の周方向にずれた位置関係となるようにハンドル7の軸部に固定されている。図5は、図1のようにスキージ部材81が下方に位置し、スキージ部材82が上方に位置している状態を示している。この状態では、スキージ部材82のカムフォロア22は、カム32の嵌合部33と嵌合することによってカム32に支持されている。一方、スキージ部材81はカム31に接していない。スキージ部材81は、ブレード9がマスク3(図1参照)に接することによりマスク3に支持されている。
【0027】
図6は、図5とは逆に、スキージ部材81が上方に位置し、スキージ部材82が下方に位置している状態を示している。この状態では、スキージ部材81のカムフォロア21は、カム31の嵌合部33と嵌合することによってカム31に支持されている。一方、スキージ部材82はカム32に接していない。スキージ部材82は、ブレード9がマスク3(図1参照)に接することによりマスク3に支持されている。
【0028】
次に、図5および図6を参照して、カム31、32によりスキージ部材81、82が交互に昇降する動作について説明する。ハンドル7が回転することにより、ハンドル7の軸部に固定されたカム31、32が回転する。図5に示す状態でハンドル7を反時計回りに回転することにより、スキージ部材82のカムフォロア22は、カム32の嵌合部33から外れる。そして、スキージ部材82のカムフォロア22は、カム32の曲線部34により押圧されながら下降する。
【0029】
それと同時に、カム31とカム32とはそれぞれの嵌合部33がハンドル7の回転方向に互いにずれた位置関係となるようにハンドル7の軸部に固定されているため、スキージ部材81のカムフォロア21は、カム31の曲線部34により押圧されながら上昇する。そして、カムフォロア21がカム31の嵌合部33と嵌合することにより、スキージ部材81が上方に位置する。この状態では、スキージ部材82のカムフォロア22は、カム32とは接していないので、スキージ部材82は、ブレード9がマスク3(図1参照)に接することによりマスク3に支持されて下方に位置している。
【0030】
次に、図7を参照して、スキージ部材81、82がスキージ用ばね10により、下方向に付勢される動作について説明する。図7は、図1のようにスキージ部材81が下方に位置し、スキージ部材82が上方に位置している状態を示している。
【0031】
図7に示すように、この状態では、スキージ部材81の上面と固定蓋14の下面との間にスキージ用ばね10が設置されている。そのため、スキージ部材81は、スキージ用ばね10の付勢力により下方向(図中矢印B方向)に付勢される。これにより、スキージ部材81の自重に加えて、スキージ用ばね10の付勢力により、マスク3にスキージ部材81のブレード9が押圧される。
【0032】
なお、図6に示すように、スキージ部材81が上方に位置し、スキージ部材82が下方に位置している状態では、スキージ部材82がスキージ用ばね10の付勢力により下方向(図7中矢印B方向)に付勢される。これにより、スキージ部材82の自重に加えて、スキージ用ばね10の付勢力により、マスク3にスキージ部材82のブレード9が押圧される。
【0033】
次に、図1を参照して、放熱媒体塗布装置1によって放熱媒体12が塗布される動作について説明する。
【0034】
図1に示すように、放熱ユニット13がベース18上に載置される。この際、放熱ユニット13の表面の塗布領域11にマスク3の開口部4が位置合わせされる。次に、昇降装置17によってフレーム2がシャフト15に沿って下降され、マスク3の下面が放熱ユニット13の表面に接触する。
【0035】
なお、昇降装置17は、たとえば手動、モータ駆動、エア駆動によりフレーム2を昇降する。このとき、シャフト15のフレーム用圧縮ばね16の付勢力により、上下方向に移動可能なスキージ部材81を除き、フレーム2、マスク3、リニアガイド5、スキージフレーム6、スキージ部材82、ハンドル7、固定蓋14およびカム31、32の自重が支えられる。これにより、放熱ユニット13にはそれらの自重による荷重がほぼかかることがない。
【0036】
そして、ハンドル7が操作されることにより、スキージ8のスキージ部材81が上昇し、スキージ部材82が下降する。スキージ8のスキージ部材82がマスク3の上面にスキージ部材82の自重およびスキージ用ばね10の付勢力による一定の圧力で押圧する状態が維持される。こうして、マスク3に対して位置合わせされた放熱ユニット13の表面に沿って、スキージ8をマスク3の上面から押し当てることが可能となる。これにより、マスク3上をスキージ8が移動中、常に一定の荷重を与えながらスクリーン印刷をすることが可能となる。
【0037】
以下に塗布工程における一連の作業について説明する。図8に示すようにスキージ部材81がマスク3に接し、かつスキージ部材81の前方にマスク3の開口部4が位置する状態からスキージングが開始される。なお、図8は、見やすくするため、フレーム2、マスク3、ハンドル7およびスキージ8のみを記載している。また、図9〜図14は、見やすくするため、マスク3、ハンドル7およびスキージ8のみを記載している。
【0038】
図9を参照して、ハンドル7が手前方向(図中矢印Cの方向)に回転される。これにより、マスク3に接していたスキージ部材81が上昇(図中矢印D方向)し、スキージ部材82が下降(図中矢印E方向)する(第1の状態)。その結果、図10に示すように、スキージ部材81が上方に位置し、スキージ部材82のブレード9がマスク3に接するように位置する(第2の状態)。
【0039】
図11に示すように、この状態から図中矢印F方向にスキージングされる(第3の状態)。ハンドル7が図中矢印F方向に引かれることにより、マスク3上をスキージ部材82がスライドされる。その際、スキージ部材82のブレード9の内側がマスク3上に載置された放熱媒体12をつかみ、マスク3の開口部4に放熱媒体12が充填される。これにより、放熱ユニット13の表面の塗布領域11に放熱媒体12が塗布される。スキージ部材82の後方にマスク3の開口部4が位置する状態で、スキージ部材82によるスキージングが終了する。
【0040】
続いて、フレーム2が上昇されて、放熱媒体12が塗布された放熱ユニット13が取り出される。そして、新たな放熱ユニット13がベース18上に載置される。その後、図12を参照して、ハンドル7が奥方向(図中矢印G方向)に回転される。これにより、マスク3に接していたスキージ部材82が上昇(図中矢印I方向)し、スキージ部材81が下降(図中矢印H方向)する(第4の状態)。
【0041】
その結果、図13に示すように、スキージ部材82が上方に位置し、スキージ部材81のブレード9がマスク3に接するように位置する(第5の状態)。図14に示すように、この状態から図中矢印J方向にスキージングされる(第6の状態)。ハンドル7が図中矢印J方向に引かれることにより、マスク3上をスキージ部材81がスライドされる。その際、スキージ部材81のブレード9の内側がマスク3上に載置された放熱媒体12をつかみ、マスク3の開口部4に放熱媒体12が充填される。これにより、放熱ユニット13の表面の塗布領域11に放熱媒体12が塗布される。
【0042】
スキージ部材81の後方にマスク3の開口部4が位置する状態で、スキージ部材81によるスキージングが終了する。これにより、図15に示すように、2個目の放熱ユニット13の塗布領域11に放熱媒体12が塗布される。図15には、見やすくするために、フレーム2、マスク3、放熱媒体12および放熱ユニット13のみ記載されている。
【0043】
上記と同様の作業が繰り返されることにより、順次載置される放熱ユニット13の表面の塗布領域11に放熱媒体12が塗布される。
【0044】
また、上記の作業において、1個目の放熱ユニット13を取り出さずに同一の放熱ユニット13に対して往復してスキージングを行うことが可能である。これにより、マスク3の開口部4への充填性能がさらに良くなり、塗布の精度が向上する。
【0045】
次に、本実施の形態の放熱媒体塗布装置の作用効果について説明する。
本実施の形態の放熱媒体塗布装置によれば、マスク3の下面を放熱ユニット13に略一定の圧力で接触させた状態で、スキージ8をスライドさせることによって、放熱媒体12がマスク3の開口部4に充填される。これにより、放熱ユニット13における塗布領域11に、その表面に倣うように所定の厚さで放熱媒体12を塗布することができる。
【0046】
また、一連の塗布作業においてスキージ部材81、82を互い違いに昇降させることができるので、放熱媒体12がスキージ部材81、82のブレード9の進行方向に対する裏側(後方)にまわりこむことがない。すなわち、1つのスキージ部材81では前後に移動するとスキージ部材81の向きを変えない限りスキージ部材81のブレード9の両面に放熱媒体12が付着する。これに対し2つのスキージ部材81、82を使用する場合には、それぞれのブレード9の片面を使用して放熱媒体を塗布することができる。したがって、典型的には、スキージ部材81、82の向きを変えなくてもそれぞれのブレード9の片面にしか放熱媒体12が付着しない。そのため、スキージ部材81、82の向きを変える必要が無いので、効率的かつ安定した連続作業を行うことができる。
【0047】
また、フレーム用圧縮ばね16の付勢力により、放熱ユニット13に接触しているマスク3にフレーム2などの自重による圧力がほぼかかることがなく、マスク3の変形を抑制することができる。これらにより、放熱媒体塗布装置の長寿命化を図ることができる。
【0048】
また、ブレードの幅がマスク3の開口部4より広いので、放熱ユニット13の塗布領域11に隙間なく放熱媒体12を塗布することができる。また、マスク3は、メッシュ状のマスクではなく塗布領域11が一様に開口している開口型マスクのため一様に放熱媒体12を塗布することができる。これらにより、電子部品などを実装する際に隙間(空気層)が混入するのを防ぐことができる。よって、電子部品などが破損することを抑制することができる。
【0049】
(実施の形態2)
最初に本発明の実施の形態2の放熱媒体塗布装置の構成について説明する。
【0050】
図16を参照して、本実施の形態の放熱媒体塗布装置1は実施の形態1の構成と比較してスキージ8のブレードが主に異なっている。本実施の形態の放熱媒体塗布装置1では、スキージ8のブレード51のマスク3に当接する端部53が断面視において1/4円形状を有している。
【0051】
また、ブレード51は、たとえばアクリル樹脂のようなマスク3よりも柔らかい材質で形成されている。このブレード51は、透明あるいは透光性を有する材質で形成されていてもよい。図17は、ブレード51の底面52の磨耗が進行した状態を示している。
【0052】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
本実施の形態における放熱媒体塗布装置1によれば、上記の構成を有しているので実施の形態1と同様の作用効果を有している。
【0054】
本実施の形態の放熱媒体塗布装置1では、ブレード51は、マスク3より柔らかい材質のため、塗布を繰り返すことによりブレード51の底面52の磨耗が進行する。スキージ8のブレード51のマスク3に当接する端部53が断面視において1/4円形状を有しているので、ブレード51の底面52の磨耗が進行したとしても放熱媒体12との接触面は曲面であるため放熱媒体12を開口部4に導きやすく印刷仕上がりに影響がでにくくすることができる。
【0055】
また、ブレード51の底面52の磨耗が進行したとしても、断面視において1/4円形状が消滅するまで、放熱媒体12との接触面は曲面を保つため、ブレード51の交換回数を減らすことができ、ブレード51の長寿命化を図ることができる。
【0056】
また、ブレード51は、マスク3より柔らかい材質のため、マスク3が削られることが抑制される。これにより、マスク3の長寿命化を図ることができる。
【0057】
また、ブレード51が透明あるいは透光性を有する材質で形成されることにより、放熱媒体12の量や塗布状況を容易に確認することができるので、作業性を向上することができる。
【0058】
また、図1のように、スキージ8のスキージ部材81、82が対向して配置されている場合に、ブレード51の曲面側を対向して配置することにより、上記の作用効果を有しながら往復して塗布することができる。これにより、放熱媒体を塗布する工程の作業性を向上させて生産性を向上することができる。
【0059】
(実施の形態3)
最初に本発明の実施の形態3の放熱媒体塗布装置の構成について説明する。
【0060】
図18を参照して、本実施の形態の放熱媒体塗布装置1は、実施の形態1の構成と比較してスキージ8のブレード9に保持板61が取り付けられている点が主に異なっている。本実施の形態の放熱媒体塗布装置1では、保持板61がスキージ8のブレード9のマスク3に当接する端部53の側面に設けられている。保持板61は、マスク3に当接して移動する方向に向かって延びるように形成されている。これにより、ブレード9と保持板61とによって囲まれた内部空間62が形成されている。
【0061】
本実施の形態における放熱媒体塗布装置1によれば、上記の構成を有しているので実施の形態1と同様の作用効果を有している。
【0062】
本実施の形態の放熱媒体塗布装置1によれば、スキージ部材81、82のうちブレード9および保持板61がマスク3と接している側からは、放熱媒体12がブレード9および保持板61の外側に漏れ出すことが抑制される。したがって、内部空間62に充填された放熱媒体12が、マスク3の開口部4以外の部分に流出することが抑制される。
【0063】
ブレード9および保持板61によって囲まれた内部空間62は、放熱媒体12を収容する空間を兼ねている。これにより、放熱媒体12を供給するためのディスペンサ等の付加的な放熱媒体12の供給機構を不要とすることができる。
【0064】
なお、ブレード9は、その進行方向前方に塗布材料を受入れ可能な内部空間62を有するものであれば、図18に示す態様に限定されない。また、ブレード9は、実施の形態2に示すようにスキージ8のブレード51のマスク3に当接する端部53が断面視において1/4円形状を有していてもよい。また、ブレード51は、たとえばアクリル樹脂のようなマスク3よりも柔らかい材質で形成されていてもよい。また、ブレード51は、透明な材質で形成されていてもよい。これにより、実施の形態2と同様の作用効果を有することができる。
【0065】
また、この場合、保持板61がたとえばアクリル樹脂のようなマスク3よりも柔らかい材質で形成されていてもよい。また、保持板61は、透明な材質で形成されていてもよい。これにより、実施の形態2と同様の作用効果をより効果的に有することができる。
【0066】
なお、本発明の放熱媒体塗布装置は、上記の各実施の形態の各構成が適時組み合わせられた構成であっても良い。
【0067】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、マスクによるスクリーン印刷によって放熱ユニットに対して放熱媒体を塗布する装置に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0069】
1 放熱媒体塗布装置、2 フレーム、3 マスク、4 開口部、5 リニアガイド、6 スキージフレーム、7 ハンドル、8 スキージ、9,51 ブレード、10 スキージ用ばね、11 塗布領域、12 放熱媒体、13 放熱ユニット、14 固定蓋、15 シャフト、16 フレーム用圧縮ばね、17 昇降装置、18 ベース、19 スキージシャフト、21,22 カムフォロア、23 凸部、24 凹部、25 裏板、31,32 カム、33 嵌合部、34 曲線部、52 底面、53 端部、61 保持板、62 内部空間、81,82 スキージ部材、91 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布対象物の表面に放熱媒体を塗布するための放熱媒体塗布装置であって、
フレームと、
前記フレームに支持され、かつ前記被塗布対象物の表面を露出するための開口部を有するマスクと、
前記フレームに往復移動可能に取り付けられたスキージフレームと、
前記スキージフレームに対して昇降可能に取り付けられ、かつマスクと接する部分の幅が前記開口部よりも広く形成されたスキージと、
前記スキージを前記マスクに当接するように付勢する付勢部材とを備え、
前記スキージは、前記スキージフレームとともに移動することにより前記開口部上を通過するよう構成されている、放熱媒体塗布装置。
【請求項2】
前記スキージは、該スキージの移動方向に並んで配置された複数のスキージ部材を含み、
前記複数のスキージ部材の隣り合うスキージ部材を交互に昇降させるためのカムをさらに備えた、請求項1に記載の放熱媒体塗布装置。
【請求項3】
前記フレームを昇降方向に付勢支持するフレーム用圧縮ばねをさらに備えた、請求項1または2に記載の放熱媒体塗布装置。
【請求項4】
前記マスクに当接する前記スキージの端部が断面視において1/4円形状を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の放熱媒体塗布装置。
【請求項5】
前記スキージは、前記スキージの移動方向に沿って延びている保持板を含む、請求項2〜4のいずれかに記載の放熱媒体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−188303(P2010−188303A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36807(P2009−36807)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】