放熱材料及びその製造方法並びに電子機器及びその製造方法
【課題】炭素元素の線状構造体を用いた熱伝導度及び電気伝導度が極めて高い放熱材料、並びにこのような放熱材料を用いた高性能の電子機器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の炭素元素の線状構造体12と、複数の線状構造体12間に形成され、複数の線状構造体12を支持する支持層14aと、支持層14aの少なくとも一方の表面上に形成され、支持層14aの材料よりも融点の低い材料の低融点材料層14b,14cとを有する。
【解決手段】複数の炭素元素の線状構造体12と、複数の線状構造体12間に形成され、複数の線状構造体12を支持する支持層14aと、支持層14aの少なくとも一方の表面上に形成され、支持層14aの材料よりも融点の低い材料の低融点材料層14b,14cとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材料に係り、特に、炭素元素の線状構造体を有する放熱材料及びその製造方法、並びにこのような放熱材料を用いた電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバーやパーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)などに用いられる電子部品には、半導体素子から発する熱を効率よく放熱することが求められる。このため、半導体素子の直上に設けられたサーマルインターフェイスマテリアルを介して、銅などの高い熱伝導度を有する材料のヒートスプレッダが配置された構造を有している。
【0003】
サーマルインターフェイスマテリアルには、それ自身が高い熱伝導率を有する材料であることに加え、発熱源及びヒートスプレッダ表面の微細な凹凸に対して広面積に接触する特性が求められる。現状では、サーマルインターフェイスマテリアとして、PCM(フェイズチェンジマテリアル)やインジウムなどが一般に用いられている。
【0004】
しかしながら、PCMは、微細な凹凸に対する接触性はよいものの、熱伝導度(1W/m・K〜5W/m・K程度)は低く、効果的な放熱特性を得るためにはその膜厚を薄くする必要がある。発熱源とヒートスプレッダとの間には熱膨張係数の違いに起因してギャップが生じるが、このギャップに追従して凹凸を吸収するためには、薄膜化には限界がある。
【0005】
また、近年におけるレアメタルの大幅な需要増加によりインジウム価格は高騰しており、インジウムよりも安価な代替材料が待望されている。また、物性的に見てもインジウムの熱伝導度(50W/m・K)は高いとはいえず、半導体素子から生じた熱をより効率的に放熱させるために更に高い熱伝導度を有する材料が望まれている。
【0006】
このような背景から、PCMやインジウムよりも高い熱伝導度を有する材料として、カーボンナノチューブに代表される炭素元素の線状構造体が注目されている。カーボンナノチューブは、非常に高い熱伝導度(1500W/m・K)を有するだけでなく、柔軟性や耐熱性に優れた材料であり、放熱材料として高いポテンシャルを有している。
【0007】
カーボンナノチューブを用いた熱伝導シートとしては、樹脂中にカーボンナノチューブを分散した熱伝導シートや、基板上に配向成長したカーボンナノチューブ束を樹脂等によって埋め込んだ熱伝導シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−150362号公報
【特許文献2】特開2006−147801号公報
【特許文献3】特開2006−290736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、カーボンナノチューブを用いた従来の放熱材料では、カーボンナノチューブの有する高い熱伝導度を充分に生かすことができなかった。
【0010】
本発明の目的は、炭素元素の線状構造体を用いた熱伝導度及び電気伝導度が極めて高い放熱材料及びその製造方法、並びにこのような放熱材料を用いた高性能の電子機器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の一観点によれば、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを有する放熱材料が提供される。
【0012】
また、実施形態の他の観点によれば、発熱体と、放熱体と、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料とを有する電子機器が提供される。
【0013】
また、実施形態の更に他の観点によれば、発熱体と放熱体との間に、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料を配置する工程と、前記発熱体と前記放熱体とを、前記放熱材料により、前記低融点材料層の融点よりも高く前記支持層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程とを有する電子機器の製造方法が提供される。
【0014】
また、実施形態の更に他の観点によれば、第1の基板上に、複数の炭素元素の線状構造体を成長する工程と、複数の前記線状構造体上に、第1のレジスト膜を形成した第2の基板を、複数の前記線状構造体の一端が前記第1のレジスト膜によって覆われるように、貼り合わせる工程と、複数の前記線状構造体の他端と前記第1の基板との界面から前記第1の基板を剥離する工程と、複数の前記線状構造体の間隙に、複数の前記線状構造体を支持する支持層を形成する工程と、前記第1のレジスト膜を選択的に除去し、前記第2の基板を除去するとともに、複数の前記線状構造体の前記一端を露出する工程と、前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層を形成する工程とを有する放熱材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
開示の放熱材料及びその製造方法によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによる線状構造体の配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さい放熱材料を容易に実現することができる。また、線状構造体の少なくとも一端を支持層の表面よりも突出させることにより、線状構造体のバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を低減することができる。
【0016】
また、開示の電子機器及びその製造方法によれば、発熱体から発せられる熱の放熱効率を高めることができ、電子機器の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図3】図3は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図4】図4は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図5】図5は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その1)である。
【図6】図6は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その2)である。
【図7】図7は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その3)である。
【図8】図8は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その4)である。
【図9】図9は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その5)である。
【図10】図10は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用方法を示す工程断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。
【図12】図12は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】図13は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図14】図14は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用方法を示す工程断面図である。
【図15】図15は、第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図16】図16は、第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図17】図17は、第4実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【図18】図18は、第5実施形態による電子機器の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法について図1乃至図10を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。図2乃至図4は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。図5乃至図9は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図である。図10は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用例を示す概略断面図である。
【0020】
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造について図1を用いて説明する。
【0021】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図1(a)に示すように、シートの膜厚方向、すなわちシートの表面と交差する方向に配向した複数のカーボンナノチューブ12を有している。カーボンナノチューブ12の両端には、被膜16a,16bが、それぞれ形成されている。カーボンナノチューブ12の間隙には、充填層14が形成されている。充填層14は、シートの内部に設けられた支持層14aと、支持層14aを挟むようにシートの両表面側に形成された低融点材料層14b,14cとを有している。
【0022】
カーボンナノチューブシート10は、例えば図1(b)に示すように、被着体50と被着体60との間に設けられ、被着体50と被着体60との間の熱伝導性や電気伝導性を向上するためのものである。被着体50,60は、例えば、発熱体や放熱体である。発熱体は例えば半導体素子であり、放熱体は例えばヒートスプレッダである。被着体50と被着体60との間に設けられる際、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上する。
【0023】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の各部について詳細に説明する。
【0024】
カーボンナノチューブ12は、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。カーボンナノチューブ12の面密度は、特に限定されるものではないが、放熱性及び電気伝導性の観点からは、1×1010本/cm2以上の平面密度であることが望ましい。
【0025】
カーボンナノチューブ12の長さは、カーボンナノチューブシート10の用途によって決まり、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm〜500μm程度の値に設定することができる。
【0026】
被膜16a,16bは、カーボンナノチューブシート10の被着体50,60に対する接触面積を増加するためのものである。カーボンナノチューブ12の高さにばらつきがある場合には、高さばらつきを緩和して接触面積を増加する効果もある。熱伝導性の高い被膜16a,16bを設けることにより、カーボンナノチューブ12と被着体50,60との間の接触熱抵抗が低減され、カーボンナノチューブシート10の熱伝導性を高めることができる。カーボンナノチューブシート10を導電性シートとして用いる場合には、導電性を高めることができる。
【0027】
被膜16a,16bを形成する材料は、充填層14の構成材料よりも熱伝導率の高い材料であれば特に限定されるものではない。カーボンナノチューブシート10を電気伝導用途にも用いる場合には、導電性を有する材料、例えば、金属や合金等を適用することができる。被膜16a,16bの構成材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)等を用いることができる。また、被膜16a,16bは、単層構造である必要はなく、例えばチタン(Ti)と金(Au)との積層構造など、2層或いは3層以上の積層構造であってもよい。
【0028】
被膜16a,16bの膜厚は、製造過程において支持層14aの形成を阻害しない膜厚であれば、特に限定されるものではない。被膜16a,16bの膜厚は、支持層14aを形成する際の材料の浸透性、カーボンナノチューブシート10に要求される特性、被膜16a,16bの構成材料等に応じて適宜設定することが望ましい。
【0029】
なお、被膜16a,16bは、必ずしも設ける必要はない。被膜16a,16bのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0030】
支持層14aは、カーボンナノチューブシート10を使用する際にカーボンナノチューブ12が移動(例えば、傾斜したり凝集したりするなど)して配向性を失わないように支持するためのものである。この目的のもと、支持層14aは、少なくともカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体である材料により形成する。カーボンナノチューブシート10が曝される熱としては、カーボンナノチューブシート10を被着体50,60に熱圧着(リフロー)する際の加熱、半導体素子の駆動時の発熱、等が挙げられる。
【0031】
支持層14aの材料は、形成する際に液状であり硬化することができ、少なくともカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。支持層14aの材料としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を適用することができる。
【0032】
支持層14aの材料は、例えば、有機系充填材としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを適用することができる。また、無機系充填材としては、SOG(Spin On Glass)などの塗布型絶縁膜形成用組成物などを適用することができる。また、インジウム、はんだ、金属ペースト(例えば、銀ペースト)などの金属材料を適用することもできる。また、例えばポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性ポリマを適用することもできる。
【0033】
低融点材料層14b,14cは、カーボンナノチューブシート10を被着体に接したときに、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の隙間を充填するためのものである。この目的のもと、低融点材料層14b,14cは、熱圧着或いは圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料により形成する。
【0034】
熱圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料としては、常温において固体であり、加熱により軟化して液状或いはゲル状となる物質を適用することができる。ただし、低融点材料層14b,14cの材料の融点が支持層14aの材料の融点以上では、低融点材料層14b,14cを熱圧着する際に支持層14aまでもが軟化してカーボンナノチューブ12を支持できなくなる。このため、低融点材料層14b,14cの材料の融点は、支持層14aの融点未満であることが望ましい。
【0035】
また、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性、すなわち接触熱抵抗をより低減する観点からは、カーボンナノチューブシート10が搭載される装置の駆動時の上限温度において固体の材料であることが望ましい。
【0036】
すなわち、低融点材料層14b,14cとしては、融点が、カーボンナノチューブシート10が搭載される装置の駆動時の上限温度(例えば、発熱体の発熱温度)よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い材料が望ましい。特に、温度に応じて液体と固体との間で可逆的に状態変化するものであり、常温では固体であり、加熱すると液状に変化し、冷却すると接着性を発現しつつ固体に戻る熱可塑性樹脂が好適である。
【0037】
低融点材料層14b,14cの融点の上限値は、支持層14aの融点未満であることに加え、被着体50,60の耐熱温度の下限値よりも低いことが望ましい。低融点材料層14b,14cの融点が被着体50,60の耐熱温度より高いと、被着体50,60にダメージを与えることなく熱圧着することが困難となるからである。
【0038】
低融点材料層14b,14cに好適な熱可塑性樹脂としては、例えば、以下に示すホットメルト樹脂が挙げられる。ポリアミド系ホットメルト樹脂としては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」(軟化点温度:140℃)、日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」(融点:120℃)が挙げられる。また、ポリエステル系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社の「DH598B」(軟化点温度:133℃)が挙げられる。また、ポリウレタン系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DH722B」が挙げられる。また、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、例えば、松村石油株式会社製の「EP−90」(軟化点温度:148℃)が挙げられる。また、エチレン共重合体ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DA574B」(軟化点温度:105℃)が挙げられる。また、SBR系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6250」(軟化点温度:125℃)が挙げられる。また、EVA系ホットメルト樹脂としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の「3747」(軟化点温度:104℃)が挙げられる。また、ブチルゴム系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6158」が挙げられる。なお、軟化点温度は柔軟性が出てくる温度であり、融点は溶け始める温度である。
【0039】
これらホットメルト樹脂の中から、融点が高いものを支持層14aの材料として、融点が低いものを低融点材料層14b,14cの材料として、選択してもよい。例えば、支持層14aの材料としてヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」を用い、低融点材料層14b,14cの材料として日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」を用いることができる。
【0040】
圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料としては、常温において液状或いはゲル状の物質を適用することができる。低融点材料層14b,14cに適用可能な液状体やゲル状体の材料としては、例えば、低粘度の放熱用グリース等が挙げられる。
【0041】
支持層14a、低融点材料層14b,14cには、必要に応じて、添加物を分散混合してもよい。添加物としては、例えば熱伝導性の高い物質や導電性の高い物質が考えられる。充填層14部分に熱伝導性の高い添加物を分散混合することにより、充填層14部分の熱伝導率を向上することができ、カーボンナノチューブシート10の全体としての熱伝導率を向上することができる。また、カーボンナノチューブシートを導電性シートとして用いる場合にあっては、充填層14部分に電導性の高い添加物を分散混合する。これにより、充填層14部分の導電率を向上することができ、カーボンナノチューブシート10の全体としての導電率を向上することができる。熱伝導性の高い材料としては、カーボンナノチューブ、金属材料、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、グラファイト、フラーレン等を適用することができる。電導性の高い材料としては、カーボンナノチューブ、金属材料等を適用することができる。
【0042】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図2乃至図10を用いて説明する。
【0043】
まず、カーボンナノチューブシート10を形成するための土台として用いる基板30を用意する。基板30としては、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、ガラス基板などの絶縁性基板、金属基板などを用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものでもよい。例えば、シリコン基板上に膜厚300nm程度のシリコン酸化膜が形成されたものを用いることができる。
【0044】
基板30は、カーボンナノチューブ12の成長後に剥離されるものである。この目的のもと、基板30としては、カーボンナノチューブ12の成長温度において変質しないことが望ましい。また、少なくともカーボンナノチューブ12に接する面がカーボンナノチューブ12から容易に剥離できる材料によって形成されていることが望ましい。また、カーボンナノチューブ12に対して選択的にエッチングできる材料によって形成されていることが望ましい。
【0045】
次いで、基板30上に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚2.5nmのFe(鉄)膜を形成し、Feの触媒金属膜32を形成する(図2(a))。なお、触媒金属膜32は、必ずしも基板30上の全面に形成する必要はなく、カーボンナノチューブ12の接触方向の用途によりその配置を決定するようにしてもよい。この場合、例えばリフトオフ法を用いることにより、基板30の所定の領域上に選択的に触媒金属膜32を形成することができる。
【0046】
触媒金属としては、Feのほか、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金を用いてもよい。また、触媒として、金属膜以外に、微分型静電分級器(DMA:differential mobility analyzer)等を用い、予めサイズを制御して作製した金属微粒子を用いてもよい。この場合も、金属種については薄膜の場合と同様でよい。
【0047】
また、これら触媒金属の下地膜として、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSix(チタンシリサイド)、Al(アルミニウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、TiN(窒化チタン)などの膜又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金からなる膜を形成してもよい。例えば、Fe(2.5nm)/Al(10nm)の積層構造、Co(2.6nm)/TiN(5nm)の積層構造等を適用することができる。金属微粒子を用いる場合は、例えば、Co(平均直径:3.8nm)/TiN(5nm)などの積層構造を適用することができる。
【0048】
次いで、基板30上に、例えばホットフィラメントCVD法により、触媒金属膜32を触媒として、カーボンナノチューブ12を成長する。カーボンナノチューブ12の成長条件は、例えば、原料ガスとしてアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を用い、成膜室内の総ガス圧を1kPa、ホットフィラメント温度を1000℃、成長時間を25分とする。これにより、層数が3層〜6層(平均4層程度)、直径が4nm〜8nm(平均6nm)、長さが100μm(成長レート:4μm/min)の多層カーボンナノチューブを成長することができる。なお、カーボンナノチューブは、熱CVD法やリモートプラズマCVD法などの他の成膜方法により形成してもよい。また、成長するカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでもよい。また、炭素原料としては、アセチレンのほか、メタン、エチレン等の炭化水素類や、エタノール、メタノール等のアルコール類などを用いてもよい。
【0049】
こうして、基板30上に、基板30の法線方向に配向(垂直配向)した複数のカーボンナノチューブ12を形成する(図2(b))。なお、上記の成長条件で形成したカーボンナノチューブ12では、カーボンナノチューブ12の面密度は、1×1011本/cm2程度であった。これは、基板30表面の面積のおよそ10%の領域上にカーボンナノチューブ12が形成されていることに相当する。
【0050】
なお、図1及び図2では、図面の簡略化のためにカーボンナノチューブ12を単純な円筒形状で描いたが、成長初期における成長ばらつき等により、必ずしも完全な円筒形状にはならない。カーボンナノチューブ12は、全体的に見ればシートの膜厚方向に配向するが、例えば、図5に示すようにカーボンナノチューブ12の上端部が基板30の法線方向に対して傾いて成長したり、カーボンナノチューブ12の長さにばらつきが生じたりすることがある。
【0051】
次いで、カーボンナノチューブ12上に、例えば蒸着法により、300nm程度の膜厚のAu(金)堆積し、Auの被膜16aを形成する(図2(c))。被膜16aは、カーボンナノチューブ12にダメージを与えない方法であれば、他の成膜方法(例えばスパッタ法等)を用いて形成してもよい。
【0052】
被膜16aは、成長初期段階では、例えば図6に示すように、各カーボンナノチューブ12の先端部分を覆うように形成される。成長膜厚が増加してくると、隣接する各カーボンナノチューブ12の先端部分に形成された被膜16aが互いに接続される。これにより、被膜16aは、例えば図7に示すように、複数本の各カーボンナノチューブ12の先端部分を束ねるように形成される。被膜16aの成長膜厚を更に増加すると、被膜16aがシートの面に平行な2次元方向に完全に接続され、隙間のない完全な膜となる。
【0053】
形成する被膜16aの膜厚は、充填層14を形成する際の材料の浸透性等を考慮して、カーボンナノチューブ12の直径や面密度に応じて適宜設定することが望ましい。
【0054】
例えば、カーボンナノチューブ12の直径が10nm、面密度が1×1011cm−2の場合、互いに隣接するカーボンナノチューブ12の間隙はおよそ50nmである。この場合、隣接するカーボンナノチューブ12間が被膜16aにより接続されるためには、少なくとも間隙の半分以上の膜厚、すなわち膜厚25nm程度以上の被膜16aを形成することが望ましい。また、被膜16aを厚くしすぎると被膜16aが隙間のない完全な膜となり、表面側からの充填層14の材料の浸透性が低下するため、被膜16aの上限膜厚は、充填層14の材料の浸透性の面から設定することが望ましい。これらの観点から、上記条件のカーボンナノチューブ12では、被膜16aの膜厚は、25nm〜1000nm程度が好適である。
【0055】
次いで、基板30とは別に用意した基板40上に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚6μmのフォトレジスト膜42を塗布する。基板40は、特に限定されるものではないが、例えばサファイア基板等を適用することができる。
【0056】
フォトレジスト膜42は、基板30上に形成したカーボンナノチューブ12を基板40上に転写するために用いるものであるとともに、支持層14aを形成する際にカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aで覆われるのを防止するためのレジスト膜である。フォトレジスト膜42の代わりに、カーボンナノチューブ12が転写可能な他の材料の膜を形成してもよい。この材料は、特に限定されるものではないが、後に形成する支持層14aの材料との間に相溶性がなく、支持層14aに対してエッチング選択性を有していることが望ましい。
【0057】
次いで、基板40のフォトレジスト膜42の塗布面上に、カーボンナノチューブ12の被膜16aの形成面が向き合うように基板30を載置し、例えば90℃の熱処理によりフォトレジスト膜42を硬化させる(図3(a))。これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16aにより覆われた端部は、フォトレジスト膜42によって覆われることになる。
【0058】
次いで、カーボンナノチューブ12から基板30を剥離する。こうして、被膜16aが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40上に転写する(図7(a))。
【0059】
なお、本実施形態の一部の図面では、カーボンナノチューブ12の下端に、成長の際に用いた触媒金属膜32が形成されている状態を示している。触媒金属膜32は、カーボンナノチューブ12の成長の際に凝集化してカーボンナノチューブ内に取り込まれるため、実際には図示するような状態で残存してはおらず、シートの下面にはカーボンナノチューブ12が露出する。また、触媒金属膜32は、基板30を剥離する際に同時に除去されることもある。
【0060】
次いで、基板30から剥離したカーボンナノチューブ12の端部上に、被膜16aの形成と同様にして、被膜16bを形成する(図3(b)、図7(b))。
【0061】
なお、被膜16bは、必ずしも隣接するカーボンナノチューブ12が互いに接続されるに十分な膜厚を形成する必要はないが、これには被膜16bによって複数本のカーボンナノチューブ12を束ねる効果がある(図6参照)。また、横方向への熱の伝導が可能となる。これにより、後工程で支持層14aとなる充填材がカーボンナノチューブ12間に浸透する際に、カーボンナノチューブ12同士がばらばらになることを抑制することができる。
【0062】
次いで、例えばスピンコート法により、支持層14aとなる充填材を塗布する。この際、被膜16上の充填材の厚さが数十nm以下になるように、塗布溶液の粘度やスピンコータの回転数を適宜設定する。
【0063】
支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、シリコーン系樹脂を用いるものとする。
【0064】
次いで、充填材を硬化して、支持層14aを形成する(図4(a)、図8(a))。充填材の硬化方法は、特に限定されるものではなく、常温において長時間放置してもよいし、熱処理や紫外線照射等を用いてもよい。熱処理を行う場合、熱を加えすぎるとフォトレジスト膜42が過度に硬化してしまい、後に基板40からカーボンナノチューブ12を剥離しにくくなる。かかる観点から、支持層14aとなる充填材としては、フォトレジスト材料が硬化する温度(例えば90℃程度)よりも低い温度で硬化できる材料を適用することが好ましい。
【0065】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40から剥離する(図4(b)、図8(b))。この際、シリコーン系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42の除去の際にシリコーン系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0066】
フォトレジスト膜42を除去することにより、フォトレジスト膜42により覆われていたカーボンナノチューブ12の一端部は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。
【0067】
次いで、基板40から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0068】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0069】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図4(c)、図9)。
【0070】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の使用例について図10を用いて説明する。
【0071】
まず、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を、被着体50と被着体60との間に設置する(図10(a))。被着体50,60は、例えば、発熱体や放熱体である。発熱体は例えば半導体素子であり、放熱体は例えばヒートスプレッダである。
【0072】
次いで、低融点材料層14b,14cの材料が常温で固体の場合には熱圧着を、常温で液状又はゲル状の場合には圧着を行い、カーボンナノチューブシート10と被着体50及び被着体60とを密着させる(図10(b))。熱圧着を行う場合、加熱温度は、低融点材料層14b,14cの材料の融点よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い温度で行う。例えば、支持層14aの材料としてヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」を、低融点材料層14b,14cの材料として日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」を用いた場合、加熱温度を120℃とする。
【0073】
これにより、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上することができる。
【0074】
また、カーボンナノチューブ12は、低融点材料層14bが軟化することにより低融点材料層14bによる拘束から解かれる。カーボンナノチューブ12はしなやかで柔軟性に富んだ材料であるため、低融点材料層14bによる拘束から解かれることにより、被着体50の表面凹凸に追従して撓むことができるようになる。これにより、被着体50に直に接するカーボンナノチューブ12が増加し、熱圧着の際に印加する圧力と相俟って、被着体50,60との間の接触熱抵抗を大幅に低減することができる。
【0075】
更に、低融点材料層14b,14cの材料として常温で固体の熱可塑性樹脂を用いた場合にあっては、熱圧着後の冷却によって接着性を発現しつつ固体に戻るため、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性をより向上することができる。
【0076】
このように、本実施形態によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによるカーボンナノチューブの配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さいカーボンナノチューブシートを容易に形成することができる。また、カーボンナノチューブの端部を支持層の表面よりも突出させることにより、カーボンナノチューブのバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を低減することができる。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法について図11乃至図14を用いて説明する。図1乃至図10に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0078】
図11は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。図12及び図13は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。図14は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用例を示す概略断面図である。
【0079】
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造について図11を用いて説明する。
【0080】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図11(a)に示すように、カーボンナノチューブ12と、被膜16a,16bと、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを含む充填層14を有している。この点で、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図1(a)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10と同様である。
【0081】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10が第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10と異なる点は、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aから突出している点にある。すなわち、図1(a)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、支持層14aが被膜16bの表面近傍まで形成されており、低融点材料層14cはその上に形成されている。これに対し、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aから突出しており、低融点材料層14cはその上に形成されている。
【0082】
カーボンナノチューブシート10は、例えば図11(b)に示すように、被着体50と被着体60との間に設けられる。被着体50と被着体60との間に設けられる際、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上する。
【0083】
実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aによる拘束を受けないため、被着体60に対する接触熱抵抗をより小さくすることができる。
【0084】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図12及び図13を用いて説明する。
【0085】
まず、例えば図2(a)乃至図3(b)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法と同様にして、被膜16bまでを形成する(図12(a))。
【0086】
次いで、例えばスピンコート法により、支持層14aとなる充填材を塗布する。支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、環状ゴム系樹脂を用いるものとする。
【0087】
次いで、充填材を硬化して、支持層14aを形成する(図12(b))。
【0088】
次いで、例えばウェットエッチングやドライエッチングにより支持層14aの表面をエッチングし、支持層14a上に、被膜16bで覆われたカーボンナノチューブ12の端部を露出させる(図12(c))。支持層14aとなる充填材として環状ゴム系樹脂を用いた場合、例えばn−ヘプタンとキシレンとの混合液により、他の部分に対して選択的に支持層14aをウェットエッチングすることができる。
【0089】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40から剥離する。フォトレジスト膜42を除去することにより、フォトレジスト膜42で覆われていたカーボンナノチューブ12の一端部(被膜16a側)は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。なお、環状ゴム系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42の除去の際に環状ゴム系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0090】
これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16a,16bで覆われた両端部を、支持層14aから突出して露出させることができる(図13(a))。
【0091】
次いで、基板40から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0092】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0093】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図13(b))。
【0094】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の使用例について図14を用いて説明する。
【0095】
まず、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を、被着体50と被着体60との間に設置する(図14(a))。
【0096】
次いで、低融点材料層14b,14cの材料が常温で固体の場合には熱圧着を、常温で液状又はゲル状の場合には圧着を行い、カーボンナノチューブシート10と被着体50及び被着体60とを密着させる(図14(b))。熱圧着を行う場合、加熱温度は、低融点材料層14b,14cの材料の融点よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い温度で行う。
【0097】
これにより、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上することができる。
【0098】
また、カーボンナノチューブ12は、低融点材料層14b,14cが軟化することにより低融点材料層14b,14cによる拘束から解かれる。カーボンナノチューブ12はしなやかで柔軟性に富んだ材料であるため、低融点材料層14b,14cによる拘束から解かれることにより、被着体50,60の表面凹凸に追従して撓むことができるようになる。これにより、被着体50,60に直に接するカーボンナノチューブ12が増加し、熱圧着の際に印加する圧力と相俟って、被着体50,60との間の接触熱抵抗を大幅に低減することができる。
【0099】
更に、低融点材料層14b,14cの材料として常温で固体の熱可塑性樹脂を用いた場合にあっては、熱圧着後の冷却によって接着性を発現しつつ固体に戻るため、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性をより向上することができる。
【0100】
このように、本実施形態によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによるカーボンナノチューブの配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さいカーボンナノチューブシートを容易に形成することができる。また、カーボンナノチューブの両端部を支持層の表面よりも突出させることにより、シートの両面でカーボンナノチューブのバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を更に低減することができる。
【0101】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図15及び図16を用いて説明する。図1乃至図14に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0102】
図15及び図16は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。
【0103】
本実施形態では、図11(a)に示す第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの他の製造方法を説明する。
【0104】
まず、例えば図2(a)乃至図3(b)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法と同様にして、被膜16bまでを形成する(図15(a))。
【0105】
次いで、基板40とは別に用意した基板44上に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚6μmのフォトレジスト膜46を塗布する。基板44は、特に限定されるものではないが、例えばサファイア基板等を適用することができる。
【0106】
フォトレジスト膜46は、支持層14aを形成する際にカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aで覆われるのを防止するためのレジスト膜である。フォトレジスト膜46の代わりに、他の材料の膜を形成してもよい。この材料は、特に限定されるものではないが、後に形成する支持層14aの材料との間に相溶性がなく、支持層14aに対してエッチング選択性を有していることが望ましい。また、フォトレジスト膜42又はその代替材料とエッチング特性が同じ或いは近似していることが望ましい。
【0107】
次いで、カーボンナノチューブ12を転写した基板40上に、フォトレジスト膜46の形成面が向き合うように基板44を載置し、例えば90℃の熱処理によりフォトレジスト膜46を硬化させる(図15(b))。これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16bにより覆われた端部は、フォトレジスト膜46によって覆われることになる。
【0108】
次いで、基板40と基板44との間に、毛細管現象を利用して、充填層14aとなる充填材14a′を流し込む(図15(c))。支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、低粘度シリコーン系樹脂を用いるものとする。
【0109】
次いで、充填材14a′を硬化して、支持層14aを形成する(図16(a))。
【0110】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42,46を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40,44から剥離する(図16(b))。フォトレジスト膜42,46を除去することにより、フォトレジスト膜42で覆われていたカーボンナノチューブ12の両端部は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。なお、環状ゴム系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42,46の除去の際に環状ゴム系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0111】
これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16a,16bで覆われた両端部を、支持層14aから突出して露出させることができる。
【0112】
次いで、基板40,44から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0113】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0114】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図16(c))。
【0115】
[第4実施形態]
第4実施形態による電子機器について図17を用いて説明する。なお、図1乃至図16に示す第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0116】
図17は本実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【0117】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシートを熱伝導シートとして適用した電子機器及びその製造方法について説明する。
【0118】
多層配線基板などの回路基板70上には、例えばCPUなどの半導体素子74が実装されている。半導体素子74は、はんだバンプなどの突起状電極72を介して回路基板70に電気的に接続されている。回路基板70と半導体素子76との間には、アンダーフィル74が充填されている。
【0119】
半導体素子76上には、半導体素子76を覆うように、半導体素子76からの熱を拡散するためのヒートスプレッダ80が形成されている。半導体素子76とヒートスプレッダ80との間には、カーボンナノチューブシート78が形成されている。
【0120】
ヒートスプレッダ80上には、ヒートスプレッダ80に伝わった熱を放熱するためのヒートシンク84が形成されている。ヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間には、カーボンナノチューブシート82が形成されている。
【0121】
このように、本実施形態による電子機器では、半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間に、カーボンナノチューブシート78,82がそれぞれ設けられている。カーボンナノチューブシート78,82は、第1乃至第3実施形態のいずれかに記載のカーボンナノチューブ10である。
【0122】
第1乃至第3実施形態に示したように、開示のカーボンナノチューブシート10は、カーボンナノチューブ12がシートの膜面に対して垂直方向に配向しており、面直方向の熱伝導度が極めて高いものである。
【0123】
したがって、開示のカーボンナノチューブシートを、半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間に形成する熱伝導シートとして用いることにより、半導体素子46から発せられた熱を効率よくヒートスプレッダ80及びヒートシンク84に伝えることができ、放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0124】
半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間にカーボンナノチューブシート78,82を設ける際には、例えば図10,14及びその説明箇所に記載の方法を用いることができる。
【0125】
このように、本実施形態によれば、半導体素子とヒートスプレッダとの間及びヒートスプレッダとヒートシンクとの間に、カーボンナノチューブ束がシートの膜厚方向に配向したカーボンナノチューブシートを配置するので、これらの間の熱伝導度を大幅に向上することができる。これにより、半導体素子から発せられる熱の放熱効率を高めることができ、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0126】
[第5実施形態]
第5実施形態による電子機器について図18を用いて説明する。なお、図1乃至図16に示す第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0127】
図18は本実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【0128】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシートを、導電性シートを兼ねる熱伝導性シートとして適用した電子機器について説明する。
【0129】
図18に示すように、無線通信基地局などに用いられる高出力増幅器(HPA:High Power Amplifier)90は、パッケージ92に組み込まれ、パッケージ92の裏面においてヒートシンク94に接合される。高出力増幅器90から発せられた熱は、パッケージ92の裏面を通してヒートシンク94に放熱される。同時に、パッケージ92は、電気的なグラウンド(接地面)としても用いられるものであり、ヒートシンク94に対しても電気的に接続される。このため、パッケージ92とヒートシンク94との接合には、電気及び熱に対する良導体を用いることが望ましい。
【0130】
したがって、パッケージ92とヒートシンク94との接合部に、図18に示すように、カーボンナノチューブシート96を用いることにより、パッケージ92とヒートシンク94とを電気的に接続することができる。また、高出力増幅器90から発せられた熱を効率よくヒートシンク94に伝えることができ、放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0131】
パッケージ92とヒートシンク94との間にカーボンナノチューブシート96を設ける際には、例えば図10,14及びその説明箇所に記載の方法を用いることができる。
【0132】
このように、本実施形態によれば、高出力増幅器のパッケージとヒートシンクとの間に、カーボンナノチューブ束がシートの膜厚方向に配向したカーボンナノチューブシートを配置するので、これらの間の熱伝導度を大幅に向上することができる。これにより、高出力増幅器から発せられる熱の放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。また、高出力増幅器とグラウンドとしてのヒートシンクとを電気的に接続することもできる。
【0133】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0134】
例えば、上記第1乃至第3実施形態では、放熱材料としてカーボンナノチューブを用いたシート状構造体(カーボンナノチューブシート)を示したが、放熱材料は、カーボンナノチューブに限定されるものではない。他の放熱材料としては、例えば、炭素元素の線状構造体を適用することができる。炭素元素の線状構造体としては、カーボンナノチューブのほか、カーボンナノワイヤ、カーボンロッド、カーボンファイバが挙げられる。これら線状構造体は、サイズが異なるほかは、カーボンナノチューブと同様である。これら線状構造体を用いた放熱材料においても適用することができる。
【0135】
また、上記第1乃至第3実施形態では、カーボンナノチューブ12の両端部に被膜16a,16bを設けたが、被膜16a,16bは、必ずしも設ける必要はない。また、被膜16a,16bのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0136】
また、上記第1乃至第3実施形態では、シートの両面に低融点材料層14b,14cを設けたが、低融点材料層14b,14cは、必ずしも両面に設ける必要はない。低融点材料層14b,14cのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態に記載の構成材料や製造条件は、当該記載に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜変更が可能である。
【0138】
また、カーボンナノチューブシートの使用目的も、上記実施形態に記載のものに限定されるものではない。開示のカーボンナノチューブシートは、熱伝導シートとしては、例えば、CPUの放熱シート、無線通信基地局用高出力増幅器、無線通信端末用高出力増幅器、電気自動車用高出力スイッチ、サーバー、パーソナルコンピュータなどへの適用が考えられる。また、カーボンナノチューブの高い許容電流密度特性を利用して、縦型配線シートやこれを用いた種々のアプリケーションにも適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
10…カーボンナノチューブシート
12…カーボンナノチューブ
14…充填層
14a…支持層
14b,14c…低融点材料層
16a,16b…被膜
30,40,44…基板
32…触媒金属膜
42,46…フォトレジスト膜
50,60…被着体
70…回路基板
72…突起状電極
74…アンダーフィル
76…半導体素子
78,82…カーボンナノチューブシート
80…ヒートスプレッダ
84…ヒートシンク
90…高出力増幅器
92…パッケージ
94…ヒートシンク
96…カーボンナノチューブシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材料に係り、特に、炭素元素の線状構造体を有する放熱材料及びその製造方法、並びにこのような放熱材料を用いた電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバーやパーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)などに用いられる電子部品には、半導体素子から発する熱を効率よく放熱することが求められる。このため、半導体素子の直上に設けられたサーマルインターフェイスマテリアルを介して、銅などの高い熱伝導度を有する材料のヒートスプレッダが配置された構造を有している。
【0003】
サーマルインターフェイスマテリアルには、それ自身が高い熱伝導率を有する材料であることに加え、発熱源及びヒートスプレッダ表面の微細な凹凸に対して広面積に接触する特性が求められる。現状では、サーマルインターフェイスマテリアとして、PCM(フェイズチェンジマテリアル)やインジウムなどが一般に用いられている。
【0004】
しかしながら、PCMは、微細な凹凸に対する接触性はよいものの、熱伝導度(1W/m・K〜5W/m・K程度)は低く、効果的な放熱特性を得るためにはその膜厚を薄くする必要がある。発熱源とヒートスプレッダとの間には熱膨張係数の違いに起因してギャップが生じるが、このギャップに追従して凹凸を吸収するためには、薄膜化には限界がある。
【0005】
また、近年におけるレアメタルの大幅な需要増加によりインジウム価格は高騰しており、インジウムよりも安価な代替材料が待望されている。また、物性的に見てもインジウムの熱伝導度(50W/m・K)は高いとはいえず、半導体素子から生じた熱をより効率的に放熱させるために更に高い熱伝導度を有する材料が望まれている。
【0006】
このような背景から、PCMやインジウムよりも高い熱伝導度を有する材料として、カーボンナノチューブに代表される炭素元素の線状構造体が注目されている。カーボンナノチューブは、非常に高い熱伝導度(1500W/m・K)を有するだけでなく、柔軟性や耐熱性に優れた材料であり、放熱材料として高いポテンシャルを有している。
【0007】
カーボンナノチューブを用いた熱伝導シートとしては、樹脂中にカーボンナノチューブを分散した熱伝導シートや、基板上に配向成長したカーボンナノチューブ束を樹脂等によって埋め込んだ熱伝導シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−150362号公報
【特許文献2】特開2006−147801号公報
【特許文献3】特開2006−290736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、カーボンナノチューブを用いた従来の放熱材料では、カーボンナノチューブの有する高い熱伝導度を充分に生かすことができなかった。
【0010】
本発明の目的は、炭素元素の線状構造体を用いた熱伝導度及び電気伝導度が極めて高い放熱材料及びその製造方法、並びにこのような放熱材料を用いた高性能の電子機器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の一観点によれば、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを有する放熱材料が提供される。
【0012】
また、実施形態の他の観点によれば、発熱体と、放熱体と、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料とを有する電子機器が提供される。
【0013】
また、実施形態の更に他の観点によれば、発熱体と放熱体との間に、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料を配置する工程と、前記発熱体と前記放熱体とを、前記放熱材料により、前記低融点材料層の融点よりも高く前記支持層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程とを有する電子機器の製造方法が提供される。
【0014】
また、実施形態の更に他の観点によれば、第1の基板上に、複数の炭素元素の線状構造体を成長する工程と、複数の前記線状構造体上に、第1のレジスト膜を形成した第2の基板を、複数の前記線状構造体の一端が前記第1のレジスト膜によって覆われるように、貼り合わせる工程と、複数の前記線状構造体の他端と前記第1の基板との界面から前記第1の基板を剥離する工程と、複数の前記線状構造体の間隙に、複数の前記線状構造体を支持する支持層を形成する工程と、前記第1のレジスト膜を選択的に除去し、前記第2の基板を除去するとともに、複数の前記線状構造体の前記一端を露出する工程と、前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層を形成する工程とを有する放熱材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
開示の放熱材料及びその製造方法によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによる線状構造体の配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さい放熱材料を容易に実現することができる。また、線状構造体の少なくとも一端を支持層の表面よりも突出させることにより、線状構造体のバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を低減することができる。
【0016】
また、開示の電子機器及びその製造方法によれば、発熱体から発せられる熱の放熱効率を高めることができ、電子機器の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図3】図3は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図4】図4は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図5】図5は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その1)である。
【図6】図6は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その2)である。
【図7】図7は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その3)である。
【図8】図8は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その4)である。
【図9】図9は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図(その5)である。
【図10】図10は、第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用方法を示す工程断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。
【図12】図12は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】図13は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図14】図14は、第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用方法を示す工程断面図である。
【図15】図15は、第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図16】図16は、第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図17】図17は、第4実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【図18】図18は、第5実施形態による電子機器の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法について図1乃至図10を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。図2乃至図4は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。図5乃至図9は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す斜視図である。図10は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用例を示す概略断面図である。
【0020】
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造について図1を用いて説明する。
【0021】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図1(a)に示すように、シートの膜厚方向、すなわちシートの表面と交差する方向に配向した複数のカーボンナノチューブ12を有している。カーボンナノチューブ12の両端には、被膜16a,16bが、それぞれ形成されている。カーボンナノチューブ12の間隙には、充填層14が形成されている。充填層14は、シートの内部に設けられた支持層14aと、支持層14aを挟むようにシートの両表面側に形成された低融点材料層14b,14cとを有している。
【0022】
カーボンナノチューブシート10は、例えば図1(b)に示すように、被着体50と被着体60との間に設けられ、被着体50と被着体60との間の熱伝導性や電気伝導性を向上するためのものである。被着体50,60は、例えば、発熱体や放熱体である。発熱体は例えば半導体素子であり、放熱体は例えばヒートスプレッダである。被着体50と被着体60との間に設けられる際、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上する。
【0023】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の各部について詳細に説明する。
【0024】
カーボンナノチューブ12は、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。カーボンナノチューブ12の面密度は、特に限定されるものではないが、放熱性及び電気伝導性の観点からは、1×1010本/cm2以上の平面密度であることが望ましい。
【0025】
カーボンナノチューブ12の長さは、カーボンナノチューブシート10の用途によって決まり、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm〜500μm程度の値に設定することができる。
【0026】
被膜16a,16bは、カーボンナノチューブシート10の被着体50,60に対する接触面積を増加するためのものである。カーボンナノチューブ12の高さにばらつきがある場合には、高さばらつきを緩和して接触面積を増加する効果もある。熱伝導性の高い被膜16a,16bを設けることにより、カーボンナノチューブ12と被着体50,60との間の接触熱抵抗が低減され、カーボンナノチューブシート10の熱伝導性を高めることができる。カーボンナノチューブシート10を導電性シートとして用いる場合には、導電性を高めることができる。
【0027】
被膜16a,16bを形成する材料は、充填層14の構成材料よりも熱伝導率の高い材料であれば特に限定されるものではない。カーボンナノチューブシート10を電気伝導用途にも用いる場合には、導電性を有する材料、例えば、金属や合金等を適用することができる。被膜16a,16bの構成材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)等を用いることができる。また、被膜16a,16bは、単層構造である必要はなく、例えばチタン(Ti)と金(Au)との積層構造など、2層或いは3層以上の積層構造であってもよい。
【0028】
被膜16a,16bの膜厚は、製造過程において支持層14aの形成を阻害しない膜厚であれば、特に限定されるものではない。被膜16a,16bの膜厚は、支持層14aを形成する際の材料の浸透性、カーボンナノチューブシート10に要求される特性、被膜16a,16bの構成材料等に応じて適宜設定することが望ましい。
【0029】
なお、被膜16a,16bは、必ずしも設ける必要はない。被膜16a,16bのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0030】
支持層14aは、カーボンナノチューブシート10を使用する際にカーボンナノチューブ12が移動(例えば、傾斜したり凝集したりするなど)して配向性を失わないように支持するためのものである。この目的のもと、支持層14aは、少なくともカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体である材料により形成する。カーボンナノチューブシート10が曝される熱としては、カーボンナノチューブシート10を被着体50,60に熱圧着(リフロー)する際の加熱、半導体素子の駆動時の発熱、等が挙げられる。
【0031】
支持層14aの材料は、形成する際に液状であり硬化することができ、少なくともカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。支持層14aの材料としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を適用することができる。
【0032】
支持層14aの材料は、例えば、有機系充填材としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを適用することができる。また、無機系充填材としては、SOG(Spin On Glass)などの塗布型絶縁膜形成用組成物などを適用することができる。また、インジウム、はんだ、金属ペースト(例えば、銀ペースト)などの金属材料を適用することもできる。また、例えばポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性ポリマを適用することもできる。
【0033】
低融点材料層14b,14cは、カーボンナノチューブシート10を被着体に接したときに、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の隙間を充填するためのものである。この目的のもと、低融点材料層14b,14cは、熱圧着或いは圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料により形成する。
【0034】
熱圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料としては、常温において固体であり、加熱により軟化して液状或いはゲル状となる物質を適用することができる。ただし、低融点材料層14b,14cの材料の融点が支持層14aの材料の融点以上では、低融点材料層14b,14cを熱圧着する際に支持層14aまでもが軟化してカーボンナノチューブ12を支持できなくなる。このため、低融点材料層14b,14cの材料の融点は、支持層14aの融点未満であることが望ましい。
【0035】
また、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性、すなわち接触熱抵抗をより低減する観点からは、カーボンナノチューブシート10が搭載される装置の駆動時の上限温度において固体の材料であることが望ましい。
【0036】
すなわち、低融点材料層14b,14cとしては、融点が、カーボンナノチューブシート10が搭載される装置の駆動時の上限温度(例えば、発熱体の発熱温度)よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い材料が望ましい。特に、温度に応じて液体と固体との間で可逆的に状態変化するものであり、常温では固体であり、加熱すると液状に変化し、冷却すると接着性を発現しつつ固体に戻る熱可塑性樹脂が好適である。
【0037】
低融点材料層14b,14cの融点の上限値は、支持層14aの融点未満であることに加え、被着体50,60の耐熱温度の下限値よりも低いことが望ましい。低融点材料層14b,14cの融点が被着体50,60の耐熱温度より高いと、被着体50,60にダメージを与えることなく熱圧着することが困難となるからである。
【0038】
低融点材料層14b,14cに好適な熱可塑性樹脂としては、例えば、以下に示すホットメルト樹脂が挙げられる。ポリアミド系ホットメルト樹脂としては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」(軟化点温度:140℃)、日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」(融点:120℃)が挙げられる。また、ポリエステル系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社の「DH598B」(軟化点温度:133℃)が挙げられる。また、ポリウレタン系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DH722B」が挙げられる。また、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、例えば、松村石油株式会社製の「EP−90」(軟化点温度:148℃)が挙げられる。また、エチレン共重合体ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DA574B」(軟化点温度:105℃)が挙げられる。また、SBR系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6250」(軟化点温度:125℃)が挙げられる。また、EVA系ホットメルト樹脂としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の「3747」(軟化点温度:104℃)が挙げられる。また、ブチルゴム系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6158」が挙げられる。なお、軟化点温度は柔軟性が出てくる温度であり、融点は溶け始める温度である。
【0039】
これらホットメルト樹脂の中から、融点が高いものを支持層14aの材料として、融点が低いものを低融点材料層14b,14cの材料として、選択してもよい。例えば、支持層14aの材料としてヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」を用い、低融点材料層14b,14cの材料として日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」を用いることができる。
【0040】
圧着によって被着体50,60の表面形状に応じて形状変化しうる材料としては、常温において液状或いはゲル状の物質を適用することができる。低融点材料層14b,14cに適用可能な液状体やゲル状体の材料としては、例えば、低粘度の放熱用グリース等が挙げられる。
【0041】
支持層14a、低融点材料層14b,14cには、必要に応じて、添加物を分散混合してもよい。添加物としては、例えば熱伝導性の高い物質や導電性の高い物質が考えられる。充填層14部分に熱伝導性の高い添加物を分散混合することにより、充填層14部分の熱伝導率を向上することができ、カーボンナノチューブシート10の全体としての熱伝導率を向上することができる。また、カーボンナノチューブシートを導電性シートとして用いる場合にあっては、充填層14部分に電導性の高い添加物を分散混合する。これにより、充填層14部分の導電率を向上することができ、カーボンナノチューブシート10の全体としての導電率を向上することができる。熱伝導性の高い材料としては、カーボンナノチューブ、金属材料、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、グラファイト、フラーレン等を適用することができる。電導性の高い材料としては、カーボンナノチューブ、金属材料等を適用することができる。
【0042】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図2乃至図10を用いて説明する。
【0043】
まず、カーボンナノチューブシート10を形成するための土台として用いる基板30を用意する。基板30としては、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、ガラス基板などの絶縁性基板、金属基板などを用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものでもよい。例えば、シリコン基板上に膜厚300nm程度のシリコン酸化膜が形成されたものを用いることができる。
【0044】
基板30は、カーボンナノチューブ12の成長後に剥離されるものである。この目的のもと、基板30としては、カーボンナノチューブ12の成長温度において変質しないことが望ましい。また、少なくともカーボンナノチューブ12に接する面がカーボンナノチューブ12から容易に剥離できる材料によって形成されていることが望ましい。また、カーボンナノチューブ12に対して選択的にエッチングできる材料によって形成されていることが望ましい。
【0045】
次いで、基板30上に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚2.5nmのFe(鉄)膜を形成し、Feの触媒金属膜32を形成する(図2(a))。なお、触媒金属膜32は、必ずしも基板30上の全面に形成する必要はなく、カーボンナノチューブ12の接触方向の用途によりその配置を決定するようにしてもよい。この場合、例えばリフトオフ法を用いることにより、基板30の所定の領域上に選択的に触媒金属膜32を形成することができる。
【0046】
触媒金属としては、Feのほか、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金を用いてもよい。また、触媒として、金属膜以外に、微分型静電分級器(DMA:differential mobility analyzer)等を用い、予めサイズを制御して作製した金属微粒子を用いてもよい。この場合も、金属種については薄膜の場合と同様でよい。
【0047】
また、これら触媒金属の下地膜として、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSix(チタンシリサイド)、Al(アルミニウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、TiN(窒化チタン)などの膜又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金からなる膜を形成してもよい。例えば、Fe(2.5nm)/Al(10nm)の積層構造、Co(2.6nm)/TiN(5nm)の積層構造等を適用することができる。金属微粒子を用いる場合は、例えば、Co(平均直径:3.8nm)/TiN(5nm)などの積層構造を適用することができる。
【0048】
次いで、基板30上に、例えばホットフィラメントCVD法により、触媒金属膜32を触媒として、カーボンナノチューブ12を成長する。カーボンナノチューブ12の成長条件は、例えば、原料ガスとしてアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を用い、成膜室内の総ガス圧を1kPa、ホットフィラメント温度を1000℃、成長時間を25分とする。これにより、層数が3層〜6層(平均4層程度)、直径が4nm〜8nm(平均6nm)、長さが100μm(成長レート:4μm/min)の多層カーボンナノチューブを成長することができる。なお、カーボンナノチューブは、熱CVD法やリモートプラズマCVD法などの他の成膜方法により形成してもよい。また、成長するカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでもよい。また、炭素原料としては、アセチレンのほか、メタン、エチレン等の炭化水素類や、エタノール、メタノール等のアルコール類などを用いてもよい。
【0049】
こうして、基板30上に、基板30の法線方向に配向(垂直配向)した複数のカーボンナノチューブ12を形成する(図2(b))。なお、上記の成長条件で形成したカーボンナノチューブ12では、カーボンナノチューブ12の面密度は、1×1011本/cm2程度であった。これは、基板30表面の面積のおよそ10%の領域上にカーボンナノチューブ12が形成されていることに相当する。
【0050】
なお、図1及び図2では、図面の簡略化のためにカーボンナノチューブ12を単純な円筒形状で描いたが、成長初期における成長ばらつき等により、必ずしも完全な円筒形状にはならない。カーボンナノチューブ12は、全体的に見ればシートの膜厚方向に配向するが、例えば、図5に示すようにカーボンナノチューブ12の上端部が基板30の法線方向に対して傾いて成長したり、カーボンナノチューブ12の長さにばらつきが生じたりすることがある。
【0051】
次いで、カーボンナノチューブ12上に、例えば蒸着法により、300nm程度の膜厚のAu(金)堆積し、Auの被膜16aを形成する(図2(c))。被膜16aは、カーボンナノチューブ12にダメージを与えない方法であれば、他の成膜方法(例えばスパッタ法等)を用いて形成してもよい。
【0052】
被膜16aは、成長初期段階では、例えば図6に示すように、各カーボンナノチューブ12の先端部分を覆うように形成される。成長膜厚が増加してくると、隣接する各カーボンナノチューブ12の先端部分に形成された被膜16aが互いに接続される。これにより、被膜16aは、例えば図7に示すように、複数本の各カーボンナノチューブ12の先端部分を束ねるように形成される。被膜16aの成長膜厚を更に増加すると、被膜16aがシートの面に平行な2次元方向に完全に接続され、隙間のない完全な膜となる。
【0053】
形成する被膜16aの膜厚は、充填層14を形成する際の材料の浸透性等を考慮して、カーボンナノチューブ12の直径や面密度に応じて適宜設定することが望ましい。
【0054】
例えば、カーボンナノチューブ12の直径が10nm、面密度が1×1011cm−2の場合、互いに隣接するカーボンナノチューブ12の間隙はおよそ50nmである。この場合、隣接するカーボンナノチューブ12間が被膜16aにより接続されるためには、少なくとも間隙の半分以上の膜厚、すなわち膜厚25nm程度以上の被膜16aを形成することが望ましい。また、被膜16aを厚くしすぎると被膜16aが隙間のない完全な膜となり、表面側からの充填層14の材料の浸透性が低下するため、被膜16aの上限膜厚は、充填層14の材料の浸透性の面から設定することが望ましい。これらの観点から、上記条件のカーボンナノチューブ12では、被膜16aの膜厚は、25nm〜1000nm程度が好適である。
【0055】
次いで、基板30とは別に用意した基板40上に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚6μmのフォトレジスト膜42を塗布する。基板40は、特に限定されるものではないが、例えばサファイア基板等を適用することができる。
【0056】
フォトレジスト膜42は、基板30上に形成したカーボンナノチューブ12を基板40上に転写するために用いるものであるとともに、支持層14aを形成する際にカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aで覆われるのを防止するためのレジスト膜である。フォトレジスト膜42の代わりに、カーボンナノチューブ12が転写可能な他の材料の膜を形成してもよい。この材料は、特に限定されるものではないが、後に形成する支持層14aの材料との間に相溶性がなく、支持層14aに対してエッチング選択性を有していることが望ましい。
【0057】
次いで、基板40のフォトレジスト膜42の塗布面上に、カーボンナノチューブ12の被膜16aの形成面が向き合うように基板30を載置し、例えば90℃の熱処理によりフォトレジスト膜42を硬化させる(図3(a))。これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16aにより覆われた端部は、フォトレジスト膜42によって覆われることになる。
【0058】
次いで、カーボンナノチューブ12から基板30を剥離する。こうして、被膜16aが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40上に転写する(図7(a))。
【0059】
なお、本実施形態の一部の図面では、カーボンナノチューブ12の下端に、成長の際に用いた触媒金属膜32が形成されている状態を示している。触媒金属膜32は、カーボンナノチューブ12の成長の際に凝集化してカーボンナノチューブ内に取り込まれるため、実際には図示するような状態で残存してはおらず、シートの下面にはカーボンナノチューブ12が露出する。また、触媒金属膜32は、基板30を剥離する際に同時に除去されることもある。
【0060】
次いで、基板30から剥離したカーボンナノチューブ12の端部上に、被膜16aの形成と同様にして、被膜16bを形成する(図3(b)、図7(b))。
【0061】
なお、被膜16bは、必ずしも隣接するカーボンナノチューブ12が互いに接続されるに十分な膜厚を形成する必要はないが、これには被膜16bによって複数本のカーボンナノチューブ12を束ねる効果がある(図6参照)。また、横方向への熱の伝導が可能となる。これにより、後工程で支持層14aとなる充填材がカーボンナノチューブ12間に浸透する際に、カーボンナノチューブ12同士がばらばらになることを抑制することができる。
【0062】
次いで、例えばスピンコート法により、支持層14aとなる充填材を塗布する。この際、被膜16上の充填材の厚さが数十nm以下になるように、塗布溶液の粘度やスピンコータの回転数を適宜設定する。
【0063】
支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、シリコーン系樹脂を用いるものとする。
【0064】
次いで、充填材を硬化して、支持層14aを形成する(図4(a)、図8(a))。充填材の硬化方法は、特に限定されるものではなく、常温において長時間放置してもよいし、熱処理や紫外線照射等を用いてもよい。熱処理を行う場合、熱を加えすぎるとフォトレジスト膜42が過度に硬化してしまい、後に基板40からカーボンナノチューブ12を剥離しにくくなる。かかる観点から、支持層14aとなる充填材としては、フォトレジスト材料が硬化する温度(例えば90℃程度)よりも低い温度で硬化できる材料を適用することが好ましい。
【0065】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40から剥離する(図4(b)、図8(b))。この際、シリコーン系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42の除去の際にシリコーン系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0066】
フォトレジスト膜42を除去することにより、フォトレジスト膜42により覆われていたカーボンナノチューブ12の一端部は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。
【0067】
次いで、基板40から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0068】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0069】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図4(c)、図9)。
【0070】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の使用例について図10を用いて説明する。
【0071】
まず、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を、被着体50と被着体60との間に設置する(図10(a))。被着体50,60は、例えば、発熱体や放熱体である。発熱体は例えば半導体素子であり、放熱体は例えばヒートスプレッダである。
【0072】
次いで、低融点材料層14b,14cの材料が常温で固体の場合には熱圧着を、常温で液状又はゲル状の場合には圧着を行い、カーボンナノチューブシート10と被着体50及び被着体60とを密着させる(図10(b))。熱圧着を行う場合、加熱温度は、低融点材料層14b,14cの材料の融点よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い温度で行う。例えば、支持層14aの材料としてヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」を、低融点材料層14b,14cの材料として日本マタイ株式会社製の「エルファンNT−120」を用いた場合、加熱温度を120℃とする。
【0073】
これにより、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上することができる。
【0074】
また、カーボンナノチューブ12は、低融点材料層14bが軟化することにより低融点材料層14bによる拘束から解かれる。カーボンナノチューブ12はしなやかで柔軟性に富んだ材料であるため、低融点材料層14bによる拘束から解かれることにより、被着体50の表面凹凸に追従して撓むことができるようになる。これにより、被着体50に直に接するカーボンナノチューブ12が増加し、熱圧着の際に印加する圧力と相俟って、被着体50,60との間の接触熱抵抗を大幅に低減することができる。
【0075】
更に、低融点材料層14b,14cの材料として常温で固体の熱可塑性樹脂を用いた場合にあっては、熱圧着後の冷却によって接着性を発現しつつ固体に戻るため、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性をより向上することができる。
【0076】
このように、本実施形態によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによるカーボンナノチューブの配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さいカーボンナノチューブシートを容易に形成することができる。また、カーボンナノチューブの端部を支持層の表面よりも突出させることにより、カーボンナノチューブのバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を低減することができる。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法について図11乃至図14を用いて説明する。図1乃至図10に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0078】
図11は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造を示す概略断面図である。図12及び図13は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。図14は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの使用例を示す概略断面図である。
【0079】
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの構造について図11を用いて説明する。
【0080】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図11(a)に示すように、カーボンナノチューブ12と、被膜16a,16bと、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを含む充填層14を有している。この点で、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図1(a)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10と同様である。
【0081】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10が第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10と異なる点は、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aから突出している点にある。すなわち、図1(a)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、支持層14aが被膜16bの表面近傍まで形成されており、低融点材料層14cはその上に形成されている。これに対し、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aから突出しており、低融点材料層14cはその上に形成されている。
【0082】
カーボンナノチューブシート10は、例えば図11(b)に示すように、被着体50と被着体60との間に設けられる。被着体50と被着体60との間に設けられる際、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上する。
【0083】
実施形態によるカーボンナノチューブシート10では、被膜16aで覆われたカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aによる拘束を受けないため、被着体60に対する接触熱抵抗をより小さくすることができる。
【0084】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図12及び図13を用いて説明する。
【0085】
まず、例えば図2(a)乃至図3(b)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法と同様にして、被膜16bまでを形成する(図12(a))。
【0086】
次いで、例えばスピンコート法により、支持層14aとなる充填材を塗布する。支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、環状ゴム系樹脂を用いるものとする。
【0087】
次いで、充填材を硬化して、支持層14aを形成する(図12(b))。
【0088】
次いで、例えばウェットエッチングやドライエッチングにより支持層14aの表面をエッチングし、支持層14a上に、被膜16bで覆われたカーボンナノチューブ12の端部を露出させる(図12(c))。支持層14aとなる充填材として環状ゴム系樹脂を用いた場合、例えばn−ヘプタンとキシレンとの混合液により、他の部分に対して選択的に支持層14aをウェットエッチングすることができる。
【0089】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40から剥離する。フォトレジスト膜42を除去することにより、フォトレジスト膜42で覆われていたカーボンナノチューブ12の一端部(被膜16a側)は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。なお、環状ゴム系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42の除去の際に環状ゴム系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0090】
これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16a,16bで覆われた両端部を、支持層14aから突出して露出させることができる(図13(a))。
【0091】
次いで、基板40から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0092】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0093】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図13(b))。
【0094】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10の使用例について図14を用いて説明する。
【0095】
まず、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を、被着体50と被着体60との間に設置する(図14(a))。
【0096】
次いで、低融点材料層14b,14cの材料が常温で固体の場合には熱圧着を、常温で液状又はゲル状の場合には圧着を行い、カーボンナノチューブシート10と被着体50及び被着体60とを密着させる(図14(b))。熱圧着を行う場合、加熱温度は、低融点材料層14b,14cの材料の融点よりも高く、支持層14aの材料の融点よりも低い温度で行う。
【0097】
これにより、カーボンナノチューブシート10の低融点材料層14b,14cは、被着体50,60の表面凹凸に応じて形状変化し、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性を向上することができる。
【0098】
また、カーボンナノチューブ12は、低融点材料層14b,14cが軟化することにより低融点材料層14b,14cによる拘束から解かれる。カーボンナノチューブ12はしなやかで柔軟性に富んだ材料であるため、低融点材料層14b,14cによる拘束から解かれることにより、被着体50,60の表面凹凸に追従して撓むことができるようになる。これにより、被着体50,60に直に接するカーボンナノチューブ12が増加し、熱圧着の際に印加する圧力と相俟って、被着体50,60との間の接触熱抵抗を大幅に低減することができる。
【0099】
更に、低融点材料層14b,14cの材料として常温で固体の熱可塑性樹脂を用いた場合にあっては、熱圧着後の冷却によって接着性を発現しつつ固体に戻るため、カーボンナノチューブシート10と被着体50,60との間の密着性をより向上することができる。
【0100】
このように、本実施形態によれば、低融点材料層によってシートのリフロー性を確保することができるとともに、リフローによるカーボンナノチューブの配向性のみだれを支持層によって防止することができる。これにより、被着体に対する接触熱抵抗の小さいカーボンナノチューブシートを容易に形成することができる。また、カーボンナノチューブの両端部を支持層の表面よりも突出させることにより、シートの両面でカーボンナノチューブのバネ性を発現することができ、被着体に対する接触熱抵抗を更に低減することができる。
【0101】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法について図15及び図16を用いて説明する。図1乃至図14に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0102】
図15及び図16は、本実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法を示す概略断面図である。
【0103】
本実施形態では、図11(a)に示す第2実施形態によるカーボンナノチューブシートの他の製造方法を説明する。
【0104】
まず、例えば図2(a)乃至図3(b)に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシートの製造方法と同様にして、被膜16bまでを形成する(図15(a))。
【0105】
次いで、基板40とは別に用意した基板44上に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚6μmのフォトレジスト膜46を塗布する。基板44は、特に限定されるものではないが、例えばサファイア基板等を適用することができる。
【0106】
フォトレジスト膜46は、支持層14aを形成する際にカーボンナノチューブ12の端部が支持層14aで覆われるのを防止するためのレジスト膜である。フォトレジスト膜46の代わりに、他の材料の膜を形成してもよい。この材料は、特に限定されるものではないが、後に形成する支持層14aの材料との間に相溶性がなく、支持層14aに対してエッチング選択性を有していることが望ましい。また、フォトレジスト膜42又はその代替材料とエッチング特性が同じ或いは近似していることが望ましい。
【0107】
次いで、カーボンナノチューブ12を転写した基板40上に、フォトレジスト膜46の形成面が向き合うように基板44を載置し、例えば90℃の熱処理によりフォトレジスト膜46を硬化させる(図15(b))。これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16bにより覆われた端部は、フォトレジスト膜46によって覆われることになる。
【0108】
次いで、基板40と基板44との間に、毛細管現象を利用して、充填層14aとなる充填材14a′を流し込む(図15(c))。支持層14aとなる充填材は、その後に硬化できるものであり、後にカーボンナノチューブシート10が曝される温度において固体であれば、特に限定されるものではない。ここでは、支持層14aとなる充填材として、低粘度シリコーン系樹脂を用いるものとする。
【0109】
次いで、充填材14a′を硬化して、支持層14aを形成する(図16(a))。
【0110】
次いで、例えば有機溶剤によりフォトレジスト膜42,46を選択的に除去し、支持層14aに埋め込まれ端部に被膜16a,16bが形成されたカーボンナノチューブ12を、基板40,44から剥離する(図16(b))。フォトレジスト膜42,46を除去することにより、フォトレジスト膜42で覆われていたカーボンナノチューブ12の両端部は、支持層14aによって覆われずに露出することになる。なお、環状ゴム系樹脂は有機溶剤に対して耐エッチング性を有しているため、フォトレジスト膜42,46の除去の際に環状ゴム系樹脂の支持層14aがダメージを受けることはない。
【0111】
これにより、カーボンナノチューブ12の被膜16a,16bで覆われた両端部を、支持層14aから突出して露出させることができる。
【0112】
次いで、基板40,44から剥離したシートの両面に、フィルム状に加工した低融点材料層14b,14c形成用の熱可塑性樹脂を、支持層14aの形成材料の融点未満の温度で熱圧着し、熱可塑性樹脂の低融点材料層14b,14cを形成する。これにより、カーボンナノチューブ12の両端が低融点材料層14b,14cによって埋め込まれ、支持層14a及び低融点材料層14b,14cを有する充填層14が形成される。
【0113】
低融点材料層14b,14cとして常温でも液状体やゲル状体の材料、例えば低粘度の放熱用グリース等を用いる場合、例えばスピンコート法により、低融点材料層14b,14cを形成することができる。
【0114】
こうして、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を得る(図16(c))。
【0115】
[第4実施形態]
第4実施形態による電子機器について図17を用いて説明する。なお、図1乃至図16に示す第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0116】
図17は本実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【0117】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシートを熱伝導シートとして適用した電子機器及びその製造方法について説明する。
【0118】
多層配線基板などの回路基板70上には、例えばCPUなどの半導体素子74が実装されている。半導体素子74は、はんだバンプなどの突起状電極72を介して回路基板70に電気的に接続されている。回路基板70と半導体素子76との間には、アンダーフィル74が充填されている。
【0119】
半導体素子76上には、半導体素子76を覆うように、半導体素子76からの熱を拡散するためのヒートスプレッダ80が形成されている。半導体素子76とヒートスプレッダ80との間には、カーボンナノチューブシート78が形成されている。
【0120】
ヒートスプレッダ80上には、ヒートスプレッダ80に伝わった熱を放熱するためのヒートシンク84が形成されている。ヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間には、カーボンナノチューブシート82が形成されている。
【0121】
このように、本実施形態による電子機器では、半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間に、カーボンナノチューブシート78,82がそれぞれ設けられている。カーボンナノチューブシート78,82は、第1乃至第3実施形態のいずれかに記載のカーボンナノチューブ10である。
【0122】
第1乃至第3実施形態に示したように、開示のカーボンナノチューブシート10は、カーボンナノチューブ12がシートの膜面に対して垂直方向に配向しており、面直方向の熱伝導度が極めて高いものである。
【0123】
したがって、開示のカーボンナノチューブシートを、半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間に形成する熱伝導シートとして用いることにより、半導体素子46から発せられた熱を効率よくヒートスプレッダ80及びヒートシンク84に伝えることができ、放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0124】
半導体素子76とヒートスプレッダ80との間及びヒートスプレッダ80とヒートシンク84との間にカーボンナノチューブシート78,82を設ける際には、例えば図10,14及びその説明箇所に記載の方法を用いることができる。
【0125】
このように、本実施形態によれば、半導体素子とヒートスプレッダとの間及びヒートスプレッダとヒートシンクとの間に、カーボンナノチューブ束がシートの膜厚方向に配向したカーボンナノチューブシートを配置するので、これらの間の熱伝導度を大幅に向上することができる。これにより、半導体素子から発せられる熱の放熱効率を高めることができ、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0126】
[第5実施形態]
第5実施形態による電子機器について図18を用いて説明する。なお、図1乃至図16に示す第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0127】
図18は本実施形態による電子機器の構造を示す概略断面図である。
【0128】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブシートを、導電性シートを兼ねる熱伝導性シートとして適用した電子機器について説明する。
【0129】
図18に示すように、無線通信基地局などに用いられる高出力増幅器(HPA:High Power Amplifier)90は、パッケージ92に組み込まれ、パッケージ92の裏面においてヒートシンク94に接合される。高出力増幅器90から発せられた熱は、パッケージ92の裏面を通してヒートシンク94に放熱される。同時に、パッケージ92は、電気的なグラウンド(接地面)としても用いられるものであり、ヒートシンク94に対しても電気的に接続される。このため、パッケージ92とヒートシンク94との接合には、電気及び熱に対する良導体を用いることが望ましい。
【0130】
したがって、パッケージ92とヒートシンク94との接合部に、図18に示すように、カーボンナノチューブシート96を用いることにより、パッケージ92とヒートシンク94とを電気的に接続することができる。また、高出力増幅器90から発せられた熱を効率よくヒートシンク94に伝えることができ、放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。
【0131】
パッケージ92とヒートシンク94との間にカーボンナノチューブシート96を設ける際には、例えば図10,14及びその説明箇所に記載の方法を用いることができる。
【0132】
このように、本実施形態によれば、高出力増幅器のパッケージとヒートシンクとの間に、カーボンナノチューブ束がシートの膜厚方向に配向したカーボンナノチューブシートを配置するので、これらの間の熱伝導度を大幅に向上することができる。これにより、高出力増幅器から発せられる熱の放熱効率を高めることができる。これにより、電子機器の信頼性を向上することができる。また、高出力増幅器とグラウンドとしてのヒートシンクとを電気的に接続することもできる。
【0133】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0134】
例えば、上記第1乃至第3実施形態では、放熱材料としてカーボンナノチューブを用いたシート状構造体(カーボンナノチューブシート)を示したが、放熱材料は、カーボンナノチューブに限定されるものではない。他の放熱材料としては、例えば、炭素元素の線状構造体を適用することができる。炭素元素の線状構造体としては、カーボンナノチューブのほか、カーボンナノワイヤ、カーボンロッド、カーボンファイバが挙げられる。これら線状構造体は、サイズが異なるほかは、カーボンナノチューブと同様である。これら線状構造体を用いた放熱材料においても適用することができる。
【0135】
また、上記第1乃至第3実施形態では、カーボンナノチューブ12の両端部に被膜16a,16bを設けたが、被膜16a,16bは、必ずしも設ける必要はない。また、被膜16a,16bのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0136】
また、上記第1乃至第3実施形態では、シートの両面に低融点材料層14b,14cを設けたが、低融点材料層14b,14cは、必ずしも両面に設ける必要はない。低融点材料層14b,14cのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態に記載の構成材料や製造条件は、当該記載に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜変更が可能である。
【0138】
また、カーボンナノチューブシートの使用目的も、上記実施形態に記載のものに限定されるものではない。開示のカーボンナノチューブシートは、熱伝導シートとしては、例えば、CPUの放熱シート、無線通信基地局用高出力増幅器、無線通信端末用高出力増幅器、電気自動車用高出力スイッチ、サーバー、パーソナルコンピュータなどへの適用が考えられる。また、カーボンナノチューブの高い許容電流密度特性を利用して、縦型配線シートやこれを用いた種々のアプリケーションにも適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
10…カーボンナノチューブシート
12…カーボンナノチューブ
14…充填層
14a…支持層
14b,14c…低融点材料層
16a,16b…被膜
30,40,44…基板
32…触媒金属膜
42,46…フォトレジスト膜
50,60…被着体
70…回路基板
72…突起状電極
74…アンダーフィル
76…半導体素子
78,82…カーボンナノチューブシート
80…ヒートスプレッダ
84…ヒートシンク
90…高出力増幅器
92…パッケージ
94…ヒートシンク
96…カーボンナノチューブシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭素元素の線状構造体と、
複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、
前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層と
を有することを特徴とする放熱材料。
【請求項2】
請求項1記載の放熱材料において、
複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部に形成され、前記支持層及び前記低融点材料層の材料よりも熱伝導率の高い材料の被膜を更に有する
ことを特徴とする放熱材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放熱材料において、
複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部は、前記支持層の前記表面から突出している
ことを特徴とする放熱材料。
【請求項4】
発熱体と、
放熱体と、
前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4記載の電子機器において、
前記放熱材料は、複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部に形成され、前記支持層及び前記低融点材料層の材料よりも熱伝導率の高い材料の被膜を更に有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項4又は5記載の電子機器において、
前記低融点材料層の材料の融点は、前記発熱体の発熱温度よりも高く、前記発熱体及び放熱体の耐熱温度よりも低い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
発熱体と放熱体との間に、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料を配置する工程と、
前記発熱体と前記放熱体とを、前記放熱材料により、前記低融点材料層の融点よりも高く前記支持層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程と
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項8】
第1の基板上に、複数の炭素元素の線状構造体を成長する工程と、
複数の前記線状構造体上に、第1のレジスト膜を形成した第2の基板を、複数の前記線状構造体の一端が前記第1のレジスト膜によって覆われるように、貼り合わせる工程と、
複数の前記線状構造体の他端と前記第1の基板との界面から前記第1の基板を剥離する工程と、
複数の前記線状構造体の間隙に、複数の前記線状構造体を支持する支持層を形成する工程と、
前記第1のレジスト膜を選択的に除去し、前記第2の基板を除去するとともに、複数の前記線状構造体の前記一端を露出する工程と、
前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層を形成する工程と、
を有することを特徴とする放熱材料の製造方法。
【請求項1】
複数の炭素元素の線状構造体と、
複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、
前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層と
を有することを特徴とする放熱材料。
【請求項2】
請求項1記載の放熱材料において、
複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部に形成され、前記支持層及び前記低融点材料層の材料よりも熱伝導率の高い材料の被膜を更に有する
ことを特徴とする放熱材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放熱材料において、
複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部は、前記支持層の前記表面から突出している
ことを特徴とする放熱材料。
【請求項4】
発熱体と、
放熱体と、
前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4記載の電子機器において、
前記放熱材料は、複数の前記線状構造体の少なくとも一方の端部に形成され、前記支持層及び前記低融点材料層の材料よりも熱伝導率の高い材料の被膜を更に有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項4又は5記載の電子機器において、
前記低融点材料層の材料の融点は、前記発熱体の発熱温度よりも高く、前記発熱体及び放熱体の耐熱温度よりも低い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
発熱体と放熱体との間に、前記発熱体と放熱体との間に配置され、複数の炭素元素の線状構造体と、複数の前記線状構造体間に形成され、複数の前記線状構造体を支持する支持層と、前記支持層の少なくとも一方の表面上に形成され、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層とを含む放熱材料を配置する工程と、
前記発熱体と前記放熱体とを、前記放熱材料により、前記低融点材料層の融点よりも高く前記支持層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程と
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項8】
第1の基板上に、複数の炭素元素の線状構造体を成長する工程と、
複数の前記線状構造体上に、第1のレジスト膜を形成した第2の基板を、複数の前記線状構造体の一端が前記第1のレジスト膜によって覆われるように、貼り合わせる工程と、
複数の前記線状構造体の他端と前記第1の基板との界面から前記第1の基板を剥離する工程と、
複数の前記線状構造体の間隙に、複数の前記線状構造体を支持する支持層を形成する工程と、
前記第1のレジスト膜を選択的に除去し、前記第2の基板を除去するとともに、複数の前記線状構造体の前記一端を露出する工程と、
前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記支持層の材料よりも融点の低い材料の低融点材料層を形成する工程と、
を有することを特徴とする放熱材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−199367(P2010−199367A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43622(P2009−43622)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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