説明

放熱部材、電子部品及び実装基板

【課題】半導体素子等の発熱部品から熱を奪って発熱部品を速やかに冷却できる、小型で軽量な放熱部材等を提供する。
【解決手段】発熱部品を接続するための頂部11と、基板に接続するための底部12と、頂部11と底部12との接続配線13が設けられた中空胴部10とを有し、冷却媒体14と、冷却媒体14を底部12及び頂部11の間で毛細管移動させる毛細管構造体15とを内部に有する放熱部材1により、上記課題を解決した。毛細管構造体15としては多孔質体又は繊維構造体であることが好ましい。こうした放熱部材1の頂部11に発熱部品を接続し、一体化した電子部品とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体の還流循環により発熱部品を冷却することができる放熱部材、その放熱部材に発熱部品を接続した電子部品、及びその電子部品を実装した実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子、パワー半導体素子等の半導体素子は、パーソナルコンピュータやモバイル電子機器の高機能化と高密度実装化に伴い、薄型化及び高機能化している。そのため、半導体素子の単位面積当たりの発熱量は飛躍的に増大しており、半導体素子の機能を低下させることなく動作させるために、その放熱性を高めることが要求されている。発光素子の1つである発光ダイオード(LED)は、寿命が長く、且つ消費電力も少ないことから、冷却陰管(CCFL)に代わるテレビのバックライトとして、蛍光灯に代わる照明として、自動車のバックライトとして、又はその他の用途に急速に普及している。また、レーザーダイオード(LD)は、光通信用機器、情報の読み書きの記録用機器、又は様々なセンサ等の広い分野で使用されている。
【0003】
LED及びLD等の発光素子では、投入電力の70%が熱になるという問題があり、投入電力の僅か30%で発光させているにすぎない。そのため、発光素子を効果的に冷却できれば、発光に寄与する投入電力の割合を高めることができ、結果として光度や輝度等の発光出力を高めることができることになる。しかしながら、発光素子の出力を高めるために高い電力を印加すると、発光素子からの発熱量が増大してしまうという問題があった。
【0004】
こうした問題に対する放熱手段として、例えば特許文献1,2に示すように、1又は複数のLED等を、金属基板、セラミックス基板又は樹脂基板等に実装してパッケージ化してモジュールとし、そのモジュールをヒートシンク等の冷却装置に接合して放熱特性を高める例が提案されている。また、例えば特許文献3では、冷媒注入用凹部に冷媒が注入されたヒートパイプに、上部に回路層が形成された絶縁層が付着されたヒートパイプ基板、及び回路層に実装された電子部品を含んでなる放熱パッケージ基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−167189号公報
【特許文献2】特開2005−32881号公報
【特許文献3】特開2010−206159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の放熱手段では、依然として放熱が不十分であった。また、高価な放熱部材で放熱特性が改善できたとしても現実的でないという問題もあった。また、LEDやLDを装着する照明デバイス毎にパッケージ構造を設計した場合もコストがかさむという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することができる新しい放熱部材を提供するものであって、その目的は、発熱部品から熱を奪って発熱部品を速やかに冷却することができる小型で軽量な放熱部材を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、その放熱部材に発熱部品を接続した電子部品、及びその電子部品を実装した実装基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、半導体素子等の発熱部品から熱を効果的に奪うための放熱部材に関する研究開発を行っている過程で、冷却媒体を還流循環させることができる毛細管構造体を内部に密閉収納した放熱部材によって、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る放熱部材は、発熱部品を接続するための頂部と、基板に接続するための底部と、前記頂部と前記底部との接続配線が設けられた中空胴部とを有し、冷却媒体と、該冷却媒体を前記底部及び前記頂部の間で毛細管移動させる毛細管構造体とを内部に有することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、発熱部品を接続するための頂部と、基板に接続するための底部と、頂部と底部との接続配線が設けられた中空胴部とを有し、内部に冷却媒体と毛細管構造体とを有するので、その冷却媒体が底部及び頂部の間で毛細管移動する。そのため、頂部に発熱部品が設けられた場合、冷却媒体はその発熱部品が発生した熱を奪って気化し、気化した冷却媒体は、温度の低い底部で放熱して液化する。液化した冷却媒体は、毛細管構造体内を毛細管移動して頂部に向かって還流する還流循環を起こす。その結果、この放熱部材は、発熱部品で発生した熱を奪って発熱部品を速やかに冷却することができる。
【0011】
本発明に係る放熱部材において、前記毛細管構造体が、多孔質体又は繊維構造体であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、多孔質体又は繊維構造体が細孔又は微細な隙間を有するので、その細孔又は隙間で冷却媒体が毛細管移動する。その結果、冷却媒体の環流循環を起こすことができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係る電子部品は、上記した本発明に係る放熱部材が有する頂部に発熱部品が接続されてなることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、放熱部材の頂部に発熱部品が接続されているので、放熱部材が発熱部品で発生した熱を奪ってその発熱部品を速やかに冷却することができる。その結果、発熱部品の機能をより向上させることができる。さらに、この発明によれば、発熱部品と放熱部材とを電子部品として一体化したので、放熱機能を備えた実装用小型部品として用いることができる。
【0015】
本発明に係る電子部品において、前記発熱部品が発光ダイオード又はレーザダイオードであることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、発熱部品が発光ダイオード又はレーザダイオードであるので、放熱部材が発光ダイオード又はレーザダイオードで発生した熱を奪ってそれらを速やかに冷却することができる。その結果、発光ダイオード又はレーザダイオードに高い入力電圧を印加することができるので、その高出力化が可能になる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明に係る実装基板は、上記した本発明に係る放熱部材が有する頂部に発熱部品が接続され、該放熱部材が有する底部が基板に接続されてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、放熱部材の頂部に発熱部品が接続され、その放熱部材の底部が基板に接続されているので、発熱部品で発生した熱を底部から基板を通じて放熱させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る放熱部材によれば、冷却媒体が底部及び頂部の間で毛細管移動するので、頂部に発熱部品が設けられた場合、冷却媒体はその発熱部品が発生した熱を奪って気化する。そして、気化した冷却媒体は、温度の低い底部で放熱して液化し、液化した冷却媒体は、毛細管構造体内を毛細管移動して頂部に向かって還流するので、冷却媒体の還流循環を起こすことができる。その結果、この放熱部材は、発熱部品で発生した熱を奪って発熱部品を速やかに冷却することができる。特に、本発明は、外部駆動力が不要であるにもかかわらず、高い放熱特性を示す廉価なパッケージ基板一体型の放熱部材を提供できる。
【0020】
本発明に係る電子部品によれば、放熱部材が発熱部品で発生した熱を奪ってその発熱部品を速やかに冷却することができるので、発熱部品の機能をより向上させることができる。さらに、発熱部品と放熱部材とを電子部品として一体化したので、放熱機能を備えた実装用の小型部品として用いることができる。また、本発明に係る実装基板によれば、発熱部品で発生した熱を底部から基板を通じて放熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る放熱部材の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係る電子部品の一実施形態を示す模式的な斜視図である。
【図3】冷却媒体が還流循環する放熱メカニズムの説明図である。
【図4】(A)は本発明に係る放熱部材の他の実施形態を示す模式的な断面図であり、(B)は本発明に係る放熱部材のさらに他の実施形態を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明に係る電子部品の他の実施形態を示す模式的な斜視図である。
【図6】(A)は本発明に係る実装基板の一実施形態を示す模式的な断面図であり、(B)は本発明に係る実装基板の他の実施形態を示す模式的な断面図であり、(C)は本発明に係る実装基板のさらに他の実施形態を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明に係る放熱部材の製造方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ本発明に係る放熱部材、電子部品及び実装基板の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に示す具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[放熱部材]
本発明に係る放熱部材1は、図1及び図2に示すように、発熱部品20を接続するための頂部11と、基板に接続するための底部12と、頂部11と底部12との接続配線13が設けられた中空胴部10とを有している。そして、この放熱部材1は、冷却媒体14と、冷却媒体14を底部12及び頂部11の間で毛細管移動させる毛細管構造体15とを内部に有することに特徴がある。
【0024】
具体的には、この放熱部材1は、管状の中空胴部10と、その中空胴部10の縦方向の一方の端部にある平板状の頂部11と、その中空胴部10の縦方向の他方の端部にある平板状の底部12とで密閉されている。密閉された放熱部材1は、図3に示すように、冷却媒体14と毛細管構造体15を内部に収容し、その冷却媒体14が還流循環して発熱部品20を冷却するように機能する。なお、「縦方向」とは、図1に示すように、管状の中空胴部10の高さ方向のことであり、その高さ方向の両端に頂部11と底部12とが設けられる方向のことである。
【0025】
(放熱メカニズム)
発熱部品20で生じた熱は、図3に示すように、頂部11に伝わり、頂部11に伝わった熱(図3中の点線)は、放熱部材1の内部に封入された冷却媒体14を気化させる(潜熱吸収による冷却媒体14の気化現象)。冷却媒体14が気化することで、その冷却媒体14は蒸発潜熱により発熱部品20から熱を奪って発熱部品20を冷却する。気化した冷却媒体14(蒸気)は、放熱部材1の内部でより温度の低い底部12に向かって中空胴部10を移動する(熱輸送現象)。そして、気化した冷却媒体14は底部12に接して底部12に熱を与え、その冷却媒体14は冷却されて液化する(潜熱放出による冷却媒体14の液化現象)。冷却媒体14から底部12に伝わった熱は、底部12から放熱部材1の外部に放出される。
【0026】
液化した冷却媒体14が毛細管構造体15に接すると、液化した冷却媒体14は毛細管力により毛細管構造体15内に移動する。毛細管構造体15内に移動した冷却媒体14は、底部12側から頂部11側に移動し、冷却媒体14が気化したことにより冷却媒体14が不足した状態になっている頂部11まで還流する。こうした冷却媒体14の還流循環(図3の実線)により、放熱部材1は冷却部材(ヒートスプレッダともいう。)として機能し、発熱部品20から熱を奪って発熱部品20を速やかに冷却することができる。
【0027】
なお、中空胴部10、頂部11及び底部12は、後述する高い熱伝導性の材料で形成されていることが好ましい。中空胴部10、頂部11及び底部12が高い熱伝導性の材料で形成されることにより、頂部11に接続された発熱部品20で発生した熱が冷却媒体14に速やかに伝わり、また、冷却媒体14の熱が中空胴部10と底部12を伝わって放熱部材1の外部に速やかに伝わる。
【0028】
こうした放熱メカニズムで作動する本発明に係る放熱部材1は、受熱部位(頂部11)と放熱部位(底部12)とが分離しており、複雑な制御が不要でメンテナンスフリーであり、且つ構造が簡単でリサイクルが可能で環境にも優しいという多くの優れた利点がある。また、冷却のための外部駆動力が不要であり、しかも銅の100倍以上の熱伝導率を示すという熱伝導性能を備えている。
【0029】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0030】
(中空胴部、頂部、底部)
中空胴部10は、図1及び図2に示すように、冷却媒体14と毛細管構造体15を収容する管状体である。この中空胴部10の両端には、後述する頂部11と底部12とが接合され、密閉構造が形成される。密閉構造内に収容された冷却媒体14と毛細管構造体15は、上記した放熱メカニズムによって発熱部品20を冷却するように機能する。
【0031】
冷却を効果的に行うことができる中空胴部10の形状は、毛細管構造体15を収容可能なように、少なくとも片端が開口している必要があり、両端が開口した管形状であってもよいし、片端が開口したコップ形状であってもよい。さらに、中空胴部10の寸法形状としては、縦方向長さLが胴部内径Dよりも長い縦長形状であることが好ましい。中空胴部10を縦長形状とすることにより頂部11と底部12との距離が離れるので、冷却媒体14が熱を奪って気化する頂部11と、冷却媒体14が熱を放出して液化する底部12との温度差が生じ易くなり、受熱部位(頂部11)と放熱部位(底部12)とが分離され、冷却媒体14の環流循環が起き易くなる。
【0032】
中空胴部10の縦方向長さLと胴部内径Dとの比は、毛細管構造体15の大きさ、冷却媒体14の性質、発熱部品20の発熱量等により任意に設計される。一例を挙げれば、例えば[縦方向長さL]/[胴部内径D]が2〜4であることが好ましく、縦方向長さLとしては、例えば5mm〜50mmのものを例示できる。なお、中空胴部10の厚さ(肉厚)は、例えば0.1mm〜0.3mmである。
【0033】
中空胴部10の形成材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、若しくはそれらの合金、ステンレス鋼、洋白、青銅等の金属材料、又は、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス材料等を挙げることができる。これらのうち、高い熱伝導性を示す金属材料は、放熱を効果的に行うことができるので好ましい。
【0034】
頂部11と底部12は、中空胴部10の縦方向の両端を密閉し、密閉型の放熱部材1を構成するための平板状部材である。頂部11には後述する発熱部品20が接続され、底部12は後述する基板26(実装基板)に接続される。そのため、頂部11と底部12は、金属材料のように熱伝導性の良い材料で形成されていることが望ましい。頂部11と底部12は同じ材料であってもよいし異なる材料であってもよい。なお、上記した中空胴部10が管形状である場合は、頂部11と底部12はいずれも平板状部材を用いるが、上記した中空胴部10がコップ形状である場合は、頂部11と底部12のいずれかが平板状部材となる。
【0035】
頂部11には、発熱部品20を電気的に接続するための接続構造が設けられている。例えば、ペースト半田や半田ボールで半田付けできる半田パッド等の接続構造が設けられている。一方、底部12にも、基板26に接続できる接続構造が設けられている。例えば、図1等に示すようなピン型リード端子21や、図6(B)に示すような半田ボール22等の接続構造が設けられている。
【0036】
絶縁層16は、図1に示すように、中空胴部10、頂部11及び底部12が導電性材料で形成されている場合にそれぞれの表面に設けられる。絶縁層16は、絶縁性材料であれば特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス材料や、プラスチック材料等の絶縁性材料を挙げることができる。特に、高い熱伝導性を示す絶縁性材料であることが好ましく、例えば上記した各セラミックス材料や、高い熱伝導性を示すプラスチック材料を挙げることができる。絶縁層16の厚さは、目的とする絶縁性が確保できれば特に限定されないが、例えば1μm〜50μmである。なお、中空胴部10、頂部11及び底部12が絶縁性材料で形成されている場合は、絶縁層16は設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい(図4を参照)。
【0037】
接続配線13は、発熱部品20を接続する頂部11と、基板26に接続される底部12とを電気的に接続する配線である。この接続配線13は、少なくとも中空胴部10の外表面に設けられ、必要に応じて頂部11と底部12にも設けられている。接続配線13の種類は特に限定されないが、例えば銅配線やアルミニウム配線等を挙げることができる。
【0038】
(冷却媒体)
冷却媒体14は、毛細管構造体15とともに放熱部材1の内部に密閉収容されている。この冷却媒体14は、放熱部材1の内部で還流循環する上記放熱メカニズムにより、発熱部品20を冷却するように作用する。冷却媒体14としては、例えば、純水、イオン交換水、蒸留水等の水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、又はフロン等を挙げることができる。なかでも、潜熱の大きさから水が好ましく用いられる。
【0039】
冷却媒体14は、密閉された放熱部材1内に大気圧で封入されていてもよいし、減圧又は加圧されて封入されていてもよい。その封入圧力は、発熱部品20から生じる熱量、冷却媒体14の種類及びその冷却媒体14の気化温度等の性質を考慮して調整することができ、その封入圧力を調整することにより、冷却媒体14の沸点を可変させることができる。例えば、冷却媒体14の気化温度を低くする場合は、冷却媒体14を減圧して封入することが好ましく、冷却媒体14の気化温度を高くする場合は、冷却媒体14を加圧して封入することが好ましい。冷却媒体14を減圧して封入するか加圧して封入するかは、発熱部品20から生じる熱量と冷却媒体14の気化温度等を考慮して適宜選択できる。冷却媒体14の封入量は、上記した放熱メカニズムによる環流循環が効果的に行われる量であることが好ましい。
【0040】
(毛細管構造体)
毛細管構造体15は、冷却媒体14を毛細管現象によって毛細管移動させるように作用する構造体(「ウィック」とも呼ばれ、毛細管現象を起こすための細溝を有する。)であり、放熱部材1の内部に収容されている。毛細管構造体15の構造形態は、冷却媒体14を毛細管移動させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、細孔を有する構造体や、微細な隙間を有する構造体等を挙げることができる。細孔を有する構造体としては、例えば、多孔質体等を挙げることができ、微細な隙間を有する構造体としては、例えば、繊維を圧縮した繊維構造体等を挙げることができる。
【0041】
多孔質体としては、例えば、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックスを多孔質化した多孔質セラミックス構造体、多孔質のカーボンシートを巻いた多孔質カーボンシート構造体、又は、金属粉末を焼結してなる多孔質焼結金属構造体等を挙げることができる。
【0042】
繊維構造体としては、例えば、銅又は銅合金、鉄又は鉄合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、ニッケル又はニッケル合金、マグネシウム又はマグネシウム合金、亜鉛又は亜鉛合金等からなる金属繊維を圧縮してなる繊維構造体や、炭素繊維を圧縮してなる炭素繊維構造体や、竹材等の天然物繊維を圧縮してなる繊維構造体等を挙げることができる。用いる繊維の直径は任意に選択することが好ましい。
【0043】
こうした毛細管構造体15の空孔率又は空隙率は、例えば1%〜40%であることが好ましい。空孔率又は空隙率は、例えば、水銀圧入法、ガス吸着法、バブルポイント法等の各種細孔分布測定方法で測定できる。
【0044】
毛細管構造体15の形状は、例えば図1〜図3に示す筒状体が好ましい。筒状体の毛細管構造体15は、中央に冷却媒体14を溜める空間を確保できる。なお、それ以外の形状であってもよく、例えば図4(B)に示す凹形状や、その他の形状にすることもできる。こうした毛細管構造体15は、中空胴部10、頂部11及び底部12で密閉された放熱部材1の内面に接して収容されている。
【0045】
(その他の形態)
図3に示す放熱部材1は、内部に1つの毛細管構造体15を備えた放熱部材1の頂部11に発熱部品20を1つ接続しているが、本発明に係る放熱部材はこうした形態に限定されない。例えば、内部に1つの毛細管構造体15を備えた放熱部材1の頂部11に発熱部品20を2つ又はそれ以上接続したものであってもよい(図示しない)。また、図5に示すように、内部に2つの毛細管構造体15を備えた放熱部材2の頂部11に、2つの発熱部品20を接続したものであってもよい。この場合において、各発熱部品20は、2つの毛細管構造体15のそれぞれの位置の直上に接続されていることが好ましい。
【0046】
このように、放熱部材1の頂部11に1又は2以上の発熱部品20を設けてもよいし、放熱部材1の内部に1又は2以上の毛細管構造体15を収容したものであってもよい。なお、2以上の発熱部品20を設ける場合には、その数と同じ数の毛細管構造体15をその発熱部品20の直下に設けることが好ましい。
【0047】
以上、本発明に係る放熱部材1によれば、冷却媒体14が底部12及び頂部11の間で毛細管移動するので、頂部11に発熱部品20が設けられた場合、冷却媒体14はその発熱部品20が発生した熱を奪って気化する。そして、気化した冷却媒体14は、温度の低い底部12で放熱して液化し、液化した冷却媒体14は、毛細管構造体15内を毛細管移動して頂部11に向かって還流するので、冷却媒体14の還流循環を起こすことができる。その結果、放熱部材1は、発熱部品20で発生した熱を奪って発熱部品20を速やかに冷却することができる。特に、本発明によれば、外部駆動力が不要であるにもかかわらず、高い放熱特性を示す廉価なパッケージ基板一体型の放熱部材を提供できる。
【0048】
(製造方法)
放熱部材1は、例えば図7の(A)〜(E)に示した方法で製造できる。図7(F)は、製造した放熱部材1に発熱部品20を設けた後の電子部品2である。なお、放熱部材1の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0049】
放熱部材1の製造は、先ず、図7(A)に示すように、中空胴部10及び頂部11が一体化したコップ状部材を準備する。コップ状部材は、例えば、押出成形、圧縮成形、深絞り加工等により形成することができる。
【0050】
次に、図7(B)に示すように、その内部に毛細管構造体15を入れる。毛細管構造体15が多孔質構造体の場合は、中空胴部10の内径Dに接する大きさに加工した多孔質構造体が用いられる。また、毛細管構造体15が繊維構造体の場合は、所定の線径の繊維を中空胴部10の内径Dに接する大きさに圧縮加工した繊維構造体が用いられる。
【0051】
次に、図7(C)に示すように、毛細管構造体15を入れた中空胴部10に冷却媒体14を入れ、さらに平板状の底部12で封止して密閉する。平板状の底部12は、中空胴部10の底部側の開口部と嵌め合わさる形状に加工したものを用いることができる。なお、冷却媒体14を減圧して封入する場合は、例えば、底部12に減圧用吸引口(図示しない)及び冷却媒体注入口(図示しない)を設け、その減圧用吸引口から内部の空気を吸引しながら冷却媒体14を冷却媒体注入口から注入する。そして、冷却媒体14を注入した後、減圧用吸引口と冷却媒体注入口を例えば樹脂材料等の封止材料で封止し、加熱等で樹脂材料を硬化させて冷却媒体14を減圧して封入する。
【0052】
図7(C)の例では、ピン型リード端子21を設けた底部12を用いているが、ピン型リード端子21以外の接続部材を設けてもよい。
【0053】
次に、図7(D)に示すように、中空胴部10、頂部11及び底部12の表面に絶縁層16を形成する。絶縁層16は、例えば、絶縁性樹脂を塗布し、硬化させて形成できる。また、中空胴部10、頂部11及び底部12がアルミニウム等の金属材料で成形されている場合は、その表面に陽極酸化皮膜を形成して絶縁層16を形成してもよい。
【0054】
次に、図7(E)に示すように、中空胴部10、頂部11及び底部12の表面に接続配線13を形成する。接続配線13は、例えば、導電ペースト法、スパッタリング法又は真空蒸着法でパターン形成してもよいし、パターン形成した薄層上に電気めっき法で金属膜を積層して厚膜化してもよい。こうして、本発明に係る放熱部材1を製造できる。
【0055】
最後に、図7(F)に示すように、放熱部材1の頂部11に発熱部品20を接続し、放熱部材1に発熱部品20が装着された一体型の電子部品2を製造できる。発熱部品20は、例えば、フリップチップ実装やワイヤボンディングにより接続できる。
【0056】
[電子部品]
本発明に係る電子部品2は、図2、図3及び図5に示すように、上記した本発明に係る放熱部材1と、その放熱部材1の頂部11に接続された発熱部品20とで構成された一体型部品である。発熱部品20としては、例えば、発光素子、パワー半導体素子、CPU及びメモリ等の発熱する半導体素子や抵抗等を挙げることができる。発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等を挙げることができる。
【0057】
発光ダイオード又はレーザダイオードを接続した放熱部材1は、その発光ダイオード又はレーザダイオードで発生した熱を奪って速やかに冷却することができる。その結果、発光ダイオード又はレーザダイオードに高い入力電圧を印加することができるので、その出力を増すことができる。
【0058】
以上、本発明に係る電子部品2によれば、放熱部材1が発熱部品20で発生した熱を奪ってその発熱部品20を速やかに冷却することができるので、発熱部品20の機能をより向上させることができる。さらに、発熱部品20と放熱部材1とを電子部品2として一体化したので、放熱機能を備えた実装用の小型部品として用いることができる。
【0059】
[実装基板]
本発明に係る実装基板3は、図6(A)〜図6(C)に示すように、上記した本発明に係る電子部品2が基板26に実装されたものであり、詳しくは、上記した本発明に係る放熱部材1と、その放熱部材1の頂部11に接続された発熱部品20と、その放熱部材1の底部12が接続する基板26とで構成された実装基板である。なお、基板26は、一般的に用いられるプリント基板であればよく、そうした基板26に発熱部品20が設けられた放熱部材1からなる電子部品2が少なくとも実装されていれば、抵抗、コンデンサ等の他の電子部品が実装されていてもよい。
【0060】
電子部品2の基板26への実装方法は、電子部品2の底部12に種々の接続構造を設けて行うことができる。例えば、図6(A)に示すように、電子部品2の底部にピン型リード端子21を設けた場合には、そのピン型リード端子21を基板26に設けられたコネクタ端子26に挿入することにより実装できる。また、そのピン型リード端子21を、基板26のスルーホール(図示しない)に差し込み、半田付けして実装してもよい。
【0061】
また、図6(B)に示すように、電子部品2の底部に半田パッドを設けた場合には、その半田パッドと基板26に設けた電極パッド部24とを、半田ボール22で接続することができる。
【0062】
また、図6(C)に示すように、電子部品2の底部に筒状の実装補助部材25を用いた場合には、電子部品2を筒状の実装補助部材25の開口部にはめ込んで実装できる。なお、実装補助部材25を用いて実装した電子部品2は、放熱部材1の底部12を含む下方が実装補助部材25に接触するので、放熱部材1の下方に伝わった熱が実装補助部材25に効率的に伝わって放熱でき、その結果、電子部品2の放熱性をさらに向上させることができる。
【0063】
なお、図6(A)〜(C)のいずれの場合も、実装基板3には、電子部品2から基板26に伝わった熱を拡散させるための放熱配線(図示しない)や放熱フィン(図示しない)等を設けてもよい。
【0064】
以上、本発明に係る実装基板3によれば、発熱部品20で発生した熱を底部12から基板26を通じて放熱させることができる。
【実施例】
【0065】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0066】
[実施例1]
厚さ0.2mmの頂部11を有し、縦方向長さLが7.8mmで内径が2.6mmで厚さが0.2mmで洋白製のコップ状の中空胴部10を準備した。さらに、ピン型リード端子21を2本設けた直径2.7mmでニッケル製の平板状の底部12を準備した。さらに、外径2.6mm、内径2.4mm、高さ7.7mmのチューブ状の多孔質アルミナセラミックス(空孔率10%)製の毛細管構造体15を準備した。
【0067】
先ず、コップ状の中空胴部10に毛細管構造体15を入れ、その後、5mLの純水を入れるのと同時に平板状の底部12を嵌め込んで密閉し、密閉された放熱部材1を作製した。その後、その放熱部材1の外表面にアルマイト(アルミニウムの陽極酸化皮膜)からなる厚さ50μmの絶縁層16を形成し、さらに中空胴部10の外表面に幅0.3mmで厚さ10μmの銅製の接続配線13を設けた。
【0068】
放熱部材1の頂部11にLEDを設けるとともに上記銅配線に接続した。こうしてLEDが装着された一体型LEDパッケージ(電子部品2)を作製した。この一体型LEDパッケージ2を実装基板26に実装した後、LEDに3Vを印加して発光させた。こうしたLEDパッケージ(放熱部材)は、銅の100倍以上の熱伝導率を達成でき、小型軽量化を実現できた。そして、従来実現することができなかった放熱特性(LED効率50%)を実現できた。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 放熱部材
2 電子部品
3,3A,3B,3C 実装基板
10 中空胴部
11 頂部
12 底部
13 接続配線
14 冷却媒体
15 毛細管構造体
16 絶縁層
20 発熱部品
21 ピン型リード端子
22 半田端子
23 コネクタ端子
24 電極パッド部
25 放熱補助部材
26 基板
L 中空胴部の縦方向長さ
D 中空胴部の内径




【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を接続するための頂部と、基板に接続するための底部と、前記頂部と前記底部との接続配線が設けられた中空胴部とを有し、
冷却媒体と、該冷却媒体を前記底部及び前記頂部の間で毛細管移動させる毛細管構造体とを内部に有することを特徴とする放熱部材。
【請求項2】
前記毛細管構造体が、多孔質体又は繊維構造体である、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放熱部材が有する頂部に発熱部品が接続されてなることを特徴とする電子部品。
【請求項4】
前記発熱部品が発光ダイオード又はレーザダイオードである、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の放熱部材が有する頂部に発熱部品が接続され、該放熱部材が有する底部が基板に接続されてなることを特徴とする実装基板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115364(P2013−115364A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262563(P2011−262563)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】