説明

放電ランプ点灯装置

【課題】パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができる放電ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路22を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路40を備え、PWM制御回路22に用いられている誤差増幅器52の入力電圧をランプ電圧に依らず略一定にする手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば投射型ディスプレイなどの表示装置に用いる放電ランプ点灯装置に係り、特にシーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイに好適な放電ランプ点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型ディスプレイの光源としては、変換効率が高く、点光源に近いものが得やすい理由から、メタルハイドライドランプや高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプが使用されている。高圧放電ランプの点灯には、点灯に必要な電圧及び電流を供給する専用の放電ランプ点灯装置が使用される。
【0003】
従来の放電ランプ点灯装置では、ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御する電力制御回路と、放電ランプを起動するための高電圧を発生させるイグナイタ回路を備えたものがあった(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−3996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放電ランプ点灯装置では、ちらつき低減のためにパルス電流を重畳した場合に、パルス電流波形がランプ電圧により変化し、シーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイに適用が難しいという欠点を有している。
また、従来の放電ランプ点灯装置は不要輻射が大きいという欠点を有している。
【0005】
本発明の第1の目的は、パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができる放電ランプ点灯装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第2の目的は、不要輻射の少ない放電ランプ点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するため、第1の本発明は、ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路を備えた放電ランプ点灯装置において、前記PWM制御回路に用いられている誤差増幅器の入力電圧をランプ電圧に依らず略一定にする手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
前記第2の目的を達成するため、第2の本発明は、ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路を備えた放電ランプ点灯装置において、前記PWM制御回路の発振周波数を時間的に変化させる回路を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
前記第1の本発明は前述のような構成になっており、パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができる放電ランプ点灯装置の提供が可能となる。
【0010】
前記第2の本発明は前述のような構成になっており、不要輻射の少ない放電ランプ点灯装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図9は、放電ランプ点灯装置を使用するシーケンシャルカラー再生方式における投射型ディスプレイの概略構成図である。
【0012】
図に示すように、リフレクタ74と高圧放電ランプ75は、カラーフィルターを配置したカラーホイールなどのシーケンシャルカラー装置78を経て画像表示デバイス73の背面から光を照射する光源を構成している。画像表示デバイス73を透過した光は、光学系72によりスクリーン71に投射される。画像表示デバイス73は例えば液晶ディスプレイであり、画像表示デバイス駆動回路76によりシーケンシャルカラー信号で愚答されて画像が表示されるので、スクリーン71上に大画面の画像が得られる。ここでは画像表示デバイスとして透過型の例を示したが、反射型でも同様に構成できる。
【0013】
放電ランプ点灯装置77は、高圧放電ランプ75の起動と点灯制御の機能を備えている。
【0014】
図4は、シーケンシャルカラー信号とランプ電流との関係を示す説明図である。図中の56はシーケンシャルカラー信号、57はランプ電流、58は同期信号である。
【0015】
ランプ電流57にはちらつき防止のためパルス電流が重畳されているが、このパルス電流はバラストに供給された同期信号58により、シーケンシャルカラー信号56のR,G,B信号のいずれかに期間に合致して出す必要がある。ここではB信号の期間に合致した例を示している。色合いを変化させないためには、パルス電流がB期間内に収まる必要があるが、ランプ電圧が上がると実線から点線のように立上り、立下りが変化し、立下り部分では同図に示すようにR基間に入ってしまう場合があった。従って、パルス電流の立上り、立下りが短く変化しないことが必要になる。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る放電ランプ点灯装置のブロック図である。同図において、符号1は第1の電源入力端子、2はMOS−FET、3はダイオード、4はチョークコイル、5はコンデンサ、6,7,12は抵抗器、13は高圧放電ランプ、18はランプオン信号入力端子、19は第2の電源入力端子、21はドライブ回路、22はPWM制御回路、23は過電圧保護回路(OVP回路)、26はイグナイタ回路、31はタイマー回路、32はスイッチ回路(SW回路)、40はパルス電流重畳回路であり、図に示すような接続関係になっている。
【0017】
一点鎖線で示すように前記MOS−FET2とダイオード3とチョークコイル4とコンデンサ5と抵抗器6,7,12とドライブ回路21とPWM制御回路22とで電力制御回路33を構成し、前記抵抗器6,7,12によるランプ電圧及びランプ電流の検出結果に応じてPWM制御回路22により、高圧放電ランプ13に対する出力電圧及び電流が制御される。前記イグナイタ回路26は、高電圧パルスを発生させて高圧放電ランプ13を起動する機能を有している。
【0018】
前記過電圧保護回路(OVP回路)23は、過電圧発生時に電力制御回路33の動作を停止する。前記タイマー回路31は、起動時に前記過電圧保護回路(OVP回路)23の動作を停止する信号を出力する。スイッチ回路(SW回路)32は、端子18に入力されるランプオン信号により、第2の電源入力端子19からPWM制御回路22への電源供給を制御する。
【0019】
図2は、図1で示したPWM制御回路22とパルス電流重畳回路40の第1の回路例を示す回路図である。同図において、41は制御回路、42はMOS−FET、43,44は抵抗器、45はPWM制御回路22中のRC発振回路、46,47は電圧制御増幅器VCA、48はPWM出力端子、49はランプ電流検出電圧入力端子、50はランプ電圧検出電圧入力端子、51は演算回路(1)、52は誤差増幅器、53はコンパレータである。前記PWM出力端子48、ランプ電流検出電圧入力端子50ならびにランプ電圧検出電圧入力端子50は、図1にも示されている。
【0020】
図2に示されているように、RC発振回路45と誤差増幅器52とコンパレータ53によって、PWM制御回路22が構成されている。また、制御回路41とMOS−FET42と抵抗器43,44と電圧制御増幅器VCA46,47と演算回路(1)51によって、パルス電流重畳回路40が構成されている。
【0021】
同図に示されているように、ランプオン信号入力端子18が、MOS−FET42に接続されている。ランプ電流検出電圧入力端子49が、抵抗器44に接続されている。ランプ電圧検出電圧入力端子50が、制御回路41と演算回路(1)51に接続されている。また、電圧制御増幅器VCA46ならびに電圧制御増幅器VCA47の出力信号が、誤差増幅器52の非反転端子ならびに反転端子にそれぞれ入力される。
【0022】
次にPWM制御回路22とパルス電流重畳回路40の動作を、図2ならびに図3を用いて説明する。
【0023】
ランプ電流検出電圧入力端子49からのランプ電流検出電圧は、抵抗器44ならびに電圧制御増幅器46を経て誤差増幅器52の非反転端子に入力される。
【0024】
また、ランプ電圧検出電圧入力端子50からのランプ電圧検出電圧は、演算回路51ならびに電圧制御増幅器47を経て誤差増幅器52の反転端子に入力される。演算回路51は、ランプ電圧に応じて最適なランプ電流を基準電圧として電圧制御増幅器47に出力する。
【0025】
コンパレータ53の反転端子には誤差増幅器52の出力電圧が、非反転端子にはRC発振回路45の発振波形がそれぞれ入力され、コンパレータ53によって得られたPWM出力波形が端子48からドライブ回路21に入力される。
【0026】
ランプオン信号入力端子18に同期信号58が入力されると、MOS−FET42は同期信号58(図4参照)がローレベルでオフ、ハイレベルでオンする。従って、同期信号58がハイレベルの時は、ランプ電流検出電圧入力端子49からの信号が抵抗器44,43で分圧されるので、図4に示すようにランプ電流57にパルス電流が重畳する。
【0027】
図3は、パルス電流の立下り時間tf(図4参照)とランプ電圧との関係を示した図である。図中の線54はパルス電流の立下り時間の電圧特性線で、ランプ電圧が高くなるほど立下り時間tfが比例的に増加する特性を有している。
【0028】
この原因を解析した結果、誤差増幅器52の入力電圧が、ランプ電圧が高くなるほど小さくなるためであることが分かった。そこで本発明では、電圧制御増幅器46,47と制御回路41により、ランプ電圧が高くなると電圧制御増幅器46,47の増幅率を上げて、誤差増幅器52の入力電圧がランプ電圧が高くなっても小さくならないようにしている。
【0029】
図5(a),(b)は誤差増幅器52の入力電圧(V+,V−)とランプ電圧との関係を示す図で、図中の線59は誤差増幅器52の入力電圧特性線(1)、線60は誤差増幅器52の入力電圧特性線(2)である。
【0030】
誤差増幅器52の入力電圧(V+,V−)とランプ電圧との関係は、制御回路41の構成により、図5(a)の入力電圧特性線(1)59に示すようにあるランプ電圧以上で増幅率を切り替えて上げる方法でも良いし、図5(b)の入力電圧特性線(2)60に示すようにランプ電圧に対し連続的に増幅率を変化させて誤差増幅器52の入力電圧がランプ電圧に依らず一定とする方法でも良い。
【0031】
この結果、パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができるので、シーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイに最適な放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0032】
図6は、図1で示したPWM制御回路22とパルス電流重畳回路40の第2の回路例を示す図である。同図において、61は演算回路(2)、62は基準電圧入力端子で、図に示すような接続関係にある。
【0033】
前記図5(b)では誤差増幅器52の入力電圧(V+,V−)は一定なので、V−に一定の基準電圧を加えるようにしても良い。本回路例はこれに対応するもので、誤差増幅器52の反転端子に一定の基準電圧を印加する基準電圧入力端子62が接続されている。
【0034】
V+端子には演算回路(2)61により、ランプ電流検出電圧入力端子49からのランプ電流検出電圧と、ランプ電圧検出電圧入力端子50からのランプ電圧検出電圧を乗算すると、ランプ電力一定を実現できる。その他の動作は図5に示す回路と同じであるので、それらの説明は省略する。
【0035】
この回路においても、パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができるので、シーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイに最適な放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0036】
図7は、PWM制御回路22とパルス電流重畳回路40の第3の回路例を示す図である。同図において、63はMOS−FET、64,65は抵抗器であり、図に示すような接続関係にある。本回路例において前記第2の回路例と相違する点は、MOS−FET63ならびに抵抗器64,65を追加した点である。
【0037】
本回路例では、ランプオン信号入力端子18からの同期信号58をMOS−FET63にも加えている。抵抗器64,65はRC発振回路45の発振周波数を決める抵抗であり、同期信号58のハイレベル,ローレベルにより発振周波数が切り替わるようになっている。
【0038】
このようにMOS−FET63ならびに抵抗器64,65を用いて電力制御回路のスイッチング周波数を時間的に変化させるようにしたので、特定の周波数に不要輻射エネルギーが集中せず、不要輻射の少ない放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0039】
図8は、PWM制御回路22とパルス電流重畳回路40の第4の回路例を示す図である。本回路例において前記第1の回路例と相違する点は、MOS−FET63ならびに抵抗器64,65を追加した点である。
【0040】
以上説明したように、ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御する電力制御回路とを含む放電ランプ点灯装置において、電力制御回路のPWM制御回路における誤差増幅器の入力電圧をランプ電圧に依らず略一定に構成することにより、パルス電流波形をランプ電圧に依らず略一定にすることができるので、シーケンシャルカラー再生方式の投影型ディスプレイに最適な放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0041】
また、前記電力制御回路のスイッチング周波数を時間的に変化させるようにしたので、特定の周波数に不要輻射エネルギーが集中せず、不要輻射の少ない放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
前記実施形態では放電ランプ点灯装置をシーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイに用いる場合について説明したが、本発明に係る放電ランプ点灯装置はこれに限定されるものではなく、高圧放電ランプを点灯する他の装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る放電ランプ点灯装置の回路図である。
【図2】その放電ランプ点灯装置に用いるPWM制御回路とパルス電流重畳回路の第1の回路例を示す図である。
【図3】ランプ電圧と重畳するパルス電流の立下り時間との関係を示す特性図である。
【図4】シーケンシャルカラー信号とランプ電流と同期信号との関係を示した図である。
【図5】誤差増幅回路の入力電圧特性図である。
【図6】本発明の実施形態に係るPWM制御回路とパルス電流重畳回路の第2の回路例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るPWM制御回路とパルス電流重畳回路の第3の回路例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るPWM制御回路とパルス電流重畳回路の第4の回路例を示す図である。
【図9】本発明の放電ランプ点灯装置を使用するシーケンシャルカラー再生方式の投射型ディスプレイの概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1…第1の電源入力端子、2…MOS−FET、3…ダイオード、4…チョークコイル、5…コンデンサ、6,7…抵抗器、12…抵抗器、13…高圧放電ランプ、18…ランプオン信号入力端子、19…第2の電源入力端子、21…ドライブ回路、22…PWM制御回路、23…過電圧保護回路(OVP回路)、26…イグナイタ回路、31…タイマー回路、32…スイッチ回路、33…電力制御回路、40…パルス電流重畳回路、41…制御回路、42…MOS−FET、43,44…抵抗器、45…RC発振回路、46,47…可変増幅器、48…PWM出力端子、49…ランプ電流検出電圧入力端子、50…ランプ電圧検出電圧入力端子、51…演算回路(1)、52…誤差増幅器、53…コンパレータ、54…パルス電流の立下り時間の電圧特性、56…シーケンシャルカラー信号、57…ランプ電流、58…同期信号、59…誤差増幅器の入力電圧特性1、60…誤差増幅器の入力電圧特性2、61…演算回路(2)、62…基準電圧入力端子、63…MOS−FET、64,65…抵抗器、71…スクリーン、72…光学系、73…画像表示デバイス、74…リフレクタ、75…高圧放電ランプ、76…駆動回路、77…ランプ点灯装置、78…シーケンシャルカラー装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路を備えた放電ランプ点灯装置において、
前記PWM制御回路に用いられている誤差増幅器の入力電圧をランプ電圧に依らず略一定にする手段を設けたことを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路を備えた放電ランプ点灯装置において、
前記PWM制御回路の発振周波数を時間的に変化させる回路を設けたことを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
ランプ電圧とランプ電流を検出してランプ電力を制御するPWM制御回路を有する電力制御回路と、ランプ電流にパルス電流を重畳するパルス電流重畳回路を備えた放電ランプ点灯装置において、
前記PWM制御回路に用いられている誤差増幅器の入力電圧をランプ電圧に依らず略一定にする手段を設けるとともに、
前記PWM制御回路の発振周波数を時間的に変化させる回路を設けたことを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の放電ランプ点灯装置において、
前記誤差増幅器の入力電圧を略一定にする手段が、当該誤差増幅器の入力にランプ電圧が高い時に増幅率が高くなる可変増幅器を設ける手段であることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の放電ランプ点灯装置において、
前記誤差増幅器の入力電圧を略一定にする手段が、当該誤差増幅器の入力にランプ電圧とランプ電流を乗算する回路を設けることを特徴とする放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−157532(P2007−157532A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352099(P2005−352099)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】