説明

放電ランプ点灯装置

【課題】
高輝度放電ランプの始動時において、非対称放電の状態の解消を促進させて、確実な点灯性を確保すること。
【解決手段】
間欠的電圧印加手段によってトランスの1次側巻線を駆動し、2次側巻線に発生した高電圧をインバータの出力電圧に重畳して放電ランプに印加するよう構成した放電ランプ点灯装置において、放電ランプの始動シーケンスでは、インバータを安定点灯周波数より高い始動初期周波数で駆動し、給電回路が無負荷開放電圧を出力し、放電ランプにおいて絶縁破壊が発生して放電が開始すれば、インバータの周波数を始動初期周波数から第1限界周波数に達するまで徐々に低下させ、第1限界周波数に達すると、インバータの周波数を安定点灯周波数に移行させるとともに、給電回路が放電ランプの放電を維持するに足る電流を出力するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ、特に高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の高輝度放電ランプを点灯するための放電ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶プロジェクタやDLP(TM)プロジェクタのような画像表示用などの光学装置のための光源装置においては、高輝度放電ランプ(HIDランプ)が使用される。前記したプロジェクタには、ダイクロイックプリズム等によりR,G,Bの3原色を分離し、各色毎に設けた空間変調素子によって各3原色別の画像を発生させ、ダイクロイックプリズム等により光路を再合成してカラー画像を表示する方式のものがある。また他方では、R,G,Bの3原色を有する色フィルタを回転させ、光源からの光をこのフィルタに通すことにより各3原色の光束を順次発生させ、これに同期させて空間変調素子を制御することにより、各3原色別の画像を時間分割によって順次発生させ、カラー画像を表示する方式のものもある。
【0003】
定常点灯時における放電ランプの駆動の方式に関しては、直流駆動方式と、インバータをさらに具備することによって周期的極性反転を行う交流駆動方式とがある。直流駆動方式の場合は、ランプからの光束もまた直流的、すなわち時間的に変化しないため、基本的に、前記したプロジェクタの両方の方式において、全く同様に適用することができるという大きな利点がある。これに対し、交流駆動方式の場合は、極性反転周波数という、直流駆動方式には無い自由度を利用して、放電ランプの電極の消耗や成長を制御できる可能性があるという利点がある。
【0004】
この種のランプを始動する場合、ランプに無負荷開放電圧と呼ばれる電圧を印加した状態で、高電圧を印加して放電空間内に絶縁破壊を発生させ、グロー放電を経てアーク放電に移行させる。交流駆動方式の場合にこれを達成する方法として、インバータの後段に共振インダクタと共振コンデンサとによる直列共振回路を設け、始動時にインバータの極性反転周波数をこの共振回路の共振周波数に合致するようにして直列共振現象を発生させ、ランプに印加する電圧を高める直列共振方式による共振始動が従来から行われている。さらに、この共振始動とイグナイタの併用により、印加する高電圧のピーク値を高めて始動確率を高めることも行われる。
【0005】
図15は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化された構成であり、共振始動に関する原理を説明するものである。この図の放電ランプ点灯装置は、放電ランプ(Ld)に給電する給電回路(Ux’)と、その出力電圧を極性反転するための、フルブリッジ方式のインバータ(Ui’)と、共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)とを備え、始動時は、前記インバータ(Ui’)を、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量の積の値で決まる共振周波数もしくはそれに近い周波数で極性反転駆動し、これにより生ずるLC直列共振現象により前記共振コンデンサ(Ch’)の両端子間に高い電圧を発生させ、前記放電ランプ(Ld)に高い電圧を印加するものである。なお、前記給電回路(Ux’)および前記インバータ(Ui’)のパワー系の回路構成については、後述する給電回路(Ux)およびインバータ(Ui)のそれと同様である。また、共振現象の発生に際しては、極性反転駆動の周波数の(奇数次の)高調波をLC共振周波数に対応させる場合も含まれる。
【0006】
直列共振動作時に、前記インバータ(Ui’)に流れる共振電流が過大にならないためには、共振コンデンサの静電容量を小さくし、かつ共振インダクタのインダクタンスをある程度大きくする必要があるが、このインダクタンスが大きいほど、定常点灯時におけるランプ光束の瞬断やオーバーシュート、振動が発生し易くなる。そして、直列共振方式において、ランプに印加する電圧の十分な高まりを得るためには、周期電圧印加手段の周波数、またはその高調波成分の周波数が、共振回路の共振周波数、または共振周波数の奇数次の周波数に合致、すなわち同調するように設定する必要がある。
【0007】
しかしながら、部品にはバラツキが存在するため、前記インバータ(Ui’)を、前記共振インダクタ(Lh’)の設計上のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の設計上の静電容量で決まる、予め設定された固定の周波数で極性反転駆動しても、期待する高電圧が得られない問題があった。さらに、バラツキの存在下において、個々の放電ランプ点灯装置における共振周波数を測定し、それを設定する方法も考えられるが、接続されるケーブルの長さや、ケーブルと他の導体との近接の程度などの影響が加わるため、共振周波数を予め厳密に設定することは困難であるという問題がある。
【0008】
この問題を解決するためにインバータ(Ui’)の駆動周波数を前記共振周波数、またはその近傍に設定または掃引動作する方法が従来より提案されている。図16は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図である。本図の(a)は前記共振コンデンサ(Ch’)に発生する出力電圧(Vnh)の波形、(b)は前記インバータ(Ui)の駆動周波数(f)の変化を表す。これは、点灯開始時にインバータ(Ui’)が発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引することを繰り返すものであって、期間(Ta)においては、下限周波数から上限周波数に向けて掃引動作を行い、その過程でインバータ回路の発生する交流電圧の周波数が共振周波数にたまたま一致する時点(ta)にて出力電圧(Vnh)が高電圧となる。一方、期間(Tb)においては、上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を逆方向に行う。したがって、点灯開始時の所定の期間(T)の範囲において前記バラツキから想定される共振周波数の範囲で複数回の掃引動作を繰り返し、高電圧を放電ランプ(Ld)に印加することができる。この高電圧のピーク電圧は、例えば、2kV〜5kVとなるように設定される。(前記ピーク電圧は、0Vからピーク値に至る電圧を測ったもので、本明細書における交流高電圧のピーク電圧の測り方は全て同様とする。)
【0009】
しかしながら、放電ランプに高電圧を印加し始動する前記期間(T)の間でインバータ(Ui’)の駆動周波数が前記共振周波数またはその近傍の周波数から離れている期間(図において、期間(Tc)に代表される、出力電圧(Vnh)が比較的低い期間の全て)においては、出力電圧(Vnh)には、共振による電圧の高まりが全く発生しない問題があった。
【0010】
以上において述べたような、インバータなどの交流駆動回路の駆動周波数と共振周波数の一致するタイミングを特定せず、放電ランプの始動期間全体にわたって、駆動周波数の掃引動作を繰返し続けるものに関して、従来より、様々な技術が提案されて来た。
【0011】
特開平02−215091号には、駆動周波数が共振周波数に一致する条件を、少なくとも一瞬発生させるものとして、点灯開始時に、インバータ回路の発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引するものが記載されている。
【0012】
また、特開平03−102798号には、LC回路にランプが点火するように高電圧をランプへ印加させる高周波数手段を含み、高周波数手段が時間的に変化する周波数で、あるいは共振周波数より高い周波数から時間的に減少する周波数でLC回路へ印加するものが記載されている。
【0013】
また、特開平04−017296号には、インバータ手段の発振周波数を高い周波数に変えるとき鋸歯状波発生手段または三角波発生手段の出力電圧に応じて発振周波数を所定の範囲内で変化させるように構成するものが記載されている。
【0014】
さらに、特開平04−272695号には、始動の際、インバータの出力周波数が、LC回路の共振周波数から音響的共鳴現象の発生し得る周波数領域以下の周波数まで連続的に変わるようにインバータを制御するもの、あるいは、定常時には音響的共鳴現象の発生し得る周波数領域以下の周波数になるようにインバータを制御するものが記載されている。
【0015】
さらに、特開平10−284265号には、始動期間において出力接続部から出力する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む範囲で掃引するもの、あるいは、始動期間に高周波の交流電圧を出力接続部から出力し、放電ランプの始動後の定常点灯期間に低周波の交流動作電圧のみを放電ランプに供給するものが記載されている。
【0016】
さらに、特開2000−195692号では、共振始動中のブリッジの動作周波数の掃引を行い、共振点を通過させるものが実施例として記載されている。
【0017】
さらに、特開2001−338789号には、所定時間に各スイッチ素子のスイッチング周波数を連続的に変化させる制御を行い、そのスイッチング周波数の掃引範囲は、負荷共振回路のインダクタおよびコンデンサによる共振周波数を含むようにするもの、さらには所定の期間、周波数を高い方から低い方に変化、つまり掃引させる制御を行うもの、さらには、放電ランプ絶縁破壊後の共振周波数が変化した際にインバータの周波数も変化させアーク放電に大きなエネルギーを供給し、放電ランプをより安定的にアーク放電に移行させるものが記載されている。
【0018】
さらに、特開2002−151286号には、インバータの駆動周波数の掃引を複数回繰り返すもの、高周波からアーク点灯で低周波に切り替わり移行するものが実施例として記載されている。
【0019】
さらに、特開2004−146300号には、2つの共振系を用いたものではあるが、周波数可変範囲の下限周波数と上限周波数は、共振回路部 の部品ばらつきや高圧放電ランプ点灯装置からランプまでの出力線の浮遊容量の影響により共振周波数が変化してもカバーできるだけの可変範囲に設定し掃引動作をマイクロプロセッサを用いて行う実施例が記載されている。
【0020】
さらに、特開2004−221031号では、前記方形波の周波数を段階的に低減するとともに、少なくともその第1段階における周波数を共振回路の共振周波数の奇数分の1近辺に設定する制御手段を備えることを特徴とする放電ランプ点灯装置であって、LC部品のバラツキによる共振電圧を抑えるためにインバータの前段に配置されたDC−DC変換回路の周波数とデューティを変動させるものが記載されている。
【0021】
さらに、特開2005−038813号には、奇数次共振を行うために、始動時の高周波スイッチング動作のインバータ周波数を連続的に、あるいは多段階的に変化させるものが実施例として記載されている。
【0022】
さらに、特開2005−050661号には、放電ランプ始動時において、インバータの出力周波数を上限値から下限値まで連続的に変化させるとともに、下限値に達したら再び上限値に戻って同じ動作を繰り返し、共振点を通過させるものが実施例として記載されている。
【0023】
さらに、特開2005−038814号では、2つのスイッチ素子にて、ハーフブリッジ機能と降圧チョッパ機能を達成したものであるが、始動中は共振周波数の奇数分の1の周波数で動作させるべく複数回に割ってインバータの周波数を掃引するものが実施例として記載されている。
【0024】
さらに、特開2008−243629号では、共振周波数を得るためにインバータの周波数の掃引動作を繰り返し実施するもの、あるいは、無負荷状態、始動改善モード、定常点灯状態での各々のモードにおけるインバータの周波数を、無負荷>定常>始動改善モードと規定したものが記載されている。
【0025】
ここまで、インバータなどの交流駆動回路の駆動周波数と共振周波数の一致するタイミングを特定せず、放電ランプの始動期間全体にわたって、駆動周波数の掃引動作を繰返し続けるものに関して、従来技術の提案について説明してきた。しかしながら、前記したように、放電ランプに高電圧を印加し始動する前記期間(T)の間でインバータ(Ui’)が前記共振周波数またはその近傍の周波数から離れた周波数で動作している期間においては、共振による電圧の高まりが全く発生しない前記した問題は解決されていなかった。
【0026】
この問題を解決するために、インバータ(Ui’)の駆動周波数を前記共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)からなる共振回路の前記共振周波数、またはその近傍に、あるいは高次の共振周波数に自動的に同調または設定する方法が従来より提案されている。
【0027】
前記図15における、放電ランプ点灯装置について再度説明する。本回路では、出力電圧を極性反転するための、フルブリッジ方式のインバータ(Ui’)と、共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)とを備え、共振周波数もしくはそれに近い周波数で極性反転駆動し、これにより生ずるLC直列共振現象により前記共振コンデンサ(Ch’)の両端子間に高い出力電圧(Vnh)を発生させ、前記放電ランプ(Ld)に高い電圧を印加するものであるが、前記出力電圧(Vnh)の電圧を制御するために、共振状態が実現していることの検出手段としての同調度検出手段(Un’)を設けてある。
【0028】
図17は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図で、直列共振に関するインバータ(Ui’)の制御のための同調度検出手段(Un’)を用いる場合に関する。(a)は前記共振コンデンサ(Ch’)に発生する出力電圧(Vnh)の波形、(b)は前記インバータ(Ui’)の駆動周波数(f)の変化の様子を表す。これは、点灯開始時にインバータ(Ui’)の発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引するものであって、期間(Td)においては、下限周波数から上限周波数に向けて掃引動作を行い、時点(td)において、共振が実現して、出力電圧(Vnh)が目標電圧に至ったことを、電圧検出手段で構成した同調度検出手段(Un’)が検出し、その周波数(fp)を維持し、連続して所望した高電圧を発生し得ることができる。
【0029】
前記したように出力電圧(Vnh)は、例えば、ピーク電圧が2kV〜5kVとなるように設定されるため、同調度検出手段(Un’)は、高電圧に耐えうる能力を有する必要がある。共振状態が実現していることの検出手段の一つの形態としては、共振コンデンサ(Ch’)と共振インダクタ(Lh’)との接続ノードとグランド間、あるいは放電ランプ(Ld)の両端間の電圧を測定し信号化する形態がある。例えば、高電圧に耐えるべく、抵抗素子やコンデンサを直列に複数個並べ、その分圧された中間の点から信号を得るようにすることができる。しかし、この形態の場合、構成部品の個数が増加するため、放電ランプ点灯装置の小型化や低コスト化にとって不利になる問題があった。
【0030】
共振状態が実現していることの検出手段の他の形態としては、共振インダクタ(Lh’)に対して適当な小さい巻き数比を有する2次巻き線を付け加え、共振インダクタ(Lh’)をトランス構造とし、前記2次巻き線から得られる、概ね前記共振インダクタ(Lh’)の振幅電圧に比例する振幅電圧を有する信号を、抵抗やダイオード、コンデンサなどを用いて整流し、前記電圧検出手段とする形態がある。しかしながら、この形態では、始動時に共振インダクタに前記した高電圧が発生するため、トランス構造とした共振インダクタ(Lh’)においては、高電圧発生部に対する2次巻き線の絶縁を十分確保して、絶縁破壊やコロナ放電を防止する必要があり、そのため十分なバリアテープや巻き線層間テープを具備する方法や、各巻き線をセクションでセパレートする方式を採用するなど、結果としてコストの増加を招いてしまう問題があった。
【0031】
共振状態が実現していることの検出手段のさらなる形態としては、インバータ(Ui’)の駆動周波数が共振回路の共振周波数と一致したときは、インバータ(Ui’)から電流が多く流れる現象を利用するもので、インバータ(Ui’)の電流検出手段を設ける方法が考えられる。しかし、前記電流検出手段として例えば、抵抗値の小さな抵抗を用いた場合、放電ランプ点灯をしている定常動作においても定常的に電流が流れるため、不要な抵抗損失を招くことになるし、あるいは、カレントトランスをインバータ(Ui’)の出力に配置する方式では、コストが増加する問題がある。
【0032】
共振状態が実現していることの検出手段のさらなる形態として、インバータの電流位相検出手段とインバータの電圧位相検出手段と設け、検出されたインバータ電流位相とインバータ電圧位相とを比較する方式があり、実際、所定の位相関係が実現するようフィードバックを行うものが提案されている。しかし、この方式でも同様に、位相の比較判定のための回路、また電流検出のためのカレントトランスや電流検出用の抵抗が必要となり、コストを増大させる欠点がある。
【0033】
以上において述べたような、共振状態が実現していることの検出手段を有して、インバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように設定し、連続的な高電圧発生を目指すものに関して、従来より、様々な技術が提案されて来た。
【0034】
例えば、特開昭52−121975号には、動作周波数を掃引し、共振条件を検出したときに動作周波数を固定するものとして、共振周波数の第3次高調波でインバータを駆動するものであってインバータが共振周波数を捜し、その周波数で動作するようにするものが記載されている。
【0035】
例えば、特開昭55−148393号には、自励発振的に共振状態を維持するものとして、ガス入り放電ランプの起動時に、共振回路に流れる電流を検出する手段を用意し変化率が最大または最大に近い時に、共振回路に印加された電圧を転流することによってインバータが共振回路の共振周波数に保たれるようにするものが記載されている。
【0036】
また、特開2000−012257号には、同様に、自励発振的に共振状態を維持するものとして、共振状態で放電ランプを始動する際、インダクタとコンデンサの共振回路の自励発振で自動同調を行うものが記載されている。
【0037】
さらに、特表2001−501767号には、ガス放電ランプの状態を検出するように構成された検出手段を有し、制御回路手段は、検出手段の出力の関数としてインバータの周波数を制御するもの、あるいは、電力検出手段に応答して、インバータの周波数を有効に変化させるフィードバック回路手段を有し、ガス放電ランプに供給される電力が所定レベル近くに維持されるもの、あるいは、インバータは、ガス放電ランプが始動するまでおよび始動した後に、共振周波数に近づくように低下する周波数で連続的に作動するように構成され、インバータは、少なくともガス放電ランプの作動がグローモードからアークモードに変化するまで、特定周波数近くの周波数に近づくように低下する周波数で作動するように構成され、インバータは、ガス放電ランプの作動がグローモードからアークモードに変化した後、他の共振周波数より高い周波数で作動するように構成されることにより、ガス放電ランプが、始動され、グローモードからアークモードに遷移し、かつ定常状態で作動するもの、あるいは、ガス放電ランプが始動するまで、特定周波数から共振周波数に近づくように低下する周波数でインバータを作動させるステップと、ガス放電ランプのグローからアークへの遷移が生じるまで、特定周波数の近くにに向かって増大する周波数でインバータを作動させるステップと、ガス放電ランプが安定作動状態になる他の共振周波数より高い周波数でインバータを作動させるステップとを更に有するものが記載されている。
【0038】
さらに、特表2001−511297号には、ブリッジの駆動周波数における共振周波数の検出と決定方法に関する方式が提案されており、ランダムサンプリングによるサーチ動作を行い、例えば高圧ガス放電ランプのブレークダウンおよびガス放電ランプの点火が生じるまで連続して行われる方式が記載されている。
【0039】
さらに、特表2001−515650号には、無負荷・グロー・アークの各フェイズでブリッジ周波数を低下させるものであって、最初に共振イグナイタを公称共振周波数より十分高い周波数で励起するように制御し、ランプ端子電圧を監視しながら励起周波数を減少させるもの、あるいは、周波数を公称共振周波数に向って減少させると、ランプの端子電圧が増大するが、その周波数でランプ端子電圧が所定値に達するとコントローラは周波数の減少を停止し、ランプをこの周波数で指定最小持続時間に亘って励起し続けるものが記載されている。
【0040】
さらに、特開2004−095334号において、インバータが駆動する駆動電圧の周波数を検出する周波数検出手段と、共振回路を駆動して生じた電圧を検出する電圧検出手段を共振回路部に設け、駆動周波数を高い周波数から低い周波数と変化させ、電圧検出手段が最大電圧に達した際の周波数を駆動周波数とするもの、あるいは、駆動周波数を高い周波数から低い周波数と変化させ、電圧検出手段が閾電圧に達した際の周波数を駆動周波数とするもの、また、前記周波数の検出は、放電ランプを始動させ得る始動電圧より小さい定電圧を共振回路に印加するもの、また、電圧検出手段として、共振インダクタの2次巻き線を利用したもの、あるいは、共振コンデンサと共振インダクタとの接続ノード測定するものが記載されている。
【0041】
また、特開2004−127656号には、放電ランプを点灯するために、インバータ回路の出力電圧の周波数を、共振回路の奇数次共振周波数よりも低い周波数で起動した後に、出力電圧の周波数を次第に上昇させ、または段階的に高くし、共振回路の振動電圧の振幅が所定値以上になったときにおける出力電圧の周波数に、インバータ回路の出力電圧の周波数を設定するもの、あるいは、所定時間内に、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上にならない場合、出力電圧の周波数が上限値まで達した後に、周波数を高くするときにおける速度と同等の速度で、起動時の周波数である初期周波数を目標に、周波数を下げる過程で、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上になれば、そのときの周波数よりも数%低い周波数に設定し、一方、周波数を下げる過程で、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上にならずに、初期周波数に達した場合は、周波数を再度高くする動作を、点灯するまで、または予め定めた最大時間が経過するまで、繰り返すものが記載されている。
【0042】
さらに、特開2004−327117号には、インバータ回路部で発生する高周波電圧の動作周波数は、高圧パルスを出力できるよう、共振回路の共振周波数又はその奇数倍の周波数近傍に設定され、且つ、高圧パルスを略一定に出力できるように周波数掃引しており、共振昇圧電圧を検出し、略目標電圧値になった時点で共振昇圧電圧を停止し、あるいは動作周波数を固定し一定期間略目標電圧値で出力継続するもの、あるいは、略目標電圧値になった時点で動作周波数をそれまでの掃引方向と逆方向に掃引し、一定期間、略目標電圧値以下で出力継続するもの、あるいは、共振電圧検出手段が共振回路のインダクタンスの二次巻線により構成されたもの、あるいは、共振電圧検出手段が共振回路のコンデンサの両端に接続された分圧抵抗により構成されたもの、あるいは、周波数掃引の制御をマイクロプロセッサでコントロールしているものが記載されている。
【0043】
さらに、特表2005−520294号には、自動同調を行うために、3次共振の自動フィードバックによる同調に関して、例えば、共振回路に生じる高電圧出力の検出部としてアンテナ回路を用いPLL回路を用いてフィードバックを行うものが記載されている。
【0044】
さらに、特表2005−515589号には、自動同調を行うものとしてVCOとマイクロプロセッサを使ったフィードバックを行うもの、電圧、電流、高電圧をフィードバックするものが記載されている。
【0045】
さらに、特表2005−507554号には、コイルの自己誘導係数及びコンデンサの静電容量の値と時間変動スイッチング周波数とが、周波数変動の間のある時点で前記時間変動スイッチング周波数の奇数次の高調波周波数がコイル及びコンデンサの共振周波数に少なくとも近づくように、互いに関連して決定されることを特徴とするバラスト装置について記載されている。
【0046】
さらに、特表2005−507553号には、イグナイタ動作中のブリッジは高次共振動作を行うべく、放電ランプの両端電圧を測定する手段を設けて放電開始前に共振動作を行うためのブリッジの駆動周波数を掃引して目標電圧に達したところで周波数固定とした方式のもの、また、点灯後は段階的に低周波動作に移行する方法について記載されている。
【0047】
さらに、特開2007−103290号において、共振回路に発生する電圧を測定する手段を設け無負荷時に共振動作を行うためブリッジの周波数を掃引し、目標電圧に達したところで周波数を固定するものが記載されている。
【0048】
さらに、特開2007−173121号において、インバータの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に連続あるいは段階で変動し、共振電圧から得られる値を基に、共振電圧が第2電圧レベルに達したか否かを判別し、達した旨の判別結果が得られた後は、共振電圧を第2電圧レベルに維持するように可変の周波数を固定するものが記載されている。
【0049】
さらに、特開2007−179869号において、放電ランプの始動シーケンスにおける周波数制御回路は、同調度信号を監視しながら周波数可変発振器の上限周波数または下限周波数の何れか一方の周波数から開始して他方の周波数を超えない範囲まで掃引するよう周波数制御信号を変化させる掃引動作を行い、周波数制御回路は掃引動作の終了後、共振回路の共振周波数に対する周波数制御信号の値を決定して周波数可変発振器に入力するもの、また、共振周波数のドリフトに対応するために、周波数制御信号の値を決定後、狭い範囲に亘る掃引動作を継続するもの、さらに、共振回路を並列共振回路を用いた構成としたものであって共振インダクタをトランス構造とし同調度信号を監視できるよう構成したものが記載されている。
【0050】
さらに、特開2008−027705号において、第一の電圧測定手段として共振インダクタの2次巻き線にコンデンサと抵抗を接続した構成とし共振作用による高電圧出力のフィードバックに用いるものが記載されている。
【0051】
さらに、特開2008−269836号において、共振作用による高電圧出力のフィードバックに持いるため、共振インダクタの2次巻き線にコンデンサと抵抗を接続した構成とし共振電圧を間接的に検出し、インバータ駆動周波数を目標の電圧に達した際の周波数に固定するものが記載されている。
【0052】
ここまで、共振状態が実現していることの検出手段を有して、インバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように設定し、連続的な高電圧発生を目指すものに関して、従来技術の提案について説明してきた。しかしながら、このことは、少なくとも、共振状態が実現していることの検出手段、およびインバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように制御する手段が必要であることを意味し、システムの複雑化が避けられず、コストの増加を招く問題があった。さらに、共振コンデンサや共振インダクタは、電流耐量の大きな素子を使用して構成する必要があるため、さらなるコストの増加を招く問題がある。このことについて、以下において、前記図15の放電ランプ点灯装置に関して説明する。
【0053】
前記したように、LC共振周波数は、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量の積の値で決まるため、もし、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスを小さく抑えたければ、前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量を大きな値にしなければならなくなる。何となれば、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量の両方を小さくするならば、共振周波数が極めて高くなってしまい、前記インバータ(Ui’)を動作させることが困難になってしまうからである。しかし、前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量を大きな値にすると、共振現象により十分な電圧の高まりを得ようとするならば、前記共振インダクタ(Lh’)と前記共振コンデンサ(Ch’)の直列接続回路に流れる電流、すなわち共振電流が非常に大きな値となってしまうという問題に直面することになる。
【0054】
何となれば、この共振電流は、前記共振コンデンサ(Ch’)と前記共振インダクタ(Lh’)はもちろん、前記給電回路(Ux’)や前記インバータ(Ui’)を含めて、回路全体を流れることになるが、そのため、各部の回路素子は、大きな共振電流に耐えられるように、電流定格の大きなものを使用する必要があり、装置の大型化やコストの増大が避けられなくなる。
【0055】
共振周波数が極めて高くなってしまうとしても、高次共振で動作させるならば、前記インバータ(Ui’)の動作周波数を低く抑えた上で、前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量を小さい値にする方策も考えられが、前記したように、共振電流は前記インバータ(Ui’)を流れるため、特にスイッチ素子のオン抵抗が比較的大きいため、共振回路としてのQ値が小さい。そのため、共振の減衰が激しく、高い高次共振は利用できないことがわかる。
【0056】
したがって、LC直列共振を利用する限り、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスを小さくすることはできず、必然的に大きな値のものが必要になってしまう。しかしながら、ランプの始動を終えて定常点灯状態に入り、ランプの光を利用する段階では、前記共振インダクタ(Lh’)の大きいインダクタンスは非常に邪魔な存在になってしまう。具体的に言うと、前記共振インダクタ(Lh’)、あるいはイグナイタのような、大きいインダクタンスがインバータのより後段に挿入されている場合は、前記した極性反転時の光束のオーバーシュートや振動などの不都合な現象を助長してしまう問題がある。
【0057】
このような、LC直列共振を利用する場合の問題から免れるには、LC直列共振を利用せずに、例えば、少なくとも始動時は、ランプを直流で駆動する方法が考えられる。例えば、特許第4244914号には、無負荷開放電圧を直流で印加してその間にイグナイタ動作を行い、然る後に交流動作するものが提案されている。
【0058】
前記特許第4244914号の提案のように、LC直列共振を利用せず、また、グロー放電時の電極加熱に対する特段の加勢機構を他に有さずに、始動時において、イグナイタによる放電開始後は、単純に直流駆動するものの場合は、グロー放電からアーク放電への遷移を促進する機構は、印加される無負荷開放電圧の高さしか無く、したがって給電回路は、例えば300V程度の高い無負荷開放電圧を発生することが必要になる。そうすると、インバータは給電回路よりも後段に設けられているため、インバータを構成する素子として、電圧耐量の高いものを選択しなければならなくなる。ところが、FETなどのスイッチング素子は、電圧耐量が高いものほど高価である上に、損失が大きくなるため、放熱対策のためのコストが必要になるため、全体としてコスト高になり、また小型軽量化ができないなどの問題がある。
【0059】
さらに、前記特許第4244914号の提案のように、始動時において、単純に直流駆動するものの場合は、注意深く制御しなければ、ランプにダメージを与える可能性がある点に注意すべきである。始動時においては、主放電が開始すると、前記放電ランプ(Ld)の前記電極(E1,E2)のうち、陰極である側の電極に、水銀などの凝結・凝固物が付着していない場合は、グロー放電が発生する。このような凝結・凝固物が付着している場合は、フィールドエミッションと呼ばれるアーク放電様の放電が発生し、放電によりこれらの凝結・凝固物が蒸発して枯渇するとグロー放電に移行する。そして、グロー放電によって熱電子放出によるアーク放電を生ずるに足る電極温度に到達すると、アーク放電に移行する。
【0060】
この事情は、ランプを直流または交流の何れで駆動する方式であっても同様であるため、高い電圧のグロー放電の状態と、低い電圧のフィールドエミッションまたはアーク放電の状態との間の遷移の発生が不可避であることが判る。ただし、前記した特許第4244914号に記載のような、少なくとも始動時に直流駆動を行う方式の場合は、高い電圧のグロー放電の状態から、低い電圧のフィールドエミッションまたはアーク放電の状態への遷移の際に、給電回路(Ux’)の平滑コンデンサに蓄えられた電荷が突入電流として放電ランプに流れ、したがって、この突入電流が過大にならないよう注意深く制御しなければ、ランプにダメージを与える可能性がある。
【0061】
その点において、LC直列共振を利用するもののように、ランプに直列にインダクタが挿入され、インバータ(Ui’)を高周波動作させる方式の場合は、インダクタのインピーダンスが高いため、突入電流のピーク値が抑えられ、したがって、ランプにダメージを与える可能性も低く抑えられる利点がある。
【0062】
以上において述べた、LC直列共振を利用するもののように、ランプに直列にインダクタが挿入され、インバータ(Ui’)を高周波動作させる方式が有する利点は、ランプでの絶縁破壊の発生からアーク放電への移行に至るステップにおいて発現されるものであった。しかし、放電ランプ点灯装置として安定点灯状態を実現するためには、ランプにおいて絶縁破壊を発生し、アーク放電への移行が完了した後において、さらに、インバータの駆動周波数を、高い共振周波数から、最終的な安定点灯状態の低周波に移行さるステップを、安全かつ確実に完了させなければならないという問題が残っている。
【0063】
例えば、特開2007−242586号においては、始動時に直流または交流で駆動しつつ、ランプ始動に必要な高電圧を高頻度に重畳する方式が提案されているが、交流で始動した場合に、最終的な安定点灯状態の低周波まで周波数を下げる際の下げ方に関する態様については言及されていなかった。
【0064】
従来技術全般のなかでは、放電ランプの高電圧印加時と安定時とのインバータの駆動周波数の切り替えに関する技術には、グロー放電からアーク放電へ確実に移行させる共振始動の機能をその過程に含めるもの、あるいは、高周波を印加する始動方式に見られる放電ランプ電極の片側方向にしか電流が流れない非対称放電現象を短時間で収束させるとともに、電極に対するダメージを抑制しつつ放電ランプ電極の両方向にて安定的に移行点灯させる機能をその過程に含めるもの、などが挙げられる。
【0065】
これらを改善するためインバータの周波数を効果的に切り替えたり変化させる方法、あるいは、放電ランプへの電流値を切り替える方法が従来から提案されている。
【0066】
特開平03−167795号には、放電ランプの放電開始が検出されたとき、スイッチ素子の動作周波数を無負荷時の周波数から点灯時の周波数に徐々に移動させるもので非対称放電となった際、周波数を急激に落とさないため点灯している方向に極端な過電流を流すことを防止しているものが記載されている。
【0067】
さらに、特開平04−121997号には、ランプが始動した後は共振周波数またはその近傍の周波数から低い周波数に切り替える、あるいは連続して周波数を低減させるようしたものが記載されている。
【0068】
さらに、特開平04−342990号には、放電ランプの始動時、出力周波数がLC直列共振回路における共振周波数の近傍の周波数にてインバータを駆動させ、ランプ電流検出手段の出力が所定値を超えると、インバータの出力または周波数を減少した予め決定された値に切り替わるものが記載されている。
【0069】
さらに、特開平07−169583号には、直流−交流変換回路の出力電圧の周波数を変化させるための周波数制御手段を設け、点灯判別手段により放電ランプの不点灯状態が判別された時に周波数制御手段が直流−交流変換手段の出力電圧の周波数をインダクタ及びコンデンサによる直列共振を起こすに足る値にまで高め、また、点灯判別手段により放電ランプの点灯状態が判別された時に周波数制御手段が直流−交流変換回路の出力電圧の周波数を低くするものが記載されている。
【0070】
さらに、特開平07−230882号には、始動した後から所定期間は、直列共振回路の共振周波数以上且つ共振周波数の近傍周波数でインバータ部を連続的に動作させるものが記載されている。
【0071】
さらに、特開平08−124687号には、共振回路を無負荷時のみ高次共振周波数でフルブリッジを動作させ、点灯したら低い周波数の電圧をランプに印加するための周波数切替制御回路を持つものが記載されている。
【0072】
さらに、特開平11−265796号には、放電ランプが点灯状態に移行したと判断した際は、周波数を減少した予め決定された値に切り替わるものが記載されている。
【0073】
さらに、特開2004−265707には、LC共振回路を用いてフルブリッジを高次共振周波数動作し、点灯後は低い周波数の電圧をランプに印加するもの、共振回路は高電圧を発生する期間と直流電圧を出力する期間、または異なる期間とを交互に繰り返すことを特徴としたものが記載されている。
【0074】
さらに、特開2008−171742には、ランプ始動開始から所定時間経過後に根元放電か先端放電かを判別し、先端放電である場合は高周波動作から低周波定常動作に切り替えるが、根元放電である場合は高周波動作を継続するものが記載されている。
【0075】
さらに、特開2007−005260には、放電ランプが全波放電か非対称放電かを判断する判断回路が全波放電と判断すると放電ランプを所定期間内に安定点灯状態に移行させるように設定された定電流を放電ランプに供給し、一方、判断回路が半波放電と判断すると前記定電流よりピーク値の大きい電流を放電ランプDLに供給するように、両電極間に流す電流を切替える切替え部を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開平02−215091号
【特許文献2】特開平03−102798号
【特許文献3】特開平04−017296号
【特許文献4】特開平04−272695号
【特許文献5】特開平10−284265号
【特許文献6】特開2000−195692号
【特許文献7】特開2001−338789号
【特許文献8】特開2002−151286号
【特許文献9】特開2004−146300号
【特許文献10】特開2004−221031号
【特許文献11】特開2005−038813号
【特許文献12】特開2005−050661号
【特許文献13】特開2005−038814号
【特許文献14】特開2008−243629号
【特許文献15】特開昭52−121975号
【特許文献16】特開昭55−148393号
【特許文献17】特開2000−012257号
【特許文献18】特表2001−501767号
【特許文献19】特表2001−511297号
【特許文献20】特表2001−515650号
【特許文献21】特開2004−095334号
【特許文献22】特開2004−127656号
【特許文献23】特開2004−327117号
【特許文献24】特表2005−520294号
【特許文献25】特表2005−515589号
【特許文献26】特表2005−507554号
【特許文献27】特表2005−507553号
【特許文献28】特開2007−103290号
【特許文献29】特開2007−173121号
【特許文献30】特開2007−179869号
【特許文献31】特開2008−027705号
【特許文献32】特開2008−269836号
【特許文献33】特開平03−167795号
【特許文献34】特開平04−121997号
【特許文献35】特開平04−342990号
【特許文献36】特開平07−169583号
【特許文献37】特開平07−230882号
【特許文献38】特開平08−124687号
【特許文献39】特開平11−265796号
【特許文献40】特開2004−265707号
【特許文献41】特開2008−171742号
【特許文献42】特開2007−005260号
【特許文献43】特開2007−242586号
【特許文献44】特許第4244914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0077】
前記したように、共振始動方式を用いる場合は、共振状態が実現していることの検出手段、およびインバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように制御する手段が必要であること、さらに共振コンデンサや共振インダクタは、電流耐量の大きな素子を使用して構成する必要があることにより、コストの増加を招く問題があった。一方、前記したように、始動時に直流駆動を行う方式の場合は、インバータのスイッチング素子に電圧耐量が高いものが必要で、全体としてコスト高になり、また小型軽量化に不利であり、さらに、注意深く制御しなければ、ランプにダメージを与える可能性がある問題があった。
【0078】
そこで、これらの問題を全て解決する方策として、LC共振を用いないで高い周波数の交流で駆動して始動する方式が考えられる。ただし、この方式の場合においても、解決しなければならない課題として、前記した、インバータの駆動周波数を、高い周波数から、最終的な安定点灯状態の低周波に移行さるステップを、安全かつ確実に完了させなければならない点がある。グロー放電またはアーク放電状態に移行しても、ランプに封入された放電物質が全て気化するまでは、放電の立ち消えが発生する可能性が常に存在する。例えば、水銀が封入された高圧水銀ランプの場合、陰極である電極に付着している液体水銀からは、フィールドエミッションと呼ばれるアーク放電が発生するが、液体水銀が枯渇すると、グロー放電に戻ろうとするが、グロー放電はアーク放電より電圧が高いため、給電回路がグロー放電を維持するに足る電圧を直ちに供給できない場合は、放電が立ち消えてしまう可能性がある。この現象の発生確率がゼロになるよう、給電回路の能力を高める方策を講じるやり方もあるが、一般的にコスト増を招くため現実的ではなく、したがって、放電の立ち消えが発生したときに、直ちに始動が再開できる構成とする必要がある。
【0079】
また、始動によって、ランプにおいて絶縁破壊を発生させ、放電開始に成功しても、高周波交流の両方向の電流の向きに対して、グロー放電からアーク放電への移行を短期間で完了させることができなければ、放電ランプの電極へのスパッタ現象が生じる時間が長くなりランプバルブ内面の黒化を生じて、結果的に寿命の劣化を引き起こす恐れがある。特に、片側への電流の向きの放電がアーク放電に移行しない、いわゆる非対称放電が、長期間にわたって、例えば低周波移行後まで持続した場合、前記したランプ寿命への悪影響がある。
【0080】
本発明が解決しようとする課題は、非対称放電の状態の解消を促進させて、始動時に放電ランプの確実な点灯性を確保することを達成した放電ランプ点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0081】
本発明の請求項1の放電ランプ点灯装置は、一対の主放電のための電極(E1,E2)が対向配置された放電ランプ(Ld)を点灯するための放電ランプ点灯装置であって、前記放電ランプ(Ld)に給電する給電回路(Ux)と、前記給電回路(Ux)を制御する給電制御回路(Fx)と、前記給電回路(Ux)の後段に設置され前記放電ランプ(Ld)に印加する電圧を極性反転させるインバータ(Ui)と、前記インバータ(Ui)を周期駆動するための周期的信号であるインバータ駆動信号(Sj)を生成する周期駆動回路(Uj)と、1次側巻線(Ph)および2次側巻線(Sh)を有するトランス(Th)と、前記1次側巻線(Ph)に電圧印加駆動を行うための間欠的電圧印加手段(Uk)とを有し、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)は、前記インバータ(Ui)の出力と前記放電ランプ(Ld)の主放電のための前記電極とを接続する経路の途中に介挿することにより、前記2次側巻線(Sh)に発生した電圧が、前記インバータ(Ui)の出力電圧に重畳して前記放電ランプ(Ld)の前記電極(E1,E2)間に印加可能であり、前記放電ランプ(Ld)の始動シーケンスにおいて、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)より高い始動初期周波数(fini)となるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成するとともに、前記給電制御回路(Fx)は、前記放電ランプ(Ld)の放電を維持するに足る電圧である無負荷開放電圧(Vop)を前記給電回路(Ux)が出力するよう制御し、然る後、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が前記始動初期周波数(fini)であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成し、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)に達すると、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成するとともに、前記給電制御回路(Fx)は、前記放電ランプ(Ld)の放電を維持するに足る電流を前記給電回路(Ux)が出力するよう制御することを特徴とするものである。
【0082】
本発明の請求項2の放電ランプ点灯装置は、請求項1の発明において、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)に達すると、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する前に、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)より低い第2限界周波数(fj2)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成した上で、前記インバータ(Ui)の周波数が前記安定点灯周波数(fstb)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作を挿入することを特徴とするものである。
【0083】
本発明の請求項3の放電ランプ点灯装置は、請求項1から2の発明において、前記周期駆動回路(Uj)による、前記インバータ(Ui)の周波数が前記始動初期周波数(fini)であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作と並行して、前記給電制御回路(Fx)は、前記無負荷開放電圧(Vop)より低い所定の電圧(Vo2)に達するまで前記給電回路(Ux)が徐々に低下する電圧を出力するよう制御することを特徴とするものである。
【0084】
本発明の請求項4の放電ランプ点灯装置は、請求項1から3の発明において、前記トランス(Th)に接続されたコンデンサ(Ch)を有し、前記2次側巻線(Sh)に発生する電圧の自由振動周波数が3MHz以下になるよう前記コンデンサ(Ch)の静電容量が設定されており、前記放電ランプ(Ld)の始動期間においては、前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、8000回/秒以上の平均頻度で電圧印加駆動を行い、前記放電ランプ(Ld)の放電が開始した後も電圧印加駆動を継続する期間を有することを特徴とするものである。
【0085】
本発明の請求項5の放電ランプ点灯装置は、請求項4の発明において、前記インバータ(Ui)より後段における、前記放電ランプ(Ld)の主放電電流の経路に沿うインダクタンス成分の合計が160μH以下となるように構成したことを特徴とするものである。
【0086】
本発明の請求項6の放電ランプ点灯装置は、請求項4から5の発明において、前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、電圧印加駆動用電源(Mh)と、電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)とで構成され、前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)のオン状態のときに前記1次側巻線(Ph)に電圧を印加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0087】
本発明を適用することにより、非対称放電の状態の解消を促進させて、始動時に放電ランプの確実な点灯性を確保することを達成した放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図を表す。
【図2】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態の簡略化された構成を表す。
【図3】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態の簡略化された構成を表す。
【図4】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態の簡略化された構成を表す。
【図5】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態の簡略化された構成を表す。
【図6】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【図7】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【図8】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【図9】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図を表す。
【図10】本発明に関連する放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【図11】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図を表す。
【図12】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図を表す。
【図13】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図を表す。
【図14】本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態における波形の実測された図を表す。
【図15】従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化された構成を表す。
【図16】従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【図17】従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
先ず、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図である図1を用いて説明する。降圧チョッパや昇圧チョッパなどの方式のスイッチング回路などから構成される給電回路(Ux)は、放電ランプ(Ld)の状態あるいは点灯シーケンスに応じて、適合する電圧・電流を出力する。フルブリッジ回路などから構成されるインバータ(Ui)は、前記給電回路(Ux)の出力電圧を、例えば周期的に反転した交流電圧に変換して出力し、前記放電ランプ(Ld)の一対の主放電のための電極(E1,E2)に対し、トランス(Th)を介して電圧を印加する。間欠的電圧印加手段(Uk)は、前記トランス(Th)の1次側巻線(Ph)に対して間欠的に電圧印加駆動できるよう、前記1次側巻線(Ph)に接続される。
【0090】
なお、ランプの始動に際して印加する、無負荷開放電圧は典型的には略200V程度、グロー放電時のランプ電圧は典型的には100〜200V、アーク放電移行直後のランプ電圧は典型的には10V程度であり、前記給電回路(Ux)は、グロー放電時およびアーク放電時には、流れる電流が規定の制限電流値を超えないように制御される。
【0091】
始動時においては、前記給電回路(Ux)は、前記放電ランプ(Ld)に無負荷解放電圧を印加するための電圧を出力し、一方、前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、前記1次側巻線(Ph)に対して、高い頻度で電圧印加駆動を行う。この電圧印加駆動の頻度としては、例えば、8000回/秒以上の平均頻度で電圧印加駆動を行うことが好適である。なお、電圧印加駆動の頻度を、周波数ではなく、平均頻度によって規定するのは、電圧印加駆動は、必ずしも周期的に行う必要はなく、周期性の乱れた間欠的な駆動でも構わないからである。
【0092】
前記トランス(Th)では、前記1次側巻線(Ph)に印加されまたは発生する電圧に対し、前記2次側巻線(Sh)において、その巻数比に応じて変圧された電圧が誘起される。電圧印加駆動の期間中においては、前記トランス(Th)に励磁エネルギーが蓄えられ、電圧印加駆動が終了すると、前記トランス(Th)のフライバック作用により、蓄えられた励磁エネルギーが解放されるため、前記2次側巻線(Sh)に高い電圧が発生する。前記2次側巻線(Sh)に発生させる高い電圧としては、例えば、ピーク電圧で2kV〜5kV程度であり、この電圧は、振動しながら徐々に減衰する。
【0093】
前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、このような電圧印加駆動の繰り返しにより、前記放電ランプ(Ld)の主放電のための電極(E1,E2)には、前記給電回路(Ux)から出力された電圧に前記2次側巻線(Sh)から出力された振動する高い電圧が重畳された状態が準連続的に実現され前記放電ランプ(Ld)の放電空間において絶縁破壊が生じ、ランプの主放電を開始することができる。
【0094】
図2は、本発明の放電ランプ点灯装置で使用することのできる図1に記載の前記間欠的電圧印加手段(Uk)の構成の一例を示すものである。前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、電圧印加駆動用電源(Mh)と、MOSFET等を用いた電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)とが直列に接続されて構成され、前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)のオン状態のときに、1次側巻線(Ph)を電圧印加駆動することができる。前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)の制御は、間欠駆動制御回路(Ul)からの間欠駆動制御信号(Sl)に基づき、ゲート駆動回路(Gkh)を介して行われる。
【0095】
前記放電ランプ(Ld)に印加される高電圧のパルス幅として、ある下限値以上を確保するため、したがって、前記2次側巻線(Sh)の電圧振動の振動周波数の上限値に制限を設けるために、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)に、適当な静電容量を有するコンデンサ(Ch)を並列に接続することが好適である。また、この場合、前記2次側巻線(Sh)の電圧振動の振動周波数の前記した上限値が3MHzになるようにすることが好適である。
【0096】
前記2次側巻線(Sh)の電圧振動の前記振動周波数は、放電ランプ(Ld)に放電が発生していないとき、または、放電ランプ(Ld)が放電ランプ点灯装置に接続されていないときに、前記間欠的電圧印加手段(Uk)の電圧印加駆動の合間の期間において、前記2次側巻線(Sh)に発生する電圧振動の周波数で、通常、主として前記コンデンサ(Ch)の静電容量と前記2次側巻線(Sh)のインダクタンスとから構成される、LC共振回路の共振周波数と考えてよく、これら静電容量とインダクタンスの積に依存して計算される。ただし、前記2次側巻線(Sh)に、浮遊静電容量などの何らかのコンデンサ成分が含まれる場合は、前記した共振周波数の計算結果に補正が加わる。
【0097】
前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)がオン状態になった瞬間において、2次側巻線(Sh)に接続された前記コンデンサ(Ch)を充電するための電流が、前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)にサージ的に流れてこれを破損する可能性がある場合は、抵抗やコイルなどの電流制限素子を前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)に直列に挿入してもよい。前記間欠駆動制御回路(Ul)は、前記した前記間欠駆動制御信号(Sl)による電圧印加駆動の平均頻度として所望の周波数で発振する、簡単なマルチバイブレータで構成することができる。そして、放電ランプの始動シーケンスのなかで、前記したランプのアーク放電への移行の完了を待って、前記間欠駆動制御回路(Ul)は前記間欠駆動制御信号(Sl)の生成を止めるようにすればよい。
【0098】
図3は、本発明の放電ランプ点灯装置で使用することのできる前記給電回路(Ux)の具体化された一例を示すものである。降圧チョッパ回路を基本とした前記給電回路(Ux)は、PFC等のDC電源(Mx)より電圧の供給を受けて動作し、前記放電ランプ(Ld)への給電量調整を行う。前記給電回路(Ux)においては、FET等のスイッチ素子(Qx)によって前記DC電源(Mx)よりの電流をオン・オフし、チョークコイル(Lx)を介して平滑コンデンサ(Cx)に充電が行われ、この電圧が前記放電ランプ(Ld)に印加され、前記放電ランプ(Ld)に電流を流すことができるように構成されている。
【0099】
なお、前記スイッチ素子(Qx)がオン状態の期間は、前記スイッチ素子(Qx)を通じた電流により、直接的に前記平滑コンデンサ(Cx)への充電と負荷である前記放電ランプ(Ld)への電流供給が行われるとともに、チョークコイル(Lx)に磁束の形でエネルギーを蓄え、前記スイッチ素子(Qx)がオフ状態の期間は、前記チョークコイル(Lx)に磁束の形で蓄えられたエネルギーによって、フライホイールダイオード(Dx)を介して前記平滑コンデンサ(Cx)への充電と前記放電ランプ(Ld)への電流供給が行われる。なお、先に図2に関連して説明した、図1における前記給電回路(Ux)の停止状態とは、前記スイッチ素子(Qx)がオフ状態で停止している状態を言う。
【0100】
前記降圧チョッパ型の前記給電回路(Ux)においては、前記スイッチ素子(Qx)の動作周期に対する、前記スイッチ素子(Qx)がオン状態の期間の比、すなわちデューティサイクル比により、前記放電ランプへの給電量を調整することができる。ここでは、あるデューティサイクル比を有するゲート駆動信号(Sg)が給電制御回路(Fx)によって生成され、ゲート駆動回路(Gx)を介して、前記スイッチ素子(Qx)のゲート端子を制御することにより、前記したDC電源(Mx)よりの電流のオン・オフが制御される。
【0101】
前記放電ランプ(Ld)の電極(E1,E2)間を流れるランプ電流と、電極(E1,E2)間に発生するランプ電圧とは、給電電流検出手段(Ix)と、給電電圧検出手段(Vx)とによって、検出できるように構成される。なお、前記給電電流検出手段(Ix)については、シャント抵抗を用いて、また、前記給電電圧検出手段(Vx)については、分圧抵抗を用いて簡単に実現することができる。
【0102】
前記給電電流検出手段(Ix)よりの給電電流検出信号(Si)、および、前記給電電圧検出手段(Vx)よりの給電電圧検出信号(Sv)は、前記給電制御回路(Fx)に入力される。前記給電制御回路(Fx)は、ランプ始動時の、ランプ電流が流れていない期間においては、無負荷開放電圧をランプに印加するために所定の電圧を出力するよう、前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する。また、前記給電制御回路(Fx)は、ランプが始動して放電電流が流れると、目標ランプ電流が出力されるよう前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する。ここで、前記目標ランプ電流は、前記放電ランプ(Ld)の電圧に依存して、前記放電ランプ(Ld)に投入される電力が所定の電力となるような値を基本とする。ただし、始動直後は、前記放電ランプ(Ld)の電圧が低く、定格電力を供給できないため、前記目標ランプ電流は、初期制限電流と呼ばれる一定の制限値を超えないように制御される。そして温度上昇とともに前記放電ランプ(Ld)の電圧が上昇し、所定の電力投入に必要な電流が前記初期制限電流以下になると、前記した所定の電力投入が実現できる状態に滑らかに移行する。
【0103】
図4は、本発明の放電ランプ点灯装置で使用することのできるインバータ(Ui)の簡略化された一例を示すものである。インバータ(Ui)は、FET等のスイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)を用いたフルブリッジ回路により構成してある。それぞれのスイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)は、それぞれのゲート駆動回路(G1,G2,G3,G4)により駆動され、前記ゲート駆動回路(G1,G2,G3,G4)は、一方の対角要素の前記スイッチ素子(Q1)と前記スイッチ素子(Q3)がオン状態の位相においては、他方の対角要素の前記スイッチ素子(Q2)と前記スイッチ素子(Q4)はオフ状態に維持され、逆に他方の対角要素の前記スイッチ素子(Q2)と前記スイッチ素子(Q4)がオン状態の位相においては、一方の対角要素の前記スイッチ素子(Q1)と前記スイッチ素子(Q3)はオフ状態に維持されるよう、インバータのインバータ駆動回路(Uc)により生成されるインバータ制御信号(Sf1,Sf2)によりゲート駆動回路(G1,G2,G3,G4)を介して制御される。前記した2つの位相の切換えを行うときは、前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)の全てがオフ状態になる、デッドタイムと呼ばれる期間が挿入される。
【0104】
なお、前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)が例えばMOSFETである場合は、ソース端子からドレイン端子に向かって順方向となる寄生ダイオードが素子自体に内蔵されている(図示を省略)が、バイポーラトランジスタのような、前記寄生ダイオードが存在しない素子の場合は、前記した位相の切換え時、またはデッドタイムの期間において、インバータ(Ui)の後段に存在しているインダクタンス成分に起因する誘導電流が流れようとすることにより、逆電圧の発生により素子が破損される恐れがあるため、前記寄生ダイオードに相当するダイオードを、逆並列に接続することが望ましい。前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)は、前記周期駆動回路(Uj)から出力される前記インバータ駆動信号(Sj)の信号を受けたインバータ駆動回路(Uc)によって駆動される。
【0105】
ところで、グロー放電状態のランプへのエネルギー注入を効果的に行うためには、放電ランプ点灯装置の電圧はランプのグロー放電電圧を超える必要がある。前記したように、主放電が開始すると、前記放電ランプ(Ld)の前記電極(E1,E2)のうち、陰極である側の電極に、水銀などの凝結・凝固物が付着していない場合は、グロー放電が発生する。このような凝結・凝固物が付着している場合は、フィールドエミッションと呼ばれるアーク放電様の放電が発生し、放電によりこれらの凝結・凝固物が蒸発して枯渇するとグロー放電に移行する。そして、グロー放電によって熱電子放出によるアーク放電を生ずるに足る電極温度に到達すると、アーク放電に移行する。
【0106】
このようなアーク放電への移行が適切に行われるためには、グロー放電の期間内に、ランプに対して適切なエネルギー注入が行われる必要がある。もし、エネルギー注入が不足する場合は、主放電の立消えが起こる可能性があり、このときは、スタータによる絶縁破壊から再試行することが必要で、このようなことを何度も繰り返すとランプにダメージを与える危険性があるし、逆に、エネルギー注入が過大の場合も、当然ながらランプにダメージを与える危険性があるが、このときのダメージは、何れの場合もランプバルブの黒化として現れる。何となれば、そもそもグロー放電とは、比較的高い電圧による電界で加速された陽イオンが陰極に衝突する現象を伴うものであるが、陽イオンは電子と比較して重いため、これが電極に衝突したときにタングステンなどの電極材料を弾き飛ばす現象、すなわちスパッタを引き起こし、弾き飛ばされた電極材料がランプバルブの内面に付着するからである。
【0107】
ところで、エネルギーは、電力と時間の積で既定されるものであるが、前記したエネルギー注入が過大の場合のダメージは、電力が大きすぎる場合にのみ発生する。何となれば、投入電力が適当な大きさである限り、注入エネルギーは時間の経過とともに単調に増大し、これに伴って電極温度も上昇してグロー放電が終了し、電圧の低いアーク放電に移行することによって、ランプ自身が自動的にグロー放電でのエネルギー注入を打ち切り、注入エネルギーの過大を回避する自動制御機構が働くため、有害な程のランプバルブの黒化は生じない。しかし、これに対して投入電力が過大な場合は、アーク放電への移行を完了する前に、前記した自動制御機構が働く猶予無しに、瞬間的に大量の陽イオンによる電極攻撃が生じ、弾き飛ばされた大量の電極材料がランプバルブの内面に付着するために程度の重いランプバルブの黒化が生じてしまうものと推測される。
【0108】
前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、周期的または間欠的な電圧印加駆動は、このようなグロー放電状態のランプへのエネルギー注入を効果的に行うことに真に好適である。何となれば、前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、周期的または間欠的な電圧印加駆動は、謂わば、エネルギー注入をパルス的に行うものであるから、グロー放電の経過時間と言うよりも、エネルギーパルスの個数を1個づつ増加してゆき、アーク放電への移行可能な必要かつ十分なエネルギーを得るのを待って、必然的事象として、アーク放電に移行することができるからである。
【0109】
前記したように、グロー放電の期間においては、ランプのインピーダンスが小さいため、前記した前記トランス(Th)のフライバック作用による前記2次側巻線(Sh)に高い電圧は生じない。しかし、前記間欠的電圧印加手段(Uk)による前記1次側巻線(Ph)の電圧印加駆動時の所謂フォワード動作の期間に、前記2次側巻線(Sh)において誘起される電圧がグロー放電電圧よりも高くなるよう、電圧印加駆動用電源(Mh)の電圧と前記トランス(Th)の巻数比の関係を設定しておくことにより、仮に、無負荷開放電圧をランプに印加するために前記給電回路(Ux)が出力する電圧が、グロー放電の電圧よりも低くても、グロー放電状態のランプへのエネルギー注入を効果的に行うことができる。
【0110】
しかしながら、前記間欠的電圧印加手段(Uk)による電圧印加駆動の頻度が低すぎる場合は、前記したエネルギーパルスの注入から、次のエネルギーパルスの注入までの期間に生じる熱輻射によって電極の温度上昇が抑えられてしまい、熱電子放出によるアーク放電を生ずるに足る電極温度に到達することができなくなってしまう。そのため、電圧印加駆動の頻度の低さには下限が存在する。前記した前記間欠的電圧印加手段(Uk)による電圧印加駆動の平均頻度の下限値である8000回/秒は、この事情によって生ずる制限値であり、実験的に求めたものである。同様に、前記2次側巻線(Sh)の電圧振動に関する自由振動周波数の前記した上限値である3MHzは、電圧の正弦波的な自由振動波形の半波の時間幅が過小になって、ランプの主放電を有効に開始できなくなることを回避できるための制限値であり、実験的に求めたものである。
【0111】
図5は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態の簡略化された構成である。本図に示すように、インバータ(Ui)のスイッチ素子(Q1、Q3)はオン状態、スイッチ素子(Q2、Q4)はオフ状態であるとして、前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)を駆動したときに、2次側巻線(Sh)に発生する電圧がインバータ(Ui)の出力電圧に加算的に重畳されるよう、前記トランス(Th)の1次2次の巻線方向が設定されているならば、図の破線矢印に示す経路に流れる電流によって、グロー放電状態の放電ランプ(Ld)に電力を供給することができる。本発明のこのような機能を利用すると、無負荷開放電圧をランプに印加するために給電回路(Ux)が出力する電圧を低くして、前記給電回路(Ux)の最高出力電圧は、高々定常点灯状態のアーク放電電圧の程度に抑えることができる。
【0112】
このようにすると、前記給電回路(Ux)の後段に設置された前記インバータ(Ui)に入力され、出力する電圧も低く抑えられるため、前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)として、耐電圧の低いものが使用できる。耐電圧の低い前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)は、耐電圧の高いものに比して、価格が安い上にオン抵抗が小さく、定常点灯時の損失が低下するため、放熱対策が簡素化でき、総合的に高効率化、小型軽量化、低コスト化が実現できる。
【0113】
図6は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である。本図は、図1に記載の放電ランプ点灯装置において、高電圧を発生せしめる場合の例を示すもので、(a)は放電ランプ点灯装置の出力電圧(ノード(T41,T42)間の電圧)、(b)は前記間欠駆動制御信号(Sl)の状態、(c)は前記インバータ駆動信号(Sj)の状態を表し、前記インバータ駆動信号(Sj)の周期(Ti)毎に、高電圧が発生していることが見て取れる。
【0114】
前記インバータ(Ui)は、前記インバータ駆動信号(Sj)に従って、予め設定された始動初期周波数(fini)で駆動される。前記間欠駆動制御信号(Sl)は、前記インバータ駆動信号(Sj)の初期位相に対して期間(Tk)の遅れを持って、所定の期間(Tj)だけ活性化される。前記インバータ制御信号(Sf1,Sf2)に設けられる前記したデットタイムや前記トランス(Th)のインダクタンスによる極性反転遅れ時間などの不安定的な要因による影響を排除するべく、前記期間(Tk)が設定されている。
【0115】
前記間欠駆動制御信号(Sl)が活性化されている前記期間(Tj)では、前記トランス(Th)の前記1次側巻線(Ph)に電圧が印加されているが、前記放電ランプ(Ld)が絶縁破壊する前においては、前記トランス(Th)にとっては無負荷であるため、励磁エネルギーが蓄えられる。その際、前記放電ランプ(Ld)への印加電圧は、無負荷開放電圧をランプに印加するために前記給電回路(Ux)が出力する無負荷開放電圧(Vop)に対して、前記トランス(Th)の巻数比に依存して発生する前記2次側巻線(Sh)の電圧が重畳された電圧(Vme)となる。前記間欠駆動制御信号(Sl)が非活性化されると、前記トランス(Th)に蓄えられた励磁エネルギーが解放され、前記2次側巻線(Sh)には、自由振動周波数で振動しながら徐々に減衰する高い電圧が発生する。発生する電圧は、前記期間(Tj)が長いほど高くなるため、前記期間(Tj)は、必要な電圧を十分に確保できるよう設定する。
【0116】
前記インバータ駆動信号(Sj)および前記間欠駆動制御信号(Sl)は、周期(Ti)で完全に同期して動作しており、無負荷開放電圧(Vop)の片側極性に限って高電圧が重畳されることを特徴としている。この形態では、前記給電回路(Ux)が出力する電圧が、グロー放電の電圧よりも低くても、前記したようにグロー放電からアーク放電に遷移するために必要なエネルギー注入を効果的に行うことができる前記間欠駆動制御信号(Sl)の周期であることが必要である。また、アーク放電に遷移した直後に流れる電流は、前記トランス(Th)のインダクタンスによるインピーダンスに依存して、前記始動初期周波数(fini)によって規定されるから、後述する非対称放電の状態の解消を完了できる電流値を十分に確保できる前記始動初期周波数(fini)の値であることが必要である。この形態では、これらの2つの要件が同じ周期(Ti)で十分に満足されるように構成される。
【0117】
図7は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である。本図は、同様に図1に記載の放電ランプ点灯装置において、高電圧を発生せしめる場合の例を示すもので、(a)は放電ランプ点灯装置の出力電圧(ノード(T41,T42)間の電圧)、(b)は前記間欠駆動制御信号(Sl)の状態、(c)は前記インバータ駆動信号(Sj)の状態を表している。
【0118】
本図の形態では、および前記間欠駆動制御信号(Sl)は、前記インバータ駆動信号(Sj)の周期(Ti)の3/2周期に同期して動作しており、その結果、インバータ動作の1.5サイクル毎の無負荷開放電圧(Vop)の両側の極性に高電圧が重畳されることを特徴としている。
【0119】
図8は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である。本図は、同様に図1に記載の放電ランプ点灯装置において、高電圧を発生せしめる場合の例を示すもので、(a)は放電ランプ点灯装置の出力電圧(ノード(T41,T42)間の電圧)、(b)は前記間欠駆動制御信号(Sl)の状態、(c)は前記インバータ駆動信号(Sj)の状態を表している。
【0120】
本図の形態では、インバータ動作の片側極性の半周期中に2回の高電圧が重畳されることを特徴としている。前記図6,図7,図8のように、前記インバータ駆動信号(Sj)に前記間欠駆動制御信号(Sl)を同期させる場合の位相および周波数の関係は、前記したように、前記インバータ(Ui)の動作周波数を通じて設定されるアーク放電に遷移した直後に流す電流値や、重畳する高電圧の頻度および極性として、どのようなものを実現したいかの指針に基づき、任意に設定することができる。
【0121】
また、ここで示したような、前記インバータ駆動信号(Sj)に対して前記間欠駆動制御信号(Sl)を同期させるものだけでなく、例えば、前記インバータ(Ui)の極性反転タイミングと、前記間欠的電圧印加手段(Uk)の動作タイミングとが合致する場合になどにおいて、発生する可能性のあるサージ電圧やサージ電流により回路が被る可能性のある影響が、許容範囲内に収まることが確認できる場合などは、前記インバータ駆動信号(Sj)に対して前記間欠駆動制御信号(Sl)を非同期とするよう構成してもよい。
【0122】
図9は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図である。本図の放電ランプ点灯装置においては前記トランス(Th)において、1次側巻線(Ph)および2次側巻線(Sh)を共通とし、中間タップ構造としたものである。このような構造にすることにより、前記トランス(Th)の1次2次間の要求絶縁性能を下げて例えば巻線のバリア構造を簡単にしたり、また、1次および2次を合わせた巻線の巻き数を少なくすることもできるため、前記トランス(Th)の小型軽量化、低コスト化に有利である。またこれまで、前記コンデンサ(Ch)については、主として前記2次側巻線(Sh)に並列に接続する実施例を説明してきたが、本図の放電ランプ点灯装置においては、前記コンデンサ(Ch)を前記トランス(Th)全体に並列接続してある。
【0123】
前記トランス(Th)について補足しておく。ここまで、2次側巻線(Sh)を1個だけ有し、放電ランプ(Ld)の主放電のための電極(E1,E2)の何れか一方に接続されるものについて説明してきたが、2次側巻線を2個有し、電極(E1,E2)のそれぞれに接続し、互いに反対の極性で電圧が印加されるようにしてもよい。その際、前記コンデンサ(Ch)を2次側巻線に接続する場合は、2個の2次側巻線のうちの何れか一方に接続してもよく、あるいは両方に接続するようにしたものでもよい。前記図9の放電ランプ点灯装置の構成は、前記トランス(Th)のインダクタンス値を小さく抑えることに有利で、例えば160μH以下程度とすることが可能となり、前記した極性反転時の光束のオーバーシュートや振動などの不都合な現象を解決することができる。
【0124】
本発明に関連する放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図である図10を用いてさらに説明する。本図は、図1,図5,図9等に記載の放電ランプ点灯装置を始動初期周波数(fini)で動作させ、前記放電ランプ(Ld)を始動する場合の、始動シーケンスの調整段階などにおいて観測される可能性のある波形の例を示すもので、(a)は前記放電ランプ(Ld)に流れるランプ電流(IL)の波形、(b)は前記インバータ駆動信号(Sj)の波形、(c)は前記インバータ(Ui)の周波数(f)の変化の様子を表す図である。
【0125】
前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、電圧印加駆動の繰り返しにより、前記2次側巻線(Sh)から出力された振動する高い電圧が重畳され、時点(tz)において、前記放電ランプ(Ld)が絶縁破壊に至って前記放電ランプ(Ld)に電流が流れ始めている。絶縁破壊後は、放電ランプ電極の片側方向にしか電流が流れない非対称放電現象やグロー放電が発生するが、グロー放電の発生中は、あたかもツェナーダイオードのように、ランプの両電極間の電圧は、ランプの放電状態に固有の電圧となり、また、グロー放電の期間においては、ランプのインピーダンスが小さいため、前記した前記トランス(Th)のフライバック作用による前記2次側巻線(Sh)に高い電圧は生じない。
【0126】
図10は、前記放電ランプ(Ld)が非対称放電している状態を表しており、本図の(a)においては、一例として、ランプ電流(IL)の正の側の方向には多く流れ、負の側の方向には少なく流れているように描いてある。このような波形は、ランプ電流(IL)の正の側の方向ではアーク放電が、負の側の方向ではグロー放電が生じている場合に観測され易い。グロー放電の期間は、ランプ電流は小さくても、ランプ電圧が高いため、ランプの放電空間では正イオンが高いエネルギーに加速されてランプの陰極電極に衝突するため、もしグロー放電が長期間にわたって持続すると、スパッタリングによりタングステンなどの電極材料が放電空間に跳びだし、ランプバルブの内面に付着して生ずる、ランプの黒化現象が生じる不都合がある。そのため、このような非対称放電の期間においては、ランプ電流を多く流して電極の加熱を促進し、早くグロー放電からアーク放電に移行させることが有利である。
【0127】
ランプの始動シーケンスの、少なくとも初期段階においては、前記給電回路(Ux)の出力は、先に述べた無負荷開放電圧(Vop)、すなわち典型的には略200V程度の電圧を出力可能な制御状態を維持する必要がある。その理由は、ランプのグロー放電を維持できる必要があるからである。先に、グロー放電が長期間にわたって持続すると、ランプの黒化現象が生じる不都合がある旨を説明したが、グロー放電の維持すらできなければ、放電電流が停止して立消えが発生してしまう。理由のもう一つは、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が、例えば100kHzであった場合、これは高周波であるから、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)のインピーダンスも高くなり、したがって、アーク放電に移行して、それを維持させるためには、前記放電ランプ(Ld)と前記2次側巻線(Sh)の直列接続に印加する電圧として、前記した程度の電圧が必要だからである。
【0128】
先に、早くグロー放電からアーク放電に移行させることが有利である旨を説明したが、そのための方策として、例えば、無負荷開放電圧をより高くして、グロー放電時のランプへの投入電力を増す方法が考えられる。しかし、この方法を実現できるためには、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)として、印加する、高い無負荷開放電圧に相応した耐電圧の高い素子が必要になり、低コスト化の点で不利になる。
【0129】
したがって、非対称放電の期間において、ランプ電流を多く流して電極の加熱を促進し、グロー放電からアーク放電に早く移行させるための残りの方策として、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の高いインピーダンスを低くする必要があることが判る。そもそも、ランプの始動シーケンスが終了すると、前記インバータ(Ui)駆動周波数は、最終的に、前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の周波数である50Hz〜400Hz程度の低周波に移行させことになる。そのため、低周波への移行を完了した時点で、前記した前記2次側巻線(Sh)のインピーダンスが高い問題は自ずと解決してしまうと考えられるかも知れない。
【0130】
しかし、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を始動時の高周波、例えば100kHz近辺から前記した低周波に突然に変えた場合、前記放電ランプ(Ld)へ過剰な突入電流が流れることがある。これは、前記インバータ(Ui)の周波数の急激な低下に伴い、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)のインピーダンスが急激に低下するため、そして、前記放電ランプ(Ld)に突入電流が流れた結果、前記放電ランプ(Ld)自身のインピーダンスが低下するため、前記給電回路(Ux)の制御が追従できずに、前記放電ランプ(Ld)に流れる電流の正帰還的な増大が瞬間的に発生するからであり、前記放電ランプ(Ld)や、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)、あるいは前記給電回路(Ux)の前記スイッチ素子(Qx)などにダメージを与える可能性が生じる問題がある。
【0131】
また、前記放電ランプ(Ld)における非対称放電の状態においては、前記電極(E1、E2)のうち、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進しなければ、非対称放電の状態を解消することができない。このような状態においては、前記インバータ(Ui)の交流駆動の一つのサイクル内に、ランプへの投入電力が大きい半サイクルと小さい半サイクルを繰り返していることになるが、ランプへの投入電力が小さい半サイクルの期間においては、熱電子放出を開始できていない側の電極は温度が下がる。非対称放電の状態が解消されないまま、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を急に低周波に移行すれば、各半サイクルの時間が急に長くなるため、熱電子放出を開始できていない側の電極の温度が、長くなった、ランプへの投入電力が小さい半サイクルの期間において、過剰に下がることになり、前記放電ランプ(Ld)が放電を維持できずに、立ち消えを発生してしまう可能性が高くなる。
【0132】
ここまで述べたことを振り返ると、ランプの始動シーケンスにおいて、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、最終的な前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の低周波に移行させるにあたっては、急激に移行させるのではなく、始動初期周波数(fini)から徐々に周波数を低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させる必要があることが判る。
【0133】
図10においては、時点(tz)において、前記放電ランプ(Ld)が絶縁破壊に至って前記放電ランプ(Ld)に電流が流れ始めて後において、前記インバータ(Ui)の極性反転が発生する周期を除々に長くするように前記インバータ(Ui)を動作させる様子を描いてある。(a)の前記ランプ電流(IL)の波形は、(b)の前記インバータ駆動信号(Sj)を積分するように、同期して鋸歯状波形状の波形を呈しているが、そのなかの代表的な期間(Tp)における電流波形について簡単に説明する。
【0134】
図の(a)の前記ランプ電流(IL)は、正側(図における上側)がアーク放電が起きている方向に対応している。例えば、前記インバータ(Ui)の入力電圧、すなわち前記給電回路(Ux)の出力電圧が200V、前記放電ランプ(Ld)のアーク放電電圧が20Vであるとすると、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)に掛かる電圧である、200Vと20Vの電圧差を、前記2次側巻線(Sh)のインダクタンス値で除して算出した速さで前記ランプ電流(IL)が増加する。前記給電回路(Ux)の出力電圧に比してアーク放電電圧は十分小さいため、前記ランプ電流(IL)における鋸歯状波形状の波形のピーク値は、概ね、前記給電回路(Ux)の出力電圧に比例し、また、前記インバータ(Ui)の半サイクルの時間に比例する。したがって、前記給電回路(Ux)の出力電圧が増加すれば、前記ランプ電流(IL)の最大値も増加するし、前記インバータ(Ui)の周期が増加すれば、前記ランプ電流(IL)の最大値も増加する。
【0135】
前記インバータ(Ui)が図における正側の向きに電流が流れる半サイクルにおいては、前記2次側巻線(Sh)に磁気エネルギーを蓄積しながら前記ランプ電流(IL)を増加させ、前記インバータ(Ui)から前記2次側巻線(Sh)を介して前記放電ランプへ電流が流れ、前記インバータ(Ui)の極性が反転すると前記2次側巻線(Sh)に蓄積された磁気エネルギーを開放しながら前記ランプ電流(IL)を減少させる動作を交互に繰り返す。このように前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、低い周波数に向かって連続的に低下させることにより、前記ランプ電流(IL)の最大電流値を徐々に増加できるため、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進し、非対称放電の状態を解消し、立ち消えを防止する効果が得られる。
【0136】
しかしながら、本図の期間(Tq)においては、前記ランプ電流(IL)の波形は、前記期間(Tp)における理想的な鋸歯状波形状とは相違して、そのピーク付近で過大電流が流れており、しかも、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が低くなるほどその過大電流は大きくなっている。これは、前記ランプ電流(IL)が前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の飽和限界電流値(Ih)を超過しているためで、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が低くなるほど、前記飽和限界電流値(Ih)を超過している期間が長くなるからである。
【0137】
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図である図11を用いてさらに説明する。本図の(a)は放電ランプ点灯装置の出力電圧(ノード(T41,T42)間の電圧)波形、(b)は前記給電回路(Ux)の出力電圧(Vo)の波形、(c)前記間欠的電圧印加手段(Uk)の周波数(f)の変化の様子(d)は前記インバータ(Ui)の周波数(f)の変化の様子を表す。先ず、時点(tr)において前記放電ランプ(Ld)の始動シーケンスを開始する。同図の(a)の波形が黒く塗り潰されたように描かれているのは、オシロスコープで高周波波形を長い時間レンジで観測した場合に見られるように、振動する電圧波形が分解表示できずに、上側のピークと下側のピークとの間を往復している情報のみ表示されている状況を模式図的に表すものである。この状況は、後述する図14や、前記図16、図17でも同様である。
【0138】
前記インバータは(Ui)は、絶縁破壊直後に流す最適な電流値を制御できる始動初期周波数(fini)に設定されるとともに、前記間欠的電圧印加手段(Uk)が、前記トランス(Th)の前記1次側巻線(Ph)に対する間欠的な電圧印加駆動を開始し、本放電ランプ点灯装置の出力電圧において直ちに高電圧が発生する。そしてほどなく、前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じ、前記ランプ電流(IL)が流れ始める。前記図11の(b)の波形からも判るように、前記給電回路(Ux)は、始動シーケンスの開始から一貫して、無負荷開放電圧(Vop)を出力して前記インバータ(Ui)に供給している。前記間欠的電圧印加手段(Uk)は継続的に動作しているため、前記放電ランプ(Ld)において放電の立ち消えが発生したとしても、直ちに高電圧が発生して、無負荷開放電圧(Vop)に重畳して前記放電ランプ(Ld)に印加されるため、即座に再放電を開始できる状態が継続的に実現される。
【0139】
時点(tt)において、前記したように、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、始動時の高周波(すなわち前記始動初期周波数(fini))から徐々に低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させるシーケンスを開始したことにより、前記したように、ランプ電流が多く流れて電極の加熱が促進される。その結果、前記ランプ電流(IL)が、仮に片側の極性に偏っている状態にあったとしても、正負のバランスが改善された状態に徐々に移行し、非対称放電の状態が徐々に解消される。
【0140】
そして、前記インバータ(Ui)の周波数が第1限界周波数(fj1)まで低下した時点(tu)において、それまでの無負荷開放電圧(Vop)を出力するように制御する状態(電圧制御モード)を解除して、例えば、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)に切換えるべく、前記給電回路(Ux)の制御モードを変更するとともに、前記インバータ(Ui)の周波数を第2限界周波数(fj2)まで、急激に低下させるように制御している。ここで、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)とは、先に、前記給電制御回路(Fx)は、ランプが始動して放電電流が流れると、目標ランプ電流が出力されるよう前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する旨の説明において述べた動作を指す。
【0141】
このように制御することにより、前記インバータ(Ui)の周波数が十分に低くなったため、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)のインピーダンスが十分に低く、前記給電回路(Ux)の電圧は、前記放電ランプ(Ld)が呈するランプ電圧にほぼ等しくなるため、したがって、前記給電回路(Ux)の出力電圧として、無負荷開放電圧のような高い電圧は不必要となる。当然、前記トランス(Th)による高電圧の重畳も不必要になるため、前記間欠駆動制御回路(Ul)が非活性化され、前記間欠的電圧印加手段(Uk)が停止する。このように、前記インバータ(Ui)の周波数が十分に低く、また、前記給電回路(Ux)の出力電圧が前記放電ランプ(Ld)のアーク放電電圧程度に十分低くなった状態では、前記図10の(a)に記載のような前記ランプ電流(IL)の速い変化やピークは存在しないため、前記給電電流検出信号(Si)に対する制御によって前記ランプ電流(IL)を正しく制御することができる。結果として、前記した、前記ランプ電流(IL)が前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の飽和限界電流値(Ih)の超過に起因する、前記ランプ電流(IL)の過大電流の発生を避けることができる。
【0142】
前記図11の(c)に表した前記間欠的電圧印加手段(Uk)の周波数は、時点(tu)まで、同図(d)に表した前記インバータ(Ui)の周波数の変化に追従して変化させるように描いてある。これは、前記図6,図7,図8について説明したように、前記間欠駆動制御信号(Sl)と前記インバータ駆動信号(Sj)との間、すなわち、前記間欠的電圧印加手段(Uk)の動作と前記インバータ(Ui)の動作との間で成立すべき特定の位相関係が、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を変化させてゆく過程においても常に維持されることが望ましいからである。しかし、前記放電ランプ(Ld)の放電の立ち消えが発生する可能性のある期間は、通常は、前記時点(tt)までで終了しているため、この時点にて前記間欠駆動制御回路(Ul)を非活性化して、前記間欠的電圧印加手段(Uk)を停止させてもよく、その場合は、前記図11の(c)に表したような、前記間欠的電圧印加手段(Uk)の周波数を前記インバータ(Ui)の周波数の変化に追従して変化させる制御は必要ない。
【0143】
なお、前記時点(tu)においては、前記インバータ(Ui)の周波数と前記給電回路(Ux)における前記の制御モードを同時に切換えるため、微妙な切換えタイミングのバラツキ(ジッタ)によっては、前記時点(tu)において前記放電ランプ(Ld)に突入電流が流れてしまうことがある。前記スイッチ素子(Qx)のオン状態の期間の長さをパルスバイパルス制御技術を用いて制限したり、あるいは、時点(tu)の出現は、放電ランプ点灯装置自身がコントロールできるため、時点(tu)の出現の直前に、前記給電回路(Ux)の出力電圧または出力電流の目標値を低めに設定したり、前記スイッチ素子(Qx)のオン状態の期間の長さに制限を加えるなどの方策により、前記突入電流が流れる現象を回避することができる。
【0144】
無負荷開放電圧を印加した状態で、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)が飽和し始めるまでの正確な時間は、飽和現象が非線形現象であるために、前記したように前記2次側巻線(Sh)に掛かる電圧をそのインダクタンス値で除して算出した速さによって単純に計算することはできないため、前記第1限界周波数(fj1)は、前記2次側巻線(Sh)の前記飽和限界電流値(Ih)バラツキも含めて実験的に求めて設定することが望ましい。前記図11においては、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)まで低下した前記時点(tu)において、前記インバータ(Ui)の周波数を直ちに前記第2限界周波数(fj2)まで低下させるように制御する場合を描いてあるが、非対称放電の状態の解消には、ランプの前記電極(E1,E2)の熱的バランスが達成するまでの時間が必要であるため、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第2限界周波数(fj2)まで低下させる前に、前記第1限界周波数(fj1)の状態において、適当な時間だけ待機するように制御することにより、非対称放電の状態解消の確実性を増すことができる。
【0145】
なお、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から前記安定点灯周波数(fstb)まで、直接移行するのではなく、一旦、前記第2限界周波数(fj2)に移行後、徐々に前記安定点灯周波数(fstb)まで移行させる理由は、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から急激に低下させる時点において、もし非対称放電の状態の解消が完了していない場合は、前記第2限界周波数(fj2)に移行してから、前記安定点灯周波数(fstb)まで移行を完了するまでに、非対称放電の状態の解消を完了させるためである。
【0146】
したがって、先に、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第2限界周波数(fj2)まで低下させる前に、前記第1限界周波数(fj1)の状態において、適当な時間だけ待機するように制御することについて説明したが、このことを実施することにより、あるいは、このことを実施しなくても、例えば、ランプの前記電極(E1,E2)の熱的バランスが達成し易いよう、すなわち温度が上昇し易いよう熱容量を小さく設計するなどにより、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から急激に低下させる時点において、もし非対称放電の状態の解消が完了している場合は、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から前記安定点灯周波数(fstb)まで、直接移行する(移行時間が零)ように制御するものでも構わない。このときの前記インバータ(Ui)の周波数の制御の様子を、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図である図12に示す。
【0147】
前記したように、前記放電ランプ(Ld)における放電加熱による前記電極(E1,E2)の温度の上昇が重要であり、それはランプに投入される電力や電極の熱容量に依存する。前記した説明から明らかなように、ランプに投入される電力は、前記インバータ(Ui)の周波数をパラメータとした前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)のインピーダンスにより規定されるだけでなく、前記給電回路(Ux)の出力電圧にも規定される。したがって、前記時点(tt)から前記時点(tu)までの移行期間の長さの最適値については、この移行期間における前記給電回路(Ux)の出力電圧や前記電極(E1,E2)の熱容量に依存するため、実験的に求める必要がある。前記時点(tu)から前記時点(tv)までの移行期間の長さの最適値についても、前記したような移行時間が零の場合も含めて、同様に実験的に求める必要がある。なお、前記第2限界周波数(fj2)から最終的な安定点灯状態の低周波、すなわち安定点灯周波数(fstb)まで移行する際の周波数の低下速さについては、前記図11においては、前記時点(tt)からの周波数の低下速さと同様に描いてあるが、これらの低下速さは相違していても構わない。
【0148】
ところで、前記した、前記インバータ(Ui)駆動周波数を始動時の高周波から徐々に周波数を低下させるシーケンスの開始点である前記時点(tt)の設定の仕方については、例えば最も単純には、前記した始動シーケンスの開始点である前記時点(tr)から、所定の長さの時間が経過した時点としてもよい。あるいは、前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じ、前記ランプ電流(IL)が流れ始めた前記時点(ts)から、所定の長さの時間が経過した時点とすることもできる。さらに、前記ランプ電流(IL)が流れ始め、その電流値がアーク放電に相当する値まで増加した時点(tw)から、(零を含む)所定の長さの時間が経過した時点とするものでもよい。なお、前記放電ランプ(Ld)が流れ始めたこと、または、その電流値がアーク放電に相当する値まで増加したことは、前記給電電流検出手段(Ix)よりの前記給電電流検出信号(Si)を監視し、それが所定の値を超えたことにより検知することができる。
【0149】
前記したように前記ランプ電流(IL)が前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の前記飽和限界電流値(Ih)を超過する現象は、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が限界を超えて低くなった場合に発生する。前記飽和限界電流値(Ih)の大きさは、前記2次側巻線(Sh)を構成するコア材料の物性や形状、体積に依存し、したがって、例えば良好なランプ寿命を実現するために前記第1限界周波数(fj1)として設定すべき値があったとすると、その値を実現可能なコア材料を選択しなければならないため、低コスト化や放電ランプ点灯装置の小型軽量化に大きな制約が生じてしまう問題があった。
【0150】
この問題を回避するためには、前記周期駆動回路(Uj)による、前記インバータ(Ui)の周波数が始動初期周波数(fini)であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作と並行して、前記無負荷開放電圧(Vop)より低い所定の電圧(Vo2)に達するまで、前記給電回路(Ux)が徐々に低下する電圧を出力するよう、前記給電制御回路(Fx)が制御するようにすればよい。何となれば、前記したように、前記トランス(Th)の2次側巻線(Sh)の電流のピーク値は、前記インバータ(Ui)の半サイクルの時間に比例するが、前記給電回路(Ux)の出力電圧にも比例するため、このように制御することにより、時間の経過とともに、前者の半サイクルの時間は増加するが、後者の給電回路の出力電圧は低下するよう制御するから、前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の電流のピーク値の増加の速さが、給電回路の出力電圧が一定の場合よりも遅くなるからである。
【0151】
この様子を本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図である図13に示す。図において(a)は前記インバータ(Ui)の駆動周波数の変化の様子、(b)は前記給電回路出力電圧(Vo)の波形を表す。このように前記給電回路(Ux)の出力電圧と前記インバータ(Ui)の駆動周波数とを制御することにより、前記時点(tt)からの、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を始動時の高周波から徐々に低下させるシーケンスの開始時点での条件、すなわち前記無負荷開放電圧(Vop)や前記インバータ(Ui)の周波数については、前記図11に関連して説明した場合と全く同じでありながら、前記飽和限界電流値(Ih)を超過する現象を生じることなく、より低い前記第1限界周波数(fj1)を設定することが可能となる。
【0152】
なお、前記図13では、前記インバータ(Ui)の周波数の低下開始と前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下開始のタイミングが同時である場合を描いてあるが、例えば、前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下開始のタイミングが遅れるように制御してもよく、また、例えば、前記インバータ(Ui)の周波数の低下中に前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下を停止させるように制御してもよい。
【0153】
前記図11に記載した本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化されたタイミング図における実測された波形を図14に示す。(a)は放電ランプ点灯装置の出力電圧(ノード(T41,T42)間の電圧)、(b)は前記ランプ電流(IL)の波形、(c)は前記給電回路出力電圧(Vo)の波形、(d)は前記間欠駆動制御信号(Sl)の様子をそれぞれ示す。
【0154】
前記図14に実測された波形を記載した本発明の放電ランプ点灯装置の一つの形態の実施例における、具体的な数値パラメータの設定は、以下の通りである。
・ランプ:定格200W高圧水銀ランプ
・無負荷開放電圧(Vop):200V
・始動初期周波数(fini):約80kHz
・第1限界周波数(fj1):50kHz
・第2限界周波数(fj2): 5kHz
・安定点灯周波数(fstb):370Hz
・始動シーケンスの開始から徐々に周波数を低下させるシーケンスの開始まで(時点(tr)から時点(tt)まで)の待機期間:約3秒
・始動初期周波数から第1限界周波数まで(時点(tt)から時点(tu)まで)の移行期間:約1秒
・第2限界周波数から安定点灯周波数まで(時点(tu)から時点(tv)まで)の移行期間:約1秒
なお、この実測実験に使用した放電ランプにおいては、始動初期周波数から第1限界周波数までの移行期間として、0.2秒から3秒までの条件を試行したが、この範囲内では良好な結果得られた。
【0155】
前記図14に関連して述べた本発明の実施形態に関するパラメータ等は、先端に突起が形成された一対の電極が2.0mm以下の間隔で対向配置され、1立方ミリメートルあたり0.2ミリグラム以上の水銀と、1立方ミリメートルあたり10のマイナス6乗マイクロモル〜10のマイナス2乗マイクロモルのハロゲンが封入された高圧水銀ランプについて適用できる。時点(ts)において前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じ、前記ランプ電流(IL)が流れ始めたことが見て取れるが、それから暫く後の期間においては前記ランプ電流(IL)の波形が負側に偏っていることから判るように、非対称放電の状態が生じている。
【0156】
時点(tt)において、前記したように、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、始動時の高周波から徐々に低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させるシーケンスを開始したことにより、前記したように、ランプ電流が多く流れて電極の加熱が促進される。そのため、前記ランプ電流(IL)は負側に偏っている状態から、正負のバランスが改善された状態に徐々に移行していることから判るように、非対称放電の状態が徐々に解消される。前記図14の実測された波形を見れば、前記図11に関連して説明したように、時点(tt)において、前記したように、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、始動時の高周波から徐々に低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させるシーケンスを開始したことにより、前記したように、ランプ電流が多く流れて電極の加熱が促進され、前記ランプ電流(IL)の波形において正側に偏っている状態から、正負のバランスが改善された状態に徐々に移行していることから判るように、本発明の非対称放電の状態の解消の促進に効果があることが確認できる。
【0157】
以上述べたように、本発明の実施形態に従って、前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、前記トランス(Th)の前記1次側巻線(Ph)への電圧印加駆動の繰り返しにより、前記放電ランプ(Ld)の主放電のための電極(E1,E2)には、前記給電回路(Ux)から出力された電圧に前記2次側巻線(Sh)から出力された振動する高い電圧が重畳された状態が準連続的に実現され前記放電ランプ(Ld)の放電空間において絶縁破壊が生じ、ランプの主放電を開始することができる。前記放電ランプ(Ld)のグロー放電の期間においては、前記間欠的電圧印加手段(Uk)による、前記1次側巻線(Ph)への電圧印加駆動の繰り返しは、グロー放電状態のランプへのエネルギー注入を効果的に行うことができ、アーク放電に移行可能な必要かつ十分なエネルギーを前記放電ランプ(Ld)に与えることができる。
【0158】
前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、始動時の高周波から最終的な前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の低周波に移行させるにあたっては、急激に移行させるのではなく、低い周波数に向かって連続的に低下させることにより、前記ランプ電流(IL)の最大電流値を徐々に増加できるため、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進し、非対称放電の状態を解消し、立ち消えを防止する効果が得られる。
【0159】
その際、前記ランプ電流(IL)が前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)の飽和限界電流値(Ih)を超過しないよう、前記インバータ(Ui)の周波数が、第1限界周波数(fj1)まで低下した時点において、それまでの無負荷開放電圧を出力するように制御する状態(電圧制御モード)を解除して、例えば、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)に切換えるべく、前記給電回路(Ux)の制御モードを変更するとともに、前記インバータ(Ui)の周波数を、前記給電回路(Ux)が前記ランプ電流(IL)を正しく制御することができる程度に十分低い周波数である、第2限界周波数(fj2)まで、急激に低下させるように制御することにより、過大なピーク電流が流れて、前記放電ランプ(Ld)や前記給電回路(Ux)、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Qx,Q1,Q2,Q3,Q4)にダメージを与えることを防止することができる。
【0160】
本明細書に記載の回路構成は、本発明の放電ランプ点灯装置の動作や機能、作用を説明するために、必要最少限のものを記載したものである。したがって、説明した回路構成や動作の詳細事項、例えば、信号の極性であるとか、具体的な回路素子の選択や追加、省略、或いは素子の入手の便や経済的理由に基づく変更などの創意工夫は、実際の装置の設計時に遂行されることを前提としている。
【0161】
とりわけ前記給電制御回路(Fx)や前記間欠駆動制御回路(Ul)、前記周期駆動回路(Uj)、前記インバータ駆動回路(Uc)などの機能ブロックについては、放電ランプ点灯装置の実際の構成において、必ずしも、それぞれ独立して別個に存在させる必要は無く、例えば、これらの機能ブロックの幾つかを、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサの中のソフトウェア的な機能として実現するように構成しても構わない。
【0162】
さらに、過電圧や過電流、過熱などの破損要因からFET等のスイッチ素子などの回路素子を保護するための機構、または、給電装置の回路素子の動作に伴って発生する放射ノイズや伝導ノイズの発生を低減したり、発生したノイズを外部に出さないための機構、例えば、スナバ回路やバリスタ、クランプダイオード、(パルスバイパルス方式を含む)電流制限回路、コモンモードまたはノーマルモードのノイズフィルタチョークコイル、ノイズフィルタコンデンサなどは、必要に応じて、実施例に記載の回路構成の各部に追加されることを前提としている。本発明になる放電ランプ点灯装置の構成は、本明細書に記載の回路方式のものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、高輝度放電ランプを点灯するための放電ランプ点灯装置の改良に関するものであり、例えば、プロジェクタのような画像表示用の光学装置など、高輝度放電ランプを使用する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0164】
Ch コンデンサ
Ch’ 共振コンデンサ
Cpt コンデンサ
Cx 平滑コンデンサ
Dx フライホイールダイオード
E1 電極
E2 電極
Ex 放電ランプ点灯装置
Fx 給電制御回路
G1 ゲート駆動回路
G2 ゲート駆動回路
G3 ゲート駆動回路
G4 ゲート駆動回路
Gkh ゲート駆動回路
Gx ゲート駆動回路
IL ランプ電流
Ih 飽和限界電流値
Ix 給電電流検出手段
Kh 電圧印加駆動スイッチ素子
Ld 放電ランプ
Lh’ 共振インダクタ
Lx チョークコイル
Mh 電圧印加駆動用電源
Mx DC電源
Ph 1次側巻線
Q1 スイッチ素子
Q2 スイッチ素子
Q3 スイッチ素子
Q4 スイッチ素子
Qx スイッチ素子
Sf1 インバータ制御信号
Sf2 インバータ制御信号
Sg ゲート駆動信号
Sh 2次側巻線
Si 給電電流検出信号
Sj インバータ駆動信号
Sl 間欠駆動制御信号
Sv 給電電圧検出信号
T 期間
T01 ノード
T02 ノード
T11 ノード
T12 ノード
T22 ノード
Ta 期間
Tb 期間
Tc 期間
Td 期間
Th トランス
Ti 周期
Tj 期間
Tk 期間
Tm’ 期間
Tn 期間
Tp 期間
Tq 期間
Uc インバータ駆動回路
Ui インバータ
Ui’ インバータ
Uj 周期駆動回路
Uk 間欠的電圧印加手段
Ul 間欠駆動制御回路
Un’ 同調度検出手段
Ux 給電回路
Ux’ 給電回路
Vme 電圧
Vnh 出力電圧
Vo2 電圧
Vop 無負荷開放電圧
Vx 給電電圧検出手段
d 同図
f 周波数
fini 始動初期周波数
fj1 第1限界周波数
fj2 第2限界周波数
fp 周波数
fstb 安定点灯周波数
ta 時点
td 時点
tr 時点
ts 時点
tt 時点
tu 時点
tv 時点
tw 時点
tz 時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主放電のための電極(E1,E2)が対向配置された放電ランプ(Ld)を点灯するための放電ランプ点灯装置であって、
前記放電ランプ(Ld)に給電する給電回路(Ux)と、前記給電回路(Ux)を制御する給電制御回路(Fx)と、前記給電回路(Ux)の後段に設置され前記放電ランプ(Ld)に印加する電圧を極性反転させるインバータ(Ui)と、前記インバータ(Ui)を周期駆動するための周期的信号であるインバータ駆動信号(Sj)を生成する周期駆動回路(Uj)と、1次側巻線(Ph)および2次側巻線(Sh)を有するトランス(Th)と、前記1次側巻線(Ph)に電圧印加駆動を行うための間欠的電圧印加手段(Uk)とを有し、
前記トランス(Th)の前記2次側巻線(Sh)は、前記インバータ(Ui)の出力と前記放電ランプ(Ld)の主放電のための前記電極とを接続する経路の途中に介挿することにより、前記2次側巻線(Sh)に発生した電圧が、前記インバータ(Ui)の出力電圧に重畳して前記放電ランプ(Ld)の前記電極(E1,E2)間に印加可能であり、
前記放電ランプ(Ld)の始動シーケンスにおいて、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)より高い始動初期周波数(fini)となるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成するとともに、
前記給電制御回路(Fx)は、前記放電ランプ(Ld)の放電を維持するに足る電圧である無負荷開放電圧(Vop)を前記給電回路(Ux)が出力するよう制御し、然る後、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が前記始動初期周波数(fini)であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成し、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)に達すると、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成するとともに、
前記給電制御回路(Fx)は、前記放電ランプ(Ld)の放電を維持するに足る電流を前記給電回路(Ux)が出力するよう制御することを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)に達すると、前記周期駆動回路(Uj)は、前記インバータ(Ui)の周波数が安定点灯周波数(fstb)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する前に、
前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)より低い第2限界周波数(fj2)になるように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成した上で、
前記インバータ(Ui)の周波数が前記安定点灯周波数(fstb)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作を挿入することを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
前記周期駆動回路(Uj)による、前記インバータ(Ui)の周波数が前記始動初期周波数(fini)であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作と並行して、
前記給電制御回路(Fx)は、前記無負荷開放電圧(Vop)より低い所定の電圧(Vo2)に達するまで前記給電回路(Ux)が徐々に低下する電圧を出力するよう制御することを特徴とする請求項1から2に記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
前記トランス(Th)に接続されたコンデンサ(Ch)を有し、
前記2次側巻線(Sh)に発生する電圧の自由振動周波数が3MHz以下になるよう前記コンデンサ(Ch)の静電容量が設定されており、
前記放電ランプ(Ld)の始動期間においては、前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、8000回/秒以上の平均頻度で電圧印加駆動を行い、前記放電ランプ(Ld)の放電が開始した後も電圧印加駆動を継続する期間を有することを特徴とする請求項1から3に記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
前記インバータ(Ui)より後段における、前記放電ランプ(Ld)の主放電電流の経路に沿うインダクタンス成分の合計が160μH以下となるように構成したことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項6】
前記間欠的電圧印加手段(Uk)は、電圧印加駆動用電源(Mh)と、電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)とで構成され、前記電圧印加駆動スイッチ素子(Kh)のオン状態のときに前記1次側巻線(Ph)に電圧を印加することを特徴とする請求項4から5に記載の放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−119044(P2011−119044A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273051(P2009−273051)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】