説明

放電灯点灯装置

【課題】構成を複雑化することなく放電灯が始動時に一瞬明るく点灯することを防止できる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】電流検出手段24で検出した放電灯FLに流れる実質的な電流によりインバータ回路12をフィードバック制御する。制御回路16により予熱動作終了後には動作周波数を低下させて高い始動電圧を放電灯FLに供給する。電流検出手段24により放電灯FLに実質的に流れる電流を検出するとすぐに放電灯FLの電流が所望の電流値となるようにインバータ回路12を制御する。放電灯FLの点灯を検出する構成を別途設けることなく始動時に放電灯FLが一瞬明るく点灯することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯点灯装置では、例えば、ハーフブリッジ形のインバータ回路が用いられ、このインバータ回路の出力間にインダクタおよびコンデンサを備えたLC共振回路を接続し、このLC共振回路の共振作用によって放電灯を始動、点灯させている。
【0003】
また、放電灯を調光する機能を有する場合には、特に深い調光をする際に放電灯を安定して調光するために、放電灯の放電電圧、およびインバータ回路が出力する電流を検出し、これら検出された電圧、出力電流を用いてインバータ回路をフィードバック制御している。
【0004】
このような放電灯点灯装置を、動作周波数が共振回路の無負荷時の共振周波数よりも大きい領域で使用する場合に、放電灯を始動させる際には、動作周波数を一旦低下させてインバータ回路から出力される高周波電圧を所定の始動電圧まで増加させて放電灯を点灯した後、動作周波数を所定の周波数へと戻すように制御する。
【0005】
この制御では、始動電圧近傍に予め設定した閾値電圧と、始動動作中に検出した放電灯の放電電圧とを比較し、放電電圧が閾値電圧を超えたときに放電灯が点灯したと制御手段が判断する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−210267号公報(第4−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の放電灯点灯装置では、放電灯の放電電圧と閾値電圧とを比較して放電灯の点灯を検出するための点灯検出手段を要し、構成が複雑化するという問題点を有している。
【0007】
また、放電灯の放電電圧と閾値電圧とを比較する際に、必ずしも放電電圧が閾値電圧を超えた瞬間に検出できるわけではないので、ランプ電流あるいはランプ電力が一瞬大きくなり、放電灯が始動時に一瞬明るく点灯するという問題点もある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構成を複雑化することなく放電灯が始動時に一瞬明るく点灯することを防止できる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の放電灯点灯装置は、スイッチング素子の動作により直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;このインバータ回路の出力間に直列的に接続されたインダクタおよびコンデンサを備え、高周波電圧に応じて共振する共振回路と;この共振回路のコンデンサの両端間に接続され、共振回路の共振作用によって点灯する放電灯と;この放電灯に実質的に流れる電流を検出する電流検出手段と;この電流検出手段で検出された電流に基づいてインバータ回路のスイッチング素子をフィードバック制御し、予熱時には、放電灯が点灯しない電圧でこの放電灯を予熱し、かつ、少なくとも予熱動作終了後の始動時には動作周波数を低下させて予熱時より高い高周波電圧を放電灯に供給するとともに電流検出手段によって放電灯に実質的に流れる電流を検出すると放電灯の電流が所望の電流値になるようにインバータ回路を所定の短周期毎の前記フィードバック制御により制御する制御手段と;を具備しているものである。
【0010】
放電灯は、例えば、熱陰極形蛍光ランプや高圧放電灯などがあるがこれらに限定されない。
【0011】
インバータ回路は、例えば、電界効果トランジスタなどのスイッチング素子の動作により直流電圧を高周波電圧に変換して出力できれば、ハーフブリッジ形、フルブリッジ形などいずれでもよい。
【0012】
放電灯に実質的に流れる電流とは、例えば容量成分を流れる漏れ電流などを除いた、放電灯内に流れる電流をいう。
【0013】
電流検出手段によって放電灯に実質的に流れる電流を検出するとは、放電灯の始動電圧に至った場合のことを意味し、これにより放電灯の始動電圧に至ると瞬時に放電灯の電流を所望の電流値にすることにより、低い調光率からであっても人の目には閃光を感じさせない程度に放電灯を点灯始動させることができる。
【0014】
所定の短周期とは、例えば電流検出手段が電流を検出する毎周期などの周期をいう。
【0015】
そして、電流検出手段で検出された電流によりインバータ回路のスイッチング素子をフィードバック制御することで、放電灯の放電電流によりインバータ回路を正確にフィードバック制御し、制御手段により、少なくとも予熱動作終了後には動作周波数を低下させて予熱時より相対的に高い高周波電圧を放電灯に供給するとともに電流検出手段によって放電灯に実質的に流れる電流を検出すると放電灯の電流が所望の電流値になるようにインバータ回路を所定の短周期毎にフィードバック制御することで、放電灯の点灯を検出するための構成を別途設けることなく始動時に放電灯が一瞬明るく点灯することを防止できる。
【0016】
請求項2記載の放電灯点灯装置は、請求項1記載の放電灯点灯装置において、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御は、少なくとも予熱動作終了後から始動時を含む放電灯の所望の点灯までの過程において所定の短時間周期で行われ、予熱動作終了後の電流の目標値を徐々に大きくすることにより放電灯の光量を徐々に増加させて所望の点灯状態とするものである。
【0017】
そして、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御を、少なくとも予熱動作終了後から始動時を含む放電灯の所望の点灯までの過程において所定の短時間周期で行うことにより、フィードバック制御の応答性がより向上するとともに、予熱動作終了後の電流の目標値を徐々に大きくすることで放電灯の光量を徐々に増加させて所望の点灯状態とすることにより、所望の点灯状態となるまで一瞬明るく点灯することなく放電灯を点灯始動させることが可能になる。
【0018】
請求項3記載の放電灯点灯装置は、請求項1または2記載の放電灯点灯装置において、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御は、毎周期行われているものである。
【0019】
そして、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御を、毎周期行うことにより、フィードバック制御の応答性がより向上し、一瞬明るく点灯することなく放電灯を点灯始動させることが可能になる。
【0020】
請求項4記載の放電灯点灯装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、放電灯を装着した時にこの放電灯を始動させるものである。
【0021】
そして、放電灯を装着時に始動させることで、放電灯を装着した際にもこの放電灯を徐々に点灯始動させることが可能になる。
【0022】
請求項5記載の放電灯点灯装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、放電灯の消灯状態で外部操作により調光信号が入力された時に放電灯を始動させるものである。
【0023】
外部操作とは、例えば調光用のリモコンなどの調光操作手段の操作をいう。
【0024】
そして、放電灯の消灯状態で外部操作により調光信号が入力された時に放電灯を始動させることにより、外部操作に対応して放電灯を徐々に点灯始動させることが可能になる。
【0025】
請求項6記載の放電灯点灯装置は、請求項5記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、外部操作により入力された調光信号の変化量に応じて放電灯の光量の追従性を変化させるものである。
【0026】
そして、外部操作により入力された調光信号の変化量に応じて放電灯の光量の追従性を変化させることで、人の目に違和感が少ない調光が可能になる。
【0027】
請求項7記載の放電灯点灯装置は、請求項6記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値未満である場合には、この変化量に対応した値で放電灯の電流を目標値まで追従させ、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値以上である場合には、所定の上限値で放電灯の電流を目標値まで追従させるものである。
【0028】
そして、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値未満である場合には、この変化量に対応した値で放電灯の電流を目標値まで追従させ、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値以上である場合には、所定の上限値で放電灯の電流を目標値まで追従させることで、放電灯の光量の追従が遅すぎたり早すぎたりしないように設定可能となる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の放電灯点灯装置によれば、放電灯の電圧のピーク位相において電流検出手段で検出された電流によりインバータ回路のスイッチング素子をフィードバック制御することで、放電灯の放電電流によりインバータ回路を正確にフィードバック制御し、制御手段により、少なくとも予熱動作終了後には動作周波数を低下させて予熱時より相対的に高い高周波電圧を放電灯に供給するとともに電流検出手段によって放電灯に実質的に流れる電流を検出すると放電灯の電流が所望の電流値になるようにインバータ回路を所定の短周期毎にフィードバック制御することで、放電灯の点灯を検出するための構成を別途設けることなく始動時に放電灯が一瞬明るく点灯することを防止できる。
【0030】
請求項2記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御を、少なくとも予熱動作終了後から始動時を含む放電灯の所望の点灯までの過程において所定の短時間周期で行うことにより、フィードバック制御の応答性をより向上できるとともに、予熱動作終了後の電流の目標値を徐々に大きくすることで放電灯の光量を徐々に増加させて所望の点灯状態とすることにより、所望の点灯状態となるまで一瞬明るく点灯することなく放電灯を点灯始動させることができる。
【0031】
請求項3記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1または2記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御を、毎周期行うことにより、フィードバック制御の応答性をより向上でき、一瞬明るく点灯することなく放電灯を点灯始動させることができる。
【0032】
請求項4記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、放電灯を装着時に始動させることで、放電灯を装着した際にもこの放電灯を徐々に点灯始動させることができる。
【0033】
請求項5記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、放電灯の消灯状態で外部操作により調光信号が入力された時に放電灯を始動させることにより、外部操作に対応して放電灯を徐々に点灯始動させることができる。
【0034】
請求項6記載の放電灯点灯装置によれば、請求項5記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、外部操作により入力された調光信号の変化量に応じて放電灯の光量の追従性を変化させることで、人の目に違和感が少ない調光ができる。
【0035】
請求項7記載の放電灯点灯装置によれば、請求項6記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値未満である場合には、この変化量に対応した値で放電灯の電流を目標値まで追従させ、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値以上である場合には、所定の上限値で放電灯の電流を目標値まで追従させることで、放電灯の光量の追従が遅すぎたり早すぎたりしないように設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を、図1ないし図8を参照して説明する。
【0037】
図1は放電灯点灯装置の回路図であり、図2は放電灯点灯装置の放電電圧と放電電流と漏洩電流との関係を示す波形図であり、図3は放電灯点灯装置で放電電圧のピーク位相を検出する検出方法を示し、(a)は放電電圧および放電電流の波形図、(b)は放電電圧および放電電流をサンプリングした波形図であり、図4は検出方法を示し、(a)は放電電圧および放電電流の波形図、(b)は放電電圧および放電電流をサンプリングした波形図であり、図5は放電灯点灯装置の放電電圧と検出電圧と漏洩電流成分との関係を示す波形図であり、図6は放電灯点灯装置を適用した照明器具の斜視図であり、図7は放電灯点灯装置の周波数と共振回路の二次側の出力電圧および放電電圧との関係を示すグラフであり、図8は放電灯点灯装置の放電電圧と出力電流と放電灯の光量との関係を示す波形図であり、(a)は放電電圧の包絡線の波形図、(b)は出力電流の包絡線の波形図、(c)は放電灯の光量の包絡線の波形図である。
【0038】
図1に示すように、放電灯点灯装置10は、商用電源eに商用電源電圧を整流する全波整流素子RECの入力端子が接続され、この全波整流素子RECの出力端子に整流された直流電圧を昇圧する昇圧回路11が接続されている。昇圧回路11の出力端子間に、平滑用のコンデンサC1が接続されているとともに、直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路12が接続されている。このインバータ回路12は、ハーフブリッジ形インバータであり、直列接続された2つのスイッチング素子としての電界効果トランジスタQ1,Q2を有している。電界効果トランジスタQ2の両端に、図示しない直流カット用のコンデンサと、インダクタである共振インダクタンスLおよびコンデンサである共振コンデンサC2を有する共振回路13とが接続されている。共振コンデンサC2と並列に例えば熱陰極形蛍光ランプなどの放電灯FLが接続されている。なお、放電灯FLのフィラメントを加熱する加熱手段は図面では省略している。
【0039】
また、電界効果トランジスタQ1,Q2のゲートにはこれら電界効果トランジスタQ1,Q2のオンオフ動作を制御する制御手段としての制御回路16が接続されている。
【0040】
また、共振コンデンサC2の両端に一対の抵抗R1,R2で構成される分圧回路19が接続され、この分圧回路19により放電灯FLの電圧を検出する電圧検出手段20が構成されている。
【0041】
さらに、放電灯FLの一方のフィラメントと共振コンデンサC2の接地される一端側との間に、逆阻止用のダイオードD1と抵抗R3との直列回路が接続され、ダイオードD1のアノード側と抵抗R3の接地側との間にダイオードD2が接続されて、ダイオードD1と抵抗R3との接続点23にて放電灯FLに流れる実質的な電流、すなわち容量成分などに流れる漏れ電流を除いた放電灯FL内に流れる電流(以下、出力電流という)を検出する電流検出手段24が構成されている。
【0042】
これら電圧検出手段20および電流検出手段24は検出回路27に接続されている。この検出回路27は、電圧検出手段20が検出する電圧のピーク位相を検出するピーク位相検出手段の機能、および放電灯FLの放電電圧の位相に対して電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れを補正する補正手段の機能を有している。なお、ピーク位相検出手段および補正手段の機能は、制御回路16に設けてもよい。ここで、放電電圧のピーク位相とは、正弦波状の放電電圧の最大値または最小値を指す。
【0043】
補正手段は、放電灯FLが点灯するまでの始動期間中に、電流検出手段24で検出された容量性成分であって例えば漏洩電流成分の波形の略ゼロクロスに対応した電圧のピーク位相に対してピーク位相検出手段で検出された電圧のピーク位相の遅れを補正する補正量を求め、放電灯FLの点灯後に、電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れを補正量によって補正する。
【0044】
そして、制御回路16は、例えばマイコンやDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)などの制御素子である図示しないマイクロプロセッサ、メモリ、VCO(電圧制御発振器)などを備え、ピーク位相検出手段で検出されて補正手段で補正された電圧のピーク位相において電流検出手段24で検出されたインバータ回路12の出力電流(放電電流)を所定の目標値に近づけるようにインバータ回路12をフィードバック制御する機能、図示しないリモコンなどの調光操作手段の外部操作により入力される調光信号に対応して設定される上記目標値により調光レベルを制御する機能などを有している。
【0045】
図2に示すように、放電電圧VLのピーク位相の位置では、漏洩電流成分I_Cは容量性であるため0と考えることができ、放電電流ILのみを検出することになる。出力電流は放電電流ILと漏洩電流成分I_Cとの和であり、漏洩電流成分I_Cは放電電圧VLのピーク位相の位置では0となることから、放電電圧VLのピーク位相で出力電流を検出することで、簡単な構成で放電電流ILのみを検出でき、この放電電流ILによってインバータ回路12の電界効果トランジスタQ1,Q2をフィードバック制御することができ、深い調光時も安定した点灯を得ることができる。本実施の形態において、フィードバック制御は例えば毎周期行っているものとする。
【0046】
次に、ピーク位相検出手段によって放電電圧のピーク位相を検出する検出方法について、図3および図4を参照して説明する。
【0047】
放電電圧および出力電流の検出値はアナログ信号である。図1に示す検出回路27(または制御回路16)に、放電電圧および出力電流のアナログ信号を時間的に離散化してサンプルするサンプリング手段を設けることにより、各々のサンプリング点での値を得ることができる。このようなサンプリング手段としては、サンプル/ホールド回路とA/D(アナログ/ディジタル)変換器とから構成される手段が広く用いられている。この手段によって、放電電圧および出力電流のアナログ信号を検出すると、時間的に離散したサンプリング値を数値化することができる。すなわち、CPUなどの演算手段によってアナログ信号を数値演算可能な形態に可変することができる。
【0048】
図3(a)および図3(b)に放電電圧のアナログ信号をサンプリングする場合の概念図を示す。簡単に説明するために対象を放電電圧VLと放電電流ILとし、任意のオフセットのもと負電位にはならないように構成したとする。それぞれのアナログ信号がサンプル/ホールド回路、A/D変換器を通過すると、設定したサンプリング周期Tsでアナログ信号をサンプリングした離散量に変換することができる。このとき、放電電圧VL、放電電流ILの信号はそれぞれ、{v[0],v[1],v[2],…}、{i[0],i[1],i[2],…}の離散量の集合として表すことができる。各値は数値化されるため、比較演算や算術演算を施すことができる。理論上はサンプル対象の信号の周波数をfsignalとすると、標本化定理によりサンプリング周波数fs(=1/Ts)がfs>2×fsignalの関係にあると離散量から元の信号を再現することができるため、任意の補完を施すことで元の検出信号を再現することができる。
【0049】
ここでは、放電電圧VLのピーク位相を知るために、図3(b)のように離散化された値を利用する。図3(b)のようにサンプリングされた値を順次比較すると、v[0]<v[1]<v[2]<v[3]>v[4]>v[5]の関係にある。これを利用すると、v[3]が放電電圧VLのピーク位相であることがわかる。このことより、放電電圧VLのピーク位相のv[3]に対応した放電電流ILのi[3]が、放電電圧VLのピーク位相に同期した放電電流ILを与えることがわかる。このように、放電電圧VLのアナログ信号を離散的にサンプリングして放電電圧VLのピーク位相を検出し、この放電電圧VLのピーク位相に同期して出力電流を検出することで、漏洩電流成分I_Cを除いた放電電流ILのみを容易に検出することができる。
【0050】
また、図4に実際の回路構成における放電電流ILの検出の様子を示す。放電電圧VLとインバータ回路12の出力電流のサンプル/ホールド回路への入力の波形を図4(a)に示す。図4(b)にはA/D変換器を経たサンプル結果を示す。そして、検出された放電電圧VLとインバータ回路12の出力電流とを整流した波形としてサンプル/ホールド回路へ入力する。また、調光時には、図4に示したように、出力電流は放電電圧VLの波形に対して進み位相になる。このとき、演算手段を用いてv[0]<v[1]<v[2]<v[3]>v[4]を割り出し、位相v[3]が放電電圧VLのピーク位相であることを知ることができる。この位相情報におけるインバータ回路12の出力電流の値であるi[3]が放電電流ILのピーク位相に対応する。
【0051】
ここでは、放電電圧VLとインバータ回路12の出力電流とを同時独立にサンプリングすることで、放電電圧VLのピーク位相と放電電流ILのピーク位相との間にずれがないように構成している。回路構成としてそれぞれの検出量に対して独立したサンプル/ホールド回路、A/D変換器を持つことが望ましいが、サンプル/ホールド回路およびA/D変換器を備えた1つの回路で、放電電圧VLのピーク位相の判定と、位相情報の取得と、放電電流ILのピーク位相の検出とを繰り返すことにより、略同時にサンプリングすることもできる。
【0052】
また、マイクロプロセッサにサンプル/ホールド回路およびA/D変換器を内蔵することで、回路構成を簡略化することもできる。
【0053】
次に、補正手段により、放電灯FLの放電電圧の位相に対して電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れを補正する例を図5に示す。
【0054】
電源投入後から放電灯FLが点灯するまでの始動期間中には、放電灯FLに放電電流は流れないが、インバータ回路12は発振しているので、共振回路13から放電灯FLには高周波高電圧が出力される。このとき、放電灯FLと器具との間に生じる静電容量に漏洩電流が流れており、この漏洩電流成分を利用して補正を行う。
【0055】
図5には、放電電圧VLと、電圧検出手段20で検出する検出電圧VL_detと、始動期間中の漏洩電流成分I_Cとをそれぞれ示す。検出電圧VL_detを基準にしてピーク位相を検出もしくは算出すると、ピーク位相VL_det peak 1が得られる。これに対して、始動前に漏洩電流成分I_Cが0となるように検出電圧VL_detのピーク位相を補正すると、ピーク位相VL_det peak 2が得られる。これによりピーク位相VL_det peak 1→ピーク位相VL_det peak 2への補正量を求めることができる。
【0056】
このように構成された放電灯点灯装置10は、図6に示すような照明器具に適用できる。この照明器具は、放電灯点灯装置10が配置された器具本体41、この器具本体41の両端に直管形の放電灯FLが装着されるソケット42などを備えている。
【0057】
次に、上記一実施の形態の作用を図7および図8も参照しながら説明する。
【0058】
例えば調光操作手段の外部操作などによる始動時、あるいは放電灯FLを器具本体41に装着した時などには、商用電源eが投入によって昇圧回路11が駆動され、かつ、制御回路16が駆動されて電界効果トランジスタQ1,Q2がスイッチング動作されることで、高周波電圧がインバータ回路12から出力される。
【0059】
制御回路16は、まず予熱動作を行う。すなわち、VCOに所定の電圧レベルを供給して共振回路13の無負荷時共振周波数f0よりも高い周波数f1の周波数信号を発生させ、この周波数信号に従って制御回路16が電界効果トランジスタQ1,Q2をスイッチング駆動して予熱用の高周波電圧V1を放電灯FLに供給する。
【0060】
この結果、高周波電圧V1によって放電灯FLのフィラメントに予熱電流が流れ、所定時間の予熱が行われる。
【0061】
この予熱動作が終了すると、制御回路16は、電圧検出手段20からの電圧信号レベルによりVCOを動作させ、VCOがこの電圧信号レベルに応じた周波数信号を出力する。したがって、VCOは、出力する周波数信号の周波数を、共振回路13の共振周波数f0近傍まで低下させる。このため、インバータ回路12の動作周波数が周波数fsへと上昇し、これに伴い放電灯FLに印加する高周波電圧が予熱時より上昇して放電灯FLの始動電圧Vsとなり、放電灯FLが点灯する。
【0062】
このとき、検出回路27は、放電灯FLの出力電流を、漏洩電流成分I_Cを含まない補正された放電電圧VLのピーク位相のタイミングで検出しているため、放電電流ILのみを検出している。このため、この検出回路27に接続された電流検出手段24により放電電流ILを検出したタイミングは、高周波電圧が始動電圧Vsとなったタイミング、すなわち放電灯FLが点灯したタイミングとなるから、このタイミングで制御回路16がVCOに相対的に高い上記所定の電圧レベルを供給することで、このVCOから出力される高い周波数の周波数信号によりインバータ回路12の動作周波数が周波数f1まで上昇し、出力する高周波電圧が所定の高周波電圧V1まで低下する。すなわち、電流検出手段24により放電電流ILを検出したタイミングは、放電灯FLが点灯したタイミングと略一致するから、この電流検出手段24により放電電流ILを検出すると、瞬時に放電灯FLの電流を所望の相対的に低い電流値とする。
【0063】
同時に、制御回路16は、放電電流ILの目標値を徐々に増加させることで、放電灯FLがフェイドイン点灯される。ここで、調光操作手段の外部操作によって設定される調光信号の変化量が予め設定した所定値未満の場合には、この変化量に対応した値で放電電流ILを目標値まで追従させ、調光信号の変化量が予め設定した所定値以上の場合には、所定の上限値で放電電流ILを目標値まで追従させる。
【0064】
図8に予熱から点灯始動するまでの放電灯FLの放電電圧VL、出力電流および光量の様子を示す。図8(a)は放電電圧VLを示し、図8(b)は漏洩電流I_Cを含む出力電流を示し、図8(c)は例えばフォトダイオードなどで検出した放電灯FLの光量を示す。期間T1において、放電灯FLの予熱が行われ、タイミングT2において放電灯FLが点灯する。このとき、放電電流ILのオーバシュートが目標値の10%以下(ほぼ0)となり、かつ、放電電流ILが1msec以内に目標値となった。また、この始動時の放電灯FLの明るさは、瞬間的に5%以下であった。
【0065】
この後、インバータ回路12は、放電灯FLが所定の放電電圧VLを維持するように高周波電圧V1を放電灯FLに供給する。
【0066】
なお、この放電灯FLの点灯後は、始動期間中に求めた補正量によって電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れを補正することができる。
【0067】
このように、上記一実施の形態によれば、電流検出手段24で検出した電流によりインバータ回路12の電界効果トランジスタQ1,Q2をフィードバック制御することで、放電灯FLの放電電流によりインバータ回路12を正確にフィードバック制御し、制御回路16により、少なくとも予熱動作の終了後には動作周波数を低下させて予熱時より相対的に高い高周波電圧である始動電圧Vsを放電灯FLに供給するとともに電流検出手段27によって放電灯FLの放電電流ILを検出すると瞬時に放電灯FLの電流が所望の電流値となるようにインバータ回路12を制御できるから、放電灯FLの点灯を検出するための構成を別途設けることなく放電灯FLの点灯のタイミングを正確に検出できる。この結果、放電灯FLを、一瞬明るく光らせることなく、電球のように徐々に点灯始動させることができ、低い調光率からであっても人の目には閃光を感じさせない程度に放電灯FLを点灯始動させることができる。
【0068】
また、制御回路16によるインバータ回路12の電界効果トランジスタQ1,Q2のフィードバック制御を、少なくとも予熱動作終了後から始動時を含む放電灯の所望の点灯までの過程において所定の短周期、例えば電流検出手段27の電流検出の毎周期行うことにより、フィードバック制御の応答性をより向上でき、一瞬明るく点灯することなく放電灯FLを点灯始動させることができる。
【0069】
さらに、放電灯FLの予熱動作後に出力電流の目標値を徐々に大きくして放電灯FLの光量を徐々に増加させることにより、放電灯FLであるにも拘らず、所望の点灯状態となるまで一瞬明るく点灯することなくフェイドイン点灯することができる。
【0070】
そして、放電灯FLを装着時、あるいは、放電灯FLの消灯状態で、例えばリモコンなどの調光操作手段での外部操作により調光信号が入力された時に始動させることで、放電灯FLを装着した際に、あるいは外部操作に対応して、放電灯FLを徐々に点灯始動させることができる。
【0071】
さらに、調光操作手段の外部操作により入力された調光信号の変化量に対応して放電灯FLの光量をそのまま追従させる場合には、例えば変化量が大きい場合、放電灯FLの光量の変化が早すぎて違和感を覚えることがあるのに対して、本実施の形態では、調光操作手段の外部操作により入力された調光信号の変化量に応じて放電灯FLの光量の追従性を変化させることで、人の目に違和感が少ない調光が可能になる。
【0072】
具体的に、調光操作手段の外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値未満である場合には、この変化量に対応した値で放電灯FLの電流を目標値まで追従させ、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値以上である場合には、所定の上限値で比較的ゆっくりと放電灯FLの電流を目標値まで追従させることで、放電灯FLの光量の追従が遅すぎたり早すぎたりしないように設定できる。
【0073】
しかも、放電灯FLの放電電圧のピーク位相のタイミングで電流検出手段24により検出された電流によってインバータ回路12をフィードバック制御できるため、深い調光時でも電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れの影響を除いた放電電流ILによりインバータ回路12をフィードバック制御でき、深い調光ができる。
【0074】
なお、補正手段は、例えば放電灯FLの放電電圧の位相に対して電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れを補正するのに必要な補正量が予め登録されたデータテーブルを用い、電圧検出手段20で検出された電圧の位相の遅れをデータテーブルに登録されている補正量によって補正するようにしてもよい。この場合、データテーブルは、検出回路27または制御回路16が備える。
【0075】
また、電圧検出手段および電流検出手段などは、任意に構成することが可能であり、これら電圧検出手段および電流検出手段に対応して、放電灯FLの放電電圧VLのピーク位相に対して電圧検出手段で検出する電圧の位相の遅れを補正できれば、ピーク位相検出手段や補正手段も任意に構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態を示す放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】同上放電灯点灯装置の放電電圧と放電電流と漏洩電流との関係を示す波形図である。
【図3】同上放電灯点灯装置で放電電圧のピーク位相を検出する検出方法を示し、(a)は放電電圧および放電電流の波形図、(b)は放電電圧および放電電流をサンプリングした波形図である。
【図4】同上検出方法を示し、(a)は放電電圧および放電電流の波形図、(b)は放電電圧および放電電流をサンプリングした波形図である。
【図5】同上放電灯点灯装置の放電電圧と検出電圧と漏洩電流成分との関係を示す波形図である。
【図6】同上放電灯点灯装置を適用した照明器具の斜視図である。
【図7】同上放電灯点灯装置の周波数と共振回路の二次側の出力電圧および放電電圧との関係を示すグラフである。
【図8】同上放電灯点灯装置の放電電圧と出力電流と放電灯の光量との関係を示す波形図であり、(a)は放電電圧の包絡線の波形図、(b)は出力電流の包絡線の波形図、(c)は放電灯の光量の包絡線の波形図である。
【符号の説明】
【0077】
10 放電灯点灯装置
12 インバータ回路
13 共振回路
16 制御手段としての制御回路
24 電流検出手段
C2 コンデンサである共振コンデンサ
FL 放電灯
L インダクタである共振インダクタンス
Q1,Q2 スイッチング素子としての電界効果トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の動作により直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;
このインバータ回路の出力間に直列的に接続されたインダクタおよびコンデンサを備え、高周波電圧に応じて共振する共振回路と;
この共振回路のコンデンサの両端間に接続され、共振回路の共振作用によって点灯する放電灯と;
この放電灯に実質的に流れる電流を検出する電流検出手段と;
この電流検出手段で検出された電流に基づいてインバータ回路のスイッチング素子をフィードバック制御し、予熱時には、放電灯が点灯しない電圧でこの放電灯を予熱し、かつ、少なくとも予熱動作終了後の始動時には動作周波数を低下させて予熱時より高い高周波電圧を放電灯に供給するとともに電流検出手段によって放電灯に実質的に流れる電流を検出すると放電灯の電流が所望の電流値になるようにインバータ回路を所定の短周期毎の前記フィードバック制御により制御する制御手段と;
を具備していることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御は、少なくとも予熱動作終了後から始動時を含む放電灯の所望の点灯までの過程において所定の短時間周期で行われ、予熱動作終了後の電流の目標値を徐々に大きくすることにより放電灯の光量を徐々に増加させて所望の点灯状態とする
ことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
制御手段によるインバータ回路のスイッチング素子のフィードバック制御は、毎周期行われている
ことを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
制御手段は、放電灯を装着した時にこの放電灯を始動させる
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
制御手段は、放電灯の消灯状態で外部操作により調光信号が入力された時に放電灯を始動させる
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
制御手段は、外部操作により入力された調光信号の変化量に応じて放電灯の光量の追従性を変化させる
ことを特徴とする請求項5記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
制御手段は、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値未満である場合には、この変化量に対応した値で放電灯の電流を目標値まで追従させ、外部操作により入力された調光信号の変化量が所定値以上である場合には、所定の上限値で放電灯の電流を目標値まで追従させる
ことを特徴とする請求項6記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−152167(P2009−152167A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140090(P2008−140090)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】