説明

放電装置

【課題】OHラジカル同士が反応して生成されたHを再びOHラジカル化することができる。
【解決手段】放電電極1と、この放電電極1に高電圧を印加する電圧印加部2とを備えた放電装置3である。放電電極1がFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1等により静電霧化装置が知られている。静電霧化装置は、霧化電極と、霧化電極に水を供給する供給手段とを備え、霧化電極に高電圧を印加することで霧化電極に保持された水を静電霧化してナノメータサイズの帯電微粒子水を生成する。
【0003】
この静電霧化装置が生成するナノメータサイズの帯電微粒子水は、OHラジカル(ヒドロキシラジカル)のようなラジカル(活性種)を含んでいる。ラジカルは、反応性、酸化力を有している有効成分で、このラジカルによる酸化作用で脱臭効果や、ウイルス、カビ菌の除菌、アレルゲン物質等の不活性化効果などがある。
【0004】
また、放電電極に高電圧を印加して放電によりマイナスイオン又はプラスイオンを生成させる空気イオン発生装置も知られている。
【0005】
この空気イオン発生装置は、静電霧化装置に比べると、ラジカルの生成量は少ないが、放電により空気中の水分を基にしてOHラジカルのようなラジカルが生成するといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−68711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、生成したOHラジカルは、OHラジカル同士が反応することでH(過酸化水素)になってしまう。
【0008】
このHもある程度の酸化力があって、脱臭、除菌効果を発揮する有効成分であると言えるが、OHラジカルに比べると酸化力が弱い。したがって、生成させたOHラジカル同士が反応してHになると、その分、脱臭、除菌として作用するOHラジカル量が少なくなって、除菌性能等が相対的に低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて発明したもので、その目的とするところは、OHラジカル同士が反応して生成されたHを再びOHラジカル化することができる放電装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放電装置は、放電電極と、この放電電極に高電圧を印加する電圧印加部とを備えた放電装置において、前記放電電極がFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成してあることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記Fe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成した放電電極に水を供給する水供給手段を備え、高電圧の印加により前記放電電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子水を生成させることが好ましい。
【0012】
また、放電装置が、放電電極と、この放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極に高電圧を印加する電圧印加部とを備え、この高電圧の印加により前記放電電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子水を生成させる放電装置において、前記放電電極に供給される水にFe又はMn又はCoの何れかのイオンを含んでいることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
ここで、前記水供給手段が、タンク部内の水を前記放電電極に供給するものであり、このタンク部内の水中に、前記Fe又はMn又はCoの何れかの金属と、この金属よりもイオン化傾向の小さい別の金属を入れ、前記Fe又はMn又はCoの何れかの金属が負極、この金属よりもイオン化傾向の小さい別の金属が正極となる電池機構を備えたものである
【発明の効果】
【0014】
本発明は、放電電極に高電圧を印加すること生成するOHラジカル同士が反応して酸化力の弱いHになるが、放電の際にFe又はMn又はCoの何れかのイオンが同時に生成することで、HがFe又はMn又はCoの何れかのイオンと反応して再びOHラジカル化することができ、除菌性能や脱臭性能などが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図である。
【図2】同上の他の実施形態の概略構成図である。
【図3】同上の更に他の実施形態の概略構成図である。
【図4】同上の更に他の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施形態を説明する。
【0017】
放電装置3は放電電極1に高電圧を印加してイオンと同時にOHラジカル(ヒドロキシラジカル)のようなラジカル(活性種)を発生させるものであり、静電霧化装置3aと、空気イオン発生装置3bとがある。
図1、図2、図3に示す実施形態は、放電装置3が静電霧化装置3aの場合の一実施形態を示している。
【0018】
静電霧化装置3aは、放電電極1と、放電電極1に水を供給する水供給手段4と、放電電極1に高電圧を印加する電圧印加部2を備えている。
【0019】
図1、図2に示す実施形態では静電霧化装置3aの放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成している。
【0020】
まず、図1に示す実施形態から説明する。この図1に示す実施形態は、水供給手段4をペルチェユニット10のような冷却手段で構成した例を示している。
【0021】
絶縁性を有する略筒状をした本体ケース11の内部を仕切りで仕切り、本体ケース11内の仕切りで仕切った片側半分に水供給手段であるペルチェユニット10を内装し、本体ケース11内の他の片側半分が静電霧化室となっている。
【0022】
ペルチェユニット10は、一対のペルチェ回路板を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してある熱電素子を両ペルチェ回路板間で挟持すると共に隣接する熱電素子同士を両側の回路で電気的に接続している。そして、ペルチェ入力リード線を介して熱電素子に通電すると、一方のペルチェ回路板側から他方のペルチェ回路板側に向けて熱が移動するように構成している。
【0023】
一方の側のペルチェ回路板の外側には冷却部12を接続している。また、他方の側のペルチェ回路板の外側には放熱部13を接続しており、実施形態では放熱部13として放熱フィンの例を示している。
【0024】
ペルチェユニット10の冷却部12側に放電電極1の後端部を接続し、放電電極1を本体ケース11内の仕切りに設けた孔を貫通して静電霧化室内に突出している。
【0025】
筒状をした本体ケース11の先端開口部に環状をした対向電極14を設け、放電電極1と対向電極14との間に電圧印加部2で高電圧を印加するようなっている。
【0026】
静電霧化装置3aを運転すると、ペルチェユニット10に通電されて冷却部12が冷却され、冷却部12が冷却されることで放電電極1が冷却され、空気中の水分を結露して放電電極1の先端部に水(結露水)を供給する。このように放電電極1の先端部に水が供給された状態で上記放電電極1の先端部に供給された水に高電圧を印加することで、該高電圧により放電電極1に供給された水の水面が局所的に錐状に盛り上がり、テーラーコーンが形成される。テーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受ける。このように、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギーを受けると、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が大量に生成する。この帯電微粒子水にはOHラジカル(ヒドロキシラジカル)のようなラジカル(活性種)を含んでいる。
【0027】
ここで、上記のように放電電極1に高電圧を印加すると、放電電極1の先端に供給された水が静電霧化されてOHラジカルのようなラジカルを含む帯電微粒子水を生成すると同時に、放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成しているので、放電電極1が放電によりスパッタリングされて、Fe又はMn又はCoが原子もしくはイオンの状態となって生成して空気中に放出される。
【0028】
生成した帯電微粒子水に含まれるOHラジカルのようなラジカルは、反応性、酸化力が強いので、静電霧化装置3aから放出空間に放出されると、脱臭、除菌、アレルゲン物質の不活性化効果等を行う。
【0029】
ところで、静電霧化により生成されたOHラジカルの一部は、OHラジカル同士が反応してHになる。このHはある程度の酸化力があって、ある程度の脱臭、除菌、花粉の不活性化の効果を有しているが、OHラジカルに比べると、反応力、酸化力が弱い。したがって、OHラジカルの一部がHとして生成される分、OHラジカル量が少なくなって、除菌性能等が低下する。
【0030】
しかしながら、上記のように、Hの生成と同時に、Fe又はMn又はCoが原子もしくはイオンの状態となって生成して空気中に放出されるので、HがFe又はMn又はCoと反応することで、再びOHラジカル化する。このように、Hを、より反応性、酸化力の強いOHラジカルとして再生成することで、脱臭、除菌、花粉などの不活性化の効果を更に向上させることができる。
【0031】
がFe又はMn又はCoと反応して再びOHラジカル化するのは、以下のようにして行われる。
【0032】
Fe2++H=Fe3++OH+OH
Mn2++2H=Mn4++2OH+2OH
Co2++H=Co3++OH+OH
静電霧化装置3aにおける放電電極1の先端に水を供給する水供給手段4として、図1に示す実施形態においては、空気中の水分を冷却手段で冷却して結露水を放電電極1の先端部に供給する例で説明したが、必ずしもこれの例にのみ限定されない。
【0033】
図2にはタンク部5内に溜めた水を毛細管現象で放電電極1の先端部に供給する例を示している。
【0034】
放電電極1は水を毛細管現象で搬送できるように、多孔質に形成したり、小孔やスリットを形成している。また、この放電電極1は前述の実施形態と同様に放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成する。なお、毛細管現象で放電電極1の先端部に供給するに当たって、放電電極1は図2のように縦向きのものに限定されず、横向き、あるいは斜めを向いていてもよい。
【0035】
また、図示を省略しているが、Fe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成した放電電極1の先端部に水を供給するに当たって、加圧により供給したり、あるいは、重力を利用して流下又は滴下することで供給するものであってもよい。
【0036】
これらの各例においても、放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成する。放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成することによる作用、効果は前述の図1に示す実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、放電装置3が静電霧化装置3aの場合の他の実施形態を図3に基づいて説明する。
【0038】
図3において、水供給手段4が、Fe又はMn又はCoのイオンを含んだタンク部5内の水を放電電極1に毛細管現象や加圧により供給するようになっている。
【0039】
タンク部5内の水中に、Fe又はMn又はCoの何れかの金属6と、この金属6よりもイオン化傾向の小さい別の金属7(例えばCu)を入れ、この両金属6、7を導線8で接続することで、Fe又はMn又はCoの何れかの金属6が負極、この金属6よりもイオン化傾向の小さい別の金属7が正極となる電池機構(いわゆるボルタの電池と同じ原理の電池機構)を構成している。
【0040】
このような電池機構を構成することで、負極であるFe又はMn又はCoの何れかの金属6から水中にFe又はMn又はCoの何れかのイオンが析出し、タンク部5内の水がFe又はMn又はCoの何れかのイオンを含んだ水となる。
【0041】
そして、このFe又はMn又はCoの何れかのイオンを含んだ水を放電電極1の先端に供給し、高電圧を印加して静電霧化することで、OHラジカル(ヒドロキシラジカル)のようなラジカル(活性種)を含んだナノメータサイズの帯電微粒子水が生成する。この場合、Fe又はMn又はCoの何れかのイオンを含んだ水を静電霧化するので、静電霧化に伴い水に含まれたFe又はMn又はCoの何れかのイオンも放出される。
【0042】
ここで、前述の実施形態と同様に、静電霧化により生成されたOHラジカルの一部は、OHラジカル同士の反応によりHになるが、同時にFe又はMn又はCoの何れかのイオンも放出されるので、HがFe又はMn又はCoのイオンと反応することで、再びOHラジカル化する。
【0043】
これにより、放出空間に放出されるHの量を少なくし、反応性、酸化力の強いOHラジカルの量を多くできて、より反応性、酸化力の強いOHラジカルにより、脱臭、除菌、花粉などの不活性化の効果を更に向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の更に他の実施形態につき図4に基づいて説明する。
【0045】
本実施形態は、放電装置3が、放電電極1に高電圧を印加して放電によりマイナスイオン又はプラスイオンを生成させる空気イオン発生装置3bの場合の一実施形態を示している。
【0046】
本実施形態においては、空気イオン発生装置3bの放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成している。電圧印加部2により放電電極1と対向電極14との間に高電圧を印加すると、空気放電が行われ、空気中の水分を基にしてOHラジカル(ヒドロキシラジカル)を生成する。この際同時に、放電電極1をFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成しているので、放電電極1が放電によりスパッタリングされて、Fe又はMn又はCoが原子もしくはイオンの状態となって生成して空気中に放出される。
【0047】
そして、生成されたOHラジカルは、一部のOHラジカル同士が反応してHになるが、前述の図1の実施形態で述べたように、HがFe又はMn又はCoと反応することで、再びOHラジカル化する。
【0048】
したがって、本実施形態においても、OHラジカル同士が反応して生成されるHを、再びより反応性、酸化力の強いOHラジカルとして再生成することで、脱臭、除菌、花粉などの不活性化の効果を更に向上させることができる。
【0049】
なお、前述のいずれの実施形態においても、対向電極14を設けた例で説明しているが、対向電極14を設けない場合であってあってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 放電電極
2 電圧印加部
3 放電装置
4 水供給手段
5 タンク部
6 金属
7 金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、この放電電極に高電圧を印加する電圧印加部とを備えた放電装置において、前記放電電極がFe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成してあることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記Fe又はMn又はCoの何れかを含む材料で形成した放電電極に水を供給する水供給手段を備え、高電圧の印加により前記放電電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子水を生成させることを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項3】
放電電極と、この放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極に高電圧を印加する電圧印加部とを備え、この高電圧の印加により前記放電電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子水を生成させる放電装置において、前記放電電極に供給される水にFe又はMn又はCoの何れかのイオンを含んでいることを特徴とする放電装置。
【請求項4】
前記水供給手段が、タンク部内の水を前記放電電極に供給するものであり、このタンク部内の水中に、前記Fe又はMn又はCoの何れかの金属と、この金属よりもイオン化傾向の小さい別の金属を入れ、前記Fe又はMn又はCoの何れかの金属が負極、この金属よりもイオン化傾向の小さい別の金属が正極となる電池機構を備えたものであることを特徴とする請求項3記載の放電装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−233467(P2011−233467A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105137(P2010−105137)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】