説明

散乱反射性媒体の照射

本発明は、プローブビームの出力を増大させることなく、散乱反射性サンプル内のプローブ光の照射強度を増大させる技術を提供する。一般に、光学フィルタを用いることで、コリメートされたプローブビーム光はサンプルを透過可能になるが、それはサンプルに向かって、より広い角度範囲に出射する後方散乱された散乱プローブ光の大部分を反射する。特定の実施形態では、コリメートされたレーザビームは、サンプルの一部をカバーしている多層誘電体フィルタを介して、前記サンプルに送出しされる。このフィルタは法線入射ではレーザ光に対して透過性であるが、後方散乱光の入射特性のより浅い角度では反射性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、散乱反射性サンプルの照射に関する。特に、本発明は、入射光損失を低減して、サンプルに対する入射光強度を増大する技術に関する。例えば、本発明は、検出されるスペクトル特徴の強度を増大させるための分光分析技術に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
散乱反射性媒体の分光分析は、様々な解析用途で行われる。その例として、国際公開第2006/61565号内で議論されているように骨組成や、血糖組成の、組織パラメータを決定するための生体組織の検査が挙げられる。医薬錠剤の分光分析は、製造ライン上で、製造後の検査にて、或は、偽造品をスクリーニングする際に、結晶状態や純度を決定するうえで行われる。他の用途としては、多種多様な粉末サンプルや、混濁流体、透明材料等についての研究解析が挙げられる。
【0003】
このような用途においては、赤外吸収や発光分光分析も用いられるが、媒体内の非弾性散乱によって入射光を波長シフトさせるラマン分光分析は、その高度な化学的識別性の故に特によく用いられる。しかしながら、ラマン分光分析の断面積は特に小さく、関心のあるスペクトル特徴について充分に高いシグナル対ノイズ比を得ることは困難である(特に、研究室外の用途、即ち低感度装置が用いられる場合に困難である)。多くの実際の用途では、例えば、生体組織の損傷を避けるために、入射光強度は制限しなければならず、例えば、製造ライン上、または比較的短時間で患者を測定しなければならない場合、暴露時間も制限される。もちろん、これらの制約および同様の制約は、様々な種類の赤外および他の分光分析技術の場合にも当てはまる。
【0004】
したがって、一般に、暴露時間を最小化しつつ、特定の強度または出力の入射光を用いて得られるスペクトル信号を最大化することが望ましい。
【0005】
他の用途では、光によって引き起こされる化学反応の速度を増大させるため、或は、光が導入される領域にある被照射サンプルから放出される入射光の量を最大化するため等の他の理由で、散乱サンプル内での入射光の保持を増大させることも望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/61565号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、関連従来技術の上記問題および他問題に対処することを課題とする。
【0008】
様々な分光分析技術および他の用途では、サンプル内に入射光ビームを導く必要がある。いくつかの用途では、例えば、集光光のスペクトル特徴を検出するために、サンプルにおける塊または表面から後方散乱される光を集光することも望ましい。一般に、散乱反射性サンプルにおける表面または塊内に対する入射光の強度、従ってサンプルから後方散乱される入射光の強度は、入射光の照射箇所およびその近傍で最も大きい。
【0009】
本発明は、送出しフィルタでサンプルの領域の一部をカバーし、そのフィルタを介してサンプルにビームを導くことによって、レーザビームまたは他の実質的な単色光ビーム等の入射光ビームを用いて、散乱反射性サンプルの照射を増大させる方法を提供する。このフィルタは、入射ビームより広い範囲の入射角で、サンプルからフィルタに拡散的に後方散乱される入射光の波長における光が、サンプルに優先的に反射されるような特性を備えている。実質的には、このフィルタは、単一方向のミラーとして機能し、特に、強度が最も大きなサンプルの入射光ビームの臨界照射点において入射波長の光の損失を防止する。
【0010】
多層誘電体フィルタ等のいくつかの種類の光学フィルタは、入射角が増大するにつれて、特により短い波長に波長シフトする透過および反射特性を備えている。従って、送出しフィルタは、例えば、ビームの入射角における入射光の波長に一致するが、他の入射角においては入射光の波長からシフトする透過領域を備えている多層誘電体フィルタを用いることによって提供できる。この方法では、小さな範囲の入射角にコリメートまたは半コリメートされた入射ビームが、フィルタを介してサンプルに到達するが、元のビームの入射角の範囲より著しく広い角度範囲に戻る拡散性反射光の大部分はサンプルに向かって反射され、ごく一部だけがサンプルからフィルタを透過する。
【0011】
送出しフィルタの一例は、法線入射において入射ビームを透過させるために入射光波長に一致する帯域通過領域を備えているが、より大きな入射角では同じ波長の光を次第に反射する狭帯域通過フィルタである。同じ効果は、法線入射に対してちょうど入射波長の真上にあるが、より大きな入射角では入射波長をカバーするためにシフトさせる反射または低透過領域を備えているノッチフィルタまたは低波長透過エッジフィルタを用いて実現できる。
【0012】
従って、一つの特定の形態によると、本発明は散乱反射性サンプルに入射光ビームを導く方法であって、
サンプルに隣接して送出しフィルタを配置するか、またはサンプルの領域の一部をフィルタでカバーし、前記入射光の反射が、前記フィルタにおける入射光の入射角に依存するような特性を送出しフィルタが備え、
ビームの入射角において送出しフィルタを介して、前記入射光ビームをサンプルに導き、前記ビームが好ましくはほぼ法線入射であってもよく、サンプルから送出しフィルタに向かって拡散的に後方散乱される入射光が、フィルタによってサンプルに向かって優先的に反射される。
【0013】
別の形態によると、本発明は、例えば、垂直方向から10°未満のほぼ法線入射において、入射光の波長の片側にあり、従って、入射ビームを透過可能であり、例えば、30°より大きな、より浅い入射角においては、入射光の波長の他方の側にあり、従って、サンプルから放出される拡散性散乱光を反射する透過エッジを備えている送出しフィルタを提供する。
【0014】
また、本発明は、対応する装置を提供する。例えば、送出しフィルタは、光学窓、または容器またはカバーとみなすこともでき、別の光学部品を備えているサンプル用のより広範囲の光学容器またはカバーの一部であってもよい。それから、本発明の一形態は、送出しフィルタを含む散乱反射性サンプル内の入射光の強度を増大させる光学カバーを提供し、前記入射光ビームは前記フィルタを用いて、ビームの入射角においてサンプル内に導かれ、前記入射光の反射が、ビームの入射角から離れる入射角において増大し、サンプルから拡散的に散乱される入射光が、送出しフィルタによってサンプルに優先的に反射されるような特性を送出しフィルタが備えている。
【0015】
送出しフィルタは好ましくは、サンプルに戻る入射光を最大化し、フィルタのエッジの周りの後方散乱光の漏れを最小化するように、サンプルに隣接して配置される。例えば、フィルタが直径「d」を備えている場合、それは好ましくはサンプルから一つの直径の距離d内、より好ましくは直径の半分の距離d/2、または更により好ましくは約d/10の距離内に配置される。実際には、サンプルにできるだけ近接配置し、例えば、接触させることが望ましい。一般に、フィルタは、下側のサンプル面に平行、またはほぼ平行であってよい。光は、以降で詳しく議論するように、例えば、所望のスペクトル特徴をカバーする透過領域を備えているフィルタを用いることによって、送出しフィルタを介した後方透過により集光できる。もしくは、入射角の広い範囲に対して、入射光の波長を好ましくは除外する適切な透過領域を備えている別個の集光フィルタを用いることもできる。
【0016】
本発明は、分光分析によって検査される医薬錠剤または他の物体の周りに光学容器を提供したり、入射光ビームが導かれる組織サンプル、または人間や動物の対象の一部に窓を提供する等の様々な用途で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】送出しフィルタ30を介したサンプル10の入射ビーム14による照射と、スペクトル解析用の散乱光の集光を概略的に示す図である。
【図2a】一の送出しフィルタ例の透過特性を示す図である。
【図2b】別の送出しフィルタ例の透過特性を示す図である。
【図3】法線入射における透過窓の波長との比として、様々な入射角における狭帯域通過誘電体フィルタの透過波長形状を示す図である。
【図4】ミラー面54と集光フィルタ50を含めるために、図1のものを拡張しているより完全な光学容器を示す図である。
【図5】集光フィルタ例の透過特性を示す図である。
【図6】入射光の送出しおよび集光で同じフィルタを用いる構成を示す図である。
【図7a】送出し/集光結合フィルタの一例の透過特性を示す図である。
【図7b】送出し/集光結合フィルタの他の例の透過特性を示す図である。
【図8】サンプルの同じ側上の二つの別個の間隔における入射ビームと、光の集光によるサンプルの照射を示す図である。
【図9a−b】サンプルの同じ側に配置されている送出しおよび集光フィルタの別の構成を示す平面図である。
【図10a】湾曲したサンプル面に本発明を適用する構成を示す図である。
【図10b】湾曲したサンプル面に本発明を適用する構成を示す図である。
【図10c】湾曲したサンプル面に本発明を適用する構成を示す図である。
【図10d】湾曲したサンプル面に本発明を適用する構成を示す図である。
【図11a−f】本発明を実証するために用いられる数学的モデルで用いられるサンプルの幾何形状を示す図であり(図11a)、図11aのサンプルの周りの送出しフィルタ212、集光フィルタ214、およびミラー面216の構成を示す図である(図11b−f)。
【図12a】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度を示す図である。
【図12b】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度に関連の増大係数を示す図である。
【図13a】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度を示す図である。
【図13b】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度に関連の増大係数を示す図である。
【図14a】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度を示す図である。
【図14b】数学的モデル内で用いられるフィルタとミラー面の様々な構成に従って、図11aのサンプルから出射しているラマン散乱格子の計算強度に関連の増大係数を示す図である。
【図15】図11aのモデルサンプルに適用された中央送出しフィルタと周囲の環状集光領域の幾何形状を示す図である。
【図16a】図15の幾何形状を用いる計算強度を示す図である。
【図16b】図15の幾何形状を用いる計算強度に関連の増大係数を示す図である。
【図17】本発明を実証するために用いられる研究光学構成を概略的に示す図である。
【図18a】図17の装置を用いて測定されたラマンスペクトルを示す図である。
【図18b】図17の装置を用いて測定されたラマンスペクトルを示す図である。
【図19】本発明を具現化する光学送出し機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら、単なる一例として以下に説明する。
【0019】
図1を参照すると、分光分析を用いて、拡散性散乱または混濁サンプル10の特性を決定する装置が概略的に示されている。この特定の例では、透過ラマン分光分析が用いられているが、赤外吸収または蛍光分光分析等の他の技術も用いられる。
【0020】
レーザ12はレーザ光14の入射ビーム(プローブビーム)を構成し、レーザ光14は送出し光学系16によってサンプル10に導かれる。ビームはサンプルに入り、サンプル内で散乱した後、いくつかの光子は集光光学系18によって集光される。集光された光の一つ以上のスペクトル成分は分光器等の検出器20によって検出され、検出結果は一般に、データ蓄積および/または解釈用のコンピュータまたは他の解析機器22に送られる。特に、散乱反射性サンプル内で異なる波長に非弾性ラマン散乱された光子を検出および解析できる。
【0021】
多くの用途、特に散乱断面積が小さいラマン分光分析では、検出されるスペクトル成分の強度を増大させるために、高いプローブビーム強度が望まれる。しかし、これは、サンプルに損傷を引き起こす可能性がある。従って、別の方式は長い暴露時間を用いることであるが、これは、例えば、製造ライン上等の測定に利用可能な時間が短い、その他の理由のために実行不可能となる。集光されるスペクトル信号を改善する別の選択肢は、より大きな断面積のプローブビームを用いることである。図1の例では、ビーム強度を過度に増大させることなく、全ビーム出力を増大させるために、サンプルに大きな直径のビームを送出しする送出し光学系と共に、この後者の選択肢が用いられている。
【0022】
送出しフィルタ30はサンプルに隣接配置され、サンプルに接触させることさえ可能であり、サンプルの少なくとも部分的な光学容器31またはサンプル上の光学カバーを構成するかまたは部分的に構成し、プローブビームはこの送出しフィルタを介してサンプルに導かれる。フィルタは、前記フィルタを介してサンプル内にプローブビームを送ることができるが、サンプルから後方散乱されてプローブ光が戻ることを遮断する傾向がある透過特性を備えている。その代わり、サンプルから散乱されるプローブ光の実質的な部分、例えば、少なくとも50%は、送出しフィルタによってサンプル内に反射され、従って、前記サンプル内のプローブ光の強度、検出される集光光内のスペクトル成分の強度を増大する。好ましくは、これは、最初にフィルタを通過する際のビーム出力の最小の低減だけで実現される。
【0023】
送出しフィルタの所望の特性は、前記フィルタにおける光の入射角に依存して波長シフトする透過および/または反射特性を備えているフィルタによって実現でき、このようなフィルタ特性の例は図2aに示されている。法線入射においてフィルタに到達する光子の透過特性は実線の曲線40によって示され、それはほぼガウス分布の透過窓を定義する。この例では、透過窓の中心はプローブレーザ光42の波長に一致するが、これは厳密には必須ではない。より大きい入射角の場合、透過窓は、例えば、入射角80°の破線44で示されているように、より小さな波長に移動する。図から分かるように、法線方向から数°より大きな入射角で、サンプルから後方散乱され送出しフィルタに戻るプローブ光は、送出しフィルタを介してサンプルから透過するのではなく、より大きい入射角になるほどサンプル内に反射される。同じ効果は、図2bの短波長透過エッジフィルタの使用によって実現され、そのエッジ波長は、前記フィルタにおけるビームの入射角ではプローブビーム波長の光を透過し、より大きな入射角では同じプローブビーム波長の光を反射するように一致させる。
【0024】
図2aの透過窓は、プローブ光(または入射光)の透過形状と便宜上呼ばれるが、入射角が増大するにつれてプローブ波長からより短い波長にシフトする。透過窓の長い波長側に対する低い透過領域は同様に、入射光の反射形状と呼ばれる。
【0025】
図2bでは、透過形状は、透過窓の長い波長端部によって提供され、反射形状はエッジを超えてすぐの低い透過領域によって提供される。
【0026】
送出しフィルタの所望の特性も、法線入射に近い入射光波長帯域の片側に配置され、閾値入射角より大きな入射光波長の他方の側にある透過エッジ41の特性の観点で表現でき、閾値入射角は入射光の周波数幅や、用いられるフィルタの種類等に依存して、垂直方向から10°、20°または他の角度であってもよい。
【0027】
上記の機構が有効になるには、コリメートされたまたは少なくとも半コリメートされたプローブビームを用いて、サンプルから送出しフィルタに向かって次に後方散乱されるビーム光子の平均入射角より、前記フィルタにおける平均入射角を著しく小さくする必要がある。一般にビーム光子は、現在説明されている例では約10°より小さい平均入射角を備えているべきである。
【0028】
図1の構成によって検出され解析されるストークスシフトされたラマン散乱スペクトル特徴の一般的な波長範囲は、図2aと2bの破線の四角46として示されている。フィルタ特性は、集光光学系で次に集光させるためにラマン散乱光子を遮断し、好ましくはサンプルに反射する追加の利点を備えていることが分かる。
【0029】
適切な特性を備えている送出しフィルタは、誘電体多層フィルタ(もしくは薄膜干渉フィルタとして知られる)、および特にこの種の狭帯域通過フィルタによって提供できる。適切なフィルタは、例えば、Semrock, Inc.によって製造されている(情報はhttp://www.semrock.comから入手可能である)。カタログのMaxLine(RTM)Lazer-Line狭帯域通過フィルタまたは短波長通過エッジフィルタを使用可能である。Semrock, Inc.から現在入手可能な適切な帯域通過フィルタの帯域通過幅は、325〜1064nmの近傍の対応する帯域通過範囲上で、約1.2〜4.0nmである。
【0030】
入射角の関数としての多層誘電体フィルタのスペクトルシフトは、下記式から導かれる。
【0031】
【数1】

【0032】
この式では、λ0は法線入射におけるフィルタのスペクトル特徴の波長であり、λは光子入射角θに対する形状の新しい波長であり、neffはフィルタ媒体の屈折率を周囲(例えば、空気)の屈折率で割った有効屈折率である。上記式は本質的に、平方根の項が常に1以下であるので、ブルーシフトのみが可能であることを意味している。図3は、λ/λ0の入射角依存性を示している。このプロットは屈折率の定数値が1.45に設定され、それは800nm以下における溶融シリカの屈折率に対応することを仮定している。周囲媒体は、空気であると仮定している。
【0033】
上記式から、衝突光子が法線入射から10°傾斜すると、約6nmだけ帯域通過フィルタの中心波長のシフトをもたらすと推定される。これは、一般的な狭帯域通過フィルタのレーザ波長から充分に離れており、これ以上の角度においてサンプルから放出する光子の透過ではなく反射をもたらす。簡単な幾何的考慮に基づいて、フィルタにおいて衝突する光子の全てが10°の半角の円錐内にあり、それより大きな角度のものは反射されると仮定すると、サンプルから等方的に放出する光子の約1.5%だけがフィルタを透過し、残りの98.5%はサンプルに反射される。この計算は、誘電体および同様のフィルタの非常に低い吸収損失を反映しており、透過成分Tと反射成分RはT+R≒1として関連付けられる。
【0034】
フィルタは、プローブビーム14の特定の波長に一致させるようにして得られ、この場合、プローブビームは、法線入射またはその近傍において、送出しフィルタを介して導かれる。この方法では、サンプルからの散乱光が反射される入射立体角が最大化される。しかし、法線入射におけるフィルタの中央透過波長がプローブビーム波長より短い場合、ビームは非法線入射において送出しフィルタに導かれ、より良い波長一致を与えることができる。これは、プローブ光の透過が発生する立体角を増大させ、サンプルに戻る際の散乱光内の送出しフィルタの有効性を低減する傾向がある。
【0035】
図2aには、狭帯域通過フィルタの特性が示されている。しかし、小さい入射角のみにおいてプローブ光を透過するように配置された鋭い長波長エッジを備えているスペクトル的により広い帯域通過フィルタ、図2bに示したものと同様に用いられる短波長透過エッジフィルタ、または同様の効果を備えている任意の他のフィルタ等の他の特性を備えているフィルタを用いることもできる。
【0036】
図1では、送出しフィルタは、サンプルの周りの部分的または完全な光学容器の部分的なものまたは一部として示されている。サンプルに送出しフィルタを近接させることが重要である。効果的となるように、サンプルから散乱されるプローブ光の大部分は、送出しフィルタによってサンプルに反射されるべきである。上記の例では、反射量は入射角に依存するので、送出しフィルタは好ましくはフィルタの直径、またはサンプルのサイズのいずれか小さい方よりサンプルから離れないようにすべきであり、より好ましくは、この距離の10分の1より離れないようにする。一般に最大数mm、例えば5mm未満の距離が適切である。
【0037】
図4は、図1のサンプル10の周りに配置された別開発の光学容器を示している。図示されてはいないが、レーザビームは、図1とほとんど同様に送出し、集光、および解析される。主要な違いは、サンプル10に近い容器31に別の光学要素を追加し、サンプル内のプローブ光の強度を更に増大させ、検出および解析されるそれらのスペクトル成分の損失を低減することである。
【0038】
サンプルと集光光学系の間には、選択的集光フィルタ50が配置されている。このフィルタは、サンプルから集光光学系18に向かって放出しているプローブ光の大部分を遮断し、好ましくはこのプローブ光の少なくとも実質的な部分をサンプルに反射するように選択される。また、フィルタはより長い波長の散乱光、特にラマン散乱によってストークスシフトされた光子を通過可能なように選択される。
【0039】
集光フィルタの適切な透過特性は、図5に示されている。透過曲線は、プローブ波長42と所望のスペクトル波長46の間に鋭いエッジを備え、フィルタはプローブ光をサンプルに反射するが、ラマン散乱光子を通過可能であることが分かる。入射角が増大するほどより短い波長にシフトする特性を備えているフィルタを用いる場合、設計制約によって、より大きい入射角においてフィルタを通過するプローブ光はかなりの量なる。集光光学系内に狭帯域ノッチフィルタ等の別のフィルタを用いる場合、集光される光に存在する元の波長の残りの光子を除去することができる。
【0040】
例えば、Semrock, Inc.によって現在製造されているカタログのRazorEdge(RTM)フィルタ等の長波通過誘電体多層エッジフィルタを集光フィルタに用いることができる。このようなフィルタは、赤外から紫外の波長範囲におけるエッジで利用可能であり、通過帯域幅は一般に100〜1000nm、エッジ透過幅は約100〜500cm-1である。もちろん、必要に応じて、特に選択された特性のフィルタを用いることができる。
【0041】
サンプルにプローブ光子を戻す際に効果的となるように、図5で特徴付けられる集光フィルタのエッジは、プローブ波長42より充分に長い波長にあって、例えば、プローブ波長より上の1000〜2000cm-1の領域で、広い角度範囲で到達するプローブ光子を反射可能でなければならない。実際には、これは、集光フィルタが、サンプルにプローブ光子を戻す際に効果的となるように、少なくともこのプローブ波長よりずっと長い波長に対して検出可能なラマンスペクトル特徴の範囲を制限することができる。
【0042】
図4に示した光学容器31は、サンプルの周りに一つ以上の光学的反射ミラー面54を光学的に含むか、または備えている。これらの面はプローブ光または集光される光のいずれかを透過する必要はなく、入射角の広い範囲上で、少なくともプローブ波長において、および検出されるスペクトル成分の波長において反射する要素を用いるべきである。
【0043】
キャビティの効果を最大化するために、送出しおよび集光フィルタは、プローブ光送出しおよび光集光用に必要な領域のみをカバーするようなサイズにし、残りの容器の実質的に全てには高反射性のミラー面を提供する。
【0044】
本発明を用いるいくつかの別の実施形態および構成は、図6〜9bを用いて示されている。図6では、レーザビーム14は、サンプル10の一部または面に送られ、光は同じ部分または面から集光される。これを実現するために、送出し/集光結合フィルタ52を用いて、サンプルにプローブビームを透過することと、検出器20および解析器22によって解析される光を透過することの両方を行う。結合フィルタ52は、図1と3の例の送出しフィルタと同様にサンプルに近接または隣接配置し、サンプル用の光学容器31の少なくとも一部を構成する。容器は、サンプルの一部に対する反射面またはミラー面54を提示することも、別の集光フィルタを追加的に含むこともできる。
【0045】
結合フィルタ52は、検出および解析に必要なスペクトル特徴を透過可能であり、同時にプローブビームの波長を備えている光のかなりの部分をサンプルに反射する特性を備えている。適切なフィルタの透過特性は、図7aと7bに示されている。図7aのフィルタは、図に示したプローブ波長42と一致するほぼガウス状の狭透過窓60と、低通過エッジ透過窓62を組み合わせている。図7bでは、ノッチフィルタの反射形状が、プローブ波長42とラマンスペクトル特徴領域46の間の領域にある波長を遮断する。両方の場合において、既に上で述べたように、入射角が増大するほどフィルタ特性はより短い波長にシフトし、破線の曲線は80°における透過を示している。全ての角度において、領域46のストークスシフトされたラマンスペクトル特徴はフィルタを透過し、集光および解析されることが分かる。法線入射から離れた角度で、サンプルから結合フィルタに散乱されるプローブ波長の光は、ほとんどサンプルに反射される。
【0046】
図7aと7bで示したものと同様の適切な特性を備えているフィルタは、既知の薄膜干渉フィルタ技術を用いて構成できる。他の種類のフィルタ構成、および他の特性を備えているフィルタを用いて、送出し/集光結合フィルタを実現することもできる。このようなフィルタは、送出しのみのフィルタとして用いることもできるが、前記フィルタを介したラマンシフト光の不要な損失を伴う。
【0047】
図1と4は、サンプルの両面で光を送出しおよび集光する透過幾何形状を示しており、図6は送出しおよび集光が同じ領域、または密な間隔の領域で発生する反射幾何形状を示しているが、他の幾何形状の範囲を用いることもできる。図8では、単一の送出し/集光結合フィルタ52が用いられている。送出し光学系16は、フィルタの第一領域を介して、プローブレーザビーム14をサンプルに導き、一つ以上の別個の集光光学系18は、第一領域から間隙を介したフィルタの一つ以上の別の領域を介して透過した光を集光する。WO2006/061566に記載されているように、この幾何形状は、制御された深さプロファイルから混濁サンプルのスペクトル特性を決定するために用いられる。単一の集光光学系を用いて解析器を構成し、深部からのスペクトル特徴が事前に既知である場合、表面スペクトル特徴を拒絶できると同時に、送出し領域からの集光距離に依存して、異なる深部からの予想寄与に関する仮定を用いて、複数の集光光学系を用いて、異なる深部からのスペクトル特徴の解析を実行できる。
【0048】
図8の幾何形状に対する変形形態では、図5と共に議論したもののような一つ以上の専用集光フィルタが、サンプルと集光光学系の間で用いられる。図9aでは、中央の送出しフィルタ(d)が、環状の同心円の集光フィルタ(c)によって取り囲まれている。図9bでは、中央の集光フィルタ(c)が、環状の同心円の送出しフィルタ(d)によって取り囲まれている。このような構成用の集光および送出し光学系は便宜上、例えば、WO2006/061566で議論されているように、一束の光ファイバを含んでいる。当然のことながら、様々な他の幾何形状も使用可能である。例えば、送出しまたは集光フィルタのいずれかを省略することもでき、その領域に対して様々な連続的形状およびセグメント形状を用いることもできる。
【0049】
上記の送出しフィルタ、特に誘電体多層フィルタとしての使用に適した光学要素は、平板要素として容易に商業的に入手可能である。上記のように、フィルタはサンプル面に隣接配置し、散乱された入射光のフィルタによってサンプルに向かう反射を最大化することが望ましい。当然のことながら、送出しフィルタの領域内のサンプル面が平坦ではなく、大きく湾曲している場合、本発明の効果は低減される。図10a〜10dは、湾曲したサンプル面の(そうでない場合の)悪影響を低減可能な方法を示している。
【0050】
図10aは、湾曲面を備えている散乱反射性サンプル104の断面を示している。このようなサンプルの例は、医薬カプセルまたは錠剤であってもよい。前の図のように、レーザ100はレーザ光102の入射ビームを構成し、レーザ光102は送出し光学系106によってサンプル104に向かって導かれる。集光光学系、検出器および解析要素は図10aには示されていないが、もちろん、必要に応じて存在していてもよい。入射ビームは送出しフィルタ108を介してサンプル104に入射し、送出しフィルタ108自体は湾曲し、下側のサンプル104の面に少なくともほぼ一致させる。送出しフィルタは上記のような光学特性を備え、それはフィルタに対して法線方向に近い角度において、入射ビームを優先的に透過可能であり、同時に、例えば、垂直方向から約10°を超えるより広い角度範囲では、サンプルから放出する同じ波長の拡散性散乱光をサンプルに反射する特性を含んでいる。
【0051】
湾曲した送出しフィルタを介した入射ビームの最適な透過を提供するために、送出し光学系106を適合させ、入射角がフィルタ面全体で法線方向に近くなるようなビームを構成させる。凸状のサンプル面と送出しフィルタの場合、これは適切な凸レンズまたは適切な形状のミラーによって実現される。
【0052】
湾曲した誘電体フィルタは高価になり、平坦なフィルタより入手や製造がより困難になりがちであるので、湾曲したサンプル面上で使用するように本発明を適合させながら、なお平坦なフィルタを用いることが望ましい。図10bでは、これはサンプル面と平坦な送出しフィルタ112の間に、散乱反射性スペーサ要素110を配置することによって実現されている。スペーサ要素110は、例えば、μmサイズの粒子等の等方性散乱中心を含むシリコン高分子等のエラストマを有することができる。スペーサ要素110は剛体または半剛体であってもよく、下側のサンプル104の湾曲に合致するように成形することもできる。もしくは、スペーサ要素は充分に可撓性であり、サンプルにほぼ近いか、平坦面等の異なる形状のいずれかである緩和形状から、サンプル104に合致させることもできる。弾性的に変形可能なスペーサ要素を用いる利点は、押圧させるサンプル面に密に合致可能なことである。この構成の利点は、コリメートした入射ビームだけが必要とされるので、送出し光学系114は、適切な集束または発散ビームを供給する必要がないことである。
【0053】
上記の図10bの構成の変形形態は、スペーサ要素110内に、フィルタ散乱方向にサンプルを優位にする異方性散乱特性を含むことである。これは、例えば、この方向に延び、拡散性散乱球状μmサイズ粒子を混合したシリカファイバ等のファイバ要素を含むことによって実現される。
【0054】
周辺ミラー案内面116を用いて、湾曲サンプル104に平坦な送出しフィルタ112を適合させる別の構成は、図10cに示されている。送出しフィルタ112によってカバーされるサンプル104の面は凸状であり、フィルタとサンプルの間の得られるギャップには周辺ミラー案内面を設け、それによって囲まれたサンプル面から放出する拡散性散乱光の漏れを防止または低減し、この光を送出しフィルタに導き、サンプル104に向かって反射させる。
【0055】
一般に、周辺ミラー案内面は、送出しフィルタに対してほぼ垂直であり、フィルタとカバーされるサンプルの湾曲面の間の空間の周囲に延びている。このような周辺ミラー案内は、変形または適合させることなく、平坦面を含むサンプル面の湾曲範囲との結合を改善するのに有利である。
【0056】
図10dは、図10bと図10cの方式を組み合わせた構成を示しており、上記のスペーサ要素110の周囲には上記のミラー案内面116が設けられている。
【0057】
〔数値モデル〕
Matousek,P.らのApplied Spectroscopy 59, 1485(2005)で既に述べられている数値モデルを用いて、上記の光学容器31の有効性を示した。簡単に言うと、弾性散乱プローブビーム光子と非弾性散乱(例えば、ラマン散乱)光子は両方とも、三次元空間内をランダムウォーク方式で、モデル化した媒体を伝搬するように個別に従わせる。簡略化された仮定において、各ステップでは、光子は距離tにわたって直線状に伝搬し、その後、次の散乱事象においてその方向を充分にランダム化する。これは、個々の散乱事象の観点からはやや簡略的であり、しばしば前方に向かって強くバイアスされることが多い。しかし、ここで対象となる散乱事象の大部分では、この簡略化はランダム長を適切に選択することで正当化できる。光子方向がランダム化される伝搬距離tは、散乱媒体の輸送長ltとしておおよそ近似でき、これは、光子が元の伝搬方向から著しく逸脱する前に、サンプル内を進行しなければならない平均距離として定義される。
【0058】
図11aに示したように、サンプル200は均一な混濁媒体であり、半径6mmの短い円筒形であるとモデルでは考えている。第一空気−媒体界面202はz=0の上部の円形の面にあり、zは界面に対して法線方向のデカルト座標である。他のサンプルと空気の界面は、位置z=dにおけるサンプルの反対側の円形の面204(dはサンプルの厚さ)と、サンプルの円筒形の側面206に存在する。サンプルの厚さdは、シミュレーションでは、0.5mmから6mmまで0.5mmのステップで変化させた。
【0059】
モデルでは、全てのプローブ光子は輸送長ltに等しい深さにまず配置され、座標系xyの原点の周りに対称に分散させると仮定している。入射光のプローブビーム208の半径rは3mmであり、ビームは平坦な「最上層」強度プロファイルの均一な強度を備え、全ての光子はビーム断面内の任意の点において、サンプルに等しい確率で注入される。
【0060】
数値コードは、Mathematica 5.0 (Wolfam Research)で記述した。100,000個の光子を、各々400mmの全距離にわたって(2000ステップ)別個に伝搬させ、これは、ラマン分光分析で観察される移動時間と一致している。この伝搬距離内で媒体から検出されないかまたは損失した場合、光子は媒体自体によって吸収されると仮定したが、これは非常に弱い吸収が存在する場合である(OD〜1/40cm)。
【0061】
プローブ光子のラマン光子への変換に占める光学濃度は、1/1000mmに設定した。この値は実際の変換より高いが、ラマン光子の絶対数のみに影響し、研究範囲では対象の空間依存性には有意には影響せず、この値を上下に変化させて確認した。使用したステップサイズは、t=0.2mmであった。これは、各々0.9および0.95の異方性に対して10および20μmの粉末粒子径に対応する。計算は10回繰り返し、これらの繰り返し実行において全ての検出ラマン光子を合計した。
【0062】
モデルでは、二つの異なる集光幾何形状を仮定している。第一幾何形状では、光は、プローブビームが入射する際、サンプル面上の同じ領域210から上部サンプル面において集光される(後方散乱幾何形状)。第二幾何形状では、光は、プローブビームの投射軸を中心とする合同な領域211のサンプルの反対面から集光される(透過幾何形状)。モデル計算は、フィルタまたは反射要素がないと仮定し、透過および後方散乱幾何形状の両方に対して実行した。
【0063】
それから、図11b〜11fに示した特定の光学容器要素が存在する場合に、透過幾何形状の計算を実行した。図11bでは、送出しフィルタ212は、上から全てのプローブ光子を透過し、下からプローブおよびラマン光子の95%を反射する帯域通過フィルタによって提供される。送出しフィルタは、サンプルの上面202に隣接配置し、前面をカバーしている。図11cでは、集光フィルタ214は、ラマン光子の全てを透過し、レーザ光子の95%を混濁媒体に反射するエッジフィルタによって提供される。集光フィルタはサンプルの底面204に配置し、上面には送出しフィルタは存在していない。
【0064】
図11dでは、送出しフィルタ212が提供され、サンプルの側壁206は100%反射容器216によって取り囲まれ、プローブ波長およびラマン散乱光子の両方をサンプルに戻すが、集光フィルタは用いていない。図11eでは、送出しフィルタ212と集光フィルタ214が存在し、側壁ミラー反射要素を含む全ての三つの部品が存在している。
【0065】
図11bと11fの様々な透過幾何形状のモンテカルロシミュレーションの結果は図12aと13aに示されており、縦軸は集光領域210または211において集光されるラマン散乱光子のカウント数を表し、横軸は異なる厚さのサンプルを表している。図12aでは、曲線220は、光学容器要素がない場合に用いられる透過幾何形状から得られる。曲線222は、同様に容器要素がない場合に用いられる後方散乱幾何形状から得られる。
【0066】
後方散乱幾何形状の信号は、むき出しの厚さ4mmのサンプルの場合は透過モードより約3倍大きく、この厚さは医薬錠剤の一般的な厚さである。後方散乱モードの信号は、サンプルの厚さが増大するほど単調増加し、これは既に実験的に観察されている挙動である。透過幾何形状の場合、信号強度はラマン光子への変換に利用可能な光子経路が長くなるために、錠剤の厚さと共に最初は増大するが、約3mmを超えると信号は減少し始め、これは横方向の光子輸送の増大に起因する効果によって、集光開口部からより多くの光子が損失するためである。
【0067】
曲線224は、図11bに示した構成と共に用いられる透過幾何形状から得られ、この場合、プローブビームは送出しフィルタ212を介してサンプル内に入射する。モデルは、厚さ4mmのサンプルの場合、約9.4の係数だけ、反対側の面で集光される透過ラマン信号の増大を予測している。興味深いことに、この信号レベルは囲まれていないサンプルの後方散乱ラマン信号よりかなり大きい。送出しフィルタ(224、222)がある場合とない場合の透過幾何形状の曲線の比率は、図12bの「増大係数」224’としてプロットされているが、それは1mmを超える厚さの範囲の大部分にわたって約8〜10の間にある。
【0068】
図13aでは、曲線220は同様に、光学容器要素がない場合の透過幾何形状で集光されるラマン散乱光子を表している。曲線230は、図11cに示したように、集光フィルタ214を追加しているが送出しフィルタ212はないものから得られる。図13b内の対応する増大係数曲線230’に示したように、それ自体の上の集光フィルタは、検出されるラマン光子を約二倍まで発生させる。これは、予想される送出しフィルタのみの使用よりずっと弱い効果である。なぜならば、容器要素がない場合の最大の光子損失はプローブビームの入射点にあるためである。
【0069】
図12aの送出しフィルタ曲線224は比較のために示されており、図11dに示した追加のミラー側壁のミラー要素を用いることによって実現される検出ラマン強度の適度な増加は、曲線234(および図13bの増大係数曲線234’)として示されている。直径を小さくするかまたは厚さを増やしたサンプル物体200の場合、側壁ミラー容器はより大きな増大を提供する。
【0070】
曲線238は図11eの構成の場合であり、そこでは送出しフィルタと集光フィルタが用いられているが、ミラー側壁要素は存在しない。図13bにプロットされている増大係数238’は、厚さ最小0.5mmのサンプルの場合で約27.5であり、4mmで約14.6まで連続的に低下し、厚さ6mmの場合は約10まで低下するが、なお送出しフィルタのみの場合の曲線224’より高い。
【0071】
最後に、曲線242は図11fの構成の場合を示しており、そこでは送出しフィルタ、集光フィルタ、および側壁ミラー要素の三つが全て用いられ、増大係数242’は、サンプル厚さが増加するにつれて、曲線238’よりゆっくりと低下し、厚さ6mmで約12の係数まで低下する。
【0072】
全体的には、より厚いサンプルの場合、単一の最も有用な容器要素は送出しフィルタである。より薄いサンプルの場合、集光フィルタを用いる追加の利点が非常に重要であるが、サンプルの反対側に到達するプローブ光子が減少するため、サンプルの厚さが増加するにつれて利点は減少する。
【0073】
後方散乱幾何形状のモンテカルロシミュレーションの結果は、図14aに示されている。光学容器要素を用いない場合に、サンプルの上面から放出するラマン光子のカウント数を表す曲線222は、既に図12aに示されている。曲線248は同じ後方散乱幾何形状の場合であるが、サンプルの上面に対して送出し/集光結合フィルタが配置されている。従って、この構成は図11aに示したものと同様であるが、ただし、全てのラマン散乱光子が出射可能であり、プローブ光子の95%がサンプルに戻るように定義されている。この性能または同様の性能を実現するために用いられるフィルタ特性は、図7aと7bに示されている。厚さ4mmのサンプルの場合、曲線222のむき出しのサンプル結果上での増大係数は、図14bの増大係数曲線248’に示されているように約5.6である。
【0074】
ラマン散乱光子を透過し、同時に散乱プローブ光子の大部分を遮断するエッジ特性を備えたフィルタを用いる妥協点は、上記の図5の議論で述べた。基本的には、エッジはプローブ波長を充分に超えており、所望のラマン波長の光子は遮断することなく、浅い角度における散乱プローブ光子の入射は反射しなければならない。厚さ4mmのサンプルの増大係数は、プローブ波長830nmで、プローブ波長とラマン波長の間に(法線入射の場合)エッジ特性がある図3の周波数依存性を備えている誘電体フィルタに対して計算している。プローブ波長を超える1000、2000および3000cm-1にエッジがある場合、増大係数は1.8、2.8および4.3であると計算される。
【0075】
別のモンテカルロ実験では、図15のサンプル構成を用いた。円筒形サンプル200は、図11aのものと同じである。送出しフィルタ260は上面に隣接配置するが、中央の円形の界面領域のみをカバーし、その領域の直径は4mmであり、直径1mmのプローブビーム照射領域を中心とする。送出しフィルタ260は、プローブ光子と、そうでない場合には漏れるラマン散乱光子の95%をサンプルに反射することによって特徴付けられる。プローブビーム照射領域262を中心とする内径6mm、外径8mmの環状の集光領域264内のサンプルの上面から放出するラマン散乱光子をカウントした。
【0076】
環状の集光領域264を介して放出するラマン光子のカウント数は、図16aのサンプル200の様々な厚さに対して曲線266として示されている。対応する実験であるが送出しフィルタ260を省略した場合のカウント数は、曲線268として示されている。これらの曲線の比率は増大係数として示され、図16b(曲線270)の様々な厚さのサンプルに対して送出しフィルタを用いる利点を示している。厚さ4mmのサンプルの場合、増大係数は6.7である。
【0077】
図15の構成は、図9aと共に既に議論したものと同様である。図15の構成の一つの別の形態では、環状送出しフィルタと照射領域が中心の集光領域を取り囲んでいてもよい。ここで説明した送出しおよび集光フィルタ要素を適用可能な様々な他の送出しおよび集光幾何形状も、例えば、WO2006/061566で議論されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0078】
図17に概略的に示されている装置を用いて、本発明を実証するために更に研究室実験を実行した。827nmにおいて動作するラマン分光分析用減衰115mW温度安定化ダイオードレーザ300(micro Laser Systems, Inc, L4 830S-115-TE)を用いて、プローブビーム304を生成した。ビームは、二つの830nm帯域通過フィルタ(Semrock)を用いて、そのスペクトルから残留増幅自然放出成分を除去することによって、スペクトル的に純度を高めた。これらは、827nmレーザ波長に対するスループットを最適化するために、やや傾斜させた。サンプル306は、直径12.8mm、厚さ3.8mmの標準医薬錠剤によって提供され、プローブビームが隣接する送出しフィルタを透過した後、錠剤の円形の面の中心に垂直に入射するように配置した。サンプルにおけるレーザ出力は50mWであり、レーザスポット直径は4mm以下であった。ビームは、サンプルにおいて水平に偏光させた。
【0079】
ラマン光は、焦点距離60mm、直径50mmのレンズ310を用いて、サンプルの反対側から集光した。散乱光はコリメートし、直径50mmのホログラフィックノッチフィルタ312(830nm、Kaiser Optical Systems, Inc)を透過させ、光の弾性散乱成分を抑制した。また、フィルタは、827nmにおける抑制を最適化するためにやや傾斜させた。第一のものと同一の倍率1:1である第二レンズ314を用いて、22本の能動光ファイバからなるファイバプローブ320の前面にサンプル集光領域を結像させた。個々のファイバは、コア直径220μm、ドープシリカクラッド直径240μm、ポリイミド被膜直径265ミクロンを備えているシリカから構成した。ファイバの開口数は、0.37であった。束は、CeramOptec Industries, Inc.による特注品であった。ファイバ束の長さは約2mであり、出力端部においてファイバは垂直方向の直線状に構成し、Kaiser Optical Technologies Holospec 1.8i NIR spectrograph 322の入力画像面内に配置した。ラマンスペクトルは、全体のチップを垂直にビニングすることによって、NIR背面照射深欠乏TE冷却CCDカメラ324(Andor Technology, DU420A-BR-DD、1024×256画素)を用いて集光した。スペクトルの校正は、様々な検出システム感度に対してスペクトル範囲全体では行わなかった。
【0080】
サンプルのレーザビーム照射領域上に配置された送出しフィルタ308は、830nmに中心がある帯域幅3.2nm、直径25mmのSemrock誘電体帯域通過フィルタ(LL01-830-25, MaxLine Lazer-line Filter)であった。レーザ波長(827nm)とフィルタ波長の間のわずかな不一致は、サンプル306における入射ビームに小さな傾斜を導入することによって補償した。不一致は送出しフィルタ素子の効率をやや低下させたが、ラマン信号の実質的な増大はなお存在した。
【0081】
上記の構成を用いたCCDカメラ324からの生の光子カウント数のデータは、図18aのレーザ周波数の異なる波長範囲上でプロットされている。下側の曲線350は送出しフィルタ308を省略した実験の場合であり、上側の曲線352は送出しフィルタを配置した場合であり、各場合における暴露時間は同じ10秒である。図18bには同じデータを示したが、曲線350の垂直メモリを係数6.5だけ拡大した。追加の送出しフィルタを使用することによって、全体のスペクトル範囲にわたって約6.5の均一な増大係数が実現されていることが分かる。
【0082】
実験の増大は、対応するモンテカルロ数値実験の場合に見られる値9.4より小さいが、これはモデルと実際のサンプルの間の散乱長の違い、およびレーザ波長と送出しフィルタ波長の間のわずかな不一致から容易に説明される。それでもなお、増大係数は非常に高い。
【0083】
重要なことに、錠剤に隣接して送出しフィルタを後で再実装しても増大は良好な再現性を示し、フィルタを配置する際の一時的な変動は観察されなかった。また、増大は測定されるラマンスペクトル全体にわたって均一であったが、これはスペクトルパターンが、複数の個々の成分を識別したり、相対的な濃度を決定する手段として役立つ化合物解析を含む用途で重要となる。
【0084】
本発明は一般に、サンプルのラマン分光分析が必要とされる実施形態と共に説明してきたが、散乱媒体内に入射光を保持する必要がある任意の状況に対して、より一般的に適用できる。いくつかの実施形態では、例えば、散乱光の集光または解析は必要とされない。
【0085】
図19は、レーザ382を用いて生成された光を人間または動物の患者384に送出しし、例えば、様々な光線力学療法で知られているように、患者に導入された物質を含む化学反応を引き起こす光学ヘッド380を示している。コリメータ388’と共に患者の面に隣接した送出しフィルタ386を用いることは、患者内に誘導された光を優先的に保持し、非常に低いレーザ出力を用いることを可能にする。
【0086】
特定の用途は光熱癌治療等の光熱治療にあり、そこでは、吸収本体を含む組織に電磁波が送出しされる。最近の研究では、適切に形成したナノ粒子を含む組織に近赤外線を送出しする(例えば、GobinらのNano Lett, 7(7), 1929-1934, 2007参照)。本発明は、本明細書で説明した送出しフィルタを介して組織に、放射線、一般にレーザ放射を導くことによって、光熱治療を実行する改善された方法を提供し、それによって組織内の放射線の強度を増大させ、入射ビームの出力を増大させる必要はない。
【0087】
他の用途は、NIR吸収または蛍光光学断層撮影および分光分析を含んでいる。
【0088】
散乱反射性サンプルは、例えば、関連の入射光の光子の散乱事象の間の一般的な経路長が、サンプルのサイズよりずっと短い、例えば、サンプルの特徴的なサイズ(入射光ビームの軸内の厚さ等)より少なくとも10倍、より好ましくは100倍短く、入射光ビームの方向性構造が非常に素早く損失するサンプルとして定義できる。
【0089】
添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施例に対して様々な変更および修正を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光ビームを散乱反射性サンプルに導く方法であって、
前記サンプルに隣接して送出しフィルタを配置し、当該送出しフィルタは、前記入射光の反射が前記フィルタにおける前記入射光の入射角に依存する特性を有し、
前記入射光ビームについて、前記送出しフィルタをビーム入射角にて通過させて前記サンプルに導き、
前記サンプルから拡散的に後方散乱されて前記送出しフィルタに到達する入射光は、前記送出しフィルタによって優先的に前記サンプルに向かって反射される、方法。
【請求項2】
前記入射光は所定の波長からなり、前記送出しフィルタは、より浅い入射角で入射するとき、前記所定の波長の光をより強く反射するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送出しフィルタによる前記入射光の前記反射は、前記ビーム入射角より大きい入射角において増大する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタの前記特性は入射光透過形状を備え、前記形状は、前記ビーム入射角において入射光の波長と一致し、入射角が増大すると、より短い波長にシフトする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタ特性は、前記ビーム入射角における入射ビームの波長より長い波長において前記入射光反射形状を備え、より大きな入射角においてビーム波長をカバーするために、より短い波長にシフトする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記送出しフィルタにおけるビームは、コリメートまたは半コリメートされている、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記送出しフィルタは、多層誘電体フィルタである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記送出しフィルタは、ホログラフィックフィルタである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記送出しフィルタは、前記サンプルにおける入射ビームの直径より小さい距離だけ、前記サンプルから離隔している、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記送出しフィルタは、前記送出しフィルタの直径より小さい距離だけ、前記サンプルから離隔している、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記送出しフィルタは、前記サンプルの直径より小さい距離だけ、前記サンプルから離隔している、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記送出しフィルタを湾曲させて、当該フィルタによってカバーされる前記サンプルの湾曲面に一致するように適合させる、請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
更に、カバーされる前記サンプルの面と前記送出しフィルタの間に、散乱反射性スペーサ要素を提供することを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサ要素は変形可能であり、前記サンプルの湾曲面に適合されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スペーサ要素は、異方性散乱特性を備えている、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
更に、前記送出しフィルタとカバーされる前記サンプルの表面の間の空間を取り囲む周辺ミラー案内部を提供し、そうでない場合に、カバーされる領域のエッジの周りから漏れる拡散性散乱光を保持することを含む、請求項1〜15に記載の方法。
【請求項17】
更に、前記サンプルから散乱される光を集光し、前記光を解析し、前記集光される光の一つ以上のスペクトル特徴を検出する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記一つ以上のスペクトル特徴が、ラマン散乱形状である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
集光される光が、前記サンプルから散乱された後、前記送出しフィルタを介して集光される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
集光される光が、前記サンプルから散乱された後、前記送出しフィルタとは別個の集光フィルタを介して集光される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
散乱反射性サンプル内の入射光の強度を増大させる光学容器であって、送出しフィルタを含み、当該送出しフィルタは、入射光ビームについて、前記送出しフィルタをビーム入射角にて通過させて前記サンプルに導くためのものであり、
前記送出しフィルタは、前記入射光の前記送出しフィルタに対する入射角が前記ビーム入射角から離れるほど当該入射光の反射が増大する特性を有し、
前記サンプルから拡散的に散乱される入射光は、前記送出しフィルタによって優先的に前記サンプルに向かって反射される、光学容器。
【請求項22】
前記送出しフィルタの前記特性は、入射角の増大につれて前記入射光の反射を増大させるようにする、請求項21に記載の光学容器。
【請求項23】
前記送出しフィルタの前記特性は、より大きな入射角の入射光より短い波長にシフトさせる透過領域を含む、請求項21または22に記載の光学容器。
【請求項24】
前記送出しフィルタがより短い波長透過エッジ形状を備え、前記エッジ形状の波長が、入射角の増大と共により短い波長にシフトし、入射光をビーム入射角において透過させ、より大きい入射角の範囲において著しく反射させる、請求項21〜23のいずれかに記載の光学容器。
【請求項25】
前記送出しフィルタは、前記入射光ビームの波長とビーム入射角に適合させた帯域通過波長領域を備えている帯域通過フィルタである、請求項21〜23のいずれかに記載の光学容器。
【請求項26】
前記送出しフィルタは、前記入射光ビームの入射角より大きなビーム角の範囲において、入射光を遮断するように適合させた遮断波長領域を備えているノッチフィルタである、請求項21〜23のいずれかに記載の光学容器。
【請求項27】
前記送出しフィルタは、前記サンプルに隣接している、請求項21〜26のいずれかに記載の光学容器。
【請求項28】
前記送出しフィルタは、サンプルの直径より小さい距離だけ前記サンプルから間隙を介している、請求項27に記載の光学容器。
【請求項29】
前記送出しフィルタを湾曲させ、前記フィルタによってカバーされる湾曲したサンプル面に一致させる、請求項21〜28のいずれかに記載の光学容器。
【請求項30】
更に、前記送出しフィルタと前記サンプルの湾曲面の間に配置した散乱反射性スペーサ要素を含む、請求項21〜28のいずれかに記載の光学容器。
【請求項31】
前記スペーサ要素は変形可能であり、前記サンプルの湾曲面に適合されている、請求項30に記載の光学容器。
【請求項32】
前記スペーサ要素は、異方性散乱特性を備えている、請求項30または31に記載の光学容器。
【請求項33】
更に、前記送出しフィルタとカバーされる前記サンプルの表面の間の空間を取り囲む周辺ミラー案内部を含み、そうでない場合に、前記サンプルと前記フィルタの間で損失する拡散性散乱光を保持する、請求項21〜32のいずれかに記載の光学容器。
【請求項34】
前記送出しフィルタは、前記サンプルから散乱され、前記フィルタに到達する入射光の少なくとも50%を、前記サンプルに向かって反射するように構成される、請求項21〜33のいずれかに記載の光学容器。
【請求項35】
前記送出しフィルタは、誘電体多層フィルタまたはホログラフィックフィルタである、請求項21〜34のいずれかに記載の光学容器。
【請求項36】
更に、前記サンプルから散乱する入射光を前記サンプルに向かって反射するが、前記入射光とは異なる波長を備えているスペクトル特徴を透過する集光フィルタを含む、請求項21〜35のいずれかに記載の光学容器。
【請求項37】
検出されるスペクトル特徴は、散乱反射性サンプルによって、入射光より長い波長にストークスシフトされるラマンスペクトル特徴である、請求項36に記載の光学容器。
【請求項38】
前記集光フィルタは、入射光波長と検出されるスペクトル特徴の間にあるエッジを備えている長波長通過フィルタを含む、請求項36または37に記載の光学容器。
【請求項39】
更に、前記送出しフィルタの前記特性は、検出されるスペクトル特徴を透過するように適合させた透過形状を含む、請求項21〜35のいずれかに記載の光学容器。
【請求項40】
更に、前記送出しフィルタによってカバーされていないサンプルの部分にわたって配置された一つ以上のミラー面を含み、前記サンプルから散乱される光を前記サンプルに反射する、請求項21〜39のいずれかに記載の光学容器。
【請求項41】
散乱反射性サンプルのスペクトル特徴を検出する装置であって、
請求項16〜40のいずれかに記載の光学容器と、
前記入射光ビームを形成するように適合させた入射光源と、前記送出しフィルタを介して、前記サンプルに前記入射光ビームを導くように配置した送出し光学系と、前記サンプルから散乱される光を集光するように配置した集光光学系と、
前記集光した光の一つ以上のスペクトル特性を検出するように配置した検出器と、を含む装置。
【請求項42】
散乱反射性サンプルからの一つ以上のスペクトル特徴を検出する装置であって、入射光ビームが、入射ビームの入射角において透過し、前記サンプルに到達可能なように適合させた送出しフィルタを含み、前記送出しフィルタが、前記入射角において入射ビームの波長に一致し、より大きい入射角において、より短い波長にシフトする透過特性を備えた多層誘電体フィルタであり、前記フィルタが、前記サンプルから拡散的に散乱される入射光を前記サンプルに向かって優先的に反射することを特徴とする装置。
【請求項43】
前記サンプルから後方散乱され前記送出しフィルタに到達する入射光の少なくとも50%が、前記サンプルに向かって反射される、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記送出しフィルタが、前記フィルタの直径より小さいサンプルからの距離内に配置される、請求項42または43に記載の装置。
【請求項45】
前記入射ビームは、ビーム直径を有し、前記送出しフィルタは、当該入射ビーム直径より小さいサンプルからの距離内に配置される、請求項42〜44に記載の装置。
【請求項46】
前記送出しフィルタは、前記サンプルの領域をカバーするように配置される、請求項42〜45に記載の装置。
【請求項47】
散乱反射性サンプルの照射方法であって、
前記サンプルの領域を送出しフィルタでカバーし、
前記送出しフィルタを介して、前記サンプルに所定の波長のコリメートされた光ビームを導き、
前記領域内の前記サンプルから拡散的に散乱される前記所定の波長の光をサンプルに優先的に反射するように、前記送出しフィルタを適合させる方法。
【請求項48】
前記送出しフィルタは、より浅い入射角において、より短い波長にシフトする透過および/または反射特性を備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記送出しフィルタ特性が、第一の範囲の入射角において所定の波長と一致し、第二の範囲の入射角において、所定の波長からシフトされる透過領域を備えている、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記送出しフィルタ特性は、実質的に法線方向の入射角において、所定の波長に一致する透過領域を備えている、請求項47、48または49に記載の方法。
【請求項51】
入射波長の光で照射される散乱反射性サンプルからスペクトル的に変化した光を集光する方法であって、
サンプルの領域を集光フィルタでカバーし、
集光フィルタを介して前記スペクトル的に変化した光を集光し、
前記領域内のサンプルから拡散的に散乱された前記入射波長の光をサンプルに反射するように、前記集光フィルタを適合させ、前記スペクトル的に変化した光を優先的に透過可能にする方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a−b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a−f】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−521662(P2010−521662A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553213(P2009−553213)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000919
【国際公開番号】WO2008/110825
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】