説明

散布用蓄光チップの製造方法

【課題】本発明は、蓄光機能を有する装飾用の散布用蓄光チップの製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明は、合成樹脂組成物を主体とし、配合剤として、可塑剤、安定剤、蓄光顔料、充填剤、白色顔料を含有させて、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を押出又はカレンダーロールにより、シート状に形成し、これらシート層をラミネート加工・プレス加工により3層構造物に仕上げるか、或いは3層Tダイ押出法により、一度に3層構造物からなる積層シートに仕上げた後に、前記積層シートを、粉砕、分別、粒状、又は鱗片状のチップとし、床材又は標識用シート及び成形物、住宅関連部材、日用雑貨品等に散布出来るようにした蓄光機能を有する装飾用の散布用蓄光チップの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂組成物を主体とし、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層の3層構造物からなる積層シートを形成し、該積層シートを粉砕して得られる粉砕物からなるチップを用い、床材又は標識用シート及び成形物、住宅関連部材、日用雑貨品等の表面に蓄光機能を持たせた装飾用の散布用蓄光チップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光顔料含有の合成樹脂チップは、暗所に於ける表示機能を持たせていたが、蓄光顔料含有の樹脂チップ単層では、粉砕工程で粉砕機の刃による摩擦で黒く変色し、蓄光機能が充分に発揮できず、汚れ易いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまで、蓄光顔料を含有する装飾用の散布用チップは、高価な蓄光顔料を含有した樹脂層を、床材又は標識用シート及び成形物、住宅関連部材、日用雑貨品等の全面に敷いたり貼ったりするよりは、コスト的に優位であり、またデザイン的にも自由度があるが、以下の解決すべき課題がある。
1)蓄光顔料を含有する樹脂組成物を粉砕し、整粒し、散布用チップを製造する時、蓄光顔料が非常に硬いため、摩擦により粉砕機の刃が摩耗して、チップに黒ずみが発生していた。
2)蓄光顔料を含有する樹脂組成物は、含有される蓄光顔料が粗いため、表面があれ、汚れ易いという問題点があった。
3)蓄光顔料を含有する樹脂組成物は、光を透過し易く、単体では、蓄光性能を充分に発揮出来ない。従って、樹脂組成物の蓄光性能を充分に発揮させるためには、蓄光顔料を含有する樹脂組成物層の下層に白色の光隠蔽層を設けてやる必要があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するために開発されたもので、その目的とするところは、蓄光顔料含有の樹脂チップ製造時、粉砕機の刃との摩擦による黒ずみ防止、表面の汚れ防止、及び十分な表示(蓄光)機能を付与しながら、コスト的、デザイン的優位性を持たせることである。
【0005】
又、粉砕工程に於ける黒ずみ現象を減少させたチップを散布することで、蓄光表示機能を充分に発揮・維持し、表面の透明層によって汚れにくい効能を有する床材又は標識用シート及び成形物、住宅関連部材、日用雑貨品等を提供できるようにした散布用蓄光チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、散布用蓄光チップの製造方法において、合成樹脂組成物を主体とし、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を有する3層構造物からなる積層シートを形成し、該積層シートを破砕工程によって粉砕物を形成し、散布用蓄光チップとしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の散布用蓄光チップの製造方法において、合成樹脂組成物は、配合剤として、可塑剤、安定剤、蓄光顔料、充填剤、白色顔料を含有させ、それぞれの層を押出又はカレンダーロールにより、シート化したものを、ラミネート加工・プレス加工、又は3層Tダイ押出法により、一度に3層構造物に仕上げた後に、前記3層構造物を粉砕、分級し、粒状又は鱗片状のチップとすることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の散布用蓄光チップの製造方法において、合成樹脂組成物に使用する合成樹脂としては、塩化ビニール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレンビニールアセテート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネイト)、MMA(メチルメタクリル)、PA(ポリアミド)からなる群の少なくとも1種類から選択されたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の散布用蓄光チップの製造方法において、蓄光顔料の含有量は樹脂組成物に対し、0.5〜60重量%、好ましくは5〜40重量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、塩化ビニール樹脂等の各種合成樹脂を主体とした合成樹脂組成物を、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を有する3層構造物からなる積層シートを形成し、該積層シートを粉砕工程によって粉砕物を形成し、散布用蓄光チップとしたので、粉砕工程に於ける黒ずみ現象は極端に減少した。こうして製造され散布されたチップは、蓄光層が下部に白色隠蔽を持つため蓄光表示機能を充分に発揮・維持し、表面に透明層があるために汚れにくい効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明は、第1層を透明層、第2層を蓄光顔料含有層、第3層を白色隠蔽層となるように、前記第2層の蓄光顔料含有層が間にはさまれたサンドウィッチ構造物からなる積層シートを形成し、この3層構造物からなる積層シートを粉砕することで、粉砕機の刃は、蓄光顔料含有層に直接あたる確率が減り、黒ずみ現象はほとんど発生しない。また、粉砕されたものを散布すると、確率1/2で、透明層か、白色層が見えることになる。
【0012】
更に、透明層が上にくると、蓄光顔料含有層の表面は透明層に覆われて汚れにくく、蓄光顔料含有層の下層には白色隠蔽層があるため、光を蓄光し易くなる。
更にまた、白色層が上にくると、白の粉砕チップの模様を形成するようになって、床材又は標識用シート及び成形物、住宅関連部材、日用雑貨品等に対して極めて良好な散布用蓄光チップとなる。
【0013】
本発明は図1に示すように、塩化ビニール樹脂などからなる合成樹脂組成物を主体とした最上層の透明層1、中間層の蓄光顔料含有層2、最下層の白色隠蔽層3から成る3層構造物4を、3層Tダイ押出法、ラミネート法、又はプレス法にて、0.6mm〜1.5mmの厚さ寸法、1000〜2000mmの長さ寸法、5〜900mmの幅寸法の積層シート状の長尺巻きに成型したものを2mm〜30mm程度の大きさに粉砕し、整粒・分別後、床材、標識用シート及び住宅関連部材、日用雑貨の成型物の表面に散布することにより、蓄光性のある粒状又は鱗片状の模様を形成する素材を製造する。
【0014】
前記合成樹脂組成物として塩化ビニール樹脂組成物を用い、可塑剤を0〜60重量%添加し、柔軟性の度合を調整し、安定剤は主体樹脂の耐熱性、加工性の付与を目的として、3〜5 重量%添加する。
蓄光顔料は、暗所での表示機能付与の目的で、輝度、残光時間の要求度合により、2〜40重量%を添加する。
白色層は、蓄光機能を増進させる目的で、つまり蓄光顔料含有層を透過した光を止める隠蔽層としての機能と、表面に出た時の白色層模様の形成を目的に白色に着色するものである。
【0015】
また、前記合成樹脂組成物に使用した塩化ビニール樹脂以外の合成樹脂として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレンビニールアセテート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネイト)、MMA(メチルメタクリル)、PA(ポリアミド)からなる群の少なくとも1種類から選択された樹脂を使用し、前述した3層構造物を2mm〜30mmに粉砕、整粒、分別した後に、床材、標識用シート及び住宅関連部材、日用雑貨品の成型物の表面に散布する表示機能を有するチップとして形成する。
【0016】
更に、前記塩化ビニール樹脂組成物に使用する蓄光顔料は、5〜40重量%であるが、要求される輝度や残光時間により、投入重量%、蓄光顔料含有層の厚みを決める必要があるが、蓄光顔料の種類としては、下記の構造の顔料を用いることができる。
グリーン SrAl:EuDy
ブルー CaAl:EuDy
CaAlOu:EuNd+SrAl1425:EuDy
【0017】
前記塩化ビニール樹脂組成物の配合剤として用いられる材料としては、可塑剤、安定剤、顔料、充填剤がある。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジイソデンシルフタレート、ジイソノニールフタレート、ジオクチルアジペート、トリジエチルヘキシルトリメリテート等があり、使用量として0〜60重量%である。
安定剤としては、バリューム亜鉛系、カルシウム亜鉛系、有機錫系があり、肋剤としてエポキシ化大豆油があり、使用量としては3〜5重量%である。
蓄光顔料としては、代表的なものとして、根本特殊化学株式会社製(ルミノーバ)やイージブライト株式会社製があるが、その使用量は2〜40重量%である。
白色隠蔽層の白色顔料としては、酸化チタンを1〜5重量%添加する。
【0018】
また、同じ白色隠蔽層には充填剤を添加することも出来る。
充填剤の種類とすれば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク・クレー等があり、使用量として0〜200重量%である。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の散布用蓄光チップの製造方法に用いる、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層の3層構造物からなる積層シートの形成における実施例について説明する。
【0020】
透明層としては、 (配合比)重量%
ポリ塩化ビニール樹脂(重合度700〜3000) 100
可塑剤 0〜60
安定剤 5
エポキシ大豆油 3
を混合攪拌機によって混合し、この混合物によって厚さ寸法が0.2〜0.5mm、幅寸法が5〜900mm、長さ寸法が1000〜2000mmのシート状又は長尺巻のシート状に形成する。
蓄光顔料含有層としては、 (配合比)重量%
ポリ塩化ビニール樹脂(重合度700〜3000) 100
可塑剤 0〜60
安定剤 5
エポキシ大豆油 3
蓄光顔料 3〜85
を混合攪拌機によって混合し、この混合物によって厚さ寸法が0.2〜0.5mm、幅寸法が5〜900mm、長さ寸法が1000〜2000mmのシート状又は長尺巻きのシート状に形成する。
白色隠蔽層としては、 (配合比)重量%
ポリ塩化ビニール樹脂(重合度700〜3000) 100
可塑剤 0〜60
安定剤 5
エポキシ大豆油 3
炭酸カルシウム 25
酸化チタン 4
を混合攪拌機によって混合し、この混合物によって厚さ寸法が0.2〜0.5mm、幅寸法が5〜900mm、長さ寸法が1000〜2000mmのシート状又は長尺巻きのシート状に形成する。
そして、前記透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を上から順に積層して3層構造物からなる積層シートを形成する。
【実施例2】
【0021】
透明層としては、 (配合比)重量%
エチレンビニールアセテート樹脂 100
(酢酸ビニールコンテントVA5〜30%)
蓄光顔料層としては、 (配合比)重量%
エチレンビニールアセテート樹脂 100
(酢酸ビニールコンテントVA5〜30%)
蓄光顔料 3〜65
滑剤(安定剤) 0.5
白色隠蔽層としては (配合比)重量%
エチレンビニールアセテート樹脂 100
(酢酸ビニールコンテントVA5〜30%)
炭酸カルシウム 50
滑剤(安定剤) 0.5
酸化チタン 5
を混合攪拌機によって混合し、この混合物によって、厚さ寸法が0.2〜0.5mm、幅寸法が5〜900mm、長さ寸法が1000〜2000mmのシート状又は長尺巻きのシート状に形成する。
そして、前記透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を上から順に積層して3層構造物からなる積層シートを形成する。
【実施例3】
【0022】
透明層としては、 (配合比)重量%
ポリエチレンテレフタレート樹脂 100
蓄光層としては、 (配合比)重量%
ポリエチレンテレフタレート樹脂 100
蓄光顔料 3〜65
白色隠蔽層としては、 (配合比)重量%
ポリエチレンテレフタレート樹脂 100
酸化チタン 4
を混合攪拌機によって混合し、この混合物によって、厚さ寸法が0.2〜0.5mm、幅寸法が5〜900mm、長さ寸法が1000〜2000mmのシート状又は長尺巻きのシート状に形成する。
そして、前記透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を上から順に積層して3層構造物からなる積層シートを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の散布用蓄光チップの製造方法において使用する3層構造物の積層シートの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 透明層
2 蓄光顔料含有層
3 白色隠蔽層
4 3層構造物(積層シート)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂組成物を主体とし、透明層、蓄光顔料含有層、白色隠蔽層を有する3層構造物からなる積層シートを形成し、該積層シートを破砕工程によって粉砕物を形成し、散布用蓄光チップとしたことを特徴とする散布用蓄光チップの製造方法。
【請求項2】
前記合成樹脂組成物は、配合剤として、可塑剤、安定剤、蓄光顔料、充填剤、白色顔料を含有させ、それぞれの層を押出又はカレンダーロールにより、シート化したものを、ラミネート加工・プレス加工により3層構造物に仕上げるか、或いは3層Tダイ押出法により、一度に3層構造物に仕上げた後に、前記3層構造物を、粉砕、分級、粒状、又は鱗片状のチップとしたことを特徴とする請求項1に記載の散布用蓄光チップの製造方法。
【請求項3】
前記合成樹脂組成物に使用する合成樹脂としては、塩化ビニール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレンビニールアセテート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネイト)、MMA(メチルメタクリル)、PA(ポリアミド)からなる群の少なくとも1種類から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の散布用蓄光チップの製造方法。
【請求項4】
前記蓄光顔料の含有量は合成樹脂組成物に対し、0.5〜60重量%、好ましくは5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の散布用蓄光チップの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−119884(P2008−119884A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303864(P2006−303864)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(502057636)株式会社テイエイピイ (2)
【Fターム(参考)】