説明

数値制御装置及びクランプ解除方法

【課題】制御軸の移動の指示があった場合に速やかに制御軸を移動できる数値制御装置及びクランプ解除方法を提供する。
【解決手段】数値制御装置はNCプログラム中に制御軸移動指令があった場合、クランプ制御装置にアンクランプ信号を出力する(S11)。回転テーブルを移動させる目標移動量のうちの微小移動量の移動を指示する第一移動指令を回転テーブル駆動モータに送信する(S16)。回転テーブルはアンクランプされた直後に移動できる。回転テーブル装置は高速駆動が可能となる。さらに回転テーブルが移動した場合(S17:YES)、目標移動量から微小移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を回転テーブル駆動モータに送信する(S18)。回転テーブルは当初の目標移動量を速やかに移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置及びクランプ解除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転テーブル装置を備えた工作機械がある。回転テーブル装置は工作物を回転可能に保持する。回転テーブル装置はクランプ機構を備えている。クランプ機構は工作物を加工する際に工作物が動かないように回転テーブル装置の制御軸の移動を機械的に阻止する。工作機械を制御する数値制御装置は、制御軸を移動する際に先ずクランプ機構によるクランプを解除(アンクランプ)して制御軸の移動を可能にする。次に目標位置まで制御軸の移動を行う。次にクランプ機構によるクランプにより制御軸を固定して加工作業を行う。特許文献1が開示する回転テーブルは、サーボモータに繰り返し正回転と逆回転方向とに微小回転させるトルク変動による微小な揺動を与え、その時の回転テーブルの揺動の振幅からクランプ状態であるか否かの確認を行う。この技術は、クランプの解除にも応用できる。サーボモータに繰り返し正回転と逆回転方向とに微小回転させるトルク変動による微小な揺動を与え、その時の回転テーブルの揺動の振幅からアンクランプ状態であるか否かの確認を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4422187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する技術では、アンクランプ状態であることを確認した後、制御軸が停止している状態から移動を開始する。故にアンクランプ状態の確認から移動開始までを速やかに行うことができず、目標位置までの移動に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、制御軸の移動の指示があった場合に速やかに制御軸を移動できる数値制御装置及びクランプ解除方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る数値制御装置は、制御軸の移動を行う移動機構と、前記移動機構を駆動させる移動駆動部と、前記制御軸の移動の阻止及びその阻止の解除を行うクランプ機構とを有する工作機械を制御する数値制御装置であって、前記制御軸の移動の指示が有るか否かを判断する移動指示判断手段と、前記移動指示判断手段が前記移動の指示があったと判断した場合に、前記制御軸の移動の阻止の解除を指示する解除指令を前記クランプ機構に出力する解除指令出力手段と、前記解除指令出力手段が前記解除指令を出力した場合に、前記制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する第一移動指令を前記移動駆動部に出力する第一移動指令出力手段と、前記制御軸が移動したか否かを判断する移動判断手段と、前記移動判断手段が前記制御軸が移動したと判断した場合に、前記移動量から前記所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を前記移動駆動部に出力する第二移動指令出力手段とを備えている。
【0007】
第1態様に係る数値制御装置では、解除指令出力手段が解除指令を出力した場合、第一移動指令出力手段は第一移動指令を移動駆動部に出力する。第一移動指令は、制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する指令である。故に制御軸は移動の阻止が解除された直後に移動できる。移動判断手段が制御軸は移動したと判断した場合、第二移動指令出力手段は第二移動指令を移動駆動部に出力する。第二移動指令は移動量から所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する指令である。制御軸は残存移動量を移動することで当初の移動量を移動できる。故に本態様は制御軸の移動の指示があった場合に速やかに制御軸を移動できる。
【0008】
また、第1態様において、前記移動駆動部はサーボモータであって、前記第一移動出力手段によって前記第一移動指令が出力された場合に、前記サーボモータが前記移動機構に出力する出力電流を所定値以下に制限する電流制限手段を備えてよい。第一移動指令を出力してもサーボモータは移動の阻止が解除されるまでは制御軸を移動できない。サーボモータが移動機構に出力する出力電流は上昇する。電流制限手段は移動機構に出力する出力電流を所定値以下に制限する。故に本態様は出力電流が過剰に上昇するのを防止できる。
【0009】
また、第1態様において、前記サーボモータの軸の回転を検出するエンコーダを備え、前記移動判断手段は、前記エンコーダによって前記軸の回転を検出した場合に、前記制御軸が移動したと判断してもよい。故に本態様は制御軸の移動を確実に判断できる。
【0010】
また、第1態様において、前記第二移動指令出力手段によって前記第二移動指令が出力された場合に、前記電流制限手段による前記出力電流の制限を解除する解除手段を備えてもよい。故に本態様はサーボモータの出力電流を通常状態に戻すことができる。
【0011】
本発明の第2態様に係るクランプ解除方法は、制御軸の移動を行う移動機構と、前記移動機構を駆動させる移動駆動部と、前記制御軸の移動の阻止及びその阻止の解除を行うクランプ機構とを有する工作機械を制御する数値制御装置によって行われるクランプ解除方法であって、前記制御軸の移動の指示が有るか否かを判断する移動指示判断工程と、前記移動指示判断工程において前記移動の指示があったと判断した場合に、前記制御軸の移動の阻止の解除を指示する解除指令を前記クランプ機構に出力する解除指令出力工程と、前記解除指令出力工程において前記解除指令を出力した場合に、前記制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する第一移動指令を前記移動駆動部に出力する第一移動指令出力工程と、前記制御軸が移動したか否かを判断する移動判断工程と、前記移動判断工程において前記制御軸が移動したと判断した場合に、前記移動量から前記所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を前記移動駆動部に出力する第二移動指令出力工程とを備えている。
【0012】
第2態様に係るクランプ解除方法では、解除指令出力工程にて解除指令を出力した場合、第一移動指令出力工程において第一移動指令を移動駆動部に出力する。第一移動指令は、制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する指令である。故に制御軸は移動の阻止が解除された直後に移動する。移動判断工程にて制御軸は移動したと判断した場合、第二移動指令出力工程において第二移動指令を移動駆動部に出力する。第二移動指令は移動量から所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する指令である。制御軸は残存移動量を移動することで当初の移動量を移動できる。故に本態様は制御軸の移動の指示があった場合に速やかに制御軸を移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】工作機械1の斜視図である。
【図2】図1に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図3】数値制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】加工制御処理のフローチャートである。
【図5】制御軸移動処理のフローチャートである。
【図6】制御軸移動処理のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態である数値制御装置50について、図面を参照して説明する。数値制御装置50はNCプログラムに基づき、図1に示す工作機械1の軸移動、切削動作、工具交換動作等を制御する。工作機械1は工作物(図示略)と工具6との相対移動により工作物を切削する。制御軸とは工作機械1のXYZ軸とは異なる付加軸における移動を制御する機構をいい、本実施例では回転テーブル4(図2参照)である。
【0015】
工作機械1の構造について簡単に説明する。図1に示すように、工作機械1は、ベース2、コラム5、主軸ヘッド7、主軸(図示略)、及び回転テーブル装置10等を備えている。コラム5はベース2の上部後方に立設する。主軸ヘッド7はコラム5の前面に沿って昇降する。主軸ヘッド7はZ軸モータ73の駆動によりZ軸方向に移動する。主軸は主軸ヘッド7の下部に設けてある。主軸は工具6のホルダ16を装着する装着部(図示省略)を有し、主軸モータ74の駆動で回転する。工具6は、例えばドリル、センタドリル、タップ等である。工具6は主軸と共に回転し、回転テーブル装置10が保持する工作物を切削する。工具交換装置(図示略)は主軸に装着した工具6を適時他の工具と交換する。
【0016】
回転テーブル装置10はベース2の上部に設けたスライドテーブル15上に固定してある。スライドテーブル15は水平面内でXY軸方向に移動可能である。回転テーブル装置10は工作物を回転テーブル4(図2参照)上で回転させる。工作機械1は工作物をスライドテーブル15でXY方向に送り、回転テーブル装置10の回転テーブル4上を回転させ、設定位置で固定(クランプ)して切削加工を行う。
【0017】
回転テーブル装置10の構造について説明する。図2に示すように、回転テーブル装置10は筒状のハウジング21を備えている。ハウジング21はベアリング22をネジ46により内部に取り付けている。ハウジング21は大歯車26とスピンドル23とを一体して同軸上に回転可能に支持している。大歯車26とスピンドル23とはベアリング22を挟み込んでネジ45で固定している。ハウジング21はピニオン25を回転可能に支持している。ピニオン25は大歯車26の回転軸と直交する位置関係において大歯車26と噛合している。ピニオン25と大歯車26とは食い違い傘歯車機構を構成している。
【0018】
スピンドル23の軸線方向一端部には、円盤状の回転テーブル4をネジ47で取り付けている。回転テーブル4は保持具(図示略)で工作物を保持する。スピンドル23の前記一端部と反対側の他端部にはボス28をネジ48で取り付けている。スピンドル23とボス28との間にはディスク32を挟み込んでいる。ディスク32とスピンドル23との間にはOリング42を挟み込んでいる。ディスク32とボス28との間とにはOリング41を挟み込んでいる。
【0019】
ハウジング21における回転テーブル4と反対側の面には、リング状のシリンダー29を、ネジ49でパッキン37を挟持した状態で固定している。シリンダー29はオイルシール44を内周部に取り付けている。シリンダー29はリング状のピストン30を内部に収納している。ピストン30は、外周部にOリング38、内周部にOリング39を装着している。ピストン30はハウジング21の軸方向に摺動可能である。シリンダー29は通気孔35を備えている。ハウジング21のシリンダー29に対向する面は凹部33を備えている。凹部33はバネ34を内側に配置している。バネ34はピストン30をシリンダー29側に押し付ける。パッキン37、Oリング41、42は、クランプ機構内に切削油等が進入して摩擦力が低下することを防止する。
【0020】
回転テーブル装置10におけるクランプ動作、アンクランプ動作について説明する。アンクランプ状態の回転テーブル4において、数値制御装置50は先ず回転テーブル駆動モータ75を駆動するとピニオン25は回転する。ピニオン25と噛合する大歯車26は、ベアリング22の支持によりピニオン25の軸線と直角な軸線回りに回転する。大歯車26が回転するとスピンドル23、回転テーブル4、ボス28及びディスク32は回転する。故に、回転テーブル4が保持する工作物は回転テーブル4の制御軸上を回転する。
【0021】
回転テーブル駆動モータ75が駆動を停止するとピニオン25、大歯車26は回転を停止する。スピンドル23、回転テーブル4、ボス28及びディスク32も回転を停止する。回転テーブル4の回転は停止する。数値制御装置50は空気を通気孔35より注入する。ピストン30は注入した空気の圧力によりハウジング21の方向に移動する。注入した空気の圧力はバネ34のバネ力を越える。ピストン30はディスク32に接触する。ディスク32は弾性変形する。ピストン30は弾性変形するディスク32をハウジング21に押し当てて挟み込む。ディスク32とハウジング21との間で摩擦力が発生する。摩擦力はディスク32とスピンドル23の動きを拘束する。回転テーブル4はクランプ状態となる。工作機械1は工作物の切削加工が可能となる。
【0022】
数値制御装置50は工作物の工具6との角度を変える為に再度回転テーブル4の固定を解除(アンクランプ)する。数値制御装置50は先ずアンクランプ信号をクランプ制御装置80に出力する。クランプ制御装置80は通気孔35に加えていた空気圧を開放する。ピストン30はバネ34のバネ力によりシリンダー29の方向に移動する。ディスク32はバネ34の弾性力により弾性復帰する。ディスク32はハウジング21から離れるので摩擦力は無くなる。回転テーブル4はアンクランプ状態となり、スピンドル23は回転可能となる。回転テーブル4はNCプログラムで設定した目標移動量を回転して停止する。数値制御装置50は回転テーブル4を再度クランプ状態とする。工作機械1は別の角度から工作物に対して切削加工を行う。
【0023】
後述するが、本実施態様の数値制御装置50は、アンクランプ信号の出力と同時に目標移動量と同一方向に微小の移動量の移動を指示する第一移動指令を回転テーブル駆動モータ75に出力する。故に回転テーブル4はアンクランプ状態に切り替わった直後から回転し始めることができる。
【0024】
数値制御装置50の電気的構成について説明する。図3に示すように、数値制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53、フラッシュメモリ54、入力インタフェース55、出力インタフェース56、駆動回路61〜65、制御回路66等を備えている。CPU51、ROM52、RAM53、フラッシュメモリ54、入力インタフェース55、出力インタフェース56はバス58で接続している。ROM52は、数値制御装置50の加工動作を制御する加工制御プログラムの他、本発明の制御軸移動プログラム等を記憶する。RAM53は後述する各種処理を実行する為の各種データを一時的に記憶する。フラッシュメモリ54はNCコマンドからなるNCプログラム(加工プログラム)等を記憶する。入力インタフェース55は、操作装置17と、回転テーブル駆動モータ75に設けたエンコーダ76とに接続している。操作装置17は、工作機械1の起動及び停止等を指令する複数の指令キー、入力キー及び編集キー等を備える装置である。
【0025】
駆動回路61はX軸モータ71を駆動する。駆動回路62はY軸モータ72を駆動する。駆動回路63はZ軸モータ73を駆動する。駆動回路64は主軸モータ74を駆動する。駆動回路65は回転テーブル駆動モータ75を駆動する。制御回路66はクランプ制御装置80を制御する。クランプ制御装置80は回転テーブル装置10のクランプ動作、アンクランプ動作を制御する。駆動回路61〜65、制御回路66は、出力インタフェース56に接続している。
【0026】
作業者が予め設定する回転テーブル4の微小移動量について説明する。本実施形態は、アンクランプ信号の出力と同時に、回転テーブル4を回転させる微小移動量を第一移動指令として回転テーブル駆動モータ75に出力する。微小移動量はNCプログラムの制御軸移動指令で設定される目標移動量よりも小さい値に設定する。例えば、目標移動量が100°であった場合、微小移動量を0.05〜0.1°に設定する。微小移動量の回転方向は、目標移動量の回転方向と同一方向である。作業者は操作装置17により微小移動量を予め入力する。CPU51は作業者が入力した微小移動量をフラッシュメモリ54(図3参照)に記憶する。
【0027】
CPU51による加工制御処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。作業者は操作装置17の加工開始スイッチ(図示略)を押す。CPU51はROM52に記憶した加工制御プログラムを読み込んで本処理を実行する。CPU51は、フラッシュメモリ54に記憶したNCプログラムを読み込んで1ブロック解釈する(S1)。CPU51は解釈したNCコマンドがM30(終了コマンド)か否か判断する(S2)。CPU51は解釈したNCコマンドがM30と判断した場合(S2:YES)、本処理を終了する。CPU51は解釈したNCコマンドがM30でないと判断した場合(S2:NO)、解釈したNCコマンドが制御軸移動指令か否か判断する(S3)。制御軸移動指令は回転テーブル4の回転及び移動量(回転量)を指示する指令である。CPU51は解釈したNCコマンドが制御軸移動指令であると判断した場合(S3:YES)、後述する制御軸移動処理を実行する(S5)。CPU51は解釈したNCコマンドが制御軸移動指令以外のコマンドであると判断した場合(S3:NO)、その制御指令に従って処理を実行する(S4)。CPU51は次ブロックに移動し(S6)、S1に戻って終了コマンドを読み込むまで処理を繰り返す。
【0028】
CPU51による制御軸移動処理について、図5のフローチャート、及び図6のタイミングチャートを参照して説明する。制御軸移動処理は回転テーブル4をアンクランプして目標移動量を回転させることで、工具6に対する工作物の角度を変更する処理である。本処理は、上記の加工制御処理のS1(図4参照)において解釈したNCコマンドが制御軸移動指令であった場合(S3:YES)、CPU51はROM52に記憶した制御軸移動プログラムを読み込んで実行する。
【0029】
CPU51は、図6のt1タイミングで、クランプ制御装置80にアンクランプ信号を出力する(S11)。さらにCPU51は制御軸移動指令で設定された目標移動量が、フラッシュメモリ54に記憶された微小移動量より大きいか否か判断する(S12)。CPU51は、目標移動量は微小移動量よりも大きいと判断した場合(S12:YES)、微小移動量を第一移動指令に決定する(S13)。CPU51は、目標移動量は微小移動量以下と判断した場合(S12:NO)、目標移動量をそのまま第一移動指令に決定する(S14)。
【0030】
CPU51はt2タイミングで回転テーブル駆動モータ75に電流制限信号を送信する(S15)。回転テーブル駆動モータ75はサーボモータである。サーボモータは出力軸が回らないと一般的に負荷トルクが増加し、それに合わせて出力電流が上昇する性質を有する。電流制限信号はサーボモータの出力電流が過剰に上昇しないように所定値以下に制限する為の信号である。なお、電流制限信号を送信するタイミングは、アンクランプ信号を出力するt1タイミングで行ってもよい。
【0031】
CPU51はS13又はS14で決定した第一移動指令を回転テーブル駆動モータ75に送信する(S16)。CPU51はS11〜S16までの処理を同一タイミングで実行する。アンクランプ信号を受信したクランプ制御装置80はクランプ機構のアンクランプ動作を開始する。CPU51は第一移動指令を回転テーブル駆動モータ75に送信しているが、クランプ機構のアンクランプ動作が完了するまで回転テーブル4は回らない。回転テーブル駆動モータ75の出力電流は上昇するが、電流制限が実行されているので出力電流は所定値以下に推移する。第一移動指令は目標移動量と同一方向に僅かに移動させる指令である。故に回転テーブル駆動モータ75、及び回転テーブル装置10のクランプ機構にかかる負荷を最小限に留めることができる。
【0032】
CPU51は回転テーブル4が移動(回転)したか否か判断する(S17)。CPU51は回転テーブル駆動モータ75の出力軸の回転をエンコーダ76で検出することにより、回転テーブル4の移動を検出できる。CPU51は回転テーブル4が移動したと判断するまでは(S17:NO)、S17に戻って待機状態となる。
【0033】
アンクランプ信号を受信したクランプ制御装置80は、通気孔35に加えていた空気圧を開放する。ピストン30はバネ34のバネ力によりシリンダー29の方向に移動する。ディスク32はバネ34の弾性力により弾性復帰する。ディスク32はハウジング21から離れるので摩擦力は無くなる。回転テーブル4は、図6のt4タイミングで、アンクランプ状態となる。クランプ制御装置80がアンクランプ動作を開始し始めたときから回転テーブル駆動モータ75の出力軸に対して目標移動量と同一方向の負荷をかけている。故に、回転テーブル4はアンクランプ状態に切り替わったt3タイミングから回転し始める。
【0034】
CPU51は、回転テーブル4が移動したと判断した場合(S17:YES)、目標移動量から第一移動指令で指示した移動量を差し引いた残存移動量を算出し、第二移動指令として回転テーブル駆動モータ75に送信する(S18)。回転テーブル4はアンクランプ状態に切り替わった直後から回転し始めている。回転テーブル4は微小移動量を移動したt4タイミング以降もそのまま残存移動量の移動を続けることができる。CPU51は、電流制限解除信号を回転テーブル駆動モータ75に送信する(S19)。故に回転テーブル駆動モータ75の出力電流は通常に戻る。回転テーブル4はt5タイミングで最高速度に達し、t6タイミングで徐々に減速、目標移動量に到達したt7タイミングで停止する。故に回転テーブル4はアンクランプ状態に切り替わった直後から目標移動量を滑らかに移動できる。回転テーブル装置10は高速駆動が可能となる。
【0035】
CPU51はインポジションチェックを行い、回転テーブル4が目標移動量の移動を完了したか否か判断する(S20)。CPU51は回転テーブル4の目標移動量の移動が完了するまでは(S20:NO)、S20に戻り待機状態となる。CPU51は目標移動量の移動が完了したと判断した場合(S20:YES)、t8タイミングでアンクランプ信号の出力を停止する(S21)。クランプ制御装置80はCPU51によりアンクランプ信号の出力が停止されたので、通気孔35に空気を注入し、回転テーブル装置10のクランプ機構をクランプ状態に戻す。CPU51は制御軸移動処理を終了し、図4に示すメインの加工制御処理のS6に移行する。
【0036】
なお上記説明において、図2に示す回転テーブル4は本発明の制御軸に相当し、回転テーブル装置10は本発明の移動機構に相当し、回転テーブル駆動モータ75は本発明の移動駆動部に相当し、ディスク32、シリンダー29、ピストン30、バネ34、及びクランプ制御装置80は本発明のクランプ機構に相当する。図4のS3を実行するCPU51は本発明の移動指示判断手段に相当し、図5のS11の処理を実行するCPU51は本発明の解除指令出力手段に相当し、S16の処理を実行するCPU51は本発明の第一移動指令出力手段に相当し、S17の処理を実行するCPU51は本発明の移動判断手段に相当し、S18の処理を実行するCPU51は本発明の第二移動指令出力手段に相当する。S15の処理を実行するCPU51は本発明の電流制限手段に相当し、S19の処理を実行するCPU51は本発明の解除手段に相当する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置50は、NCプログラム中に回転テーブル装置10の回転テーブル4の制御軸移動指令があった場合、クランプ制御装置80にアンクランプ信号を出力すると同時に、回転テーブル4を移動させる目標移動量のうちの微小移動量の移動を指示する第一移動指令を回転テーブル駆動モータ75に送信する。故に回転テーブル4はアンクランプされた直後から移動できる。回転テーブル装置10は高速駆動が可能となる。さらに回転テーブル4が移動した場合、目標移動量から微小移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を回転テーブル駆動モータ75に送信する。故に回転テーブル4は当初の目標移動量を速やかに移動できる。
【0038】
また本実施形態は特に、回転テーブル駆動モータ75はサーボモータである。第一移動指令が回転テーブル駆動モータ75に送信された場合に、電流制限信号を回転テーブル駆動モータ75に送信する。故に回転テーブル4のアンクランプが完了するまでの間、回転テーブル駆動モータ75の出力電流が過剰に上昇するのを防止できる。
【0039】
また本実施形態では特に、回転テーブル駆動モータ75の出力軸の回転をエンコーダ76が検出する。故に回転テーブル4が移動したことを正確かつ速やかに判断できる。
【0040】
また本実施形態では特に、第二移動指令が回転テーブル駆動モータ75に送信された場合に、電流制限解除信号を回転テーブル駆動モータ75に出力する。故に回転テーブル駆動モータ75の出力電流を通常状態に戻すことができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記形態では、制御軸を移動する移動機構として、回転テーブル4を回転させる回転テーブル装置10を一例として説明したが、例えば、テーブルを直線的に移動させるテーブル装置にも適用可能である。
【0042】
また図5のS17における回転テーブル4が移動したか否かの判断は、回転テーブル4が微小移動量を移動したか否かで判断しているが、微小移動量の移動を完了する前、エンコーダ76からのフィードバック信号が数パルス入力された場合に移動したと判断するようにしてもよい。なおその場合、電流制限解除信号は回転テーブル4が微小移動量を移動した後、送信することになる。
【0043】
また上記実施形態では、電流制限手段、解除手段を備えた数値制御装置50について説明したが、必ずしもこれらを備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 工作機械
4 回転テーブル
10 回転テーブル装置
29 シリンダー
30 ピストン
32 ディスク
34 バネ
50 数値制御装置
51 CPU
52 ROM
75 回転テーブル駆動モータ
76 エンコーダ
80 クランプ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御軸の移動を行う移動機構と、前記移動機構を駆動させる移動駆動部と、前記制御軸の移動の阻止及びその阻止の解除を行うクランプ機構とを有する工作機械を制御する数値制御装置であって、
前記制御軸の移動の指示が有るか否かを判断する移動指示判断手段と、
前記移動指示判断手段が前記移動の指示があったと判断した場合に、前記制御軸の移動の阻止の解除を指示する解除指令を前記クランプ機構に出力する解除指令出力手段と、
前記解除指令出力手段が前記解除指令を出力した場合に、前記制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する第一移動指令を前記移動駆動部に出力する第一移動指令出力手段と、
前記制御軸が移動したか否かを判断する移動判断手段と、
前記移動判断手段が前記制御軸が移動したと判断した場合に、前記移動量から前記所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を前記移動駆動部に出力する第二移動指令出力手段と
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記移動駆動部はサーボモータであって、
前記第一移動出力手段によって前記第一移動指令が出力された場合に、前記サーボモータが前記移動機構に出力する出力電流を所定値以下に制限する電流制限手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記サーボモータの軸の回転を検出するエンコーダを備え、
前記移動判断手段は、前記エンコーダによって前記軸の回転を検出した場合に、前記制御軸が移動したと判断することを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記第二移動指令出力手段によって前記第二移動指令が出力された場合に、前記電流制限手段による前記出力電流の制限を解除する解除手段を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の数値制御装置。
【請求項5】
制御軸の移動を行う移動機構と、前記移動機構を駆動させる移動駆動部と、前記制御軸の移動の阻止及びその阻止の解除を行うクランプ機構とを有する工作機械を制御する数値制御装置によって行われるクランプ解除方法であって、
前記制御軸の移動の指示が有るか否かを判断する移動指示判断工程と、
前記移動指示判断工程において前記移動の指示があったと判断した場合に、前記制御軸の移動の阻止の解除を指示する解除指令を前記クランプ機構に出力する解除指令出力工程と、
前記解除指令出力工程において前記解除指令を出力した場合に、前記制御軸を移動させる移動量のうち所定移動量の移動を指示する第一移動指令を前記移動駆動部に出力する第一移動指令出力工程と、
前記制御軸が移動したか否かを判断する移動判断工程と、
前記移動判断工程において前記制御軸が移動したと判断した場合に、前記移動量から前記所定移動量を差し引いた残存移動量の移動を指示する第二移動指令を前記移動駆動部に出力する第二移動指令出力工程と
を備えたことを特徴とするクランプ解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198734(P2012−198734A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61903(P2011−61903)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】