説明

敷ブロック配置回収プログラム、このプログラムを用いた加工方法および工作機械

【課題】敷ブロックの配置および回収を簡単なプログラムによって行うことができる敷ブロック配置回収プログラム、加工方法、および、工作機械を提供。
【解決手段】ブロック格納エリアに配置されたブロックをテーブル上に配置するための敷ブロック配置プログラム87と、テーブル上に配置された敷ブロックをブロック格納エリアに回収するための敷ブロック回収プログラム88とを備る。敷ブロック配置プログラムは、ブロック格納エリアに配置された敷ブロックをテーブル上に配置する複数の動作ステップを有し、これらの動作ステップを設定された順番にコンピュータに実行させる。敷ブロック回収プログラムは、前記複数の動作ステップを、敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラムの動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをテーブルの上面から離間して支持するための敷ブロックを配置、回収するための敷ブロック配置回収プログラム、このプログラムを用いた加工方法および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工作機械においては、被加工物、即ちワークの底面付近を加工する場合、ワークをテーブルの上面から少し離して設置する必要があった。
これは、ワークをテーブルの上面に直接置くと、ワークの底面付近をスピンドルに装着された工具により加工する場合、工具がテーブルの上面に干渉し、工具が破損されるためである。そこで、テーブルの上面とワークとの間に敷ブロックを敷くことにより、ワークをテーブルの上面から少し離して浮かす状態にし、この状態で、ワークの底面付近を工具によって加工するようにしている。
【0003】
また、敷ブロックを用いないで、ワークをテーブルの上面から浮上、支持するための装置として、空気圧を使用した装置(特許文献1参照)が知られているが、このものは、装置が大掛かりになるため、通常は、硬いブロックをワークの下へ敷くことが行われている。
ちなみに、ワークの下に設置される目的で使用されるこのようなブロックを、ここでは、「敷ブロック」と呼び、多くは金属、それも鉄製のものが利用されている。これは、様々な形状を得るために好都合であるからである。敷ブロックの形状としては、無垢の中実、中空、枠形、箱形、棒状、板状、レール形状、T溝形状を持つタイプ等、様々な形態がとられる。
【0004】
しかしながら、上述したような敷ブロックをテーブルの上面へ配置する際、敷ブロックの重量が重いことから、作業者にかかる労力負担が大きく、取り扱いが極めて困難であった。
また、配置の際に、敷ブロックをクレーンなどで吊り上げて配置する必要があるため、敷ブロックの落下による作業者への危険、また、機械テーブル上面の破損、さらに、敷ブロック自体の破損など、このような作業者への危険回避、機械破損の防止、敷ブロック自体の破損防止などが課題となっていた。また、設置位置の精度を向上させ、ひいては、敷ブロックのより高度な自動設定化による生産性向上の要請もあった。
【0005】
そこで、本出願人は、上述した課題に着目し、作業者の安全性確保、機械および敷ブロックの破損防止および設置精度の向上が図れる敷ブロックの配置方法、敷ブロック移動用工具、および、その工具を備えた工作機械を提案した(特許文献2参照)。
これは、工作機械の主軸を利用して敷ブロックを配置するもので、敷ブロックを主軸が保持可能な範囲内のブロック格納エリアに設置しておくとともに、主軸に装着される主軸装着部、敷ブロックを保持するブロック保持部を有する敷ブロック移動用工具を主軸に装着し、この状態において、相対移動により、敷ブロック移動用工具のブロック保持部によって敷ブロックを保持したのち、敷ブロックをテーブルの上面の予め設定されたワーク載置位置に配置するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−219308号公報
【特許文献2】特開2011−701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した提案によって、作業者の安全性確保、機械および敷ブロックの破損防止および設置精度の向上が図れるようになったが、さらに、敷ブロックの配置および回収を簡単なプログラムによって行いたいという要望がある。
【0008】
本発明の目的は、このような要望に対して、敷ブロックの配置および回収を簡単なプログラムによって行うことができる敷ブロック配置回収プログラム、このプログラムを用いた加工方法および工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の敷ブロック配置回収プログラムは、テーブルの上面からワークを離間させた状態で支持する敷ブロックを保持可能な敷ブロック移動用工具を主軸に取り付け、この主軸と前記テーブルとを相対移動させながら、前記敷ブロックを前記テーブル上に配置し、かつ、前記テーブルから回収するための敷ブロック配置回収プログラムであって、ブロック格納エリアに配置された前記敷ブロックを前記テーブル上に配置するための敷ブロック配置プログラムと、前記テーブル上に配置された前記敷ブロックを前記ブロック格納エリアに回収するための敷ブロック回収プログラムとを備え、前記敷ブロック配置プログラムは、前記ブロック格納エリアに配置された前記敷ブロックを前記テーブル上に配置する複数の動作ステップを有し、これらの動作ステップを設定された順番にコンピュータに実行させるとともに、前記敷ブロック回収プログラムは、前記複数の動作ステップを、前記敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で、かつ、前記敷ブロック配置プログラムの動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させる、ことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、敷ブロック配置プログラムが実行されると、複数の動作ステップが設定された順番に実行されるため、ブロック格納エリアに配置された敷ブロックがテーブル上に配置される。
また、敷ブロック回収プログラムが実行されると、複数の動作ステップが、敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラムの動作方向とは逆の動作方向へ動作されるから、テーブル上に配置された敷ブロックをブロック格納エリアに回収することができる。
【0011】
従って、敷ブロック回収プログラムについては、敷ブロック配置プログラムにおける複数の動作ステップ、つまり、ブロック格納エリアに配置された敷ブロックをテーブル上に配置する複数の動作ステップを、敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラムの動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させればよいから、敷ブロック回収プログラムを簡単に作成できる。
もとより、敷ブロックの配置、回収を、作業者が直接人力によって取り扱う必要がないから、作業者の安全性を向上させることができる。また、作業者による人力での作業を避けることができる結果、敷ブロックの落下などによる機械テーブル、その他の部分の破損、敷ブロック自体の破損を防止できる。さらに、敷ブロックの配置をテーブルと主軸との相対移動により敷ブロックを配置するため、配置位置精度の向上が期待できる。
【0012】
本発明の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、前記敷ブロック配置プログラムは、前記複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、実行される順番に配列され、各指令ブロックは、動作モードを指令する指令コードと、指令された動作モードにおける位置情報とを含んで構成され、前記敷ブロック回収プログラムは、前記複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、前記敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で配列され、かつ、各指令ブロックの位置情報が敷ブロック配置プログラムとは逆の位置情報として記録されている、ことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、敷ブロック回収プログラムは、敷ブロック配置プログラムにおける複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で配列され、かつ、各指令ブロックの位置情報が敷ブロック配置プログラムとは逆の位置情報として記録されているから、敷ブロック配置プログラムにおける複数の指令ブロックを並べ替えるとともに、各指令ブロックの位置情報を敷ブロック配置プログラムとは逆の位置情報として記録すればよいから、敷ブロック回収プログラムを極めて簡単に作成できる。
【0014】
本発明の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、前記位置情報は、移動方向情報および移動位置情報を含む、ことが好ましい。
このような構成によれば、位置情報のうち、移動位置情報については、敷ブロック配置プログラムおよび敷ブロック回収プログラムともに同じ位置情報でよく、また、移動方向情報については、符号を逆にすればよいから、プログラムの作成を簡単にできる。
【0015】
本発明の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、前記位置情報は、移動方向情報および変数記憶領域のアドレスを指定する変数指定アドレスを含み、前記変数記憶領域には、アドレスに対応して移動位置情報が記録されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、敷ブロック配置プログラムおよび敷ブロック回収プログラムの実行において、共に、変数記憶領域のなかから、位置情報の変数指定アドレスで指定されるアドレスに対応する移動位置情報を基に、相対移動が制御される。従って、これらの相対移動量を変更する場合でも、変数記憶領域において、移動位置情報のみを書き替えればよいから、つまり、敷ブロック配置プログラムおよび敷ブロック回収プログラムにおける移動位置情報をそれぞれ書き替える必要がないから、プログラムの変更が簡易に対応できる。
【0016】
本発明の加工方法は、テーブルと、このテーブルに対して相対移動可能な主軸とを備えた工作機械を用いてワークを加工する加工方法であって、上記いずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムの敷ブロック配置プログラムによって、ブロック格納エリアに配置された敷ブロックを前記テーブル上に配置する敷ブロック配置工程と、前記テーブル上に配置された敷ブロックの上にワークを載置するとともに、前記主軸に加工工具を取り付けて、前記ワークを加工するワーク加工工程と、上記いずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムの敷ブロック回収プログラムによって、前記テーブル上に配置された敷ブロックを前記ブロック格納エリアに回収する敷ブロック回収工程と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、敷ブロック配置工程によって敷ブロックをテーブル上に配置し、続いて、ワーク加工工程によって敷ブロックの上にワークを載置してワークを加工したのち、敷ブロック回収工程によって敷ブロックを元のブロック格納エリアに回収することができるので、ワークの加工を能率的に行うことができる。
【0017】
本発明の工作機械は、上述したいずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、工作機械において、上述した効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の工作機械の一実施形態を示す概念図。
【図2】同上実施形態で用いる敷ブロックの一例を示す斜視図。
【図3】同上実施形態で用いる敷ブロック移動用工具を示す斜視図。
【図4】同上実施形態における制御システムのブロック図。
【図5】同上実施形態において、敷ブロック配置プログラムおよび敷ブロック回収プログラムを示す図。
【図6】同上実施形態において、テーブル上に敷ブロックを配置した状態の図。
【図7】同上実施形態において、敷ブロックの配置・回収時の動作を示す斜視図。
【図8】同上実施形態において、敷ブロックの配置・回収時に敷ブロック移動用工具の移動軌跡を示す図。
【図9】同上実施形態において、敷ブロック配置プログラムおよび敷ブロック回収プログラムの他の例を示す図。
【図10】図9の例で用いる変数記憶領域を示す図。
【図11】同上実施形態で用いる敷ブロック移動用工具の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る工作機械20を示している。
同工作機械20は、門型工作機械であって、左コラム22、右コラム23、および、横桁24を含んで構成され、これらが機械的な剛性を高めるよう鋳物にて一体に構成されている。
横桁24には、主軸頭25がサーボモータ等によりX軸として図で左右方向へ移動可能に組み付けられている。主軸頭25には、ラム26により、主軸としてのスピンドル30がZ軸として図で上下方向へ移動可能に組み込まれている。スピンドル30は、連続回転、および、C軸(Z軸と平行な回転軸)として回転位置決めもできるよう、回転位置検出されるサーボモータを有して構成される。
左コラム22および右コラム23の間のベッド29の上面には、ワークを載置するテーブル28がY軸として図で前後方向へ移動可能に設けられている。従って、ワークを載置するテーブル28と主軸を構成するスピンドル30とは、図示省略の相対移動機構により、X,Y,Z軸方向の三次元方向へ相対移動可能に構成されている。
【0020】
テーブル28の一部、ここでは、テーブル28の上面奥側(Y軸座標でテーブルマイナス方向移動側)には、複数の敷ブロック60(61,62…)を設置するためのブロック格納エリア28A(図6参照)が設けられている。
左コラム22側には、工具マガジン40や自動工具交換装置50が付設されている。工具マガジン40には、主軸であるスピンドル30に装着される敷ブロック移動用工具10や多数の加工用工具が収納されている。自動工具交換装置50は、工具マガジン40に収納された敷ブロック移動用工具10および加工用工具の中から指定されたいずれかの工具を主軸であるスピンドル30に装着するとともに、スピンドル30に装着されている工具を工具マガジン40に回収するよう動作される。つまり、工具マガジン40と主軸であるスピンドル30との間で工具交換を行う。
【0021】
図2は、本実施形態で用いられる敷ブロック60(61,62,63…)を示している。
同敷ブロック60は、工作機械のテーブル28に載置される底壁部60Aと、この底壁部60Aに対して平行にかつ離間して設けられた上壁部60Bと、底壁部60Aおよび上壁部60Bの両端間を連結する側壁部60Cとを有し、内部に空間60Dを有する断面矩形枠状に形成されている。
【0022】
図3は、本実施形態で使用される敷ブロック移動用工具10を示している。
敷ブロック移動用工具10は、工作機械で使用される自動工具交換用に使用される工具と同じ形状、つまり、工作機械の工具と同様な取り扱いが可能となるような形状が採用され、主軸装着部11、セパレータ部12、および、ブロック保持部13を備える。
主軸装着部11は、一般のドリルやカッターなどの切削用の刃を有する加工工具と同様に、工作機械の主軸に装着可能になっており、したがって、主軸に挿入されるテーパシャンク16、このテーパシャンク16の小径部側に設けられたチャック用トップ17、および、テーパシャンク16の大径部側に設けられた工具把持リング部18を備えている。
セパレータ部12は、主軸装着部11とブロック保持部13との間に設けられた円筒状で、敷ブロック60の大きさや厚さ形状などに適合できるように、主軸装着部11の軸方向寸法が種々の長さとされている。
【0023】
ブロック保持部13は、コの字形状に形成されている。具体的には、セパレータ部12の下面に水平に取り付けられる取付片部13Aと、この取付片部13Aの一端から主軸装着部11の軸方向へ延びる延長片部13Bと、この延長片部13Bの先端から延長片部13Bに対して略直角にかつ取付片部13Aと平行に設けられ敷ブロック60の空間60D内に差込可能な差込片部13Cとを有するコの字形状に形成されている。
延長片部13Bの長さ、つまり、取付片部13Aと差込片部13Cとの間隔は、敷ブロック60の枠部(上壁部60B)の厚みよりも大きい寸法に形成されている。したがって、取付片部13Aと差込片部13Cとの間に敷ブロック60の上壁部60Bを挿入し、差込片部13Cで敷ブロック60の上壁部60Bを吊り上げて、敷ブロック60の移動を行う。
【0024】
図4は、本実施形態に係る工作機械の制御システムを示している。
同制御システムは、CPUからなる制御装置80と、この制御装置80にアドレスバスやデータバス81などを介して接続された相対移動機構、つまり、主軸頭25をX軸方向へ移動させるX軸移動機構82、テーブル28をY軸方向へ移動させるY軸移動機構83、ラム26をZ軸方向へ移動させるZ軸移動機構84、スピンドル30を回転駆動させるスピンドル駆動機構85などのほかに、プログラム記憶部86などが接続されている。
プログラム記憶部86には、通常の加工プログラム等のほかに、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60をテーブル28上の指定位置に配置するための敷ブロック配置プログラム87や、テーブル28上に配置された敷ブロック60をブロック格納エリア28Aに回収するための敷ブロック回収プログラム88が格納されている。
【0025】
敷ブロック配置プログラム87は、図5(A)に示すように、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60をテーブル28上の指定位置に配置する複数の動作ステップを有し、これらの動作ステップを設定された順番にコンピュータに実行させる。
具体的には、敷ブロック配置プログラム87は、複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロック(プログラム番号N1,N2,N3……N9)が、実行される順番に配列され、各指令ブロックは、動作モードを指令する指令コード(G01X,G01Z,G01X……G01X)と、指令された動作モードにおける位置情報(200,−300,−200……800)とを含んで構成されている。つまり、位置情報(200,−300,−200……800)は、移動方向情報(+,−)および移動位置情報(200,300,200……800)を含む。
【0026】
敷ブロック回収プログラム88は、図5(B)に示すように、敷ブロック配置プログラム87の複数の動作ステップが、敷ブロック配置プログラム87の実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラム87の動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させる。
具体的には、敷ブロック回収プログラム88は、複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロック(プログラム番号N11,N12,N13……N19)が、敷ブロック配置プログラム87の実行順序とは逆の順序で配列され、かつ、各指令ブロックの位置情報(−800,−300,−200……−200)が敷ブロック配置プログラム87とは逆の位置情報として記録されている。つまり、移動位置情報(200,300,200……800)に対して、移動方向情報(+、−)が敷ブロック配置プログラム87とは逆の符号で記録されている。
【0027】
図6および図7は、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60(61,62,62…)をテーブル28上の指定位置に配置(敷ブロック配置工程)するとともに、配置された敷ブロック60(65,66,67,68)をブロック格納エリア28Aに回収(敷ブロック回収工程)する例を示している。
まず、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60をテーブル28上の指定位置に配置するには、敷ブロック配置プログラム87をスタートさせる。敷ブロック配置プログラム87がスタートされると、図8(A)に示す(a)〜(i)の動作ステップを実行する指令ブロック(プログラム番号N1,N2,N3……N9)が順番に読み出され、実行される。これにより、次の動作ステップが行われる。なお、ここでは、敷ブロック60のX軸方向寸法が200mm、敷ブロック移動用工具10の差込片部13Cの長さが200mmとする。
【0028】
(a)スタート位置の敷ブロック移動用工具10がX軸+方向へ200mm移動される。
(b)敷ブロック移動用工具10がZ軸−方向へ300mm移動される。
(c)敷ブロック移動用工具10がX軸−方向へ200mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10の差込片部13Cが敷ブロック60の空間60D内に差し込まれる。
(d)敷ブロック移動用工具10がZ軸+方向へ300mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10のブロック保持部13により敷ブロック60が吊り上げられる。
(e)敷ブロック移動用工具10がX軸−方向へ1000mm移動される。
(f)敷ブロック移動用工具10がZ軸−方向へ300mm移動される。これにより、敷ブロック60がテーブル28上に載置される。
(g)敷ブロック移動用工具10がX軸+方向へ200mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10の差込片部13Cが敷ブロック60の空間60Dから引き抜かれる。
(h)敷ブロック移動用工具10がZ軸+方向へ300mm移動される。
(i)敷ブロック移動用工具10がX軸+方向へ800mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10がスタート位置に戻される。
【0029】
このようにして、敷ブロック60をテーブル28上の所定位置に配置したのち、敷ブロック60の上にワークを載置して加工を行う(ワーク加工工程)。なお、加工にあたっては、敷ブロック移動用工具10に代えて、ワークを加工する加工工具をスピンドル30に装着したのち、その加工工具によってワークを加工する。
ワークの加工終了後に、ワークを加工する加工工具に代えて、敷ブロック移動用工具10をスピンドル30に装着する。これには、工具交換と同様に、敷ブロック移動用工具10を選択する。即ち、工具交換指令を行い、敷ブロック移動用工具10をスピンドル30へ装着する。あるいは、工具交換指令ではなく、まったく手動で敷ブロック移動用工具10をスピンドル30へ装着してもよい。
【0030】
次に、テーブル28上に配置された敷ブロック60をブロック格納エリア28Aに回収するには、敷ブロック回収プログラム88をスタートさせる。敷ブロック回収プログラム88がスタートされると、図8(B)に示す(i’)〜(a’)の動作ステップを実行する指令ブロック(プログラム番号N11,N12,N13……N19)が順番に読み出され、実行される。これにより、次の動作ステップが行われる。
【0031】
(i’)スタート位置の敷ブロック移動用工具10がX軸−方向へ800mm移動される。
(h’)敷ブロック移動用工具10がZ軸−方向へ300mm移動される。
(g’)敷ブロック移動用工具10がX軸−方向へ200mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10の差込片部13Cが敷ブロック60の空間60Dに差し込まれる。
(f’)敷ブロック移動用工具10がZ軸+方向へ300mm移動される。これにより、敷ブロック60のブロック保持部13により敷ブロック60が吊り上げられる。
(e’)敷ブロック移動用工具10がX軸+方向へ1000mm移動される。
(d’)敷ブロック移動用工具10がZ軸−方向へ300mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10がブロック格納エリア28Aに載置される。
(c’)敷ブロック移動用工具10がX軸+方向へ200mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10の差込片部13Cが敷ブロック60の空間60Dから引き抜かれ、敷ブロック60が回収される。
(b’)敷ブロック移動用工具10がZ軸+方向へ300mm移動される。
(a’)敷ブロック移動用工具10がX軸−方向へ200mm移動される。これにより、敷ブロック移動用工具10がスタート位置に戻される。
【0032】
このような構成によれば、敷ブロック配置プログラム87によって、複数の動作ステップが設定された順番に実行されるため、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60をテーブル28上の指定位置に自動的に配置することができる。また、敷ブロック回収プログラム88によって、複数の動作ステップが、敷ブロック配置プログラム87の実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラム87の動作方向とは逆の動作方向へ動作されるから、テーブル28上に配置された敷ブロック60をブロック格納エリア28Aに自動的に回収することができる。
【0033】
特に、敷ブロック回収プログラム88については、敷ブロック配置プログラム87における複数の動作ステップ、つまり、ブロック格納エリア28Aに配置された敷ブロック60をテーブル28上の指定位置に配置する複数の動作ステップを、敷ブロック配置プログラム87の実行順序とは逆の順序で、かつ、敷ブロック配置プログラム87の動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させればよいから、敷ブロック回収プログラム88を簡単に作成できる。
もとより、敷ブロック60の配置、回収を、作業者が直接人力によって取り扱う必要がないから、作業者の安全性を向上させることができる。また、作業者による人力での作業を避けることができる結果、敷ブロック60の落下などによる機械テーブル、その他の部分の破損、敷ブロック60自体の破損を防止できる。さらに、テーブル28と主軸であるスピンドル30との相対移動により敷ブロック60を配置するため、配置位置精度の向上が期待できる。
【0034】
また、敷ブロック回収プログラム88は、敷ブロック配置プログラム87における複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、敷ブロック配置プログラム87の実行順序とは逆の順序で配列され、かつ、各指令ブロックの位置情報が敷ブロック配置プログラム87とは逆の位置情報として記録されているから、敷ブロック配置プログラム87における複数の指令ブロックを並べ替えるとともに、各指令ブロックの位置情報を敷ブロック配置プログラム87とは逆の位置情報として記録すればよいから、敷ブロック回収プログラム88を極めて簡単に作成できる。
【0035】
また、位置情報のうち、移動位置情報については、敷ブロック配置プログラム87および敷ブロック回収プログラム88ともに同じ位置情報でよく、また、移動方向情報については、符号を逆にすればよいから、プログラムの作成を簡単にできる。
【0036】
<変形例の説明>
上述の実施形態では、枠型の敷ブロック60(61,62,63…)を予めブロック格納エリア28Aの定められた座標位置に設置し、それを敷ブロック配置プログラム87によってテーブル28上の指定位置に配置するとともに、テーブル28上の敷ブロック60を敷ブロック回収プログラム88によってブロック格納エリア28Aに回収するようにしたが、この発明は、この例に限定されず、種々の変形の態様を採用できる。
【0037】
(敷ブロック配置回収プログラムの変形例)
敷ブロック配置プログラム87および敷ブロック回収プログラム88において、図9に示すように、位置情報は、移動方向情報(+,−)および変数記憶領域のアドレスを指定する変数指定アドレス([V31],[V32][V33]…[V39])を含む構成としてもよい。この場合、図10に示すように、変数記憶領域89には、アドレス([V31],[V32][V33]…[V39])に対応して移動位置情報(200,300,200…800)を記録しておく。
【0038】
このようにすれば、敷ブロック配置プログラム87および敷ブロック回収プログラム88の実行において、共に、変数記憶領域89のなかから、位置情報の変数指定アドレスで指定されるアドレスに対応する移動位置情報を基に、相対移動が制御される。従って、これらの相対移動量を変更する場合でも、変数記憶領域89において、移動位置情報のみを書き替えればよいから、つまり、敷ブロック配置プログラム87および敷ブロック回収プログラム88における移動位置情報をそれぞれ書き替える必要がないから、プログラムの変更が簡易に対応できる。
【0039】
(敷ブロック移動用工具の変形例)
敷ブロック移動用工具10としては、図11に示す構造であってもよい。この構造の敷ブロック移動用工具10Aは、ブロック保持部13の取付片部13Aに、敷ブロック60の一部を差込片部13Cに対して押圧してロックするロック機構70が設けられている。
【0040】
ロック機構70は、セパレータ部12の内部に形成されたシリンダ室71と、このシリンダ室71内に摺動可能に収納されたピストン72と、このピストン72から取付片部13Aを貫通して一体的に形成されたピストンロッド73と、このピストンロッド73の先端に止めねじなどで固定された押圧片74と、ピストン72によって区画されたシリンダ室71内の一方の室71A(下室)に収納され押圧片74が差込片部13Cから離間する方向へピストン72を付勢するスプリング75とから構成されている。シリンダ室71の他方の室71B(上室)は、主軸装着部11に形成されたエアー通路76、および、主軸(スピンドル30)の内部に形成されたエアー通路を通じて、圧縮エアーが供給されるようになっている。つまり、ロック機構70は、主軸を通じて供給されるエアーによって駆動されるアクチュエータを含んで構成されている。
【0041】
従って、敷ブロック移動用工具10Aによれば、エアーがエアー通路76を通じてシリンダ室71の他方の室71Bに供給されると、ピストン72がスプリング75を圧縮しながら図11中下方へ移動するので、押圧片74と差込片部13Cとの間に敷ブロック60の枠部(主に、上壁部60B)を挟持することができる。そのため、敷ブロック60を安全に所望の位置まで移動させることができる。
【0042】
(その他の変形例)
前記実施形態では、敷ブロック移動用工具10,10Aを工具マガジン40に収納し、工具交換によりスピンドル30に装着して使用するようにしたが、工具マガジン40以外の場所に保管してもかまわない。また、工具マガジン40に収納せずに、手動でスピンドル30に装着しても無論かまわない。
また、工作機械として門型工作機械を用いて、C軸の回転位置決め制御を用いて、敷ブロック移動用工具10,10Aの向きを、敷ブロック60(61〜66)の向きに対応するように制御するようにしてもよく、あるいは、回転制御をテーブル側で行ってもよい。また、横型マシニングセンタのよう他のタイプの工作機械では、他の回転軸、例えばA軸、B軸で行ってもよく、また、その並行軸で行ってもよく、この実施例に限定されない。
【0043】
前記実施形態では、ブロック格納エリア28Aをテーブル28の上面の部分としたが、これに限らず、敷ブロック移動用工具10,10Aが保持可能な領域であれば、テーブル28以外の場所でも差し支えなく、本願発明を実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、テーブルと主軸とが三次元方向へ相対移動可能な工作機械に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10,10A…敷ブロック移動用工具、
20…工作機械、
28…テーブル、
28A…ブロック格納エリア、
30…スピンドル(主軸)、
60(61,62,63…)…敷ブロック、
87…敷ブロック配置プログラム、
88…敷ブロック回収プログラム、
89…変数記憶領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルの上面からワークを離間させた状態で支持する敷ブロックを保持可能な敷ブロック移動用工具を主軸に取り付け、この主軸と前記テーブルとを相対移動させながら、前記敷ブロックを前記テーブル上に配置し、かつ、前記テーブルから回収するための敷ブロック配置回収プログラムであって、
ブロック格納エリアに配置された前記敷ブロックを前記テーブル上に配置するための敷ブロック配置プログラムと、
前記テーブル上に配置された前記敷ブロックを前記ブロック格納エリアに回収するための敷ブロック回収プログラムとを備え、
前記敷ブロック配置プログラムは、前記ブロック格納エリアに配置された前記敷ブロックを前記テーブル上に配置する複数の動作ステップを有し、これらの動作ステップを設定された順番にコンピュータに実行させるとともに、
前記敷ブロック回収プログラムは、前記複数の動作ステップを、前記敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で、かつ、前記敷ブロック配置プログラムの動作方向とは逆の動作方向へ動作するようコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする敷ブロック配置回収プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、
前記敷ブロック配置プログラムは、前記複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、実行される順番に配列され、各指令ブロックは、動作モードを指令する指令コードと、指令された動作モードにおける位置情報とを含んで構成され、
前記敷ブロック回収プログラムは、前記複数の動作ステップを実行する複数の指令ブロックが、前記敷ブロック配置プログラムの実行順序とは逆の順序で配列され、かつ、各指令ブロックの位置情報が敷ブロック配置プログラムとは逆の位置情報として記録されている、
ことを特徴とする敷ブロック配置回収プログラム。
【請求項3】
請求項2に記載の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、
前記位置情報は、移動方向情報および移動位置情報を含む、
ことを特徴とする敷ブロック配置回収プログラム。
【請求項4】
請求項2に記載の敷ブロック配置回収プログラムにおいて、
前記位置情報は、移動方向情報および変数記憶領域のアドレスを指定する変数指定アドレスを含み、
前記変数記憶領域には、アドレスに対応して移動位置情報が記録されている、
ことを特徴とする敷ブロック配置回収プログラム。
【請求項5】
テーブルと、このテーブルに対して相対移動可能な主軸とを備えた工作機械を用いてワークを加工する加工方法であって、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムの敷ブロック配置プログラムによって、ブロック格納エリアに配置された敷ブロックを前記テーブル上に配置する敷ブロック配置工程と、
前記テーブル上に配置された敷ブロックの上にワークを載置するとともに、前記主軸に加工工具を取り付けて、前記ワークを加工するワーク加工工程と、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムの敷ブロック回収プログラムによって、前記テーブル上に配置された敷ブロックを前記ブロック格納エリアに回収する敷ブロック回収工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の敷ブロック配置回収プログラムを備えた工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−194651(P2012−194651A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56616(P2011−56616)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】