説明

断熱住宅及び換気システム

【課題】 エアコン等の冷暖房設備を要することなく、室内の温度を快適に保つことができる断熱構造を備えた断熱住宅を提供することである。
【解決手段】 外壁12の周囲に断熱構造を備えた断熱住宅1であって、前記断熱構造は、前記外壁12に沿って配設される内側保温シート25と、この内側保温シート25の外周を囲う側板26と、この側板26を介して前記内側保温シート25対向する外側保温シート27と、前記内側保温シート25、側板26及び外側保温シート27によって囲われた断熱空間部23内に充填されるセルロースファイバーやグラスウール等の断熱材24とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷暖房の効率化及び省エネルギー化を図ることができる断熱住宅及び換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冬場や夏場を快適に過すと共に、暖房や冷房の効率化及び省力化を図るため、多くの住宅や建物の壁などの躯体に断熱材を設けて施工している。この断熱材の施工に関しては、一般的にグラスウールなどの繊維系断熱材を壁内に充填して形成される内断熱工法が一般的であるが、壁の外面をプラスチック系の断熱ボードで覆う外断熱工法も採用されるようになってきている。
【0003】
前記内断熱工法は、壁内に前記断熱材を充填しているため、建物の内外のスペースを有効に確保できるが、前記断熱材の厚みが壁内部の厚みに限定されてしまうのと、前記断熱材の充填が柱やその他の仕切りによって分断されてしまうため、十分な断熱効果を得ることができないといった問題がある。
【0004】
一方、外断熱工法は、壁面をすっぽり断熱ボードで覆ってしまうので、断熱の連続性が保たれるため、断熱効果が前記内断熱工法よりも優れているといった利点がある。ただし、前記断熱ボードが壁面から張り出すため、周りのスペースが制限されるといった問題を有している。この外断熱工法に関しては、その断熱構造や壁面との取り付け等を工夫したものがいくつか提案されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
また、建物内に外気を取り入れ、建物内に溜まっている空気を外部に排気することによって、建物内の気温や湿度を一定に保持させるための換気システムを採用した住宅構造の提案もいくつかなされている。この換気システムは、前記断熱構造と併用することによって、その効果を得ることができるようになっている。
【特許文献1】特開2005−23678号公報
【特許文献2】特開2004−060959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の内断熱構造では、壁の内部に所定の通気用のスペースを確保した状態で断熱材を設置しなければならないため、前記断熱材の設置箇所やその厚み等が制限される。このため、断熱材を設置したことの効果が十分得られず、真夏や真冬においてはエアコン等の冷暖房設備を借りなければ室温を快適な状態に維持することができないといった問題がある。また、前記冷暖房設備によって快適な状態となった室温は、時間の経過とともに外気と同じ状態に戻ってしまう。このため、前記冷暖房設備の稼働率が多くなり、それに伴って環境破壊を引き起こすといった問題もある。
【0007】
一方、従来の外断熱構造においては、前記断熱材を室内に面した壁の内側に設けて施工する場合と、壁の外側に面して施工する場合の二通りの施工方法がある。前者の施工方法では、断熱材の厚みによって、室内の居住スペースが狭くなるといった欠点がある。一方、後者の施工方法は、前記断熱材を壁の外側に設置するため、室内の居住スペースを狭めることなく、断熱材の厚みを自由に調整することができる。しかしながら、前記断熱材の厚み調整だけでは冷暖房設備が不要となるまでの断熱効果を得ることが難しい。また、前記断熱材を厚く形成すると、重量も増えるため、壁への固定を厳重にしなければならないといった問題もある。
【0008】
また、従来の住宅内の換気システムにおいては、壁内に設けられた通気用のスペースを介して床下空間と小屋裏空間とを連通させたものがあるが、このような内断熱構造では、壁内に断熱材を設置したことによって、通気用のスペースが狭まるため、床下空間や小屋裏空間との間の空気の流れがスムーズに行われないといった問題がある。一方、外断熱構造においては、断熱材を壁の外側に設けているため、壁の内部の通気スペースは有効にとることができるが、断熱効果が十分でないため、床下空間から送られてくる冷気や小屋裏空間から送られてくる暖気をそのままの状態で室内に効率よく導くことができないといった問題がある。また、床下空間から送られてくる冷気には湿気を含んだものが多いため、室内に外気を導入する際に壁内を腐食させるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、エアコン等の冷暖房設備を要することなく、室内の温度を快適に保つことができる断熱構造を備えた断熱住宅及び前記断熱構造と併用することによって断熱効率の向上を図ることができる換気システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の断熱住宅は、外壁の周囲に断熱構造を備えた断熱住宅であって、前記断熱構造は、前記外壁の外側に突出する枠体によって形成される断熱空間部と、この断熱空間部内に充填される断熱材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の換気システムは、前記断熱構造の外周に備わる通気路と、前記小屋裏及び床下の空間とが連通した空気循環路を備え、前記通気路の一端に設けられる外気導入口から外気を導入して前記空気循環路内を循環させることで、住宅内を暖房あるいは冷房することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱住宅によれば、外壁の周囲に断熱構造を備え、この断熱構造が前記外壁の外側に突出する枠体によって形成される断熱空間部と、この断熱空間部内に充填される断熱材とで構成される。このため、前記断熱空間部を外壁の周囲に大きく突出するようにして形成することができ、この突出幅に応じた高い断熱効果を得ることができる。その結果、室内においては、エアコン等の冷暖房設備を用いることなく、一年を通して快適な温度を維持することができる。
【0013】
また、本発明の換気システムによれば、前記断熱構造による断熱効果が十分得られるので、床下空間からの冷気や小屋裏空間からの暖気を十分保持した状態で室内に循環させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る断熱住宅の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、断熱構造を備えた2階建ての断熱住宅1の断面構造を示したものである。この断熱住宅1は、コンクリートからなる基礎部2aと、この基礎部2a上に組まれる柱3や壁4及び屋根5からなる躯体部2bと、この躯体部2bに設けられる断熱構造(断熱体)20a,20bとで構成される。前記躯体部2bは、例えば、1階居室部6、2階居室部7及び小屋裏空間8とで構成され、1階居室部6及び2階居室部7の上部には天井裏空間9を有する。前記断熱体20a,20bは、各室内の温度や湿度を快適に維持するため、容量を大きくして形成され、前記壁4の外側や天井裏空間9に設けられる。
【0016】
前記壁4は、図2に示すように、対向して設けられる外壁12及び内壁13と、この外壁12と内壁13との間に形成される空間(内通気路)15とで構成されている。この内通気路15は、断熱住宅1の内部に新鮮な外気を取り込んだり、内部の汚れた空気を排出したりするために設けられるもので、下端や上端及び中間の各所には、外気の取り入れや排出を行うための通気口が適宜設けられている。
【0017】
前記断熱体20aは、図2に示したように、外壁12の外表面から突出して設けられる枠体22によって形成される断熱空間部23と、この断熱空間部23内に充填される断熱材24とによって構成されている。
【0018】
前記枠体22は、外壁12に沿って配設される内側保温シート25と、この内側保温シート25の外周を囲う側板26と、この側板26を介して前記内側保温シート25と対向して配置される外側保温シート27とによって形成される。前記内側保温シート25は、断熱住宅1の一外側面全体をカバーし、端部が前記柱3に掛けて広く形成される。内側保温シート25は、前記外壁12に密着するように接合あるいは打ち付け固定される。側板26は、前記内側保温シート25の角部に設けられるL型の取付金具28等を用いて、四方を囲うように取り付けられる。この側板26の幅は、前記断熱空間部23の幅となり、20〜40cmに形成される。また、前記外側保温シート27は、前記外壁12と略同じ広さに形成され、前記内側保温シート25と対向するように、前記側板26の上端に載置して固定される。
【0019】
前記枠体22によって形成される断熱空間部23には、セルロースファイバーやグラスウール等の断熱材24を充填して満たす。この断熱材24は、前記側板26の一部を開放した図示しない注入口にホースやノズルの先端を差し込み、ここから断熱材24を充填し、断熱空間部23が完全に満たされた後に注入口を閉じて密閉する。なお、前記断熱材24には、前記セルロースファイバーやグラスウール以外に、羊毛、もみ殻、わら、木屑等の細かく裁断したものを混ぜて用いることもできる。
【0020】
前記枠体22は、前記外側保温シート27の外側面に取り付けられた取付板29を介して屋根5のヒサシの一端に固定される。
【0021】
また、前記取付板29の外周には、外通気路43となる所定間隔の空間部を有して外装パネル42が配設される。前記外通気路43は、前記断熱体20aの外側を通る外気を躯体部2bの内部に取り入れたり、躯体部2b内の汚れた空気を外部に排出したりするためのもので、例えば15〜18mmの間隔で床下から天井裏にかけて形成される。なお、前記外装パネル42の下端には、雨水等の水切りや前記外通気路内へのシロアリ等の害虫の侵入を阻止するための防除金具44が設けられる。
【0022】
図3は、窓部45が設けられた外壁12に前記断熱体20aを設ける場合の施工例を示したものである。この断熱体20aは、窓部45を避けて配設される内側保温シート25と、この内側保温シート25に対向して設けられる外側保温シート27と、前記窓部45の輪郭に沿って設けられる側板26とによって構成される。なお、前記断熱体20aをブロック単位に形成し、前記窓部45の左右方向及び上下方向に組み合わせたり、接合させたりして配設することもできる。前記断熱体20aによって形成される断熱空間部23は、図2に示した枠体22と同様に20〜40cmの幅に設定され、内部に断熱材24が充填される。
【0023】
図2及び図3に示したように、容量の大きな断熱空間部23を有した断熱体20aを外壁12の外方向に突出して設けることで、断熱材24の充填量を増やし断熱効率を高めることができる。また、前記枠体22の内側保温シート25が固定される外壁12の内部の内通気路15と、前記外側保温シート27と外装パネル42との間に設けられている外通気路43とによる二重の通気路を形成することができる。前記外通気路43は、夏季においては、太陽熱によって温まる外装パネル42からの熱を上方に逃がす役割をなし、それと同時に躯体部2b内部の湿気を逃がす役割もなす。一方、前記内通気路15は、床下空間54や小屋裏空間8からの新鮮な空気を室内に循環させるために設けられる。特に、夏季においては床下空間54からの冷気を吸い上げることで、各室内における冷房効果が得られ、冬季においては、小屋裏空間8で温まった暖気を床下空間54に向けて吹き降ろすことで、各室内の暖房効果を得ることができる。また、前記内通気路15を設けることで、土台、柱、梁などの躯体部2bを構成する木材に常に新鮮な空気を触れさせることができ、湿気による腐食やカビの発生を抑えて耐久性を高めることができる。また、前記断熱体20aは、断熱空間部23が広くなっているので、内通気路15を流れる空気と外通気路43を流れる空気とを完全に遮断することができる。そのため、それぞれの通気路を通る暖かい空気と冷たい空気とが干渉し合うことによって生じる温度変化の影響を少なく抑えることができる。
【0024】
図4は断熱体20bを天井裏空間9と小屋裏空間8との間に設けた場合の実施例を示したものである。この断熱体20bは、小屋裏空間8の床の裏側に設けられる上側保温シート46と、この上側保温シート46と対向して設けられる下側保温シート47とで構成され、前記上側保温シート46と下側保温シート47とで挟まれた断熱空間部23に前記断熱材24が充填される。上側保温シート46、下側保温シート47及び断熱材24からなる断熱体20bは、前記図2及び図3で示した断熱体20aと構成は同じであるが、その施工方法が異なる。前述したように、上側保温シート46は、柱や梁の部分を除いた小屋裏空間8の床下面に沿って貼り付けあるいは打ち付けなどによって固定される。一方、下側保温シート47の角部や側部は柱部や梁などに支えられ、下面は天井裏空間9の床面から所定間隔で複数立設される棒状の支持部材によって支えられる。また、断熱材24は、小屋裏空間8側から前記上側保温シート46の一端に設けられる図示しない孔部からホースやノズルを挿入して充填される。
【0025】
このように、前記断熱体20bを小屋裏空間8と天井裏空間9との間に設けることで、夏季においては床下空間54からの冷気を太陽熱で温まった小屋裏空間8から遮断することができる。このため、天井裏空間9における冷却効果を十分保持することができる。また、冬季においては、小屋裏空間8から天井裏空間9に導入した暖気を溜め、外部に放出するのを抑えることができるので、天井裏空間9での保温効果を十分保持することができる。
【0026】
次に、図5に基づいて、前記断熱体20a,20bと換気システム30とを備えた断熱住宅10の構成例について説明する。この断熱住宅10は、前記断熱体20a,20bを設けた躯体部2b内に強制的に空気を循環させる送風機31やこの送風機31に繋がる空気循環路を備えると共に、地下には冷気を循環させるための冷気導入部61が設置される。
【0027】
空気循環路は、図1に示したように、壁4内の内通気路15及び断熱体20aの外側の外通気路43に加えて、小屋裏空間8と床下空間54との間を繋ぐ給気ダクト48及び排気ダクト49とで構成される。前記内通気路15は約90mm、外通気路43は約18mmの隙間を有して形成され、小屋裏空間8及び床下空間54を介して連通している。前記外通気路43に導入される外気は、基礎部2aと外装パネル42の下端部との間に設けられた第1の外気導入口16から導かれる。また、1階居室部6や2階居室部7の内壁13面には、前記内通気路15を伝わってくる空気を各居室内に取り入れる給気窓17aと、居室内を循環した空気を排出する排気窓17bが設けられている。なお、前記給気窓17a及び排気窓17bには、砂埃や汚れた空気を通さないように、フィルタが設けられたり、使用しない場合に閉鎖できるようにシャッタ等の開閉手段が設けられたりする場合がある。
【0028】
給気ダクト48は、小屋裏空間8に集められた空気を床下空間54に導き、排気ダクト49は、各居室内を循環した空気を外部に排出するために設けられる。前記給気ダクト48は、小屋裏空間8内に設置されている送風機31の給気部に接続し、そのまま床下空間54に向けて延設される。排気ダクト49は、各居室に設けられている排気窓17bから前記送風機31の排気部に送られる。前記各居室から延びる排気ダクト49は、分岐チャンバ41を介して一つにまとめられて前記送風機31の排気部に接続される。なお、前記給気ダクト48及び排気ダクト49は、前記外通気路43や内通気路15内を通る空気と混ざり合わないように独立して設けられる。
【0029】
前記送風機31は、図6に示すように、蓄熱部材51を介して外気を躯体部2b内に循環させる給気部32と、各居室内を循環した空気を前記蓄熱部材51を介して躯体部2bの外に排出する排気部33とを備えている。前記給気部32は、外通気路43内を上昇してくる空気を導入する給気口34と、床下空間54に延びる給気ダクト48を接続する排気口35と、前記給気口34から排気口35に向けて空気を送り込む第1送風ファン(図示せず)とを備えている。一方、前記排気部33は、前記分岐チャンバ41から延びる排気ダクト49が接続される給気口36と、蓄熱部材51を介して小屋裏空間8の壁面に設けられる排気窓38に通じる排気口37と、前記給気口36に取り込んだ空気を前記排気口37から蓄熱部材51を介して排気窓38に向けて汚れた空気を送出する第2送風ファン(図示せず)とを備えている。
【0030】
前記蓄熱部材51は、暖房や冷房の効率を低下させることなく空気の入れ替えを行うために設けられるもので、図6に示したように、中心に給気路52、その外周に空気の通り道を複数有した排気路53を有して形成される。前記給気路52は、中心部が中空の塩化ビニルパイプが使用され、排気路53は、前記塩化ビニルパイプの周囲に排湿性及び吸熱性を備えた透侵シート等のシート部材を層状に設けたものや、多孔質の樹脂材によって形成される。この蓄熱部材51は、前記送風機31の前段に設けられ、小屋裏空間8内に導入した新鮮な外気を取り入れ、内部に設けられている給気路52を通過する過程で熱が吸収され、湿度が調整された状態で、前記送風機31の給気口34に取り込まれる。また、前記排気路53には、前記送風機31の排気口35から送出されてくる各部屋からの温まった空気が通るため、蓄熱部材51は常に温まった状態となる。このように、断熱住宅10の外部に放出される暖かい空気を前記蓄熱部材51によって排出することで、小屋裏空間8に導入した新鮮な空気を暖めた状態で送風機31に送出すことができ、熱損失が大幅に抑えることができると共に、省力化も図ることができる。
【0031】
また、前記蓄熱部材51の先には三路弁39が備えられ、小屋裏空間8内の空気を引き込む引込口Aと、天井裏空間9から空気を引き込む引込口Bとを切替えて空気の流入経路を選択することができる。前記引込口Aは、主に外通気路43を通して小屋裏空間8に送られてきた暖かい外気を循環させる場合に使用し、引込口Bは内通気路15を伝わる涼しい空気を循環させる場合に用いられる。
【0032】
前記外通気路43、小屋裏空間8、床下空間54、内通気路15、天井裏空間9、給気ダクト48及び排気ダクト49は、図5に示したように、連通した一本の空気循環路を形成しており、前記小屋裏空間8内に設置されている送風機31によって、空気を強制的に断熱住宅10内に循環させることで、各居室内の空気を常に新鮮な状態に保っている。なお、小屋裏空間8の上部に設けられる換気ジャロジー60は、小屋裏空間8内の温度を調整するために開閉可能となっており、暖気循環させる際は閉じて、暖まった空気を逃さないようにし、冷気循環させる際には開いて、熱が蓄積しないように操作される。
【0033】
次に、図6において暖気を各居室内に循環させて暖房する場合の構成及び作用を示す。以下、空気の流れを矢印で示す。室温が低くなる冬場においては、太陽光がよく照射する南側の暖かい空気が外装パネル42と断熱体20aの外面との間の下端に設けられた第1の外気導入口16に入り、外通気路43内の温度差による上昇気流に乗って小屋裏空間8に集められる。そして、この小屋裏空間8に集められた空気は、屋根5面に降り注ぐ太陽光によってさらに暖められる。この暖められた空気は、前記送風機31の給気部32の入口に設けられている三路弁39のA側から引き込まれ、給気ダクト48を介して床下空間54に送られる。この床下空間54内に送られた空気によって床材21を暖めると共に、連通する壁部4の内通気路15を上昇していき、給気窓17aを介して各居室内に暖かい空気が流れ込む。そして、この流れ込んだ空気は各居室内を循環した後、天井面に設けられた排気窓17bから分岐チャンバ41、送風機31の排気部33を経て排気窓38から排気される。このように、前記送風機31を作動させることによって、暖かい外気を常に取り入れて各居室内に循環させることで、電気や石油等による熱源を使用せずに暖房することが可能となる。また、各居室内を循環して汚れた空気を排気ダクト49及び送風機31の排気部33を経由して断熱住宅1外に排出させるので、常に新鮮な空気を断熱住宅10内に循環させることができる。
【0034】
図7は、本発明の換気システム30によって、各居室内に冷気を循環させる場合の構成及び作用を示したものである。前記図5と同様に空気の流れを矢印で示す。冷気を導入するための手段として、断熱住宅10の床下空間54内に涼しい外気を流入させるための冷気導入部61が設けられる。この冷気導入部61は、直接太陽光が照射しない涼しい北側の地表面から地中を通って床下空間54内に延びる給気管62を備える。この給気管62は、浄化槽や雨水タンク等の貯水槽63を貫通するようにして配管される。そのために、地表面に突出した第2の外気導入口64から導入した空気を冷却しながら床下空間54内に送出することができる。一方、前記第1の外気導入口16からは暖かい空気が上昇気流に乗って小屋裏空間8に運ばれるが、建物内部に循環させずにそのまま換気ジャロジー60を通じて建物の外に逃がすことができるので、冷却効果を損なうことがない。なお、前記第2の外気導入口64に二重の吸湿フィルタをセットすることによって、地表面の冷気に含まれる湿気を吸収し、乾いた冷気のみを各室内に循環させることができる。
【0035】
前記床下空間54に送り込まれた空気は、小屋裏空間8内に設置されている送風機31によって内通気路15内を上昇する。この空気の上昇によって、各居室の内壁に開設されている給気窓17aから冷たい空気が流入して居室内を循環する。また、前記床下空間54から内通気路15を上昇する空気は、最上階の天井裏空間9から送風機31によって吸引され、さらに給気ダクト48を通って再度各居室内に循環される。前記天井裏空間9から送風機31に空気を給気する場合は、送風機31の給気口34に設けられている三路弁39の引込口Aを閉じ、他方の引込口Bを開放した状態で行われる。各居室内を循環した空気は、各居室内の天井近辺に設けた排気窓17bから排気ダクト49を介して送風機31の排気部に送られ、排気窓38から排出される。なお、夏場においては、前述したように換気ジャロジー60を開放することで、小屋裏空間8内の温度が上昇しないように調整される。
【0036】
上記実施形態では、冬場は南側に面した第1の外気導入口16から暖かい空気を有効に建物内に循環させて暖房することができ、夏場は浄化槽や雨水タンク等の貯水槽63を貫通するように配管された給気管62を介して床下空間54に引き込み、内通気路15等を介して各居室内に循環させることで、冷房効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る断熱住宅の全体構造を示す断面図である。
【図2】上記断熱住宅の壁面の部分断面図である。
【図3】上記断熱住宅の窓部周辺の部分断面図である。
【図4】上記断熱住宅の天井裏空間及び小屋裏空間を示す部分断面図である。
【図5】換気システムを備えた断熱住宅の全体構造を示す断面図である。
【図6】送風機及び蓄熱部材の構造を示す説明図である。
【図7】上記断熱住宅における冷気の循環経路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1,10 断熱住宅
2a 基礎部
2b 躯体部
3 柱
4 壁
5 屋根
6 1階居室部
7 2階居室部
8 小屋裏空間
9 天井裏空間
12 外壁
13 内壁
15 内通気路
16 第1の外気導入口
17a 給気窓
17b 排気窓
20a 断熱体(断熱構造)
20b 断熱体(断熱構造)
21 床材
22 枠体
23 断熱空間部
24 断熱材
25 内側保温シート
26 側板
27 外側保温シート
28 取付金具
29 取付板
30 換気システム
31 送風機
32 給気部
33 排気部
34,36 給気口
35,37 排気口
38 排気窓
39 三路弁
41 分岐チャンバ
42 外装パネル
43 外通気路
44 防除金具
45 窓部
46 上側保温シート
47 下側保温シート
48 給気ダクト
49 排気ダクト
51 蓄熱部材
52 給気路
53 排気路
54 床下空間
60 換気ジャロジー
61 冷気導入部
62 給気管
63 貯水槽
64 第2の外気導入口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁の周囲に断熱構造を備えた断熱住宅であって、
前記断熱構造は、前記外壁の外側に突出する枠体によって形成される断熱空間部と、この断熱空間部内に充填される断熱材とを備えたことを特徴とする断熱住宅。
【請求項2】
外壁の周囲及び屋根と天井との間にできる小屋裏に断熱構造を備えた断熱住宅であって、
前記断熱構造は、前記外壁の外側及び前記小屋裏内に突出する枠体によって形成される断熱空間部と、この断熱空間部内に充填される断熱材とを備えたことを特徴とする断熱住宅。
【請求項3】
前記断熱構造は、前記枠体と、この枠体の外表面に沿って設けられる通気路とで構成される請求項1又は2記載の断熱住宅。
【請求項4】
前記枠体は、前記断熱材を充填するための厚み幅を有して対向する一対の保温シートを備えて構成される請求項1又は2記載の断熱住宅。
【請求項5】
前記厚み幅は、20cm以上40cm以下に形成される請求項4記載の断熱住宅。
【請求項6】
前記断熱材は、セルロースファイバー、グラスウール、羊毛、もみ殻、わら、木屑のいずれかである請求項1又は2記載の断熱住宅。
【請求項7】
請求項1乃至3記載の断熱構造の外周に備わる通気路と、前記小屋裏及び床下の空間とが連通した空気循環路を備え、前記通気路の一端に設けられる外気導入口から外気を導入して前記空気循環路内を循環させることで、住宅内を暖房あるいは冷房することを特徴とする換気システム。
【請求項8】
請求項1乃至3記載の断熱構造の外周に備わる通気路と、前記小屋裏及び床下の空間とが連通した空気循環路と、この空気循環路内の空気の流れを制御する送風機とを備え、前記通気路の一端に設けられる外気導入口から導入した外気を前記送風機によって前記空気循環路内を循環させることで、住宅内を暖房あるいは冷房することを特徴とする換気システム。
【請求項9】
前記送風機の給気口及び排気口に蓄熱部材を設け、この蓄熱部材によって前記小屋裏に溜まった空気を前記空気循環路内に循環させる請求項8記載の換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−84936(P2009−84936A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258325(P2007−258325)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(502271542)有限会社アイユーホーム (2)
【Fターム(参考)】